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経済産業省 関東経済産業局 RESAS を活用した地域経済分析 事例集 茨城県行方市 栃木県足利市 長野県伊那市 静岡県伊豆市 平成303

事例集 - Minister of Economy, Trade and Industry › seisaku › kikaku › data › 4cities2.pdf · を活用した地域経済分析手法例」を 策定し、地域経済の特徴を把握するための分析手順を整理していま

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経済産業省 関東経済産業局

RESASを活用した地域経済分析事例集

茨城県行方市 栃木県足利市

長野県伊那市 静岡県伊豆市

平成30年3月

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RESAS(地域経済分析システム)は、国の統計データや民間のデータを集約し、都道府県や市町村単位で、わかりやすく表示をしています。知りたいデータを見つけるのには大変な労力がかかりますが、RESASを活用することで、「誰でも、簡単に、無料で」経済センサス、工業統計等の「地域経済データ」を把握することができます。人口減少社会を迎えて、地域はさまざまな課題に直面しています。

地域において課題と対応策を検討するためには、地方自治体をはじめ関係者が共通の課題認識を持つことが大切です。課題の把握にあたっては、個人の思い込みではなく、データに基づいて、地域の現状・課題を正確に把握することが重要であり、そのための土台となるのが、RESASを活用した分析であると考えています。

関東経済産業局では「RESASを活用した地域経済分析手法例」を策定し、地域経済の特徴を把握するための分析手順を整理しています。今回、分析手順に沿って、管内4地域の地域経済分析を実施し、分析結果を事例集としてとりまとめました。

分析結果をみると、なんとなく思っていたような地域の特徴(強み・弱み)が、目に見える数値として確認できると思います。RESASを出発点として、ぜひ地域経済の分析に取り組んでみてください。

経済産業省関東経済産業局 企画課

はじめに

関東経済産業局HPでは、「RESASを活用した地域経済分析手法例」「管内地方自治体の分析事例」「RESAS出前講座のご案内」などの情報を発信していますので、ぜひご参照ください。

関東経済産業局-施策案内-地域経済分析(http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/kikaku/index_chiikikeizai.html)

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目次

地域経済分析システム等を活用した分析手法例

分析事例1 茨城県行方市

分析事例2 栃木県足利市

分析事例3 長野県伊那市

分析事例4 静岡県伊豆市

・・・・・・p.3

・・・・・・p.5

・・・・・・p.7

・・・・・・p.9

・・・・・ p.11

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■地域経済分析システム等を活用した分析手法例-詳細版は関東経済産業局HPをご参照ください-

http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/kikaku/index_chiikikeizai.html

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<STEP 2>人口の動きをしっかり見る。STEP2では、経済活動の基礎となる人口動きを分析する。地域が人口成長期にあるのか、衰退期にあるのか、将来的にどのように変化するのかを把握して対応策を検討する。

【分析手順】• 「人口マップ(人口ピラミッドおよび将来人口推計)」を活用し、生産年齢人口を含めて人口構造についての過去の推移及び将来予測を把握する。

• 「人口マップ(自然増減・社会増減の推移)」および「人口マップ(人口の社会増減from-to分析)」を活用して、人口の流出入要因を分析する。

• 転出入数の変化については、動向と変化の要因を探る。転入増の場合は、大規模な宅地開発や企業誘致などの効果分析、転出増の場合は、地域経済の縮小によるプッシュ要因なのか、近隣地域の発展によるプル要因なのかを分析する。

• また、近隣地域との関係では生活圏の範囲として「まちづくりマップ(通勤通学人口)」を見ることも重要。

図2-1人口推移 図2-2

自然増減・社会増減推移

<STEP 1>地域経済の全体像を把握する。STEP1では、地域経済循環図を利用して、地域経済の全体像と生産・分配・支出の各段階におけるお金の流出・流入の状況を把握する。政策によって、地域における生産(付加価値)を増やし、地域経済の好循環による所得の向上を実現していくために、現状の地域経済の循環構造と改善すべきポイントの把握から分析をスタートする。

【分析手順】• 「生産面では、付加価値額(図中①、以下同様)と労働生産性(②)から「稼ぐ力」を把握する。• 分配面では、通勤による雇用者所得の流入・流出(③)および企業の配当や財政トランスファーなどによるその他所得の流入・流出(④)を見る。また、地域経済循環率(⑤)が高ければ、域外からの所得移転に頼らない、経済が自立した地域である。

• 支出面では、域外からの民間消費の流入・流出(⑥)および民間投資(=設備投資)の流入・流出(⑦)を把握する。

出典:環境省「地域産業連関表」、「地域経済計算」(株式会社価値総合研究所(日本政策投資銀行グループ)受託作成)②の労働生産性については、地域経済循環マップ・生産分析より別途作成

⑥①

②③

従業者1人当たり付加価値額(労働生産性)

1次産業 2次産業 3次産業

③④

⑥⑦

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【分析手順】• 「産業構造マップ 全産業の構造」を使って、売上高、付加価値額、従業者数における主要産業の特化係数(全国平均との比較係数)を確認する。

<STEP 4>主要産業について他地域と相対比較する。

主要産業が商業サービス業であった場合、事業環境の現状を把握するために、滞在人口や流動人口を分析する。「人の動き」を把握した上で、観光やまちづくり等の政策を検討していく。

【分析手順】• 「人口マップ」による人口移動状況の把握のほか、「まちづくりマップのメッシュ分析」を活用して500mメッシュ(政令指定都市は250mメッシュ)単位で、月別・時間単位別の流動人口の集積度合いをヒートマップで確認する。

• さらに、人口集積度合いの高い地点を指定し、月別・時間単位別の流動人口をグラフで確認する。まずは広範囲をメッシュ分析することで、中心市街地や商業集積地の集積度を把握し、集積度の高い地点について流動人口を分析する。これらのデータを合わせ見ることで、「人の動き」をある程度把握することができる。

全国

A市

B県

図6-1 観光マップ(メッシュ分析)

STEP4では、特化係数を使って、地域における主要産業を把握する。主要産業の特化係数を分析することで、全国や都県の水準値と比べた相対的な産業集積度を把握することができる。

<STEP 3 >地域における主要な産業を選ぶ。

【分析手順】• 「産業構造マップ 全産業の構造」を使って、売上高、付加価値額、従業者数の各指標における「産業別構成割合」を確認する。シェアが大きい2~3程度の「大分類」を選び、その大分類の中でさらにシェアが大きい「中分類」を選ぶ。

STEP3では、地域における主要産業を把握する。さらに、主要産業について、STEP4以降の分析を進め、「主要産業の成長・強化」及び「中核企業支援」の視点から、地域経済政策を検討していく。

• 稼ぐ産業を重視する場合は「付加価値額」、地域における雇用吸収を重視するなら「従業者数」など、各指標の特性を踏まえ、それらを総合的に勘案して主要な産業を選んでいく。

• ここでは、産業構成に占める「シェア」に着目して主要な産業を選んでいくことから、選択しなかった「中分類」にも、地域にとって重要な産業や中核企業が含まれる可能性があるため留意する。そのために、主要な産業は広めに選んでおくことが大切である。

図3-1 全産業の構造

図4-1 全産業の構造(横棒グラフ)• 主要産業(大分類)の中から、産業構成(中分類別)に占めるシェアが高く、かつ各指標の特化係数が1.5以上の優位性の高い産業(中分類)を選ぶ。選ぶ時は、シェアが低い産業であっても中核企業が含まれていることもあるので、絞り込み過ぎないように注意する。

<STEP 5 ※限定メニューも利用>主要産業における中核企業候補を抽出する。

<STEP 6 (追加分析)>「人の動き」などを分析してみる。

STEP5では、主要産業における「中核企業候補」を抽出する。中核企業の経営課題を把握した上で、中核企業を支援対象とした地域経済政策を検討していく。あわせて、地域のどのような企業がどのような特許を取得しているかを把握し、主要産業における中核企業との関連を確認する。

• 既に地域において中核企業と判断している企業が属する産業の特化係数を検証してみることも、有効な分析手法である。

図5-1 特許分野別比率

A市

B県

全国

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STEP2 人口の動きをしっかり見る総人口は34,909人(2015年)で、1985年をピークに減少している。また、生産年齢人口は

57%(2015年)から50%(2040年)に減少することが推計されている。人口増減の要因をみると、社会増減、自然増減ともに1994年度より一貫してマイナスで推移している(図2-1)。従業地における従業者数は農業が一番多く、農業に雇用吸収力がある。

■茨城県行方市の概要行方市は東京から70km圏内に位置し、西側を霞ヶ浦の西浦、東側

を北浦に囲まれ、ローム土壌の広大な台地が広がり、農畜水産物の生産に恵まれた自治体である。2015年の農業産出額は、茨城県内市町村中3番目の262億円である(図 概要-1)。農産物は、さつまいもを中心に60品目以上が生産され、全国有数の

生産額を誇っている。水産物は、鯉などの養殖や公魚(わかさぎ)、白魚、川エビなどが獲れて、佃煮やうま煮などに加工されている。畜産物は、常陸牛・行方米豚・美明豚などブランド牛・ブランド豚が産出されている。農畜水産物は、ロジスティクスの発達等により、高い鮮度を維持したまま首都圏等へ出荷されている。

5

■RESAS等を活用した地域経済の分析結果STEP1 地域全体の全体像を把握する地域経済循環図を見ると、域内の産業によって「生産」された付加価値額1,072億円のうち第1次

産業は122億円、11%を占め、茨城県内自治体で4番目に高い割合である。第2次産業は315億円、29%を占める。「分配(所得)」は、雇用者所得、その他所得ともに域外から流入している。分配された所得が域内でどのように使われているかを示す「支出」は、民間消費額・民間投資額・そ

の他支出のすべての面において、域外に流出していることがわかる。

出典:農林水産省「農林業センサス」、「市町村別農業産出額」(2015年)再編加工

行方市

出典:環境省「地域産業連関表」、「地域経済計算」(株式会社価値総合研究所(日本政策投資銀行グループ)受託作成)

図1-1 行方市の地域経済循環図(2013年)

出典:総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数に関する調査」

注:2012年までは年度データ、2013年以降は年次データ。

図2-1 行方市人口の自然増減・社会増減の推移

総人口 34,909人 2015年 総人口ピーク 43,074人 1985年 製造業 396億円 40%卸売業、小売業 244億円 25%農業・林業 21億円 2%※割合は産業全体に占める構成割合母数は売上高(企業単位)大分類の合計値

※出典:国勢調査(総務省)総務省・経済産業省「平成24年経済センサスー活動調査」再編加工

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全産業の構造の売上高(中分類)でみると、「食料品製造業」、「飲食料品小売業」、「飲食料品卸売業」、「農業」の構成割合が大きく、主要産業といえる(図3-1)。行方市で産出する農作物を域内の食料品製造業が加工し、域内の卸売業、小売業によって流通する6次産業化の取組に向けた担い手が揃っている。全産業の構造の付加価値額(中分類)でみると、売上高に比して4産業の構成割合は小さく、高い付加価値をあげられていないことが分かる(図3-2)。

STEP4 主要産業について他地域と相対比較する

農業は、2015年の農業産出額が茨城県内3位であり、従業者も全産業のなかで最も多く、雇用吸収力も高い産業である。

産業構造を売上高(企業単位)で見ると、「農業」「食料品製造業」「飲食料品小売業」「飲食料品卸売業」の構成割合が高い。また、特化係数を見ても、「農業」と「食料品製造業」は、付加価値額、従業者数で1.5以上であり、他地域と比較して優位性があるといえる。しかし、労働生産性が低いことから、農業では規模の拡大を図ることや、ブランド化を推進することにより、さらなる労働生産性の向上を目指していくことが重要である。

市内の売上高や付加価値額を見ると、「農業」「食料品製造業」「飲食料品小売業」「飲食料品卸売業」が一定の規模を占め、6次産業化を進めるための担い手が揃っているといえる。

「なめがた6次産業化農商工連携ビジネス地域創生事業」

青果物や原料を首都圏等の市場へ供給するばかりの地域からの脱却を目指し、地域資源を生かした競争力の高い商品の開発と、地域活動を発信することができる人材の養成を進める。また、同業種連携+異業種連携の実現を目指し、行方市と包括連携協定を結んだ東京農業大学と、行方市とがコーディネーター役となり、域内の幅広い分野の人材と連携体制を構築し、地域が一体となって人材養成事業を展開している。

分析結果から導き出された行方市の特徴と課題

行方市における地方創生施策

6

食料品製造業

飲食料品小売業

飲食料品卸売業

農業 食料品製造業

農業

飲食料品小売業

飲食料品卸売業

図3-1 全産業の構造 2012年 売上高(企業単位)中分類 図3-2 全産業の構造 2012年 付加価値額(企業単位)中分類

出典:総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査」再編加工

出典:総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査」再編加工

農業と製造業の特化係数をみると、「農業」及び「食料品製造業」ともに付加価値額と従業者数の特化係数が1を超え、他地域に比べて優位性があるといえる(図4-1、図4-2)。特に農業は、付加価値額、従業者数ともに特化係数は10を超え、非常に高いといえる。ただし、労働生産性の特化係数は農業、食

料品製造業ともに1を下回り、優位性はみられない(図4-1、図4-2) 。

図4-1 産業別特化係数2012年 農業

図4-2 産業別特化係数2012年 製造業(上位3産業)

農業

STEP3 地域における主要な産業を選ぶ

出典:総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査」再編加工

行方市6次産業化・農商工連携ビジネスセミナーの様子

※行方市提供資料

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■栃木県足利市の概要栃木県足利市は、栃木県の南西部にあり、東京から北へ約80キ

ロメートルに位置する、室町幕府を開いた足利氏ゆかりの地である。産業については古くから織物のまちとして知られており、近年

はアルミや機械金属、プラスチック工業等を中心とした総合的な商工業都市となっている。市内にはフランシスコ・ザビエルが「坂東の大学」と呼んだ足

利学校があり、600畳敷きの大藤を有するあしかがフラワーパーク等の観光資源もあることから多くの観光客が訪れている。

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STEP1 地域経済の全体像を把握する地域経済循環図を見ると、生産(付加価値額)面では第2次産業、第3次産業による生産額が大き

いことが分かる。分配(所得)面では雇用者所得、その他所得ともに域外からの流入超過となっている。支出面では民間消費額、民間投資額、その他支出がともに域外への流出超過となっており、地域経済循環率は85.0%となっている(図1-1)。

図1-1 足利市の地域経済循環図

出典:環境省「地域産業連関表」、「地域経済計算」(株式会社価値総合研究所(日本政策投資銀行グループ)受託作成)

■RESAS等を活用した地域経済の分析結果

足利市

STEP2 人口の動きをしっかり見る人口構造を見ると、総人口は149,452人(2015年)で1990年をピークに減少している。また、生産

年齢人口は57.6%(2015年)から51.2%(2040年)に減少することが推計されている。人口増減の要因を見ると、1996年度より社会増減・自然増減共に概ねマイナスで推移している(図2-1)。転出入については、転出超過状態であり、直近では群馬県太田市への転出が多い。年代別では10代から40代までの世代が転出超過である。従業地における従業者数は製造業が一番多い。

図2-1 足利市の自然増減・社会増減の推移

出典:総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数に関する調査」

注:2012年までは年度データ、2013年以降は年次データ。

総人口 149,452人 2015年 総人口ピーク 167,686人 1990年 製造業 2,080億円 34%卸売業、小売業 2,117億円 34%建設業 505億円 8%

13,784第1位

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

栃木県内繊維工業製造品出荷額等(百万円)

出典:経済産業省「工業統計調査」再編加工、総務省・経済産業省「経済センサスー活動調査」再編加工

※割合は産業全体に占める構成割合母数は売上高(企業単位)大分類の合計値

※出典:国勢調査(総務省)総務省・経済産業省「平成24年経済センサスー活動調査」再編加工

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金属製品

製造業

STEP6 追加分析 人の動きの分析など外国人メッシュではあしかがフラワーパークに多くの外国人観光客が訪れていることが分かり(図5-1)、外国人滞在分析によると特に4月~5月の時期に外国人が多く訪れていることがわかる(図5-2)。

図3-1 製造業の構造 2013年 事業所数(実数) 図4-1 産業別特化係数 2012年製造業

STEP3 地域における主要な産業を選ぶ全産業の構造の付加価値額(大分類)を見ると、製造業が518億円と最も大きく、さらに製造業の構造

を見ると、繊維工業の事業所数が最も多いことが分かる(図3-1)。STEP4 主要産業ついて他地域と相対比較する産業別特化係数では、繊維工業の付加価値額及び従業者数の特化係数が特に高くなっており、他地域に

比べて優位性があるといえる(図4-1)。一方、付加価値額の推移では、繊維工業の付加価値額は減少傾向にある(図4-2)。

分析結果から導き出された足利市の特徴と課題

足利市における地方創生施策

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近隣都市への人口流出が多く、人口減少が続いている。 付加価値額が大きい製造業の中では、繊維工業が域内に多くの事業所を有し、他地域に比べて

優位性が高いことから、主要産業のひとつといえる。一方、付加価値額は減少傾向にある。蓄積してきた技術を活用し、新たな付加価値を創出する仕組みが必要である。

市内にあるあしかがフラワーパークは外国人を始めとした多くの観光客を誘客しており、国内外に対し足利市の繊維製品をPRできる可能性がある。

「絹のみち連携事業」「絹」の織物産地や関連事業者と広域的に連携し、新商品開発な

どのものづくり支援や広域観光ルート開発を進める。

「テキスタイルテクノロジーグローバルプロモーション事業」地域の基幹産業である繊維産業の事業者が集結し、自立的に国内

外への販路開拓や「繊維産地足利」のPRの展開、後継者育成を図る。

繊維工業114事業所

出典:経済産業省「工業統計調査」再編加工、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」再編加工

図5-2 外国人滞在分析(RESASを加工)

出典:株式会社NTTドコモ・株式会社ドコモ・インサイトマーケティング「モバイル空間統計」

繊維工業

プラスチック

製品製造業

生産用機械

器具製造業

輸送用機械

器具製造業

出典:総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査」再編加工

図4-2 付加価値額(実数)の推移

出典:経済産業省「工業統計調査」再編加工、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」再編加工

出典:株式会社NTTドコモ・株式会社ドコモ・インサイトマーケティング「モバイル空間統計」

図5-1 外国人メッシュ(2015年8月~2016年7月)あしかがフラワーパーク

太田駅佐野プレミアム・アウトレット

銀座の百貨店を会場とした新商品の展示会

※足利市提供資料

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伊那市

■長野県伊那市の概要長野県伊那市は、長野県の南部に位置し東に南アルプス、西に中

央アルプスという二つのアルプスに抱かれ、市の中央部を流れる天竜川や三峰川沿いには平地が広がり河岸段丘も見られる。市内を南北に走っている中央自動車道や国道153号等の幹線道路も整備され、東京・名古屋のほぼ中間に位置していることから、商工業にとって優良な立地条件であるといえる。産業については電気・精密・機械等の高度な加工技術産業や食品

等の健康長寿関連産業が発展し、モノづくり産業の拠点として、いくつもの工業団地が形成されている。また、肥沃な土地と豊かで良質な三峰川水系の水を生かした農業も盛んとなっている。

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STEP1 地域経済の全体像を把握する地域経済循環図を見ると、生産(付加価値額)面では第2次産業、第3次産業による生産額が大きい

ことが分かる。分配(所得)面では、雇用者所得、その他所得ともに域外からの流入超過となっている。支出面では民間消費額が観光客等の消費により域外から流入超過となっているものの、民間投資額とその他支出は大きく流出超過となっており、地域経済循環率は77.8%となっている(図1-1)。

図1-1 伊那市の地域経済循環図

出典:環境省「地域産業連関表」、「地域経済計算」(株式会社価値総合研究所(日本政策投資銀行グループ)受託作成)

■RESAS等を活用した地域経済の分析結果

STEP2 人口の動きをしっかり見る人口構造を見ると、総人口は68,271人(2015年)で1995年をピークに減少している。また、生産年

齢人口は55.8%(2015年)から50.9%(2040年)に減少することが推計されている。人口増減の要因を見ると、2007年度より社会増減・自然増減共に一貫してマイナスで推移している(図2-1)。転出入については転出超過状態であり、直近では南箕輪村への転出が多い。年代別では10代から20代までの世代が転出超過である。従業地における従業者数は製造業が一番多い。

図2-1 伊那市の自然増減・社会増減の推移

出典:総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数に関する調査」

注:2012年までは年度データ、2013年以降は年次データ。

55,034第3位

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

松 本

飯 田

伊 那

長 野

大町

木 曽

上 田

王 滝

佐 久

栄 村

長野県内市町村別森林面積(単位:ha)

出典:長野県ホームページ、民有林の現況(平成26年4月)を再編加工

「天下第一の桜」と称される高遠城址公園の桜や、仙丈ケ岳を中心とする南アルプス国立公園といった観光資源もあり、多くの観光客がこれらの観光地を訪れている。

総人口 68,271人 2015年 総人口ピーク 72,229人 1995年 製造業 1,234億円 35%卸売業、小売業 1,060億円 30%建設業 311億円 9%

※割合は産業全体に占める構成割合母数は売上高(企業単位)大分類の合計値

※出典:国勢調査(総務省)総務省・経済産業省「平成24年経済センサスー活動調査」再編加工

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52,575万円

図4-3 製造品出荷額等(実数)の推移 (1986年~2013年)

STEP3 地域における主要な産業を選ぶ全産業の構造の売上高(大分類)を見ると、製造業の売上高が1,234億円と最も大きな割合を占めてお

り主要産業といえる。また、農業、林業の売上高は34億円と全産業に占める割合は低い。

STEP4 主要産業について他地域と相対比較する産業別特化係数では、農業、林業における付加価値額及び従業者数の特化係数が高い。特に林業の特化

係数が高いことから、他地域に比べて優位性があるといえる(図4-1)。また、林産物販売金額帯別の経営体の割合では、全国や長野県と比較し、林産物の販売金額の大きい経営体の割合が高いことが分かる(図4-2)。関連産業の製造品出荷額等については、減少傾向であるものの、近年は上向いてきている(図4-3)。一方、林業総収入は年々減少傾向である(図4-4)。

分析結果から導き出された伊那市の特徴と課題

伊那市における地方創生施策

10

人口減少が続いており、10代から20代までの世代が転出超過である。 林業は、付加価値額等の特化係数が高く、関連産業の製造品出荷額等も近年上向いてきてはいる

ものの、林業総収入は年々減少傾向にある。 林業は、特化係数が高いものの、産業構造(売上高)の中で占める割合は高くない。今後は関

連産業とともに、6次産業化などを進め、事業拡大を図っていく必要がある。

「山(森林)が富と雇用を支える50年後の伊那市」を基本理念とした、伊那市50年の森林(もり)ビジョンを策定

「ソーシャル・フォレストリー都市」として、市民を主役とした自立的な経済の循環を構築する新しいビジネスモデルの創出を目指し、「市域材の利活用」「木質バイオ マスの利用促進」「森林整備・環境保全」等の施策を展開。

出典:経済産業省「工業統計調査」再編加工、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」再編加工

図4-2 林産物販売金額帯別の経営体の割合図4-1 産業別特化係数 2012年農業、林業

2010年 2015年

出典:総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査」再編加工

出典:農林水産省「農林業センサス」再編加工

農業林業

2015年 長野県平均14,635万円

図4-4 林業総収入(総額)

出典:農林水産省「農林業センサス」再編加工

2005年 2010年 2015年

66,125万円

30,675万円

チェーンソーを利用した森林整備の様子

※伊那市提供資料

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伊豆市

■静岡県伊豆市の概要静岡県伊豆市は、伊豆半島の中央部にあり、直線距離で東京か

ら約100キロメートル、静岡市から約60キロメートルに位置する。南側は天城山系の山並みに囲まれ、西側には駿河湾、中央部には天城山から発する狩野川が流れ、北部は田方平野となって開けており、豊かな自然環境に恵まれている。火山との関係が深い伊豆半島であるため温泉が豊かであり、修

善寺温泉や土肥温泉を代表とする温泉地に加え、浄蓮の滝などの天然の観光資源も豊富であり、全国から観光客が訪れる。更には2020年の東京オリンピック・パラリンピックの自転車競

技(トラックレース/マウンテンバイク)の開催が決定している。

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STEP1 地域経済の全体像を把握する地域経済循環図を見ると、生産(付加価値額)面では第3次産業による生産額が大きいことが分か

る。分配(所得)面では、雇用者所得、その他所得ともに域外からの流入超過となっている。支出面では民間消費額が観光客等の消費により域外から流入超過となっているものの、民間投資額とその他支出は大きく流出超過となっており、地域経済循環率は79.8%となっている(図1-1)。

図1-1 伊豆市の地域経済循環図(2013年)

出典:環境省「地域産業連関表」、「地域経済計算」(株式会社価値総合研究所(日本政策投資銀行グループ)受託作成)

■RESAS等を活用した地域経済の分析結果

STEP2 人口の動きをしっかり見る人口構造を見ると、総人口は31,317人(2015年)で1980年をピークに減少している。また、生産年

齢人口は52.6%(2015年)から45.0%(2040年)に減少することが推計されている。人口増減の要因を見ると、1996年度より社会増減・自然増減共に概ねマイナスで推移している(図2-1)。転出入については、転出超過状態であり、直近では伊豆の国市への転出が多い。年代別では10代、20代の世代が転出超過である。従業地における従業者数は宿泊業、飲食サービス業が一番多い。

図2-1 伊豆市人口の自然増減・社会増減の推移

出典:総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数に関する調査」

注:2012年までは年度データ、2013年以降は年次データ。

※割合は産業全体に占める構成割合母数は売上高(企業単位)大分類の合計値

※出典:国勢調査(総務省)総務省・経済産業省「平成24年経済センサスー活動調査」再編加工

2,697第1位

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

静岡 長野 北海道 新潟 福島 三重 栃木 山梨 東京 千葉

都道府県別旅館施設数

出典:厚生労働省「平成28年度衛生行政報告例」再編加工

総人口 31,317人 2015年 総人口ピーク 39,915人 1980年以前 製造業 132億円 18%卸売業、小売業 172億円 23%建設業 116億円 16%

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STEP6 追加分析 人の動きの分析など目的地一覧を見ると、市内には多くの観光地があり(図6-1)、流動人口メッシュを見ると、中心市

街地である修善寺駅周辺に人が集まっていることが分かる(図6-2)。

図3-1 全産業の構造 2012年 付加価値額(企業単位)中分類

図4-1 産業別特化係数 2012年宿泊業、飲食サービス業

STEP3 地域における主要な産業を選ぶ全産業の構造の付加価値額(中分類)を見ると、宿泊業の構成割合が大きく、伊豆市における主要産業

といえる一方、飲食店の構成割合は小さいことが分かる。(図3-1)。STEP4 主要産業ついて他地域と相対比較する産業別特化係数では、宿泊業における付加価値額及び従業者数の特化係数が特に高くなっており、他地

域に比べて優位性があるといえる(図4-1)。一方、飲食店は県内の他の市と比較しても付加価値額が低いことが分かる(図4-2)。

分析結果から導き出された伊豆市の特徴と課題

伊豆市における地方創生施策

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域外からの観光客等の消費により、民間消費額は流入超過となっている。 地域を支える主要産業である宿泊業の付加価値額は高いが、飲食店の付加価値額は低い状態と

なっており、飲食店は宿泊客の消費を十分に取り込めていないと考えられる。 観光資源には恵まれているが、市内に観光地が分散していることから、中心市街地である修善

寺駅を拠点とした観光客等の回遊性の向上が課題となっている。

宿泊業

出典:総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査」再編加工

宿泊業

飲食店

出典:総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査」再編加工

図4-2 付加価値額(企業単位)2012年 飲食店

伊豆市

下田市

熱海市

伊東市

飲食店

図6-1 伊豆市の目的地一覧(2015年、休日、自動車)

出典:株式会社ナビタイムジャパン「経路検索条件データ」出典:株式会社Agoop「流動人口データ」

中小企業庁「地域資源情報」

図6-2 流動人口メッシュ(2016年、6月、休日)

①淨蓮の滝

②自転車の国

④土肥温泉

③ラフォーレ修善寺温泉スパ 修善寺駅

修善寺温泉

② ③ ④

「コンパクトタウン&ネットワーク構想推進事業」

歩いて楽しい魅力ある中心市街地及び周辺集落部における人々が集い賑わいのある集落中心拠点づくりを進めるとともに、中心市街地と集落中心拠点を相互に結ぶ持続可能なネットワークの形成による“まちの賑わい”を創出する。

修善寺駅西広場での賑わい創出イベント

※伊豆市提供資料

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