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環境経済学
2016年度 九州大学 経済学部 専門科目
2016年12月2916日
九州大学大学院 経済学研究院
藤田敏之
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
6 環境政策手段
2
61 直接規制(1)
政府が環境基準を法律的に義務づけ直接企業に遵守させるタイプの規制が直接規制
環境基準を守れない企業は罰金操業停止などの処分を受ける
中央集権的な規制であり過去の公害問題においては直接規制が環境政策の主な手段であった
環境基準排出量基準技術基準排出原単位基準
政府の役割
(1)社会的に最適な排出量(削減量)の導出5章のeを実現
(2)総排出量の各企業への割り当て次節で説明する限界費用均等化が必要
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
61 直接規制(2)
複数の企業が存在する場合ある削減目標を最小費用で達成するにはすべての企業の限界費用が等しくなければならない
これを限界費用均等化原理とよぶ
(例)企業A Bの規制
MACAMACB企業ABの限界削減費用
総排出量を e にしたいとき
両企業の限界費用が等しくなるようにABの排出量をeA eB
(e=eA+eB)にするのが効率的
費用が最小(図の斜線部分)
Bの削減
金額
排出量
MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
eA eB
Aの削減
金額
3
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
61 直接規制(3)
限界費用均等化原理の直観的意味
ある規制の下で限界削減費用が等しくない場合限界費用の高い企業に多くの排出をさせてその分の削減を低い企業にさせれば総削減量は同じで全体の費用は低くなる限界費用が等しいときはこのような調整を行う余地がない
さきほどの例で企業A B
に(eA eB)とは異なる規制(eArsquo eBrsquo)を課すとき総費
用は大きくなり損失(斜線部分)が生じることになってしまう Bの削減
金額
排出量
MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
eArsquo eBrsquo
Aの削減
金額
4
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
5
61 直接規制(4)
直接規制を適切に行うためには政府が限界削減費用限界外部費用についての情報を持っていなければならない
地球温暖化など汚染者が不特定多数存在する場合には限界費用均等化原理がみたされることは期待できず効率的な規制を行うことは困難であるまた規制を遵守しているかどうかを監視(モニター)するための行政費用もかかる
特定の企業が規制を戦略的に利用しようとして政府にロビイングを行うことがある
技術指定型の規制の場合企業の削減技術開発への誘因を損なう可能性がある
近年では直接規制の形態として政府と企業との交渉によって規制がデザインされる自主的取り組み(片務的公約自主協定公的自主計画)が一般的になっている
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(1)
最適な(効率的な)排出水準における限界削減費用(=限界外部費用)を排出量1単位あたりの税金として課す政策をピグー税とよぶ
生産活動における環境の利用への価格づけ(価格割当)
企業行動
税率 t が与えられれば企業は限界削減費用が t となるような排出量e を合理的に選択
(税支払い額+削減費用を最小化)
A税支払い額B削減費用 t
e
金額
排出量
MAC
A B o
6
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
したがって
最適排出水準 e に対応する限界削減費用 t が
最適税率となることがわかる
62 ピグー税(2)
最適ピグー税率
t
e 排出量
MAC MEC
o
t
e
金額
排出量
MAC
o ersquo
排出量がersquoの場合
t
e
金額
排出量
MAC
o
排出量がersquorsquoの場合
ersquorsquo
e以外の排出量を選択すると企業にとっての費用が増す
金額
7
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(3)
ピグー税は複数の汚染者について自動的に限界費用の均等化(限界費用=税率)をもたらすという点で直接規制よりも優れている
既存の税をピグー税に置き換えることにより汚染の減少既存の税のもたらす死荷重の緩和という2つのメリットを同時に達成する(二重の配当)
地球環境問題のような不特定多数の排出源が存在する場合の規制にふさわしい手段
しかし最適税率を決定する際に必要な情報量は莫大であり企業からの抵抗もあることから厳密な意味でのピグー税という手段が現実に用いられたことはない現実の税政策としてごみ有料化産業廃棄物税などがあるがこれらの税率は低すぎるので単なる財源調達手段とみなされる
削減目標を適当に定め試行錯誤的に税率を変更することにより目標を最小費用で達成しようとするボーモル=オーツ税のほうが現実的
税金のかわりに削減量1単位あたりの補助金を企業に与えるという政策も考えられる
8
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(4)
簡単な数式による表現
企業
企業 i の排出量を xi とおき とおく
利益Bi(xi) Birsquo gt 0 Birsquorsquo lt 0被害D(x) Drsquo gt 0 Drsquorsquo gt 0
社会的に最適な排出量の決定
最大化のための1階条件は
この式をみたすxi をxiとおき とおくと
ここでピグー税率を t とする
企業の利益は となりこれを最大化するxi をxiとおくと
よって とおけば最適になる
9
(限界削減費用均等化)
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
デポジット制度のメカニズム
OP 飲料の価格
DDrsquo 飲料の需要曲線PPrsquo 供給曲線
PT 投棄される容器1つあたりの外部費用(一定とする)
PQとPPrsquoの垂直距離 容器の限界回収費用
TTrsquo 飲料の社会的限界費用(使用済み容器が投棄される場合)
63 デポジット制度(1)
税補助金制度を組み合わせた政策としてデポジット制度(またはデポジットリファンド制度預託金払戻制度)がある
デポジット制度使用済み飲料容器の投棄行為による環境悪化を規制するために飲料の価格に一定の預り金(デポジット)を上乗せして容器を所定の場所に返却した人にデポジットを払い戻す制度
10
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
限界回収費用
Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
社会全体の利益
i) a+b-d
ii) a+b
iii) a+b+c (これが社会的最適)
デポジット制度の利点
投棄行為を監視する必要がない
デポジットを上下させて投棄量をコントロールできる
63 デポジット制度(2)
消費者の合理的行動を考えると
i) 規制なしのとき OC消費しすべて投棄
ii) PTのデポジットを課すとき OB消費しすべて投棄
iii) さらに回収した人にデポジットを返却するとき OB消費しOA回収
11
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
B C A
a b
c d Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(1)
政府が汚染物質の排出に権利を与え一定の排出権(クレジット排出許可証)を発行し各企業に割り当てる(ここまでは直接規制と同じ)
企業の排出権の売買を許容する
rarr 排出権の市場ができ排出権価格が決定され取引が行われる
排出量の上限(キャップ)が決まり総量規制がなされる(数量割当)
排出量
Aの限界削減費用
このような取引はキャップアンドトレード方式と呼ばれる
wA wB 排出権の割り当て
(初期配分排出枠)
e = wA+wB
初期配分においてはAの限界削減費用がBよりも高い
rarr 取引の機会
金額 MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
wA wB
金額
Bの限界削減費用
12
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(2)
排出権価格が限界削減費用より低ければ排出権を買うほうが得
排出権価格が限界削減費用より高ければ排出権を売るほうが得
ある価格のもとでAは排出権の需要者Bは供給者になり排出量取引が生じる rarr このような取引は両者の限界削減費用が等しくなるまで続く
排出権の均衡価格 p は限界削減費用に等しくなる
MACA
MACB
oA oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
p
eA eB
取引量
eA-wA
=wB-eB
排出権価格
13
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
6 環境政策手段
2
61 直接規制(1)
政府が環境基準を法律的に義務づけ直接企業に遵守させるタイプの規制が直接規制
環境基準を守れない企業は罰金操業停止などの処分を受ける
中央集権的な規制であり過去の公害問題においては直接規制が環境政策の主な手段であった
環境基準排出量基準技術基準排出原単位基準
政府の役割
(1)社会的に最適な排出量(削減量)の導出5章のeを実現
(2)総排出量の各企業への割り当て次節で説明する限界費用均等化が必要
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
61 直接規制(2)
複数の企業が存在する場合ある削減目標を最小費用で達成するにはすべての企業の限界費用が等しくなければならない
これを限界費用均等化原理とよぶ
(例)企業A Bの規制
MACAMACB企業ABの限界削減費用
総排出量を e にしたいとき
両企業の限界費用が等しくなるようにABの排出量をeA eB
(e=eA+eB)にするのが効率的
費用が最小(図の斜線部分)
Bの削減
金額
排出量
MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
eA eB
Aの削減
金額
3
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
61 直接規制(3)
限界費用均等化原理の直観的意味
ある規制の下で限界削減費用が等しくない場合限界費用の高い企業に多くの排出をさせてその分の削減を低い企業にさせれば総削減量は同じで全体の費用は低くなる限界費用が等しいときはこのような調整を行う余地がない
さきほどの例で企業A B
に(eA eB)とは異なる規制(eArsquo eBrsquo)を課すとき総費
用は大きくなり損失(斜線部分)が生じることになってしまう Bの削減
金額
排出量
MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
eArsquo eBrsquo
Aの削減
金額
4
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
5
61 直接規制(4)
直接規制を適切に行うためには政府が限界削減費用限界外部費用についての情報を持っていなければならない
地球温暖化など汚染者が不特定多数存在する場合には限界費用均等化原理がみたされることは期待できず効率的な規制を行うことは困難であるまた規制を遵守しているかどうかを監視(モニター)するための行政費用もかかる
特定の企業が規制を戦略的に利用しようとして政府にロビイングを行うことがある
技術指定型の規制の場合企業の削減技術開発への誘因を損なう可能性がある
近年では直接規制の形態として政府と企業との交渉によって規制がデザインされる自主的取り組み(片務的公約自主協定公的自主計画)が一般的になっている
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(1)
最適な(効率的な)排出水準における限界削減費用(=限界外部費用)を排出量1単位あたりの税金として課す政策をピグー税とよぶ
生産活動における環境の利用への価格づけ(価格割当)
企業行動
税率 t が与えられれば企業は限界削減費用が t となるような排出量e を合理的に選択
(税支払い額+削減費用を最小化)
A税支払い額B削減費用 t
e
金額
排出量
MAC
A B o
6
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
したがって
最適排出水準 e に対応する限界削減費用 t が
最適税率となることがわかる
62 ピグー税(2)
最適ピグー税率
t
e 排出量
MAC MEC
o
t
e
金額
排出量
MAC
o ersquo
排出量がersquoの場合
t
e
金額
排出量
MAC
o
排出量がersquorsquoの場合
ersquorsquo
e以外の排出量を選択すると企業にとっての費用が増す
金額
7
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(3)
ピグー税は複数の汚染者について自動的に限界費用の均等化(限界費用=税率)をもたらすという点で直接規制よりも優れている
既存の税をピグー税に置き換えることにより汚染の減少既存の税のもたらす死荷重の緩和という2つのメリットを同時に達成する(二重の配当)
地球環境問題のような不特定多数の排出源が存在する場合の規制にふさわしい手段
しかし最適税率を決定する際に必要な情報量は莫大であり企業からの抵抗もあることから厳密な意味でのピグー税という手段が現実に用いられたことはない現実の税政策としてごみ有料化産業廃棄物税などがあるがこれらの税率は低すぎるので単なる財源調達手段とみなされる
削減目標を適当に定め試行錯誤的に税率を変更することにより目標を最小費用で達成しようとするボーモル=オーツ税のほうが現実的
税金のかわりに削減量1単位あたりの補助金を企業に与えるという政策も考えられる
8
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(4)
簡単な数式による表現
企業
企業 i の排出量を xi とおき とおく
利益Bi(xi) Birsquo gt 0 Birsquorsquo lt 0被害D(x) Drsquo gt 0 Drsquorsquo gt 0
社会的に最適な排出量の決定
最大化のための1階条件は
この式をみたすxi をxiとおき とおくと
ここでピグー税率を t とする
企業の利益は となりこれを最大化するxi をxiとおくと
よって とおけば最適になる
9
(限界削減費用均等化)
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
デポジット制度のメカニズム
OP 飲料の価格
DDrsquo 飲料の需要曲線PPrsquo 供給曲線
PT 投棄される容器1つあたりの外部費用(一定とする)
PQとPPrsquoの垂直距離 容器の限界回収費用
TTrsquo 飲料の社会的限界費用(使用済み容器が投棄される場合)
63 デポジット制度(1)
税補助金制度を組み合わせた政策としてデポジット制度(またはデポジットリファンド制度預託金払戻制度)がある
デポジット制度使用済み飲料容器の投棄行為による環境悪化を規制するために飲料の価格に一定の預り金(デポジット)を上乗せして容器を所定の場所に返却した人にデポジットを払い戻す制度
10
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
限界回収費用
Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
社会全体の利益
i) a+b-d
ii) a+b
iii) a+b+c (これが社会的最適)
デポジット制度の利点
投棄行為を監視する必要がない
デポジットを上下させて投棄量をコントロールできる
63 デポジット制度(2)
消費者の合理的行動を考えると
i) 規制なしのとき OC消費しすべて投棄
ii) PTのデポジットを課すとき OB消費しすべて投棄
iii) さらに回収した人にデポジットを返却するとき OB消費しOA回収
11
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
B C A
a b
c d Trsquo
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(1)
政府が汚染物質の排出に権利を与え一定の排出権(クレジット排出許可証)を発行し各企業に割り当てる(ここまでは直接規制と同じ)
企業の排出権の売買を許容する
rarr 排出権の市場ができ排出権価格が決定され取引が行われる
排出量の上限(キャップ)が決まり総量規制がなされる(数量割当)
排出量
Aの限界削減費用
このような取引はキャップアンドトレード方式と呼ばれる
wA wB 排出権の割り当て
(初期配分排出枠)
e = wA+wB
初期配分においてはAの限界削減費用がBよりも高い
rarr 取引の機会
金額 MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
wA wB
金額
Bの限界削減費用
12
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(2)
排出権価格が限界削減費用より低ければ排出権を買うほうが得
排出権価格が限界削減費用より高ければ排出権を売るほうが得
ある価格のもとでAは排出権の需要者Bは供給者になり排出量取引が生じる rarr このような取引は両者の限界削減費用が等しくなるまで続く
排出権の均衡価格 p は限界削減費用に等しくなる
MACA
MACB
oA oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
p
eA eB
取引量
eA-wA
=wB-eB
排出権価格
13
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
61 直接規制(2)
複数の企業が存在する場合ある削減目標を最小費用で達成するにはすべての企業の限界費用が等しくなければならない
これを限界費用均等化原理とよぶ
(例)企業A Bの規制
MACAMACB企業ABの限界削減費用
総排出量を e にしたいとき
両企業の限界費用が等しくなるようにABの排出量をeA eB
(e=eA+eB)にするのが効率的
費用が最小(図の斜線部分)
Bの削減
金額
排出量
MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
eA eB
Aの削減
金額
3
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
61 直接規制(3)
限界費用均等化原理の直観的意味
ある規制の下で限界削減費用が等しくない場合限界費用の高い企業に多くの排出をさせてその分の削減を低い企業にさせれば総削減量は同じで全体の費用は低くなる限界費用が等しいときはこのような調整を行う余地がない
さきほどの例で企業A B
に(eA eB)とは異なる規制(eArsquo eBrsquo)を課すとき総費
用は大きくなり損失(斜線部分)が生じることになってしまう Bの削減
金額
排出量
MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
eArsquo eBrsquo
Aの削減
金額
4
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
5
61 直接規制(4)
直接規制を適切に行うためには政府が限界削減費用限界外部費用についての情報を持っていなければならない
地球温暖化など汚染者が不特定多数存在する場合には限界費用均等化原理がみたされることは期待できず効率的な規制を行うことは困難であるまた規制を遵守しているかどうかを監視(モニター)するための行政費用もかかる
特定の企業が規制を戦略的に利用しようとして政府にロビイングを行うことがある
技術指定型の規制の場合企業の削減技術開発への誘因を損なう可能性がある
近年では直接規制の形態として政府と企業との交渉によって規制がデザインされる自主的取り組み(片務的公約自主協定公的自主計画)が一般的になっている
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(1)
最適な(効率的な)排出水準における限界削減費用(=限界外部費用)を排出量1単位あたりの税金として課す政策をピグー税とよぶ
生産活動における環境の利用への価格づけ(価格割当)
企業行動
税率 t が与えられれば企業は限界削減費用が t となるような排出量e を合理的に選択
(税支払い額+削減費用を最小化)
A税支払い額B削減費用 t
e
金額
排出量
MAC
A B o
6
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
したがって
最適排出水準 e に対応する限界削減費用 t が
最適税率となることがわかる
62 ピグー税(2)
最適ピグー税率
t
e 排出量
MAC MEC
o
t
e
金額
排出量
MAC
o ersquo
排出量がersquoの場合
t
e
金額
排出量
MAC
o
排出量がersquorsquoの場合
ersquorsquo
e以外の排出量を選択すると企業にとっての費用が増す
金額
7
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62 ピグー税(3)
ピグー税は複数の汚染者について自動的に限界費用の均等化(限界費用=税率)をもたらすという点で直接規制よりも優れている
既存の税をピグー税に置き換えることにより汚染の減少既存の税のもたらす死荷重の緩和という2つのメリットを同時に達成する(二重の配当)
地球環境問題のような不特定多数の排出源が存在する場合の規制にふさわしい手段
しかし最適税率を決定する際に必要な情報量は莫大であり企業からの抵抗もあることから厳密な意味でのピグー税という手段が現実に用いられたことはない現実の税政策としてごみ有料化産業廃棄物税などがあるがこれらの税率は低すぎるので単なる財源調達手段とみなされる
削減目標を適当に定め試行錯誤的に税率を変更することにより目標を最小費用で達成しようとするボーモル=オーツ税のほうが現実的
税金のかわりに削減量1単位あたりの補助金を企業に与えるという政策も考えられる
8
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(4)
簡単な数式による表現
企業
企業 i の排出量を xi とおき とおく
利益Bi(xi) Birsquo gt 0 Birsquorsquo lt 0被害D(x) Drsquo gt 0 Drsquorsquo gt 0
社会的に最適な排出量の決定
最大化のための1階条件は
この式をみたすxi をxiとおき とおくと
ここでピグー税率を t とする
企業の利益は となりこれを最大化するxi をxiとおくと
よって とおけば最適になる
9
(限界削減費用均等化)
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
デポジット制度のメカニズム
OP 飲料の価格
DDrsquo 飲料の需要曲線PPrsquo 供給曲線
PT 投棄される容器1つあたりの外部費用(一定とする)
PQとPPrsquoの垂直距離 容器の限界回収費用
TTrsquo 飲料の社会的限界費用(使用済み容器が投棄される場合)
63 デポジット制度(1)
税補助金制度を組み合わせた政策としてデポジット制度(またはデポジットリファンド制度預託金払戻制度)がある
デポジット制度使用済み飲料容器の投棄行為による環境悪化を規制するために飲料の価格に一定の預り金(デポジット)を上乗せして容器を所定の場所に返却した人にデポジットを払い戻す制度
10
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
限界回収費用
Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
社会全体の利益
i) a+b-d
ii) a+b
iii) a+b+c (これが社会的最適)
デポジット制度の利点
投棄行為を監視する必要がない
デポジットを上下させて投棄量をコントロールできる
63 デポジット制度(2)
消費者の合理的行動を考えると
i) 規制なしのとき OC消費しすべて投棄
ii) PTのデポジットを課すとき OB消費しすべて投棄
iii) さらに回収した人にデポジットを返却するとき OB消費しOA回収
11
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
B C A
a b
c d Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(1)
政府が汚染物質の排出に権利を与え一定の排出権(クレジット排出許可証)を発行し各企業に割り当てる(ここまでは直接規制と同じ)
企業の排出権の売買を許容する
rarr 排出権の市場ができ排出権価格が決定され取引が行われる
排出量の上限(キャップ)が決まり総量規制がなされる(数量割当)
排出量
Aの限界削減費用
このような取引はキャップアンドトレード方式と呼ばれる
wA wB 排出権の割り当て
(初期配分排出枠)
e = wA+wB
初期配分においてはAの限界削減費用がBよりも高い
rarr 取引の機会
金額 MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
wA wB
金額
Bの限界削減費用
12
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(2)
排出権価格が限界削減費用より低ければ排出権を買うほうが得
排出権価格が限界削減費用より高ければ排出権を売るほうが得
ある価格のもとでAは排出権の需要者Bは供給者になり排出量取引が生じる rarr このような取引は両者の限界削減費用が等しくなるまで続く
排出権の均衡価格 p は限界削減費用に等しくなる
MACA
MACB
oA oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
p
eA eB
取引量
eA-wA
=wB-eB
排出権価格
13
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
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65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
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oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
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66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
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66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
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66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
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66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
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25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
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61 直接規制(3)
限界費用均等化原理の直観的意味
ある規制の下で限界削減費用が等しくない場合限界費用の高い企業に多くの排出をさせてその分の削減を低い企業にさせれば総削減量は同じで全体の費用は低くなる限界費用が等しいときはこのような調整を行う余地がない
さきほどの例で企業A B
に(eA eB)とは異なる規制(eArsquo eBrsquo)を課すとき総費
用は大きくなり損失(斜線部分)が生じることになってしまう Bの削減
金額
排出量
MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
eArsquo eBrsquo
Aの削減
金額
4
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5
61 直接規制(4)
直接規制を適切に行うためには政府が限界削減費用限界外部費用についての情報を持っていなければならない
地球温暖化など汚染者が不特定多数存在する場合には限界費用均等化原理がみたされることは期待できず効率的な規制を行うことは困難であるまた規制を遵守しているかどうかを監視(モニター)するための行政費用もかかる
特定の企業が規制を戦略的に利用しようとして政府にロビイングを行うことがある
技術指定型の規制の場合企業の削減技術開発への誘因を損なう可能性がある
近年では直接規制の形態として政府と企業との交渉によって規制がデザインされる自主的取り組み(片務的公約自主協定公的自主計画)が一般的になっている
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(1)
最適な(効率的な)排出水準における限界削減費用(=限界外部費用)を排出量1単位あたりの税金として課す政策をピグー税とよぶ
生産活動における環境の利用への価格づけ(価格割当)
企業行動
税率 t が与えられれば企業は限界削減費用が t となるような排出量e を合理的に選択
(税支払い額+削減費用を最小化)
A税支払い額B削減費用 t
e
金額
排出量
MAC
A B o
6
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したがって
最適排出水準 e に対応する限界削減費用 t が
最適税率となることがわかる
62 ピグー税(2)
最適ピグー税率
t
e 排出量
MAC MEC
o
t
e
金額
排出量
MAC
o ersquo
排出量がersquoの場合
t
e
金額
排出量
MAC
o
排出量がersquorsquoの場合
ersquorsquo
e以外の排出量を選択すると企業にとっての費用が増す
金額
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62 ピグー税(3)
ピグー税は複数の汚染者について自動的に限界費用の均等化(限界費用=税率)をもたらすという点で直接規制よりも優れている
既存の税をピグー税に置き換えることにより汚染の減少既存の税のもたらす死荷重の緩和という2つのメリットを同時に達成する(二重の配当)
地球環境問題のような不特定多数の排出源が存在する場合の規制にふさわしい手段
しかし最適税率を決定する際に必要な情報量は莫大であり企業からの抵抗もあることから厳密な意味でのピグー税という手段が現実に用いられたことはない現実の税政策としてごみ有料化産業廃棄物税などがあるがこれらの税率は低すぎるので単なる財源調達手段とみなされる
削減目標を適当に定め試行錯誤的に税率を変更することにより目標を最小費用で達成しようとするボーモル=オーツ税のほうが現実的
税金のかわりに削減量1単位あたりの補助金を企業に与えるという政策も考えられる
8
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62 ピグー税(4)
簡単な数式による表現
企業
企業 i の排出量を xi とおき とおく
利益Bi(xi) Birsquo gt 0 Birsquorsquo lt 0被害D(x) Drsquo gt 0 Drsquorsquo gt 0
社会的に最適な排出量の決定
最大化のための1階条件は
この式をみたすxi をxiとおき とおくと
ここでピグー税率を t とする
企業の利益は となりこれを最大化するxi をxiとおくと
よって とおけば最適になる
9
(限界削減費用均等化)
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デポジット制度のメカニズム
OP 飲料の価格
DDrsquo 飲料の需要曲線PPrsquo 供給曲線
PT 投棄される容器1つあたりの外部費用(一定とする)
PQとPPrsquoの垂直距離 容器の限界回収費用
TTrsquo 飲料の社会的限界費用(使用済み容器が投棄される場合)
63 デポジット制度(1)
税補助金制度を組み合わせた政策としてデポジット制度(またはデポジットリファンド制度預託金払戻制度)がある
デポジット制度使用済み飲料容器の投棄行為による環境悪化を規制するために飲料の価格に一定の預り金(デポジット)を上乗せして容器を所定の場所に返却した人にデポジットを払い戻す制度
10
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
限界回収費用
Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
社会全体の利益
i) a+b-d
ii) a+b
iii) a+b+c (これが社会的最適)
デポジット制度の利点
投棄行為を監視する必要がない
デポジットを上下させて投棄量をコントロールできる
63 デポジット制度(2)
消費者の合理的行動を考えると
i) 規制なしのとき OC消費しすべて投棄
ii) PTのデポジットを課すとき OB消費しすべて投棄
iii) さらに回収した人にデポジットを返却するとき OB消費しOA回収
11
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
B C A
a b
c d Trsquo
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(1)
政府が汚染物質の排出に権利を与え一定の排出権(クレジット排出許可証)を発行し各企業に割り当てる(ここまでは直接規制と同じ)
企業の排出権の売買を許容する
rarr 排出権の市場ができ排出権価格が決定され取引が行われる
排出量の上限(キャップ)が決まり総量規制がなされる(数量割当)
排出量
Aの限界削減費用
このような取引はキャップアンドトレード方式と呼ばれる
wA wB 排出権の割り当て
(初期配分排出枠)
e = wA+wB
初期配分においてはAの限界削減費用がBよりも高い
rarr 取引の機会
金額 MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
wA wB
金額
Bの限界削減費用
12
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(2)
排出権価格が限界削減費用より低ければ排出権を買うほうが得
排出権価格が限界削減費用より高ければ排出権を売るほうが得
ある価格のもとでAは排出権の需要者Bは供給者になり排出量取引が生じる rarr このような取引は両者の限界削減費用が等しくなるまで続く
排出権の均衡価格 p は限界削減費用に等しくなる
MACA
MACB
oA oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
p
eA eB
取引量
eA-wA
=wB-eB
排出権価格
13
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
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65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
5
61 直接規制(4)
直接規制を適切に行うためには政府が限界削減費用限界外部費用についての情報を持っていなければならない
地球温暖化など汚染者が不特定多数存在する場合には限界費用均等化原理がみたされることは期待できず効率的な規制を行うことは困難であるまた規制を遵守しているかどうかを監視(モニター)するための行政費用もかかる
特定の企業が規制を戦略的に利用しようとして政府にロビイングを行うことがある
技術指定型の規制の場合企業の削減技術開発への誘因を損なう可能性がある
近年では直接規制の形態として政府と企業との交渉によって規制がデザインされる自主的取り組み(片務的公約自主協定公的自主計画)が一般的になっている
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(1)
最適な(効率的な)排出水準における限界削減費用(=限界外部費用)を排出量1単位あたりの税金として課す政策をピグー税とよぶ
生産活動における環境の利用への価格づけ(価格割当)
企業行動
税率 t が与えられれば企業は限界削減費用が t となるような排出量e を合理的に選択
(税支払い額+削減費用を最小化)
A税支払い額B削減費用 t
e
金額
排出量
MAC
A B o
6
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
したがって
最適排出水準 e に対応する限界削減費用 t が
最適税率となることがわかる
62 ピグー税(2)
最適ピグー税率
t
e 排出量
MAC MEC
o
t
e
金額
排出量
MAC
o ersquo
排出量がersquoの場合
t
e
金額
排出量
MAC
o
排出量がersquorsquoの場合
ersquorsquo
e以外の排出量を選択すると企業にとっての費用が増す
金額
7
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(3)
ピグー税は複数の汚染者について自動的に限界費用の均等化(限界費用=税率)をもたらすという点で直接規制よりも優れている
既存の税をピグー税に置き換えることにより汚染の減少既存の税のもたらす死荷重の緩和という2つのメリットを同時に達成する(二重の配当)
地球環境問題のような不特定多数の排出源が存在する場合の規制にふさわしい手段
しかし最適税率を決定する際に必要な情報量は莫大であり企業からの抵抗もあることから厳密な意味でのピグー税という手段が現実に用いられたことはない現実の税政策としてごみ有料化産業廃棄物税などがあるがこれらの税率は低すぎるので単なる財源調達手段とみなされる
削減目標を適当に定め試行錯誤的に税率を変更することにより目標を最小費用で達成しようとするボーモル=オーツ税のほうが現実的
税金のかわりに削減量1単位あたりの補助金を企業に与えるという政策も考えられる
8
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(4)
簡単な数式による表現
企業
企業 i の排出量を xi とおき とおく
利益Bi(xi) Birsquo gt 0 Birsquorsquo lt 0被害D(x) Drsquo gt 0 Drsquorsquo gt 0
社会的に最適な排出量の決定
最大化のための1階条件は
この式をみたすxi をxiとおき とおくと
ここでピグー税率を t とする
企業の利益は となりこれを最大化するxi をxiとおくと
よって とおけば最適になる
9
(限界削減費用均等化)
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
デポジット制度のメカニズム
OP 飲料の価格
DDrsquo 飲料の需要曲線PPrsquo 供給曲線
PT 投棄される容器1つあたりの外部費用(一定とする)
PQとPPrsquoの垂直距離 容器の限界回収費用
TTrsquo 飲料の社会的限界費用(使用済み容器が投棄される場合)
63 デポジット制度(1)
税補助金制度を組み合わせた政策としてデポジット制度(またはデポジットリファンド制度預託金払戻制度)がある
デポジット制度使用済み飲料容器の投棄行為による環境悪化を規制するために飲料の価格に一定の預り金(デポジット)を上乗せして容器を所定の場所に返却した人にデポジットを払い戻す制度
10
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
限界回収費用
Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
社会全体の利益
i) a+b-d
ii) a+b
iii) a+b+c (これが社会的最適)
デポジット制度の利点
投棄行為を監視する必要がない
デポジットを上下させて投棄量をコントロールできる
63 デポジット制度(2)
消費者の合理的行動を考えると
i) 規制なしのとき OC消費しすべて投棄
ii) PTのデポジットを課すとき OB消費しすべて投棄
iii) さらに回収した人にデポジットを返却するとき OB消費しOA回収
11
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
B C A
a b
c d Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(1)
政府が汚染物質の排出に権利を与え一定の排出権(クレジット排出許可証)を発行し各企業に割り当てる(ここまでは直接規制と同じ)
企業の排出権の売買を許容する
rarr 排出権の市場ができ排出権価格が決定され取引が行われる
排出量の上限(キャップ)が決まり総量規制がなされる(数量割当)
排出量
Aの限界削減費用
このような取引はキャップアンドトレード方式と呼ばれる
wA wB 排出権の割り当て
(初期配分排出枠)
e = wA+wB
初期配分においてはAの限界削減費用がBよりも高い
rarr 取引の機会
金額 MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
wA wB
金額
Bの限界削減費用
12
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(2)
排出権価格が限界削減費用より低ければ排出権を買うほうが得
排出権価格が限界削減費用より高ければ排出権を売るほうが得
ある価格のもとでAは排出権の需要者Bは供給者になり排出量取引が生じる rarr このような取引は両者の限界削減費用が等しくなるまで続く
排出権の均衡価格 p は限界削減費用に等しくなる
MACA
MACB
oA oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
p
eA eB
取引量
eA-wA
=wB-eB
排出権価格
13
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
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oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
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66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
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66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
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62 ピグー税(1)
最適な(効率的な)排出水準における限界削減費用(=限界外部費用)を排出量1単位あたりの税金として課す政策をピグー税とよぶ
生産活動における環境の利用への価格づけ(価格割当)
企業行動
税率 t が与えられれば企業は限界削減費用が t となるような排出量e を合理的に選択
(税支払い額+削減費用を最小化)
A税支払い額B削減費用 t
e
金額
排出量
MAC
A B o
6
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
したがって
最適排出水準 e に対応する限界削減費用 t が
最適税率となることがわかる
62 ピグー税(2)
最適ピグー税率
t
e 排出量
MAC MEC
o
t
e
金額
排出量
MAC
o ersquo
排出量がersquoの場合
t
e
金額
排出量
MAC
o
排出量がersquorsquoの場合
ersquorsquo
e以外の排出量を選択すると企業にとっての費用が増す
金額
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62 ピグー税(3)
ピグー税は複数の汚染者について自動的に限界費用の均等化(限界費用=税率)をもたらすという点で直接規制よりも優れている
既存の税をピグー税に置き換えることにより汚染の減少既存の税のもたらす死荷重の緩和という2つのメリットを同時に達成する(二重の配当)
地球環境問題のような不特定多数の排出源が存在する場合の規制にふさわしい手段
しかし最適税率を決定する際に必要な情報量は莫大であり企業からの抵抗もあることから厳密な意味でのピグー税という手段が現実に用いられたことはない現実の税政策としてごみ有料化産業廃棄物税などがあるがこれらの税率は低すぎるので単なる財源調達手段とみなされる
削減目標を適当に定め試行錯誤的に税率を変更することにより目標を最小費用で達成しようとするボーモル=オーツ税のほうが現実的
税金のかわりに削減量1単位あたりの補助金を企業に与えるという政策も考えられる
8
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(4)
簡単な数式による表現
企業
企業 i の排出量を xi とおき とおく
利益Bi(xi) Birsquo gt 0 Birsquorsquo lt 0被害D(x) Drsquo gt 0 Drsquorsquo gt 0
社会的に最適な排出量の決定
最大化のための1階条件は
この式をみたすxi をxiとおき とおくと
ここでピグー税率を t とする
企業の利益は となりこれを最大化するxi をxiとおくと
よって とおけば最適になる
9
(限界削減費用均等化)
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
デポジット制度のメカニズム
OP 飲料の価格
DDrsquo 飲料の需要曲線PPrsquo 供給曲線
PT 投棄される容器1つあたりの外部費用(一定とする)
PQとPPrsquoの垂直距離 容器の限界回収費用
TTrsquo 飲料の社会的限界費用(使用済み容器が投棄される場合)
63 デポジット制度(1)
税補助金制度を組み合わせた政策としてデポジット制度(またはデポジットリファンド制度預託金払戻制度)がある
デポジット制度使用済み飲料容器の投棄行為による環境悪化を規制するために飲料の価格に一定の預り金(デポジット)を上乗せして容器を所定の場所に返却した人にデポジットを払い戻す制度
10
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
限界回収費用
Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
社会全体の利益
i) a+b-d
ii) a+b
iii) a+b+c (これが社会的最適)
デポジット制度の利点
投棄行為を監視する必要がない
デポジットを上下させて投棄量をコントロールできる
63 デポジット制度(2)
消費者の合理的行動を考えると
i) 規制なしのとき OC消費しすべて投棄
ii) PTのデポジットを課すとき OB消費しすべて投棄
iii) さらに回収した人にデポジットを返却するとき OB消費しOA回収
11
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
B C A
a b
c d Trsquo
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(1)
政府が汚染物質の排出に権利を与え一定の排出権(クレジット排出許可証)を発行し各企業に割り当てる(ここまでは直接規制と同じ)
企業の排出権の売買を許容する
rarr 排出権の市場ができ排出権価格が決定され取引が行われる
排出量の上限(キャップ)が決まり総量規制がなされる(数量割当)
排出量
Aの限界削減費用
このような取引はキャップアンドトレード方式と呼ばれる
wA wB 排出権の割り当て
(初期配分排出枠)
e = wA+wB
初期配分においてはAの限界削減費用がBよりも高い
rarr 取引の機会
金額 MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
wA wB
金額
Bの限界削減費用
12
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(2)
排出権価格が限界削減費用より低ければ排出権を買うほうが得
排出権価格が限界削減費用より高ければ排出権を売るほうが得
ある価格のもとでAは排出権の需要者Bは供給者になり排出量取引が生じる rarr このような取引は両者の限界削減費用が等しくなるまで続く
排出権の均衡価格 p は限界削減費用に等しくなる
MACA
MACB
oA oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
p
eA eB
取引量
eA-wA
=wB-eB
排出権価格
13
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
したがって
最適排出水準 e に対応する限界削減費用 t が
最適税率となることがわかる
62 ピグー税(2)
最適ピグー税率
t
e 排出量
MAC MEC
o
t
e
金額
排出量
MAC
o ersquo
排出量がersquoの場合
t
e
金額
排出量
MAC
o
排出量がersquorsquoの場合
ersquorsquo
e以外の排出量を選択すると企業にとっての費用が増す
金額
7
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(3)
ピグー税は複数の汚染者について自動的に限界費用の均等化(限界費用=税率)をもたらすという点で直接規制よりも優れている
既存の税をピグー税に置き換えることにより汚染の減少既存の税のもたらす死荷重の緩和という2つのメリットを同時に達成する(二重の配当)
地球環境問題のような不特定多数の排出源が存在する場合の規制にふさわしい手段
しかし最適税率を決定する際に必要な情報量は莫大であり企業からの抵抗もあることから厳密な意味でのピグー税という手段が現実に用いられたことはない現実の税政策としてごみ有料化産業廃棄物税などがあるがこれらの税率は低すぎるので単なる財源調達手段とみなされる
削減目標を適当に定め試行錯誤的に税率を変更することにより目標を最小費用で達成しようとするボーモル=オーツ税のほうが現実的
税金のかわりに削減量1単位あたりの補助金を企業に与えるという政策も考えられる
8
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(4)
簡単な数式による表現
企業
企業 i の排出量を xi とおき とおく
利益Bi(xi) Birsquo gt 0 Birsquorsquo lt 0被害D(x) Drsquo gt 0 Drsquorsquo gt 0
社会的に最適な排出量の決定
最大化のための1階条件は
この式をみたすxi をxiとおき とおくと
ここでピグー税率を t とする
企業の利益は となりこれを最大化するxi をxiとおくと
よって とおけば最適になる
9
(限界削減費用均等化)
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
デポジット制度のメカニズム
OP 飲料の価格
DDrsquo 飲料の需要曲線PPrsquo 供給曲線
PT 投棄される容器1つあたりの外部費用(一定とする)
PQとPPrsquoの垂直距離 容器の限界回収費用
TTrsquo 飲料の社会的限界費用(使用済み容器が投棄される場合)
63 デポジット制度(1)
税補助金制度を組み合わせた政策としてデポジット制度(またはデポジットリファンド制度預託金払戻制度)がある
デポジット制度使用済み飲料容器の投棄行為による環境悪化を規制するために飲料の価格に一定の預り金(デポジット)を上乗せして容器を所定の場所に返却した人にデポジットを払い戻す制度
10
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
限界回収費用
Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
社会全体の利益
i) a+b-d
ii) a+b
iii) a+b+c (これが社会的最適)
デポジット制度の利点
投棄行為を監視する必要がない
デポジットを上下させて投棄量をコントロールできる
63 デポジット制度(2)
消費者の合理的行動を考えると
i) 規制なしのとき OC消費しすべて投棄
ii) PTのデポジットを課すとき OB消費しすべて投棄
iii) さらに回収した人にデポジットを返却するとき OB消費しOA回収
11
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
B C A
a b
c d Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(1)
政府が汚染物質の排出に権利を与え一定の排出権(クレジット排出許可証)を発行し各企業に割り当てる(ここまでは直接規制と同じ)
企業の排出権の売買を許容する
rarr 排出権の市場ができ排出権価格が決定され取引が行われる
排出量の上限(キャップ)が決まり総量規制がなされる(数量割当)
排出量
Aの限界削減費用
このような取引はキャップアンドトレード方式と呼ばれる
wA wB 排出権の割り当て
(初期配分排出枠)
e = wA+wB
初期配分においてはAの限界削減費用がBよりも高い
rarr 取引の機会
金額 MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
wA wB
金額
Bの限界削減費用
12
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(2)
排出権価格が限界削減費用より低ければ排出権を買うほうが得
排出権価格が限界削減費用より高ければ排出権を売るほうが得
ある価格のもとでAは排出権の需要者Bは供給者になり排出量取引が生じる rarr このような取引は両者の限界削減費用が等しくなるまで続く
排出権の均衡価格 p は限界削減費用に等しくなる
MACA
MACB
oA oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
p
eA eB
取引量
eA-wA
=wB-eB
排出権価格
13
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
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66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
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66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
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25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
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62 ピグー税(3)
ピグー税は複数の汚染者について自動的に限界費用の均等化(限界費用=税率)をもたらすという点で直接規制よりも優れている
既存の税をピグー税に置き換えることにより汚染の減少既存の税のもたらす死荷重の緩和という2つのメリットを同時に達成する(二重の配当)
地球環境問題のような不特定多数の排出源が存在する場合の規制にふさわしい手段
しかし最適税率を決定する際に必要な情報量は莫大であり企業からの抵抗もあることから厳密な意味でのピグー税という手段が現実に用いられたことはない現実の税政策としてごみ有料化産業廃棄物税などがあるがこれらの税率は低すぎるので単なる財源調達手段とみなされる
削減目標を適当に定め試行錯誤的に税率を変更することにより目標を最小費用で達成しようとするボーモル=オーツ税のほうが現実的
税金のかわりに削減量1単位あたりの補助金を企業に与えるという政策も考えられる
8
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(4)
簡単な数式による表現
企業
企業 i の排出量を xi とおき とおく
利益Bi(xi) Birsquo gt 0 Birsquorsquo lt 0被害D(x) Drsquo gt 0 Drsquorsquo gt 0
社会的に最適な排出量の決定
最大化のための1階条件は
この式をみたすxi をxiとおき とおくと
ここでピグー税率を t とする
企業の利益は となりこれを最大化するxi をxiとおくと
よって とおけば最適になる
9
(限界削減費用均等化)
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
デポジット制度のメカニズム
OP 飲料の価格
DDrsquo 飲料の需要曲線PPrsquo 供給曲線
PT 投棄される容器1つあたりの外部費用(一定とする)
PQとPPrsquoの垂直距離 容器の限界回収費用
TTrsquo 飲料の社会的限界費用(使用済み容器が投棄される場合)
63 デポジット制度(1)
税補助金制度を組み合わせた政策としてデポジット制度(またはデポジットリファンド制度預託金払戻制度)がある
デポジット制度使用済み飲料容器の投棄行為による環境悪化を規制するために飲料の価格に一定の預り金(デポジット)を上乗せして容器を所定の場所に返却した人にデポジットを払い戻す制度
10
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
限界回収費用
Trsquo
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社会全体の利益
i) a+b-d
ii) a+b
iii) a+b+c (これが社会的最適)
デポジット制度の利点
投棄行為を監視する必要がない
デポジットを上下させて投棄量をコントロールできる
63 デポジット制度(2)
消費者の合理的行動を考えると
i) 規制なしのとき OC消費しすべて投棄
ii) PTのデポジットを課すとき OB消費しすべて投棄
iii) さらに回収した人にデポジットを返却するとき OB消費しOA回収
11
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
B C A
a b
c d Trsquo
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(1)
政府が汚染物質の排出に権利を与え一定の排出権(クレジット排出許可証)を発行し各企業に割り当てる(ここまでは直接規制と同じ)
企業の排出権の売買を許容する
rarr 排出権の市場ができ排出権価格が決定され取引が行われる
排出量の上限(キャップ)が決まり総量規制がなされる(数量割当)
排出量
Aの限界削減費用
このような取引はキャップアンドトレード方式と呼ばれる
wA wB 排出権の割り当て
(初期配分排出枠)
e = wA+wB
初期配分においてはAの限界削減費用がBよりも高い
rarr 取引の機会
金額 MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
wA wB
金額
Bの限界削減費用
12
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(2)
排出権価格が限界削減費用より低ければ排出権を買うほうが得
排出権価格が限界削減費用より高ければ排出権を売るほうが得
ある価格のもとでAは排出権の需要者Bは供給者になり排出量取引が生じる rarr このような取引は両者の限界削減費用が等しくなるまで続く
排出権の均衡価格 p は限界削減費用に等しくなる
MACA
MACB
oA oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
p
eA eB
取引量
eA-wA
=wB-eB
排出権価格
13
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
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64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
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65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
62 ピグー税(4)
簡単な数式による表現
企業
企業 i の排出量を xi とおき とおく
利益Bi(xi) Birsquo gt 0 Birsquorsquo lt 0被害D(x) Drsquo gt 0 Drsquorsquo gt 0
社会的に最適な排出量の決定
最大化のための1階条件は
この式をみたすxi をxiとおき とおくと
ここでピグー税率を t とする
企業の利益は となりこれを最大化するxi をxiとおくと
よって とおけば最適になる
9
(限界削減費用均等化)
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
デポジット制度のメカニズム
OP 飲料の価格
DDrsquo 飲料の需要曲線PPrsquo 供給曲線
PT 投棄される容器1つあたりの外部費用(一定とする)
PQとPPrsquoの垂直距離 容器の限界回収費用
TTrsquo 飲料の社会的限界費用(使用済み容器が投棄される場合)
63 デポジット制度(1)
税補助金制度を組み合わせた政策としてデポジット制度(またはデポジットリファンド制度預託金払戻制度)がある
デポジット制度使用済み飲料容器の投棄行為による環境悪化を規制するために飲料の価格に一定の預り金(デポジット)を上乗せして容器を所定の場所に返却した人にデポジットを払い戻す制度
10
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
限界回収費用
Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
社会全体の利益
i) a+b-d
ii) a+b
iii) a+b+c (これが社会的最適)
デポジット制度の利点
投棄行為を監視する必要がない
デポジットを上下させて投棄量をコントロールできる
63 デポジット制度(2)
消費者の合理的行動を考えると
i) 規制なしのとき OC消費しすべて投棄
ii) PTのデポジットを課すとき OB消費しすべて投棄
iii) さらに回収した人にデポジットを返却するとき OB消費しOA回収
11
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
B C A
a b
c d Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(1)
政府が汚染物質の排出に権利を与え一定の排出権(クレジット排出許可証)を発行し各企業に割り当てる(ここまでは直接規制と同じ)
企業の排出権の売買を許容する
rarr 排出権の市場ができ排出権価格が決定され取引が行われる
排出量の上限(キャップ)が決まり総量規制がなされる(数量割当)
排出量
Aの限界削減費用
このような取引はキャップアンドトレード方式と呼ばれる
wA wB 排出権の割り当て
(初期配分排出枠)
e = wA+wB
初期配分においてはAの限界削減費用がBよりも高い
rarr 取引の機会
金額 MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
wA wB
金額
Bの限界削減費用
12
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(2)
排出権価格が限界削減費用より低ければ排出権を買うほうが得
排出権価格が限界削減費用より高ければ排出権を売るほうが得
ある価格のもとでAは排出権の需要者Bは供給者になり排出量取引が生じる rarr このような取引は両者の限界削減費用が等しくなるまで続く
排出権の均衡価格 p は限界削減費用に等しくなる
MACA
MACB
oA oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
p
eA eB
取引量
eA-wA
=wB-eB
排出権価格
13
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
デポジット制度のメカニズム
OP 飲料の価格
DDrsquo 飲料の需要曲線PPrsquo 供給曲線
PT 投棄される容器1つあたりの外部費用(一定とする)
PQとPPrsquoの垂直距離 容器の限界回収費用
TTrsquo 飲料の社会的限界費用(使用済み容器が投棄される場合)
63 デポジット制度(1)
税補助金制度を組み合わせた政策としてデポジット制度(またはデポジットリファンド制度預託金払戻制度)がある
デポジット制度使用済み飲料容器の投棄行為による環境悪化を規制するために飲料の価格に一定の預り金(デポジット)を上乗せして容器を所定の場所に返却した人にデポジットを払い戻す制度
10
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
限界回収費用
Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
社会全体の利益
i) a+b-d
ii) a+b
iii) a+b+c (これが社会的最適)
デポジット制度の利点
投棄行為を監視する必要がない
デポジットを上下させて投棄量をコントロールできる
63 デポジット制度(2)
消費者の合理的行動を考えると
i) 規制なしのとき OC消費しすべて投棄
ii) PTのデポジットを課すとき OB消費しすべて投棄
iii) さらに回収した人にデポジットを返却するとき OB消費しOA回収
11
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
B C A
a b
c d Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(1)
政府が汚染物質の排出に権利を与え一定の排出権(クレジット排出許可証)を発行し各企業に割り当てる(ここまでは直接規制と同じ)
企業の排出権の売買を許容する
rarr 排出権の市場ができ排出権価格が決定され取引が行われる
排出量の上限(キャップ)が決まり総量規制がなされる(数量割当)
排出量
Aの限界削減費用
このような取引はキャップアンドトレード方式と呼ばれる
wA wB 排出権の割り当て
(初期配分排出枠)
e = wA+wB
初期配分においてはAの限界削減費用がBよりも高い
rarr 取引の機会
金額 MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
wA wB
金額
Bの限界削減費用
12
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(2)
排出権価格が限界削減費用より低ければ排出権を買うほうが得
排出権価格が限界削減費用より高ければ排出権を売るほうが得
ある価格のもとでAは排出権の需要者Bは供給者になり排出量取引が生じる rarr このような取引は両者の限界削減費用が等しくなるまで続く
排出権の均衡価格 p は限界削減費用に等しくなる
MACA
MACB
oA oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
p
eA eB
取引量
eA-wA
=wB-eB
排出権価格
13
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
社会全体の利益
i) a+b-d
ii) a+b
iii) a+b+c (これが社会的最適)
デポジット制度の利点
投棄行為を監視する必要がない
デポジットを上下させて投棄量をコントロールできる
63 デポジット制度(2)
消費者の合理的行動を考えると
i) 規制なしのとき OC消費しすべて投棄
ii) PTのデポジットを課すとき OB消費しすべて投棄
iii) さらに回収した人にデポジットを返却するとき OB消費しOA回収
11
O
金額
数量
P Prsquo
Q
Drsquo
D
T
B C A
a b
c d Trsquo
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(1)
政府が汚染物質の排出に権利を与え一定の排出権(クレジット排出許可証)を発行し各企業に割り当てる(ここまでは直接規制と同じ)
企業の排出権の売買を許容する
rarr 排出権の市場ができ排出権価格が決定され取引が行われる
排出量の上限(キャップ)が決まり総量規制がなされる(数量割当)
排出量
Aの限界削減費用
このような取引はキャップアンドトレード方式と呼ばれる
wA wB 排出権の割り当て
(初期配分排出枠)
e = wA+wB
初期配分においてはAの限界削減費用がBよりも高い
rarr 取引の機会
金額 MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
wA wB
金額
Bの限界削減費用
12
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(2)
排出権価格が限界削減費用より低ければ排出権を買うほうが得
排出権価格が限界削減費用より高ければ排出権を売るほうが得
ある価格のもとでAは排出権の需要者Bは供給者になり排出量取引が生じる rarr このような取引は両者の限界削減費用が等しくなるまで続く
排出権の均衡価格 p は限界削減費用に等しくなる
MACA
MACB
oA oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
p
eA eB
取引量
eA-wA
=wB-eB
排出権価格
13
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(1)
政府が汚染物質の排出に権利を与え一定の排出権(クレジット排出許可証)を発行し各企業に割り当てる(ここまでは直接規制と同じ)
企業の排出権の売買を許容する
rarr 排出権の市場ができ排出権価格が決定され取引が行われる
排出量の上限(キャップ)が決まり総量規制がなされる(数量割当)
排出量
Aの限界削減費用
このような取引はキャップアンドトレード方式と呼ばれる
wA wB 排出権の割り当て
(初期配分排出枠)
e = wA+wB
初期配分においてはAの限界削減費用がBよりも高い
rarr 取引の機会
金額 MACA
MACB
oA oB
総排出量目標 e
wA wB
金額
Bの限界削減費用
12
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(2)
排出権価格が限界削減費用より低ければ排出権を買うほうが得
排出権価格が限界削減費用より高ければ排出権を売るほうが得
ある価格のもとでAは排出権の需要者Bは供給者になり排出量取引が生じる rarr このような取引は両者の限界削減費用が等しくなるまで続く
排出権の均衡価格 p は限界削減費用に等しくなる
MACA
MACB
oA oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
p
eA eB
取引量
eA-wA
=wB-eB
排出権価格
13
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(2)
排出権価格が限界削減費用より低ければ排出権を買うほうが得
排出権価格が限界削減費用より高ければ排出権を売るほうが得
ある価格のもとでAは排出権の需要者Bは供給者になり排出量取引が生じる rarr このような取引は両者の限界削減費用が等しくなるまで続く
排出権の均衡価格 p は限界削減費用に等しくなる
MACA
MACB
oA oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
p
eA eB
取引量
eA-wA
=wB-eB
排出権価格
13
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(3)
Aの費用
a+b rarr
a+b-c
cだけ減少
Bの費用
d rarr d+f-
(e+f)=d-e
eだけ減少
両者とも取引によって得をする
14
d
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(4)
排出権がどのように配分されても公正な取引が行われれば各企業の限界費用は排出権価格に等しくなり限界費用均等化原理が成り立つ排出権の均衡価格は最適ピグー税率と一致する
初期配分に関係なく効率性はみたされるが各企業の利益は初期配分に依存するので衡平性は保証されない
キャップアンドトレード方式の排出量取引が成功した例としてアメリカ国内での二酸化硫黄があげられる
またCO2排出量取引がEU域内米国カナダの一部において実施され日本やオーストラリアでの導入が検討されている
排出量取引は目標としたい規制水準がはっきりしているとき有効
問題点排出権総量初期配分の決定方法市場における不完全競争排出量遵守のためのモニタリングにかかる費用
15
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
64 排出量取引ーキャップアンドトレード(5)
数式による表現
企業 利益 Bi(xi)
企業 i の排出量を xi とおき初期配分を とおく
さらに排出権価格を p とおくと企業 i の総利益は
をみたす xi を とおく
をみたすpが均衡価格
均衡においては
限界削減費用の均等化が達成される
16
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
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oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
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66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
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25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
65 ベースラインアンドクレジット(1)
排出量取引には削減プロジェクトの削減効果を排出権として認証するベースラインアンドクレジット方式という形態もある
例京都議定書の共同実施(JI)先進国同士の共同プロジェクトでCO2を削減し投資国が削減分の排出権を得る
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国がCO2削減プロジェクトを途上国において実施し削減分の排出権を得る cf 経済産業省の国内CDM
MACA
MACB
oA oB
e
wA wB
Bには削減義務がない
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
B国での削
減によってA国が得る排出権
ACDM投資国BCDMホスト国
A国の技術を
用いた場合の限界削減費用
17
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
oA
65 ベースラインアンドクレジット(2)
Aの費用 a+b rarr b aだけ減少
Bの費用 変化なし(長期的には技術獲得によるメリットがある)
ここに示したのは極端な例であり個々のCDMプロジェクトによる削減は小さいまたAがBに対していくらか排出権価格を支払うことも考えられる
問題点プロジェクト効果の認証(追加性)
MACA
MACB
oB wA wB
MACA
MACB
oA oB wA wB
eA eB
b b
a a
18
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(1)
限界削減費用と限界外部費用が既知の場合税政策と排出量取引(総量規制)政策は同じ効率的な結果を導く
ピグー税率 t により排出量 e が達成される
初期配分 e により排出権価格 t が決定される
金額
排出量
MAC
MEC
o e
19
しかし不確実性が存在する場合効率的な状態を単一の政策で達成することができず両政策の効果は異なる
以下では政府がもつ企業の限界削減費用についての情報が不確実である場合について説明する(Weitzmanの議論)
t
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
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MACL
MACH
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eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
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66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(2)
限界削減費用がMACHMACLである確率がそれぞれ12であるとしその平均がMACであるとする
税政策の場合政府は税率 t のピグー税を課す
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
eL eH eL eH
20
限界削減費用がMACHならば
税率tHによりeH
という排出量
を実現するのが最適であるが実現される排出量はeH
同様にMACLならば税率tLに
よりeLという排出量を実現する
のが最適であるが実現される排出量はeL
2つの赤い領域の面積の平均が損失(の期待値)
tH
tL
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66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
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66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
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25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(3)
排出量取引政策の場合政府はeの排出量に相当する排出権を発行し企業に配分する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o e eL eH
21
限界削減費用がMACHならば
実現される排出権価格はtH
限界削減費用がMACLならば実現される排出権価格はtL
2つの紫の領域の面積の平均が損失の期待値
tH
tL
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
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25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(4)
どちらの政策が望ましいかは限界削減費用曲線限界外部費用曲線の相対的な傾きに依存する
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
t
e
22
限界外部費用曲線の傾きが急のとき
図からわかるように排出量取引政策のほうが望ましい
(税政策の場合汚染排出量が大きく変動し甚大な被害が発生するリスクがある)
eL eH
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
s
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
66 環境政策の比較(5)
23
限界外部費用曲線の傾きが緩やかなとき
税政策のほうが望ましい
(排出量取引政策の場合排出権価格のズレにより大きな非効率性が生じる)
金額
排出量
MAC
MEC MACL
MACH
o
t
e eL eH
閾値を越えると深刻な被害が発生するような汚染 rarr 排出量取引
限界外部費用がほぼ一定の汚染 rarr ピグー税
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
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25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
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67 環境政策の併用
不確実性が存在するとき単一の政策では必ず非効率が生じてしまう
そこで数量規制と税政策の併用を考える規制対象は1つの企業とし排出量取引は考慮しない(限界削減費用はMACHMACLの2通りで政府にとっては不確実)
24
政府はまずeの排出を命じるそして実現された排出量がeより大きいとき超過分1単位あたりpの税を課す逆にeより小さいとき削減分1単位当たりsの補助金を支払う
このルールのもとで企業の限界削減費用がMACHならば排出量eH
が選択されMACLならばeL
が選択さ
れるので効率性が達成される(Roberts and Spenceの議論)
金額
排出量
MAC
MEC
MACL
MACH
o
p
e eL eH
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25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82
Kyushu University UI project Kyudai Taro2007
25
参考図書
直接規制
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社第8章pp 145-151
ピグー税デポジット制度
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 153-164 pp 172-176
細田衛士横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ第7章pp165-170
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』勁草書房第4章pp 67-74
排出量取引
柴田弘文『環境経済学』第9章pp 176-184
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 74-79
環境政策の比較環境政策の併用
コルスタッド『環境経済学入門』第2版有斐閣第10章 pp 193-202
時政薮田今泉有吉『環境と資源の経済学』第4章pp 79-82