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生体エネルギー代謝第 5 回配布資料(1) 糖の化学構造の確立者 → エミル・フィッシャー(1902)→ 六炭糖の精製 光学異性体の構造決定 グルコースの重合体 <マルトース:Maltoseα1→4結合 <アミロース:Amylose とアミロペクチン:Amylopectin> α1→4結合体、α1→6結合体 *グリコーゲン(glycogen)は 分岐構造の非常に多いアミロペ クチンである 1

生体エネルギー代謝第 5 - 関西学院大学sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/.../seitai/bio_energetics5.pdf生体エネルギー代謝第5 回配布資料(1) 糖の化学構造の確立者

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生体エネルギー代謝第 5 回配布資料(1)

糖の化学構造の確立者 → エミル・フィッシャー(1902)→ 六炭糖の精製

光学異性体の構造決定

グルコースの重合体

<マルトース:Maltose> α1→4結合

<アミロース:Amylose とアミロペクチン:Amylopectin> α1→4結合体、α1→6結合体

*グリコーゲン(glycogen)は

分岐構造の非常に多いアミロペ

クチンである

1

<セロビオース:Cellobiose とセルロース:Cellulose>β1→4結合体

<スクロース:Sucrose>

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リン酸エステルとその作用の発見:

酵母におけるアルコール発酵を行う酵素 → チマーゼと命名(エドヴァルド・ブフナー、

1886)

チマーゼ活性促進因子 → 酵母抽出液の熱耐性因子(アーサー・ハーデン、1906)

チマーゼ活性化因子とリン酸の関係 → 酵母抽出液中でリン酸がブドウ糖と結合するこ

とを発見 → フルクトース-1,6-二リン酸の発見 (ハーデン、ウイリアム・ヤング)

その後多くの糖リン酸エステルが発見され、発酵を促進することが示された。

糖代謝とヘキソースリン酸エステル:phosphoglucomutase と phosphoglucoisomerase の反応で相互

変換する六炭糖リン酸エステルプールは生体内に数十マイクロモーラーの比較的低濃度である。

生体内で、ほぼ平衡状態にある

赤血球では[G1P]、[G6P]、[F6P]は約 5、83、14μM である

生体内で、ヘキソースリン酸プールは糖質の同化と異化の両方向への基質となる

解糖系

トリオースリン酸

F6P

ペントースリン酸経路

G6P

ショ糖

でんぷん グリコーゲン

G1P

細胞壁

3

アルコール発酵に関与する糖リン酸エステル(その他)の発見

中間体 発見者(年)

グルコース-1-リン酸(G1P)

グルコース-6-リン酸(G6P)

フルクトース-6-リン酸(F6P)

フルクトース-1,6-二リン酸(F1,6bP)

ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)

グリセルアルデヒド-3-リン酸(GA3P)

1,3-ジホスホグリセリン酸(1,3bPGA)

3-ホスホグリセリン酸(3PGA)

2-ホスホグリセリン酸(2PGA)

ホスホエノールピルビン酸(PEP)

ピルビン酸

アセトアルデヒド

乳酸

コリ夫妻(1936)

ハーデン、ヤング(1914)

ノイベルグ(1918)

ハーデン、ヤング(1908)

エムデン(1933)

マイヤーホフ、ローマン(1934)

フィッシャー(1932)

マイヤーホフ、ローマン(1936)

ネーゲライン、ブルーメル(1939)

ニルソン(1927)、エムデン(1933)

マイヤーホフ、キースリング(1935)

ローマン、マイヤーホフ(1934)

ノイベルグ(1911)

ノイベルグ(1911)

ホッペ=ザイラー(1877)

クロード・ベルナール(1877)

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生体エネルギー代謝第 5 回配布資料(2)

24.解糖系(Glycolysis)

第一段階:グルコースのリン酸エステル化

から 3 炭糖リン酸エステルへの開裂まで

O

H

H

H

H

H

OH

OH

OHOH

CH2OH

1

23

4

5

6

O

H

H

H

H

H

OH

OH

OHOH

P - O - CH2

1

23

4

5

6

O CH2OH

OH

P - O - CH2

OH

OHOH

H

H

O CH2 - O - P

OH

P - O - CH2

OH

OHOH

H

H

1

2

34

5

6

C

O

CH

H

OH

CH2 - O - P6

5

4C

O

CH

H

OH CH2 - O - P1

23

不可逆反応である

不可逆反応である

triosephosphateisomerase

Dihydroxyacetonephosphate (DHAP) Glyceraldehyde-3-phosphate (GA3P)

aldolase (アルドール開裂)

phosphofructokinase

phosphoglucoisomerase

hexokinase

Mn2+

Mn2+

Fructose-1,6-bisphosphate (F1,6bP)

Fructose-6-phosphate (F6P)

Glucose-6-phosphate (G6P)

Glucose

ADP

ADP

ATP

ATP

*トリオースリン酸イソメラーゼの平衡はDHAP 側に片寄っているが、実際の体内環境においては GA3P の量がゼロに近いため、結果として反応は左へ進む。 このステップでC6 は 2×C3 となり反応分子数は倍加する。

*糖リン酸エステルの標準自由エネルギーはもとの糖よりも高い → 活性化されている

5

第二段階:アルデヒドの酸化と超高エネルギーリン酸エステル化合物の生成

C C CH2-O-PO

P-O

H

OH1,3-bisphosphoglycerate

C C CH2-O-P

H

OH

H

OH

H

Glyceraol-3-phosphate

C C C

H

OH

H

OH

H H

H

OH

Glycerol

C

O

CH

H

OH

CH2 - O - P6

5

4C

O

CH

H

OH CH2 - O - P1

23

*この反応はアルデヒド基の酸化である. ・ 通常のアルデヒド基の酸化反応 R‐CHO + H2O → R‐COOH + H- + H+ ・ リン酸エステル化を伴う場合 R‐CHO + HPO4

2- → R‐COOPO32- + H- + H+

ともにΔGo’はとてもマイナスである. * アルデヒド基を酸に変える → 酸化である →

電子 2 個の移動を伴い、非常に発エネルギー的反応

となる. リン酸エステル化を伴う場合、ΔGo’はそ

の分プラスへシフトするが、それを差し引いてもΔ

Go’のマイナス値は非常に大きい. * 生成した 1,3 ビスホスホグリセリン酸(3 ホスホグリ

セロイルリン酸、1,3 ジホスホグリセリン酸)は超高

エネルギーリン酸化合物であり、その加水分解は非

常に大きな自由エネルギーの減少を伴う.

glycerol-3-phosphate dehydrogenase

glycerol kinase

ATP

ADP

NAD+

NADH + H+

glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase

NADH + H+

NAD+ + Pi

DHAP GA3P triosephosphateisomerase

* この経路は、中性脂肪の分

解で生じたグリセリンを解

糖系で代謝する際に働く. * 藻類や昆虫では乾燥や低温

ストレスにさらされた時

に、解糖系の経路からグリ

セリンを多量に作って蓄積

するために機能する.→

凍結障害防止、水分保持

6

第三段階:最初の基質レベルリン酸化と超高エネルギーリン酸化合物の再生成

C C CH2-O-PO

P-O

H

OH1,3-bisphosphoglycerate

H

3-phosphoglycerate kinase

TP

P

超高エネルギーリン酸化合物

1,3-bisphosphoglycerateの加

水分解はΔGo’が‐11.8 kcal / mol に上る.このような自

由エネルギーの大きな放

出を伴う反応を、ADP のリ

ン酸化と共役させる ATP生 産 の 仕 組 み →

基質レベルリン酸化 解糖

A

AD

C C CH2-O-PO

-O OH3-phosphoglycerate (3PGA)

C C CH2OHO

-O

H

O

P

2-phosphoglycerate (2PGA)

C C CO

-O O

P

H

H* も

系最初

enolase

3-phosphoglycerate mutase

PEP は解糖系で作られる

う一つの超高エネルギ

リン酸化合物である.

Phosphoenolpyruvate (PEP)

7

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第四段階:二回目の基質レベルリン酸化

C C CO

-O OH

H

H

enolpyruvate

C C CH3

O

-O OPyruvate

C C CO

-O O

P

H

H

Phosphoenolpyruvate (PEP)

pyruvate kinase

ATP

ADP

超高エネルギーリン酸化合物

* PEP の加水分解はΔGo’が‐14.8 kcal / mol に上る.

→ 解糖系二番目の基質

レベルリン酸化 * 生成するエノールピルビ

ン酸は非常に不安定な分

子で、すぐにピルビン酸に

変化してしまう * 不可逆反応である