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DU-Wärtsilä 減速運転への対応
2016年4月14日(木) 15:10-15:40 Room-B
技術部 低速エンジングループ 藤本 貴久 Copyright © 2016 DIESEL UNITED,LTD. All Rights Reserved.
はじめに
燃料費節減のための減速運転 ⇒ すでにグローバルスタンダード
2010年以降の就航船での実績からわかったこと 減速運転の問題=シリンダ内の低温腐食の問題
本日の発表内容
(1)ピストンリング・シリンダライナの低温腐食
(2)エンジン側での対応 ~就航船での実例~
(3)オペレーション側での対応
(4)最新機種のライナー摺動面温度最適化・冷却水システムの紹介
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ライナ壁面温度が露点以下に低下すると,掃気中の水蒸気が結露し水が生成.
生成された水と排気ガス中に含まれる SOx と反応し,硫酸が生成.
強酸性腐食環境が生じ,鋳鉄製ライナ・リングが腐食.腐食摩耗を引き起こし,リング・ライナの摩耗速度が一般的に0.1~0.2 mm/1000hrsに増加する.
腐食環境生成条件は,ライナ表面温度だけでなく,排ガス中のSOx濃度,掃気中の水分量,シリンダ油注油条件など種々の因子によって左右される.
低温腐食摩耗の場合は、一般的にライナ上部がラッパ状に摩耗する.
シリンダ内の低温腐食とは
低温腐食=(硫酸)露点腐食 現象
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シリンダライナ壁面の温度レベルが低下し,硫酸が凝縮しやすくなる.
最新の機関では,燃費向上のため,高Pme化を達成しており,露点温度が上昇している.
低負荷域での高燃焼圧化(過給機カット,排気バイパス,低負荷チューニング等)により,さらに低温腐食が発現しやすくなっている.
シリンダ油注油間隔が延長されるため,中和反応が完了するまでのタイムラグが発生する.特に低注油率では顕著になる.
減速運転とリング・ライナ低温腐食現象
減速運転で低温腐食が顕著となる理由
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典型的なピストンリング・シリンダライナの低温腐食
クロムコーティングの白色化
溶射コーティングの剥離
摺動面の白色化 注油位置に起因する不均一腐食
ピストン・リング シリンダライナ
激しいラッカーフォーメーション
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DU機関 エンジン側での対応 ~ 就航船での実例 ~
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DU-Wartsila 機関 標準燃焼室仕様
サービスフィードバックに基づき,減速運転時の低温腐食対策が全て盛り込まれている.
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DU-Wartsila 機関 シリンダライナ潤滑油溝
Zig Zag groove
注油レベルに加工された潤滑油溝.ライナ周方向へのシリンダ油分配を担う主溝.
Umbrella groove
シリンダライナ上部の潤滑油溝.ライナ上部でのシリンダ油広がり性を改善.
Lubricating oil collecting grooves (LOCG)
掃気ポートの上部の潤滑油溝.ライナ下部での不均一を軽減するとともに,掃気ポートからの潤滑油の損失を軽減.
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過給機カット運転開始後に発生した低温腐食現象
コンテナ船主機(RT-flex96C)の例 - 2011年 -
T/C cut開始1ヶ月後....
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過給機カット後のライナ壁面温度の変化 50%負荷(回転数80%)付近にて約15℃ライナ壁温低下
30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100
Tem
pera
ture
/ ℃
M/E Speed / %MCR
T/C cut前
T/C cut後
10 ℃
過給機カット運転開始後に発生した低温腐食現象
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実施した低温腐食対策
ライナ壁温温度レベル上昇 ~ インシュレーションチューブ延長
ライナ上部のクーリングボア内に挿入する断熱チューブの長さを変更.より断熱効果を高め,上死点付近で+10~20℃上昇を狙う.
ピストンリング仕様変更 ~ ガスタイトトップリングの適用
ピストン側面への燃焼生成物の堆積を防止し,リングパックを清浄に保つことにより,リングパックに給油されたシリンダ油を効果的にライナ表面に広げ,低温腐食を防止.また全段に耐食性に優れたクロムセラミックコーティングリングを適用.
シリンダ油行き回り改善 ~umbrella groove追加
不均一腐食によるライナボア形状のクローバーリーフィングを軽減するため,ライナ上部にumbrella grooveを追加加工し,効果的な酸中和を促進させる.
過給機カット運転開始後に発生した低温腐食現象
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インシュレーション変更後のライナ壁面温度 50%負荷(回転数80%)付近にて約20℃ライナ壁温上昇
過給機カット運転開始後に発生した低温腐食現象
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対策後のリング・ライナ摺動面の状況変化 摺動面に見られていた腐食の影響は消滅し,金属光沢が回復.
対策後 対策前
過給機カット運転開始後に発生した低温腐食現象
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シリンダライナ摩耗の推移 対策適用後は摩耗速度は大幅に減少し,0.02 mm/1000hrs以下で推移.
0.05mm/1001hrs
0.1mm/1000hrs
0.2mm/1000hrs0.3mm/1000hrs
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26
Cyl
inde
r Lin
er W
ear (
“B”P
oint)
/ mm
M/E Total Running Hours / x1000hrs
M/V "Vessel B" (11RT-flex96C with PLS feed)Trend of Cylinder Liner Wear
#1 #3 #4#6 #9 #10#11
対策適用T/C cut out
過給機カット運転開始後に発生した低温腐食現象
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ライナ壁温高温化の効果
No.1Cyl.
PLS quill level
150
200
250
300
350
400
450
500
550
600
650
700
750
800
850
900
950
1000
1.5 1.0 0.5 0 0.5 1.0 1.5
←D
ista
nce
from
join
t sur
face
/ m
m
← F-A Liner Wear / mm P-S →
7,422 hrs(2012/3/29)
13,176 hrs(2013/2/1)
21,735 hrs(2014/5/5)
No.6 Cyl.
PLS quill level
150
200
250
300
350
400
450
500
550
600
650
700
750
800
850
900
950
1000
1.5 1.0 0.5 0 0.5 1.0 1.5
←D
ista
nce
from
join
t sur
face
/ m
m
← F-A Liner Wear / mm P-S →
5,409 hrs(2011/12/14)
8,166 hrs(2012/5/6)
13,199 hrs(2013/2/4)
21,742 hrs(2014/5/6)
シリンダライナ上部の摩耗プロファイル比較 TDC付近での腐食摩耗の進展に差が現れている.
高温化対策ライナ 標準ライナ
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ライナ摺動面への油溝追加の効果
Umbrella溝追加ライナ
標準ライナ シリンダライナ ボア形状の比較
0.00mm
0.05mm
0.10mm
0.15mm
0.20mm
0.25mm
Fside
QE
Q
ES
sideQ
E
QE
Aside
QE
Q
E
Pside
Q
E
QE
88mm from TDC(below 2nd ring TDC)
No.4 witoutumbrella
No.6 withumbrella
ZigZaggroovealignment
Umbrella溝の追加により, ライナボアのクローバーリーフィング傾向が
緩和されている.
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低温腐食対策 バルクキャリア船への適用
Zig Zag+ Umbrella 追加加工 ライナ
標準ライナ
シリンダライナ油溝(Zig Zag + umbrella)追加
0.3 mm/1000hrs 0.2 mm/1000hrs
0.05 mm/1000hrs
0.1 mm/1000hrs
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
5 10 15 20 25 30 35Cy
linde
r Lin
er W
ear (
mm
)(
Max
. Poi
nt)
Running Hours of M/E (x1000 hrs)
M/V "Axxxxxx" (6RT-flex50)Trend of Liner Wear
No.3(Standard)No.5(ZZ+umbrella)
RetrofittedZig Zag +
umbrella groove
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DU機関 オペレーション側での対応
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減速運転時の注意事項
DU機関 「特別運転取扱指針」 抜粋 RT-flex / W-X機関では以下の注意事項を満たす場合,10%負荷以上で
の連続運転が可能.
ライナ冷却水温度: できる限り高く.出口温度 85~95℃
注油率: 残留BN 20 mgKOH/g以上
掃気温度: 低め設定(40℃以下)
排気温度: 230℃以上,450℃以下
適切な点検・清掃・整備
ピストンリング・シリンダライナ(低温腐食状況)
燃料弁,排気弁,排気溜・T/Cグリッド,掃気室・掃気弁
補助ブロア
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シリンダ注油の最適化
燃料硫黄分に応じたシリンダ油選定
① 推奨使用範囲
⑤ ピストン下部室ドレン油の船上モニタリングが不可能な場合,注油率増加、もしくは高BNシリンダ油の使用を推奨(S>2.5%の場合,BN100).
中間BNシリンダ油(50≦BN≦60)について
ピストン下部室ドレン油の船上分析を厳格に実施しない限り,硫黄分2.5%以上の燃料を使用する場合は中間BNシリンダ油の使用不可.
BN81-100 ③
BN70-80 ③ ②
BN40 ⑤
BN15-25 ⑤
② ①
①
Fuel sulphur content in % m/m
Fuel sulphur content and cylinder oil BN
② ①
④ ⑤
0.0 0.1 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5
1 5
2 1 5
4 3 2 1 5
3 2 1
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シリンダ注油の最適化
ピストン下部室ドレン油分析結果に基づく注油最適化 分析値が Safe area に入るよう,注油率,シリンダ油BNを調整.
“Preferable area”
残留BN 25 mgKOH/g以上、 鉄分100 ppm 以下.リング・ライナの摩耗速度は低く保たれることが期待できる.注油率低減可能.
“Safe area”
残留BN 20 mgKOH/g以上、 鉄分200 ppm 以下.安全に運転可能な領域.
“Alert area”
シリンダ内にて腐食環境が生成され、リング・ライナの摩耗速度が上昇することが想定される.注油率の増加,または高TBNシリンダ油への切り替えを推奨.
“Danger area”
リング・ライナの過大な腐食/凝着/アブレシブ摩耗が疑われる.
ピストン下部室ドレン油評価マップ (DU版)
0
100
200
300
400
500
0 10 20 30 40 50
Tota
l Iro
n (
鉄分
)/ p
pm
Corrected Residual BN (残留BN)/ mgKOH/g
Danger areaDo not operate here
Alert areaIncrease LOFR or BN
Safe area
Preferable area
Increase LOFR
(燃料硫黄分 0.5 ~3.5%にて、 BN40~100シリンダ油を使用する場合)
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掃気温度の最適化
A/C出口温度 低め調整を推奨 水分を可能な限りドレンセパレーターで除去し,シリンダ内に持ち込まれる絶対水分量を減少させる → 硫酸生成量の低減
各負荷でのピストン下部室ドレン油分析結果 実線:掃気温度38℃,破線:掃気温度43℃ 残留BN 鉄分
掃気温度低め設定の場合,50%MCR以下の負荷領域で見られた 過酷な低温腐食傾向が解消されている.
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最新機種のライナ温度最適化の紹介
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500Distance from gasket in mm
dew point Liner wall temp
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500Distance from gasket in mm
dew point Liner wall temp
※ 特許出願中 W-X82 ※Dual rating
High rating
Low rating
Tem
pera
ture
℃
Tem
pera
ture
℃
両レーティングにおいて、ライナー摺動面温度を最適化 Copyright © 2016 DIESEL UNITED,LTD. All Rights Reserved.
~90℃
~75℃
~90℃
Cylinder6 Cylinder5
Eng
ine
Pla
nt
p
Adjustable orifice
IMO TierII規制,減速運転対応機関でもピストンリング,シリンダライナの良好な摺動環境を実現
シリンダ最適注油
ライナ温度最適制御
シリンダ油のTBN適正化
最新機種のシリンダ冷却水システムの紹介
シリンダライナー冷却ラインのバイパス シリンダライナー及びピストンリングの低
温腐食対策としてライナー摺動面温度上昇
高温冷却水系統によるシリンダライナ冷却
低温冷却水系統によるシリンダカバー,排気弁冷却
冷却水入口取り合いは2ヶ所
Copyright © 2016 DIESEL UNITED,LTD. All Rights Reserved.
まとめ
弊社では今日までの豊富な経験をもとに,リングライナ低温腐食防止の為に,既就航船に対して以下の減速運転パッケージの適用を推奨しています. シリンダライナ温度の適正化 シリンダライナ摺動面への溝加工 最新リングパッケージ(ガスタイトトップリング+全段クロムセラミッ
クリング)
また,シリンダ注油,掃気温度についても,減速運転に対応した新たな指針を確立し,これを推奨しています.
現在では,上記のハード面,ソフト面双方での対応に多くの船主殿・船舶管理会社殿のご理解を得て,安全な減速運転が定常的に実施されています.
Copyright © 2016 DIESEL UNITED,LTD. All Rights Reserved.
ご清聴ありがとうございました
Copyright © 2016 DIESEL UNITED,LTD. All Rights Reserved.