9
進行非小細胞肺癌症例に対する化学療法に関しては, プラチナ製剤を含む化学療法が無治療(BSC)と比較し て,生存期間中央値,1 年生存率で明らかに改善し,化 学療法の有用性が認められている 1) .現在の標準的化学 療法はプラチナ製剤と新規抗癌剤の併用が推奨されてい 2) .また新規抗癌剤による化学療法は外来化学療法を 可能とし,QOLの改善・向上をもたらしている 3)~5) .欧米 では肺癌化学療法は外来で行なうことが通常となってお り,本邦においても急性期病院では入院日数短縮の必要 性から外来化学療法へ移行する施設も増えてきている. 今回我々は当院における,非小細胞肺癌の外来化学療 法の検討を行なった.また同時に入院化学療法から外来 化学療法に移行するにあたり,クリニカルパス導入を試 みた.クリニカルパスとは,医療内容の標準化や患者と 医療者の情報の共有化,チーム医療などを行うことで医 療資源を効率的に使い,医療の質を保証・向上させるひ とつのツールである.具体的には,再発非小細胞肺癌の Weekly Paclitaxel+CBDCA を用いた肺癌クリニカルパ スを作成し,これを用いた肺癌入院化学療法を試みたの でここに報告する. 対象および方法 外来化学療法 1999 年 8 月~2001 年 10 月までに当院において外来化 学療法を開始した非小細胞肺癌 54 例を対象に外来化学 療法の有用性・安全性について検討した(Table1).観 察期間は 2002 年 10 月までとした.適格基準として,1) 肺癌の告知を受けている,2)全身状態が良好である(PS = 0~2),3)通院可能である,4)家族が協力的である,5) 救急病院との連携が可能である,とした.対象症例は年 齢中 央 値 63 歳(32~80 歳),男 性 33 例・女 性 21 例, 組織型は腺癌が 33 例,扁平上皮癌 12 例,その他 9 例で あった.PS(ECOG)は,0~1 が 49 例,2 が 5 例であっ た.臨 床 病 期 は IIIA;3 例,IIIB;18 例,IV;33 例 で あった.抗腫瘍効果の判定は WHO の判定基準に従って 行なった.副作用は NCI-CTC version 2.0 に従った.原 則として 1 サイクル目は入院して化学療法を施行し副作 用の発現を確認し,Grade 34 の副作用が出現すれば投 与薬剤量を 80% に減量して,2 サイクル目以降は外来 化学療法に移行した.外来化学療法中は原則として,毎 週外来受診し,血液検査・胸部 X 線検査を行い副作用 に対し早期対応を行った. ●原 非小細胞肺癌における外来化学療法とクリニカルパス 小牟田 1) 延山 誠一 1) 岩堀 幸太 1) 向内 千佳 1) 甲賀 啓介 1) 近藤 純平 1) 浅井 光子 2) 誠剛 3) 要旨:1999 年 8 月から 2001 年 10 月までに外来化学療法を施行した非小細胞肺癌 54 例を対象に外来化学 療法の有用性について検討した.外来化学療法の割合は全化学療法の 67% を占めた.治療効果は 54 例中 PR;14 例,奏効率 26%.化学療法別治療効果では,Paclitaxel+Carboplatin(CBDCA);50% で最も高 い奏効率が認められた.生存期間中央値は 14.7 カ月,1 年生存率は 61.1%.上記の結果より,Weekly Pacli- taxel+CBDCA を用いた在院日数 16 日の非小細胞肺癌対象クリニカルパスを作成した.目的は在院日数の 短縮,治療の標準化,外来化学療法への導入である.2002 年 8 月から 10 月までに入院した再発非小細胞 肺癌 8 例にクリニカルパスを導入した.バリアンスは Grade 3 の副作用により入院が 2 日延長した 1 例に のみ認められた.クリニカルパス導入により Weekly Paclitaxel+CBDCA での在院日数は 16.3 日に短縮で きた. キーワード:非小細胞肺癌,外来化学療法,クリニカルパス,ウィークリーパクリタキセル,カルボプラチン Non-small cell lung cancer,Outpatient chemotherapy,Clinical pathway,Weekly paclitaxel, Carboplatin 〒5430035 大阪市天王寺区北山町 10―31 1) 大阪警察病院呼吸器科 2) 宝塚市立病院呼吸器科 3) 国立療養所近畿中央病院内科 (受付日平成 15 年 3 月 31 日) 日呼吸会誌 42(3),2004. 223

非小細胞肺癌における外来化学療法とクリニカルパス · 2014. 7. 31. · 緒言 進行非小細胞肺癌症例に対する化学療法に関しては, プラチナ製剤を含む化学療法が無治療(bsc)と比較し

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Page 1: 非小細胞肺癌における外来化学療法とクリニカルパス · 2014. 7. 31. · 緒言 進行非小細胞肺癌症例に対する化学療法に関しては, プラチナ製剤を含む化学療法が無治療(bsc)と比較し

緒 言

進行非小細胞肺癌症例に対する化学療法に関しては,

プラチナ製剤を含む化学療法が無治療(BSC)と比較し

て,生存期間中央値,1年生存率で明らかに改善し,化

学療法の有用性が認められている1).現在の標準的化学

療法はプラチナ製剤と新規抗癌剤の併用が推奨されてい

る2).また新規抗癌剤による化学療法は外来化学療法を

可能とし,QOLの改善・向上をもたらしている3)~5).欧米

では肺癌化学療法は外来で行なうことが通常となってお

り,本邦においても急性期病院では入院日数短縮の必要

性から外来化学療法へ移行する施設も増えてきている.

今回我々は当院における,非小細胞肺癌の外来化学療

法の検討を行なった.また同時に入院化学療法から外来

化学療法に移行するにあたり,クリニカルパス導入を試

みた.クリニカルパスとは,医療内容の標準化や患者と

医療者の情報の共有化,チーム医療などを行うことで医

療資源を効率的に使い,医療の質を保証・向上させるひ

とつのツールである.具体的には,再発非小細胞肺癌の

Weekly Paclitaxel+CBDCAを用いた肺癌クリニカルパ

スを作成し,これを用いた肺癌入院化学療法を試みたの

でここに報告する.

対象および方法

外来化学療法

1999 年 8 月~2001 年 10 月までに当院において外来化

学療法を開始した非小細胞肺癌 54 例を対象に外来化学

療法の有用性・安全性について検討した(Table 1).観

察期間は 2002 年 10 月までとした.適格基準として,1)

肺癌の告知を受けている,2)全身状態が良好である(PS=

0~2),3)通院可能である,4)家族が協力的である,5)

救急病院との連携が可能である,とした.対象症例は年

齢中央値 63 歳(32~80 歳),男性 33 例・女性 21 例,

組織型は腺癌が 33 例,扁平上皮癌 12 例,その他 9例で

あった.PS(ECOG)は,0~1が 49 例,2が 5例であっ

た.臨床病期は IIIA;3 例,IIIB;18 例,IV;33 例で

あった.抗腫瘍効果の判定はWHOの判定基準に従って

行なった.副作用はNCI-CTC version 2.0 に従った.原

則として 1サイクル目は入院して化学療法を施行し副作

用の発現を確認し,Grade 3―4 の副作用が出現すれば投

与薬剤量を 80%に減量して,2サイクル目以降は外来

化学療法に移行した.外来化学療法中は原則として,毎

週外来受診し,血液検査・胸部X線検査を行い副作用

に対し早期対応を行った.

●原 著

非小細胞肺癌における外来化学療法とクリニカルパス

小牟田 清1) 延山 誠一1) 岩堀 幸太1) 向内 千佳1)

甲賀 啓介1) 近藤 純平1) 浅井 光子2) 南 誠剛3)

要旨:1999 年 8月から 2001 年 10 月までに外来化学療法を施行した非小細胞肺癌 54例を対象に外来化学

療法の有用性について検討した.外来化学療法の割合は全化学療法の 67%を占めた.治療効果は 54例中

PR;14 例,奏効率 26%.化学療法別治療効果では,Paclitaxel+Carboplatin(CBDCA);50%で最も高

い奏効率が認められた.生存期間中央値は 14.7 カ月,1年生存率は 61.1%.上記の結果より,Weekly Pacli-

taxel+CBDCAを用いた在院日数 16日の非小細胞肺癌対象クリニカルパスを作成した.目的は在院日数の

短縮,治療の標準化,外来化学療法への導入である.2002 年 8月から 10月までに入院した再発非小細胞

肺癌 8例にクリニカルパスを導入した.バリアンスはGrade 3 の副作用により入院が 2日延長した 1例に

のみ認められた.クリニカルパス導入によりWeekly Paclitaxel+CBDCAでの在院日数は 16.3 日に短縮で

きた.

キーワード:非小細胞肺癌,外来化学療法,クリニカルパス,ウィークリーパクリタキセル,カルボプラチン

Non-small cell lung cancer,Outpatient chemotherapy,Clinical pathway,Weekly paclitaxel,

Carboplatin

〒543―0035 大阪市天王寺区北山町 10―311)大阪警察病院呼吸器科2)宝塚市立病院呼吸器科3)国立療養所近畿中央病院内科

(受付日平成 15 年 3月 31 日)

日呼吸会誌 42(3),2004. 223

Page 2: 非小細胞肺癌における外来化学療法とクリニカルパス · 2014. 7. 31. · 緒言 進行非小細胞肺癌症例に対する化学療法に関しては, プラチナ製剤を含む化学療法が無治療(bsc)と比較し

Table 1 Characteristics for outpatients

No. of patientsCharacteristics

54Patients

Age, years

63(32―80)Median(Range)

1370 ≧

Gender

33/21Male/Female

ECOG PS

13/36/50/1/2

Histology

33/12/9Ad/Sq/others

Stage

3/18/33�A/�B/�

クリニカルパス

在院日数 16 日の非小細胞肺癌対象クリニカルパスの

作成・施行を試みた.クリニカルパスに用いたレジメン

は,Weekly Paclitaxel+CBDCA(Fig. 1)で,外来でも

施行可能なレジメンから選択された.投与スケジュール

(Fig. 2)は入院当日(Day 1)に Paclitaxel+CBDCAを

施行し,Day 8,Day 15 に Paclitaxel のみ単剤投与し,

翌入院 16 病日に退院とした.上記を 1サイクルとして,

以後外来で 3サイクル施行することを目標とした.化学

療法施行中に,腫瘍増悪もしくは治療・入院期間延期を

要する重篤な副作用が出現した場合をバリアンスと定義

した.副作用はNCI-CTC version 2.0 に従い,看護師が

クリニカルパス記録用紙に記載した.対象は 2002 年 8

月から 10 月までに当科に入院した再発非小細胞肺癌 8

例で,年齢中央値 70 歳(54~75 歳),PS(ECOG);0~

1が 7例,2が 1例.臨床病期は全例 IV期であった.

結 果

外来化学療法

初回化学療法の治療効果は(Table 2),54 例中 PR;

14 例,NC;31 例,PD;9例で,奏効率は 26%であっ

た.化学療法別治療効果は,(Weekly)Paclitaxel+

CBDCA;50%,Gemcitabine+Vinorelbine;27% で

あった.また,全症例の生存期間中央値は 14.7 カ月,1

年生存率は 61.1%であった(Fig. 3).初回化学療法 214

サイクルのうち,外来での化学療法は 144 サイクルであ

り,外来化学療法比率は 67%であった.平均サイクル

数は 3.96 サイクルであった.外来においてGrade 3 以

上の副作用はほとんど出現せず,緊急入院が必要な症例

もなく,安全に外来化学療法が施行できた.

クリニカルパス

医療スタッフ用のクリニカルパス(Fig. 4 A)(Fig. 4 B)

には熱型表・化学療法副作用を記入出来るようにした.

副作用の項目として,アレルギー,食欲不振,嘔吐,口

内炎,倦怠感,関節痛,筋肉痛,末梢神経障害をもうけ

た.役割表示の色分けとして,赤字が医師,黒字が看護

師,青字が薬剤師とした.患者用のクリニカルパス(Fig.

5)も作成し,治療に対する理解を深めるよう患者指導Fig. 1 Treatment regimen.

Fig. 2 Treatment schedule of weekly paclitaxel�carboplatin.

224 日呼吸会誌 42(3),2004.

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Table 2 Response rate by chemotherapy

PD(%)NC(%)PR(%)No. of Pts

3(21)4( 29)7(50)14Paclitaxel + CBDCA(Weekly or Monthly)

6(23)13( 50)7(27)26Gem+ VNR

0( 0)5(100)0( 0)5Gemcitabine

0( 0)5(100)0( 0)5Vinorelbine

0( 0)2(100)0( 0)2Docetaxel

0( 0)1(100)0( 0)1VP-16 + CBDCA

0( 0)1(100)0( 0)1VNR+MMC+ CDDP

9(17)31( 57)14(26)54

した.さらに,入院中に外来化学療法のシステムについ

て説明し,安心して外来化学療法を受けられるよう指導

した.また,外来に移行した場合,外来患者用のパス(Fig.

6)も作成し外来診療に有効利用している.

この入院クリニカルパスを 8例の患者に試みた.

Grade 3 の食欲不振,悪心・嘔吐が 1例に認められた以

外重篤な副作用は認められなかった(Table 3).この副

作用のため 2日間の入院延長となり,8例中 1例にバリ

アンスが発生した.その他,治療に関連するバリアンス

は認められなかった.従来は入院で 2サイクル化学療法

を施行していたため在院日数は平均 56 日であったが,

クリニカルパスを用いて外来化学療法に移行できたこと

により 16.3 日に短縮できた.

考 察

肺癌化学療法において,新規抗癌剤の登場,副作用を

軽減する薬剤の開発は従来長期入院を余儀なくされてい

た肺癌患者に対し,外来化学療法を可能にした3)~5).た

だし,外来化学療法のレジメンの選択は大きな問題であ

るが,現状では限られたレジメンしか使用できない.当

院では,外来化学療法のレジメンとしてWeekly Pacli-

taxel+CBDCA,Gemcitabine+Vinorelbine による治療

が中心で,これらは,抗腫瘍効果,生存期間の延長を目

的として用いている.一方,Docetaxel 単独,Gemcitabine

単独,Vinorelbine 単独による治療は,セカンドライン

以降の化学療法として用いている.

現在のレジメンおよび投与量においては,外来に移行

してからのGrade 3 以上の血液毒性・非血液毒性の副作

用はほとんど認められず,緊急入院のケースもなく,安

全に外来化学療法を施行できている.また当院では,小

細胞肺癌に関しても積極的に外来化学療法を行ってい

る6).

クリニカルパスを作成するにあたっては,Evidence

based medicine(EBM)に則って作成,実施されるこ

とが基本である7)~9).進行再発非小細胞肺癌の化学療法

においてプラチナ製剤を含む併用療法が現在最もエビデ

ンスの高い治療と言われている2).しかしながら,Cis-

platin(CDDP)は大量の補液が必要であり外来化学療

法を行うに当たって問題となる.一方,CBDCAは補液

の必要もなく毒性やQOLに関してCDDPより有用で,

外来化学療法に適している10).Eastern Cooperative On-

cology Group(ECOG)11)において進行非小細胞肺癌に対

し Paclitaxel+CDDP,Gemcitabine+CDDP,Doceta-

xel+CDDP,Paclitaxel+CBDCAの 4種のレジメンの

比較試験がなされ,いずれのレジメンでも生存に差はな

かったが Paclitaxel+CBDCA群では重篤な副作用の発

現頻度が最も少なかったとの報告であった.これにより,

ECOGでは今後の標準治療法を Paclitaxel+CDDPから

Paclitaxel+CBDCAに変更すると結論付けている.同

様に,Southwest Oncology Group(SWOG)12)において

も,Vinorelbine+CDDPと Paclitaxel+CBDCAの比較

試験が行なわれ,副作用の点,治療完遂率の点より標準

治療法が Paclitaxel+CBDCAに変更されており,

CBDCAは Paclitaxel とであればCDDPを含む 2剤併用

療法と同様の効果が得られると言える2).さらに,Pacli-

taxel+CBDCAの併用の投与スケジュールについても

検討が進んでおり,Belani ら13)は,Paclitaxel 毎週投与+

CBDCA 4 週毎投与の併用療法はGrade 3 以上の好中球

減少が 22%,Grade 3 以上の末梢神経障害が 5%であっ

たと報告し,従来の 3週毎の Paclitaxel+CBDCAの併

用療法に比べ副作用を軽減できる可能性があると示唆さ

Fig. 3 Overall survival(Kaplan-Meier).

225肺癌における外来化学療法とクリニカルパス

Page 4: 非小細胞肺癌における外来化学療法とクリニカルパス · 2014. 7. 31. · 緒言 進行非小細胞肺癌症例に対する化学療法に関しては, プラチナ製剤を含む化学療法が無治療(bsc)と比較し

Fig. 4 A Clinical pathway for medical staff.

226 日呼吸会誌 42(3),2004.

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Fig. 4 B Clinical pathway for medical staff.

227肺癌における外来化学療法とクリニカルパス

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Fig. 5 Clinical pathway for inpatients.

228日呼吸会誌42(3),2004.

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Fig. 6 Clinical pathway for outpatients.

229肺癌における外来化学療法とクリニカルパス

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Table 3 Toxicity profile of weekly paclitaxel/ carboplatin regimen

No. of patientsGrade

43210

00008Hypersensitivity reaction

01025Anorexia

01025Nausea & Vomiting

00008Stomatitis

00224Fatigue

00215Arthralgia

00026Myalgia

00017Neuropathy

れている.

今回我々は,上記の理由により化学療法のレジメンと

してWeekly Paclitaxel+CBDCAを選択し入院クリニ

カルパスを作成し,外来化学療法導入を試みた.癌治療

に対するクリニカルパスは外科を中心に乳癌,胃癌,食

道癌の手術症例を中心に施行されている.癌治療におい

てはバリアンスが多くクリニカルパスの適応障害になる

と考えられており,特に肺癌の化学療法クリニカルパス

は困難と言われてきた7).今回我々の作成したクリニカ

ルパスはバリアンスが 1例のみで,肺癌化学療法におい

ては比較的安全に施行できるものであった.クリニカル

パスは,医療の標準化,業務の改善,安全性の向上,平

均在院日数の短縮,患者満足度,職員満足度の向上,チー

ム医療,医療連携の促進,医療の質の向上,医療変革を

目的としている7)~9).今回はアンケート調査などは行っ

ていないが,看護師の反応としては,クリニカルパスを

用いることにより肺癌治療をより理解でき,スタッフの

間で治療に関する考え方の標準化が可能となった.また

患者にとっては,予めスケジュールが決まっているため,

退院後の予定が立てやすく,安心して治療に専念できる

様になったとの反応もあった.クリニカルパスを用いる

ことで入院化学療法後に外来化学療法へスムーズに移行

することが可能となった.今後は患者用・医療従事者用

アンケートを作成し,クリニカルパスの有用性について

検討を重ねたい.

最近の傾向として,入院日数を短縮して,在宅期間を

延ばすことが患者のニーズでもあり,積極的に外来化学

療法が行われている.当院の外来化学療法の検討におい

て,高齢者であっても,PSが良好であれば十分外来化

学療法は可能と考えられた.我々は,外来化学療法施行

に際して,より安心して化学療法を受けることができる

よう入院クリニカルパスに継続して外来化学療法患者用

パスも作成した.外来用パスは,医療スタッフ用の投与

スケジュールも記載してあるので,転院が必要になった

場合でも他院で同様な治療を受けることが可能である.

医療費に関しても,肺癌の場合薬剤費より入院費用に多

大な費用がかかると報告されており4)14)15),外来化学療法

は医療経済的にも有用である.今後肺癌化学療法を考え

る場合,クリニカルパスを用いた入院,およびそれに引

き続いての外来化学療法が主流となって行くであろう.

文 献

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法 2002 ; 29 : 1661―1664.

7)小西敏郎,阿川千一郎:癌治療とクリニカルパス.

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230 日呼吸会誌 42(3),2004.

Page 9: 非小細胞肺癌における外来化学療法とクリニカルパス · 2014. 7. 31. · 緒言 進行非小細胞肺癌症例に対する化学療法に関しては, プラチナ製剤を含む化学療法が無治療(bsc)と比較し

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Abstract

Outpatient Chemotherapy and Clinical Pathway for Non-Small Cell Lung Cancer

Kiyoshi Komuta1), Seiichi Nobuyama1), Kouta Iwahori1), Chika Mukouchi1),Keisuke Koga1), Junpei Kondo1), Mitsuko Asai2)and Seigo Minami3)

1)Department of Respiratory Medicine Osaka Police Hospital

2)Department of Respiratory Medicine, Takarazuka City Hospital3)Department of Internal Medicine, National Kinki-Chuo Hospital

10―31 Kitayama-cho, Tennoji-ku, Osaka City, Osaka 543―0035, Japan

We investigated the usefulness of outpatient chemotherapy in 54 cases of non-small cell lung cancer in which

outpatient chemotherapy was performed between August 1999 and October 2001. This chemotherapy accounted

for 67% of all chemotherapy. Assessment of therapeutic effect revealed a PR in 14 of the 54 cases, and the efficacy

rate was 26%. Therapeutic effect according to chemotherapy regimen revealed the highest efficacy rate, 50%, for

paclitaxel+CBDCA. The median survival time was 14.7 months, and the 1-year survival rate was 61.1%. On the

basis of the above results, a 16-day inpatient clinical pathway using weekly paclitaxel+CBDCA was devised for

non-small cell lung cancer. The aim was to shorten the number of inpatient days, standardize treatment, and intro-

duce outpatient chemotherapy. The clinical pathway was introduced in 8 patients with recurrent non-small cell

lung cancer between August and October 2002. Variance was found only in one patient whose hospital discharge

had to be postponed by two days because of a Grade 3 side effect. Introduction of a clinical pathway with weekly

paclitaxel+CBDCA successfully reduced the inpatient days to an average of 16.3 days.

231肺癌における外来化学療法とクリニカルパス