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知ろう。ふせごう。慢性腎臓病(CKD) (監修:松尾 清一 先生) https://www.kyowa-kirin.co.jp/ckd/ 2018年11月作成(KK-18-09-23329) 医療関係者用 早期発見、早期治療・対策で 慢性腎臓病(CKD )の進行を予防しましょう。 ※CKD:C hronic K idney D isease https://www.kyowa-kirin.co.jp/ckd/ 慢性腎臓病(CKD )を知っていますか?

慢性腎臓病(CKD を知っていますか?...慢性腎臓病(CKD)とは慢性に経過するすべての腎臓病を指します。CKDの患者さんは1,330万人(20歳以上の成人の8人に1人)いる*と考え

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知ろう。ふせごう。慢性腎臓病(CKD) (監修:松尾 清一 先生) https://www.kyowa-kirin.co.jp/ckd/ 2018年11月作成(KK-18-09-23329)

医療関係者用

早期発見、早期治療・対策で慢性腎臓病(CKD※)の進行を予防しましょう。

※CKD:Chronic Kidney Disease

https://www.kyowa-kirin.co.jp/ckd/

慢性腎臓病(CKD※)を知っていますか?

知ろう。ふせごう。慢性腎臓病(CKD) (監修:松尾 清一 先生) https://www.kyowa-kirin.co.jp/ckd/ 2018年11月作成(KK-18-09-23329)

医療関係者用

腎臓は“あなたの体を正常な状態に保つ”働きをもつ、大切な臓器です。

腎臓は、そらまめのような形をした握りこぶしくらいの大きさの臓器で、腰のあたりに左右対称に2個あります。

腎臓ってどんな働きをしている?

膀胱腹部大動脈

下大静脈

腎臓 腎臓

尿管

知ろう。ふせごう。慢性腎臓病(CKD) (監修:松尾 清一 先生) https://www.kyowa-kirin.co.jp/ckd/ 2018年11月作成(KK-18-09-23329)

医療関係者用

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腎臓は血液を濾過して、老廃物や塩分を尿として体の外へ追い出してくれます。

また、体に必要なものは再吸収し、体内に留める働きをしています。

腎臓の働きが悪くなると尿が出なくなり、老廃物などが体に蓄積し尿毒症になります。

慢性腎臓病(CKD)などによって、この働きが悪くなると、排出されない老廃物が体に悪い影響を与え、さまざまな病気の原因になる可能性があります。

腎臓ってどんな働きをしている?

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医療関係者用

腎臓ってどんな働きをしている?

腎臓は、塩分と水分の排出量をコントロールすることで血圧を調整しています。

血圧が高いときは、塩分と水分の排出量を増やして血圧を下げます。

血圧が低いときは、塩分と水分の排出量を減らすことで血圧を上げます。また、腎臓は血圧を維持するホルモンを分泌し、血圧が低いときに血圧を上げます。

腎臓と血圧は密接に関係し、腎臓の働きの低下によって高血圧になることもあります。高血圧症は腎臓に負担をかけ、腎臓の働きを悪化させることもあります。

高血圧症は、生活習慣病として注目されていますが、慢性腎臓病(CKD)と生活習慣病は深い関わりがあります。*!

*CKD診療ガイド2012(社団法人 日本腎臓学会 編)より

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医療関係者用

血液(赤血球)は骨髄の中にある細胞が、腎臓から出るホルモン(エリスロポエチン)の刺激を受けてつくられます。

腎臓の働きが悪くなると、このホルモンが出てこなくなってしまうため、血液が十分につくられず、貧血になることがあります。

腎臓 骨髄 赤血球 血液

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腎臓ってどんな働きをしている?

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医療関係者用

腎臓は、体内の体液量やイオンバランスを調節したり、体に必要なミネラルを体内に取り込む役割も担っています。

腎臓が悪くなると体液量の調節がうまくいかず、体のむくみにつながります。

また、イオンバランスがくずれると、疲れやめまいなど、体にさまざまな不調が現れることがあります。

貧血やむくみは体からのSOSのサインです。

気になる症状があったり、不安を感じたりしたら、病院で診察を受けるようにしましょう。

腎臓ってどんな働きをしている?

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医療関係者用

骨の発育には複数の臓器が関わっています。

中でも腎臓は、カルシウムを体内に吸収させるのに必要な活性型ビタミンDをつくっています。

腎臓の働きが悪くなると活性型ビタミンDが低下し、カルシウムが吸収されなくなって骨が弱くなるなどの症状が出てきます。

腎臓ってどんな働きをしている?

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新たな国民病、「慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)」

慢性腎臓病(CKD)とは慢性に経過するすべての腎臓病を指します。

CKDの患者さんは1,330万人(20歳以上の成人の8人に1人)いる*と考え

られ、新たな国民病ともいわれています。

生活習慣病との関連も深く、誰でもかかる可能性のある病気です。

腎臓は体を正常な状態に保つ重要な役割を担っているため、

CKDによって腎臓の機能が低下し続けると、さまざまなリスクが発生します。

*CKD診療ガイド2012(社団法人 日本腎臓学会 編)より

慢性腎臓病(CKD) とは?

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医療関係者用

慢性腎臓病(CKD)は初期には自覚症状がほとんどありません。

それが、CKDの怖いところで、患者を増加させている原因でもあります。

腎臓は一度あるレベルまで悪くなってしまうと、自然に治ることはありません。

放っておくと、どんどん進行して、透析や腎臓移植を行わなければいけなくなる

場合があります。

慢性腎臓病(CKD)の初期症状

慢性腎臓病(CKD) とは?

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医療関係者用

これらの症状が自覚されるときは、すでにCKDがかなり進行している場合が多い

といわれています。

体調の変化に気をつけているだけでは早期発見は難しいといえます。

慢性腎臓病(CKD)が進行すると、夜間尿、むくみ、貧血、倦怠感、息切れなどの症状が現れてきます。

慢性腎臓病(CKD)が進行するにつれ現れる症状

息切れ

少し早歩きしただけで息が切れる

疲れやすく、常にだるい感じがする

立ちくらみや貧血がたびたび起こる

靴や指輪がきつくなる

夜間に何度もトイレに・・・

倦怠感貧血むくみ夜間尿

慢性腎臓病(CKD) とは?

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医療関係者用

定期的に健康診断を受け、尿や血圧の検査をすることが早期発見につながります。

特に尿たんぱく陽性の方は要注意ですので、病院でくわしい検査を受けるように

しましょう。

慢性腎臓病(CKD)を早く見つけるためには

慢性腎臓病(CKD) とは?

尿たんぱく腎臓に障害があると血液中のたんぱく質が尿に漏れ出します。尿中のたんぱく量を測定することで、腎臓の状態を検査します。

血清クレアチニン(値)血清クレアチニンとは、血液中にある老廃物の一種です。本来は尿へ排出されますが、腎臓の働きが悪くなると、尿中に排出されずに血液中に溜まっていきます。血清クレアチニン値が高いということは、腎臓の濾過や排泄がうまくいっていないと判断できます。血液検査の結果項目にある「血清クレアチニン」の値と年齢、性別で腎臓の働きを調べることもできます。

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慢性腎臓病(CKD)があると、脳卒中や心筋梗塞など心血管病発症のリスクが高まると言われています*。

また、CKDが進行して腎不全になると体内から老廃物を除去できなくなり、最終的には透析や腎臓移植が必要になります。

腎臓は病気がある程度まで悪くなってしまうと、もとの正常な状態に回復することは難しいですが、生活習慣の改善や薬物治療により病気の進行を遅らせることが期待できます。

定期的に健康診断を受けることで、CKDの早期発見と予防に努めることが重要です。

慢性腎臓病(CKD)が進行すると?

*綜合臨牀 2006.4 Vol.55、No4より引用

慢性腎臓病(CKD) とは?

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医療関係者用

慢性腎臓病(CKD) とは?―CKDが進行すると?―

腎臓が十分にその役割を果たせなくなった状態を腎不全といいます。

腎不全になると食事の内容や水分などを制限する必要があります。

さらに腎臓の働きが低下すると腎臓の働きを代替する治療(透析や腎臓移植)を

受けることになり、日常生活に大きな影響を与えることになってしまいます。

末期腎不全のリスク

? 腎不全になるとどうなってしまうのか

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医療関係者用

透析療法では腎臓の代わりに、人工的に体内の老廃物や余分な水分を取り除き、

体内のイオンバランスを調整します。

透析療法には血液透析と腹膜透析の2つの種類があります。

どちらを選ぶかは医師と相談のうえ、症状などに応じて決定します。

どちらの方法でも腎臓の機能を完全に代替することはできないので、

日常生活では食事などの注意が必要です。

透析療法とは?

慢性腎臓病(CKD) とは?―CKDが進行すると?―

末期腎不全のリスク

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医療関係者用

1日約4回、お腹の中に約2リットルの透析液を入れて、腹膜を使って老廃物や余分な水分を取り除きます。1回あたり30分程度かかります。自宅や職場で行うことができます。

血液透析

週に2~3回、1回4~5時間かけて、身体の外に血液を取り出し、血液中の老廃物や余分な水分を取り除いたあと、再び体内に戻します。

腹膜透析

抗凝固薬注入ポンプ 血液ポンプ

透析液供給装置

透析液 浄化された血液

老廃物を含む透析液

静脈側血液回路

動脈側血液回路

ダイアライザー(人工腎臓)

血液

腹膜

排出

廃液バッグ

透析液バッグ

腹腔

注入

透析液

腹腔

腹膜

慢性腎臓病(CKD) とは?―CKDが進行すると?―

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医療関係者用

近年、慢性腎臓病(CKD)があると、脳卒中、心筋梗塞の発症率が高くなることがわかってきました。

■ CKDの有無別にみた心血管病の累積発症率

試験概要:脳卒中あるいは心筋梗塞の既往歴を有するものを除いた40歳以上2,634名を12年間前向きに追跡した成績より、CKD有無別に心血管病累積発症率を求めた。

(綜合臨牀 2006.4 Vol.55、No4より引用)

脳卒中・心筋梗塞のリスク

CKDの人CKDでない人

P<0.01(Log-rank検定) P<0.01(Log-rank検定)CKDの人CKDでない人

22.0%

35.6%

12.0%7.8%

観察年数観察年数

心血管病累積発症率

心血管病累積発症率

男性 女性

(%)

50

40

30

20

10

0 2 4 6 8 10 12(年)

(%)

50

40

30

20

10

0 2 4 6 8 10 12(年)

慢性腎臓病(CKD) とは?―CKDが進行すると?―

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医療関係者用メタボリックシンドローム(生活習慣病)と慢性腎臓病(CKD)

メタボリックシンドロームは慢性腎臓病(CKD)予備軍?!

生活習慣病として、近年何かと話題になっているメタボリックシンドローム。メタボリックシンドロームは慢性腎臓病(CKD)の危険因子です。

メタボリックシンドロームの症状である 「糖尿病」、「高血圧症」、「脂質異常症」は腎臓の働きを低下させる要因です。

メタボリックシンドロームの人はCKDにもなりやすいといわれています。

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医療関係者用

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満*に、糖尿病、高血圧症および脂質異常症のうち2つ以上を合併した状態をいいます。

そもそも、“メタボリックシンドローム”って?

*過食と運動不足によって内臓脂肪が蓄積した肥満

メタボリックシンドローム(生活習慣病)と慢性腎臓病(CKD)

内臓脂肪型肥満

糖尿病高血圧症脂質異常症

が複数合併

メタボリックシンドローム

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医療関係者用

メタボリックシンドロームの諸症状は、慢性腎臓病(CKD)の発症と進行の危険因子となります。

内臓脂肪型肥満になると、糖尿病性腎症の指標であるアルブミン尿(たんぱく尿の一種)が出やすくなることが知られています。肥満の人は糖尿病や高血圧症を合併していることも多く、体重を適正に管理することが重要です。

高血糖の状態が続く糖尿病は、透析療法にいたる原因となる病気の第1位です。糖尿病になると腎臓の尿をつくる働きが低下し、体内に余分な老廃物や水分がたまります。そのことがさらに腎臓に負担をかけることになります。

高血圧になると腎臓の働きが悪くなり、腎臓の働きが悪くなると高血圧が悪化するという悪循環の関係にあります。血圧のコントロールはきわめて重要です。

脂質異常症は、CKDの発症と進行の危険因子です。また、動脈硬化など心血管病の危険因子でもあり、コレステロール値を目標値まで下げることが重要です。

メタボリックシンドロームと腎臓の働き

メタボリックシンドローム(生活習慣病)と慢性腎臓病(CKD)

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医療関係者用

メタボリックシンドローム(生活習慣病)と慢性腎臓病(CKD)は深く関連しています。

メタボリックシンドロームを防ぐことで、CKDを防ぐことにつながります。

メタボリックシンドローム(生活習慣病)と慢性腎臓病(CKD)

内臓脂肪型肥満

悪い生活習慣

メタボリックシンドローム(生活習慣病)

糖尿病

高血圧症

脂質異常症

が複数合併

脳卒中心筋梗塞

末期腎不全(人工透析)

慢性腎臓病(CKD)

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医療関係者用

慢性腎臓病(CKD)では、腎臓の機能がある程度まで低下してしまうと、腎臓はもとに戻ることはありません。

CKDにおいては早期発見・早期治療によって、腎臓の機能をこれ以上低下させないことがとても重要です。

CKDの治療は、日々の生活習慣の改善、食事療法や薬物治療による血圧管理、貧血改善、脂質代謝管理、糖代謝管理、塩分摂取制限などを総合的に行うことが必要です。

また、病気の進行度合いや症状に応じた、適切な治療を行うために、定期的な検査が重要です。

万一、腎臓機能が低下してしまっている場合には、進行を遅らせる治療が必要です。この場合も総合的な管理が必要になります。

腎臓病を悪化させないために

機能が低下した腎臓は、もとに戻りません。

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医療関係者用

慢性腎臓病(CKD)の発症・進行を抑えるには、日々の生活習慣を改善しましょう。禁煙し、アルコールを控え、適度な運動をすることがとても重要です。

喫煙はCKDの発症・進行に関与していると考えられます。また、喫煙は心血管病など様々な病気の危険因子でもあるので、まずは禁煙することが重要です。

適度の飲酒は、CKDの危険因子とはなりません。しかし、過度の飲酒は、CKDや末期腎不全の危険因子となりうるので注意しましょう。

糖尿病や高血圧症の発症を抑えたり、適正な体重を維持するためにも運動が重要です。自分の体力や体調にあわせた適度な運動を、定期的に行うよう勧めましょう。

無理な残業などによる過労を避け、睡眠を十分にとるように勧めましょう。ストレスも大敵です。

こんな生活習慣は注意! 慢性腎臓病(CKD)と関係する生活習慣

気をつけたい生活習慣

腎臓病を悪化させないために

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医療関係者用

腎臓病を悪化させないために ―気をつけたい生活習慣―

慢性腎臓病(CKD)の発症・進行を抑える生活習慣は、メタボリックシンド

ローム(内臓脂肪型肥満に糖尿病・高血圧症・脂質異常症が複数合併)と

共通しています。

すなわち、これらの生活習慣を改善すれば、CKDをはじめさまざまな病気の

予防につながります。

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医療関係者用

腎臓病を悪化させないために ―毎日の食事で気をつけること―

慢性腎臓病(CKD)患者さんが毎日の食事で注意すべきことは、病気の進行度や性別、

年齢、生活状況によって違います。

医師や栄養士のアドバイスによる進行度にあった食事指導が必要です。

この時期に必要なことは、他の生活習慣病(高血圧症・糖尿病・脂質異常症)に対する注意と共通しています。

CKDの進行度における食事療法のポイント

✓塩分の摂りすぎに注意しましょう。

食塩摂取量の基本は、3g/日以上 6g/日未満です。

✓バランスよく、適量を食べ、肥満に気をつけましょう。

1日のエネルギー必要量の目安 25~35kcal × 標準体重(kg)

✓たんぱく質は過剰な摂取をしないように気をつけましょう。

1.3g/標準体重(kg)/日を超えないことがひとつの目安です。

病気の進行度はステージ(病期)によって分けられています。自分のステージ(病期)についてはセルフチェックで確認してみましょう。

CKDステージ G1~G2

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医療関係者用

✓たんぱく質の制限 たんぱく質は、体を作る大事な栄養素ですが、腎臓に負担がかかる“燃えかす”がでるので、必要以上に摂らないように制限する必要があります。各ステージの目安は 「CKDステージによる食事療法基準」 を参考にしてください。

✓塩分の制限 塩分を摂り過ぎると体に水分がたまり、血圧が上がったりむくみが出たりします。高血圧になると腎臓に負担がかかりますので、塩分の摂取を制限する必要があります。食塩摂取量の目安は3g/日以上 6g/日未満です。

✓十分な

エネルギーの補給

エネルギー不足の状態では、栄養状態が不良になったり、体のたんぱく質がエネルギーとして使われ、腎臓に有害な“燃えかす”が増えてしまいます。1日のエネルギー必要量の目安は、25~35kcal×標準体重(kg)です。

✓カリウムの制限 ステージにあわせて、摂取を制限する必要があります。制限の目安は、ステージG3bでは2,000mg/日以下、G4~G5では1,500mg/日以下ですが、服用している薬や症状などで変わってくる場合がありますので、医師や栄養士のアドバイスを受けるようにしましょう。

✓リン・水分の制限 症状にあわせて、摂取を制限する必要があります。

CKDステージ G3~G5

CKDの進行度における食事療法のポイント

腎臓の機能が低下してきているので、腎臓をいたわるための食事が必要です。

腎臓病を悪化させないために ―毎日の食事で気をつけること―

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医療関係者用

ステージ(GFR)

エネルギー(kcal/kgBW/日)

たんぱく質(g/kgBW/日)

食塩(g/日)

カリウム(mg/日)

ステージ1(GFR≧90)

25~35

過剰な摂取をしない

3≦ <6

制限なし

ステージ2(GFR 60~89) 過剰な摂取をしない 制限なし

ステージ3a(GFR 45~59) 0.8~1.0 制限なし

ステージ3b(GFR 30~44) 0.6~0.8 ≦2,000

ステージ4(GFR 15~29) 0.6~0.8 ≦1,500

ステージ5(GFR<15)

5D(透析療法中)

0.6~0.8 ≦1,500

かかりつけの病院などにご相談ください

CKDステージによる食事療法基準

注) エネルギーや栄養素は、適正な量を設定するために、合併する疾患(糖尿病、肥満など)のガイドラインなどを参照して病態に応じて調整する。性別、年齢、身体活動度などにより異なる。

注) 体重は基本的に標準体重(BMI=22)を用いる。[標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22]注) BW=body weight(標準体重)

「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版 表1 日本腎臓学会編/東京医学社」より一部改変

腎臓病を悪化させないために ―毎日の食事で気をつけること―

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医療関係者用

腎臓病の人のために低たんぱくの特殊食品があります。

これらを上手に活用するのが食事療法が長続きするコツです。

腎臓の機能が低下するにつれ、より厳しく食事を管理する必要があります。

また、糖尿病の患者さんは血糖管理のため、エネルギー制限が加わります。

食事内容は自己流で判断させずに、医師や栄養士の指導を受けて決める

ように指示しましょう。

腎臓病を悪化させないために ―毎日の食事で気をつけること―

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医療関係者用

慢性腎臓病(CKD)の治療では、薬を使って腎臓の機能を補うことで、進行を遅らせたり、腎臓の機能が低下することで起きる症状を改善したりします。

薬物療法について

腎臓病を悪化させないために

血圧を調節する機能を助ける薬

老廃物を体から追い出す

機能を助ける薬

血液をつくる司令官としての機能を助ける薬

体液量・イオンバランスを調節する機能を助ける薬

強い骨をつくる機能を助ける薬

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医療関係者用

腎臓の血圧を調節する機能を助ける薬

降圧薬 慢性腎臓病(CKD)を伴う高血圧症には、腎臓を保護する作用がある降圧薬を使います。

利尿薬 尿の量を増やして、体内の余分な水分や塩分(ナトリウム)の排出を促すことで、血圧を下げたり、むくみをとります。

腎臓病を悪化させないために ―薬物療法について―

腎臓の老廃物を体から追い出す機能を助ける薬

経口吸着炭素製剤

腎臓の機能が低下すると、血液中の老廃物が尿へ十分に排出されず体内にたまってしまい、尿毒症になります。腸の中で、尿毒症の原因となる毒素を吸着し、体内に吸収させることなく、便とともに排泄させる薬を使って、尿毒症の症状を改善します。

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医療関係者用

腎臓の血液をつくる司令官としての機能を助ける薬

赤血球造血刺激因子製剤

慢性腎臓病(CKD)では貧血が発症します。血液 (赤血球) は骨髄の中にある細胞が、腎臓から出るホルモン (エリスロポエチン)の刺激を受けてつくられますが、腎臓の働きが悪くなるとこのホルモンが出てこなくなってしまうため、血液が十分につくられず貧血になります。

貧血は、お薬としてホルモン(赤血球造血刺激因子製剤)を注射することで改善します。

貧血を治療することによって、腎臓の働きが悪くなるのをおさえることができるといわれています。また貧血は心不全を悪化させる原因にもなりますので、慢性腎臓病(CKD)では貧血の治療が重要です。

腎臓病を悪化させないために ―薬物療法について―

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医療関係者用

腎臓の体液量・イオンバランスを調節する機能を助ける薬

カリウム吸着薬

腎臓の機能が低下すると体内のカリウムが排出されず体内にたまってしまいます。カリウムは体にとって不可欠のものですが、体内にたくさんありすぎると手足のしびれや不整脈などの原因になります。そのため、腸の中でカリウムとくっつき体外へ排出する薬を使います。

リン吸着薬 腎臓の機能が低下し、体内からリンを排出できなくなると高リン血症になり、骨がもろくなったり、心臓や血管に悪影響を及ぼします。そのため、食べ物の中のリンを腸の中で吸着して、体に吸収させることなく体外へ便とともに排泄する薬を使って体内のリンを減らします。

腎臓病を悪化させないために ―薬物療法について―

腎臓の強い骨をつくる機能を助ける薬

活性型ビタミンD製剤

骨の発育には複数の臓器が関わっていますが、その中でも腎臓は、カルシウム

を体内に吸収させるのに必要な活性型ビタミンDを作っています。

腎臓の働きが低下すると、活性型ビタミンDが低下し、カルシウムが吸収され

なくなって骨が弱くなるなどの症状が出てきます。

そのため、薬で活性化したビタミンDを補い、骨がもろくなるのを防ぎます。

知ろう。ふせごう。慢性腎臓病(CKD) (監修:松尾 清一 先生) https://www.kyowa-kirin.co.jp/ckd/ 2018年11月作成(KK-18-09-23329)

医療関係者用

その他にも症状にあわせて服用する薬があります。

薬の役割をきちんと理解して指示通りに服用しましょう。

手軽に入手できるサプリメントとの組合せによっては、腎臓に悪影響をあ

たえることがありますので、使用するときは現物を持参して医師や薬剤師

に相談しましょう。

腎臓病を悪化させないために ―薬物療法について―

知ろう。ふせごう。慢性腎臓病(CKD) (監修:松尾 清一 先生) https://www.kyowa-kirin.co.jp/ckd/ 2018年11月作成(KK-18-09-23329)

医療関係者用

主な検査の種類と概要

早期発見

尿検査

尿にたんぱく質や血液が漏れ出ていないかを検査します。ただし、発熱や激しい運動などでもこれらが出ることがあるので、1度検出されたら、必ず2~3度繰り返して検査して確認する必要があります。

健康診断で一般的に行われる検査ですが、専用の測定キットを使えば、家庭でも行うことができます。

の確認

進行度合い

血液検査

定期健診などで一般的に行われる検査です。さまざまな値を調べて腎臓の働きをチェックしますが、そのなかでも大切なのが血清クレアチニン値です。血清クレアチニン値によって、腎臓の働きを数値的に確認することができます。

詳細な診断

画像診断 超音波検査や腹部CTなどで、腎臓の形、大きさや合併症(腫瘍や結石など)の有無を調べます。

腎生検 腎臓の組織を顕微鏡で検査して、正確な診断をします。

主な検査について

腎臓病を悪化させないために ―薬物療法について―

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医療関係者用

腎臓はさまざまなホルモンを分泌しています。

そのひとつに赤血球をつくる働きを促進するエリスロポエチンというホルモンがあります。

腎臓の働きが低下すると腎臓からのエリスロポエチンの分泌が減り、赤血球をつくる能力が低下する

ことで貧血になります。このようにしておこる貧血を 「腎性貧血」 といいます。

腎性貧血とは?

腎臓機能低下と貧血

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医療関係者用

赤血球は体のすみずみにまで酸素を運ぶ役割を持っています。

赤血球が減り「腎性貧血」になると、疲れやすい、動悸・息切れ、めまいなどの

症状があらわれます。ところが、貧血は徐々に進行するので、体がその症状に

慣れてしまって気がつかないケースがあり、注意が必要です。

また、貧血状態では全身の酸素不足が起こります。これをカバーするために

心臓には常に負担がかかっています。

腎性貧血の症状

腎性貧血とは?

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医療関係者用

慢性腎臓病(CKD)患者さんは、定期検査で行われる血液検査のヘモグロビン値

で貧血かどうか分かりますので、貧血の症状が悪化する前に適切な治療をする

ことが大切です。

貧血には、体の鉄が不足してヘモグロビンの産生が不十分になることでおこる

「鉄欠乏性貧血」がありますが、「腎性貧血」とは原因が異なり、治療方法も違い

ます。

よく貧血は鉄を補給すればよいといわれますが、腎性貧血は鉄剤だけを補給して

も改善しません。

腎性貧血の症状

腎性貧血とは?

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医療関係者用

腎性貧血とは?

腎性貧血には、エリスロポエチンの分泌不足を補うために赤血球造血刺激因子製剤に

よる薬物治療が行われます。あわせて食事療法や、鉄剤の投与も行われます。

慢性腎臓病(CKD)患者さんに推奨される治療目標値はヘモグロビン値11~13g/dLの範囲内で、これを超える場合には、腎性貧血治療薬を減らしたり、休薬したりすることがあります。ただ、最終的には個々の患者さんの病態にあわせて目標値は設定されます。

心臓や血管などに重篤な疾患がある患者さんや、医学的に必要のある患者さんには、ヘモグロビン値12g/dLを超える場合に腎性貧血治療薬を減らしたり、休薬したりすることがあります。

腎性貧血の治療

腎性貧血の治療目標

腎性貧血の治療について

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医療関係者用

腎性貧血とは?

腎性貧血になると、疲れやすいなど日常生活が妨げられ、さらに、貧血が強いほど末期腎不全になる割合が高いといわれています。

腎性貧血を治療することで、疲れやすい、動悸・息切れといった症状が改善するほか、心臓のはたらきも改善し、早い時期から貧血治療をすることにより、慢性腎臓病(CKD)の進行を抑えることが期待できるとの報告*もあります。

腎性貧血治療の重要性

*Gouva C, et al. : Kidney Int 66; 753-760, 2004.

一方で、CKDの進行を抑えることについては貧血治療とは関連しないという報告*もあり、結論はでていません。

*Covic A, et al. : Am J Nephrol 40; 263-279, 2014.

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医療関係者用

腎機能低下と高血圧

腎臓と血圧は切っても切れない関係にあります。高血圧と腎臓の機能低下は悪循環を形成すると考えられています。

腎臓の働きが悪くなると余分な塩分と水分の排泄ができなくなって血液量は増加し血圧が上がります。さらに、血圧が上がれば腎臓への負担が増え、ますます腎臓の機能が低下するといった悪循環となります。腎臓の働きを守るためにも、血圧をコントロールすることが大切です。

腎臓と血圧の関係

腎臓機能低下と高血圧の悪循環

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医療関係者用

腎機能低下と高血圧―腎臓と血圧の関係―

① 塩分(ナトリウム)と水分(尿)の調節

塩分の摂り過ぎが高血圧の大敵であることはよく知られています。

通常、腎臓は食事からとった余分な塩分

(ナトリウム)を水分(尿)とともに体の外へ

追い出すはたらきをしています。

ところが、腎臓の働きが悪くなると、塩分

(ナトリウム)と水分(尿)の排出がうまく

できなくなって血液の量が増え、血圧が

上がります。

血圧と関係する、腎臓の3つの働き

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医療関係者用

血圧と関係する、腎臓の3つの働き

② 血圧を調節するホルモンの分泌

腎臓から分泌される「レニン」という酵素は、血圧を上げる作用をもつ 「アンジオテンシンⅡ」

というホルモンをつくるのに欠かせない物質で、これによって腎臓は血圧を一定に保つ手助け

をしています。

腎臓の働きが悪くなると、血圧を

調節する能力は低下するため、

高血圧になる傾向があります。

腎機能低下と高血圧―腎臓と血圧の関係―

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医療関係者用

腎臓の機能を守るためには、血圧のコントロールが不可欠です。適切な血圧管理により、病気の進行を防ぐことが可能です。

血圧と関係する、腎臓の3つの働き

③ 末梢血管の抵抗

腎臓は無数の細い血管(末梢血管)から成っており、老廃物を含んだ血液は腎臓で濾過

されてきれいになり、心臓へ戻されます。

腎臓の働きが悪くなって血圧が上がると、これらの末梢血管が硬くなり血液が流れにくく

なり、末梢血管抵抗が大きくなって血圧はさらに上がります。

腎機能低下と高血圧―腎臓と血圧の関係―

*CKD診療ガイド2012(社団法人 日本腎臓学会 編)より

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医療関係者用

腎機能低下と高血圧

慢性腎臓病(CKD)患者さんで、血圧が高い方の降圧治療は、腎臓の働きに注意しながら

行われます。

目標血圧や優先して用いられるお薬が一般の高血圧患者さんとは少し異なります。

主治医の指示にしたがって適切な治療を行いましょう。

腎臓機能の低下と高血圧の悪循環を断ち切って、CKDの進行をおさえるためには、血圧を収縮期130mmHg以下/拡張期80mmHg以下にコントロールすることを目標とされています。

65歳以上の高齢者では急激に血圧を下げることはさけ、まず140/90mmHg以下を目標にします。そして、腎臓機能などを確認しながら最終的に130/80mmHg以下を目標に慎重に降圧します。

食塩の摂り過ぎや太り過ぎに注意し、禁煙や適度な運動など生活習慣の改善を行うことがとても重要で、それでも血圧をうまくコントロールできない場合は、薬による治療もあわせて行います。この際、急激に血圧を下げると腎臓の働きを逆に悪化させてしまうこともあるので、たんぱく尿や血清クレアチニン値によって腎臓の働きを確かめながら治療を進めることが大切です。

慢性腎臓病(CKD)患者さんの目標血圧

慢性腎臓病(CKD)患者さんの降圧治療

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医療関係者用

腎機能低下と高血圧―CKD患者さんの降圧治療―

腎臓の働きが低下している患者さんには、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)や

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬がよく使われます。

これらは、血管を縮めて血圧を上げる作用をもつホルモン(アンジオテンシンⅡ)に作用して血圧を下げ

ることで、腎臓を保護する効果もあり、まず最初に使われるお薬です。

しかし、これだけでは血圧が目標値まで下がらないこともあります。

この場合は、カルシウム拮抗薬や利尿薬を組み合わせて治療が行われます。

特に糖尿病を合併し、たんぱく尿があるCKD患者さんは、ARBやACE阻害薬が第一選択薬となります。

血圧を下げる薬にはどんな種類がある?

降圧薬の種類

ACE阻害薬

ARB

カルシウム拮抗薬

利尿薬

α遮断薬

β遮断薬

レニン阻害薬

*CKD診療ガイド2012(社団法人 日本腎臓学会 編)より

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医療関係者用

高血圧の治療を適切に行うことに

よって血圧が下がる度合いが大き

くなれば、腎臓のはたらきが低下

する速度も遅くなることが報告さ

れています。

そうすれば、透析療法を受ける

可能性も心血管疾患による

死亡のリスクも少なくなり、

慢性腎臓病(CKD)患者さんに

とって大きなメリットとなります。

上図は、GFR(糸球体濾過量:腎臓がどれくらい老廃物を濾過する能力があるかをあらわす値)の低下速度と血圧値の関係をあらわしたグラフです。高血圧の治療を行っていない患者さんではGFRの低下速度が速く、腎臓のはたらきが悪化していることがわかります。逆に、血圧をコントロールできている場合はGFRの低下速度、つまり腎臓機能の低下速度が遅くなることがわかります。

降圧治療の重要性

平均血圧(mmHg)

糸球体濾過量(

GFR)

の低下

試験概要:血圧とGFRの関連について検討した9つの臨床試験をメタ解析した。Bakris GL, et al. Am J Kidney Dis 2000; 36: 646-661.より引用,改変

(日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」東京医学社p.62から転載)

(mL/min/yr)

高血圧者未治療

r=0.69;p<0.05

130/80 140/90

95 98 101 104 107 110 113 116 1190

-2

-4

-6

-8

-10

-12

-14

腎機能低下と高血圧―CKD患者さんの降圧治療―

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医療関係者用

腎臓を保護しながら適切な血圧コントロールを行うことによって、

慢性腎臓病(CKD)の進行を防ぐことができるだけでなく、

その後に起こりうる末期腎不全や心血管疾患のリスクを少なくすることができます。

治療の進め方については患者さんそれぞれの病態によって異なりますから、主治

医とよく相談し、指示にしたがうようにしましょう。

降圧治療の重要性

腎機能低下と高血圧―CKD患者さんの降圧治療―

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医療関係者用

なかなか症状が現れず、自覚しにくいことも慢性腎臓病(CKD)の特徴のひとつです。

健康診断による定期的な検査と、日常的な体調管理の中で異変に気づくことが重要です。

ひとつでも当てはまる人は診察を受けるようにしましょう。

こんなことはありませんか?

健康診断の尿検査の項目で異常を指摘されたことがある。

おしっこの色が変だと感じたことがある。

おしっこが泡立っていると感じる。

夜間に何度もトイレに行く。

顔色が悪いと言われることがある。

疲れやすい。疲れが抜けない。息切れがする。

靴や指輪がきつくなった。むくみを感じる。

自分でできる腎臓の健康チェック!

あなたの腎臓は大丈夫?

!

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医療関係者用

慢性腎臓病(CKD)は、その重症度に応じて、ステージ1からステージ5の5段階に

分けられています。

その指標となるのが 推算糸球体濾過量(eGFR) です。

eGFRは、腎臓にどれぐらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示しています。

eGFRは 血清クレアチニン値 と年齢、性別から

計算できます。

血清クレアチニン値は健康診断で測定すること

があります。健診結果を確認してみましょう。

腎臓の働きをしらべる eGFR の測定

※会社などで健康診断の項目は異なるため、血清クレアチニン値を測定していない場合があります。その場合は、病院などで検査してもらうようにしましょう。

※算出された結果については、ご自身で判断せず、対応などを含め医師に相談しましょう。

https://www.kyowa-kirin.co.jp/ckd/check/check.html

自分でできる腎臓の健康チェック!

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医療関係者用

原疾患 蛋白尿区分 A1 A2 A3

糖尿病

尿アルブミン定量(mg/日)

尿アルブミン/Cr比(mg/gCr)

正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿

30未満 30~299 300以上

高血圧腎炎多発性囊胞腎移植腎不明その他

尿蛋白定量(g/日)

尿蛋白/Cr 比(g/gCr)

正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿

0.15未満 0.15~0.49 0.50以上

GFR区分(mL/分

/1.73m2)

G1 正常または高値 ≧90

G2 正常または軽度低下 60~89

G3a 軽度~中等度低下 45~59

G3b 中等度~高度低下 30~44

G4 高度低下 15~29

G5末期腎不全(ESKD)

<15

重症度は原疾患・GFR区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価する.CKDの重症度は死亡,末期腎不全,心血管死亡発症のリスクを緑 のステージを基準に,黄 ,オレンジ ,赤 の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する.

(KDIGO CKD guideline 2012を日本人用に改変)

CKD診療ガイド2012:p.3 日本腎臓学会編/東京医学社

慢性腎臓病(CKD)の重症度分類

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慢性腎臓病(CKD) Q&A

慢性腎臓病(CKD)という病気、初めて聞きました。なぜ最近話題になっているのですか?

慢性腎臓病(CKD)とは、慢性的に経過する腎臓の病気のことをいいます。腎炎、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などが含まれます。

近年、✓ CKDが進行して、透析療法を受ける人が増加している✓ 腎臓機能の低下が脳卒中、心筋梗塞など心血管疾患の発症・進行を増加させる

ことが明らかになりました。CKDは、最も注意すべき病気という認識が高まっています。

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医療関係者用

慢性腎臓病(CKD)の発症リスクが高いのはどのような人でしょうか?

メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満に高血圧症、糖尿病、脂質異常症が複数合併)や、ご家族にCKDの患者さんがおられる人は比較的リスクが高いといえます。

「最近メタボ気味かも…」 という人も注意しましょう。

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慢性腎臓病(CKD) Q&A

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腎臓専門医とはどのようなお医者さんですか?どこで診てもらえるのでしょうか?

腎臓病治療のための幅広い知識と経験を有していると認定された医師です。

日本腎臓学会のホームページで紹介されています。

http://www.jsn.or.jp/

医療関係者用

慢性腎臓病(CKD) Q&A

※上記のリンク先は当サイトから離れ、外部サイトへ移動します。

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医療関係者用

慢性腎臓病(CKD)が増えていると聞きました。なぜでしょうか。

✓ 生活習慣の欧米化により、生活習慣病(糖尿病、高血圧症など)が増えていること

✓ 高齢化が進んでいること

などが原因と考えられます。

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慢性腎臓病(CKD) Q&A

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慢性腎臓病(CKD)は治療でよくなるのでしょうか?

悪くなってしまった腎臓を回復させるのは困難ですが、生活習慣の改善と薬物治療を継続することにより、病気の進行を抑えることができます。

そのためにはCKDの早期発見、早期治療が重要です。

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慢性腎臓病(CKD) Q&A

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慢性腎臓病(CKD)で特に注意することは何ですか?

症状がなくてもCKDと言われたら、定期的に受診しましょう。

特にたんぱく尿、またはeGFR 50(mL/分/1.73m2)未満の方は、腎不全になりやすいので注意しましょう。

eGFR推算糸球体濾過量(すいさん・しきゅうたいろかりょう)、estimated Glomerular Filtration Rate。

医療関係者用

慢性腎臓病(CKD) Q&A