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2009年度後期 南波PBL
自治体の職員勤怠管理システム導入における概念データモデリング応用事例
都内自治体(A市)における市役所職員の勤怠管理の統合化・効率化を図るため、概念データモデリングなどの手法を用いて、職員と共同で現在の勤怠管理に関する業務を分析し、勤怠管理システム導入に係る課題の抽出と解決策の検討を行い、システム提案依頼書案を作成した。
A市役所人事課長
A市役所人事担当者
A市役所 本庁舎(イメージ)
<A市役所概要>所在地 東京都内に本庁舎1ヶ所のほか、管轄地域内に出張所、保健所、公立小中学校、清掃事務所等
およそ50の出先事務所あり職員数 約3,000人住民数 約50万人
A市 組織図 A市 ネットワーク図
<勤怠管理業務課題>
勤怠管理パッケージソフトとICカードによる打刻の導入を構想中だが、導入によって現状業務がどのように変化するかを確認し、構築事業者への要求事項に漏れがないか見極めたい。
出勤簿の紙運用をやめたい、月次の締め業務を軽減したい 、etc.・・・ しかし、どのような方法で、どの業務範囲までを対象にIT化を検討すべきか計り兼ねている。
業務フロー図(勤怠管理)
出勤簿が紙運用増大する転記処理
不在確認, 休暇取得状況の確認に手間取る
ビジネスを構成する 「もの」 と 「こと」 を整理し、その概念を写し取ることにより、ビジネスの仕組みを把握する。暗黙知を形式知に変換し、ステークホルダー間の認識を共通化し合意形成する方法。
組織が関心を持つ 「もの」 と「もの」 同士の関連を表現
静的モデル
各モデル作成で新たに認識、追加された 「もの」 「こと」 を相互に付加、整理することにより、正確性が増す。(モデルのリファイン)
「もの」 「こと」 の管理責任・権限を可視化し、「もの」「こと」 の相互作用を表現
組織間連携モデル
「もの」 を変化させる 「こと」 を抽出し、「こと」 の発生源と 「もの」がどのように変化するかを表現
動的モデル
私たちがご支援します!!
・プロジェクト目標設定・成果物設定、スケジュール作成・現状業務の理解●現状概念データモデリング・次期システム要望ヒアリング・改善案の抽出と検証●次期概念データモデリング・新システム導入のための提案依頼書(RFP)案作成
・・・+ 1年次、前期PBLで学習、獲得したコンピテンシー
「もの」 「こと」 の過不足、管理責任部門の適合性、多重度が現実と合っているか、などの問題点が見える。
「もの」 の識別子と変化する属性を抽出。
No 質問内容 回答内容質問回答者
回答日 質問関連事項
1 勤怠管理システムを導入しようと思ったのは、どのような理由からですか。
勤怠管理システムをやることで、定常業務をなくしてほしい。退勤も管理したい。
江東区 9/30
2 出勤簿に押印する方式での一番の問題とはなんですか。 定常業務に時間を取られている。退勤の管理ができていない。
江東区 9/30
3 A市様のいう勤怠管理業務とはどのような業務ですか。 出退勤、休暇、旅行、研修、超過勤務。休暇についてはいろいろとある。
江東区 9/30
4 市役所には様々な職種の方がいるようですが、どのような職種がありますか。また、全ての職種が同じ勤怠管理となっていますか。
職種表に記載される通りである。いないのは、法務、会計、物理、学芸研究、理学療法士、作業療法士、ボイラー技士、一般技能、学童擁護、家庭奉仕、設備管理
江東区 9/30
5 職種によって、勤務体系が異なりますか。 所属、職種によって違う。「A市職員の勤務時間、休日、休暇等に関する規程」に定められている。
江東区 9/30
6 職種によって、特別な休暇や勤務体系がありますか。 「A市職員の勤務時間、休日、休暇等に関する規程」に定められている。ここに記載されているものが特別な勤務体系を組めるものである。休暇の種類はどの職種でも変わらない。性別等で区別はある。
江東区 9/30
7 再雇用・再任用・臨時職員の違いを教えて下さい。 臨時職員は管理する必要はない。再雇用・再任用は同じ。正規より勤務日数が少ない。勤務時間帯、休憩時間は同じ。フクムは正規とくらべ、休暇に関しては再雇用は若干する、再任用は同じ、再雇用は人事システムで管理はできない。運用上できればやりたい。しかし、再雇用の人給は複雑な体系でない。月額いくらと決まっているため。人事の知らない再雇用・再任用はいない。
江東区 9/30
2009年度後期 南波PBL 「概念データモデルなどを用いた情報システム上流工程」
業務の流れ、職員の関わり、業務を推進する上で本質的な「もの」「こと」といった事項が、これを機会にわかりやすい形で整理できた。次期業務システムの対象範囲も明確になった。A市役所
人事課長
A市役所人事担当者
出勤簿を管理する業務の削減、勤怠締め支払の業務負荷平準化、各種申請や承認経路の情報をひとまとめにしたい。
簡単になる業務もある反面、新たに管理業務も増えることになるところもあることが見える。
モデリングによって問題点が整理できたので、RFP案が素早く作成できた。新たに見えた課題には今のうちに準備しておこう。
簡単で直感的な図や表でなら回答できる。
ヒアリングや簡単な業務フロー図や表などを用いて業務知識を共有。
課題・要望イメージ 従来の仕組み 実現の仕組み 変更後の業務イメージ
条件等
客観的な出退勤時刻を打刻し、打刻データを勤怠管理に利用できる仕組みを導入したい。
庶務担当者による出勤簿の定刻掲示、格納が各課で行われている。出先事業所、学校を含め約100箇所でそれぞれ管理。
本人であることを証明するもの(ICカード等)、出勤場所に設置するリーダ、打刻データ授受のためのネットワーク
職員は、出勤時に本人所持のICカードを最寄の読取装置(リーダ)にかざす。
指紋、静脈、目虹彩などの生体認証は用途、データ管理面から不適合と判断済。
各種申請の確認業務(申請者、関与者、承認権者、出勤簿整理担当者、給与・会計担当者)を軽減したい。
各種勤怠申請の確認、出勤簿へ表示で約1.5人日、出勤簿整理担当者3-40人(1課に1人)の工数負担がある
データベースシステム、Webアプリケーション、PC端末、ネットワーク
各種申請登録時に、条件外であることが明白な申請はアプリケーション上ではじく。申請後は即時に承認ワークフローにて共有され、申請状況が可視化される。
各種休暇取得日数(消費日数、残日数)の確認を即時化したい。締め処理時の集計業務を軽減したい。
職員ごと年度ごとの台帳(紙)で管理している。集計は承認済みの申請を出勤簿担当者が確認済みのものを人事担当者が処理している。
データベースシステム、Webアプリケーション、PC端末、ネットワーク、休暇マスタとの連携
職員は他の職員に問合せすることなく、自分でデータを参照できる。集計はシステム問合せで出力が即時化される。
出張に関する旅費の現況を即時に把握したい(交通費、宿泊費)。締め処理時の集計業務を軽減したい。
職員ごと年度ごとの台帳(紙)で管理している。集計は月次で承認済みの申請を出勤簿担当者が確認済みのものを人事担当者が処理している。
データベースシステム、Webアプリケーション、PC端末、ネットワーク、会計システムへのデータ出力
所属長は自分の配下の旅行件数や旅費使用状況をシステムから即時に閲覧する。旅行の可否判断が早期化する。
旅費精算は別部門(会計係)にて行われる。
No.
エンティティ
アクター
名称 説明 識別子 属性値 同時に遷移する「もの」
遷移
1 職員 人事係
採用手続する
人事係は職員の採用手続を行う
氏名任用区分採用日
職種・号俸性別住所連絡先通勤交通費扶養家族情報
2 人事係
配属する 人事係は職員を配属する
氏名任用区分発令日
通勤交通費 所属職員 所属名職位勤務地配属日本務・兼務
3 人事係
異動・転換する
人事係は職員を異動・転換する
氏名任用区分発令日
通勤交通費 所属職員 所属名職位勤務地終了日
4 人事係
各種更新する
人事係は職員人事情報を更新する
氏名任用区分更新日
住所連絡先通勤交通費扶養家族情報
5 人事係
昇格昇給を更新する
人事係は職員昇給昇格を更新する
氏名任用区分更新日
職種・号俸勤務地
6 人事係
退職手続する
人事係は職員の退職を手続する
氏名任用区分更新日
退職日 所属職員 所属名終了日
A市担当者がイメージする次期業務をヒアリングや現状業務モデリングで話題になったことをまとめる。
各モデルから、狙い通りに解消できる業務が見える反面、実は管理するもの・ことが増える部分があることも認識された。
図として動的モデルを起票するほか、表で詳細を整理する方法もある。
今回の活動によって、RFP作成における業務課題の盛り込み漏れの心配がなくなっただけでなく、部員間で業務知識レベルに差があったものがモデリングによって共有化できた。
成 果 物 説 明 検 証
提案依頼書(RFP)案システム導入の要件と範囲を記述
A市担当者様と約4回ミーティングを実施し、2ヶ月間にわたり内容を精査
現状業務モデル(概念データモデル)
区の現状業務においてモノとモノが変化するコトについて記述
A市担当者様と約3回ミーティングを実施し、1ヶ月間にわたり内容を精査
次期業務モデル(概念データモデル)
区の次期業務において、あるべきモノとコトの関係を記述
A市担当者様と約3回ミーティングを実施し、1ヶ月間にわたり内容を精査
段階移行案本システムに統合化できない業務についての今後方向性を記述
次期業務モデルおよび提案要求仕様書案の作成時に精査
さらに次の課題を意識したシステム構築の提案依頼を作成。
非機能要件も現状モデリングで構成が把握できているので大きく漏れが発生することがない。
成果物 スケジュール 体制
複雑なドキュメントの一方的提示よりも、一緒に作成すれば理解しやすい。
無駄な業務、締め処理などでの業務負荷の偏在がモデルにも表出。