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: Optimal Portfolio 2017/06/30 1, 2 4 ファイナンス モデ ”( [1999]) 3.73.8 1.9 ,第 3 Principles of Financial Economics”(LeRoy and Werner[2001]) Chapter 12,13 している. 1 Optimal Portfolio 1.1 Non-redundancy える. t =0, 12 Ω= {ω 1 , ··· S }; S< P : P (ω s )= p s > 0; S s=1 p s =1 N リスク ある ペイオフ ˜ d j ˜ d j (ω s )= D sj ;1 s S, 1 j N q j q j > 0 リターン ˜ r j ˜ r j := ˜ d j /q j 待リターン µ j µ j := Er j ], µ := (µ 1 , ··· N ) する ΣΣ=(σ ij ) 1i,j N , σ ij := Covr i , ˜ r j ]= E[(˜ r i µ i )(˜ r j µ j )] 1 する Σ= ( < ˜ r i µ i , ˜ r j µ i > p ) 1i,j N (1) 1 x =(x1, ··· ,xS ) R S , a R に対し,x + a := (x1 + a, ··· ,xS + a) たこ 意. 1

資料: Optimal Portfolio...資料: Optimal Portfolio 2017/06/30 本稿の第1, 2章,4章は“ファイナンスの数学的基礎―離散モデ ル”(津野[1999])の3.7,3.8節及び1.9節,第3章は“Principles

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資料: Optimal Portfolio

2017/06/30

本稿の第 1, 2章,4章は “ファイナンスの数学的基礎―離散モデル”(津野 [1999])の 3.7,3.8節及び 1.9節,第 3章は “Principles of

Financial Economics”(LeRoy and Werner[2001])の Chapter 12,13

に準拠している.

1 Optimal Portfolio

1.1 Non-redundancy

• 以下の市場を考える.

– t = 0, 1:2時点

– Ω = ω1, · · · , ωS;S < ∞

– P : P (ωs) = ps > 0;∑S

s=1 ps = 1

– N 個のリスクのある証券

∗ ペイオフ dj:dj(ωs) = Dsj; 1 ≤ s ≤ S, 1 ≤ j ≤ N

∗ 価格 qj: qj > 0

∗ リターン rj:rj := dj/qj

∗ 期待リターン µj:µj := E[rj],

µ := (µ1, · · · , µN)′とする

∗ 分散共分散行列Σ:Σ = (σij)1≤i,j≤N ,

σij := Cov[ri, rj] = E[(ri − µi)(rj − µj)]1 とすると,

Σ =(< ri − µi, rj − µi >p

)1≤i,j≤N

(1)

1 任意の x = (x1, · · · , xS)′ ∈ RS , a ∈ Rに対し,x+ a := (x1 + a, · · · , xS + a)′ とし

たことに注意.

1

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と書け,これはベクトル (r1 − µ1), · · · , (rN − µN)によって定まるGram行列2 であることがわかる.

– 無リスク証券 1Ωについては,

1. 1Ωに投資しない

2. 1Ωに投資する(このとき,これを証券 0とする)

の 2つの場合を考える(リターンを r0 = rで表わす).

• 簡単のため,投資家は t = 0でEndowment W0 > 0を用いて証券 (0, )1, · · · , N に投資を行い,t = 1において得られたペイオフ W1を全て消費し,この消費の量が効用を定めるとする.すなわち,各証券 i = (0, )1, · · · , N への投資額を xiとしたとき,

∑Ni=1 xi = W0; 1Ωに投資しない∑Ni=0 xi = W0; 1Ωに投資する

(2)

であり,

W1 =

∑N

i=1 xiri; 1Ωに投資しない∑Ni=0 xiri; 1Ωに投資する

(3)

としたとき,投資家の期待効用表現が E[u(W1)]と書けるとする.

– このとき,θi := xi/W0; i = (0, )1, · · · , N とし,θ =

(θ1, · · · , θN)′ (もしくは θ = (θ0, θ1, · · · , θN)′ = (θ0, θ′)′)

を “ポートフォリオ”と呼ぶこととする.このとき,(3)は

W1 =

W1(θ) =

(∑Ni=1 θiri

)W0; 1Ωに投資しない

W1(θ0, θ) =(∑N

i=0 θiri)W0; 1Ωに投資する

(4)

となる(∑N

i=1 θi = 1,もしくは∑N

i=0 θi = 1に注意).

rθ =∑N

i=1 θiri (rθ =∑N

i=0 θiri)を,ポートフォリオ θ(θ)

のリターンという.

2 Gram行列については,4章参照.

2

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– なお,u(·)がある区間 I ⊂ Rでのみ定義されている場合は,

A := θ ∈ RN ;N∑i=1

θi = 1, W1(θ;ωs) ∈ I ∀s = 1, · · · , S

(5)

もしくは

B := θ ∈ RN ; W1(θ0, θ;ωs) ∈ I ∀s = 1, · · · , S, ただしθ0 = 1−N∑i=1

θi

(6)

として,θ ∈ A(1Ωに投資しないとき) または θ ∈ B(1Ωに投資するとき)のみを考える(このときA, Bは凸集合になる).

• 以下では,次の意味で重複性 (redundancy)のない市場を考察する.

定義 1 市場において重複性 (redundancy)がないとは,ある W

W =N∑i=1

xiri

とかけるとき,この x = (x1, · · · , xN)′が一意に定まることを

いう.

– これは明らかに,(4)において θが一意に定まることと同値である.

1.2 Optimal Portfolio

• 本節では以下の状況で,投資家の最適ポートフォリオを考える.

– 投資家の選好は vN-M rep.E[u(W1)]を持ち,この uは I

の内点において u′ > 0, u′′ < 0(強い意味でリスク回避的)をみたす.

– この仮定の下で,投資家は以下の最適化問題をとく:

3

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∗ 1Ωに投資しないとき

maxθ∈A

f(θ) = maxθ∈A

E[u(W1(θ))] (7)

∗ 1Ωに投資するとき

maxθ∈B

f(θ) = maxθ∈B

E[u(W1(θ0, θ))] (8)

• 最適ポートフォリオの存在に関しては,以下の結果が知られている.

定理 1 (7)または (8)における最適ポートフォリオ θ∗が存在する必要十分条件は,市場が無裁定であることである.

• 以下では,最適ポートフォリオの一意性に関する条件を考察する.まず最適ポートフォリオが存在するとき,その一意性に対する必要条件は,「市場に重複性がないこと」であることに注意する.

• 無リスク資産に投資しないとき

• 命題 1 分散共分散行列 Σが正則であれば,市場に重複性はない.

(証明)ri(ω), i = 1, 2, · · · , N の一次独立性を示せばよい.

W1(ω) =N∑i=1

xiri(ω) ≡ 0, xi ∈ R

とし,x = (x1, x2, · · · , xN)′ とおく.明らかに,E[W1] = 0,

V ar[W1] = x′Σx = 0 であるが,Σ は正則なので,正値定符号であり,従って,xi = 0,∀i = 1, 2, · · · , N.2

– Σが正則であるという仮定はN個のリスク資産からなる市場が不完備である場合を考察することになる.実際,完備市場を仮定すると,あるポートフォリオ θ = (θ1, · · · , θN) =0が存在して,rθ = r(定数),すなわち無リスクポートフォリオを構成できる.このとき,

V ar[rθ] =< θ,Σθ >= 0

4

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となるので,θ = 0より det(Σ) = 0,すなわち Σは正則ではない(ただし,ここでの< ·, · >はRNにおける通常の内積).

定理 2

– u(·):strictly concave

– Σ:正則

とすると,(7)で定義されたf(θ)は,θに関して strictly concave

になる.

(証明)

Σが正則なので,市場に重複性はない.すなわち,任意のポートフォリオ θ1 = θ2に対して,

∃ωs′ ∈ Ω, W1(θ1;ωs′) = W1(θ2;ωs′). (9)

よって,uが strictly concaveであることより任意の λ ∈ (0, 1)

に対して,

u(W1(λθ1 + (1− λ)θ2;ωs))

= u(λW1(θ1;ωs) + (1− λ)W1(θ2;ωs))

≥ λu(W1(θ1;ωs)) + (1− λ)u(W1(θ2;ωs));∀ωs ∈ Ω

かつ,(9)をみたす ωs′ ∈ Ωについて

u(W1(λθ1 + (1− λ)θ2;ωs′))

> λu(W1(θ1;ωs′)) + (1− λ)u(W1(θ2;ωs′))

が成立する.よって,両辺に ps > 0(s = 1, · · · , S)を掛けて足し合わせると

f(λθ1 + (1− λ)θ2) = E[u(W1(λθ1 + (1− λ)θ2))]

> λE[u(W1(θ1))] + (1− λ)E[u(W1(θ2))]

= λf(θ1) + (1− λ)f(θ2)

を得るので,f(·)が strictly concaveであることがわかった.2

5

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– 定理 2の仮定が成り立つとき,最適ポートフォリオは(存在すれば)一意に定まる.

– (7)の最適解がAの内点で得られたとする.このとき,

L(θ, λ) := f(θ)− λ(N∑i=1

θi − 1) (10)

とすれば,Lagrange法より F.O.C.は

∂L

∂θi

∣∣∣∣θ∗,λ∗

=∂f

∂θi

∣∣∣∣θ∗,λ∗

− λ∗

= E[u′(W1(θ∗))ri]W0 − λ∗ = 0

∂L

∂λ

∣∣∣∣θ∗,λ∗

=N∑i=1

θ∗i − 1 = 0

より,(θ∗, λ∗)は

E[u′(W1(θ∗))ri] =

λ∗

W0

(11)

N∑i=1

θ∗i = 1 (12)

を満たすことがわかる.

• 無リスク資産に投資するとき

まず,次の補題を示す.

補題 1 Σが正則であるとき,(4)における W1(θ0, θ)の表現は一意に定まる.

(証明)

まず,次のことに注意する:

W1(θ0, θ) =

(N∑i=0

θiri

)W0

=

[(1−

N∑i=1

θi

)r +

N∑i=1

θiri

]W0 =

[N∑i=1

θi(ri − r) + r

]W0.

(13)

6

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よって,W1(θ0, θ) = W1(η0, η)なるポートフォリオ θ, ηについて,νi = θi − ηiとおけば,

N∑i=1

νi(r − r) = 0 (14)

を得るので,期待値を取って

N∑i=1

νi(µi − r) = 0 (15)

となる.よって (14)と (15)を合わせて

N∑i=1

νi(ri − µi) = 0 (16)

となるが,Σが正則より (r1 −µ1), · · · , (rN −µN)は(RSの元としてみると)一次独立.よって,νi = 0; i = 1, · · · , N を得る.すなわち,i = 1, · · · , N について θi = ηiであり,ここから θ0 = η0も従う.2

このとき,次の定理を示すことができる.

定理 3

– u(·):strictly concave

– Σ:正則

とすると,(8)で定義された

f(θ) = E[u(W1(θ0, θ))]

= E

[u(W1(

(1−

N∑i=1

θi

), θ))

]

は,θに関して strictly concaveになる.

(証明)

補題 1より,W1の表現は一意的である.よって,定理 2の証明と同様に示される.2

7

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– 先ほどと同様,(8)の最適解が Bの内点で得られるとする.このとき,(8)と (13)より F.O.C.は

∂f

∂θi

∣∣∣∣θ∗

= E[u′(W1(θ∗))(ri − r)]W0 = 0 (17)

となるので,最適解 θ∗は,

E[u′(W1(θ∗))(ri − r)] = 0 (18)

を満たすことがわかる.

2 HARA utilities

本節では,HARAクラスの効用関数について成り立つ結果を見る.

• まず,HARAクラスについて簡単に復習する.

– HARAクラスとは,ARA(Absolute Risk Aversion)がHy-

perbolic型(双曲型)になる効用関数の総称であった.すなわち,

ARA(W ) = −u′′(W )

u′(W )=

1

aW + b; aW + b > 0.

このとき,Absolute Risk Toleranceは線形となるので,LRT(Liner Risk Tolerance)クラスとも呼んだ.

– このクラスに属する効用関数は,a, bの値によって(posi-

tive affine transformationに関して一意に)決定され,以下の 3種に分けられた:

∗ 指数型:u(W ) = − exp(−1bW ); W ∈ R

∗ 対数型:u(W ) = log(W + b); W > −b

∗ べき型:

u(W ) =

(1− γ

γ

)(W

1− γ+ b

;W

1− γ> −b, γ = 0, 1

∗ なお,指数型及び対数型は,それぞれべき型におけるγ → ±∞, 0の極限に対応する.

8

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∗ これらの効用関数では,γを固定したとき,bが個人の特性を表わすと考えられる.そこで,本節では γを固定し,異なる bを持つ投資家の最適ポートフォリオについて考える.

• 今後,本節では以下を仮定する.

– 前節までと同様,N 個のリスクのある証券, 無リスク証券 1Ω からなる市場は無裁定で,Σは正則とする.

– 共通のγで特徴づけられるHARAクラス効用関数uk( · ; bk, γ)(定義域 Ik ⊂ R)と資産W k

0 > 0を持つ各投資家 kは以下の最適化問題を解く:

maxθk∈Bk

E[uk(W k1 (θ

k0 , θ

k); bk, γ)]; (19)

W k1 (θ

k0 , θ

k) = W k1 (θ

k) =

[N∑i=1

θki (ri − r) + r

]W k

0 , (20)

Bk := θk ∈ RN ; W k1 (θ

k0 , θ

k;ωs) ∈ Ik ∀s, ただしθk0 = 1−N∑i=1

θki

– 各投資家の最適ポートフォリオ θ∗kはBkの内点でとして得られる.

– 債券への全額投資 (θk0 = 1, θki = 0; i = 1, · · · , N)で得られるペイオフ:W k

1 (θk) = rW k

0 ∈ Ik

• 以上の仮定の下で,以下の定理が成立する.

定理 4 前項の仮定が成立するとき,b, W0 (bk, W k0 )に依存し

ないあるリスク資産のポートフォリオ θ∗γが存在して,全ての投資家 kについて,ある定数 λkに対して θ∗k = λkθ

∗γが成立す

る.すなわち,投資家 kの最適なポートフォリオは,

(θ∗k0 , θ∗k)′ =

((1− λk

N∑i=1

θ∗γi

), λkθ

∗γ

)′

(21)

となる.この結果を,Two-Fund Separationという.

– この結果は,各投資家の最適ポートフォリオにおける危険資産の組み入れ比率 θ∗ki /θ∗kj が,kによらず一定の比率αijとなることを示している.

9

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(証明)

仮定及び定理 3より,最適解の存在及び一意性は保証されている.よって,各投資家 kの最適ポートフォリオは

E[(uk)′(W k1 (θ

∗k))(ri − r)] = 0; i = 1, · · · , N (22)

をみたす.

以下,γの値によって場合分けをして証明する.

– 指数型 (γ → ±∞)の場合

(22)に,uk(W ) = − exp(− 1bkW )(bk > 0)及び (20)を代入

すると,

1

bkE

exp−W k

0

bk

N∑j=1

θ∗kj (rj − r) + r

(ri − r)

=

1

bke−

rWk0

bk E

exp−W k

0

bk

N∑j=1

θ∗kj (rj − r)

(ri − r)

= 0;

i = 1, · · · , N (23)

を得る.ここで,η∗kj :=Wk

0

bkθ∗kj とおくと,この η∗kj は

E

exp−

N∑j=1

η∗kj (rj − r)

(ri − r)

= 0; i = 1, · · · , N

(24)

をみたす.ところが,η∗kj は証券の超過リターンのみにより決まり,W k

0 ,bk には依存しないので,最適ポートフォ

リオの一意性に注意すれば η∗kj = η∗j∀kとなる.すなわ

ち,各投資家 kの最適ポートフォリオにおける危険資産の組み入れ比率は,

θ∗kiθ∗kj

=bk

W k0

η∗i

/bk

W k0

η∗j = η∗i /η∗j (25)

となり,投資家全体で共通となる.

– γ < 1のとき

(uk)′(W ) =

(W

1− γ+ bk

)γ−1

10

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=

(1

1− γ

)γ−1 (W + (1− γ)bk

)γ−1=: C × (uk)′(W )

(26)

(ただし,

C :=

(1

1− γ

)γ−1

,

(uk)′(W ) :=(W + bk

)γ−1, bk := (1− γ)bk

とする)

これを (22)に代入すれば,

E

W k

0

N∑j=1

θ∗kj (rj − r) + r

+ bk

γ−1

(ri − r)

= 0; i = 1, · · · , N

(27)

となる.

特に k = K(すなわち bk = bK ,W k0 = WK

0 )を固定して,

E

WK

0

N∑j=1

θ∗Kj (rj − r) + r

+ bK

γ−1

(ri − r)

= 0; i = 1, · · · , N

(28)

を得る.

ここで,ある定数 λkに対して,θ∗kj := λkη∗kj とおくと,

W1(θ∗k) + bk = W k

0

N∑j=1

θ∗kj (rj − r) + r

+ bk

= (W k0 r + bk) + λk W

k0

WK0

WK0

N∑j=1

η∗kj (rj − r)

=

(W k

0 r + bk)− λk Wk0

WK0

(WK0 r + bK)

+λk Wk0

WK0

WK0

N∑j=1

η∗kj (rj − r) + r

+ bK

となるので,特に λkを

λk =WK

0

W k0

W k0 r + bk

WK0 r + bK

11

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とすると,上式の第一項 ·が 0となるので,

W1(θ∗k) + bk = λk W

k0

WK0

WK0

N∑j=1

η∗kj (rj − r) + r

+ bK

=

W k0 r + bk

WK0 r + bK

WK0

N∑j=1

η∗kj (rj − r) + r

+ bK

(29)

を得る.さらにこれを (27)に代入することで,結局

E

WK

0

N∑j=1

η∗kj (rj − r) + r

+ bK

γ−1

(ri − r)

= 0;

i = 1, · · · , N (30)

を得るが,最適解の一意性より明らかにこの解は (28)の解と一致する.すなわち,η∗k = θ∗K ; ∀kである.

従って,各投資家 kの最適ポートフォリオにおける危険資産の組み入れ比率は,

θ∗kiθ∗kj

=λkη∗kiλkη∗kj

=η∗kiη∗kj

=θ∗Kiθ∗Kj

(31)

となり,kによらず一定であることがわかる.

– γ > 1の場合は γ < 1の場合と同様.2

• uk(W ) = − exp(− 1bkW )(bk > 0)の場合は,(a) ARA = 1

bk(定

数)なので dARAdWk

0= 0であり,危険資産全体への最適投資額

W ∗k0,Rは,W ∗k

0,R = W k0

∑Nj=1 θ

∗kj = bk(

∑Nj=1 η

∗j )となり初期資産

W k0 に依存しないので,

dW ∗k0,R

dWk0

= 0である.さらに,(b) bkが上

昇 (下落)するとARA( 1bk)は下落 (上昇)し,危険資産全体への

最適投資額の絶対値 |W ∗k0,R| = bk|∑N

j=1 η∗j |は増加 (減少)する.

((a), (b)は危険資産が1つのみの場合の結果と同様である.)

• γ < 1の場合,

θ∗kW k0 = λkη∗kW k

0 = θ∗K(

WK0

WK0 r + bK

)(W k

0 r + bk)

12

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と表わされるので,kの最適投資金額ベクトルは,初期資産W k

0 に関して線形である.

また,kの危険資産への最適投資金額をW ∗k0,R := (W k

0

∑Nj=1 θ

∗kj )

とおくと,ある定数 α, βk によりW ∗k0,R = αW k

0 + βk と表わ

され,「危険資産投資の初期資産弾力性」η :=dW ∗k

0,R/W ∗k0,R

dWk0 /Wk

0は

η = αα+(βk/W

k0 )となる.

• γ < 1で,全ての kについて bk = 0の場合は, 

u(x) =xγ

γ(x > 0)

で,

θ∗kW k0 = θ∗KW k

0

となり,また,λk = 1から θ∗k = θ∗K である. また,(30)より,θ∗Kは証券のリターンと γのみにより決まるので,全ての投資家に共通の最適投資比率 (1−∑N

j=1 θ∗kj , θ∗k)は初期資産額

W k0 に依存しない.

さらに,初期資産W k0 が増加(減少)すれば, ARA (1−γ

Wk0)が

下落 (上昇)すると共に,危険資産全体への最適投資額の絶対値 |W ∗k

0,R|(= W k0 |(∑N

j=1 θ∗kj )|)は増加 (減少)するが,RRA =

1 − γ(定数)なので dRRAdWk

0= 0であり,また,危険資産投資の

初期資産弾力性 ηは η = 1となる.(これらの性質は危険資産が1つのみの場合と同様である.)

3 その他の結果

本章では,最適なポートフォリオの性質について検討する.省略されている証明については,LeRoy and Werner[2001]の Chapter

12,13を参照.

3.1 One Risky Asset

• まず,資料「Measure of Risk Aversion」におけるArrow-Pratt

の結果と同様,1つの危険資産(リターン r)と 1つの無リスク資産(リターン r)における場合を考察する.

13

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• 以下では,先ほどまでと同様,個人は t = 0における資産W0

を全て投資し(危険資産への投資額を aとする),t = 1のおいて得られるペイオフ W1(a) = ar+(W0−a)r = a(r− r)+W0r

を全て消費する.すなわち,この個人は以下の最適化問題を解く:

maxa∈A

E[u(W1(a))] = maxa∈A

E[u(a(r − r) +W0r)] (32)

ただし,A := a ∈ R; W1(a) ∈ I, (33)

Iは効用関数 u(·)の定義域.

• さらに,uはC2級で,u′ > 0とする.また (32)において内点解 a∗が得られると仮定する.このとき,a∗は以下のF.O.C.を満たす:

E[u′(a∗(r − r) +W0r)(r − r)] = 0. (34)

このとき,以下が成立する.

定理 5 以下を仮定する:

– u′′ < 0(個人は強い意味でリスク回避的)

– ARA′(W ) > 0

– E[r − r] > 0(よって,a∗ > 0)

– W0 − a∗ > 0(無リスク資産への正の投資)

このとき,∂a∗

∂r< 0, すなわち無リスク資産のリターン rが上

昇したとき,危険資産への投資額は減少する.

(証明)

F.O.C.(34)を rで微分すると,

E[u′′(a∗(r − r) +W0r)(r − r)(W0 +∂a∗

∂r(r − r)− a∗)− u′(a∗(r − r) +W0r)] = 0

よりこれを整理すると,

∂a∗

∂r=

E[u′(a∗(r − r) +W0r)]− E[u′′(a∗(r − r) +W0r)(r − r)(W0 − a∗)]

E[u′′(a∗(r − r) +W0r)(r − r)2](35)

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を得る.一方,(34)をW0で微分すると

E[u′′(a∗(r − r) +W0r)(r − r)(∂a∗

∂W0

(r − r) + r)] = 0

となるので,整理して

∂a∗

∂W0

= − rE[u′′(a∗(r − r) +W0r)(r − r)]

E[u′′(a∗(r − r) +W0r)(r − r)2](36)

を得る.これを (35)に代入すると結局

∂a∗

∂r=

E[u′(a∗(r − r) +W0r)]

E[u′′(a∗(r − r) +W0r)(r − r)2]+

W0 − a∗

r

∂a∗

∂W0

(37)

となる.ここで,

– u′ > 0, u′′ < 0より (第一項)< 0

– W0− a∗ > 0及び ∂a∗

∂W0< 0(

...「Arrowの結果」)より (第二

項)< 0

となるので,あわせて ∂a∗

∂r< 0となる.2

– (37)において,

∗ 第一項は無リスク金利 rが上がり,危険資産に比べて相対的に魅力的になることによる「代替効果 (substi-

tution effect)」を表し,

∗ 第二項は,rの変化により所得制約がゆるくなる「資産効果 (income effect)」を表していると考えられる.

– 一般に,前者は常に負であるが,後者の正負は仮定に依存する.この場合,ARA′(W ) > 0,すなわち資産W が増えるにつれて投資家はより「リスク回避的」になるので,危険資産への投資を減らす( ∂a∗

∂W0< 0).このことに

より「資産効果」も負になっていると考えられる.

また,以下の定理も成り立つ.

定理 6 以下を仮定する:

– u′′ < 0(個人は強い意味でリスク回避的)

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– RRA(W ) ≤ 1

– r(ωs) > 0; ∀ωs ∈ Ω

このとき,∂a∗

∂r< 0.

(証明)

省略する.2

• 次に,危険資産が,rではなくより riskierな r′であった場合,個人の危険資産への最適投資額はどのように変わるであろうか(危険資産が r′の場合の最適投資額を a∗∗とする).予想される答えとしては a∗∗ ≤ a∗であるが,これは一般には成立しない.ここでは,これが成立するための条件について考察する(ここでは uが 3階微分可能であることを仮定).

まず,関数 g : R×R → Rを

g(a, y) := u′(a(y − r) +W0r)(y − r) (38)

で定義すると,g(·, y)は yを固定したとき strictly decreasing

であり,(危険資産が r, r′であるときの)F.O.C. (34)は,それぞれ

E[g(a∗, r(ω))] = 0 (39)

E[g(a∗∗, r′(ω))] = 0 (40)

とあらわされることに注意する.

gが aに関して strictly decreasingであるため,

a∗∗ ≤ a∗ ⇐⇒ E[g(a∗, r′(ω))] ≤ 0(= E[g(a∗, r(ω))]) (41)

であるが,ここで仮にg(a∗, ·)がconcaveであれば,資料「Risk」定理 1(下に定理 0として再掲)において,g(a∗, ·)を効用関数だと思うことにより,E[g(a∗, r′(ω))] ≤ E[g(a∗, r(ω))],すなわち a∗∗ ≤ a∗を導くことができる.

ここで,

∂2g(a∗, y)

∂y2= a∗[u′′′(W ∗

y )a∗(y − r) + 2u′′(W ∗

y )]

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(ただし,W ∗y := W0r + a(y − r))及び

RRA(W ) = W × ARA(W )

ARA′(W ) = −u′′′(W )u′(W )− (u′′(W ))2

(u′(W ))2

RRA′(W ) = ARA(W ) +W × ARA′(W )

に注意すると,

a∗[(1−RRA(W ∗y ) + (W0r)ARA(W ∗

y ))u′′(W ∗

y )

+((W0r)ARA′(W ∗y )−RRA′(W ∗

y ))u′(W ∗

y )]

= a∗[1 + (W0r −W ∗

y )ARA(W ∗y )u′′(W ∗

y )+

+−ARA(W ∗

y ) + (W0r −W ∗y )ARA′(W ∗

y )u′(W ∗

y )]

= a∗[(W ∗y −W0r)u

′′′(W ∗y ) + 2u′′(W ∗

y )]

= a∗[a∗(y − r)u′′′(W ∗y ) + 2u′′(W ∗

y )]

=∂2g(a∗, y)

∂y2(42)

となる.よって,g(a∗, ·)が concaveとなるひとつの十分条件として

1. E[r] > r

2. RRA(W ) ≤ 1かつRRA′(W ) ≥ 0

3. ARA′(W ) ≤ 0(このとき u′′′(W ) ≥ 0となることに注意)

があげられることが,(42)の最左辺を評価することで分かる(E[r] > r ⇔ a∗ > 0に注意).これらをみたす効用関数として,例えばべき型効用関数

u(W ) =1− γ

γ

(W

1− γ+ b

;W

1− γ> −b (43)

において 0 < γ < 1及び b = 0のとき,または対数型効用関数

u(W ) = ln(W + b); W > −b (44)

において b = 0のときに,条件 2.3.をみたすことが容易に確認できる.

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定理 0 (資料「Risk」定理 1,一部記述を改変)Y 及びZについて,E[Y ] = E[Z]であるとする.このとき,Y が Zよりriskierである必要十分条件は,任意の concaveな効用関数uについて,

E[u(Z)] ≥ E[u(Y )] (45)

となることである

3.2 Several Risky Assets

• 本節では,複数のリスク資産がある場合を考え,以下を仮定する.

– uは微分可能,u′ > 0

– N 個の証券からなる市場に重複性はない

• 投資家は第 1章における(7),もしくは (8)の最適化問題を解く(それぞれ無リスク資産が含まれない場合,含まれる場合に対応):

– 1Ωに投資しないとき

(7) : maxθ∈A

f(θ) = maxθ∈A

E[u(W1(θ))]

A = θ ∈ RN ;N∑i=1

θi = 1, W1(θ;ωs) ∈ I ∀s = 1, · · · , S

– 1Ωに投資するとき

(8) : maxθ∈B

f(θ) = maxθ∈B

E[u(W1(θ0, θ))]

B = θ ∈ RN ; W1(θ0, θ;ωs) ∈ I ∀s = 1, · · · , S, θ0 = 1−N∑i=1

θi

• ポートフォリオ θのリターンを,rθ =∑N

i=1 θiri (もしくはrθ =

∑Ni=0 θiri)で表わし,特に最適ポートフォリオ θ∗につい

て r∗ := rθ∗とする.

• このとき,リスクとリターンの関係について以下が成立する.すなわち,投資家はリスクの見返りに高い期待リターンを要求することがわかる.

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定理 7

– 投資家が(強い意味で)リスク回避的

– r∗が他のあるリターン rより riskier

このとき,E[r∗] ≥ (>)E[r]である.

(証明)投資家がリスク回避的,よってE[r∗] ≥ E[r]の場合のみ示す.

まず,r∗が最適ポートフォリオのリターンであることより,任意のリターン rについて

E[u(W0r∗)] ≥ E[u(W0r)] (46)

であることに注意する.次に,r∗が rより riskierであることより,r∗−(E[r∗]−E[r])も rより riskierである.よって,仮定より投資家はリスク回避的なので,資料「Risk」定理 1より,

E[u(W0r)] ≥ E[u(W0(r∗ − (E[r∗]− E[r])))] (47)

を得る.これを (46)とあわせると

E[u(W0r∗)] ≥ E[u(W0(r

∗ − (E[r∗]− E[r])))] (48)

を得るが,u′ > 0より結局E[r∗] ≥ E[r]を得る.2

• 定理 8

– 投資家が強い意味でリスク回避的

– 無リスク資産が取引されている

このとき,この投資家の最適ポートフォリオのリターンが r∗ =

r,すなわち無リスクリターンとなる必要十分条件は,

E[rj] = r; j = 1, · · · , N (49)

である(これを “Fair Pricing”という).

(証明)

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(8)において内点解を仮定し,F.O.C.を考えると

E

u′

N∑j=1

θ∗j (rj − r) + r

W0

(ri − r)

= 0; i = 1, · · · , N

(50)

である.

– ⇒) r∗ = r及び市場に重複性がないことから,θ = 0である.これを (50)に代入すれば,E[ri] = r; ∀i = 1, · · · , Nを得る.

– ⇐)逆に,E[ri] = r; ∀i = 1, · · · , Nが成立するとき,θ = 0

は明らかに (50)をみたす.仮定より u′′ < 0なので,これが最適解である.よって,r∗ = rであることがわかる.2

• リスク資産が 1つの場合には,その資産のリスクプレミアムE[r − r]の符号と,リスク資産への最適投資額 a∗の符号は一致していた.この関係は,複数の証券が存在する場合も保存されるだろうか.

残念ながら,一般的にはこれは成立しない.なぜなら,複数の証券のペイオフは通常それぞれ相関関係を持ち,これによって,ある証券(E[r1 − r] < 0)を別の(強い負の相関を持つ)証券 (E[r2− r] > 0)に対するヘッジのために保有する,といったことがあり得るからである.

では,複数のリスク資産があるときはこうした関係について何も言えないのだろうか.実は,以下のような関係があることが知られている.

定理 9 以下を仮定する.

– 投資家は強い意味でリスク回避的

– ある証券 kのリターンが,他の証券のリターンを用いて

rk =∑j =k

ηj rj + ϵk (51)

と書ける.ただしη = (η1, · · · , ηk−1, ηk+1, · · · , ηN)′は∑

j =k ηj =

1となるある定数ベクトルで,ϵkはrjj =kに対してmean-

independent, すなわち

E[ϵk|r1, · · · , rk−1, rk+1, · · · , rN ] = E[ϵk] (52)

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であるとする.

このとき,この証券 kへの投資額 xk(もしくは投資比率 θk)の符号は,E[ϵ]の符号と一致する.

(証明)

E[ϵk] > 0のケースのみ示す.他も同様.

まず,次の最大化問題を考える:

maxλ

E

u∑

j =k

θ∗j rj + λrk + (θ∗k − λ)∑j =k

ηj rj

W0

= max

λE

uλrk +∑

j =k

θ∗j + (θ∗k − λ)ηj

rj

W0

(53)

この問題は (8)に含まれるので,(53)における最大値が (8)における最大値を超えることはないことに注意.一方,λ = θ∗kとすれば

∑j =k

θ∗j rj + λrk + (θ∗k − λ)∑j =k

ηj rj =N∑j=1

θ∗j rj (54)

となり,(8)における最適解 θ∗のケースと一致するので,このとき明らかに (53)は最大値をとる.

よって,θ∗kが正であることを示すには,(53)の目的関数が λ

に関して strictly concave故、その目的関数の λに関する微分が λ = 0において正、即ち、

E

u′

∑j =k

(θ∗j + θ∗kηj)rj

W0

rk −∑j =k

ηj rj

W0

> 0

(55)

であることを示せばよい.ここで,(51),(52)及び証明末尾に再掲する命題 0 より,これは

E

u′

∑j =k

(θ∗j + θ∗kηj)rj

W0

E[ϵk] > 0

を示すことと等しい.これは,u′ > 0及びE[ϵk] > 0という仮定から明らかである.2

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命題 0 (資料「Risk」命題 1)

ϵが Zに対してmean-independentであるとする.このとき任意の関数 f : R → Rに対して,

E[f(Z)ϵ] = E[f(Z)]E[ϵ] (56)

となる.

以下の系も成り立つ.

系 1 以下を仮定する.

– 投資家は強い意味でリスク回避的

– 無リスク資産も取引可能

– ある証券 kのリターンが,他の証券のリターンに対してmean-independent, すなわち

E[rk|r0, r1, · · · , rk−1, rk+1, · · · , rN ] = E[rk] (57)

であるとする.

このとき,この証券 kへの投資額 xk(もしくは投資比率 θk)の符号は,E[rk − r]の符号と一致する.

(証明)

ϵk := rk − rとすると,(57)より ϵkも rjj =kに対してmean-

independentである.また,(51)において η0 = 1, ηj = 0; j =0, kとすれば,

rk = r + ϵk (58)

を得るので,E[ϵk] = E[rk − r]に注意すれば,結局定理 9より結論を得る.2

4 付録:Gram Matrix

ここでは,1.1節で用いたGram行列に関する結果を見る.

• V を実ベクトル空間とし,< ·, · >をその上で定義された内積とする.

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• a1, a2, · · · , aN ∈ V を取る.

定義 2

aij :=< ai, aj >; 1 ≤ i, j ≤ N (59)

とするとき,aijを (i, j)成分にもつn次正方行列Aを,“a1, a2, · · · , anによって定まるGram行列 (Gram Matrix)”という.

– 明らかに,(1)は(< X, Y >= E[XY ]としたときの)Gram行列である.

• 以下の結果が 1.1節において重要であった.

命題 2 a1, a2, · · · , anによって定まるGram行列Aが正則である必要十分条件は,a1, a2, · · · , anが一次独立になることである.

(証明)

どちらも背理法を用いて示す.

– ⇒) a1, a2, · · · , anが一次従属だと仮定して,Aが正則でないことを示す.

a1, a2, · · · , anが一次従属という仮定より,あるβ1, β2, · · · , βn ∈R( ∃i, βi = 0)が存在して

β1a1 + β2a2 + · · ·+ βnan = 0

このベクトルとaiとの内積をとると,Aの定義の仕方 (59)

より,各 i = 1, · · · , nに対して,

< ai, β1a1+β2a2+· · ·+βnan >= β1ai1+β2ai2+· · · βnain = 0

(60)

が成り立つので,これを書き直せば

β1

a11

a21...

an1

+ β2

a12

a22...

an2

+ · · ·+ βn

a1n

a2n...

ann

= 0 (61)

となるが, ∃i, βi = 0より,Aの列ベクトルは一次従属,すなわち rank(A) < nであるのでAは正則ではない.

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– ⇐) Aが正則行列ではないと仮定する.このとき,先ほどは逆に (61),すなわち (60)をみたす β1, β2, · · · , βn ∈R( ∃i, βi = 0)が存在する.よって,∥∥∥∥∥

n∑i=1

βiai

∥∥∥∥∥2

=

⟨n∑

i=1

βiai,n∑

i=1

βiai

⟩=

n∑i=1

βi

⟨ai,

n∑i=1

βiai

⟩= 0

となるので,

β1a1 + β2a2 + · · ·+ βnan = 0

となり,a1, · · · , anは一次従属である.2

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