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製品安全センター 電源コード溶融痕の内部に生じる 気泡の三次元解析(第一報) 試料銅線:0.26mm×1電圧:AC100V 負荷電流:15A(設定値) 作製サンプル数:室温、火炎中 各5サンプル <ブンゼンバーナ> <熱電対> 火炎中の温度測定 <電圧測定> <電流プローブ> 溶断モニター <負荷装置> <試料銅線> <ブレーカ> 試料:VFFHVFF 0.75mm 2 加熱源:ブンゼンバーナ(拡散炎) 電圧:AC100V 作製サンプル数: VFFHVFF 5サンプル <試料コード> <ブンゼンバーナ> <電流プローブ +オシロスコープ> 短絡電流波形の記録 <ブレーカ> <データロガー> 火炎中の温度測定、電流プ ローブによる短絡時点の記録 試料:VFFHVFF 0.75mm 2 試料のほぼ中央に、カッターで半断線部分をつくったコード に断続的に通電し、電流負荷によって発熱させ、コー ドを短 絡させる。 電圧:AC100V 負荷電流:1415A 45on/15off の繰り返し 実験回数: VFFHVFF 10サンプル <電流プローブ +オシロスコープ> 短絡電流波形の記録 <負荷装置> <試料コード> 実験前の半断線状態(例) <外観 <軟X線透 視像> <ブレーカ> <データロガー> 熱電対による半断線部分の 温度測定、 短絡時点の記録 <タイマー> コード短絡痕については、これまでに断面組織に着目した手法を開発し、事故調査において活用してきたが、コー ドの種類、短絡痕の状態から解析不能となるケースが少なからずあった。 各種書籍や報文で紹介されている気泡に着目し、様々な条件により作製した溶融痕の内部に生じた気泡の特徴をX 線CTにより三次元的に捉えて解析し、作製条件との関係を比較、整理することにより、発火元特定のための解析手 法として活用が可能か検討する。 コード短絡痕については、これまでに断面組織に着目した手法を開発し、事故調査において活用してきたが、コー ドの種類、短絡痕の状態から解析不能となるケースが少なからずあった。 各種書籍や報文で紹介されている気泡に着目し、様々な条件により作製した溶融痕の内部に生じた気泡の特徴をX 線CTにより三次元的に捉えて解析し、作製条件との関係を比較、整理することにより、発火元特定のための解析手 法として活用が可能か検討する。 (1) 室温雰囲気下及び火炎中での過電流溶断サンプル ~温度、火炎の有無による影響 各種溶融痕の作製実験 データロガー (2) ブンゼンバーナ火炎中での短絡痕(二次痕) (3) 半断線状態のコードに電流を印加して短絡させたサンプル (一次痕) 溶断時の周囲温度 は約10005点中1点のみ見ら れた球形の溶融痕 (1) 室温雰囲気下及び火炎中での過電流溶断サンプル VFFサンプル2短絡までの加熱時間 57短絡時の温度 710短絡電流の最大値 284A 負荷側 電源側 HVFFサンプル1短絡までの加熱時間 51短絡時の温度 920HVFFサンプル4短絡までの加熱時間 292短絡時の温度 760短絡電流の最大値 268A 短絡電流の最大値 268A 負荷側 電源側 負荷側 電源側 VFFサンプル5短絡までの加熱時間 142短絡時の温度 470短絡電流の最大値 288A 負荷側 電源側 0 0 - 300 - 200 - 100 0 100 200 300 400 0 50 100 1 50 2 00 25 0 300 350 400 電流値 (A) 時間( msec) - - - 0 0 - 300 - 200 - 100 0 100 200 300 0 50 100 1 50 200 2 50 300 3 50 400 時間( msec) - - - 0 0 - 300 - 200 - 100 0 100 200 300 0 50 100 1 50 200 2 50 300 3 50 400 時間(msec0 0 A- 300 - 200 - 100 0 100 200 300 0 50 100 1 50 2 00 25 0 300 350 400 電流値 (A時間(ms e c) 5点中3点ではく さび形の溶融痕 XX外観 外観 室温雰囲気下で溶断させたサンプル (例) ブンゼンバーナの火炎に晒した状態で 溶断させたサンプル(例) (2)ブンゼンバーナ加熱による短絡痕サンプル(例) 痕跡の観察 (3)半断線による短絡痕サンプル(例) VFF 3実験時間 :約203時間 短絡直前温度 195負荷側 電源側 短絡電流の 最大値:232A 短絡電流の 最大値:228A 0 0 -30 0 -20 0 -10 0 0 10 0 20 0 30 0 0 50 10 0 150 2 00 250 300 35 0 400 HVFF 2実験時間 :約14時間 短絡直前温度 220短絡電流の 最大値:186A 負荷側 電源側 HVFF 6実験時間 :約63.5時間 短絡直前温度 170短絡電流の 最大値:216A - 0 0 -25 0 -20 0 -15 0 -10 0 - 50 0 50 10 0 15 0 20 0 25 0 0 50 10 0 150 2 00 250 300 35 0 400 負荷側 電源側 VFF 1実験時間 :約5時間10短絡直前温度 1700 0 - 50 0 50 1 00 1 50 2 00 2 50 0 50 1 00 150 200 250 300 3 50 400 負荷側 電源側 短絡電流の 最大値:180A HVFF 10実験時間 :約13時間 短絡直前温度 180- - - - 0 0 - 200 - 150 - 100 - 50 0 50 100 150 200 0 50 100 1 50 200 2 50 300 3 50 400 負荷側 電源側 直径が導体径に近い大きな 溶融痕が多い。小さな気泡 が生じたものも見られた。 電源側には二次痕実験で見られ たような球形 or 半球形の溶融痕 が生じることがあったものの、負荷 側では痕跡が小さい。 電源側 負荷側 半断線部で、通電時に異常温度上昇 絶縁被覆 銅線 <実験時間が短い場合> <実験時間が長い場合> 被覆の炭化損傷範囲が広く、 最初の短絡時の短絡電流、 アーク火花によって電源側の 被覆が絶縁破壊し、間欠的な 短絡現象が生じる、ことが考え られる。 被覆の炭化損傷範囲が 小さく、限られた範囲での み絶縁破壊が生じる。 実験時間が長いものには、間欠 的に短絡しているものが多い。 被覆の炭素化物などが付着していても、短絡痕や銅線の表面状態を非破壊で細かく観察できる。 半断線短絡実験サンプル ブンゼンバーナ加熱による 短絡サンプル 素線表面の荒れ X線CTによる観察 半断線短絡実験サンプル サンプルブンゼンバーナ加熱による短絡サンプル 過電流溶断サンプル 気泡解析中のサンプル(例)

電源コード溶融痕の内部に生じる 気泡の三次元解析(第一報) - …<HVFF 10> 実験時間 :約13時間 短絡直前温度 :180 -2-15 0-10-5 0 0 5 10 15

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    電源コード溶融痕の内部に生じる気泡の三次元解析(第一報)

    試料銅線:0.26mm×1本電圧:AC100V負荷電流:15A(設定値)作製サンプル数:室温、火炎中 各5サンプル

    <ブンゼンバーナ>

    <熱電対>火炎中の温度測定

    <電圧測定>

    <電流プローブ>溶断モニター

    <負荷装置>

    <試料銅線>

    <ブレーカ>

    試料:VFF、HVFF 0.75mm2加熱源:ブンゼンバーナ(拡散炎)電圧:AC100V作製サンプル数: VFF、HVFF

    各5サンプル

    <試料コード>

    <ブンゼンバーナ>

    <電流プローブ+オシロスコープ>短絡電流波形の記録

    <ブレーカ>

    <データロガー>火炎中の温度測定、電流プローブによる短絡時点の記録

    試料:VFF、HVFF 0.75mm2

    試料のほぼ中央に、カッターで半断線部分をつくったコードに断続的に通電し、電流負荷によって発熱させ、コードを短絡させる。

    電圧:AC100V負荷電流:14~15A 45分on/15分off の繰り返し実験回数: VFF、HVFF 各10サンプル

    <電流プローブ+オシロスコープ>短絡電流波形の記録

    <負荷装置>

    <試料コード>

    実験前の半断線状態(例)

    <外観>

    <軟X線透視像>

    <ブレーカ>

    <データロガー>熱電対による半断線部分の

    温度測定、

    短絡時点の記録

    <タイマー>

    コード短絡痕については、これまでに断面組織に着目した手法を開発し、事故調査において活用してきたが、コードの種類、短絡痕の状態から解析不能となるケースが少なからずあった。

    各種書籍や報文で紹介されている気泡に着目し、様々な条件により作製した溶融痕の内部に生じた気泡の特徴をX線CTにより三次元的に捉えて解析し、作製条件との関係を比較、整理することにより、発火元特定のための解析手法として活用が可能か検討する。

    コード短絡痕については、これまでに断面組織に着目した手法を開発し、事故調査において活用してきたが、コードの種類、短絡痕の状態から解析不能となるケースが少なからずあった。

    各種書籍や報文で紹介されている気泡に着目し、様々な条件により作製した溶融痕の内部に生じた気泡の特徴をX線CTにより三次元的に捉えて解析し、作製条件との関係を比較、整理することにより、発火元特定のための解析手法として活用が可能か検討する。

    (1) 室温雰囲気下及び火炎中での過電流溶断サンプル

    ~温度、火炎の有無による影響

    各種溶融痕の作製実験

    データロガー

    (2) ブンゼンバーナ火炎中での短絡痕(二次痕)(3) 半断線状態のコードに電流を印加して短絡させたサンプル

    (一次痕)

    溶断時の周囲温度は約1000℃5点中1点のみ見ら

    れた球形の溶融痕

    (1) 室温雰囲気下及び火炎中での過電流溶断サンプル

    <VFFサンプル2>短絡までの加熱時間

    :57秒短絡時の温度:710℃

    短絡電流の最大値:284A

    負荷側

    電源側

    <HVFFサンプル1>短絡までの加熱時間

    :51秒短絡時の温度:920℃

    <HVFFサンプル4>短絡までの加熱時間

    :292秒短絡時の温度:760℃

    短絡電流の最大値:268A

    短絡電流の最大値:268A

    負荷側

    電源側

    負荷側

    電源側

    <VFFサンプル5>短絡までの加熱時間

    :142秒短絡時の温度:470℃

    短絡電流の最大値:288A

    負荷側

    電源側

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    電流値(A)

    時間( m se c)

    5点中3点ではくさび形の溶融痕

    軟X線 軟X線

    外観 外観

    室温雰囲気下で溶断させたサンプル(例)

    ブンゼンバーナの火炎に晒した状態で溶断させたサンプル(例)

    (2)ブンゼンバーナ加熱による短絡痕サンプル(例)

    痕跡の観察

    (3)半断線による短絡痕サンプル(例)

    <VFF №3>実験時間:約203時間短絡直前温度:195℃

    負荷側

    電源側

    短絡電流の最大値:232A

    短絡電流の最大値:228A

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    <HVFF №2>実験時間:約14時間短絡直前温度:220℃

    短絡電流の最大値:186A

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    負荷側

    電源側

    <HVFF №6>実験時間:約63.5時間短絡直前温度:170℃

    短絡電流の最大値:216A

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    負荷側

    電源側

    <VFF №1>実験時間

    :約5時間10分短絡直前温度:170℃

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    負荷側

    電源側

    短絡電流の最大値:180A

    <HVFF №10>実験時間:約13時間短絡直前温度:180℃

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    負荷側

    電源側

    直径が導体径に近い大きな溶融痕が多い。小さな気泡が生じたものも見られた。

    電源側には二次痕実験で見られたような球形 or 半球形の溶融痕が生じることがあったものの、負荷

    側では痕跡が小さい。

    電源側 負荷側

    半断線部で、通電時に異常温度上昇

    絶縁被覆

    銅線

    <実験時間が短い場合> <実験時間が長い場合>

    被覆の炭化損傷範囲が広く、最初の短絡時の短絡電流、アーク火花によって電源側の

    被覆が絶縁破壊し、間欠的な短絡現象が生じる、ことが考えられる。

    被覆の炭化損傷範囲が小さく、限られた範囲でのみ絶縁破壊が生じる。

    実験時間が長いものには、間欠的に短絡しているものが多い。

    被覆の炭素化物などが付着していても、短絡痕や銅線の表面状態を非破壊で細かく観察できる。

    半断線短絡実験サンプルブンゼンバーナ加熱による

    短絡サンプル

    素線表面の荒れ

    X線CTによる観察X線CTによる観察

    半断線短絡実験サンプル半断線短絡実験サンプルサンプルブンゼンバーナ加熱による短絡サンプルサンプルブンゼンバーナ加熱による短絡サンプル過電流溶断サンプル過電流溶断サンプル

    気泡解析中のサンプル(例)