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Ⅴ.成熟血球と異常血球の形態
1)赤血球
2)白血球
(顆粒球・単球・リンパ球)
3)血小板
白血球の形態と顆粒の命名
16~23µm 12~15µm 13~18µm 12~16µm 13~17µm 9~16µm
前骨髄球 好中球 好塩基球 単球 リンパ球
アズール顆粒 好中性 アズール顆粒 好塩基性 好酸性
0.2~0.4µm 0.5~0.7µm 1~2µm 0.3~0.6µm 微細
アズール顆粒
好酸球
平野正美ほか:ビジュアル臨床血液j形態学改訂第2版.南江堂.2004をもとに整理したもの.
白血球形態
日本臨床衛生検査技師会案�
日本検査血液学会(JSLH)案�
核は2~5分葉し、核間はクロマチン構造がみえない核糸でつながる. クロマチンは粗鋼である. �直径12-15µm 核糸が確認できないものは桿状核球に分類する.
核は2~5分葉し、重なり合うこともある。核同士は細かい� クロマチン糸で相互につながる.�クロマチンは凝集塊状に. 核の最小幅部分が最大幅部分の1/3以下であること.�直径12-15µm
*共通: 核の重なりで分類不能は分葉核球へ同定する.�
核糸を認めたものは分葉核球に分類する.
NCCLS(米国臨床検査標準委員会)
桿状核球と分葉核球の分類基準案
*形態における細胞の標準化は遅れており、文献的にも少ない。わが国では、日本検査血液学会(JSLH.2001)形態標準化委員会が日本臨床検査技師会案をもとに、血液細胞の分類基準案について検討している。
末梢血における白血球の鑑別
1 6 5
4
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核の最小幅が最大幅の1/3以下を分葉核球(1)、 それ以上を桿状核球(2)とする.核糸が不明で 鑑別困難なものは分葉核球(3)になる.
単球(5)と桿状核球(6)は類似するが 5.はクロマチンは繊細で核内不整がみられる. 4.は分葉核球である.
大型リンパ球であるが、クロマチンは粗荒で淡青色の細胞質を有し、右はアズール顆粒 を認める.
豊富な細胞質をもつ単球であるが、 クロマチンは繊細で切れ込みを認め、 細胞質はくすんだ色をしている.
好中球の核形変化~左方推移と右方推移~
核形の左方移動 Shift to the left
Memo
Arnethは好中球の核分葉数によって5型に分類し 核形推移指数 を求めた。 各種疾患における好中球の大量動員の事態などを把握するために用いられたものである。それによるとⅠ型は1核の骨髄球・後骨髄球・桿状核球が、Ⅱ型は2分葉の好中球、Ⅲ型は3分葉、Ⅳ型は4分葉、Ⅴ型は5分葉以上とされ、健常人では4分葉は稀で、5分葉 以上は認めない とされる。 Arneth法に従った杉山の平均核数法によると基準値は1.96で1.5以下は重症とされる。
Ⅰ+2(Ⅱ)+3(Ⅲ)+4(Ⅳ)+5(V) Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ+Ⅳ+Ⅴ 平均核数= (Ⅰ~Ⅴは各核形の細胞数)
Arnethは1核および2核の増加を、またSchillingは1核細胞すなわち桿状核球、後骨髄球、骨髄球の増加を核形左方推移とよんだ。先天性では ペルゲルヒュエット(Pelger-Huet)核異常 にみられ、後天性では偽ペルゲルヒュエット核異常、肺炎や敗血症などの重篤な感染症、炎症などにみられる。
核形の右方移動 Shift to the right
Schillingは3核以上の増加を、Schillingは2核~5核以上と特その分葉の多いもの (4核・5核)の増加を核形右方移動とよんだ。悪性貧血などの巨赤芽球性貧血にみられる。
金井正光・奥村伸生・川合陽子:臨床検査提要.金原出版.第31版.2002
‥
好中球の細胞質変化
金井正光・奥村伸生・川合陽子:臨床検査提要.金原出版.第31版.2002
Memo
好中球は敗血症や肺炎などの強い炎症がある場合は核形変化のみならず 細胞質までに変化をもたらす。
1. 白血球抵抗の減退 破壊しやすくなる。 2. 染色性の変化 細胞質の染色性に変化が生じ、好酸性であるべき細胞が好塩基性を示したり、あるいは 斑点状に塩基性に染まる デーレ(Dohle)小体 をもつことがある。 3. 顆粒の変化 骨髄球以下の成熟傾向の細胞の細胞質内に比較的粗大な顆粒を認めることがある。 Nageliはこれを 中毒性顆粒(toxic granule) と名づけた。これは前骨髄球にもともと存在 するアズール顆粒(一次顆粒・非特異顆粒)が残存したまま細胞が分化し末梢血へ移行 したものとされる。これに反し、好中性顆粒は高度の炎症では減少または消失される。 中毒性顆粒の証明にはMommsen-Freyfeld法がある。 pH5.4の酢酸緩衝液でギムザ希釈液を調整し、1時間染色すると通常の好中性顆粒は 染まらない。中毒性顆粒に類似するAlder-Reilly の顆粒異常は、好中球に粗大な紫褐色 顆粒を認める先天性顆粒異常である。 また、Chediak-Higashi の顆粒異常も遺伝性で、まれではあるが認識しておく必要がある。 次頁に紹介する。
’
‥
白血球の形態異常
遺伝性核過分葉症 常染色体優性遺伝 4分葉核好中球優位 なし 巨赤芽球性貧血、MDS 敗血症etc Pelger-Huet異常 常染色体優性遺伝 2分葉止まり なし 白血病、MDS etc
May-Hegglin異常 常染色体優性遺伝 大型のデーレ小体 なし 重症感染症etc
Jordan異常 常染色体優性遺伝 大小の脂肪空胞 なし 進行性筋ジフトロフイー症 (中性脂肪) に合併、敗血症etc 黒内障白痴 ‥‥ リンパ球に脂肪空胞 ‥‥ ガングリオシドの代謝異常 Alder-Reilly異常 常染色体劣性遺伝 大型のアズール顆粒 なし 重症感染症etc
Chediak-Higashi 常染色体劣性遺伝 大型の顆粒 殺菌能低下 なし 異常
中野優,外山圭助ほか:図解血球-白血球.82-83,中外医学社.1994
白血球の形態異常には、先天性のものと後天性のものがあり、後天性には敗血症やMDSなどでみられる。先天性の形態異常を、核の異常、細胞質の異常、顆粒の異常に分けて提示する。
ペルゲルヒュエット
メイ・ヘグリン
ジョルダン
エルダーレイリー
チエヂアック東
疾患名 遺伝性 形態異常 機能異常 (後天的)要因
核異常
細胞質異常
顆粒異常
Memo
‥
先天性にみられる形態異常を 核の異常、細胞質の異常、顆粒の異常から提示する。
Pelger-Huet異常 ‥ May-Hegglin異常 Alder-Reilly異常*
Jordan異常 Chediak-Higashi異常 ’ May-Hegglin異常
白血球・血小板の形態異常
* A Victor Hoffbrand et al:Color Atlas Clinical Hematology.1994
核異常 細胞質異常 顆粒異常
細胞質異常 顆粒異常 巨大血小板
リンパ球系細胞の分類基準案
リンパ球 直径9~16µm, 細胞質は比較的広いものから狭いものまである. 色調は淡青色から青色を呈する. なお, アズール顆粒を認める場合が ある. 核は類円形で, 核クロマチンは集塊を形成しクロマチン構造が 明らかでない.
異型 直径16µm(赤血球直径のおよそ2倍程度)以上で細胞質は比較的広い. リンパ球 色調はリンパ球に 比較し好塩基性(青色)が強い. なお, アズール顆粒, 空胞を認める場合がある. 核は類円形, 時に変形する. 核クロマチンは濃縮しているがリンパ球に近いものからパラクロマチン の認められるものまである. 核小体が認められるものもある. 判定が困難な場合はリンパ球との相違点を記載する.
分類不能 異常な形態を示すリンパ球. 形態を記述する.
*細胞分類, 鑑別にあたっては, 標本全体を弱拡大で観察し, その標本における 細胞の分化・成熟の概要を理解した上で行う. 分類不能細胞は従来の異常リンパ球である。
核クロマチンは濃染して塊状~結節状.明瞭なパラクロマチン領域 を認め核小体を認めることもある.(米国臨床検査標準委員会:NCCLS.1992)
リンパ球 変異型
(日本検査血液学会標準化委員会.2003)
正常型に比べると”異常にみえる”と
いう非腫瘍性の細胞構造を呈するもの
正常、反応性の形態変化を超越した
‘まさしく異常’の細胞構造を呈するもの
多彩様式 単一様式
①大型>16µm ②N/C低 ③核網粗荒
④強好塩基性
①N/C高 ④核小体 ②核形不整 ⑤突起
③核網粗網 ⑥空胞
反応性変化 腫瘍性変化
正常リンパ球 異型リンパ球 異常リンパ球
分類不能細胞
リンパ球の形態所見 リンパ球は正常リンパ球、反応性リンパ球 異常リンパ球の特徴をしっかり捉えて 診断に結びつけることである。 多彩とはバリエーションがあり、単一とは 同形のものが増加することである。
リンパ球
リンパ球の形態を整理しましょう!(末梢血) MG.×1000
青信号の正常リンパ球(上段)、黄色信号の異型リンパ球(中段)、赤信号の異常リンパ球(下段)
伝染性単核球症 Infectious mononucleosis (IM) Memo
EBウイルス(Epstein-Barr virus) が咽頭のBリンパ組織(B細胞)に感染し発症する。臨床症状としては、発熱(38℃以上)、肝脾腫、リンパ節腫脹など悪性の所見をとるが末梢血では 異型リンパ球 が優位である。発症の原因として、小児では不顕性感染で、成人(若年者)ではkissingが考えられる。経過とともに回復する。
末梢血 ①白血球の増加 ②異型リンパ球の出現(16µm以上、クロマチンは粗鋼、好塩基性の細胞質)
生化学検査 AST・ ALT・ALP・LDHの上昇
血清学検査 ①ポールバンネル(Paul-Bunnel)陽性(本邦では陰性例が多いとされる) ②急性期では 抗VCA-IgM抗体 が高値を示す.遅れて(回復期) 抗VCA-IgG抗体 が 陽性になり、さらに遅れて治癒後に 抗EBNA抗体 が陽性になり、これは感染後生涯 陽性であり過去の感染を示唆する指標となる.
治療 ①基本的に安静と対症療法 ②細菌感染合併症にはペニシリン系以外の 抗菌薬が投与される. (ペニシリン系は皮疹を引き起こすため 禁忌とされる)
5歳未満の例
抗原(ウイルス)に刺激を受けたリンパ球は大型となり好塩基性の細胞質が特徴的である。
感染経路 EBウイルスはB細胞のCD21を介し感染すると 感染B細胞は増殖し、反応性にT細胞が増殖し リンパ節が腫脹する. B細胞上のEBウイルス抗原 を認識した細胞傷害性T細胞やNK細胞が増殖し 異型リンパ球として出現しB細胞を攻撃して強い 炎症反応を引き起こす.形質細胞によってEBウイルス抗原に対する抗体が産生される.
異型リンパ球の創始者 ! Coffee brake
Pappenheimの高弟Downeyは異型リンパ球を3型に分類した。
Ⅰ型-異型リンパ球 核はうねって単球に類似するもの monocyte-like lymphocyte Ⅱ型-異型リンパ球 核は偏在し形質細胞に類似するもの plasmocyte-like lymphocyte Ⅲ型-異型リンパ球 核小体を有し核網はやや繊細なもの lymphoblast-like lymphocyte
H. Downey (米国) 1877‐1957
実際の分類では、Ⅰ~Ⅲ型を詳細に分けるよりも varietyに富んでいることに注目することが重要である。
多くはEBウイルスに感染した場合に出現しやすいが サイトメガロウイルスやA型肝炎などの他のウイルス 性疾患でも遭遇する。
Ⅰ型
Ⅱ型
Ⅲ型
関連項目 基準となるもの 記載報告
核の形態異常 0.5%以上 (+)
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顆粒の減少, 消失,分布異常 認めれば
中毒性顆粒 紫褐色の粗大顆粒
空胞変性 5%以上
封入体, 貪食 認めれば
左方移動 桿状核球の優位, 幼若顆粒球の出現 右方移動
日臨技:血液形態検査に関する勧告法.1996を一部改変
過分葉(5~6分葉以上)を認めれば 過分葉 好中球やそれ以外の細胞に認めれば
顆粒リンパ球 原則として3個以上の顆粒を有するリンパ球 (2,000/µl以上)
(+)
(+)
白血球形態異常の判定基準案