12
― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに ついてより深く知りたかったから,というのが理由の一つだ。あの悲劇から20年が経ち,ルワン ダは「アフリカの奇跡」と呼ばれるまでの復興を遂げた。この復興を遂げるには,人々の間の相 互理解や赦しなども含め,相当の努力があったに違いない。 ルワンダの「過去」を学ぶことで,人間の愚かさや弱さを知り,「現在」を学ぶことで,人間 のもつ可能性や強さを知ることができる。それらの学びを通して,生徒の『人』としての成長に つなげていきたいと考え,ルワンダのジェノサイドを題材として授業を計画した。授業を行う上 で,特に主眼を置いたポイントが以下の 3 つである。 ①相互理解について学ぶ ジェノサイド後,人間の相互理解や赦しのプロセスがあり,「ルワンダ人は一つ」と意識を新 たにするまでに至った。相互理解の大切さから,相手を受入れようとする強さを学び,生徒自身 の生活に反映させたい。 ②「やるべきこと」と「やってはいけないこと」について知る 世界で起きている問題だけでなく,身の回りの問題を緩和させたり,解決させるために,「や るべきこと」がある。一方で,同じ過ちを繰り返さないために,人として「やってはいけないこ と」がある。「何ができるか」だけではなく「何をしてはいけないか」についても考えさせたい。 ③世界の課題に関心をもつ ルワンダのジェノサイドの学習をきっかけとして,世界の課題や問題にも目を向けさせたい。 「無関心」が問題を悪化させたり,長引かせることがあることを知り,積極的に考え,関わる姿 勢を育成したい。 担任する 3 年生は, 3 月には中学校を卒業し,義務教育を終える。そして,それぞれが選んだ 進路で,人生の歩みをさらに進めていくことになる。これからの人生で異なる文化や習慣,環境 で育った人々と出会うことがあるだろうが,どのような場合でも,まず相手を理解することがで きる人になってほしい。また,世界のあらゆる課題・問題に「無関心」にならず,情報や知識を 自ら求め,行動を起こしたり,心や思いを寄せられる人になってほしい。そのようなねらいと願 いをもってこれらの授業を構成し,実践した。 実践の目的 世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考える〜 石原 幸子 仙台市立高森中学校 英語科 教 科 英語  4 時間,総合  1 時間, 学活  1 時間 対 象 第 3 学年(全 3 クラス) 98名 第 1 学年( 1 クラス) 32名(第 1 時のみ)

世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考 …...― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考 …...― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに

― 70 ―

石原 幸子

私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドについてより深く知りたかったから,というのが理由の一つだ。あの悲劇から20年が経ち,ルワンダは「アフリカの奇跡」と呼ばれるまでの復興を遂げた。この復興を遂げるには,人々の間の相互理解や赦しなども含め,相当の努力があったに違いない。

ルワンダの「過去」を学ぶことで,人間の愚かさや弱さを知り,「現在」を学ぶことで,人間のもつ可能性や強さを知ることができる。それらの学びを通して,生徒の『人』としての成長につなげていきたいと考え,ルワンダのジェノサイドを題材として授業を計画した。授業を行う上で,特に主眼を置いたポイントが以下の 3つである。

①相互理解について学ぶジェノサイド後,人間の相互理解や赦しのプロセスがあり,「ルワンダ人は一つ」と意識を新たにするまでに至った。相互理解の大切さから,相手を受入れようとする強さを学び,生徒自身の生活に反映させたい。②「やるべきこと」と「やってはいけないこと」について知る世界で起きている問題だけでなく,身の回りの問題を緩和させたり,解決させるために,「やるべきこと」がある。一方で,同じ過ちを繰り返さないために,人として「やってはいけないこと」がある。「何ができるか」だけではなく「何をしてはいけないか」についても考えさせたい。③世界の課題に関心をもつルワンダのジェノサイドの学習をきっかけとして,世界の課題や問題にも目を向けさせたい。

「無関心」が問題を悪化させたり,長引かせることがあることを知り,積極的に考え,関わる姿勢を育成したい。

担任する 3年生は, 3月には中学校を卒業し,義務教育を終える。そして,それぞれが選んだ進路で,人生の歩みをさらに進めていくことになる。これからの人生で異なる文化や習慣,環境で育った人々と出会うことがあるだろうが,どのような場合でも,まず相手を理解することができる人になってほしい。また,世界のあらゆる課題・問題に「無関心」にならず,情報や知識を自ら求め,行動を起こしたり,心や思いを寄せられる人になってほしい。そのようなねらいと願いをもってこれらの授業を構成し,実践した。

Ⅰ 実践の目的

世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考える〜

石原 幸子仙台市立高森中学校 英語科

教 科 英語  4 時間,総合  1 時間,学活  1 時間 対 象 第 3 学年(全 3 クラス) 98名

第 1 学年( 1 クラス) 32名(第 1 時のみ)

Page 2: 世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考 …...― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに

― 71 ―

石原 幸子

中 学 校

ねらい 活動内容 必要な物 備考

事前学習

・ルワンダの基本的な情報を知り,興味・関心をもつ

1.ルワンダクイズ2.ルワンダの生徒へしおり作り

・クイズ用ワークシート

・しおり作成用一式 (折り紙,習字セット等)

文化祭

・ルワンダについて,写真や資料を通して詳しく知る・しおりを受け取ったルワンダの生徒の様子を知る

1.ルワンダの基本情報の掲示 (教育,生活,食事,歴史)2.ルワンダ人生徒達がしおりを受け取った時の様子と学校の写真

・基本情報を書いた模造紙

・写真・ルワンダの布や小物 (お土産・グッズ)

第1時

・ルワンダの研修報告を聞き,ルワンダに対する理解を深める

1.PPTを使った報告を聞く2.ルワンダ英語カルタでフォトランゲージ

・PPT・カルタと読み札・ワークシート

Appendix 2Appendix 3

第2・3時

・ルワンダジェノサイドを基に人間の愚かさ・弱さを考える

1.ジェノサイドの背景を理解する2.DVDを観る (「ホテル ルワンダ」)3.ルワンダ的クロスロード

・ジェノサイドの背景を 伝 え る 内 容 のPPT

・DVD・ クロスロード用PPT

・ワークシート

Appendix 4Appendix 5Appendix 6

第4時

・「アフリカの奇跡」と呼ばれるルワンダが復興を果たしたその背景にある人間の可能性・力を考える (相互理解,赦しの力から)

1.現在のルワンダのビデオ2.人々の赦し,受容,復興のプロセスを考えさせる (「ガチャチャ裁判」「償いの家」「養豚場」「公共での奉仕作業」「女性の強さ(アガセチェ)(ダンスグループ)」)3.アフリカの奇跡/言葉

・ルワンダの現在の様子を伝えるビデオ

・研修訪問先の資料や写真,活動内容をまとめた PPT

・ワークシート

Appendix 6Appendix 8

Ⅱ 授業の構成

Page 3: 世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考 …...― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに

― 72 ―

石原 幸子

ねらい 活動内容 必要な物 備考

第5時

・ グ ロ ー バ ル イシュー(地域的課題)へ目を向け,自ら考え,無関心にならない姿勢を身につける

1.世界の問題や課題について話し合う2 .世界の立場,日本の立場は?3 .マララ・ユスフザイとセヴァン・スズキのスピーチを聞く4.自分が選んだ課題について2 分間スピーチをすることに。あなたならどんなスピーチをする?5.未来に向けて

・ワークシート・マララとセヴァンのスピーチ音源と原稿(英語+日本語)・模造紙(グループ分)

・青ペン(人数分)・赤ペン(グループ分)

Appendix 9Appendix10

《文化祭での展示の様子》

Page 4: 世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考 …...― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに

― 73 ―

石原 幸子

中 学 校

授業実践日:10月下旬 授業時間:50分

教科:英語 実践学級: 3年 1組, 2組, 3組, 1年 2組

トピック:ルワンダの生活,教育,子どもたち

ねらい:ルワンダの研修報告を聞き,ルワンダに対する理解や興味を深める

段階 活動内容 指導上の注意 準備物導入 1. 7月に行なったルワンダクイズの復習を

行う展開 2.「ルワンダに行ってきました」(研修報告)

PPTを見る・ルワンダの基本情報・ルワンダの生活,食事・ルワンダの教育制度,学校の様子 PPTを見ながら,ワークシートにメモをとる・位置・地形・気候・こんな所がある!・人々はこんな生活をしている!

3.フォトランゲージ1)ルワンダカルタをする・ 5〜 6人のグループになる・教師がルワンダで撮った写真をカードとし,読まれる英文の内容を最もよく表すカードを選んでとる・教師は答えを確認しながら,写真の説明を加える2)カルタのカードで気になる写真,一番好きな写真を選び,なぜそのカードを選んだのかグループで話し合う3)カルタのカードの写真について,気になることを教師に質問する

2 .PPTの説明や報告の中に,クイズや質問を入れながら,生徒が興味を保てるように話をする

 事前学習で作ったしおりを渡した学校の様子や,生徒の様子についてしっかり伝える

 カルタの中に, 2.で話した内容のカードがあるように工夫する

 英語が苦手な生徒でも,単語を聞いてカードを選べるように,英文の読み札を工夫する

 カルタの札をじっくり見る時間を与え,様々なルワンダを知ってもらう

報告用 PPTワークシート(Appendix  2 )

カルタ用カードカルタ用英文(Appendix  3 )正解提示用拡大写真

まとめ 4.ワークシートの「ルワンダのステキなところ」と「ルワンダから学んだこと」の欄に記入する

 それぞれが感じたことを自分の言葉で表現できるよう,十分な時間をとる

Ⅲ 授業の詳細

……………………………………………………………………………………………………………………────────────────────────────────────────────…………………………………………………………………………………………………………………… 第 1時 

Page 5: 世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考 …...― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに

― 74 ―

石原 幸子

授業実践日:11月上旬 授業時間:50分× 2時間

教科:学 活・総 合 実践学級: 3年 1組, 2組, 3組

トピック:ルワンダの歴史,ジェノサイド,人間の愚かさ・弱さ,情報操作

ねらい:ルワンダのジェノサイドを通して,人間の愚かさ・弱さを知る

    ルワンダのジェノサイドを通して,教育の大切さと情報操作の恐ろしさを知る

段階 活動内容 指導上の注意 準備物導入 1.ルワンダの歴史につ

いて PPTを見る1 .DVDの背景や内容を理解しやすいように,簡潔に説明する

PPT(Appendix 4 )

展開 2.DVD「ホテルルワンダ」を見る

3 .ルワンダ版クロスロード 

「あなたならどうする?」1) 4人グループを作る2)映画の中のいくつかの場面で,それぞれの立場で「自分ならどうするか」と考え答えを出す3)その理由をグループの中で話し合う

4 .ルワンダの歴史とジェノサイドから,「人としての間違った行為」に焦点をあてる

2.目を向けられない場面には,無理に観なくてもよい,などの指示を出し,配慮をする。ただし,実際に起こったことであることは心に留めておくように話をする

 クロスロードには,「正しい答えはない」ということをあらかじめ伝えておき,自由な考えや意見がグループ内で交換されるようにする

 異なる立場や視点からジェノサイドについて考えられるような場面を選ぶ①フツ族として②ツチ族として③仕事や観光で滞在している外国人として④国際協力・支援で滞在している外国人として  など

 クロスロードの問題に対し,一人一人が考えて答えを出すことを通して,「人の心の葛藤」を経験させたい

「人間の愚かさ・弱さ」・自分さえよければいい人間・簡単に煽動される人間・「命を奪う」ことに慣れてしまう人間・心の中で相手の人間にランク付けしてしまう人間   など→より深い人間性の喪失から生まれる

DVDスクリーンプロジェクター

クロスロード用PPTYES/NOカ ード(Appendix 5 )

まとめ 4.ワークシートの「ルワンダの過去から学んだこと,考えたこと」に記入する

 感じたことや考えたことを自由に記入させる 全体の前での発表はしない

ワークシート(Appendix 6 )

……………………………………………………………………………………………………………………────────────────────────────────────────────…………………………………………………………………………………………………………………… 第 2・ 3時 

Page 6: 世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考 …...― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに

― 75 ―

石原 幸子

中 学 校

授業実践日:11月上旬 授業時間:50分

教科:英語 実践学級: 3年 1組, 2組, 3組

トピック:ルワンダの現在,ジェノサイドからの復興,相互理解と赦し,女性の力,教育

ねらい:「アフリカの奇跡」と呼ばれるルワンダが果たした復興の背景にある人間の可能性と強

さ(力)について考える

段階 活動内容 指導上の注意 準備物導入 1.前時の内容の復習をする展開 2.「ルワンダの今」の PPTを見

ながらルワンダの復興へ向けた努力・人々の赦しや相互理解へ向けたプロセスを知る1)ルワンダの現在の様子をビデオで観る2)映画の中のルワンダと今のルワンダの違いを話し合う3)「アフリカの奇跡」に至るまでの人々の活動や努力を知る ①ポール・カガメ大統領の政策 ②ガチャチャ裁判 ③NGO REACHの活動   償いの家造りプロジェクト/養豚場

 ④ 女性のアガセチェ作りとNGO Ruise B

 ⑤女性のダンス・太鼓グループ ⑥ウムガンダ ⑦マリールイーズさん  ウムチョムイーザ学園

3.ワークシート「ルワンダの現在(いま)から学んだこと,考えたこと」に記入する

4.「If you knew me, and if you really knew yourself, then you would not have (    ) (    ).」の空欄に当てはまる単語を考える

2.現在のルワンダを見て,映画の中と異なること,また生徒が抱きやすいアフリカのイメージと異なることに気づかせたい

【ポイント】①ポール・カガメ大統領 →政策:人々の相互理解     強いリーダーシップ     明確な将来のヴィジョン②ガチャチャ裁判 →地域で裁判を行う → ジェノサイドについて国民の理解が深まる  など

③NGO REACHの活動 → 被害者が加害者のために家を造る(相互理解・赦し)

 → 養豚場で被害者と加害者が共に働く(相互理解・赦し)

④女性のアガセチェ作り → 未亡人となった女性達の生活支援・技術支援

 →女性の強い意志と力⑤女性のダンス・太鼓グループ → 未亡人となった女性達の前を向いて進もうとする力

 →悲しみを強さや力に変える⑥マリールイーズさん →教育の力

4 .If you knew me, and  if you really knew yourself,  then you would not have killed me.

PPT(Appendix 8 )

ワークシート(Appendix 6 )

ワークシート

まとめ 5.次時の課題を提示し,説明する

5.十分な話合い活動をするために,調べ学習を事前に行うよう指示する

……………………………………………………………………………………………………………………────────────────────────────────────────────…………………………………………………………………………………………………………………… 第 4時 

Page 7: 世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考 …...― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに

― 76 ―

石原 幸子

授業実践日:11月下旬 授業時間:50分

教科:英語 実践学級: 3年 1組, 2組, 3組

トピック:グローバルイシュー,セヴァン・スズキ,マララ・ユフスザイ

ねらい:グローバスイシューへ目を向け,自ら考え,無関心にならない態度を育成する

段階 活動内容 指導上の注意 準備物導入 1.今までに学習してきた世界の問題や

課題を振り返る1.○自由貿易・格差(道徳)○ガーナのカカオファーム(英語科:児童労働,フェアトレード)

○ルワンダのジェノサイド(英語科) ルワンダのジェノサイドに関して,世界が無関心であったことを思い出させる

展開 2.「グローバルイシュー(地球的課題)」についてグループで話し合う1) 4人グループを作る2)ワークシート課題 1で挙げたグローバルイシューを書き出す3)書き出した中で今まで無関心だった課題や問題,知らなかった課題や問題に赤ペンで○をつける

3 .「グローバルイシュー」について,調べてきたことを伝え合う1)ワークシート課題 1の中から自分が一番気になった課題を選び,調べてきた内容をグループで伝え合う2)選んだ課題を英語で何と言うかも伝える

4.問題解決のために行動をした10代の「世界を変えるスピーチ」を聞く1)セヴァン・スズキ2)マララ・ユスフザイ

5.課題解決のための 2分間のスピーチを書く1)自分が選んだ課題解決のための 2分間のスピーチを書く2)書いたスピーチをグループ内で読み合い,良い所に「いいね!」マークをつける

2.グループに配布された大きな紙に,調べてきたことを自由に書き出させる

 書き出した紙を見て,世界にはたくさんの課題や問題があることに気づかせたい

 以下の点について事前に話をする

①書く方向は気にしなくてよい

②グループの中で書き出すことは重なってもよい

③班の中で一人でも知らなかった人がいたり,関心がなかった人がいた場合には,赤ペンで○をつける

4.スピーチをした二人は同世代であることを確認する

5.スピーチのポイントを確実に確認し,書きやすいようにする

「いいね!」マークは複数つけたり,他の人と重なってもよいことを伝える

PPT(Appedix 9 )ワークシート(Appendix10)

まとめ 6.今,世界で起きている課題や問題に対して「無関心」になってはいけないことを確認する

 世界や身の回りで起きている問題に対して,「無関心」にならないこと,様々な関わり方,行動の仕方があることを伝える

……………………………………………………………………………………………………………………────────────────────────────────────────────…………………………………………………………………………………………………………………… 第 5時 

Page 8: 世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考 …...― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに

― 77 ―

石原 幸子

中 学 校

ルワンダで起きたジェノサイドを扱って授業をすることは,私にとって挑戦であった。ジェノサイドの背景をきちんと伝え,それを基にしながら,生徒が「悲観的」にならず「明るい未来へ」つなげられるように授業を構成しなければならないと感じたからだ。第 3時の授業が終わった頃に,生徒の会話の中に変化が生まれてきた。青年海外協力隊でインドネシアに派遣されていた先生に対して,「インドネシアでも,ルワンダのように人々がデモや争いがあるのですか?」という質問をしたり,「このようなことが起こらない日本は,平和なんだと思う。」と話す生徒が何人もいた。そして「こんな悲惨なことが世の中にあってはいけないよね。」と,普段ならそのような事を言わないような生徒が,友達同士の会話の中で話していたと聞いた。そして,第 4時を終えた後には,ルワンダの人々の強さや優しさに感動する生徒もいれば,あのような悲劇を乗り越えて,互いを理解し赦し合おうとするルワンダの人々と自分たちを比べ,考えを深め始めた生徒がいた。ルワンダのジェノサイドから学んだことを,生徒自身の生活や人間関係に結びつけて考え,活かしてほしいとのねらいに近づけたのではないかと思う。また,第 5時で自ら興味のある課題について調べ,スピーチを書いた経験は強く印象に残り,自信にもなったようである。その例の一つが,高校入試のための面接練習の中で,自分が調べた課題について内容を話し,意見や自分なりの解決方法を堂々と伝えていたことだ。また,その授業を行う時期に,教室内で普段聞かないような言葉(ニュースで出てくる時事用語や専門用語など)が聞こえてきたときには,生徒が世界に関心をもち始めてくれたことを実感した。「無関心」にならない態度をこれからも育成し続けたい。ルワンダを題材として行った授業全体を振り返ると,生徒一人一人の理解度によって,学んだり,考えたりしたことには,もちろん大きな幅がある。しかし,ルワンダから学び,感じたことは,確かに生徒の中に残っており,それらが生徒を人として「強く」そして「優しく」してくれるように思う。

開発教育は継続性が大切である,という言葉を思い出す。今年度,私がこの研修に参加したから授業をした,という単発的なもので開発教育を終わらせてはいけないと感じている。今後,各教科とどう結びつけ,学校や学年の先生方と共に実践していけるか,これからもその方法を模索し続けることが大切である。また,今回は総合の時間や学活の時間を使ったことで,生徒だけではなく学年の先生方も一緒にジェノサイドについての学びを深めることができた。その後,先生方からルワンダのことについて質問を受けたり,道徳の授業で開発教育につながる題材が選ばれたり,教員の中でも開発教育や世界への意識が広がっていくのを感じた。このように,みんなで一緒に取り組む雰囲気を継続して作っていきたい。

Ⅳ 実践の成果

Ⅴ 課 題

Page 9: 世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考 …...― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに

― 78 ―

石原 幸子

Appendix 2  「第 1 時 ワークシート」

Appendix 3  「ルワンダカルタ 中学生 Ver.」

●出典・参考図書・愛知県国際交流協会 国際理解教育教材「わたしたちの地球と未来」

 [Online] http://www2.aia.pref.aichi.jp/koryu/j/kyouzai/kyouzai.html

・開発教育実践ハンドブック 開発教育協会(改訂版第 2 印)

・防災ゲーム クロスロード

 [Online]www.pref.tottori.lg.jp/secure/633910/12_ 3 crossroad.pdf

Page 10: 世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考 …...― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに

― 79 ―

石原 幸子

中 学 校

《海外研修時に日本からのプレゼントのしおりを渡したときの様子》

Page 11: 世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考 …...― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに

― 80 ―

石原 幸子

Page 12: 世界とわたし 〜ルワンダ・ジェノサイドを通して考 …...― 70 ― 石原 幸子 私が今年度の教師海外派遣でルワンダ共和国を選んだのは,1994年に起こったジェノサイドに

― 81 ―

石原 幸子

中 学 校

Appendix 10 「第 5 時 ワークシート」