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-5- 資料2 福祉用具産業の市場規模調査結果の概要 1.背景 福祉用具産業政策の立案には、福祉用具産業の業界構造の現状を定量的に把 握することが不可欠である。また、福祉用具に関連する事業者が今後の事業展 開を行うにあたって、市場動向を適切に把握する必要がある。これらの基礎デ ータとしての福祉用具の市場規模の推計については、過去3回行われた調査に よって、より詳細なレベルまで統計が整いつつあり、行政、民間問わず、福祉 用具市場の基礎的データとして広く利用されている。 今回実施する調査においては、これまでの調査結果から、福祉用具の品目ご とに商品特性が大きく異なることが明らかとなっていることから、より詳細な 品目の市場動向について調査分析するとともに、これまでの調査との整合性を 保ちつつ市場規模の推計を行っている。さらに、障害者が自身の経験や知識を 活用できる雇用の場として、福祉用具産業における障害者の雇用状況などにつ いてもあらたに調査している。

資料2福祉用具産業の市場規模調査結果の概要 - …-5-資料2福祉用具産業の市場規模調査結果の概要 1.背景 福祉用具産業政策の立案には、福祉用具産業の業界構造の現状を定量的に把

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資料2 福祉用具産業の市場規模調査結果の概要

1.背景

福祉用具産業政策の立案には、福祉用具産業の業界構造の現状を定量的に把

握することが不可欠である。また、福祉用具に関連する事業者が今後の事業展

開を行うにあたって、市場動向を適切に把握する必要がある。これらの基礎デ

ータとしての福祉用具の市場規模の推計については、過去3回行われた調査に

よって、より詳細なレベルまで統計が整いつつあり、行政、民間問わず、福祉

用具市場の基礎的データとして広く利用されている。

今回実施する調査においては、これまでの調査結果から、福祉用具の品目ご

とに商品特性が大きく異なることが明らかとなっていることから、より詳細な

品目の市場動向について調査分析するとともに、これまでの調査との整合性を

保ちつつ市場規模の推計を行っている。さらに、障害者が自身の経験や知識を

活用できる雇用の場として、福祉用具産業における障害者の雇用状況などにつ

いてもあらたに調査している。

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2.調査の概要

(1)推計対象

①福祉用具の範囲

福祉用具(広義)には共用品も含まれるが、本調査では、共用品を除く

福祉用具 狭義 ※を対象としている 市場規模の把握を行う福祉用具 狭( ) 。 (

義)の範囲は、本調査では次のように定義・分類している。

※昨年度の調査では 「福祉用具(狭義 」を「コア領域 「共用品」を「周辺領域」としていた。、 ) 」、

福祉用具(狭義)とは

1.在宅、施設を問わず、日常生活における高齢者、障害者個々人の自立及び介護を支援する

福祉用具及び一部環境改善等に供する福祉用具

(ISO9999に準拠した(財)テクノエイド協会の福祉用具分類コード95(CCTA95)に相当するもの。

ただし、福祉用具分類コードに含まれる品目も一部、計上されていないものもある )。

(図表2-1のAの領域)

2.各種施設において入所者である高齢者、障害者へのサービス向上、施設の省力化等に

供するもの(コンピュータシステム等も含まれる 。また、1.に含まれないもので、施設)

入居者の自立支援、介護支援及び環境改善等に供するもの(例:施設における送迎用バス等)

(図表2-1のBの領域)

3.公共の場において、高齢者、障害者の行動を支援する福祉用具、機器、社会インフラ等

(例:駅公共建物のエレベータ、点字ブロック、視覚障害者用音響信号機等)

(図表2-1のCの領域)

図表2-1 福祉用具(狭義)の範囲

在 宅 施 設 施 設公 共

対個人 対個人 全 体

領域A 領域B 領域C自立支援

・ISO9999に準拠した領域※ ・施設の送迎用 ・視覚障害者用

介護支援 バス 音響信号機

環境改善

そ の 他 ・各種施設等の厨房、洗濯、掃除等

サービス向上、 の機器・システム

省力化等 ・施設管理用コンピュータシステム

※ISO9999に含まれているでも一部市場規模推計の対象となっていないものもある。

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共用品福祉用具(狭義)

今回推計した福祉用具(狭義)の範囲は昨年度と同じであるが、1)温水洗

浄便座、2)ホームエレベータ、3)乗用車(座席がシフトするタイプ)の3品

目については共用品市場規模推計の対象と重複している。従って、福祉用具

(広義)の市場規模は、福祉用具(狭義)の市場規模と共用品の市場規模と

の合計とは一致しない。

なお、共用品の市場規模については「共用品の市場規模推計に関する調査

研究」で推計されており、本調査でもこの結果を引用している。

図表2-2 福祉用具と共用品の関係(概念図)

この領域に含まれる品目

1)温水洗浄便座

2)ホームエレベータ

3)乗用車(座席がシフトするタイプ)

福 祉 用 具 ( 広 義 )

②推計対象品目の分類

従来は、福祉用具の品目分類は原則として (財)テクノエイド協会の、

福祉用具コード95の4桁のコード分類に従って推計を行っていたが、例

えば手動車いすと電動車いすが一つに分類されてしまうなど、詳細な整理

を行うことが困難であった。そこでより詳細な分類での市場規模の推計値

に対する要望が寄せられていたことから、今回、品目の詳細化を行うこと

とした。

具体的には、品目ごとの市場規模の額などを勘案して、次のような整理

を行った。

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図表2-3 品目分類の新旧対象(領域A)

旧分類 新分類 旧分類 新分類

家庭用治療器 移動機器等(続き)

義肢・装具(広義) 福祉車両等

義肢・装具(狭義) 義肢・装具(狭義) 福祉車両

かつら かつら 乗用車(座席シフト)※

義歯 義歯 (その他)

パーソナルケア関連 リフト

おむつ おむつ その他

入浴関連 入浴関連 家具・建物等

排泄関連 ベッド ベッド

ポータブルトイレ ホームエレベータ ホームエレベータ※

温水洗浄便座※ (その他)

ストーマ用品 椅子、座位保持装置

その他排泄関連 階段昇降機

(その他) 段差解消機

移動機器等 手すり・握りバー

杖・歩行器 その他

杖 コミュニケーション機器

歩行器・歩行車

シルバーカー 眼鏡等 眼鏡等

車いす 補聴器 補聴器

手動車いす (その他)

電動車いす コンピュータ関連機器・ソフト

電動三(四)輪車 警報システム

車いす用品 その他

在宅等介護関連分野・その他

※については 「共用品」の市場規模にも含まれ 褥瘡予防用具等、

ている。 その他

その他

(2)推計方法

福祉用具は種類が多岐にわたり、既存の工業統計等ではほとんどの品目が捕

捉されていない。そのため、福祉用具を製造していると思われる事業者に対す

る個別のアンケートの回答を積み上げることで市場規模の推計を行っている。

ただし、一部の福祉用具については、行政機関、業界団体などの既存統計が

存在していることから、これらのものについては、既存統計の利用、資料調査

やヒアリングなどを併用しつつ、推計を行った。

(3)ヒアリング・資料調査について

次の品目については、ヒアリング・資料調査等を併用しつつ、市場規模の推

計を行った。

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家庭用治療器、義肢・装具(狭義 、かつら、おむつ、温水洗浄便座)

福祉車両、ベッド、ホームエレベータ、眼鏡等、補聴器 など

ヒアリング調査では、関係省庁、業界団体及び主要なメーカー等の協力を得

た。主な統計資料は以下の報告書を用いている。

薬事工業生産動態統計年報(月報 、貿易統計、社会福祉行政業務報告、)

工業統計、社会医療診療行為別調査報告、各種業界統計 など

(4)アンケート調査の実施方法等について

①実施対象

福祉用具の国内出荷額を把握するために、福祉用具メーカー、輸入代理店

等を対象とした。ただし、一部の福祉用具についてはOEM※による生産が

行われており、かつ、OEMの委託先が福祉用具メーカーでなく、一般の製

造業者である場合もあるため、福祉用具メーカー等を対象としたアンケート

では必ずしも捕捉しきれないという問題がある。そのため、福祉用具メーカ

ー、輸入代理店とともに、自社ブランドの福祉用具の製造を他社に委託して

いる可能性があると考えられる代表的な福祉用具流通業者に対して、OEM

生産品の売上高をOEMの委託側と受託側とで調査し、OEM生産による福

祉用具についても捕捉に努めた。なお、集計上はOEMの受託側の数値と委

、 、託側の数値がダブルカウントにならないよう この数値を品目ごとに比較し

いずれか多い方の値のみを集計に用いている。

以上を踏まえ、アンケートは936社に対して発送した。

※OEMとは、Original Equipment Manufacturing の略で、受託した製造

事業者が、委託を受けた相手先のブランドをつけて製品を供給することを

いう。

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②実施期間

平成10年11月6日(金)から11月20日(金)までの2週間に実

施した。

③実施方法

①で掲げた条件に合致すると思われる企業をピックアップし、郵送によ

り発送、回収を行った。回収率は48.8%である。調査項目は福祉用具

の出荷額に加えて、資本金、従業員数等の雇用の状況、福祉用具の輸出入

の状況などである。

回収状況は下記に示す通りであるが、回収数457件のうち、134件

は福祉用具の製造、OEM委託、輸入のいずれも行っていないため、集計

には用いていない。

図表2-4 アンケートの回収状況

年度 発送数 回収数 回収率

平成7年度 430 188 43.7%

平成8年度 503 215 42.7%

平成9年度 545 195 35.8%

平成10年度 936 457 48.8%

(802) (323) (40.3%)

※( )は福祉用具の製造、OEM委託、輸入のいずれも行っていないとした回答を除いた数値。

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3.調査結果

ここでは、アンケートに回答のあった企業のうち、次のいずれかに該当する

323社について集計を行った。以下に福祉用具関連事業者の状況を示す。

(a)福祉用具を製造している

(b)自社ブランドの福祉用具の製造を他社に委託している

(c)福祉用具を輸入している

(1)業態

アンケートに回答のあった企業の福祉用具関連事業に関する業態は下表のとおりで

ある 「その他」とあるのは、障害者用ソフトウェアを製造する情報関連の企業など。

である。なお、複数の業態を兼ねる企業があるため、合計は一致しない。

図表2-5 アンケート回答企業の業種

メーカー 249社

輸入代理店 53社

流通 56社

その他 24社

計 323社

※複数回答

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(2)資本金

過去3回の調査と今回の調査の回答企業の資本金規模別企業数は、図表2

-6のとおりである。これによると、昨年度までの調査結果と比較して、今

年度はアンケートの対象企業数を拡大したため、資本金1億円未満の企業が

約7ポイント増えている。従って、今年度の集計結果は、昨年度までと比べ

て、より中小規模の企業までを含んだ、より福祉用具産業の実態に近い結果

になっていると思われる。

図表2-6 資本金規模別企業数(時系列)

、 、 ( )、また 今年度調査について 業態別に資本金規模をみると 図表2-7

業態に関わらず、1千万に満たない企業から100億円を超える大企業まで

あり、非常に幅が広い。業態別にみると、メーカーにおいて100億円を超

える企業の割合が高い。

4.1%

2.4%

2.0%

6.5%

56.7%

52.2%

44.7%

52.1%

13.5%

16.1%

15.3%

15.2%

16.9%

20.1%

13.0%

10.5%

15.0%

17.1%

13.0%

13.5%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1994年度 (N=171)

1995年度 (N=207)

1996年度 (N=199)

1997年度 (N=307)

1千万円未満 1千万~1億未満 1億~10億未満

10億~100億未満 100億円以上

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図表2-7 資本金規模別企業数(業態別)

(3)売上高

アンケート結果から、総売上高(福祉用具関連以外も含む )の規模別企。

業数の時系列比較をすると(図表2-8 、図表2-6と同様、今回(97)

年度)は売上高1億円未満の中小規模の企業に対してカバー率が向上してい

ることが分かる。ちなみに、各企業の売上高を平均すると1,557億円と

なるが、売上高10億円未満の企業が4割弱を占めており、経営規模に非常

に幅のある業界であることがわかる。また、総売上高の規模を業種別にみた

図表2-9によると、輸入代理店、流通に売上高10億円未満の規模の小さ

い企業が多い。

6.5%

7.0%

5.9%

5.6%

52.1%

51.6%

54.9%

50.0%

15.3%

21.6%

24.1%

13.0%

13.9%

7.8%

13.0%

13.0%

13.1%

9.8%

7.4%

14.3%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全体 (N=307)

メーカー(N=244)

輸入代理店(N=51)

流通(N=54)

1千万円未満 1千万~1億未満 1億~10億未満

10億~100億未満 100億円以上

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図表2-8 総売上高規模別企業数(時系列)

図表2-9 総売上高規模別企業数(業態別)

(4)福祉用具関連の売上高

図表2-10及び図表2-11は、福祉用具関連の売上高について、同様

にアンケート結果から時系列、及び業態別に比較を行ったものである。図表

2-9で示したように、総売上高で1億円未満の企業は1割強を占めるに過

ぎないが、図表2-10で示すとおり、福祉用具関連の売上高に限ってみる

と、1億円未満がほぼ半数を占め、福祉用具専業でない企業や、新規参入の

12.7%

14.3%

8.0%

13.5%

25.4%

21.8%

36.0%

30.8%

28.4%

32.0%

28.8%

19.1%

20.6%

16.0%

15.4%

14.4%

13.9%

8.0%

11.5%

29.4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全体(N=299)

メーカー(N=238)

輸入代理店(N=50)

流通(N=52)

1億円未満 1億~10億未満 10億~100億未満

100億~1000億未満 1000億以上

8.4%

11.1%

7.3%

12.7%

25.3%

24.7%

19.2%

25.4%

32.5%

29.5%

28.4%

22.1%

23.2%

25.4%

19.1%

11.7%

14.6%

18.7%

14.4%

26.3%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1994年度 (N=154)

1995年度 (N=198)

1996年度 (N=193)

1997年度 (N=299)

1億円未満 1億~10億未満 10億~100億未満

100億~1000億未満 1000億以上

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企業等が多く存在することをうかがわせる結果となっている。また、福祉用

具関連の売上高は平均で8.4億円であるが、売り上げが30億円を超える

企業がある一方、1千万円未満の企業も2割程度ある。売り上げが1千万未

満の企業には、新規参入の企業等売り上げがまだない又は僅少であるものが

少なからず含まれているものと思われる。業態別にみると(図表2-11)、

メーカーでやや大規模な企業の割合が高い。

図表2-10 福祉用具関連売上高規模別企業数(時系列)

図表2-11 福祉用具関連売上高規模別企業数(業態別)

20.2%

22.0%

10.9%

16.7%

28.6%

26.9%

34.8%

31.5%

36.6%

43.5%

38.9%

8.0%

9.3%

6.5%

9.3%

6.6%

7.5%

4.3%

3.7%

34.4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全体(N=287)

メーカー(N=227)

輸入代理店(N=46)

流通(N=54)

1千万円未満 1千万~1億未満 1億~10億未満

10億~30億未満 30億円以上

5.5%

15.0%

9.0%

20.2%

25.2%

30.0%

23.7%

28.6%

44.1%

42.9%

36.6%

16.5%

10.0%

10.7%

8.0%

8.7%

9.5%

13.6%

6.6%

35.5%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1994年度 (N=127)

1995年度 (N=200)

1996年度 (N=177)

1997年度 (N=287)

1千万円未満 1千万~1億未満 1億~10億未満

10億~30億未満 30億円以上

^

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(5)福祉用具売上高の単純集計結果

アンケートから得られる福祉用具売上高を、福祉用具コードの大分類(上

2ケタ)毎に単純集計すると、図表2-12のとおりである。金額的には、

「パーソナルケア関連用具」が1,497億円で最も大きく、全体の約半分

を占めている。次に大きいのは「家具・建物・建築設備」で640億円、次

に「移動機器 「コミュニケーション関連機器」と続く。」

図表2-12 アンケートの単純集計結果

大分類 品目 品目数 金額・千円

03 治療訓練用具 85 15,594,251

06 義肢・装具 63 5,970,764

09 パーソナルケア関連用具 375 149,662,277

12 移動機器 374 43,947,608

15 家事用具 41 423,650

18 家具・建物・建築設備 196 64,036,526

21 コミュニケーション関連機器 169 19,395,014

24 操作用具 25 819,446

27 環境改善機器・作業用具 9 735,958

30 レクリエーション用具 15 32,599

50 社会参加支援機器・施設 16 1,543,485

60 福祉施設用機器システム 8 2,470,466

80 印刷物・出版物、ゲートボール等遊具 9 15,578

99 その他 40 5,693,515

合計 1,425 310,341,137

、 、図表2-13は 前回までのアンケートの単純集計結果との比較であるが

、 、今年度はアンケートの回収数が増加したこともあって 金額も増加しており

市場規模の捕捉率も年々向上していると推定される。

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(単位:百万円)図表2-13 アンケートの単純集計結果(前年度までとの比較)

大分類 1993年度 1994年度 1995年度 1996年度 1997年度品目

03 治療訓練用具 22,551 24,721 34,440 20,974 15,594

06 義肢・装具 3,710 3,981 4,719 4,909 5,971

09 パーソナルケア関連用具 72,298 84,153 95,014 115,121 149,662

12 移動機器 22,114 22,889 28,471 49,654 43,948

15 家事用具 240 261 309 292 424

18 家具・建物・建築設備 29,687 36,845 44,301 52,780 64,037

21 6,524 7,164 21,380 26,699 19,395コミュニケーション関連機器

24 操作用具 57 49 595 637 819

27 環境改善機器・作業用具 252 388 762 170 736

30 レクリエーション用具 39 39 6 15 33

50 社会参加支援機器・施設 440 450 261 30 1,543

60 福祉施設用機器システム 1,846 2,220 2,687 1,212 2,470

80 80 98 96 179 16印刷物・出版物、ゲートボール等遊具

99 その他 490 610 954 1,796 5,694

160,328 183,868 233,995 274,468 310,341合計

(6)市場規模の推計結果

前述の通り、アンケート調査を基本としつつ、ヒアリング、統計調査を併

用して福祉用具産業の市場規模の推計を行った。

なお、推計結果の使用に当たっては、次の点に付き注意が必要である。

①1997年度の市場規模推計値は、推計に利用している統計が暫定値で

あるなどの理由により、一部暫定値であり、次年度に修正されることが

あり得る。

②アンケートをベースとした推計であるため、市場規模の捕捉方法が確立

されていない品目もある。そのため、後年度に遡及的に修正されること

があり得る。

③市場規模は基本的には出荷額ベースであるが、流通事業者などが扱うO

EM委託品については当該流通事業所等での売価ベースであるなど、必

ずしもベースが揃っていない。

④アンケートではOEMの委託側と受託側と両方を尋ねているが、集計に

は、品目ごとにいずれか多い方の数値のみを使用している。

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以上の点を踏まえ、推計を行った結果が次の図表2-14である。

また、品目ごとに対前年度の比率を示したものが図表2-16である。

(7)共用品との関係について

市場規模の推計に当たっては、福祉用具を福祉用具(狭義)と共用品とに

整理している。図表2-2でも示したとおり、福祉用具(狭義)と共用品と

は重複がある 「1)温水洗浄便座 「2)ホームエレベータ 「3)乗用車(座席。 」 」

がシフトするタイプ 」の3品目については、もともと障害者・高齢者を対)

象として開発・販売されていたことから福祉用具と位置づけていたが、現在

の市場動向等を踏まえると共用品としてもとらえられるようになって来てい

るのではないかと考えられたため、今回は共用品の市場規模にも計上してい

る。福祉用具(狭義)と共用品とをあわせた広義の福祉用具の市場規模の推

計においては ダブルカウントにならないよう 加えた3品目を福祉用具 狭、 、 (

義)と共用品を合算した数値から控除しているため、統計の利用に当たって

は注意が必要である。

(8)福祉用具市場の動向

全体的な傾向としては、これまでの調査結果同様、引き続き堅調な伸びを

示している。昨年度から一部の品目の区分を変更しているが、福祉用具(狭

義)の市場規模が初めて1兆円台に達した。特に 「パーソナルケア関連 、、 」

「移動機器等 「家具・建物等」で伸び率が高い 「パーソナルケア関連」」、 。

の成長は、金額で約4分の1を占める「おむつ」の高い伸びによることが大

きい。また、同様に「移動機器等」については「福祉車両等」の30%を越

える伸びの寄与が大きい。

一方 「入浴関連 「車いす 「ベッド 「ホームエレベータ」などは安、 」、 」、 」、

定した市場となっている。特に「ホームエレベータ」についてはここ数年来

高い伸びを示してきていたが、対前年度比からみて比較的低い伸び率となっ

ている

以上の品目ごとの推移をまとめたものが図表2-16である。

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(単位:億円)図表2-14 福祉用具品目別の市場規模推計値分 類 1993年度 1994年度 1995年度 1996年度 1997年度 注 記

9,428 10,179福 祉 用 具 ( 狭 義 ) 7,731 8,047 8,641

7,697 8,011 8,583 9,375 10,112領 域 A

1,021 1,061 1,113 1,236 1,327家庭用治療器

義肢・装具(広義) 1,21,415 1,592 1,757 1,829 1,975

296 312 327 343 359義肢・装具(狭義)

643 700 760 836 916かつら

480 580 670 650 700義歯

1,416 1,583 1,758 2,013 2,325パーソナルケア関連

256 290 328 445 612おむつ

103 133 187 218 208入浴関連

901 1,028 1,108 1,252 1,361 2排泄関連

ポータブルトイレ - - - - 31

3温水洗浄便座 - - - 1,152 1,244

ストーマ用品 - - - - 69

その他排泄関連 - - - - 17

156 132 135 98 144その他

304 325 380 505 594移動機器等

17 20 27 34 55杖・歩行器

杖 - - - - 12

歩行器・歩行車 - - - - 12

シルバーカー - - - - 31

175 189 226 267 270車いす

手動車いす - - - - 193

電動車いす - - - - 17

電動三(四)輪車 - - - - 46

車いす用品 - - - - 14

72 86 108 183 241福祉車両等

- - 106 174 224福祉車両

- - 2 9 17 3乗用車(座席シフト)

40 30 19 21 28その他

リフト - - - - 23

その他 - - - - 5

400 490 608 765 857家具・建物等

270 317 414 470 474ベッド

60 70 91 130 134 3ホームエレベータ

70 103 103 165 249その他

椅子、座位保持装置 - - - - 18

4階段昇降機 - - - - 41

段差解消機 - - - - 7

手すり・握りバー - - - - 78

その他 - - - - 105

2,697 2,497 2,489 2,538 2,573コミュニケーション機器

2,521 2,305 2,283 2,293 2,281 1,2眼鏡等

156 166 173 193 209補聴器

20 26 33 52 83その他

5コンピュータ関連機器・ソフト - - - - 10

6警報システム - - - - 45

その他 - - - - 28

414 423 428 438 441在宅等介護関連分野・その他

7褥瘡予防用具等 - - - - 54

その他 - - - - 387

30 40 50 51 20その他

18 22 27 30 31領 域 B

16 14 31 23 36領 域 C

- 8共 用 品 - - 10,231 11,265共 用 品(参考) 8- - 4,869 6,351 8,763

3,8福 祉 用 具 (広 義) - - - 18,368 20,049福 祉 用 具 (広 義) 参考 3,8( ) 13,508 15,770 18,925

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【図表2-14の注記】

1: 義肢・装具(狭義 「眼鏡等」の推計値は、統計数値の公表までの暫定値である。「 )」

2: 義肢・装具(狭義 「排泄関連 「眼鏡等」の96年度までの推計値を遡及修正した(図表2-15参照 。「 )」 」 )

3: 温水洗浄便座 「乗用車(座席シフト 「ホームエレベータ」は共用品の市場規模にも含まれているため、「 」 )」

福祉用具(広義)の市場規模は福祉用具(狭義)と共用品の合計からこの3品目を控除した数値である。

【福祉用具(広義)の求め方】 (単位:億円)

1995年度 1996年度 1997年度

福祉用具(狭義) (a) 8,641 9,428 10,179

温水洗浄便座 ① - 1,152 1,244

乗用車(座席シフト) ② (b) 2 9 17

ホームエレベータ ③ - 130 134

共用品 (c) - 10,231 11,265

共用品(参考)※ (c)' 4,869 6,351 8,763

福祉用具(広義) (a)+(c)-(b) - 18,368 20,049

福祉用具(広義 (参考)※ (a)+(c)'-② 13,508 15,770 18,925)

※(参考)の数値の意味は注の8番を参照 「共用品(参考 」には「温水洗浄便座 「ホームエレベータ」は。 ) 」

含まれていない。従って、これに基づいた「福祉用具(広義 」の集計上もこれを控除していない。)

4: 階段昇降機」には駅等公共施設用を含まない。「

5: コンピュータ関連機器・ソフト」は施設管理用の機器ではなく、点字プリンタ等の装置や画面拡大用のソフトなど。「

6: 警報システム」は緊急通報システムや徘徊感知システムなど。「

7: 褥瘡予防用具等」は褥瘡予防エアマット、クッション、体位変換器など。「

8: 共用品」の市場規模推計値は、①対象となる品目を追加したこと、②今回の調査で97年度市場規模と併せて96「

年度の市場規模を前回に引き続き調査したこと、の2つの理由により、96年度市場規模と97年度市場規模の集計

値が数通り考えられる(下表参照 。福祉用具(広義)の推計に当たっては、98年度調査をベースにした共用品)

市場規模(下表の(a))を用いているが、95年度からの比較のために97年度調査をベースにした共用品市場規模

(下表の(b))を用いた推計値も参考として掲げている。そのため、福祉用具(広義)の市場規模も2通りが示され

ている。

【共用品の市場規模の集計方法について】

市場規模の年次 95年度 96年度 97年度

①追加した品目 含まない 含まない 含まない 含 む 含まない 含 む

②調査年次 97年度 97年度 98年度 98年度 98年度 98年度

市場規模(億円) 4,869 6,351 8,235 10,231 8,763 11,265

(a)共用品市場規模 ● ●

(b)共用品市場規模 参考 ● ● ●( )

(単位:億円)図表2-15 市場規模推計値の修正分 類 修正値(上段:修正前/下段:修正後) 修正の理由

1993年度 1994年度 1995年度 1996年度

福 祉 用 具 ( 狭 義 ) 7,237 7,508 8,080 9,021 下位分類の修正のため。

7,731 8,047 8,641 9,428

領 域 A 7,203 7,472 8,022 8,968 下位分類の修正のため。

7,697 8,011 8,583 9,375

義肢・装具(広義) 1,393 1,580 1,760 1,846 義肢・装具(狭義)の修

正のため。1,415 1,592 1,757 1,829

270 300 330 360 より信頼性の高い統計数義肢・装具(狭義)

値が得られたため。296 312 327 343

パーソナルケア関連 944 1,056 1,194 1,576 排泄関連の修正のため。

1,416 1,583 1,758 2,013

429 501 544 815 集計の対象となる品目を排泄関連

整理・拡充したため。901 1,028 1,108 1,252

コミュニケーション機器 2,697 2,497 2,489 2,551 眼鏡等の修正のため。

2,5382,697 2,497 2,489

2,521 2,305 2,283 2,306 工業統計のデータが公表眼鏡等

2,521 2,305 2,283 されたため。2,293

※ は修正があったもの。太字

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図表2-16 福祉用具品目別の市場規模/対前年度比

年度/年度 94/93 95/94 96/95 97/96

福祉用具(狭義) 1.041 1.074 1.091 1.080

領域A 1.041 1.071 1.092 1.077

家庭用治療器 1.039 1.049 1.111 1.079

義肢・装具(広義) 1.125 1.104 1.041 1.080

義肢・装具(狭義) 1.054 1.048 1.049 1.047

かつら 1.089 1.086 1.100 1.096

義歯 1.208 1.155 0.970 1.077

パーソナルケア関連 1.118 1.111 1.145 1.155

おむつ 1.133 1.131 1.357 1.375

入浴関連 1.291 1.406 1.166 0.954

排泄関連 1.141 0.078 1.130 1.087

移動機器等 1.069 1.169 1.329 1.176

杖・歩行器 1.176 1.350 1.259 1.618

車いす 1.080 1.196 1.181 1.011

福祉車両等 1.194 1.256 1.694 1.317

家具・建物等 1.225 1.241 1.258 1.120

ベッド 1.174 1.306 1.135 1.009

ホームエレベータ 1.167 1.300 1.429 1.031

コミュニケーション機器 0.926 0.997 1.020 1.014

眼鏡等 0.914 0.990 1.004 0.995

補聴器 1.064 1.042 1.116 1.083

図表2-17 1993年度を100とした各年の市場規模

50.0

100.0

150.0

200.0

250.0

300.0

350.0

1993年度 1994年度 1995年度 1996年度 1997年度

義肢・装具(狭義)

かつら

義歯

おむつ

入浴関連

排泄関連

杖・歩行器

車いす

福祉車両

ベッド

ホームエレベータ

眼鏡等

補聴器

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4.福祉用具産業における障害者の雇用状況

(1)調査の目的

障害者の就労機会の拡大はノーマライゼーションの一環として重要なテー

マである。その中で障害者からは、障害者が自身の経験を生かして福祉用具

の開発等に携わりたいという声も上がって来ている。実際、障害者としての

経験を生かして福祉用具の事業化を果たした例もいくつか知られている。

そこで、この度、市場規模の把握のためのアンケート調査とあわせて、調

査対象企業における障害者の雇用状況について実際どの程度の障害者が福祉

用具産業に携わっているのか調査を行うこととした。

なお、ここでの「障害者」は身体障害者と知的障害者のこととし、アンケ

ート票にも 「身体障害者・知的障害者」と併記した。、

(2)調査結果

図表2-18は、各区分の従業員数別の企業数を表したものである。障害

者については、無回答の企業が非常に多く(例えば「常勤の社員(福祉用具

関連 」170社 、これを「0人」と見るか無回答として集計からはずす) )

かによって、非常に解釈が変わってくることになる。

図表2-18 従業員の規模別企業数

パート・アルバイト等右欄の各分類の 常勤の社員(全体) 常勤の社員(福祉用具関連)

従業員の人数 障害者 障害者 障害者

0人 4社 84社 12社 113社 37社 106社

1~4人 28社 62社 89社 32社 52社 16社

5~9人 32社 20社 46社 4社 27社 3社

10~49人 69社 34社 60社 4社 34社 3社

50~299人 66社 14社 20社 0社 35社 0社

300~999人 41社 1社 1社 0社 4社 0社

1000~2999人 25社 0社 1社 0社 3社 0社

3000~ 29社 0社 0社 0社 1社 0社

無回答 29社 108社 94社 170社 130社 195社

合計 323社 323社 323社 323社 323社 323社

※「常勤の社員(全体 」は福祉用具関連でない従業者も含めた常勤の社員の意味。)

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これを「0人」と考えて集計し障害者の割合を求めたものが図表2-19

である。具体的には、回答の有無に係わらず、全社について「従業員数(福

祉用具関連 」と、そのうちの障害者について従業員数を単純に集計してい)

る。

この表の右側は、全社を、常勤の社員数(福祉用具以外も含む全体数)が

56人未満と56人以上とで2分割し、それぞれについて同様に従業員数を

単純に集計したものである(56人で区分しているのは法定雇用率(後述)

がこの区分を採用しているため 。)

これによると 「常勤の社員(福祉用具関連 」では障害者比率が3.0、 )

%となっており、常勤の社員数が56人以下の企業では5.2%と、さらに

高い比率となっている。

図表2-19 常勤の社員(福祉用具関連)における障害者の割合

常勤の社員数別総 数

無回答56人未満 56人以上

有効回答 合計人数 有効回答 合計人数 有効回答 合計人数 有効回答 合計人数

2社 4社常勤の社員 福祉用具関連( ) 250社 5,445人 112社 850人 115社 4,591社

0社 0社うち障害者 196社 163人 73社 44人 80社 119社

0.0%障害者の割合※ 3.0% 5.2% 2.6%

29社集計対象数 323社 137社 157社

※「障害者の割合」は「常勤の社員(福祉用具関連)」の合計人数で「うち障害者」の合計人数を割ったもの。

「常勤の社員(福祉用具関連)」と「うち障害者」では有効回答数が異なっているが、考慮していない点に注意が必要。

(3)他の産業との比較

①法定雇用率について

民間企業、国、地方公共団体は 「障害者の雇用の促進等に関する法律」、

に基づき、それぞれ以下の割合(法定雇用率)に相当する数以上の身体障

害者(及び知的障害者)を雇用しなければならないこととされている (カ。

ッコ内は、それぞれの割合によって1人以上の障害者を雇用しなければな

らないこととなる企業等の規模である )。

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さらに、重度身体障害者及び重度知的障害者については、それぞれその

1人の雇用をもって、2人を雇用しているものとみなされる。また、短時

間労働者は原則的に実雇用率にはカウントされないが、重度身体障害者又

は重度知的障害者については、それぞれ1人を雇用しているものとみなさ

れる。

1.8%○民間企業 一般の民間企業

(常用労働者数56人以上規模の企業)

特殊法人 2.1%

(常用労働者数48人以上規模の法人)

○国、地方公共団体 2.1%

(職員数48人以上の機関)

ただし、都道府県の教育委員会 2.0%

(職員数50人以上の機関)

(労働省発表資料(平成9年11月14日)の別添資料より作成)

なお、今回の調査では、障害が重度かどうかを聞いていないため、前述

の雇用率は法定雇用率の基準で算出すると実際はより高く算出されると思

われる。

②他の産業との比較

図表2-20は産業別の障害者の雇用率を表したものである。製造業一般

についてみてみると、障害者の実雇用率は1.71%である。福祉用具産業

の雇用率は図表2-20によると3.0%(ただし、重度障害者のダブルカ

ウントを行っていない)であり、製造業一般より高い値となっている。

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図表2-20 一般の民間企業における産業別障害者の雇用状況

企業数 常用労働者 障害者の数 実雇用率 法定雇用率

数 重度障害者 重 度 障 害 (b)×2+(c) (d)÷(a)×100 未達成企業

(常用) 者 常用 の 割 合( )

以 外 の 障

(社) (人) (人) 害者 人 (%)( )

区分 (a) (b) (c) (d)

農、林、漁業 102 17,628 65 157 287 1.63 44.1

鉱業 47 9,592 34 81 149 1.55 34.0

建設業 2,117 659,272 2,186 4,199 8,571 1.30 47.3

製造業 20,265 6,826,710 30,292 55,982 116,566 1.71 36.3

食料品・たばこ 2,712 749,417 2,813 7,224 12,850 1.71 35.6

繊維・衣服 1,772 329,635 1,694 3,985 7,373 2.24 26.1

木材・家具 595 107,122 594 1,428 2,616 2.44 20.8

パルプ・紙・出版 1,983 470,642 2,003 3,847 7,853 1.67 40.0

化学工業 1,839 797,772 2,763 5,619 11,145 1.40 47.0

窯業・土石 758 180,236 722 1,871 3,315 1.84 33.1

鉄鋼 315 176,477 658 1,641 2,957 1.68 26.0

非鉄金属 303 127,956 463 1,009 1,935 1.51 36.0

金属製品 1,545 299,513 1,417 3,171 6,005 2.00 29.9

電気機械 3,363 1,690,270 8,651 10,880 28,182 1.67 39.1

その他機械 4,046 1,613,345 7,373 12,847 27,593 1.71 36.6

その他 1,034 284,325 1,141 2,460 4,742 1.67 42.0

148 191,971 808 1,629 3,245 1.69 54.7電気・ガス・熱供給・水道業

運輸・通信業 3,174 1,105,444 3,885 9,999 17,769 1.61 43.3

卸売・小売業、飲食店 12,172 3,337,754 8,866 17,711 35,443 1.06 66.9

金融・保険・不動産業 2,116 1,416,031 4,708 9,268 18,684 1.32 67.9

サービス業 15,650 3,443,904 13,014 24,701 50,729 1.47 53.8

産業計 55,791 17,008,306 63,858 123,727 251,443 1.48 49.9

注1:常用労働者数とは、常用労働者総数から除外率相当数(身体障害者が就業することが困難であると

認められる職種が相当の割合を占める業種について定められた率を乗じて得た数)を除いた法定

雇用身体障害者数の算定の基礎となる労働者数である。

注2: 重度障害者(常用 」には短時間労働者の数は含まれていない 「重度障害者(常用)以外の障害者」「 ) 。

には重度障害者である短時間労働者が含まれている。

注3:障害者の数とは、身体障害者と知的障害者の計である。A欄の重度障害者(重度身体障害者及び

重度知的障害者)については法律上、1人を2人に相当するものとしてダブルカウントを行っている。

( 、 )平成10年6月1日現在 資料出所:労働省職業安定局集計

5.輸出入動向

(1)輸出

従来より本調査では市場規模の把握のために輸入額の調査を行っていた

が、今回、輸出の概況を把握することを目的に、福祉用具の出荷額に占める

輸出の割合(又は輸出額)を調査した。

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福祉用具の輸出の有無については、下表のとおり 「ある」と答えた企業、

、 . 。は1割程度であり 福祉用具の出荷額に占める割合は平均4 7%であった

そのため 「ある」とした企業について、割合から求めた輸出額を合算して、

も14億円程度で、アンケート集計額(3,103億円)全体に占める割合

は約0.5%である。

図表2-21 自社で製造又はOEMにより製造委託した製品の輸出の有無

あ る 34社(10.5%) 輸出額計 14億円

(アンケートベースの集計値)な い 256社(79.3%)

分からない 6社( 1.9%)

無 回 答 27社( 8.4%)

(2)輸入動向

輸入額については従来よりアンケートの対象としていたが、同じ輸入であ

っても、輸入相手国によって製品の種類・価格などに差があることも考えら

れることから、今回あらたに輸入相手国も尋ねることとした。

輸入額は、アンケートの単純集計では132億円で、自社製造等も含めた

アンケート集計額(3,103億円)に占める割合は4.3%%である。

主要な福祉用具について、アンケートから輸入動向を分析すると、図表2

、「 」、「 」、「 」、「 」、-22のように 杖 リフト 階段昇降機 椅子・座位保持装置

「コンピュータ関連機器・ソフト」などで割合が高い。

逆に比率が低いのは「おむつ 「ポータブルトイレ 「シルバーカー 、」、 」、 」

「福祉車両等 「段差解消器 「警報システム」などである。」、 」

この結果をみると、我が国で商品としてのコンセプトが成立ないしは発展

した品目( シルバーカー 「福祉車両等」等)については輸入の割合が低「 」、

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く、逆に 「リフト 「階段昇降機」のように、海外で成熟した製品を日本、 」、

に導入したものについては、輸入の割合が高いのではないかと推測される。

また、一般の工業製品では、高度な技術を要しない製品については海外に

生産を委ねる国際分業が見られるが、福祉用具に関しては 「リフト 「椅、 」

子・座位保持装置 「コンピュータ関連機器・ソフト」など、比較的技術」、

的に高度なものを欧米から輸入する一方 「杖 「車いす」等を東・東南ア、 」、

ジア諸国から輸入しているといった特徴がみられる。

(アンケートベースの集計額)輸入額計 132億円

図表2-22 主要な福祉用具の輸入の割合

市場規模 品目毎の輸入比 輸入相手国※2

(億円) 率(%)※1 (金額で上位の2国・地域)

おむつ 612 1.5 1.フランス 2.ドイツ

ポータブルトイレ 31 4.1 1.マレーシア 2.台湾

杖 12 61.8 1.台湾 2.デンマーク

歩行器・歩行車 12 8.6 1.アメリカ 2.台湾

シルバーカー 31 1.2 1.台湾

手動車いす 193 10.8 1.韓国 2.台湾

電動車いす 17 2.3 1.ドイツ 2.イタリア

電動三(四)輪車 46 7.2 1.台湾 2.韓国

福祉車両等 241 0.2 1.イタリア

リフト 23 36.1 1.スウェーデン 2.デンマーク

椅子・座位保持装置 18 26.8 1.デンマーク 2.アメリカ

階段昇降機 41 33.5 1.イギリス 2.デンマーク

段差解消器 7 0.0 -

コンピュータ関連機器・ソフト 10 23.1 1.スウェーデン 2.アメリカ

警報システム 45 0.0 -

褥瘡予防用具 54 12.3 1.アメリカ 2.中国

( 輸入」には海外生産や海外企業へのOEM生産委託を含む )「 。

※1:アンケートの単純集計額に占める、輸入額の%。

※2:アンケートから得られる出荷額ベースでの順位。

(3)国別輸入額等の動向

今回の調査では輸入相手国も尋ねたことにより、品目によっては国別の輸

入額も推計できる。ただし、特定の国からの輸入額が特定企業の製品である

場合も少なからずあるため、製品が特定できない品目で、かつ輸入の割合が

ある程度高いものについていくつか、国別の輸入額割合等の動向を示す。

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①手動車いす

アンケートを集計すると(下表 、輸入は台数で約6万台、売上高で16)

億円である。輸入以外も含めた総数に対する割合は、売上高では10%弱で

、 . 、 .あるが 台数では22 7%となっており 1台あたりの単価で見ると約2

5倍のひらきがある。

図表2-23 アンケート集計結果による手動車いすの輸入の割合

台数 売上高 単価

総 数 261,594台 18,058,353千円 69千円

輸 入 59,463台 1,646,798千円 28千円

割合 22.7% 9.1%

※台数のみ、または売上高のみの回答もあるため、正確ではない。

輸入相手国については、アンケートでは金額ベースで約3分の1相当しか

回答がなかったため、貿易統計から推計した。貿易統計には 「車いす」の、

項目はないが 「身体障害者用又は病人用の車両(機械式駆動機構を有しな、

いもの 」が概ねこれに該当するものと思われるので、この数値を用いてい)

る。国別にみると台湾と韓国で大半を占めており、台数ベースで88%、金

額ベースで75%を占めている。

図表2-24 「身体障害者用又は病人用の車両(機械式駆動

機構を有しないもの 」の国別輸入額)

国名 数量 価額(千円) 単価(千円)

台湾 57,445 937,493 16.3

韓国 25,659 473,558 18.5

米国 3,578 268,513 75.0

スウェーデン 3,554 109,392 30.8

中国 4,176 42,852 10.3

ドイツ 190 26,841 141.3

デンマーク 192 17,002 88.6

イギリス 32 2,724 85.1

ノルウェー 6 1,438 239.7

フィンランド 12 1,363 113.6

オランダ 10 1,026 102.6

カナダ 5 373 74.6

合計 94,859 1,882,575 19.8

※1997年1~12月の累計。 資料: 貿易統計」「

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図表2-25 「身体障害者用又は病人用の車両(機械式駆動機構を有しないも

の 」の国別輸入額割合)

資料: 貿易統計」「

②リフト

アンケートの回答をもとに、出荷額に占める国内と輸入(相手国別)の割

合を、リフトについて示したのが図表2-26である。リフトは、天井走行

式リフトなどを中心に輸入が行われているが、相手国は下図のとおり、圧倒

的にスウェーデンが多く、デンマークが続く。図は金額ベースの構成比であ

るが、台数ベースでもほぼ同じ傾向である。

図表2-26 リフトの出荷額に占める国内と輸入(相手国別)の割合

※アンケートの集計額による割合。

 

台湾51%

韓国25%

米国14%

スウェーデン6%

国内64%

スウェーデン32%

その他・不明1%

デンマーク3%

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③コンピュータ関連機器・ソフト

コンピュータ関連機器・ソフトについて、アンケートの回答をもとに、

出荷額に占める国内と輸入(相手国別)の割合を示したものが図表2-27

である。コンピュータ関連機器・ソフトについては、点字プリンタ等のハ

ードウェアを中心に、輸入の割合が高い。輸入相手国は北欧諸国及びアメ

リカが中心である。

図表2-27 コンピュータ関連機器・ソフトの出荷額に占める国内と

輸入(相手国別)の割合

※アンケートの売上高ベースの構成比。

国内77%

スウェーデン

8%

ノルウェー2%

アメリカ5%

オーストラリア1% 他・不明

7%