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事例を通して考える
感染拡大防止対策
平成26年度感染症対策特別講座
~感染性胃腸炎(ノロウイルス感染症)を中心に~
発症報告施設数 (再) *集団発生施設
こども関係施設 102 39(38.2%)
高齢者関係施設 38 18(47.4%)
障害者関係施設 3 1(33.3%)
学校・園 19 10(52.6%)
病院 11 5(45.5%)
その他 1 0(0.0%)
計 174 73(42.0%)
感染性胃腸炎発症報告施設(平成25年度)
神戸モデル感染症発生連絡票より
*集団発生とは1週間に10人以上もしくは20人以上発生
月別発症報告施設(平成25年度)
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
神戸モデル感染症発生連絡票より
感染性胃腸炎発症報告より(平成25年度)
☆ノロウイルス発症から終息までの期間
・ 平均9.7日 44日かかった施設もある
・ 感染拡大を防止できた施設では、概ね5日以内で
終息している
☆発症者の割合
利用者の53.8%が発症した施設あり
☆集団発生
職員が複数以上発生している施設が30施設あり
Ⅰ事例 感染症とは思わなかった 1 A氏は、職員
出勤後、下痢便が1回あったが、体調も普段と変わらないの
で、配膳や食事介助をいつもどおり行った。
2 高齢者施設で
入居者は、普段便秘気味だが、おむつ交換時水様便だった。
緩下剤によるものと思い、カートにかけた袋に汚染したオムツ
を入れたまま他の利用者を巡回した。
3 保育施設で
0歳児が床におう吐。噴射するようなおう吐ではなく、機嫌も
いいので、おう吐物は水拭きだけで処理した。
あなたは、おう吐や下痢があるとき
どのような連絡をしていますか
自分におう吐や下痢があるとき
利用者でおう吐や下痢を見つけたとき
Ⅱ 事例 感染症が発生していたことを知らない
1 高齢者施設で
新人職員は、研修のため、朝の申し送りに参加できず 昨日おう吐した入居者がいることを知らなかった。介護中におう吐者があり、慌てて素手で処理した。
2 保育施設で
今朝、おう吐で休むという連絡が8人からあった。この数日おう吐や下痢の子どもがいたとは聞いていない。
もう一度各クラスの健康状態を確認したところ、2日前に廊下でおう吐した児がいたことがわかった。
感染症(疑い)の発生をどのように
共有していますか
職員間での発生情報の共有
家族などへの連絡
感染症対策のポイント1
☆探知を早く
・一人のおう吐者からでも簡単に集団発生
は起こる
・職員、利用者の日ごろの健康観察
☆職員の共通認識(職員全体に周知)
・発生状況の確認と情報の共有
・見通しと方向性を共有⇒より適切に速く対応
(重要事項、進み具合を掲示)
意識の共有
平常時:利用者の健康観察
施設利用時
感染症の既往歴・予防接種歴の把握
日常
健康状態を注意深く観察・記録 顔色・表情、体温、食欲、便など
いつもと違うと
感じたら要注意
経過記録表 No 氏名 部屋 発症日時 2/3 2/4 2/5
2/6 2/7 2/8 備 考
1 A 202 2/3 13時 ■△ ■ 食堂でおう吐
2 B 205 2/5 8時 ■ ■ 食堂で隣席
3 C 203 2/5 10時 ■△ △ 食堂で隣席
4 D 206 2/5 10時 △ △
5 E 210 2/5 12時 ■△ ■△ G 氏が介護
6 F 212 2/5 13時 △○ △ G 氏が介護
7 G 職員 2/5 15時 ■ ■ A氏のおう吐物処理
おう吐■ 下痢△ 発熱○
拡大防止対策が有効か
発生状況から判断
・感染時期が1度だけで、流行 は収まりつつある
・感染が継続している。感染拡大は防止に注意が必要
・二次感染を起こしている
施設内での緊急ミーティング
情報共有
発生状況の確認
感染拡大防止策の検討
課題の
共通認識
関係者、関係機関への連絡
施設内 管理者 嘱託医師等
感染拡大防止 施設の運営支援・助言 関係機関への報告
原因究明の調査 地域の感染拡大防止 医療・検査体制の確保
施設の所管課
行政 (区のあんしん すこやか係)
発生連絡(神戸モデル)地域連携・早期探知
感染症発生連絡票 同じ症状の人(下痢、おう吐、発熱、発疹)が 一週間に2名以上発生
感染拡大が心配
気になる症状の人がいる
気 軽 に連絡を
発生連絡票
Ⅲ事例 手を介した感染の可能性がある
1 高齢者施設で
発症した人とは接点がなく、個室から出ていない、要介護の人が発症している。
職員の介助を要することから、職員の手指を介しての感染の可能性がある。
2 保育施設で
もちつきに健康保菌者が存在し、不十分な手洗いでもちを丸め、参加者・家族が多数発症した。
手を介した感染を防ぐためにどのように
していますか
いつ、どんな時に手洗いをしているか
手洗いでこころがけていること
感染症対策のポイント2
☆感染症対策で最も重要な手洗い
「ヒト-ヒト感染」の経路となるのが手指
☆手洗いのタイミング
・トイレの後(2度手洗い)
・嘔吐物・排泄物などを処理した時(2度手洗い)
・ゴミなど汚れものを触ったとき
・食品を取り扱う前
・手袋着用の前後
利用者ー外出後,排泄の後,調理や食事の前
自分も利用者も守る手洗い
効果的な手洗い
すすぎ時間と除菌
すすぎ時間 手洗い後の細菌数
15秒 1/4~1/12
30秒 1/60~1/600
60秒 1/500~1/1000
2度洗いが効果的
☆手洗いは石けんで汚れ・菌をしっかり浮かす
☆すすぎ方がポイント
石けん洗いの手順を繰り返し、汚れ・菌を落とす
液体石けん
継ぎ足し使用はしない
流水で軽く手を洗い、
石けんをよく泡立てる
手洗い時の注意
指輪をはずす 爪は短く切る
①手のひら ②手の甲 ③指先・ツメの間
④指の間 ⑤親指と手のひら ⑥手首
手洗いの手順
☆汚れが残りやすいところを注意して洗う
指先 指の間 親指の周り 手首 手のしわ
手洗い実践の工夫
☆歌にあわせて手を洗う
なじみのある「チューリップ」や「もしもしかめよ」 に合わせて洗う
☆手洗いを現場でチェック
手洗いチェッカーで確認
☆手洗いの標語、イラストを貼る
手洗いが感染予防の第一歩
手洗いはひとりひとりの心がけ など
☆手洗い場に手洗い手順を掲示
洗い残しは白く光る
◆十分な量(3ml)のアルコールを使用
◆流水での手洗いの後に使用する場合は、
水分をふき取ってから使用すること
◆15秒以上かけて乾燥するまでしっかりと
すり込む
アルコール手指消毒
手に目に見える汚れがない時は
アルコール手指消毒が有効
ノロウイルスの場合は、消毒効果が
不十分
アルコール手指消毒の方法
Ⅳ事例 おう吐物や便の処理が確実でない
1 おう吐物処理をした職員が、発症している。
処理時に手袋、マスク、ガウンを着用していな
かった。
2 廊下や食堂など共用の場所でおう吐があり、
その後、その場所を利用した人が、発症して
いる。
おう吐物や便の処理では、どのような
ことに気をつけていますか
処理時に自分が感染しないために
施設内での二次感染を防ぐために
Ⅴ事例 確実な消毒ができていない
1 おう吐物や便の処理に、濃度が低い次亜塩素酸を
使用した。
2 いつ希釈したかわからない、消毒液を使用した。
3 おう吐物の処理やトイレ周りに使う消毒を少量の消毒液ですませた。
4 汚染場所にスプレー消毒液を拭きかけていた。
感染症発生時の消毒はどのようにして
いますか
おう吐物・便で汚染されたところの消毒
手が触れるところの消毒
感染症対策のポイント3
☆おう吐物・排泄物処理の三原則
すぐに拭き取る 乾燥させない 消毒する
半径2m
模擬おう吐物
模擬水様便
広範囲に消毒が必要
安全に確実に
処理
洋式便器広範囲に臀部汚染
おう吐物・下痢便処理セット
消毒薬
マスク
ビニール袋
使い捨てガウン
ペーパータオル ティッシュペーパー
使い捨て手袋
ペットボトル
すぐ使えるように準備
おう吐物・下痢便の処理
高齢者入所施設等感染対策ネットワーク会議「嘔吐物の処理方法」手順書2より
使い捨て手袋(2枚着用) マスク ガウン(エプロン)着用
0.1%次亜塩素酸ナトリウム 500mlペットボトルにキャップ2杯
おう吐物処理者の防護は万全か
消毒薬の準備は
マスクのつけ方
注意!マスクは鼻・頬・あごをしっかり覆う
処理の前におう吐物を覆う
外側から内側へ寄せ
ながら包み込む 処理者が汚染を広げない
危険 飛散したおう吐物を靴で踏んだり、ひざや手指をついてしまうと汚染を広げる
必ず、手袋を着用
おう吐物の拭き取り時の注意
おう吐物の処理後
靴底の消毒
消毒液に浸したペーパータオル
を踏み、靴底を消毒する
靴底が汚染されている可能性あり
処理物を密封
処理したペーパータオルは
ビニール袋に捨て消毒液を
入れて密封する
消毒薬使用上の注意
使用する温度が低ければ殺菌力は落ちる
(冬季は使用する温度に気をつける) 温度
消毒する対象により効果的な濃度が異なる 濃度
消毒薬によって作用時間が違う 時間
方法 消毒液に浸けるか消毒液で拭く
対象 人に使用できるものとできないものがある
ノロウイルスの消毒は
次亜塩素酸ナトリウムが有効 使用時のポイント 消毒前に濃度の確認・確保
消毒する物・場所の汚れを取り除いてから消毒
☆使用直前に希釈する
☆見た目に変化がなくても
濃度は低下
保管は冷暗所
酸性の洗剤とまぜると
危険
こんな行為は要注意! ☆トイレで排泄介助後、手袋をつけたまま車イスを押したり、他の介助をする。
☆使用した手袋が汚れていないので、ポケットに入れて再利用。
☆手袋を着用しているため、手洗いを省いたり、簡単にする。
☆処理時に着用していたエプロン(作業着)
でそのまま勤務を続ける。
☆おむつ交換で陰部洗浄のシャワーボトルを共用使用する。
環境面も見直そう!
☆トイレで共用のタオル
☆汚物入れにふたがない
☆清潔区域と汚染区域が交差
☆誰でもが入れる調理室
☆おう吐物処理セットが補充されていない
☆おう吐物処理セットが各フロアにない
☆トイレの前などに次亜塩素酸を含ませたマットを長時間敷きっぱなし
ノロウイルス迅速検査は
100%陰性ではない!
☆ノロウイルス迅速検査が陰性で、感染症対
策をとらなかった場合、感染拡大する可能性
あり
☆迅速検査はウイルス遺伝子検査に比べ
ウイルスの検出感度 1/10,000~100,000
≪参考≫発症した職員の休業期間
☆ 少なくとも下痢/おう吐等の症状が消失するまで
⇒ 症状消失後も3~5日は就業制限したり、食品を扱う
部門から外れたり、トイレ後の手洗いを入念にするなどの対策をしたほうがよいでしょう。
「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」
(平成25年3月)より
≪参考≫ 医療機関・社会福祉施設向け(米国)
⇒ 症状消失後48時間を経過するまで
意識が変われば行動が変わる
行動が変われば習慣が変わる
ひとりひとりの意識が変わり、
感染防止の行動が習慣化されれば、
感染症の発生を早期探知し、
感染症の拡大は防止できる
ご清聴ありがとうございました