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農林中金総合研究所 2020 5 29 日号 調査第二部 農林中金総合研究所 無断転載を禁ず。本資料は、信頼できると思われる各種データに基づき作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するも のではありません。本資料は情報提供を目的に作成されたものであり、投資のご判断等はご自身でお願い致します。 木村 俊文 ≪来週の注目材料≫ ポイント等 ・ECB 理事会(4 日):新型コロナ感染拡大に伴う欧州経済の落ち込みに対応するため、量的緩和の 拡大を議論する見通し。資産買入れの規模がどの程度拡大されるか注目。 ・米中動向:中国が香港の統制強化に向けて制定することを決めた「国家安全法」を巡り、米政府 は中国に対する追加関税や中国企業への規制強化など制裁措置を検討しており、動向に注目。 経済指標 ・国内1日「法人企業統計季報(1~3月期)」:新型コロナ感染拡大の影響で引き続き売上高・利 益・設備投資ともに減少する見通し。 ・米国 5日「雇用統計(5 月)」:新型コロナの影響で 4 月(前月比▲2,050 万人)に大きく落ち込 んだ非農業部門雇用者数は▲745 万人と減少幅が縮小する見通し。一方、失業率は 19.8%と前月 (14.7%)から悪化する見通し。 ・中国 7 日「貿易収支(5 月)」:輸出は新型コロナの影響で 1~2 月(前年比▲17.1%)に大幅減 少した後は持ち直しの動き。5 月の輸出の増加幅がどの程度になるか注目。 ≪マーケットの動き≫ ≪来週のスケジュール(6/1~6/7)≫ 月 日 国内の予定 海外の予定 6 月 1 日(月) 「法人企業統計季報(1~3 月期)」5p に予測掲 載) 中 「財新製造業 PMI(5 月)」 米 「建設支出(4 月)」 米 「ISM 製造業景況指数(5 月)」 6 月 2 日(火) 「マネタリーベース(5 月)」 10 年利付国債入札(2.1 兆円) 欧 「製造業 PMI(5 月)」 6 月 3 日(水) 中 「財新サービス業 PMI(5 月)」 欧 「生産者物価(4 月)」 「失業率(4 月)」 米 「ADP 雇用統計(5 月)」 米 「ISM 非製造業景況指数(5 月)」 米 「製造業受注(4 月)」 6 月 4 日(木) 30 年利付国債入札(0.7 兆円) 欧 「サービス業 PMI(5 月)」 「小売売上高(4 月)」 欧 ECB 理事会、ラガルド総裁会見 米 「チャレンジャー人員削減数(5 月)」 米 「貿易収支(4 月)」 米 「新規失業保険申請件数(5 月 30 日週)」 米 「失業保険継続受給者数(5 月 23 日週)」 6 月 5 日(金) 「家計調査(4 月)」5p に予測掲載) 「景気動向指数(4 月)」 国庫短期証券(3M)入札(9.14 兆円) 米 「雇用統計(5 月)」 米 「消費者信用残高(4 月)」 6 月 6 日(土) 東京メトロ日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」開業 6 月 7 日(日) 中 「貿易収支(5 月)」 ※今週から通常発行(毎週金曜発行)となります。引き続きよろしくお願いいたします。 先~今週の実績 29日 午前 -0.015~0.005 -0.005 来週の予想 横ばい (資料)Bloombergより作成 (注)来週の予想は当社予想。 為替レート (1ドル=円) 19,999.1021,926.29 21,854.00 長期金利 (10年国債利回り、%) 株価 (日経平均株価、円) 107.04~108.09 107.41 やや円小幅下落

農林中金総合研究所農林中金総合研究所 0.4 %と、3 ヶ月ぶりの減少ながらも、微減にとどまった。新型コロナの感染拡大がパンデミック化した時期

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Page 1: 農林中金総合研究所農林中金総合研究所 0.4 %と、3 ヶ月ぶりの減少ながらも、微減にとどまった。新型コロナの感染拡大がパンデミック化した時期

農林中金総合研究所 2020 年 5 月 29 日号

調査第二部

農林中金総合研究所

無断転載を禁ず。本資料は、信頼できると思われる各種データに基づき作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するも

のではありません。本資料は情報提供を目的に作成されたものであり、投資のご判断等はご自身でお願い致します。

木村 俊文

≪来週の注目材料≫

ポイント等 ・ECB理事会(4日):新型コロナ感染拡大に伴う欧州経済の落ち込みに対応するため、量的緩和の拡大を議論する見通し。資産買入れの規模がどの程度拡大されるか注目。・米中動向:中国が香港の統制強化に向けて制定することを決めた「国家安全法」を巡り、米政府は中国に対する追加関税や中国企業への規制強化など制裁措置を検討しており、動向に注目。

経済指標 ・国内 1 日「法人企業統計季報(1~3 月期)」:新型コロナ感染拡大の影響で引き続き売上高・利益・設備投資ともに減少する見通し。・米国 5 日「雇用統計(5 月)」:新型コロナの影響で 4 月(前月比▲2,050 万人)に大きく落ち込んだ非農業部門雇用者数は▲745 万人と減少幅が縮小する見通し。一方、失業率は 19.8%と前月(14.7%)から悪化する見通し。・中国 7 日「貿易収支(5 月)」:輸出は新型コロナの影響で 1~2 月(前年比▲17.1%)に大幅減少した後は持ち直しの動き。5月の輸出の増加幅がどの程度になるか注目。

≪マーケットの動き≫

≪来週のスケジュール(6/1~6/7)≫

月 日 国内の予定 海外の予定

6 月 1 日(月) 「法人企業統計季報(1~3 月期)」(5p に予測掲

載)

中 「財新製造業 PMI(5 月)」

米 「建設支出(4 月)」

米 「ISM 製造業景況指数(5 月)」

6 月 2 日(火) 「マネタリーベース(5 月)」

10 年利付国債入札(2.1 兆円)

欧 「製造業 PMI(5 月)」

6 月 3 日(水) 中 「財新サービス業 PMI(5 月)」

欧 「生産者物価(4 月)」 「失業率(4 月)」

米 「ADP 雇用統計(5 月)」

米 「ISM 非製造業景況指数(5 月)」

米 「製造業受注(4 月)」

6 月 4 日(木) 30 年利付国債入札(0.7 兆円) 欧 「サービス業 PMI(5 月)」 「小売売上高(4 月)」

欧 ECB 理事会、ラガルド総裁会見

米 「チャレンジャー人員削減数(5 月)」

米 「貿易収支(4 月)」

米 「新規失業保険申請件数(5 月 30 日週)」

米 「失業保険継続受給者数(5 月 23 日週)」

6 月 5 日(金) 「家計調査(4 月)」(5p に予測掲載)

「景気動向指数(4 月)」

国庫短期証券(3M)入札(9.14 兆円)

米 「雇用統計(5 月)」

米 「消費者信用残高(4 月)」

6 月 6 日(土) 東京メトロ日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」開業

6 月 7 日(日) 中 「貿易収支(5 月)」

※今週から通常発行(毎週金曜発行)となります。引き続きよろしくお願いいたします。

先~今週の実績

29日 午前

-0.015~0.005

-0.005

来週の予想 横ばい   (資料)Bloombergより作成 (注)来週の予想は当社予想。

為替レート(1ドル=円)

19,999.10~21,926.29

21,854.00

長期金利(10年国債利回り、%)

株価(日経平均株価、円)

107.04~108.09

107.41

やや円高小幅下落

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農林中金総合研究所

1.今週のレビューと来週の指標予測 南 武志

① 今週までのレビュー

5 月 14 日以降、新型コロナウイルス感染症の感染拡大リスクが小さい地域から順次、緊急事態宣言の

解除が始まったが、25 日には残りの 4 都道県に対しても解除された。解除後の各地域では、繁華街に客

足が戻る動きもみられたが、同時に「3密」を回避する対応が求められるだけに先行き不安は根強いことだ

ろう。一方、北九州市では感染第 2波が迫っているようで心配だ。どの地域もこうした事態が起こりうるだけ

に、引き続き、人前でのマスク着用や手洗い&うがいの徹底を心掛けたい。何としても、緊急事態宣言の

再発令は避けたいものである。

こうしたなか、27 日午後、政府は歳出総額 31 兆 9,114 億円の第 2 次補正予算案を閣議決定した。こ

のうち、新型コロナ対策費は 31 兆 8,171 億円で、内容は、①雇用調整助成金の拡充等(4,519 億円)、②

資金繰り対応の強化(11兆 6,390億円)、③家賃支援給付金の創設(2兆 242億円)、④医療提供体制等

の強化(2兆 9,892億円)、⑤その他の支援(4兆 7,127億円、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨

時交付金の拡充(2 兆円)、低所得のひとり親世帯への追加的な給付(1,365 億円)、持続化給付金の対

応強化(1 兆 9,400 億円)、その他

(6,363 億円)、⑥新型コロナウイルス感

染症対策予備費(10 兆円)となっている。

これらの資金は全額、国債発行で賄う

予定で、建設国債 9 兆 2,990 億円、特

例国債を 22兆 6,124億円、それぞれ追

加発行する。この結果、20 年度の新規

国債発行額は90兆1,589億円(当初予

算では 32 兆 5,562 億円)に、そして財

投債も54兆2,000億円(同じく 12兆円)

という空前絶後の水準にまで膨らむこととなった。年限ごとの入札額については、40 年債は毎回 5,000 億

円(当初と変わらず)、30 年債は 7 月から毎回 9,000 億円(当初比+2,000 億円)、20 年債は 7 月から 1 兆

2,000 億円(同+3,000 億円)、10 年債は 7 月から 2 兆 6,000 億円(当初比+5,000 億円)、5 年債は 7 月か

ら 2 兆 5,000 億円(同+6,000 億円)、2 年債は 7 月から 3 兆円(同+1 兆円)へ、それぞれ増額される(10

年物価連動は逆に毎回 2,000 億円へ、当初比で半減)。なお、年度下期には歳入欠陥の対応が求めら

れるのは必至だ。

以下、5 月中旬以降に発表された主な経済指標を振り返っていきたい。1~3 月期の GDP 第 1 次速報

は前期比年率▲3.4%と 2 四半期連続のマイナスであった。国内需要の収縮を受けた輸入等の減少が唯

一、対前期比成長率に対してプラス寄与であり、それ以外は軒並みマイナス寄与であった。この GDP 統

計を受けて、当総研は「2020~21 年度経済見通し」を作成したが、20 年度の経済成長率は▲5.0%と前

代未聞のマイナス、21 年度は 2.7%と一定のリバウンドがみられるが、年度末でも「コロナ前」の水準の回

復は無理、としている(詳細は https://www.nochuri.co.jp/topics/pdf/topics200521.pdf を参照のこと)。

次に、3 月の機械受注統計によれば、代表的な「船舶・電力を除く民需」(コア機械受注)は前月比▲

470

480

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1995年度 2000年度 2005年度 2010年度 2015年度 2020年度

国の税収と公債金

(参考)名目GDP(右目盛) 税収(左目盛) 公債金(左目盛)

(資料)財務省、国税庁 (注)税収・公債金は2018年度まで決算、19年度は補正後予算、20年度は第2次補正後予算案。

20年度の名目GDPは農林中金総合研究所の見通し。

(兆円) (兆円)

Page 3: 農林中金総合研究所農林中金総合研究所 0.4 %と、3 ヶ月ぶりの減少ながらも、微減にとどまった。新型コロナの感染拡大がパンデミック化した時期

農林中金総合研究所

0.4%と、3 ヶ月ぶりの減少ながらも、微減にとどまった。新型コロナの感染拡大がパンデミック化した時期

であり、インバウンドなどを中心に需要が蒸発しつつあったが、年度内は事業計画に沿った発注がされた

ということであろう。業種別には、製造業が前月比▲8.2%、前年比▲3.2%と、ともに 2 ヶ月連続の減少だ

ったが、対照的に非製造業(除く船舶・電力)は前月比5.3%、前年比0.9%と、ともに2ヶ月連続の増加だ

った。内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」で据え置いた(5 ヶ月連続)。この結果、1~3 月期として

は前期比▲0.7%と 3四半期連続の減少となったが、内閣府集計の事前見通し(同▲2.0%)ほどは悪くは

なかった。また、4~6 月期見通しは同▲0.9%と4四半期連続のマイナスが見込まれているが、前月比▲

0.7%のペースで達成可能であり、企業の資金繰りは厳しいという状況とは整合性が取れていないように

見える。ちなみに、4 月の工作機械受注の内需は前期比▲29.1%(当総研による季節調整後ベース)と

激減しており、コア機械受注でも同様の結果が見込まれる。

一方、4 月の貿易統計によると、通関貿易収

支(季節調整後)は▲9,963 億円と 2 ヶ月連続

の入超(赤字)であった。内容的には、輸出金

額は前年比▲21.9%と 17 ヶ月連続の減少で、

09 年 10 月以来の落ち込み幅となった。半導

体等電子部品が引き続き増加したものの、自

動車・同部品を筆頭に、ほとんどの財が減少し

た。また、輸入金額も同▲7.1%と 12 ヶ月連続

の減少だったが、中国からの輸入は、繊維用

糸・繊維製品、コンピュータ、通信機などを中心に同 11.7%の二桁増となった。日本銀行が試算した実質

輸出指数では前月比▲14.2%と 2 ヶ月連続の低下、実質輸入指数は 4.0%と 2 ヶ月連続の上昇だった。

こうした貿易収縮が生産にも悪影響が波及している。4 月の鉱工業生産指数は前月比▲9.1%と市場

予想を上回る悪化を見せた(3 ヶ月連続のマイナス)。なかでも、自動車工業が同▲33.3%と、悪化が著し

かった。経済産業省は基調判断を「急速に低下している」へ 2 ヶ月連続で下方修正した。先行きは 5 月が

同▲4.1%の低下、6 月は同 3.9%と上昇に転じる見込みであるが、回復テンポはしばらく鈍いものとみら

れる。

また、4 月の雇用関連指標も悪化継続。労

働力調査によれば、失業率こそ 2.6%と小幅な

上昇であり、失業者数も前月から 6 万人増に

過ぎないが、就業者数は前月から 107 万人減

(うち雇用者数は同じく 105 万人減)、非労働

力人口は同じく 94 万人増と、失職者が労働市

場から一気に退出した様子が見て取れる。ま

た、一般職業紹介状況によれば、有効求人倍

率は 1.32倍と前月から 0.07ポイントの低下(低

下は 4 ヶ月連続で、その累計は 0.25 ポイント)。新規求職者数は前年比▲10.2%と上述した非労働力化

の動きと整合的だったが、新規求人数は同▲31.9%と 11 年ぶりの減少率となった。

2

3

4

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0.0

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2000年

2005年

2010年

2015年

2020年

雇用関連指標の推移

有効求人倍率(左目盛) 失業率(右目盛)

(資料)厚生労働省、総務省統計局

(%)(倍)

60

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120

1302013年

2014年

2015年

2016年

2017年

2018年

2019年

2020年

財別実質輸出指数

総合 中間財

自動車関連 情報関連

資本財・部品 その他

(資料)日本銀行 (注)日本銀行が貿易統計(財務省作成)と輸出入物価指数(日本銀行作成)を用いて試算

(2010Q1=100)

Page 4: 農林中金総合研究所農林中金総合研究所 0.4 %と、3 ヶ月ぶりの減少ながらも、微減にとどまった。新型コロナの感染拡大がパンデミック化した時期

農林中金総合研究所

4 月の商業動態統計によれば、小売業販売額指数は前月比▲9.6%と、2 ヶ月連続の低下。経済産業

省の基調判断は「急速に低下している」へ下方修正。業態別にみると、緊急事態宣言の発令で多くの店

舗を閉鎖した百貨店では前年比▲71.5%(既存店)、対照的にスーパーでは食料品販売が好調で同

0.9%(同)と底堅かった。そのほか、オフィス街の店舗などの不振でコンビニエンスストアは同▲10.7%、

家電大型専門店も同▲9.0%(ただし、情報家電は同 23.5%と大きく増加)だったが、ドラッグストアは同

10.4%、ホームセンターも同 4.0%と、ともに増加。

最後に物価関連指標であるが、4 月の全

国消費者物価(生鮮食品を除く総合)は前年

比▲0.2%と 40ヶ月ぶりの下落となった(消費

税率要因を除くと同▲1.1%程度)。原油安

によってエネルギーが下落したほか、宿泊費、

外国パック旅行費も値下がりした。また、4 月

に導入された高等教育無償化も物価下落に

寄与した。一方、5 月の東京都区部分(同)で

は前年比 0.2%と 2 ヶ月ぶりのプラス。前年の

大型連休の反動もあり、宿泊料・外国パック

旅行費の下落率が 4 月よりも縮小するなど教養娯楽サービスが物価上昇率の押し上げ要因となった。ち

なみに、5月 25日時点の全国レギュラーガソリン販売価格は前週から 1.4 円値上がり(2 週連続)の 126.9

円/ℓで、前年比は▲15.5%へ減少幅は縮小。足元の原油価格持ち直しを反映しているようだが、物価

(前年比)に対してはしばらく押下げ効果が残るだろう。

4 月の企業向けサービス価格は前年比 1.0%と 3 ヶ月連続の鈍化。一方、消費税要因を除くベースで

は同▲0.8%と 2 ヶ月連続の下落。運輸・郵便(同 1.2%)、金融・保険(同 0.1%)が上昇したものの、広告

(同▲12.5%)が大きく下落したほか、宿泊サービスなど諸サービス(同▲0.4%)、店舗賃料など不動産

(同▲0.7%)、リース・レンタル(同▲0.5%)、情報通信(同▲0.1%)も下落した(いずれも消費税要因を除

くベース)。

-2

-1

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1

2

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2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

2017年

2018年

2019年

2020年

消費者物価の推移

全国コア

東京コア

(資料)総務省統計局

(%前年比)

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農林中金総合研究所

南 武志

②来週発表予定の経済指標

1~3月期の法人企業統計季報【6月 1 日(月)8:50 】

<当社予測>全産業・全規模・経常利益:前年比▲15.8%(10~12月期:▲4.6%)

設備投資(含むソフトウェア):同▲5.0%(10~12月期:▲3.5%) 1~3 月期の鉱工業生産指数は同

0.4%と 5 四半期ぶりに上昇したが、

第 3 次産業活動指数では同▲1.2%

と 2 四半期連続の低下となるなど、明

暗が分かれる格好となった。2 月前半

までは世界経済の持ち直し期待を背

景に、半導体関連などを中心に輸出

製造業が持ち直し傾向を強めていた

が、2 月後半以降は新型コロナの影

響でサービス業などの活動が大きく

悪化、損益分岐点を割り込む売上減

に直面する業種・企業が相次いだも

のと思われる。企業収益は 4 四半期

連続の前年割れと予想する。

設備投資については、GDP 統計の名目民間企業設備投資は前期比▲1.0%と 2 四半期連続の減少な

がらも、新型コロナの影響はあまり出ていない格好であった。法季でもそうした姿になると思われ、本格

的に悪化するのは 20 年度入り後であろう。

4月の家計調査・実質消費支出【6月 5 日(金)8:30 】

<当社予測>2人以上世帯:前年比▲8.8%(3月:▲6.0%)、前月比▲2.8%(3月:▲4.0%)

うち勤労者世帯:同(同)▲7.8%(3月:▲8.1%)

4月には新型コロナウイルス感染症の国内での感染拡大が本格化、中旬には緊急事態宣言が全国を対

象としたものとなり、消費者の自粛ムードが強まった。外出自粛要請などを受け、生協や宅配便などを使

った消費は底堅かったとされている。一方で、4 月の業界団体の販売統計によれば、全国百貨店売上

高は過去最悪の減少率(前年比▲72.8%)となったほか、全国スーパー販売額も食料品は底堅かったも

のの、衣料品などの不振で減少した。家計調査でもそうした統計と同様、弱い数字が予想される。

0

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1985年

1990年

1995年

2000年

2005年

2010年

2015年

企業収益の動向(全規模・全産業ベース)

売上高(左目盛) 経常利益(右目盛)

(資料)財務省「法人企業統計調査」 (注)季節調整値

(兆円) (兆円)

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農林中金総合研究所

2.国内市場

(資料)Bloomberg より農中総研作成

佐古 佳史

◎市場概況 (5/18~5/29 前場)

国内外での経済活動の再開と大型の財政政策に加えて、新型コロナウイルスに対するワクチン開発

への期待などからリスクセンチメントが改善した。株式市場では日経平均が期間を通じて 9.07%と大幅に

上昇。特に 25~28 日にかけては 1,500 円近い上昇となり、テクニカルなポイントとなる 200 日移動平均

を超えた。主要セクター別では金融(除く銀行)、銀行、鉄鋼・非鉄が 12%程度上昇し、特に強かった。

為替市場では、1 ドル=107 円後半の狭いレンジでの取引となった。期間を通じては 0.5 円ほど円安とな

った。

世界的な株価上昇はあったものの、債券市場では、5 年、20 年、40 年債の入札(それぞれ 18 日、20

日、26 日)などが概ね無難にこなされたことや、「香港国家安全法」をめぐる米中対立の激化も懸念さ

れ、金利上昇圧力は弱かった。29日午前の長期金利(10年債利回り)は▲0.005%で推移。

▲ 0.4

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0.2

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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 15 20 25 30 40

(%)

(年)

日本国債のイールドカーブ

20/5/28

20/5/1

20/2/27

19/11/30

▲ 0.05

0.00

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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 15 20 25 30 40(年)

2週前差 1ヶ月前差 3ヶ月前差

17,000

18,000

19,000

20,000

21,000

22,000

23,000

4月3日 4月16日 4月30日 5月18日 5月29日

(円) 日経平均の推移 25日移動平均

200日移動平均

105.5

106

106.5

107

107.5

108

108.5

109

109.5

4月9日 4月22日 5月5日 5月18日 5月29日

(円) ドル円の推移 25日移動平均

200日移動平均

▲ 0.06

▲ 0.04

▲ 0.02

0.00

0.02

0.04

4月3日 4月16日 4月30日 5月18日 5月29日

(%) 新発10年物国債利回りの推移

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農林中金総合研究所

3-1.海外市場(米国)

(資料)Bloomberg より農中総研作成

佐古 佳史

◎市場概況 (5/15~5/28)

新型コロナウイルスに関する動向が主な材料。債券市場では 18 日、ワクチン開発に楽観的な見方が

強まったことで、米長期金利(10年債利回り)は 9bp上昇。20日は 34年ぶりとなる 20年債入札が実施さ

れたが、概ね無難にこなされた。以降は、0.6%前半から 0.7%前半の狭いレンジでの動きとなり、28日は

期間を通じて 7bp の上昇となる 0.69%で引けた。株式市場では、都市封鎖解除による経済活動再開が

好感される一方、米中摩擦懸念やトランプ大統領の SNS 企業への攻撃が上値を抑制した。ダウ平均は

期間を通じて 7.5%と大幅に上昇。主要セクター別では資本財が 14.0%、不動産が 12.1%と強かった。

0

0.5

1

1.5

2

2.5

1ヶ月 3ヶ月 6ヶ月 1年 2年 3年 5年 7年 10年 30年

(%) 米国債のイールドカーブ

20/5/28

20/2/26

19/11/29

▲ 1.6

▲ 1.4

▲ 1.2

▲ 1.0

▲ 0.8

▲ 0.6

▲ 0.4

▲ 0.2

0.0

0.2

0.4

1ヶ月 3ヶ月 6ヶ月 1年 2年 3年 5年 7年 10年 30年

(%)米国債利回りの変化

2週前差 1ヶ月前差 3ヶ月前差

21,000

22,000

23,000

24,000

25,000

26,000

27,000

4月6日 4月20日 5月1日 5月14日 5月28日

(ドル) ダウ平均の推移

25日移動平均

200日移動平均

0.5

0.6

0.7

0.8

4月6日 4月20日 5月1日 5月14日 5月28日

(%) 10年物米国債利回りの推移

Page 8: 農林中金総合研究所農林中金総合研究所 0.4 %と、3 ヶ月ぶりの減少ながらも、微減にとどまった。新型コロナの感染拡大がパンデミック化した時期

農林中金総合研究所

3-2.海外市場(欧州、中国)

(欧州)山口 勝義(中国)王 雷軒

◎市場概況 (5/15~5/28)

【欧州】

ロックダウンの解除が進み、欧州では感染の最悪期を脱したとの安心感が広がっている。ユーロ圏などの

5月の PMI(21日)や、ドイツの同月のZEWの景気期待指数(19日)、Ifoによる企業景況感指数(25日)はい

ずれも、大幅に低下した前月の水準からやや回復した。また、18 日にドイツとフランスが EU の資金調達をも

とに補助金として 5,000 億ユーロ規模の復興基金を設立することで合意し、その後 27 日に欧州委員会が補

助金と融資からなる 7,500 億ユーロの基金創設の提案を行ったことで、特に周辺国で金融市場の沈静化が

進んだ。期間を通じ 10年債で、ドイツ国債は 12bp利回りが上昇したのに対し、ギリシャ国債は 54bp、イタリア

国債は 39bpの低下となった。一方、株式市場では、ストックス欧州 600指数は 8.8%上昇した。このうち主要

セクター別では、旅行・レジャーが 19.2%、自動車・部品が 19.2%、銀行が 13.3%の各上昇、などであった。

【中国】

4月の固定資産投資(15日)などの主な経済指標が依然として大きな前年比マイナスとなったものの、全人

代(国会に相当)開催(22日)前に経済政策期待からの買いが広がり、19日の上海総合指数は 2,898.58ポイ

ントまで戻った。しかし、その後は、LPR(ローンプライムレート)の現状維持(20 日)に加えて、全人代開催日

に注目されていた 20年の経済成長率目標の設定が見送られたほか、香港に対する「国家安全法」の審議入

りで大幅な下落に転じ、22 日の終値は 3 週間半ぶりの安値水準である 2,813.77 ポイントを付けた。22 日以

降は、香港関連法をめぐって米中摩擦激化への警戒感が強まったものの、全人代で示された経済政策への

期待が高まったほか値ごろ感からの買いもあり、上昇基調で推移し、28 日の終値は 2,846.22 ポイントを回復

した。期間を通じては約 0.8%の下落となった。

(資料)Bloombergより農中総研作成

50

100

150

200

250

250

300

350

400

450

19/11 19/12 20/1 20/2 20/3 20/4 20/5

(ポイント) 欧州の株価指数

ストックス欧州600指数 (左軸) うち銀行セクター (右軸)

▲ 80

▲ 70

▲ 60

▲ 50

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

フランス

イタリア

スペイン

ギリシャ

アイルランド

ポルトガル

英国

(参考)米国

(参考)日本

(bp)ドイツ国債との利回りスプレッド変動幅

(10年債)(直近2週間)

▲ 1

0

1

2

3

19/11 19/12 20/1 20/2 20/3 20/4 20/5

(%)

欧州の国債利回り(10年債)

イタリア 英国 スペイン ドイツ

6.8

6.9

7.0

7.1

7.22,600

2,700

2,800

2,900

3,000

3,100

3,200

19/11 19/12 20/1 20/2 20/3 20/4 20/5

↑人民元高

(人民元/ドル)(ポイント)上海総合指数/人民元レート

上海総合指数(左軸) USD/CNY(右軸)