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私たちの健康に害があるほどに 空気は汚染されているか? 1

私たちの健康に害があるほどに 空気は汚染されてい …人は1日にどれぐらいの空気を吸っ ているか-成人の場合- 1回呼吸量 500 mL(ミリリットル)

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私たちの健康に害があるほどに空気は汚染されているか?

1

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「空気の安全」について、もう一度考えてみよう

「空気のような存在」とは、・・・・

あらすじ

空気の大切さ

空気を汚染するものと健康への害

微小粒子の健康への害

汚染物質の健康への害の大きさをどのように考えるか

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人は1日にどれぐらいの空気を吸っているか-成人の場合-

1回呼吸量 500 mL(ミリリットル)

呼吸数 20 回/分

1分間の呼吸量 10 L(リットル)

1日の呼吸量 15 m3≒18kg

空気の密度 ≒ 1.2 kg/m3

変動要因

年齢、性、体格(身長、体重)

活動レベル(運動、仕事、睡眠)

疾患の有無(ぜん息、慢性閉塞性肺疾患など)

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空気の成分5

大気汚染物質

大気汚染物質の種類はたくさんあるが、それを全部足し合わせても、普通の状態では、空気全体の0.0001%(1ppm)以下である。

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1 ppm=百万分の1の割合(1m3の中に1cc(mL))

燃焼によって(直接)生ずる汚染物質

一酸化炭素(CO)

二酸化炭素(CO2)

いおう酸化物(SO2、など)

窒素酸化物(NO、NO2、など)

粒子状物質(ディーゼル黒煙、ばい煙など)

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大気中で二次的にできる汚染物質

オキシダント(オゾン、など)

二次粒子

窒素酸化物やいおう酸化物などのガス状汚染物質が、さまざまな物理的、化学的な過程によって粒子化して生成する。

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NO2 NO NO2

O3

O3

O3

O3

O3

O3

O2

O

非メタン炭化水素

非メタン炭化水素の酸化物

光化学反応

光化学反応

微小粒子状物質

揮発性有機化合物

窒素酸化物

ディーゼル粒子いおう酸化物

オゾン

自然発生源 人為発生源

オゾン10

成層圏のオゾンは地球上の生物を太陽の紫外線の害から守っている。

地表付近のオゾンは健康に害がある。

オゾンの健康に対する害

オゾンは強い酸化力を持っている。

眼や粘膜を刺激する

呼吸器に炎症を起こす

呼吸器症状を悪化させたり、肺機能を低下させる

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健康に対する害はどのようにして調べるのか

実験

動物実験

人の志願者に対する曝露実験

急性で、かつ可逆的な影響の検出

観察

個人の反応として調べる

大きな集団における変化として調べる

12

汚染物質に対する人の反応に関する考え方

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集団の中で反応する人(影響を

うける人)の割合

空気中の汚染物質濃度(曝露量)

濃度が高ければ、反応する人の割合は大きい

濃度が低いと、反応する人の割合は小さい

汚染物質の害を見いだすことが難しい

汚染物質の害を見いだすことは比較的やさしい

疫学研究の方法

対象

非常に多くの人について調べる

比較的少数の感受性の高い人について調べる

健康に対する害の現れ方

急性

慢性

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疫学研究の特徴15

健康を害する要因は数多くあり、その中から環境因子の影響を拾い出さなければならない。

いろいろな対象集団、地域、国などで調べて、一貫性のある成果を得られることによってはじめて、汚染物質の健康影響を明らかにすることができる。

たくさんの要因を調べる

いろいろな人、場所で調べる

大気中粒子状物質の健康に対する害

粒子の大きさ(粒径)が重要

粒径によって、口から肺までの呼吸器のどこまで達するかが違う

粒子のでき方で粒径が違う

粒子の成分が重要

16

粒子の大きさと呼吸器への沈着

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粒径(µm)50.5 1 10

微小粒子

粗大粒子

質量分布

(µg/

m3 )

10

20

30

40

0

様々な大きさの粒子状物質

0.1μm 1μm 1010μμmm0.01μm 100μm

毛髪(ヒト)

約70μm

ウィルス 細菌 花粉

PM10

SPM(浮遊粒子状物質)

PM2.5

微小粒子濃度の変化19

2001年度 公開シンポジウム「環境の世紀の幕開け」

▲ディーゼル排ガスの危険と汚染の現状を知る

µg/m3

実際に吸っている粒子の量はどれぐらい?

都市大気中の平均濃度 30 µg/m3

1日に15m3 → 1年間に約5,000m3

30 µg/m3×5,000m3=150,000µg=150mg

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1年間に吸い込む粒子の量

(全部ススの場合)

微小粒子の特徴

気管支や肺など呼吸器の奥まで達しやすい

大気中での存在時間が長い

遠くまで運ばれる、遠くから運ばれる

多くの物質の混合物

呼吸器だけではなく、さまざまな影響を与える

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微小粒子の健康に対する害

微小粒子を吸い込むと

死亡率が上昇する?

循環器疾患(心臓病や脳血管疾患)に影響を与える?

その他、様々な影響を与える

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東京における心臓病死亡とPM2.5濃度の推移

23

気温と心臓病による死亡

気温(℃)

心臓病による死亡者数

(人/日)

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PM2.5と心臓病による死亡

心臓病による死亡者数

PM2.5濃度(µg/m3 )

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PM2.5濃度と死亡リスクの関係

PM2.5(µg/m3)

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大気汚染物質と脳卒中による死亡との関連

全国13政令指定都市

1990~1994年

死亡時65歳以上

脳卒中による死亡が大気汚染物質への高濃度曝露の関連しているかを検討

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浮遊粒子状物質単位増加あたり脳卒中死亡リスク

死亡前の時間

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微小粒子の吸入から心臓病になるまで(仮説)

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仮説を明らかにするための疫学研究

不整脈は本当に起きるか?

死亡に至る以前の発症とは関連があるのか?

長期的な曝露による影響はあるのか?

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不整脈との関連性?

埋め込み型除細動器により心室性不整脈の治療を受けている患者57名。

除細動器が放電することにより、心室性不整脈(心室頻拍、心室細動)治療を行った記録から、その発生時刻を調べた。

浮遊粒子状物質と除細動器による治療の発生との関連性はいずれの時間帯においても認められなかった。

米国での研究では、関連ありと関連なし両者の報告がある。

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心臓病発症との関連性?

心臓病で医療機関を受診した人を調べて、受診した日時とそれより前の数時間ないし数日の大気汚染濃度との関係を調べる。

米国など国外の研究では、粒子状物質との関連ありとする報告が多数

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ICAS Registry参加病院

筑波大学附属病院筑波メディカルセンター病院筑波記念病院

茨城県立中央病院

筑波西南医療センター病院

日立総合病院

総合守谷第一病院

牛久愛和総合病院

粒子状物質への曝露と循環器疾患発症との関連(研究実施中)

筑波大学循環器内科の関連病院を中心とした冠動脈疾患患者の登録データベース。

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長期曝露による影響?

NIPPON DATA 80及び90

全国から層化無作為抽出した300単位区内の世帯 (約5,000世帯)の世帯員のうち、30歳以上の者を調査対象として実施された厚生労働省の循環器疾患基礎調査のうち1980年と1990年の対象者の死亡状況を追跡したデータ

居住地の大気汚染濃度との関連を解析中(滋賀医科大学との共同研究)

米国などの研究では粒子状物質と心臓病などの循環器疾患による死亡と関係するという報告

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影響の大きさを比較する35

非喫煙者の割合 喫煙者の割合

非喫煙者の

肺がん発症

喫煙者の肺がん発症

喫煙による肺がん発症の寄与割合:日本では

男約7割、女約2割

影響の大きさを比較する36

大気汚染以外の原因

による病気の発症

大気汚染に曝露した

場合の病気の発症

大気汚染物質への曝露の程度

大気汚染曝露による病気発症の寄与割合

私たちの健康に害があるほどに空気は汚染されているか?

現在の空気の汚染は、一人一人を個別に観察しただけでは健康に害があるかどうかわからない程度のものである。

すべての人が影響をうける可能性がある。

しかも、子供や高齢者、病気の人も含めて汚染物質を含む空気を吸うことは避けられない。

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害は小影響を受ける人は多数× = 問題は?

所内共同研究者

上田佳代、小野雅司、他

京都大学、兵庫医科大学、滋賀医科大学など、多くの方の協力で疫学研究が行われています。

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「食の安全」「水の安全」などさまざまな問題の中で、

「空気の安全」について、もう一度考えてみよう。

ご静聴ありがとうございました。