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鹿児島大学理学部地球環境科学科 岩松

鹿児島大学理学部地球環境科学科 岩松 暉 · 「地震の現象」と「地震による災害」とは区別し て考へなければならない。「現象」の方は人間

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Page 1: 鹿児島大学理学部地球環境科学科 岩松 暉 · 「地震の現象」と「地震による災害」とは区別し て考へなければならない。「現象」の方は人間

災 害 論

鹿児島大学理学部地球環境科学科

岩松 暉

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災害論講義もくじ

災害の定義

自然現象と社会現象

災害の種類

現象的分類

地理的分類

災害の原因と構造

素因・誘因・拡大要因

災害の進化と階級性

現代災害の特徴

災害対策の構造

ハード・ソフト

災害との共存

防災教育

防災科学のあり方

防災行政

防災まちづくり

国際貢献

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序論―なぜ地学の講義に災害論か―

従来の災害科学

個別科学の視野の中だけで判断

被害科学が念頭にない

真の防災科学

単なるメカニズムの解説だけではダメ

防災・減災に実践的に結びつく必要

総合科学的災害観が重要

→被害をなくすためには社会科学的視野不可欠

→文部省自然災害科学総合研究班にも人文社会部会

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災害の定義(1)

広辞苑

異常な自然現象や人為的原因によって,人間の社会生活や人命の受ける被害

自然災害辞典

自然作用または人為的作用が誘因で,地域の人間社会生活環境に損害や危害をあたえ,かつ,人命にかかわる現象もしくは人命にかかわるおそれのある現象

→個人の災難は災害ではない

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災害の定義(2) 寺田寅彦(1935)

「地震の現象」と「地震による災害」とは区別して考へなければならない。「現象」の方は人間の力ではどうにもならなくても「災害」の方は注意次第でどんなにでも軽減され得る可能性があるのである。

奥田 穣(1966)

ある現象が発生することにより,人間生活がなんらかの形で破壊される現象

破壊力が人間の抵抗力を上回るとき発生

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災害の定義(3)

岩松の定義

災害とは自然と人間が相互に交錯するところで発生する人間にとって好ましくない負の社会現象

無人島でがけ崩れがあっても,それは単なる地質現象(浸食作用)に過ぎない

自然災害と自然現象を混同しないこと

地すべり・崩壊=斜面災害ではない

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災害と公害(1)

災害

一次的な原因が異常な自然の運動による

一過性の突発的被害

公害

一次的な原因が人間の活動に求められる

持続性の慢性的被害

火災,とくに大火はどちら?

失火が原因だが,強風により大火に

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天災と人災 天災

自然界の変化によって発生

宿命論,あきらめにつながりやすい

人為的要因や防災対策の軽視・行政の免罪

人災

1953年北九州大水害の際,小出博が造語

人間の不注意に起因,行政の怠慢論

自然的要因の軽視につながりかねない

一面的主張はどちらも非生産的

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災害と公害(2) 災害対策基本法(1961)→自然現象の一種

暴風・豪雨・豪雪・高潮・地震・津波・噴火その他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう その他…冷害・干害・雹害・霜害・旋風・地すべり・山崩れ・がけ崩れ・土地の隆起・土地の沈降等

公害対策基本法(1967)→社会現象の一種 事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染・水質の汚濁…土壌の汚染・騒音・振動・地盤の沈下…及び悪臭によって,人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう

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災害の種類

災害の現象的分類

気象災害

冷害・干害・霜害・雪害・豪雨・台風・高潮・落雷

地盤災害・斜面災害(崩災)

地震動災害・地すべり災害・山崩れ災害・土石流災害

災害の地理的分類

河川災害・海岸災害・山林災害・農業災害・都市災害 木村春彦(1977)

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災害の4つの型

災害の種類

誘 因

破壊の型

時間スケール

被害対象

防災方針

自然環境の 急激な変化

自然環境の 異常

人間の不注 意

第1種 第2種 第3種 第4種

人間活動の 増大による 環境変化

主に物理的 主に物理・ 化学的

主に物理的 主に化学的

短期 長期積算的 短期 長期積算的

構造物・植 物・人間

植物・動物 人間・構造物 交通機関等

人間・動物・ 植物

工学的・避難 運営的・経 済的

安全工学的 政治的・経 済的

例 震災・水災 冷害・旱魃 交通災害・工 場災害・火災

公害・ 文明災害

高橋浩一郎(1977)

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第三の災害

三寺光雄(1976)

自然災害

人為的災害

生態的災害…大気汚染・環境破壊

戦争とくに核戦争は? 最悪の人為的災害であり,「核の冬」は最大の生態的災害

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災害の原因別分類

自然災害

地震・洪水・暴風雨・津波・竜巻・干ばつ・山火事・火山噴火など

人為災害

事故・有害物質汚染・火災・テロなど

複合災害

戦争・内乱・民族紛争・大量難民の発生など 鎌江伊三夫(2001)

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災害の進化(1) 渡辺洋三(1977)

巨視的に視れば,人類の歴史は,一方では人間社会が自然現象をそのコントロールの下におき,災害を縮小させる過程であったと同時に,他方においては,当の人間の営み自体が,災害を拡大し,あるいは新たな災害をうみ出す過程でもあったことに注目しなければならない

減少・軽減した例…虫害(農薬の進歩)・干害(潅漑の完備)

増大・新規の災害…雪害(商品経済の浸透)・ライフライン災害

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災害の進化(2)

寺田寅彦(1934)

文明が進めば進む程天然の暴威による災害がその激烈の度を増す

人間の団体,就中国家は有機的結合が進化その有機系の一部の損害が系全体に悪影響 例…中央線沿線停車場付近の新開町の暴風被害

– 旧村落は「自然淘汰」という時の試練に堪へた場所に「適者」として「生存」。停車場といふものの位置は気象的条件などといふことは全然無視して官僚的政治的経済的な立場からのみ割出して決定されている為

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災害の階級性(1)

平野義太郎(1934)

『自然災害と無産階級』中央公論11月号

→災害の階級性を論じた最初の論文

洪水・浸水・低温(早冷)・寡照・多雨・旱魃・害虫―農工業を通ずるこれらの自然的事情は決して単純な自然的事実のみなのではない。自然災害は社会的条件の欠陥のうちに激発せられ,且つ,階級関係に対して異った影響をおよぼし,経済的破綻の表現となる

ベネズエラ

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被害段階だけでなく復旧段階でも階級性

封建時代 城主・士族…堤防の高い安全側に住む

下層民・農民…遊水地に住む

チリ地震津波 網元・船主は高台の豪邸,漁師は沿岸低地

小農の水田ほど冠水植え付け不能率が高い

伊勢湾台風 低所得者層の住む公営住宅の83%が被災

災害の階級性(2)

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現代災害の特徴(1)

阪神大震災を除けば大災害ない

単なる幸運だけではなく,土木建築技術の進歩とそれを実行できる経済力の発展

したがって,被害も減少傾向

小規模・群発の傾向

農村災害から都市災害へ

宅造など開発が関係,人的被害を伴う

被害内容の多様化,ライフライン災害

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都市化の進行と災害

広島市佐伯区1999年梅雨前線豪雨災害

1970年代以降宅地造成進行

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現代災害の特徴(2)

災害の人災化(公害化)

乱開発に伴う水害・土砂災害の多発

過密による都市災害の激化・多様化

災害と公害の複合化

絶対的損失の増大

都市部での死者増加

災害と防災の矛盾化

災害予測と防災対策のズレ

防災施設の災害因子への転化

公共機関の責任増大

災害の大規模化

地域共同体の崩壊

災害情報伝達

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災害の原因分析(1)

中村慶三郎(1939)

崩災について提唱

素因(素質的原因)…地形・地質

誘因(直接的原因)…豪雨・地震

佐藤武夫ら(1969)→初めて社会的因子を導入

災害・公害一般について提唱 素因(第一次要因)…豪雨 中村の誘因と同義

誘因 必須要因…弱い堤防

拡大要因…低湿地

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災害の原因分析(2)

自然的因子

人為的因子

自然環境的因子

技術的因子

社会的因子

エネルギー的因子 異常気象 地震・噴火

地形・地質 植生

防災施設 避難体制

乱開発 過疎・過密

木村春彦(1977)

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災害の構造

被害対象

素因

誘因 災害

拡大要因

環 境 高橋浩一郎(1977)

環境の変化によって素因も誘因も変化する

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災害対策の構造

事 前 対 策

応 急 対 策

事 後 対 策

政治的対策

地域計画論的対策

運動論的対策

技術的対策

社会的対策

調査・観測・防災施設 防災組織・予報体制

情報伝達・拡大防止 避難・救護・救援

調査・復旧・復興 防災施設改良

財政対策(防災投資) 法的対策(規制)

防災都市づくり 環境保全・防災図

自主防災組織 防災教育

(ハード的対策)

(ソフト的対策)

木村春彦(1977)

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防災対策の方向

現状 将来の方向

ハード万能 ソフト的対応

構造物主義 耐性増加

固定化 可動化

集中化 分散化・独立化

巨大化 小型化

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技術的対策の問題点

現在のやり方

土木技術万能主義

短期的な最適適応

完全防御めざす=自然を押し込める

大規模構造物で自然固定

現状復旧が原則

公共施設の復旧重点

将来の方向

長周期の地学的変化に対応

きめ細かな局地的条件に対応

事前の防災調査重点

復旧は改良復旧

個人救済も

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大河津分水の功罪

自然に手を着けると,思いがけない所で反動 信濃川河口では海岸浸食,大河津では堆積

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“災害”は自然の摂理

堆積作用sedimentation(浸食→運搬→堆積)

風化weathering→土壌形成

浸食erosion→地すべり・崩壊

運搬transportation→洪水・土石流

堆積deposition→平野形成

1971 1987

桜島

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祖先の知恵に学ぶ

西郷屋敷(左下隅)

明治まで道路より左が住宅地

高度成長期に住宅が崖錐地まで進出→災害

災害との共存

危険回避

がけ下の坂は崩土の堆積地形

自然(神)の領域

薪炭林か竹林

三畝制度 がけ側から畑3畝,家3畝,田3畝

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せり出し

崩壊点

出水市針原災害

天狗の踊り場

土石流地帯は関外

洗出は利用禁止 野間ノ関

鹿児島市田上

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自然との共存か,自然征服か

武田信玄

デ・レイケ Johannis De Rijke 成願寺川

信玄堤

高岩

連続堤防築堤

現在は天井川

釜無川

御勅使川

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シラス斜面

←崩積土

崖肩

35゚

30゚

宅 盤 可 宅造不可 道路 公園

① 崖肩を望んで仰角30゚までは宅地を 造成してもよい。 ② 35゚までは道路や公園にしてもよい。 ③ それ以上は宅造不可。

自然に対して謙虚に

←六甲山系グリーンベルト構想

鹿児島県宅地

造成基準→

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土砂災害防止法

既存の事業関連諸制度と相まって総合的な土砂災害対策を講じるため,土砂災害のおそれのある区域についての危険の周知,警戒避難体制の整備,住宅等の新規立地の抑制,既存住宅の移転促進等のソフト対策に関する新たな法制度を講じるものである(2000.4.27成立)

既存砂防三法 砂防法・地すべり等防止法・

急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律

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社会的対策の問題点

国土保全投資の貧困

防災的地域計画を

経済効率追求一点張り

新型開発はゆっくり

安全の科学の立ち遅れ

日本の風土にあった安全基準を 例…新潟地震時の昭石タン

行政投資に占める国土保全投資の割合

0 10 20 30

1958 1960 1962 1964 1966 1968 1970 1972

国土保全投資 道路建設費

↑ 逆転

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防災関係予算の推移

防災関係予算は年々増加傾向にあり,3兆円突破

しかし,一般会計予算に占める割合は5%程度

中では災害予防が増加傾向

%

10

5

0

兆円

3

2

1

0 '70 '80 '90

防災関係予算額

一般会計予算に占める割合

50

25

0

%

'90 '80 '70

災害復旧等

国土保全

災害予防 科学技術の研究

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自然災害による物的被害

施設関係等被害額

国民総生産に対する比率

0

1.0

2.0

%

0

10,000

20,000

億円

'65 '70 '80 '90 '75 '85

対GNP比率は減少傾向

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わが国の風水害による死亡リスク

死亡リスク(死者数/人口)

10 -4

10 -5

10 -6

10 -7

1950 1960 1970 1980 1990

河田(1995)

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防災教育

災害知識の有無が生死を分ける

自分の命は自分で守るのが基本

針原川土石流災害,長崎水害

災害知識の伝承がなくなった

土砂災害の周期は102年(3~4世代相当)

祖父母から孫へ,体験談や災害民話

核家族時代→公教育の重要性増大

都市化=転勤などによる新住民

地元の自然に無知→社会人教育の重要性

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うつむき地蔵(高地蔵)

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土石流アンケート 土石流危険渓流周辺住民

1,3365世帯(回収率50.0%)

針原災害後アンケート

自分の家の近くに土石流危険渓流があるのは知っている

土石流前兆現象を知らない

危険個所分布図の存在知らない

指定避難所は64%知っている

これでは第二・第三の針原災害起きる

土石流危険渓流の存在

65%

32%

3%

土石流の前兆現象

40%

54%

6%

危険個所分布図の存在

43%

52%

5%

知っている 知らない 無回答

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8・6水害中学生アンケート(1)

シラス地帯の子がシラスを知らない

がけ崩れ発生雨量やや多め

逃げ遅れる危険大

過去の水害知らない

避難しない恐れ,団地造成元凶論

地元で起きる災害の知識なし

鹿児島は台風銀座

シラスを実際に見たことがあるか

はい 55%

いいえ 45%

がけ崩れ発生時間雨量

30-60mm 18%

60-100mm 51%

10-30mm 2%

>100mm 29%

過去に水害があったことを知っているか

はい 38% いいえ

62%

災害知識の例

0 100 200 300 400 500

地震,火を消せ

地震時津波用心

台風右半円危険

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8・6水害中学生アンケート(2)

大水やがけ崩れの注意を大人から聞いたか

約半数しか聞いていない

災害常襲地としては大問題

それは誰から聞いたか

父母72%,祖父母14%,先生はたったの2%

数十年~100年周期の災害では,父母では無理

学校教育で系統的に教えることが不可欠

新しい“災害民話”が求められている?

家族で避難場所を決めているか

わずか18%,しかも指定避難場所知らない

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地学で災害の授業も 外国では geohazard 大きく取り扱う

日本では? 風化作用と浸食作用で触れれば良いほう

それも堆積岩の生成を教えるためのステップ

あるいは隆起・浸食とセットで造山運動の解説

どうして? 日本の大学では応用地質学教えていない

したがって,関心のある教師層育たない

この分野は入学試験に出ない

野外授業は事故の恐れありとして尻込み

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災害科学と防災科学

災害科学

災害現象の中にある法則性を解明する科学

自然現象と社会現象とが絡み合う「複合現象」の解明も図る ex. 燃焼科学≠火災科学

防災科学

災害防止の科学的な知識と方法を究明する「目的学」であると同時に,対策行為のプロセスを科学的に支える実践的「戦術学」

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災害現象と防災科学

災害科学

対策科学

被災科学

(自然科学)

(技術科学)

(人文科学)

(社会科学)

被害の発生・拡大

(自然+社会現象)

加害力の形成・成長

(主として自然現象)

対策の技術

対策の実施

防災科学

藤井陽一郎・他(1977)

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防災科学の課題 予知・予見・予測の科学(防災アセスメント)

自然現象発生の予知,被害予測,新型災害の予見

制御の科学(事前の実践的対策科学)

ex.雷の本質は放電現象といった解説だけではダメ→避雷針

行動の科学(災害心理学など)

避難行動と情報伝達,被災後の精神障害などのケア

地域の科学(災害地理学・災害史など)

総合的防災科学(空間計画科学) 日常生活機能と防災機能の統一,環境保全と防災対策の調整

住民の立場に立った防災科学

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防災科学の問題点 社会科学的アプローチ弱い‥自然科学的興味優先

情報伝達・パニック・避難・復興期の法的経済的問題・精神障害

災害現象そのものの解明の遅れ

災害調査あって被災調査なし…学災? 例:コンビナート災害

政府調査団=事故原因の究明,被災実態調査なし→タンク丈夫にするだけ

爆発飛散物・有毒ガスの被災範囲→コンビナートの立地条件見直しに通じる

対策科学の欠如

研究費の絶対的不足

防災科学軽視の風潮…実学は亜流の科学?

防災教育の欠如…日本人の災害観(喉元過ぎれば…)

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防災科学と地質学

「地質屋は評論家,テレビで解説者」ではダメ

富士山は活火山,いずれ爆発するでしょう

この断層は明日動くかも知れないし,千年後かも知れない

無責任な発言は人心を惑わし社会不安をあおる

学問的興味だけの動機で災害に関わる→学災 リンゴの落ちるのを見て万有引力を教えてもらっても農民は救われない

岩質の説明だけの機構論に終わっても困る

泥岩は膨潤しやすいモンモリロナイトを含むから滑る

やはり実践的な防災地質学の発展を 被災者と痛みを分かち合えるwarm-hearted geologistに

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まかり通る災害周期説 地震周期説

ひずみの蓄積と地殻の限界強度

では火山は?

警戒呼びかけ

善意ではあるが

相関係数でウソをつく方法

不況と災害

いっぷく

シラス災害 鹿児島豪雨災害 出水土石流災害

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防災行政のあり方 構造物中心主義を改める

補助金中心の行政からくる弊害

縦割り行政の弊害を改める

土木(建設省)系列と消防(自治省)系列

地すべり指定地も三者三様(建設・林野・構造)

調査研究を行う専門職の配置

復旧工事よりも事前対策のほうが割安

災害対策に住民参加を

計画の初期段階から住民の理解協力が重要

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行政に期待する対策

0.3

2.5

6.1

8.8

13.3

15.7

17.1

17.2

20.3

23.9

26.5

27.4

27.8

32.3

35.6

41.0

45.0

52.8

55.1

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0

その他

わからない

特にない

救助活動に必要な電動のこぎり等の救助用工具の準備

震災の避難訓練の実施

災害時の心得や地震に関する知識の普及

地震予知研究の充実

都市構造の防災化

消防力の増強

地域に対する消火設備の整備

ボランティアの受け入れ、活用体制の整備

災害に強い交通システムの整備

応急仮設住宅の速やかな供給

災害時における被害状況の把握と迅速な情報提供

迅速な救助活動を行うための災害救助体制の充実

緊急時の通信網の整備

避難経路や待避場所の整備

電気、ガス、水道、電話などのライフライン施設の耐震性の向上

食料、飲料水、医薬品の備蓄

総理府世論調査(1999)

複数回答(%)

大地震に関して力をいれてもらいたいこと

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1999高潮災害と行政

月日 時刻 気象 竜ヶ岳町 不知火町

9.22 17:25 強風波浪注意報

19:30 警戒呼びかけ

9.23 11:00 波浪警報発令 自前観測着手

20:00 対策本部設置

21:00 巡回パトロール 対策本部設置

9.24 4:12 停電,非常電源 停電,混乱

4:30 高潮発生

5:00 高潮発生

被 害 死者0全半壊77 死者12全半壊77

最近経験した高潮災害:竜ヶ岳町(1985),不知火町(1942)

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避難勧告と災害弱者

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失敗は繰り返さない

同一の失敗繰り返し

役所に系統性なし 転勤多く経験蓄積せず

分割発注 コンサルタントも数社がバトンタッチ

文書だけの引継ぎ

官民とも実力低下 マニュアル主義

若手育っていない

– 大学の責任も大

→ゴメンナサイ

日→責任者厳罰主義 神奈川県警不祥事隠し

振袖火事以来の伝統?

米→刑事免責して徹底糾明,再発防止

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日本にも危機管理局を

米FEMA

権限集中

迅速対応

臨機応変

日本

縦割行政

役人仕事

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0.5

5.6

35

36.6

43.7

45.3

50.3

0 10 20 30 40 50 60

その他

わからない

河川の水位や雨量などについての精度の高い情報

多くの伝達方法を通じての情報提供

分かりやすい言葉や図表で表示した情報

身近な河川について細かな場所ごとの水位や雨量を示す情報

危険な場所についての頻繁な最新の情報

防災と情報(1)

災害切迫時の必要な防災情報は?

総理府世論調査(1999)

複数回答(%)

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防災と情報(2)

充実して欲しい防災情報は?

1

19.2

20.3

28.8

33.6

34.9

39

45.3

55

0 10 20 30 40 50 60

その他    

自宅がある場所での被害実績

災害時に必要となる気象や雨量などに関する用語の解説

災害に関する情報の入手先

災害時に提供される情報の内容と利用方法

自宅のある場所の災害を受ける危険性

居住地域で過去に災害が発生した場所を示す地図

将来、被害を受ける可能性が高い場所を示した地図

災害時の避難場所や避難経路

総理府世論調査(1999)

複数回答(%)

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(気象庁提供)

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(気象庁提供)

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死者が発生した土砂災害と発生時の土壌雨量指数履歴順位

平成9年から平成12年9月までの土砂災害による死者98人

履歴1位が極めて危険であることの根拠 ただし,「履歴1位=必ず危険」とは限らない

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

100

1 位

2 位

9 位

位 以

11

工事現場と落石を除くと,96%が履歴1位で

発生

7件11名中,5件7名が工事現場残りは落石(2件)

2件中1件は砂防ダムを監視に行き,ダムを乗り越えた土砂が直

1件は民家の1階にのみ土砂が流入し2名死亡,もう1件は避難勧告を拒み崖崩れ現場へ出

向き被災

履歴順位

(気象庁提供)

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河川情報センター

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防災情報機構

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ハザードマップづくり進展 最近は各機関で作成,情報公開も進む

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ハザードマップの効果

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防災マップかごしま

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ハザードマップからリスクマップへ

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火山災害被害予測

朝日新聞(2002.6.9)

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防災住民運動 開発優先の行政に防災を要求するのは有意義

地域の発展=経済効率優先の発想がまだ支配的

行政を敵視する先鋭な対立も不毛 災害は住民と行政が一体となって取り組む必要

何でも行政おんぶはダメ いたずらに行政肥大化を招く古い発想

今はボランティアの時代,自ら汗流すのも必要

災害根絶から災害軽減への発想の転換 災害根絶論はハード万能主義に陥りやすい

しかし,自然現象は決してなくならない。反動が大きい

日常の利便性快適性追求はほどほどに 防災には平常の多少の不便は忍ぶ発想必要

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阪神大震災6年世論調査

日本世論調査会(2000.12)

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住民意識はまだ御上頼み

防災訓練に参加したことがあるか?(世論調査,1999)

喉元過ぎれば…どこも参加率低下

自己責任の風潮まだ育っていない

しかし,新しい芽は出てきている

0 10 20 30 40 50 60 70

積極的に参加している

参加したことがある

参加したことはない

(%)

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県政かわら版 Vol.40 (2001)

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0.1

1.4

12

17.2

70.4

0 10 20 30 40 50 60 70 80

その他

有志による防災ボランティア活動

職場で行っている防災活動

町内会などの地域単位で行っている防災活動

参加していない

自主防災組織(1)

町内会や職場などの自主的な防災活動に参加しているか?

総理府世論調査(1999)

複数回答(%)

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自主防災組織(2)

組織率

全国 50.4%

鹿児島 20.5%

鹿児島で組織率の低い理由(行政担当者アンケート)

防災意識が低い

地域のつながりが強い 町内会・愛護会などの活動で手一杯か?

都市化

高齢化

中心になる人がいない 鹿児島市千年団地自主防災組織

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防災まちづくり

住み良いまちの4条件

健康・快適・便利・安全

健康

医療施設・上下水道完備→災害時威力発揮

快適(アメニティー)

公園が多く緑豊か→火災に強い,避難場所

過密でなく適度な人口

地域の連帯感→的確な避難・PTSD予防

便利

区画整理・交通網→迅速な救援

安全

防災施設(ハード)

消防・警察(ソフト)

自主防災組織(住民)

結論

環境が良く住民に優しいアメニティー空間の創造こそ防災町づくり

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地域防災力

災害を知る=敵を知る

災害知識→土砂災害・水害・台風・地震など

災害に役立つ知識→警戒雨量,耐震補強等

地域を知る=己を知る

危険個所・防災施設設備・避難所・災害弱者

地域内に住む専門家の活用

知識を生かす=実践

組織づくり・日常訓練

災害時応急活動→プロ到達前の初動が鍵

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国分寺市の防災会

国分寺市の例

町内会とは別に防災会を組織

市は市民防災まちづくり学校を毎年開催 月1回丸1日のペース

講義・実習・見学など

女40後半-60,男50-70歳

住民自身が市職員やコンサルタントのアドバイスを得ながら町内の防災地図を作成している

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住民手づくりの防災地図

井戸端会議

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家=ライフボックス

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発災後の救援対策

的確な被害情報把握

実態把握が基礎

迅速な初動態勢

救命は最初が勝負

適切な救出消防活動

集中指揮と現場判断 救援活動の粗密

優先順位triageも必要

手厚い災害医療

広域連携

応急対策・工事

被害の拡大防止

二次災害の防止

救助隊の被災防止

正確な情報伝達

デマ・パニックの予防

家族間の連絡 •電話の輻輳

ライフラインの確保

水・電気・ガス

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災害医療の4T トリアージtriage、治療treatment、搬送

transportation、転送transfer • Triage(識別):治療の優先度を決める

Phase 0(~数時間):自助互助救助 Phase 1(~48時間):系統的救出医療 Phase 2(~14日間):初期集中治療 Phase 3(~数ヶ月・数年):後療法・更生医療

災害医療

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防災ボランティア

防災エキスパート(建設省)

山地防災ヘルパー(林野庁)

地すべりモニター(新潟県)

1月17日:「防災とボランティアの日」

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被災者の立場に立った復興

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復興哲学

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被災者生活再建支援法

1998年11月6日施行

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世界の自然災害(1)

20世紀に起こった主な自然災害

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世界の自然災害(2)

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世界の自然災害(3)

地域別自然災害死者数

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世界の自然災害(4)

0

5000000

10000000

15000000

20000000

25000000

地震

旱魃

・飢饉

洪水

地す

べり

暴風

火山噴火

の他

オセアニア

ヨーロッパ

アジア

南北アメリカ

アフリカ

US$

年平均推定被害額(1988-1997)

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今世紀の大災害

1920 地震 中国甘粛省 200,000 1923 地震 日本関東 143,500 1948 地震 トルクメニスタン 100,000 1970 サイクロン バングラディシュ 500,500 1976 地震 中国唐山 250,000 1991 サイクロン バングラディシュ 140,000

バングラのサイクロン災害以降,死者1万人を超したのは,トルコ地震(15,500人)とホンジュラスのハリケーンミッチ災害(13,700人)である。

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国際貢献

国際防災の10年(1990年代)

各国で大規模な自然災害,多くの犠牲者

アジア防災センター(神戸市)設立 http://www.adrc.or.jp/ (左上ロゴ)

災害NGO,NPO

PKOだけが国際貢献ではない

地質家にもできる国際貢献 途上国のハザードマップ作成支援etc.

災害時の専門家派遣 国境なき医師団(右上ロゴ)etc.

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文化遺産を地すべりから守るIGCPプロジェクト

華清池↑

Machu Picchu →

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The End これで災害論の講義を終わります。何か質問はありませんか?

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レポート提出

講義冒頭で述べた宿題「出身地で起きた災害について調べる」をしてきた人は来週この時間に提出すればOK

出身地(生地あるいは出身高校所在地)の市町村を明記し,具体的なデータを添えること

出身県レベルの一般論は不可

調べていなかった人は来週集合

レポートのテーマを出題する