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客員専門員 吉田克人
比抵抗探査の概要とその適用〜特に比抵抗二次元探査について~
地球環境部水資源・防災グループ勉強会2009/02/13
比抵抗探査とは?
地盤に直流電流を流し、電流の流れにくさの分布から地盤性状を把握する電気探査法の一種である
探査解析により得られた結果は「比抵抗値の違いによる断面」である
何のために行うのか?
地下水、温泉、トンネル調査など広い適用性
地質(岩石、地層)の種類や分布、地下水分布、
地質構造、変質帯、風化程度、不安定斜面な
どの同定および地質・水理地質・地質工学的特
性の推定
比抵抗値の変化要因
低 高
多 少 風化、変質
頁岩・ 石灰岩・泥岩等 流紋岩等
地熱、温泉
強 弱
風化、せん断、断層
要因
地層水・間隙水の比抵抗 低 高 塩分濃度、塩水クサビ
水分飽和率
水温、地温
比抵抗値
高 低
大 小
高 低
間隙率
高 低
風化・変質
粘土鉱物
多 少
海域 内陸
備考
地下水位
風化、せん断、断層
金属鉱物
地域
含水率(水飽和度)
岩種
細粒分含有量が多いほど、含水率が高いほど比抵抗値は低い
「比抵抗値が低ければ、地下水が存在する」と判断しても、概ね間違っていない。
比抵抗探査にはどんな手法があるか?
水平探査、垂直探査、比抵抗二次元・三次元探査、比抵抗トモグラフィ(ボーリング孔を利用)がある。
水平探査、垂直探査、比抵抗二次元について、本勉強会で説明する。
水平探査の概要
目的:比抵抗値の水平方向での変化を測定
岩盤内の断層、破砕帯などの弱線の同定に有効
電極配置図 ρーa断面図
電極配置図(左図)のiは電流電力計を示し、vは電位電力計を示す。
水平探査は電位電力と電流電力を等間隔に配置する。
比抵抗値の低い箇所に、岩盤内の断層、破砕帯が存在する可能性がある。このことは、アフリカ地下水案件では、基盤岩の裂カ水が存在する可能性が高いことを意味する。
垂直探査の概要
目的:比抵抗の探査地点直下垂直方向での変化を測定
水平多層構造をもつ地層の区分に有効
電極配置図 ρーa曲線
垂直探査は、電極の間隔を広げていけば、より深い地層での情報を入手することができる。
探査実施状況(キューバ東部地域、機材:AE-72 1970年代の旧ソビエト製 )
写真は、垂直探査を実施しているときの様子
キューバでは、古くなった機材を未だに活用している。
垂直・水平探査の利点
探査は簡単で費用は安価
解析は比較的容易
探査精度は変更可能で、二次元解析にも展開可能
垂直・水平探査の欠点
探査深度に較べ測線距離が長い
地下深部ほど作業性が悪く精度は低い
解析手法や解析者により結果が異なる
同一比抵抗値の地層は区分不可能
探査深度に対し、測線距離は3倍~4倍程度
垂直・水平探査は、文献によっては300m程度の深度まで測定可能とあるが、吉田専門員の経験から言えば、せいぜい150m程度までが測定可能範囲である。
垂直・水平探査は解析手法や解析者によって結果がことなることから、一時利用者が減ったことがある。
垂直探査の二次元解析実例(前述探査機使用)
断面 No.27- No.30
上記測定結果は、
探査場所:キューバ東部地域
探査機材:AE-72 1970年代の旧ソビエト製
比抵抗二次元探査(二次元探査、比抵抗影像法、高密度電気探査)とは?
数多くの探査測定データから地下の比抵抗値
の分布を断面図(二次元画像)に表示する手法
上記定数について
C:電流極
P:電位極
比抵抗二次元探査の原理としては2極法を用いている。
探査は、電流極を固定し電位極を移動して、探査範囲を広げ観測する。
測線接続ソケット
電極棒JICA供与探査機一式(仏Syscal製)
比抵抗二次元探査機材
二次比抵抗法実施状況
上記写真の測定器は、2006年度にJICAがキューバ国水資源局に供与したもの
である。
・ケーブル(黄色):1巻120m、計720mを用いて測定した
・電極棒は10mピッチで配置し測定した
・ラップトップPCで測定結果を集約し、現場でも解析が可能であり、異常値の確
認やそれに伴う測定の修正等が、即座に対応可能であった
比抵抗二次元断面図例
上図は、前頁の探査機材を用いた解析結果である。
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比抵抗二次元探査の利点
山地・傾斜地での探査も可能
測線距離は短く作業性に富む
電極間隔を変え探査深度・精度を変更可能
高密度・高品質のデータを計測可能
原位置でデータチェックが可能
上記に加え、「解析者によって結果が異ならない」という利点がある
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比抵抗二次元探査の欠点
遠電極の固定設置(二極法の場合)
測線と斜交する構造では分布幅広く不鮮明
ノイズにより解析誤差が現出
測線の両端や解析領域の底部では、解析精度が低下
二極法の場合、電流・電位電極の距離をおいて、計測しなければならない(遠電極の固定設置)
測線と斜交する地質構造では、画像が不鮮明である場合がある
高圧電線や鉄道付近ではノイズが発生しやすく、解析誤差がみられる
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比抵抗二次元解析の利点
高精度の比抵抗二次元断面図
PCによる自動解析のため客観的評価可能
比抵抗分布をカラー表示
複数の断面図から、比抵抗三次元断面に展開可能
比抵抗二次元探査の適応例(地質/水理地質分野)
地質構成、帯水層分布等を二次、三次元
で把握
帯水層容積の算出
地下水の涵養域、流出域の区分
持続可能な揚水計画の基礎資料を提供
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比抵抗二次元探査の課題(地質/水理地質分野)
地下浅所での同じ厚さの地層区分
地下深部の不整合や断層の同定
風化帯と変質帯の区分
低比抵抗層内の不圧地下水位の決定
裂か水の同定
旧河道、埋設管、偽像の区別
地下浅所での同じ厚さの地層区分ができない
地下深部の不整合や断層の同定ができない
風化帯と変質帯の区分ができない
低比抵抗層内の不圧地下水位の決定ができない
裂か水の同定ができない
旧河道、埋設管、偽像の区別ができない
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比抵抗二次元探査解析事例1比抵抗値高角度分布→高傾斜地層(岩相)、断層
比抵抗分布が高角度になっているということは、高傾斜地層(岩相)、断層が存在する可能性が高い
上図のような断層区分は、比抵抗二次元探査だけでは正確な判断が難しく、ボーリングデータや物理試験結果等についても勘案し、総合的に判断することが望ましい。
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比抵抗二次元探査解析事例2高、低比抵抗値高角度境界→断層
低比抵抗値と高比抵抗値が隣り合った箇所は、断層が存在する可能性が高い
比抵抗二次元探査解析事例 3
低比抵抗値高角度分布→断層、破砕帯
低比抵抗値が棒状あるいはスポット的に存在する場合は、断層、破砕帯が存在する可能性が高い
比抵抗二次元探査解析事例 4
低比抵抗値凹状/単独分布→小断層、破砕部
比抵抗二次元探査解析事例 5高(低)比抵抗値ピーク分布→貫入岩、接触変成岩、変質岩
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比抵抗二次元探査解析事例6曲線状低比抵抗値分布→地すべり土塊、不飽和土塊
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比抵抗二次元探査解析事例7曲線状比抵抗値分布→崖錘堆積物、風化岩
PQ4
MQ4
MQ2-3S,JM
PQ4
MQ4
Q2,VL
Mal Q2-3S1,CauBm
N11-2,Vaz
N13-N2
2,Pu
p22
p22-3
N12b,Gi
N12a,Ap
N12a,Yay
K1-2al-t,GmK2cn-cp,Cnt
γδ2
γδ2
K1-2,Ibσ
K2,Co
比抵抗二次元探査位置図および概略地質図
上地図はキューバ東部地区(吉田専門員が現地で指導)
島の中央部により古い地層(岩帯)が存在する。その両側(黄色)は主に石灰岩の地層帯であり、この地域が探査箇所である。
調査地域地形・地質寸描
泥灰岩(マール)の不透水性層カルスト凹地(雨水侵食陥没ドリーネ)
表層土 孔隙質石灰岩帯水層
調査地域では、孔隙質石灰岩帯水層は地表から30m程度のところに断続的に
分布していた。上図の通り穴が開いており、この穴を通って地下水が流動していた。この帯水層が存在する近辺の井戸は、非常に生産性が高く、現地で計測したところ、80ℓ/sec程度の流量が確認された。
地下水生産性が低いところでは、泥灰岩(マール)の不透水性層が分布が卓越している。
地下水モニタリングとウオーターハーベスト
地下水位観測井
涵養フイルダム堤体涵養井
キューバでは、かつて旧ソ連の技術者が多数滞在し、水理地質分野で頻繁に援助を行っていた。彼らはまず、モニタリングシステムを構築し、そのときの観測井等は今でも存在する。
ただし残念ながら、長年蓄積してきたモニタリングデータは、ソ連崩壊とともに技術者が自国へ持ち帰ってしまった。
かつては水位が低いとき、涵養井に給水車で水を投入していた。現在は雨水が入り込むのみとなっている。
涵養フィルダム堤体を設置し溜池をつくり、地下水を涵養しようという働きかけがあったが、漏水箇所があり、十分に機能していない。
比抵抗二次元探査事例(キューバ東部地域)
当初は、地層の深い部分に帯水層が多く潜在していると見込まれており、将来の地下水開発に役立てるべく、今回の比抵抗二次元探査が実施された。上図下段にあるとおり、実際は大規模な帯水層は確認できなかった。(青色部分が帯水層)
これはスポット的に存在しており、地下水開発の規模としては小さい。
今回の探査は、電極間隔を小さくし、精度を上げている。
比抵抗二次元探査事例(キューバ東部地域)
比抵抗映像法による電気探査解析結果2D水理地質解析
図5.8 比抵抗映像法による電気探査解析結果(D – D’断面)
比抵抗二次元探査事例(キューバ東部地域)
図5.5 比抵抗映像法による電気探査解析結果(A – A’断面)
比抵抗二次元探査事例
帯水層分布の水平断面例
上図水平断面は、前述の比抵抗二次元探査の事例とは別のソフトを用いて解析したものである。
このようなものを連続的にとっていけば、立体的な帯水層の分布が確認でき、高精度な評価が可能となる。
まとめ
比抵抗法は地下の地質・水理地質状況を推定する一手法である
探査技術に未だ課題や制約があり、万能な探査法ではない。
比抵抗二次元探査は横方向に分布する間隙水(層状水)の探査に有効な探査法である
比抵抗二次元断面図の解析は、掘削柱状図、地質断面図、他の物理探査等を併用して総合的な視点で実施する
比抵抗二次元探査を体系的に実施し三次元断面図を作成することによって、精度の高い地下水評価が可能になる
正確な評価により地下水源の持続的な開発利用が可能な揚水計画や管理保全計画を立案する事ができる