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緩和照射のいろいろ放射線診療科治療部 三宅 優
緩和ケア認定看護師 東 麻美
駒込病院 緩和ケア勉強会2020年11月30日(月)
1. 放射線治療ってどんな治療?
2. 緩和照射の適応を知る
3. 代表的な病態と照射による治療効果
4. 有害事象と対処方法
前半のテーマ
放射線治療ってどんな治療?
癌治療の3大柱のひとつ
手術 放射線 薬物
局所治療 全身治療
切除・摘出 臓器の形態機能を温存
放射線治療の特徴
全身に発生するほとんどの悪性腫瘍が対象
✓適応範囲が広い
身体への負担が少ない
✓耐術能のない患者や高齢者も治療可能
根治照射と緩和照射
根治照射 緩和照射
目的
併用療法
治療部位線量
etc
etc
※Gy(グレイ):放射線エネルギーの吸収線量をあらわす単位, fr(fraction):分割回数
Ex. 3期肺癌化学放射線療法60Gy/30fr※
Ex. 肺癌骨転移30Gy/10fr, 20Gy/5fr
8Gy/1fr
腫瘍の根治
化学療法ホルモン療法
手術
標準治療に則る
症状の緩和ADLの維持改善
なし
患者に合わせて決める
緩和照射はやさしい治療
障害発生率
照射線量
根治照射緩和照射
腫瘍へのダメージ
正常組織へのダメージ
(有害事象)
線量↑=抗腫瘍効果↑=有害事象↑
根治照射と緩和照射の例
3期肺癌化学放射線療法
60Gy/30fr
肺癌胸椎転移放射線治療単独
30Gy/10fr
緩和照射の適応を知る
緩和照射の適応
✓画像所見と一致した腫瘍による症状がある
疼痛 神経障害
脳転移 頭痛/嘔吐/痙攣/麻痺
頸椎転移 呼吸不全/上下肢麻痺
胸腰椎転移 下肢麻痺/膀胱直腸障害
全身の骨転移
腫瘍浸潤
(赤字=oncologic emergency, 緊急照射の適応)
出血
肺癌 血痰
食道癌/胃癌 消化管出血
腎癌/膀胱癌 血尿
子宮頸癌 性器出血
狭窄/閉塞
肺癌SVC※症候群
気道狭窄
食道癌/胃癌 消化管閉塞
前立腺癌 尿閉
(赤字=oncologic emergency, 緊急照射の適応)
SVC(Superior Vena Cava):上大静脈
代表的な病態と
照射による治療効果
骨転移
担がん患者の全経過中30-70%に認められる
治療方法:
①鎮痛剤 ②骨修飾薬
③外照射 ④RI治療
⑤外科療法 ⑥経皮的骨形成術
照射目的:疼痛緩和, 長管骨の骨折予防
除痛効果は8割程度で実感される
照射後2-3週後から鎮痛効果発現→4-6週後に最大の効果
症状が再燃した場合でも再照射が奏功する可能性あり
脊髄圧迫症候群 oncologic emergency
担がん患者の全経過中5-15%に起こる
症状が出現すると急速に進行し非可逆的な麻痺に至る
前駆症状として背部痛/筋力低下/便秘がよくみられる
治療方法:
①外照射 ②ステロイド
③外科療法(除圧) ※麻痺出現後48時間以内がGolden time
前立腺癌胸椎転移
脊髄圧迫症候群 oncologic emergency
照射目的:脊髄神経障害の予防改善, 疼痛緩和
治療開始時の歩行機能が神経予後に相関
完全麻痺になるとその後のADLに多大な影響を及ぼすため,
可及的速やかに治療開始する必要がある
照射前の歩行機能 照射後に歩行可能な割合
歩行可能 8割程度
不全麻痺 4割程度
完全麻痺 1割弱
SVC症候群 oncologic emergency
腫瘍や転移リンパ節による上大静脈の圧排閉塞が原因
顔面/上肢の浮腫から始まり呼吸困難や脳浮腫が続発する
治療方法:
①外照射 ②ステント留置 ③外科療法(バイパス)
Atlas of Human Anatomy: Netter 7th ed. 1-5より転載
SVC症候群 oncologic emergency
照射目的:静脈還流障害の解除
原発腫瘍により効果は異なるが, 8割程度で奏功する
照射後1-2週後から症状が改善してくる
小細胞肺癌リンパ節転移
脳転移
担がん患者の全経過中20-40%に発生する
化学療法の発達により頭蓋外病変の制御が改善し,
頭蓋内病変コントロールの重要性が増している.
治療方法:
①ステロイド ②浸透圧利尿剤
③外照射 ④外科療法
全脳照射が一般的
転移巣の個数やサイズにより定位照射も検討
脳転移
照射目的:脳神経症状/頭蓋内圧亢進症状の予防改善
効果は照射開始後1週後から実感されることが多い
6-8割の患者で症状が改善もしくは消失
乳癌多発脳転移 全脳照射30Gy/10fr
照射2m後
症例提示
56歳 男性 肺癌多発骨転移
右背部痛咳嗽
前医受診
CT右上葉肺腫瘤多発骨転移単発肝転移
カロナール1800mgロキソニン180mgエペリゾン150mgオキシコンチン20mgオキノームレスキュー
5mg
症状
検査所見
当院呼内受診
TBLBNSCLCMRI
脳転移なし
鎮痛薬
当科紹介
疼痛増悪掴まり歩行
肩甲骨下角レベル NRS8自力で起き上がり困難
神経障害なし車いす
カロナール1500mgロキソニン180mg
カロナール1800mgロキソニン180mgオキシコンチン10mgオキノームレスキュー
2.5mg
PET多発肝転移増悪
day 1 2 14 21
56歳 男性 肺癌多発骨転移
当科紹介
症状
鎮痛薬
1m後再診
疼痛改善傾向起き上がり可能
day 21 22 29 50
8Gy/1frTh4-8
Sim CT治療計画作成
肩甲骨下角レベル NRS2杖歩行
急性期有害事象なし
カロナール1800mgオキシコンチン20mgオキノームレスキュー
5mg(レスキュー使用せず)
GOAL!疼痛緩和による
ADL改善
鎮痛薬減量
有害事象と対処方法
照射範囲に一致して生じる
皮膚 発赤, 熱感, 痒み
頭部脱毛中耳炎, 外耳道炎脳浮腫(頭痛, 嘔気, ふらつき)
頚部口腔/咽頭粘膜炎耳下腺炎
胸部咳嗽, 喀痰食道炎(胸焼け, つかえ感)
腹部 悪心, 嘔吐, 下痢
骨盤部下痢尿道/膀胱炎(頻尿, 排尿時痛)
放射線宿酔(食思不振, 悪心)はすべての照射で起こりうる
発症時期/対処方法
放射線治療開始から約2週間後より出現※
2-3週程度で軽快消失する
ほとんどは経過観察可能
症状 処方例
皮膚炎ヒルドイドソフト
リンデロンVGクリーム
宿酔悪心
プリンペラン(5mg) 3T3Xカイトリル(2mg) 1T1X
口腔/咽頭粘膜炎 アズノールうがい液
食道炎 アルロイドG内用液 1日3回
下痢 ビオフェルミン 3g3X
※放射線宿酔は治療開始直後にみられ, 3日程度で自然軽快することが多い
前半のまとめ
緩和照射は
目的 ➡ 症状緩和, ADLの維持改善
適応 ➡ 画像所見と一致した症状
治療効果 ➡ 1-2週後くらいから発現
有害事象 ➡ 照射野内に発症, 軽微
5. 緩和照射開始までの手順
6. 緩和照射を受ける患者の理解
7. 骨転移のある患者への支援
後半のテーマ
緩和照射開始までの手順
治療開始までの手順
主治医から治療依頼
照射体位でシミュレーションCT撮影
放射線治療医による診察
治療適応の確認
照射部位と線量分割の決定
治療計画立案
治療開始
照射体位でシミュレーションCT撮影
看護師が関わる場面
主治医から治療依頼
放射線治療医による診察
治療適応の確認
照射部位と線量分割の決定
治療計画立案
治療開始
緩和ケアスクリーニング(体と気持ちのつらさ)
治療前の準備を支援
治療の不安への対応
1
2
3
緩和照射を受ける患者の理解
緩和照射を受ける患者の理解
再発や病気の進行への恐怖夜も眠れない
はじめての治療への不安
心理的苦痛日常生活に影響する骨転移の痛み歩行障害
身体的苦痛
家族が介護を負担している痛みのある患者を観ているのがつらい
家族の苦痛
1
治療前の準備を支援
毎日の通院は可能ですか?仕事と両立ができるように治療時間の調整をしましょう.
マーキング保持のため, 湯舟には入らず, シャワー浴で過ごしましょう.
禁酒、禁煙が必要です.
仰臥位で10-20分静止することが可能ですか?
仰臥位で痛みが強くなることがありますか?
治療体位について
社会的なこと
生活上の注意
1
シミュレーションCT撮影
①治療計画用のCT画像を照射体位で撮影する
②再現性を確保するため, 皮膚マーキングを行い
固定具を作成
治療体位での疼痛や苦痛症状マネジメント
レスキュー, 抗不安薬, 鎮咳薬など
頓用薬の事前内服で予防
2
ストレッチャーでの移動を検討
寝台の高さ65cm高い
柵など掴まる場所は無いカーボンカウチは平坦で硬い
仰臥位になるため身体がねじれたり、骨に負荷がかかりやすい
ベッドの高さ46cm
2
治療に対する患者の不安
本当に病気のところだけに照射しているのかな
被爆するのではないか
後遺症がでるのではないか
照射中は治療室に独りぼっちが怖い
治療効果はあるのか
照射装置に圧倒されて怖い
有害事象が不安
3
患者の不安に寄り添う面談
✓放射線治療のイメージができるよう動画を視聴
✓医師の説明や動画の内容に関する気がかりや疑問点の解決
✓有害事象について一緒に観察・対応していくことを説明して安心できるように関わる
✓その方の日常生活に則した生活の工夫を話し合う
3
骨転移のある患者への支援
疼痛のマネジメント
適切なレスキューの使用
治療前の事前レスキューについて医師に指示を確認
患者ごとに個別的の内服調整
例1)1時間前と直前に頓用オキシコドンを内服する
例2)1時間前、30分前に頓用オキシコドンを内服する
例3)1時間~30分前にオキシコドンを2倍量内服する
参考:体性痛と神経障害性疼痛
体性痛 神経障害性疼痛
原因 骨転移病変の機械的刺激 末梢/中枢神経の直接損傷
部位 病変局所に限局 障害された神経支配領域
特徴
圧痛を伴う拍動痛
うずくような痛み体動で痛みが増強
灼熱痛電撃痛痛覚過敏異常感覚
治療薬 オピオイド・NSAIDs 鎮痛補助薬を併用
脊髄圧迫を疑う症状の早期発見
しびれ, 感覚鈍麻, 下肢脱力感, 膀胱直腸障害に注意!!
デルマトーム
日常生活動作のアドバイス
骨転移部位に負荷がかかる動作は避ける
首が前傾する作業 重い荷物を持つ
長時間腰を曲げての作業
腰をひねる運動
後半のまとめ
緩和照射による症状改善/ADLの維持改善を実現するため,
➡ 治療を納得, 安心して受けられるよう支援する
➡ 治療体位が保持できるよう症状のマネジメントを行う
➡ 日常生活の工夫を提案し,
安全に治療効果が得られるよう支援していく
参考/引用文献
金原出版株式会社
2014年6月
金原出版株式会社
2016年11月
秀潤社
2018年10月
中山書店
2019年9月
↓放射線治療の入門書としておすすめ
ご清聴ありがとうございました