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当院における虚血性脳血管障害の MRI 検査 医療法人 泰庸会 新潟脳外科病院 診療放射線科 長谷川 7 新潟 トリオ モダリティ ミーティング MR 部門

当院における虚血性脳血管障害の MRI 検査今回の主な内容 ・頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例のPLD とFLAIR 画像 でみられたintraarterial

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Page 1: 当院における虚血性脳血管障害の MRI 検査今回の主な内容 ・頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例のPLD とFLAIR 画像 でみられたintraarterial

当院における虚血性脳血管障害のMRI検査

医療法人泰庸会 新潟脳外科病院

診療放射線科 長谷川 博

第 7回 新潟 トリオモダリティ ミーティング

MR 部門

Page 2: 当院における虚血性脳血管障害の MRI 検査今回の主な内容 ・頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例のPLD とFLAIR 画像 でみられたintraarterial

当院 MRI装置

Siemens社製

MAGNETOM Spectra 3 T

MAGNETOM Avanto 1.5 T

GE社製

SIGNA Excite 1.5 T↓

SIGNA Creator 1.5 T (2018年2月稼働)

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※当院ホームページ 「疾患別退院患者統計表」より

脳血管障害 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 平成 29 年

脳出血 52 70 107 132

くも膜下出血(破裂脳動脈瘤含む) 15 16 23 23

未破裂脳動脈瘤 115 120 105 104

脳動静脈奇形 2 3 5 3

脳梗塞 284 314 390 453

一過性脳虚血発作 11 11 14 24

椎骨脳底動脈循環不全 56 26 75 24

脳主幹動脈狭窄・閉塞 7 9 6 4

頸動脈、椎骨動脈、鎖骨下動脈狭窄・閉塞

48 53 76 62

モヤモヤ病 0 2 4 4

その他 4 1 2 1

当院での脳血管障害退院患者数(年別)

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※一部、当院ホームページ 「手術症例及び件数」より

血管内治療 平成 27 年 平成 28 年 平成 29 年 平成 30 年

脳動脈瘤塞栓術 33 34 24 -

脳血管ステント留置術 0 1 0 -

頸動脈ステント留置術 19 29 19 -

鎖骨下動脈ステント留置術 0 6 0 -

椎骨動脈ステント留置術 0 5 0 -

腫瘍塞栓術 5 4 1 -

脳動静脈奇形塞栓術 1 2 0 -

硬膜動静脈瘻塞栓術 1 3 3 -

経皮的脳血管形成術 5 2 3 -

経皮的脳血栓回収術 5 3 5 6 (1-3月)

経皮的選択的脳血栓・塞栓溶解術 1 0 2 -

当院での血管内治療・ rt-PA 静注療法件数(年別)

血栓溶解療法 平成 27 年 平成 28 年 平成 29 年 平成 30 年

rt-PA静注療法 13 14 14 15 (1-3月)

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今回の主な内容

・ 頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例の PLD と FLAIR画像

でみられた intraarterial signal (血管内高信号)の関連性

ASL(arterial spin labeling )法によるMR灌流画像

・ ラベリング後からデータ収集までの待ち時間 Post label delay (PLD)の設定

超急性期虚血性脳血管障害のMRI診断について

撮像法および撮像条件の違いによる画像所見の特徴について

(当院で行った虚血性脳血管障害のMRI 検査から)

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今回の主な内容

・ 頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例の PLD と FLAIR画像

でみられた intraarterial signal (血管内高信号)の関連性

ASL(arterial spin labeling )法によるMR灌流画像

・ ラベリング後からデータ収集までの待ち時間 Post label delay (PLD)の設定

超急性期虚血性脳血管障害のMRI診断について

撮像法および撮像条件の違いによる画像所見の特徴について

(当院で行った虚血性脳血管障害のMRI 検査から)

Page 7: 当院における虚血性脳血管障害の MRI 検査今回の主な内容 ・頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例のPLD とFLAIR 画像 でみられたintraarterial

※参考資料; 「新版よくわかる脳 MRI 」

超急性期虚血性脳血管障害におけるMRI 診断法

撮像法 梗塞診断における撮像目的・主所見

DWI 虚血による細胞性浮腫の早期検出

MRA 脳動脈閉塞の診断、Willis動脈輪の形態、動脈硬化の程度

FLAIR 主幹部~皮質枝閉塞の診断 (intraarterial signal)

T2* WI

SWI

動脈閉塞部位の塞栓子・血栓の検出灌流異常領域での灌流静脈内の低信号(デオキシヘモグロビン濃度上昇)頭蓋内出血の除外

T2 WI陳旧性梗塞の既往、flow void 消失超急性期血腫(オキシヘモグロビン)の鑑別

PWI

(ASL、DSC)

治療可能な ischemic penumbra の評価

(Diffusion-Perfusion Mismatch)

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※参考資料;日本放射線技師会誌, vol.64 no.773,2017、新版よくわかる脳 MRI

Ischemic core と Ischemic penumbra

Diffusion-Perfusion Mismatch:拡散異常域と灌流異常域の差異

Ischemic core (拡散異常域):DWI

Ischemic

core

正常脳組織

Ischemic

penumbra

(拡散異常域) (灌流異常域)Ischemic penumbra (灌流異常域):PWI

再灌流により回復可能な(可逆的な)脳虚血状態

回復不可能な(非可逆的な)脳虚血状態

超急性期虚血性脳血管障害でのMRIによる画像診断の目的は、脳虚血状態(可逆的 ・非可逆的な脳組織障害)を診断し、治療につなげていくことにある

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ASPECTS-DWI (ASPECTS+W)

ASPECTS-DWI :Alberta Stroke Program Early CT Score-DWI

中大脳動脈(MCA)領域脳梗塞のMRI 判定基準として用いられる。DWI で、MCA

灌流領域を、視床を含む基底核レベルと脳室レベルの11カ所に関心領域を置き、陽性箇所を減点法で採点する。

ASIST-JAPAN の取り組みでは、11点満点で 8点以下をMCA 領域の 3分の1以上が虚血領域であると判定する。2)

※ 1)抜粋、 2)引用 ;森 勇樹,他(神戸頭部研究会):誌上講座① 続・脳細胞増殖講座④第4章脳梗塞 part-2 「Time is Brain!」.日本放射線技師会誌, vol.64 no.775,51-62,2017

図 ASPECTS-DWI 1)

ASPECTS

ASPECTS-DWI

C:尾状核 M2: Lat MCA

I :島皮質 M3: Post MCA

L:レンズ核 M4: Sup M1

IC:内包(膝,後脚のみ) M5: Sup M2

M1: Ant MCA M6: Sup M3

W:深部白質(放線冠)

Total score 0 ~ 10

Total score 0 ~ 11

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超急性期虚血性脳血管障害 当院での MRI検査から治療までの主な流れ

MRI 検査

放射線技師の対応

・担当医師 /担当看護師へ連絡(又は、その場MRI 室で画像確認)・撮像した画像データを順次サーバーへ転送・血管撮影(装置等)の準備

血管撮影 血栓回収術

1.5T装置:2 台と 3T装置:1 台の 3 台体制で対応

rt-PA静注療法

(適応外の場合)

(適応の場合)

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当院の頭部MRI 撮像時間

1.5T 撮像時間 (分:秒)

撮像法 通常バージョン 時間短縮バージョン(急患など) ※体動抑制

DWI 約 1:06 - 1:12 single-shot ※ Radial scan

MRA(TOF) 約 7:30 single or multi 約 3:30 約 1:05 single-slab

FLAIR 約 3:30 - 5:04 約 2:24 ※ Radial scan

T2* WI 約 2:33 - 3:38 約 1:21T2 WI 約 3:00 約 1:08 ※Radial scan、single-shot

PWI (ASL) 約 2:30 - 3:30 (1回)

3.0T 撮像時間 (分:秒)

撮像法 通常バージョン 時間短縮バージョン(急患など) ※体動抑制

DWI 2:28 multi-shot 1:03 single-shot ※ single-shot

MRA(TOF) 7:07 multi-slab 2:36 1:01 single-slab

FLAIR 3:12 1:40 ※ Radial scan

T2* WI 1:49 1:00T2 WI 1:44 0:44 ※Radial scan、single-shot

PWI (ASL) 1:40 (1回) 1:10 (1回)

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時間短縮バージョン 1.5T

FLAIR (2:24) T2* WI (1:21)DWI (1:12)

MRA 1slab (3:20)ADC map

Total 約 8分 30秒

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今回の主な内容

・ 頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例の PLD と FLAIR画像

でみられた intraarterial signal (血管内高信号)の関連性

ASL(arterial spin labeling )法によるMR灌流画像

・ ラベリング後からデータ収集までの待ち時間 Post label delay (PLD)の設定

超急性期虚血性脳血管障害のMRI診断について

撮像法および撮像条件の違いによる画像所見の特徴について

(当院で行った虚血性脳血管障害のMRI 検査から)

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FLAIR Intraarterial signal (IAS)

Flow void の消失血液の T1 短縮

血流遅延や閉塞部位の血管が脳脊髄液の中に高信号に描出される(血管内高信号)

・血管内の塞栓子、閉塞状態や停滞する血流を反映した所見・ DWI の高信号よりも早期に出現する

DWI (b:1000)

ADC mapFLAIR

1.5T

MRA

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T2* WI Ischemic vessel sign(misery perfusion)

T2* WI

3T

灌流低下域からの皮質静脈および深部静脈内のデオキシヘモグロビン濃度の上昇(磁化率変化)を反映し、静脈内の低信号が増強し拡張して見える

DWI FLAIR DWI

misery perfusion (貧困灌流)状態

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T2* WI Susceptibility vessel sign

症例A

T2* WI

SE-EPI※

T2(b:0)

1.5T

新鮮塞栓子に含まれる高濃度デオキシヘモグロビンによる磁化率変化を反映して低信号を示す

症例 B 症例 C

※Spin Echo系-EPI法明らかな低信号として描出されない

低信号を示す

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磁化率強調画像 SWI (susceptibility weighted image)

発症 4日目

1.5T 3T

超急性期脳虚血において、磁化率変化の鋭敏差を反映して、塞栓子や血栓

が明瞭な低信号として描出される (Susceptibility vessel sign)

発症後 2時間

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拡散強調画像 DWI (diffusion weighted image)

虚血による細胞性浮腫の早期検出

DWI

(b 値:1000sec/mm2)ADC map

FLAIR

MRA

1.5T

ADC(apparent diffusion coefficient):見かけの拡散係数

発症後 1時間

まだ淡い高信号

明らかな高信号

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DWI ADC map FLAIR MRA

1.5T

発症 2日目(血栓回収翌日)

発症後 1時間

ASPECTS-DWI : 8

T2*WI

出血性梗塞

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DWI “スライス厚”の違い 1.5T

6 mm b:1000 3 mm b:1000

DWI

ADC map

partial volume effect DWI

ADC map

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b 値が高い場合は毛細血管流(灌流)や T2 の影響が弱くなり、拡散強調の程度が強くなる

6 mm b:1000 3 mm b:1500

DWI “スライス厚 と b 値”の違い 1.5T

DWI

ADC map

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DWI “Direct Coronal 位相方向”の違い

ADC map

3T

症例 D 症例 E

DWI

RL phase SE-EPI multi-shot

(RESOLVE)

Reduction factor : 2

Slice thickness : 3mm

HF phase

Phase Phase

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DR:1.097

DR:1.053

1.5T

DR(distortion ratio)

= Ddwi / Dt2

DWI Direct Coronal 位相方向:HF or RL? (歪みの影響)

SE-EPI (single-shot) Slice thickness : 3mm Reduction factor(RF) : 2

T2 WI

Dt2

DWI

Phase

DdwiPhase

1.5T : 位相方向 HF (RL)

RL phase

HF phaseDdwiDt2

Page 24: 当院における虚血性脳血管障害の MRI 検査今回の主な内容 ・頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例のPLD とFLAIR 画像 でみられたintraarterial

T2 WI

3T SE-EPI Slice thickness : 3mm

DWI

DR:1.161

multi-shot (RESOLVE)

RF:2

DR:1.077

single-shotRF:3

DR:1.104

DR:1.268

Phase

Phase

3T : 位相方向 HF

RL phase

HF phase

DWI Direct Coronal 位相方向:HF or RL? (歪みの影響)

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※参考資料;「画像診断まとめ(遠隔画像診断.jp)」より

脳梗塞画像の経時的変化

Contrast白

細胞性浮腫

血管性浮腫

T2 WI

ADC

DWI

超急性期(24 時間以内)

急性期(1-7 日以内)

亜急性期(1-3 週間以内)

慢性期(1ヶ月以降)

等信号(psuedonormalization): 発症後 1-2週間前後

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DWI ADC pseudonormalization

FLAIR

1.5T

DWI:高信号 ADC: pseudonormalization

発症 7日目

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DWI DWI pseudonormalization

発症 3日目

FLAIR

3T

DWI:等信号pseudonormalization ADC:上昇

16日目

DWI:高信号 ADC:低下

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DWI T2 shine-through

・拡散の制限以外の現象(T2延長の影響)でDWIで高信号になる状態

・必ずADC map を確認

DWI:高信号(T2 shine-through)

3T

ADC:上昇

DWI:高信号 ADC:低下

発症 2日目

57日目

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MRA(TOF法) single slab と multi slab

1.5T

1 slab

3T

5 slab

TR: 31ms

Flip angle: 20°

TONE: 20%

TR: 24ms

Flip angle: 16°

TONE: 60%

Page 30: 当院における虚血性脳血管障害の MRI 検査今回の主な内容 ・頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例のPLD とFLAIR 画像 でみられたintraarterial

2D-ASL (Pulsed ASL) luxury perfusion(贅沢灌流) 1.5T

自然再開通

DWI ADC map

FLAIRASL(PLD:2.0s)

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発症 2日目(血栓回収翌日)

発症直後 (超急性期脳虚血) 1.5T

発症後 45分

MRAT2* WIDWI

ASPECTS-DWI : 11

FLAIR+ASL(PLD:2.0s)

FLAIR

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今回の主な内容

・ 頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例の PLD と FLAIR画像

でみられた intraarterial signal (血管内高信号)の関連性

ASL(arterial spin labeling )法によるMR灌流画像

・ ラベリング後からデータ収集までの待ち時間 Post label delay (PLD)の設定

超急性期虚血性脳血管障害のMRI診断について

撮像法および撮像条件の違いによる画像所見の特徴について

(当院で行った虚血性脳血管障害のMRI 検査から)

Page 33: 当院における虚血性脳血管障害の MRI 検査今回の主な内容 ・頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例のPLD とFLAIR 画像 でみられたintraarterial

ASL(Arterial spin labeling)法

・ラベル血液の到達時間(Transit time) の影響

・血液の T1値によるラベル効果の低下・動きの影響・金属等による磁化率の影響

脳組織に流入する動脈血の水分子のスピンを磁気的に標識(ラベリング)、内因性トレーサーとして利用し、脳の灌流画像を得ることができる非造影MRパフュージョン撮像法。

利点 ・非侵襲的 (造影剤不要、放射線被ばくなし)・繰り返し検査が可能

問題点

ラベリングなし(コントロール①)と ラベリングあり

(ラベル②)の 2回の撮像を行い、それらを差分する(①-②)ことで灌流画像を作成

コントロール①

反転パルス(ラベリング)

ラベル②

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当院の Arterial spin labeling (ASL)法

機種 ASL の種類 Dimension Base sequence

MAGNETOM

Spectra 3.0T

PASL(Pulsed ASL)

FAIR 法3D Turbo gradient spin echo

PASL(Pulsed ASL) 2D EPI

MAGNETOM

Avanto 1.5TPASL(Pulsed ASL) 2D EPI

Signa

Creator 1.5TpCASL

(Pulsed Continuous ASL)3D Fast spin echo

・ 静磁場強度上昇→ SNR向上

・ T1値延長→ ラベリングの持続

3.0T のメリット

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3D – ASL(Pulsed ASL) FAIR 法 原理

time

データ収集Inversion pulse

Post Label Delay(PLD)

PLD

血管

撮像領域

塞栓子

①スラブ選択的励起

③非選択的励起

②-④

②④

※参考資料;Siemens 「ASLマニュアル」

B0

Page 36: 当院における虚血性脳血管障害の MRI 検査今回の主な内容 ・頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例のPLD とFLAIR 画像 でみられたintraarterial

3D – ASL(FAIR 法) Post Label Delay(PLD)の設定

PLD

1.5 sec

1.8 sec

1.99 sec

2.2 sec

2.4 sec

2.6 sec

3T

右内頚動脈起始部の高度狭窄による Slow flow (血流遅延)

MRA(5 slab)

FLAIR明かな IAS

Page 37: 当院における虚血性脳血管障害の MRI 検査今回の主な内容 ・頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例のPLD とFLAIR 画像 でみられたintraarterial

3D – ASL(FAIR 法) Post label delay の設定

設定 PLD: 1.5s 1.8s 1.99s 2.2s 2.4s (2.51s)視覚評価(中大脳動脈領域)

(大脳基底核スライス)

3T

対象者

対象者 37名 (年代 : 20-80代)

Page 38: 当院における虚血性脳血管障害の MRI 検査今回の主な内容 ・頭頸部血管に中等度~高度狭窄が認められた症例のPLD とFLAIR 画像 でみられたintraarterial

3D-ASL FAIR法(PLD) と FLAIR(IAS) 3T

明らかな IAS あり

ごく一部にわずかに IAS あり

FLAIR 画像:Intra arterial signal (IAS)

対象者

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まとめ

② FLAIR 画像で明らかな Intraarterial signal (血管内高信号)が認められた症例

では、頭頸部血管に中等度~高度狭窄があり、 PLD 2.4 sec. 以上であった。

① PLD の目安

視覚評価では、頭頸部血管に中等度~高度狭窄がある場合で 2.3 sec. 以上、

ほぼ正常な場合で 2.0 sec. 前後が目安。

(※ただし、個人差があるので、あくまで目安!)

→ FLAIR 画像で明らかな IAS ありの場合、PLD 2.5 sec. 以上の設定

今回は、主に “各撮像法および撮像条件の違いによる画像所見の特徴”についてまとめた。

また、超急性期虚血性脳血管障害でのMRIによる画像診断の目的は、脳虚血状態(可逆的 ・非可逆的な脳組織障害)を診断し、治療につなげていくことにある。そのため、撮像法の選択や、撮像時間の短縮(撮像パラメーターの調整等)が重要となる。

3Tの 3D-ASL(FAIR)法による Post label delay (PLD)について

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参考資料・参考図書

・ 新版よくわかる脳MRI (第 2 版第 4 刷発行),青木茂樹他(編著者),秀潤社,2008

・ 新版これでわかる拡散MRI (第 2 版第 2 刷発行),青木茂樹他(編著者),秀潤社,2009

・ 画像診断まとめ (http://遠隔画像診断.jp/)

・ MRIによる超急性期脳梗塞の画像診断,日獨医報,第60巻第1号,10-30,2015

・ Siemens ASL マニュアル (ASL FAIR法)

・ 第4章脳梗塞 part-2 「Time is Brain!」.日本放射線技師会誌, vol.64 no.775,51-62,2017

・ 第3章脳梗塞 part-1」.日本放射線技師会誌, vol.64 no.773,83-95,2017