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2016.7.15 高血圧患者と非高血圧患者における尿中ナトリウム排泄量と心血管イベントの関係4つのstudyのデータのプール解析

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7月 15日 抄読会

高血圧患者と非高血圧患者における尿中ナトリウム排泄量と心血管イベントの関係4つの Studyのデータのプール解析

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背景・複数の前向きコホート研究においてナトリウム摂取量と心血管疾患および死亡率との関係は U字カーブの関係を示し、ナトリウムの過剰摂取と過少摂取は共にそれらのリスクを高めるということが報告されている。・ナトリウム摂取が血圧の上昇と関係するという点、そしてこの関係が高血圧患者の方が非高血圧患者よりも急激であるという点から、高血圧患者と非高血圧患者とではナトリウム摂取量と心血管疾患のアウトカムの関係は異なってくるのではないかと仮定した。

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背景・この解析では、ナトリウム摂取量と心血管疾患イベントおよび全死因死亡率との間の関係がベースラインにおける高血圧症の有無で変化するかどうかを調査した。・また、実際に観測されたナトリウム摂取量と臨床イベントとの関連性がどのようなパターンを示すかを、ナトリウム摂取量と血圧との間の関係から予測してモデリングされた予測ハザード比と比較した。

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方法・ PubMedで 1960年 1月 1日から 2016年 4月 1日までに出版された論文をキーワード検索し、今回の研究目的にかなうような論文をタイトルやアブストラクトでスクリーニングしたり参照文献を参考にしたりして収集した。・その結果、 6大陸 49か国の人種を含む以下の 4つの大きな前向き研究から計 133118人のサンプルを抽出(高血圧患者 63559人、非高血圧患者 69559人)

PURE studyEPIDREAM studyONTARGET studyTRANSCEND study

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方法・ PURE study ・現在も継続している大規模な疫学コホート研究 ・ナトリウムの尿中排泄量と心血管イベントおよび死亡との関   係を検討 ・ 5大陸 17か国の 628のコミュニティから所得にかかわらず 156434人( 35歳~ 70歳)が登録されている ⇒本解析には 101511人のサンプルを抽出

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方法・ EPIDREAM study ・ DREAM trialへの適性をスクリーニングする試験 ・ DREAMは 2型糖尿病の高リスク群に対しラミプリル( 15mg/day)とプラセボの比較、およびロシグリタゾン( 8mg/day)とプラセボの比較を行う無作為二重盲検試験 ・ 18歳~ 85歳までの 17453人が登録されている ⇒ EPIDREAM中に心血管イベントを生じた 478人とイベントを起こさなかった 2372人の計 2850人のサンプルを抽出

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方法・ ONTARGET study ・ 55歳以上の血管疾患患者およびハイリスクの糖尿病患者の計

25620人が対象 ・ラミプリル( 10mg/day)群、テルミサルタン( 80mg/day)群、ラミプリル( 10mg/day)とテルミサルタン( 80mg/day)の併用群に分けた無作為二重盲検並行群間試験・ TRANSCEND study ・ ACE阻害薬の投与ができない合併症を有する糖尿病患者 5926人が対象 ・テルミサルタン( 80mg/day)群とプラセボ群との間の無作為化比較対象試験※両試験から計 28757人のサンプルが抽出

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方法・川崎の式を用いて空腹時早朝尿から 24時間尿中ナトリウム排泄量を推定 ⇒この数値を 1日のナトリウム摂取量の代替とした・早朝尿検体から得られた推定ナトリウム排泄量が実際の24時間蓄尿から直接測定したナトリウム排泄量と良い相関を示すことは確認されている。 高血圧患者では相関係数 0.70( 95%CI : 0.61 -0.77) 非高血圧患者では相関係数 0.71( 95%CI : 0.61 -0.78)

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方法・プライマリアウトカムは死亡および心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心不全)の発生の複合アウトカムとした。・登録者に関しては尿中ナトリウム排泄量 1g/day 刻みでグループ分けした。・ただし、極端なナトリウム過少・過多を認める群はかなりの少数層となったため、摂取量 3g/day 未満と 7g/day以上で切り捨ておよび切り上げを行った。・尿中ナトリウム排泄量で分けられた各群において、高血圧患者群、非高血圧患者群、全サンプル群に分けてプライマリアウトカム、major CVD( cardiovascular disease) events、死亡率のハザード比を計算した。

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方法・また、実際に観測されたナトリウム排泄量と収縮期血圧との間の関係、および収縮期血圧と心血管イベントとの間の関係の両者を利用して、ナトリウム排泄量の変化による心血管イベントのリスクの変化をハザード比にて推定した。※ただし、もともと心血管疾患の既往のある者は除く・上記の推定ハザード比と、実際に観測されたナトリウム排泄量と臨床アウトカム(今回でいうと心血管イベントのリスク)のハザード比との間に一貫性があるかどうかを検討した。

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結果・平均フォローアップ期間は 4.2年( IQR : 3.0-5.0)・プライマリアウトカムを認めた患者は以下の通り ・高血圧患者: 6835人(高血圧患者の 11%) ・非高血圧患者: 3021人(非高血圧患者の 4%)・ナトリウム排泄量が 4~ 5g/dayの人たちでプライマリアウトカムのリスクが最も低かった。⇒4~ 5g/day群を参照群として扱って各群のハザード比を計算した( Table参照)

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結果サンプル全体

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結果非高血圧患者

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結果高血圧患者

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結果高血圧患者 非高血圧患者Figure 1 :ナトリウム排泄量とアウトカムのリスクとの関係

ハザード比

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結果●高血圧患者に関して ・ナトリウム排泄量と心血管イベントおよび死亡率との間に明らかな U字カーブの関係を認めた。 ・multivariable analysisではナトリウム排泄量が 7g/dayより多い群と 3g/day 未満の群で複合アウトカムのリスクの有意な上昇を認めた。   7g/dayより多い群: HR 1.23 ( 95%CI : 1.11-1.37、

p<0.0001)   3g/day 未満の群: HR 1.34( 95%CI : 1.23-1.47、 p<0.0001)

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結果●非高血圧患者に関して ・ナトリウム排泄量と心血管イベントおよび死亡率との間に明らかな U字カーブの関係は認めなかった。 ・multivariable analysisでは 3g/day 未満の群では複合アウトカムのリスクの有意な上昇を認めた。一方で、ナトリウム排泄量が 7g/dayより多い群では複合アウトカムの有意な上昇は認められなかった。   7g/dayより多い群: HR 0.90 ( 95%CI : 0.76-1.08、

p<0.2547)   3g/day 未満の群: HR 1.26( 95%CI : 1.10-1.45、 p=0.0011)

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結果Figure 2 :ナトリウム排泄量別の血圧の平均( 95%CI)

収縮期血圧

拡張期血圧

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結果Figure 3 :心血管疾患の既往の無い人における、ナトリウム排泄量と心血管イベントのリスクの関係

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結果・当初はナトリウム排泄量の上昇(=ナトリウム摂取量の上昇)はそれ単独で収縮期血圧の増加と関連するため( Figure 2参照)、ナトリウム摂取量が増加すれば心血管イベントのリスクは段階的に上昇していくと想定していた。( Figure 3の青線グラフ)・しかし、実際に観測された HR( Figure 3の赤線グラフ)はこのように推定したmodeled HRとは異なる値の取り方をした。この不一致はナトリウム摂取量がより少ない群において顕著である。

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考察・ナトリウム排泄量と複合アウトカムとの間の関係に関して、高血圧患者と非高血圧患者とで大きな不均一性が生じることが分かった。・高血圧患者及び非高血圧患者いずれにおいても 24時間尿中ナトリウム排泄量が 3g/day 未満の人は心血管イベントや死亡のリスクは増加する。・一方で、ナトリウム排泄量が多くなると心血管疾患のリスクが上昇するという関連性が認められたのは高血圧患者の場合のみである。

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考察・今回の解析により、血圧の状態にかかわらずナトリウム摂取量が少なすぎると( <3g/day)、心血管疾患や死亡率のリスクが上昇するということが示された。・このことから、ナトリウムの摂取に関してはこれ以上少なくすると安全とは言えなくなるというような下限値が存在することが示唆される。

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考察・今回の解析の結果をまとめると以下のようになる。 ・ナトリウム摂取過少は血圧の状態にかかわらず有意に心血管イベントと死亡のリスクを増加させる ・ナトリウム摂取過剰は高血圧患者でのみ優位に心血管イベントと死亡のリスクを増加させる⇒すなわち塩分制限の最適なターゲットは高血圧かつナトリウム摂取量過多の人である・今回の解析の母集団に関しては高血圧でありかつナトリウム摂取量が 6g/dayを超えている人は 10% 程度しかいなかった。⇒多くの国では血圧の状態にかかわらずどんな人にも塩分制限を推奨しているが、今回の結果はその妥当性に疑問を投げかける結果となった。

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考察・今回、ナトリウム排泄量と血圧との関係および血圧と心血管イベントのリスクの関係から推定したナトリウム排泄量と心血管イベントのリスクの関係は、実際に観測された関係とは食い違う結果となった( Figure 3参照)。・これはナトリウム排泄量(=摂取量)の変化による心血管イベントに対する影響が、血圧の関係しない機序とも関係している可能性を示唆している。

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考察・例えば、複数の研究においてレニンやアルドステロン、カテコラミンの上昇は心血管イベントや死亡率の上昇と関連していると報告されている。・特にナトリウム摂取量が 4g/day 未満だと、レニンシステムに影響が生じやすくなるという報告があることを鑑みると、ナトリウム摂取量の変化が単に血圧を変化させるだけで心血管イベントのリスクの変化をもたらすと考えることはできないということが分かるだろう。・結局のところ、実際にナトリウム摂取量がどれほど心血管イベントのリスクに影響を与えるかは様々なナトリウム摂取量における大規模な RCTを行わない限りは分からない。

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結語・ナトリウムの摂取量が適切な量よりも少ないと高血圧の有無にかかわらず臨床アウトカムのリスクが増加する一方で、ナトリウム摂取量が適切な量よりも多くても高血圧患者でのみでしかアウトカムのリスクは上昇しない。・このことから、塩分制限の最も良い対象は高血圧の既往がありかつ塩分摂取量の多い者であるということが示された。・塩分制限により逆に有害事象を来しうるという事実を鑑みると、塩分制限は高血圧既往がありかつ塩分摂取量の多い者のみを対象として行っていくことが賢明であるといえよう。