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泉佐野コスモポリス跡地の土地利用について 大阪府泉佐野丘陵部土地利用検討委員会 平成18年9月

泉佐野コスモポリス跡地の土地利用について 提 言提言の概要 検討にあたっての基本認識 今回の検討地域については、泉佐野コスモポリス事業が破綻、清算に至った経過から、

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泉佐野コスモポリス跡地の土地利用について

提 言

大阪府泉佐野丘陵部土地利用検討委員会

平成18年9月

Page 2: 泉佐野コスモポリス跡地の土地利用について 提 言提言の概要 検討にあたっての基本認識 今回の検討地域については、泉佐野コスモポリス事業が破綻、清算に至った経過から、

目 次 提言の概要 1.検討にあたっての基本認識・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 1 2.これまでの泉佐野コスモポリス跡地の土地利用の検討経緯・・・・P 3 3.検討区域の地域特性と土地利用上の制約

(1)検討区域の位置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 5 (2)道路・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 7 (3)土地利用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 9 (4)土地利用上の制約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P11

4.民活導入の基本的考え方と検討結果

(1)導入の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P14 (2)全域を対象とした検討・・・・・・・・・・・・・・・・・P14 (3)近郊緑地保全区域外を対象とした一部購入の検討・・・・・P15

(4)今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P15 5.検討区域全体の土地利用の考え方

(1)検討区域が含まれるエリアの位置づけ及び検討区域の現況・P17

(2)検討区域に求められる機能と土地利用のあり方・・・・・・P19

(3)検討区域を公園として整備することで得られる効果・・・・P22

6.新しい公園づくりに向けた方策

(1)公園の空間像・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P24

(2)事業スキーム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P27

(3)景観を重視した緑地のイメージ・・・・・・・・・・・・・P29

7.おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P32

8.参考資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P33

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提言の概要

検討にあたっての基本認識

○ 今回の検討地域については、泉佐野コスモポリス事業が破綻、清算に至った経過から、

今もって府民から厳しい目が注がれていることに留意すべき。

○ したがって、土地利用の検討にあたっては、納税者の視点と利用者の視点を併せ持っ

て府民理解が得られる案づくりに努めた。

○ 検討事項としては、本年 2 月の府の公園的土地利用案に対し寄せられた、①公園と

する妥当性、②民間活力導入の可能性の見極め、③整備内容及び整備費の精査、等

の指摘も踏まえ議論を進めた。

○ 本提言は、これら諸課題に対し、学識経験者及び地元関係者からなる各委員がそれ

ぞれの立場から、専門的知見をも加え積極的に意見交換し、取りまとめたものであ

る。

検討区域の地域特性と土地利用上の制約

○ 検討区域は関空島など臨海部から近く、一方で和泉葛城山系のフロント部分にあた

る低い丘陵部に豊かな自然を残して立地。

○ 検討区域は全域が市街化調整区域。とりわけ土地の約 9 割は近郊緑地保全区域に指

定され、開発行為は原則行えない地域である。これが土地利用上大きな制約要因と

なっている。

民活導入の基本的考え方と検討結果

○ いわゆる民活を導入する意義は、投下資本回収と、民間ならではの施設設置・運営

による府民サービス(利便性)の向上の2点。この観点から民活導入可能性を検討、

検証した。

○ まず、全域を対象とした検討では、土地利用上の法的な制約条件を整理した上でヒア

リング等も行った結果、全域を購入して頂いての民間事業化は採算性等から難しいと

判断した。

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○ このため、次の作業として、より小さな区画で、かつ土地利用規制が多少なりとも緩

やかな近郊緑地保全区域外の一部を対象として検討を進めた。

○ 上記近郊緑地保全区域外における小区画での民間事業者の参入可能性を見極めるた

め、意向調査を今回初めて実施した。応募は1件あり。「提案内容は、周辺の土地利

用と調和が図られる中で、府民サービス向上や地域の活性化に資する内容だが、事業

計画の精査が必要」との評価に基づき、府から「条件整えば民間進出ニーズはあり」

との認識が示された。

○ よって、当委員会として、当該ゾーンについてはただちに公園区域とするのではなく、

府において市とも連携の上、公園と調和し、公園利用者の利便性向上と地域の活性化

に寄与するよう、有効な民活導入方策を検討していただきたいことを提言。

検討区域全体の土地利用の考え方

○ 全域については、上記の全域での民活可能性検証に加え、重ねて公共主導の土地利

用として近畿管区の国機関、府庁内、泉佐野市の意向についてヒアリング調査を行

ったが、現時点で具体的活用意向がないことを確認。

○ また、委員全員参加による現地調査も踏まえ、検討区域における環境ポテンシャル

からみれば、国際都市大阪の玄関口にふさわしいみどりの「景観の形成」や「府民

の緑地利用の促進」、「都市環境の改善」等の機能こそが当該地域には求められると

判断。現況は竹林の拡大等が進行しつつあり、みどり景観の劣化とともに、これ以

上放置しておくとその機能が著しく低下することを懸念。

○ よって、公共が主体となり計画的な位置付けを施すことで、現在の環境資源をより

よい形で将来に残せるよう、景観形成と環境保全・創造に向けた土地利用を目指す

ことが必要と認識。

○ 以上のことから、当該地域の優れた景観や豊かな環境を保全しつつ、将来世代を含

めた府民の貴重な財産としてこれを利活用するため、①限りある環境と財政資源の

下で、持続可能な形で整備・運営していくこと、②そのための事業手法について、

農業公園にかかる整備や自然公園事業による整備などと比較検討した結果、コスト

ミニマム(国費の導入等)を図る中で府民利用につなげるため、「都市公園事業」と

して整備するのが最適である。

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新しい公園づくりに向けた方策

(1)コンセプト:日根野荘等の歴史的資源やヤマモモなどの自然植生を有し、関西国

際空港を一望できる個性ある当該地域の豊かな環境を残しつつ活用を図るため、極

力手を加えずに「景観を重視した緑地の保全・育成・創造」を図る都市公園を目指

すこととし、これまでの住民からの施設需要を公園で受け止めるために、テニスコ

ートや体育館等を設置してきたような建設重視型とは異なる新しい公園づくりを提

言。

(2)事業スキーム:整備内容を計画段階ですべて盛り込んでいくようなマスタープラ

ン的な方式や建設重視型ではなく、計画段階から管理運営まで将来を見据え息長く

継続的に事業推進を図る新しい事業スキーム(シナリオタイプ)を府営公園として

初めて採用。

具体的には、公共が最小の財政資源を集中投下することにより、利用者にとって

必要不可欠な施設のみを初期段階で設置し、府民利用・活動を誘発する。その後は

民意を反映しながら、公共も一定の役割を果たしつつ、府民、NPO、企業等との

連携・協働などにより「育てていく」公園と位置付け。

この考え方を担保するために以下の3点に留意。

①府民、NPO、企業等多様な主体が参画する運営会議を設置し、魅力的なプロ

グラムを提供するなど利用促進を図るとともに、整備、運営にあたって協働の

理念に基づき討議し、その結果を反映。(施設より、活動プログラム重視型公園)

②社会経済情勢の変化やニーズに対応できるよう、PDCA(計画⇒活動・実行⇒

評価⇒見直し)サイクルによりチェック機能を働かせながら整備・運営を行う。

③当該地域のみどりのポテンシャルを活かし、関空からのランドマークとして、

将来にわたってすばらしい景観形成を進めるとともに、豊かな自然環境を保全

しつつ利活用する(今ある環境資源を限りなく活かす)。

おわりに

○ 本提言においては、これからの新しい公園づくりの考え方などを取り入れて、当該

地域の土地利用のあり方をとりまとめた。今後、府において関係機関と調整の上、

着実に実現に向けて取り組まれることを求む。また、その際には、パブリックコメ

ントの活用等より多くの府民の声を聞きながら具体化に努められたい。

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1.検討にあたっての基本認識

泉佐野コスモ跡地は、昭和 50 年代半ばに大阪の産業構造の高度化を目指して、関空の

インパクトを利用した先端産業団地をつくろうと事業企画された土地である。 昭和 60 年代に入り、具体的に企画調査会社を設立し、後に事業会社への切り替えを行

い、事業化について検討が進められてきたが、バブル経済崩壊後の社会経済情勢の変化を

背景に、当初のコンセプトにもとづく事業継続は不可能となり、会社として当該法人を清

算し、用地を取得して公共目的の利用に供することとなった。 その経過をみると、当時としての甘い情勢分析に基づいた計画の進行と、バブル経済

の崩壊など社会経済情勢の変化に迅速に対応すべきであったことへの遅れなどが指摘

されており、そうしたことから当該用地の土地利用にあたっては、今も府民の立場から

は厳しい目が注がれていることに留意する必要がある。 そうした意味から、過去に府議会を代表者として府民の一定の理解を得たとはいえ、

将来に向かっての土地利用にあたっては改めて納税者である府民の視点とこの地域の

土地利用整備の利用者となる府民の視点をも併せもって、府民に理解いただけるような

土地利用計画の立案が不可欠である。 府においては、本年(2006 年)の 2 月に公園的土地利用に向けて整備していく考えを

打ち出したが、今なぜ公園的土地利用か、民間購入など民活の手法も含めて今一度みきわ

めをすべきという指摘や、公園的土地利用に関わってもその整備内容や事業費の精査等に

ついて意見があったところである。 これらの意見をも踏まえ、専門的知見を含めて再度、検討し、同跡地における今後の土

地利用の方向について検討を行うため、府からの要請に基づき、学識経験者や地元関係者

で構成する「大阪府泉佐野丘陵部土地利用検討委員会」が設置された。 本検討委員会では、重要な検討の視点として、1つには、現在の世代の府民に対して

はもちろんのこと、将来の府民と大阪という都市にとっての誇りともなり得るべき“資

産”に、この地域をつくり上げていくことができる土地利用であること、2つには、こ

の地域でなければならない、ここでしか展開することができない土地利用をこそ“案”

として提示していくことが大切であると考えた。 (「検討委員会」の要綱及び検討経過は【資料1】、【資料2】のとおり)

○ 今回の検討地域については、泉佐野コスモポリス事業が破綻、清算に至った経過

から、今もって府民から厳しい目が注がれていることに留意すべき。 ○ したがって、土地利用の検討にあたっては、納税者の視点と利用者の視点を併せ

持って府民理解が得られる案づくりに努めた。 ○ 検討事項としては、本年 2 月の府の公園的土地利用案に対し寄せられた、①公園

とする妥当性、②民間活力導入の可能性の見極め、③整備内容及び整備費の精査、

等の指摘も踏まえ議論を進めた。 ○ 本提言は、これら諸課題に対し、学識経験者及び地元関係者からなる各委員がそ

れぞれの立場から、専門的知見をも加え積極的に意見交換し、取りまとめたもの

である。

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そのためのキーワードは、やはり世界、アジアに向かって開かれた関空を持つ「ゲー

トウェイ都市」、その後背地に残された「緑豊かな環境」を活かすことであり、この地

を将来に向かって良好な形で残し、その環境資源を将来の府民の資産として維持、発展、

活用していくことのできる土地利用こそが求められていると考える。 世界の臨空都市を見ても空港という高度に近代化された巨大な社会資本を有しつつ、

一方で持続可能な都市として、あるいは環境と共生する都市として、豊かな自然環境を

保全・活用することが国際空港都市の魅力を高めている例は少なくない。 こうした将来に向かっての府民の資産としうること及び世界に向かって開かれた国

際空港都市の後背地にふさわしい土地利用としていくことを踏まえた案の策定こそが

必要だと考えた。 本提言は、これらの基本認識のもと、以下の各々の委員がその専門的知見等を活かし積

極的に意見交換し、また、種々の検討を重ねてとりまとめたものである。

(委員会委員構成) ・委員長 大阪府立大学大学院生命環境科学研究科教授 増田 昇 ・委 員 大阪商業大学総合経営学部教授 西村 多嘉子 ・委 員 阪南大学国際コミュニケーション学部教授 貴多野 乃武次 ・委 員 大阪泉州農業協同組合代表理事組合長 谷川 龍夫 ・委 員 泉佐野市助役 植田 剛司

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2.これまでの泉佐野コスモポリス跡地の土地利用の検討経緯 ㈱泉佐野コスモポリスが清算され、平成 10 年 4 月の臨時議会において多目的な公園的

土地利用を中長期的に検討するという前提で議決を受け、公共目的の利用に供することと

なった。府土地開発公社が同地を先行取得して以後、府においては、よりよい土地利用計

画を求めて、施設の設置を含めた土地の有益な利用方策を検討してきた。また、平成 14年度に周辺を含めた民間事業者の参入の可能性を調査するための事業者ヒアリングを行い、

民間主導での土地利用は困難との結果から、特に公共主導の公園的土地利用について検討

を進めてきた。その経過は以下のとおりである。

・平成 9 年 5 月 庁内「土地利用の意向調査」実施

・平成 11 年 8 月 庁内「土地利用の意向調査」(第2回)実施

・平成 12 年 9 月 庁内関係部局で『泉佐野市丘陵部府有地土地利用検討会』設置

・平成 14 年度 民間企業進出の可能性検討調査

「平成14年度調査内容」

・近郊緑地保全区域外部分に中央部において、地区全体の基本方向である公園的土地利用

に調和した土地利用、民間活力を導入の可能性を検討。

・土地利用の基本方向に沿った導入の可能性ある機能の創出・立地可能性の検討

【レジャー・サービス 宿泊 教育・文化 福祉 産業 商業 住宅】

・民間施設立地の可能性が考えられる「温浴施設」「園芸施設」について具体的な事業者ヒ

アリングを実施。

「結果」

・泉佐野コスモポリスの周辺状況(集客力や交通アクセス等)を踏まえると、民間企業の

進出は極めて可能性が低い。

・仮に進出したとしても、借地(建物も含め公設民営)での事業展開が主流となっており、

投下資本の回収については多くは期待できない。

以上の結果から、民間主導での進出の可能性はないと判断

○ 平成 10 年の民事調停による府土地開発公社の用地取得後、土地利用について

種々の調査・検討や民間企業に対するヒアリング等がなされた。それらの結果を

踏まえ、本年 2 月には府の案が示されたが、同案に対していくつかの指摘がなさ

れた。

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・平成 16 年度~ 商工労働部、企画室が連携して庁内関係部局と協議・調整

・平成 17 年 11 月 景観計画に基づくみどり景観整備という枠組みで、里山公園的な緑地

整備を進めるという基本方向確認。

・平成 18 年 2 月 大阪府の基本方向案に対し、以下の指摘あり。

○公園とする妥当性

○民間活力の導入の可能性の見極め ○整備内容及び整備費の精査

〈参考:事業の経緯〉

S55.5 府商工業振興審議会「大阪産業ビジョン 80」答申 →空港周辺地域における新たな産業基盤整備を提言

S57.8 府総合計画で泉州地域を産業文化ゾーンの拠点として位置づけ

S59.7 市総合計画で丘陵部開発の提示

S62.12 株式会社 泉佐野コスモポリスを設立(企画調査会社) →H3.11 事業実施会社に移行

H4.7 府、会社への 70 億円の融資実施

H6 年度~ 事業計画の見直し →全面住宅開発案、段階的施工案等を検討

H8.3.5 会社取締役会決議 →当初の事業計画見直し

H8.3 検討委員会における報告(委員長阪大紙野教授)

H9.2.14 会社取締役会決議 →府による用地の買上げと府 9 年度当初予算計上を要請

H9.2 処理案を議会提案 →関連予算否決

H9.9.1 民事調停の申立 →調停当事者 申立人 株式会社泉佐野コスモポリス 相手方 大阪府、泉佐野市、銀行団

H10.4.30 臨時府議会で民事調停案及び関連予算案(債務負担行為)の議決

H10.5.13 民事調停成立

H10.9.30 会社解散

H10.10.9 特別清算の申立て

H11.10.6 特別清算終結決定

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3.検討区域の地域特性と土地利用上の制約 検討区域の地域特性は、以下のとおりである。 (1)検討区域の位置

検討区域は大阪府南部の泉佐野市に立地

し、関空島など臨海部から近い一方、市域

南部に連なる標高 40~100mの低い丘陵部

に立地する。

関空から航空機を利用すれば、その旋回

時に和泉葛城山系のフロント部分として、

いわば前山、山の辺のゾーンとして緑に覆

われた同地を臨むことができる。

公共交通機関であるJR阪和線日根野駅か

らは直線距離で約 2.5km、南海本線泉佐野駅

から直線距離で約5km に位置する。

検討区域の位置

○ 検討区域は関空島など臨海部から近く、一方で和泉葛城山系のフロント部分にあ

たる低い丘陵部に豊かな自然を残して立地。

○ 検討区域は全域が市街化調整区域。とりわけ土地の約 9 割は近郊緑地保全区域に

指定され、開発行為は原則行えない地域である。これが土地利用上大きな制約要

因となっている。

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関西国際空港からは空港連絡橋に続く空港連絡道が検討区域に向けて南進し、同

連絡道と併走する国道 481 号が検討区域南側で阪和自動車道路と連絡している。ま

た、検討区域のほぼ中央部に上之郷インターチェンジが立地している。

区域の北側には、樫井川が南西方向に流下するほか、周辺地域ならびに検討区域

内には、大小の溜池が多く散在する。

区域の東側には、泉佐野市都市計画公園(大井関公園)予定地約 8.8ha が隣接し

ている。

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(2)道路 ①区域内及び周辺の道路

区域内及び周辺の道路として、高速自動車道、一般国道、市道、その他道路(農

道、林道等)があげられる。

高速自動車道は、当該地南側に沿って阪和自動車道(近畿自動車道松原すさみ線)

が、東地区と中地区を縦断し、関西空港自動車道が交差部で結節している。また、

一般国道は、関西空港自動車道に並行し、上之郷 IC まで国道 481 号線(泉佐野中央

大通線)が通っている。

さらに、市道は、西地区内を横断し、中地区及び東地区の外周に沿って、土丸上

之郷線が(一部、上村意賀美神社線が重複)、中地区に隣接する阪和自動車道(近畿

自動車道松原すさみ線)から泉佐野 JCT、上之郷 IC に沿って上之郷 JC 側道線が通っ

ている。

その他道路としては、西地区を横断する農道西山線及び林道西山線、中地区南側

外周部を通る林道滝の池線、東地区東側に沿って林道別所谷線がある。

表3-2 当該地内及び周辺にみられる道路一覧

道路の種類 名 称 管 理 者

高速自動車国道 阪和自動車道(近畿自動車道

松原すさみ線)

日本道路公団

関西空港自動車道 日本道路公団

一般国道 国道 481 号線

(泉佐野中央大通線)

大阪府(上之郷インターから国道 26

号線までは国から管理権限を譲り受

け府が管理している)

市道 土丸上之郷線 泉佐野市

上村意賀美神社線 泉佐野市

上之郷 JC 側道線 泉佐野市

その他道路

農道 西山線 泉佐野市 林道 西山線 泉佐野市

滝の池線 泉佐野市

別所谷線 泉佐野市

②区域への交通アクセス

区域へは、大阪府東部、京都、和歌山方面からは阪和自動車道上之郷 IC から市道

土丸上之郷線のルートが、大阪府西部、神戸方面、一般道(国道 26 号線等)からは

国道 481 号線から市道土丸上之郷線のルートが主たる進入路として想定される。

なお、阪神高速道路湾岸線からは、泉佐野南出入口から国道 481 号線を利用でき

る。国道 481 号線は片側 2車線、市道土丸上之郷線は片側 1車線の路線である。

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(3)土地利用 検討区域周辺の泉佐野市、泉南市、熊取町、田尻町では、南海本線を中心に市街

地が広がり、南海本線、JR 阪和線の各駅前には商業業務地の集積が見られる。 工場地は臨海部埋立地の他、市街地の外縁部を中心に地域全体に分布しているこ

とが特徴である。 また、丘陵部においては住宅団地が立地しており、さらに近年大学等教育機関の

立地も進んでいる。 一方、日根野、兎田、新家、男里周辺には水田と集落を中心とした泉州特有の景

観を有する田園地帯が広がっている。 さらに、同区域は臨海部から平地部、丘陵部、山地部へと続く地形構造が特徴的

であり、こうした地形によって土地利用が規定されている。

泉佐野市 泉南市 熊取町 田尻町 計

一般市街地 864.3 563.0 419.3 62.7 1,909.2

商業業務地 56.9 74.6 6.8 6.6 144.8

工場地 205.1 165.3 30.9 3.2 404.6

公共施設・官公署 195.0 142.4 8.6 162.7 508.7

集落地 167.6 102.7 83.3 0.0 353.6

その他の空地 145.0 124.8 84.1 29.1 383.0

公園・緑地、墓地、社寺敷地 80.0 64.2 131.5 14.7 290.4

学校 51.3 38.8 82.3 2.1 174.4

道路・鉄軌道敷 190.7 66.1 16.4 13.1 286.2

田・休耕地 912.5 656.6 332.5 78.7 1,980.4

畑 23.2 95.1 25.5 0.0 143.8

山林 2,232.8 2,336.9 424.8 3.3 4,997.8

ゴルフ場・原野・牧野 136.5 174.6 34.1 0.0 345.2

水面 164.2 132.7 59.3 8.5 364.6

計 5,425.0 4,737.8 1,739.3 384.5 12,286.7

土地利用面積割合

0% 20% 40% 60% 80% 100%

田尻町

熊取町

泉南市

泉佐野市一般市街地

商業業務地

工場地

公共施設・官公署

集落地

その他の空地

公園・緑地、墓地、社寺敷地

学校

道路・鉄軌道敷

田・休耕地

山林

ゴルフ場・原野・牧野

水面

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(4)土地利用上の制約 ①法規制

検討区域内では以下に示すとおり、区域全域が市街化調整区域であり、区域の

89%が近郊緑地保全区域に指定されている。このことが同地の土地利用を考える上

で最も大きな制約となっている。 また、区域全域が宅地造成工事規制区域である。 さらに、泉佐野市有地は都市計画法に基づき、大井関公園が計画決定されている。

区域 根拠法 面積 割合 計

近郊緑地保全区域 近畿圏の保全区域の

整備に関する法律 68.4ha 89%

市街化調整区域 都市計画法 76.5ha 100%

地域森林計画対象民有

林 森林法 59.0ha 77%

農業振興地域 農業振興地域の整備

に関する法律 39.6ha 52%

宅地造成工事規制区域 宅地造成等規制法 76.5ha 100%

土石流危険渓流 土石流危険渓流及び

危険区域調査実施要

東部地区 15ha -

地すべり危険箇所 地すべり危険箇所調

査要領

中部地区 9ha

東部地区 19ha-

府有地

文化財包蔵地 文化財保護法 向井池遺跡など

計 6箇所 -

76.5ha

市有地

都市計画公園区域 (大井関公園) 都市計画法 8.8ha - 8.8ha

②近郊緑地保全区域

近郊緑地保全区域では、「近畿圏の保全区域の整備に関する法律」第 5 条第 1 項

の規定により、次の行為をする場合は、知事に届出が必要となる(第 8条第 1項)。

ⅰ)建築物、工作物の新改増築

ⅱ)宅地の造成、土地の開墾、土石の採取、鉱物の掘採、その他の土地の形質

変更

ⅲ)木竹の伐採

ⅳ)水面の埋立又は干拓

ⅴ)屋外における土石、廃棄物、再生資源の堆積

近郊緑地保全区域内の開発行為に対しては、「近郊緑地保全区域内における届出

を要する行為に関する技術指針(大阪府告示第 1455 号、昭和 62 年)」により、開

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発行為の届出にあたっての事前指導を行い、以下の条件全てに該当する行為を除き、

届出を行おうとする者に対して、当該届出に係る行為を行わないよう指導すること

としている。

・公益の増進に資するものであること

・府民の健全な生活環境を確保するものであり、当該行為に係る区域以外ではその目

的を達することが困難で、必要やむを得ないと認められるものであること

・知事及び市町村長が定める土地利用に関する諸計画に適合するものであること

また、当地域の 89%を占める近郊緑地保全区域を含む市街化調整区域においては、都

市計画法第 34 条第 10 号のロに該当する開発行為は、府判断基準により、原則行わない

とされている。

③地域森林計画対象民有林 当該地は、59.0ha、府有地の 77%が地域森林計画対象民有林(森林法)となっている。

指定民有林内では、伐採を行う上での届出、1ha 以上の開発行為を行う場合には知事

の許可が必要となる。

開発行為とは土石または樹根の伐掘、開墾その他土地の形質を著しく変更する行為で、

森林の土地の自然的条件、その他の行為の態様などを勘案して政令で定める規模を超え

るものをいう。

ただし、国または地方公共団体が行う場合や森林の土地の保全に著しい支障及ぼすお

それが少なく、かつ、公益性が高いと認められる事業などについては除かれる。 ④農業振興地域

当該地は、39.6ha、府有地の 52%の農業振興地域を含むが、農用地の指定箇所はない。

農業振興地域における開発行為の制限は特にないが『農業振興地域の整備に関する法律』

第15条の17において、農用地に支障を及ぼす行為に限り勧告をうけることとしている。 また『大阪府土地利用基本計画』において農業振興地域における土地利用の基本方針

が示されている。

1 土地利用の基本方向 (3)土地利用の原則 ②農業地域

農業地域の土地利用については、農地が食料供給源として基礎的な土地資源であり、

大都市近郊での生鮮食料品の安定した供給を図る生産基盤であるとともに、良好な生

活環境や自然環境及び防災の構成要素であることから極力その保全と有効利用を図る

(中略) 農用地内を除く農地については生産能力の高いもの、集団的に存在するもの及び農

業に関する公共投資の対象となったものは、農業以外の用途への利用を極力避ける。

ただし、都市計画等農業以外の土地利用計画との調整を了した場合は、その調整され

た計画を尊重する。

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⑤文化財等の分布 区域内には、向井池遺跡、梨谷遺跡、向井山遺跡、鏡塚古墳 4 つの遺跡が確認さ

れており、隣接する地区においても遺跡が確認されている。

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4.民活導入の基本的考え方と検討結果

(1)導入の意義 ・ いわゆる民活論については、投下資本回収と、行政では無理な民間ならではの施

設設置・運営による府民サービスの向上という 2つの観点から、導入可能性を検討、

検証した。

・ 当地域における民活については、平成14年度に近郊緑地保全区域外を対象に実

施した民間活用可能性調査において、土地を購入しての民間活用の可能性が無いと

結論付けられたが、一定の時間も経過していること、及び調査手法がヒアリング調

査中心であったことから、再度当委員会でも見極める必要があると考えた。

・ 検討手順として、全域購入での民活事業の導入、一部購入での周辺との調和のと

れた民活事業の導入の順で、ヒアリング、文献調査に加え、今回初めて意向調査も

行い、検討・検証を行った。

(2)全域を対象とした検討

・ 当地は、全域が市街化調整区域だが、近郊緑地保全区域が約 9割と大部分を占め、

近郊緑地保全区域における検討が全域の検討に関わってくることから、この区域で

の土地利用の可能性の検討を行った。

・ 折しも今般、都市計画法の改正(5 月 24 日参院議決)が行われたが、その概要は

【資料3】「改正都市計画法の概要」のとおりである。これにより市街化調整区域

の開発は今後一層厳格な運用を求められることとなった。当地の土地利用上の法的

な制約条件を整理した結果は前述のとおりであるが、近郊緑地保全区域内(全域)

○ いわゆる民活を導入する意義は、投下資本回収と、民間ならではの施設設置・運

営による府民サービス(利便性)の向上の2点。この観点から民活導入可能性を

検討、検証した。

○ まず、全域を対象とした検討では、土地利用上の法的な制約条件を整理した上で

ヒアリング等も行った結果、全域を購入して頂いての民間事業化は採算性等から

難しいと判断した。 ○ このため、次の作業として、より小さな区画で、かつ土地利用規制が多少なりと

も緩やかな近郊緑地保全区域外の一部を対象として検討を進めた。

○ 上記近郊緑地保全区域外における小区画での民間事業者の参入可能性を見極める

ため、意向調査を今回初めて実施した。応募は1件あり。「提案内容は、周辺の土

地利用と調和が図られる中で、府民サービス向上や地域の活性化に資する内容だ

が、事業計画の精査が必要」との評価に基づき、府から「条件整えば民間進出ニ

ーズはあり」との認識が示された。

○ よって、当委員会として、当該ゾーンについてはただちに公園区域とするのでは

なく、府において市とも連携の上、公園と調和し、公園利用者の利便性向上と地

域の活性化に寄与するよう、有効な民活導入方策を検討していただきたいことを

提言。

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での立地可能性についての整理は【資料4】「土地購入による民間活力導入検討」、

【資料5】「近郊緑地保全区域内の立地可能性(全域)についての整理」、【資料6】

「モトクロス場及びオートキャンプ場についての検証(業界関係者からのヒアリン

グ結果とその評価)」のとおりであり、法的に設置可能でかつ用地購入しての事業

採算を見込める民間事業がみあたらないことから、全域の民間購入は難しいと判断

した。 (3)近郊緑地保全区域外を対象とした一部購入の検討

① 近郊緑地保全区域外における民間事業者の立地可能性について ・ 全域を対象とした検討に引き続き、平成 14 年度の調査(【資料7】)を再度検証す

るとともに、近郊緑地保全区域の土地利用と整合性のとれた形で、近郊緑地保全区

域外(8ha)において立地可能性ありと考えられる事例について追加調査を行ったが、

その結果は【資料8】「近郊緑地保全区域外における民間事業者の立地可能性につ

いて(ヒアリング調査)」、【資料9】「近郊緑地保全区域外における民間事業者の立

地可能性について(文献調査等)」のとおりであり、8ha 一括売却は現状では採算

性から困難と判断した。

・ ただし、一部購入による立地可能性の有無を精査するため、事務局より期間を設

けて公募により民間事業者の意向を募りたいとの考えが示され、これを委員会とし

ても了承した。その調査結果は次のとおりである。

② 民間事業者土地利用意向調査 ・ この意向調査は、規制が多少なりとも緩やかな近郊緑地保全区域外の一部区域(比

較的平坦で民間利用が可能な中地区の約 2ha)に絞って、用地購入による民間事業

者の参入意向を見極めるために実施したものであり、民間からの有益な事業意向の

確認がなされた場合には府として事業コンペを行うことを念頭に実施されたもの

である。

・ 募集については、府のホームページをはじめ、市町村、府の出先機関、商工会議

所や商工会等の商工関係団体、さらには、不動産情報を取扱う民間企業などを通じ、

幅広い周知に努めた。

・ その概要は、【資料10-1】「泉佐野市丘陵部府有地民間事業者土地利用意向調

査について(概要)」、【資料10-2】「泉佐野市丘陵部府有地 売却意向調査箇所

図」のとおりである。

〔調査結果〕

・応募提案は1件。提案事業の内容は物販・飲食施設等に文化的公益施設の付置

などを検討したいというものであった。

・その評価については、「周辺の土地利用と調和が図られる中で、府民サービス向

上や地域の活性化に資する内容だが、事業計画の精査が必要」というものであ

り、府から「条件整えば民間進出ニーズはあり」との認識が示された。

(4)今後の課題

上記のような意向調査を踏まえ、本検討委員会としては、今回の調査の対象とし

た2haについてはただちに公園区域とするのではなく、民活導入による地域の活

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性化と公園利用者の利便性向上につながるような土地利用のためのゾーンとして位

置づけ、今後、府において市とも連携の上、有効な民活導入方策を検討されること

を求めた。

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5.検討区域全体の土地利用の考え方

これまでの検討から、全域については民間による購入可能性が見込めないことから、

公共主導となることを念頭に土地利用方針を検討するにあたり、「公園的土地利用」以外

の用途がないか、事務局において近畿管区の国機関、府庁内、泉佐野市の意向をヒアリ

ング調査により確認した。その結果、「現時点ではいずれの機関も具体的計画及び活用意

向がない」ことが報告されたことから、府による公園的土地利用を中心に検討を加える

こととした。

(1)検討区域が含まれるエリアの位置づけ及び検討区域の現況

当区域の土地利用を検討するにあたり、貴重な府民の財産を将来に向かってより効

果的に活用するため、あらためて「検討区域が含まれるエリアの位置づけ」を整理し

た。その状況は、【資料11】「検討区域が含まれるエリアの位置づけ」のとおりであ

る。また、「検討区域における現況」は次のとおりである。(【資料12-1~6】参照)

○景観

・広域から視認性の高い緑地

検討区域は、関西国際空港、空港連絡道路、ゲートタワービルなど広域エリ

アから視認性の高い緑地である。

・市街地の背景をなしている前山

検討区域は大阪平野に展開する市街地の背景をなしている前山景観を残し

ている。

○ 全域については、上記の全域での民活可能性検証に加え、重ねて公共主導の土地

利用として近畿管区の国機関、府庁内、泉佐野市の意向についてヒアリング調査

を行ったが、現時点で具体的活用意向がないことを確認。

○ また、委員全員参加による現地調査も踏まえ、検討区域における環境ポテンシャ

ルからみれば、国際都市大阪の玄関口にふさわしいみどりの「景観の形成」や「府

民の緑地利用の促進」、「都市環境の改善」等の機能こそが当該地域には求められ

ると判断。現況は竹林の拡大等が進行しつつあり、みどり景観の劣化とともに、

これ以上放置しておくとその機能が著しく低下することを懸念。

○ よって、公共が主体となり計画的な位置付けを施すことで、現在の環境資源をよ

りよい形で将来に残せるよう、景観形成と環境保全・創造に向けた土地利用を目

指すことが必要と認識。

○ 以上のことから、当該地域の優れた景観や豊かな環境を保全しつつ、将来世代を

含めた府民の貴重な財産としてこれを利活用するため、①限りある環境と財政資

源の下で、持続可能な形で整備・運営していくこと、②そのため事業手法につい

て、農業公園にかかる整備や自然公園事業による整備などと比較検討した結果、

コストミニマム(国費の導入等)を図る中で府民利用につなげるため、「都市公

園事業」として整備するのが最適である。

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・泉佐野市街地と大阪湾を見渡すことができる眺望ポイント

検討区域内には、北部の市街地を望むことができる開放的な眺望点が立地す

る。

○人と緑地との関わり

・メタセコイヤ

白亜紀に生息し生きた化石といわれるメタセコイヤの、植樹された大木群が

あり、人が関わってきた痕跡を残している。

・ヤマモモなど

検討区域内には、ヤマモモの巨木、ヤマザクラの大木が数本残っている。

・竹林化の拡大など

樹林への人の関わりが希薄になってきたため、検討区域では竹林やクズが拡

大し、樹林の美しさが損なわれつつある。

○多様な生物の生息

・ため池周辺では、アンペライやヒトモトススキなどの湿性植物、ナニワトンボ

やカワセミなどの動物をはじめとして多様な生物の生息が確認されている。

○歴史を感じさせる風景

・中世には上之郷・日根野地域一帯には荘園が広がり、日根荘遺跡は市の史跡指

定がなされている。検討区域周辺はこうした中世の風景を彷彿させる田園風景

が広がっている。

・検討区域に隣接している意賀美神社本殿は国の重要文化財に指定されるなど、

周辺には歴史的資源が多数残されている。

和泉国日根野荘日根野村絵図(宮内庁書陵部所蔵)

鎌倉時代末期の正和5年(1316)年

に作成されたもので、天福2(1234)年、摂関家九条家領として開かれた

日根野荘日根野村を素描した絵図。

絵図は熊野大道(熊野街道)を底辺

に大井関神社を上に描かれ、村落内

は井桁状に表わされた水田が広が

ると共に、丘陵の裾野には数多くの

ため池が記されている。絵図に描か

れた神社、ため池、水路などが 1998年に国の史跡「日根野荘遺跡」に指

定された。

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(2)検討区域に求められる機能と土地利用のあり方

委員会としての現地調査を踏まえ、また、検討区域における環境ポテンシャルから、

P21の図のとおり今後の土地利用に向けたあり方を考えた。

・ 検討区域のポテンシャル及び求められる機能としては、一つには、大阪の玄関

口にふさわしいみどり景観や和泉山系固有の前山としての「景観の形成」、二つ

には、泉南地域における緑地保全に関わる活動拠点となりうる「府民の緑地利

用の促進」、三つには、ヒートアイランド現象の緩和につながるクールランドと

なる山ろく部の維持形成をめざす「都市環境の改善」、四つには、西地区を中心

とした希少生物の生息空間を保つ「生物多様性の保全」等が挙げられる。

・ とりわけ、コスモ跡地は空港インパクトを活用した先端産業団地を企図した地

であり関西国際空港に近接するとともに、大規模で緑豊かな地域である。この

立地や自然環境等の特性を踏まえ、周辺の水辺や農地、日根野荘等の歴史的資

源との一体的な景観も念頭に置きつつ、国際都市大阪の玄関口として、国際空

港都市の魅力を高める方向での土地利用方策が求められるものと考える。

・ こうした観点から、本委員会においても、「豊かな自然を有する国際空港都市の

後背地という対象地の地域特性を活かし、将来にわたって府民の誇る資産とし

ていくべき。」 「当該地域を公園的土地利用した場合の効果の見極めも必要。」

「景観的な視点からみると、当該地は広域的な『グリーンゲート』として位置

づけられる。従来のパビリオン的施設による魅力の発信ではなく、日本の風土、

アジアの風土や大阪の里山など大阪の特性や地域の風土性を魅力として発信し

ていくことが必要。」 「対象地は市街地と奥山との接点に立地していることか

ら、『山の辺』としての風景の価値を重視すべき。」などの意見が出されたとこ

ろである。

・ 一方で、この地域においては、この間、竹林の拡大等が進行しつつあり、この

ような状況が続けば、竹林化等による植生の変化や不法投棄などによるみどり

景観の劣化とともに、貴重な生物の生息空間の減少などが進行し、その機能が

著しく低下することが懸念されるところである。

・ このような自然環境の劣化を防ぎ、ポテンシャルを活かし、当地が本来、求め

られている機能を発揮するためには、「公共が主体となり、計画的な位置づけを

施すことで、現在の環境資源をよりよい形で将来に残せるよう、景観形成と環

境保全・創造に向けた土地利用を目指すこと」が必要である。

・ 当該地域の優れた景観や豊かな環境を保全しつつ、将来世代を含めた府民の貴

重な財産としてこれを利活用するため、限りある環境と財政資源の下で、持続

可能な形で新しい整備・運営していくとともに、その事業手法について、農業

公園にかかる整備や自然公園事業による整備などと比較検討した結果、コスト

ミニマム(国費導入等)を図る中で府民利用につなげるため、「都市公園事業」

として整備するのが最適であると考える。

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事業手法の比較

事業名

(所管) 事業内容 主な採択用件

都市公園事業

(国土交通省)

「良好な都市環境の提供」、「都市の安全性の向上」、「市民の活動の場、憩いの場の形成」、「豊かな地域づくりと地域の活性化」が事業の基本的目標 《広域公園》

主として市町村の区域を越える広域の需要を充

足することを目的

・都市計画区域内 ・一の市町村の区域を越える広域の利用に供する

・原則として都道府県又は指定都市が事業主体となって整備

ふれあい自然

塾整備事業

(環境省)は交

付金化により

廃止

自然環境整備

交付金事業

都道府県が策定する自然環境整備計画に基づき実施する。 国定公園等で地方自治団体が独自性・自主性を発揮して、地域の創意工夫を活かした施設整備について交付金を交付 (交付対象) 国定公園における園地、野営場、公衆便所等の自然とのふれあいための施設整備など

・原則として都道府県 ・国定公園内

経営構造対策事業へ移行後に強い農業づくり交付金化

認定農業者など担い手の育成・確保や農地の利用集積など地域農業構造改革の加速化に資する施設整備や土地基盤整備を実施 ○いわゆる農業公園にかかわる施設整備 農林漁業体験施設、(そば打ち、ジュース加工、わら細工等体験、技術伝承、宿泊体験等のための施設)、地域食材供給施設(地域の農畜産物を活用した食材の供給に必要な加工室、貯蔵室等の施設) 総合交流拠点施設(上記の体験施設などのほか、地域特産物の展示、地域内の総合案内、地域資源を活かした滞在等交流の推進のための施設)など

・事業の前提として、受益地が原則として農業振興地域農用地であることが必要。 ・成果目標として、[必須設定]認定農業者の増加、担い手農地利用集積率、他に任意に設定する項目がある ・市町村、農業協同組合第三セクターなど

共生林整備事

業(絆の森整備

事業)

(林野庁)

身近な森林に対する市民の関心の高まりや、森林をフィールドにした市民活動の広がりに対応するための森林整備、林内歩道等整備、附帯施設整備等

・毎年度都道府県等からの要望を受け、採択基準、緊急性、計画内容等の審査を行うとともに、事前評価を行う等により、総合的に優先度を評価して採択

・0.1ha~5ha程度のまとまりがある森林で森林を市民へ開放、もしくは森林施業計画を地域住民へ開示を行っていること ・事業主体は市町村、森林所有者、森林組合等

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計画的な取組みに基づくみどり景観形成 ○国際都市大阪の魅力づくりに資する景観の

再生

○泉南地域固有の前山景観の保全

○歴史的環境及び農空間が連続する文化的

景観の保全と形成

基盤整備の充実と公開性の確保 ○広域からの利用機会の担保

○森・里・水辺・花と親しむ機会の創出

○自然再生活動の拠点形成

多様な緑地機能の保全と持続的維持 ○ヒートアイランド現象の緩和機能をもつ

クールランドの保全

○まとまった緑地の保全と育成

広域的ビオトープネットワークの形成 ○多様な生物生息空間の保全

○都市部と近接した自然環境学習の場の

形成

区域のポテンシャルと求められる機能 今後の土地利用のありかた

竹林化等の

みどり景観の

劣化

(不法投棄)

樹林管理への

市民ニーズの

拡大

放置による樹林

活性度の低下

希少種等の

生息空間の減少

(踏圧など)

課 題

sa

これを実現するため、土地利用に際して「事業の公共性」、「マネジメントの持続性」、「利

用機会の公平性」「持続可能な整備」が基本的に必要であると考えると、その事業手法と

しては、これらの実現が可能であるとともに、国庫補助制度の活用によりコストミニマム

と府民サービスの向上を図りやすい「都市公園事業」が最適であると考えられる。

景観形成

・大阪の玄関口にふさわしいみ

どり景観の形成

・和泉山系の前山景観

・都市の近景となるみどり景観

・伝統と歴史に培われた景観

府民の緑地利用

・泉南地域における緑地保全に

関わる活動拠点

・樹林地、ため池、水路、サクラ

などを含む身近な緑地

・再生活動を通じた生涯にわた

る学習活動の展開の場

都市環境の改善

・クールランドとなる山麓部の緑

地の維持形成

・緑のオアシスと風の道づくり

生物多様性保全

・生物多様性の保全

・ビオトープネットワークの拠点形

■事業の公共性:府民全体の利益に資する事業の推進

・公共を主体とした事業の展開 ・地域の拠り所となる府民活動等の拠点の形成

■マネジメントの持続性:永続的な機能の担保と定期的な管理の実施

・公的機関のリードによる運営管理の持続性の確保

・地域の歴史・自然資源の保全のための永続的な緑地機能のマネジメント

・生物多様性保全に向けた定期的な管理システムの確保

■利用機会の公平性:誰もが利用できるオープンスペースの提供

・都市部に近接したみどりに関わる利用空間の創出

・多様な活動への参画を通じた新たなコミュニティ形成の支援

■持続可能な整備:環境と共生し、息長く将来に向かって育てる地域形成

・環境と共生する持続可能な整備

・地域形成と連携した着実な整備

・民間活力導入による戦略的整備

公共が主体になり計画的な位置づけを施すことで景観を含めた現在の環境資源を

よりよい形で残しつつより積極的に、地域形成と環境保全・創造に向けた土地利用を目指す

都 市 公 園 事 業

検討区域における「求められる機能」と「土地利用のあり方」

21

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(3)検討区域を公園として整備することで得られる効果

・検討区域を公園整備することによって発生する効果は、利用価値と存在価値で表す

ことができる。その価値をそれぞれ貨幣価値で試算する。

公園整備によって発生する価値

・公園整備によって発生する効果を貨幣価値に置き換えると、

検討区域を整備することによる整備効果:348億円

と想定される。

・上記試算には各種プログラム活動による効果は含まれていないため、これらの活動

も貨幣価値に追加することができる。こうした点も踏まえれば、検討区域における

公園整備は社会経済的に十分に寄与すると考えられる。

・なお、公園整備による効果の計測は、通常、膨大なデータ収集・整理を行い算出す

るものであるが、上記試算は短い期間の中でそのイメージを少しでも示せるよう、

大まかな前提に基づき超概算で算出したものであり、精査が必要なものである。

《参考》利用価値の算出

意 味

利用価値 直接的に公園を利用することによって生じる価値

(レクリエーションの場の提供、教育の場の提供、健康促進、心理

的な潤いの提供、文化的活動の基礎等)

存在価値 公園があることによって生じる価値

(都市環境維持・改善、都市防災、都市景観向上等)

利用価値は、検討区域を公園として整備することによって来訪者が直接的に得られる価値

である。この価値の計測については、旅行費用法※1 を用いて、競合する公園と施設検討区

域までの距離を考慮しながら、検討区域の誘致圏内の府民(和歌山県の一部も含む)が来園す

る際の移動費用(交通料金+所要時間)を算定することにより求められる。

誘致圏内の需要を算出式に基づいて計算すると、理論上は、 と想定される。

来園者の移動費用(交通料金、所要時間)を基に、単年度の利用価値を算出(=47,600

万円/年)し、50 年間※2で計測(=47,600 万円/年×50 年)すると、

が発生すると想定される。

※1:旅行費用法/公園利用者は公園までの移動費用をかけてまでも公園を利用する価値がある

と認めているという前提のもとで、公園までの移動費用を利用して公園整備

の価値を貨幣価値で評価する方法。 ※2:50 年間/広域公園については、機能的・経済的に耐用年数を 50 年と設定し、これを公園

整備による効果の発生期間として定めている。

検討区域への年間来園者数:延べ25万人/年

検討区域を整備することによる利用価値:238億円

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《参考》存在価値の算出

検討区域を公園として整備することで生じる存在価値として、次の諸点が挙げられ

る。これらの効果は定性的なものと定量的なものが含まれるが、公園的土地利用はこ

うした効果が複合して発揮されることが特性である。

○景観形成

当該検討区域の豊かな水辺や緑地を活用した景観形成を図ることによって、

誘致圏域居住者の 53%、330 万人の満足度に応えることができる。

○気温低減

当該検討区域を緑地として継承することによって、気温上昇効果を抑制する

ことが可能となり、電力使用料の 4000 万円/年の削減費用に相当する。

○大気浄化

当該区域樹林地を維持管理することによって、109 万円/年の二酸化炭素吸

収効果に相当する。

○樹林地管理と生物多様性保全

定期的な管理を持続することによって、当該区域における植物の確認種数が

2倍となることが期待される。

○府民ニーズの満足度向上

・当該検討区域の緑地資源を保全活用することによって、誘致圏居住者 290 万人

の満足度に応えることができる(府民モニター結果より)。

・新しい公園づくりを府民参加で進めることによって、誘致圏域居住者 250 万人

の満足度に応えることができる(府民モニター結果より)。

上記の存在価値を、森林及び農空間の多面的機能から類推して貨幣価値に置き換え

ると、

利用価値と同様に 50 年間の貨幣価値に置き換える(22,000 万円×50)と、 が発生すると想定される。

検討区域を整備することによる存在価値:22,000 万円/年

検討区域を整備することによる存在価値:110 億円

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6.新しい公園づくりに向けた方策

(1)公園の空間像

府による公園的土地利用を検討するにあたっては、これまで見てきたように検討区

域が緑と景観ならびに歴史に関わる多様なポテンシャルを有していることから、21 世

紀にふさわしい、限りある環境及び財政資源と調和した公園として、これまでの公園

とは異なる新しいタイプの都市公園づくりを目指すことが必要と考える。

まず、「評価すべき資源」として、

・関西国際空港から大阪や和歌山へ向かう人々が最初に目にするみどり ・市街地に隣接する貴重なみどり、和泉葛城山系の前山としてのみどり ・泉南地域の固有の田園景観、文化的な景観

がある。また、「斟酌すべき要素」として、 ・現況を活かした新しいタイプの公園の整備 ・臨空都市の品格を創り出すみどりの創造

(環境配慮型モデルの東アジアへの発信) がある。

これらの考え方を踏まえ、検討区域における公園的土地利用にあたっては、以

下の点に配慮することが重要である。

・現況を活かした景観形成

検討区域内に含まれるみどりのポテンシャルを活かし、四季感あふれる景

観形成を進めていく。

・自然環境の保全と育成

多様な動植物が生息する豊かな自然環境を保全するため、今後の現地調査

等に基づき、持続可能な環境整備を進めていく。

○ コンセプト:日根野荘等の歴史的資源やヤマモモなどの自然植生を有し、関西国

際空港を一望できる個性ある当該地域の豊かな環境を残しつつ活用を図るため、

極力手を加えずに「景観を重視した緑地の保全・育成・創造」を図る都市公園を

目指すこととし、これまでの住民からの施設需要を公園で受け止めるために、テ

ニスコートや体育館等を設置してきたような建設重視型とは異なる新しい公園

づくりを提言。

○ 事業スキーム:整備内容を計画段階ですべて盛り込んでいくようなマスタープラ

ン的な方式や建設重視型ではなく、計画段階から管理運営まで見据えた継続的な

事業推進を図る新しい事業スキーム(シナリオタイプ)を府営公園として初めて

採用。

具体的には、公共が最小の財政資源を集中投下することにより、利用者にとっ

て必要不可欠な施設のみを初期段階で設置し、府民利用・活動を誘発する。その

後は民意を反映しながら、公共も一定の役割を果たしつつ、府民、NPO、企業

等との連携・協働などにより「育てていく」公園と位置付け。

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これらを活かす公園の空間像として景観を重視した緑地の保全・育成・創造を図る

都市公園を目指し、これまでの、住民からの施設需要を公園で受け止めて、テニスコ

ートや体育館等を設置してきたような建設重視型とは異なる新しい公園づくりを進

めることを提言する。

検討区域上空より関西国際空港を見る

検討区域を含む景観形成イメージ

農空間の連続性確保

民有地における緑化推進 緑豊かな沿道景観の整備

景観緑地として保全・育成・創造

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視点場(日根野駅)

視点場(りんくう公園)

視点場(空港連絡道路)

りんくう公園からの可視領域 空港連絡道からの可視領域 日根野駅からの可視領域

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(2)事業スキーム

社会情勢や府の財政状況を踏まえつつ事業を実施していくためには、整備内容を計画

段階ですべて盛り込んでいくようなマスタープラン的な方式や建設重視型の事業スキー

ムではなく、計画段階から管理運営まで見据えた、継続的な事業の推進を図ることがで

き、多様な主体と連携しながら利用者ニーズを反映できる「シナリオタイプ」の事業ス

キームで進めることが必要。また、公共による効率的な資本投下により、利用者にとっ

て不可欠な施設を初期段階で設置し、府民利用・活動を誘発することが必要。

<新しい事業スキームのイメージ>

新しい公園整備を進めるにあたっての事業スキームとしては、次の手法が考えられる。

①シナリオタイプの公園づくり

シナリオタイプとは、おおよその目標像を持つものの、整備の手を加えその効果

を確認しながら次の整備を考えて進めていくものである。そのためには、常に府民

ニーズに即した事業がなされるよう、第三者の意見を反映する組織(構成員として、

府民、NPO、企業、学識経験者、行政などを想定)を設置し、魅力的で楽しいプ

ログラムを提供していただくことにより、府民の公園利用の促進を図ることが必要

である。また、その際には、府民、NPO、企業等との連携・協働により、それぞ

れが相互の責任を担いつつ、行政へ意見を反映していくことが重要であると考える。

府民ニーズや

時代の要請に

即した公園

確認:検討・

見直し

確認:検討・

見直し

活動の支援

活動の連携 活動の支援

活動の充実・波及

確認:検討・

見直し

活動

活動

活動

活動

運営会議

府民・研究者

行政・専門家・民間企業

NPO等活動団体

ボランティア

活動

活動

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②PDCAサイクル

長期的視点に立って公園の将来イメージを示しながらも、社会経済情勢の変化に

対応していけるように、PDCAサイクルにより公園づくりを進める。

PDCAサイクルとは、計画(PLAN)を実行(DO)し、評価(CHECK)して検討・見

直し(ACTION)に結びつけ、次の計画に活かすとともに、計画から検討・見直しま

でのプロセスを繰り返し継続することであり、これによって、より良い、質の高い

公園を作り上げ、府民に提供することが期待できると考える。

③現在の環境資源の活用

当該地域のみどりのポテンシャルを活かし、関空からのランドマークとして、将

来にわたってすばらしい景観形成を進めるとともに、豊かな自然環境を保全しつつ

利活用することが必要である。

PLAN

DO

CHECK

ACTION

繰り返し

<PLAN/計画>

<DO/活動・実行>

<CHECK/評価>

<ACTION/見直し>

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(3)景観を重視した緑地のイメージ

これまでの我が国の都市公園においては、スポーツ、健康、レクリエーションなどの

住民からの旺盛な施設需要を公園で受け止め、土地造成をし、体育館やテニスコート等

を設置してきた。しかし、社会資本が一定整備されるとともに、人口減少社会をも展望

すると、これからの都市公園については、新しい公園像を打ち出す必要性も出てきてい

る。今回はそうした新しいタイプの公園として、府民参加も得て、現況を活かし、必要

最小の経費で整備・管理し、環境にふれあい楽しむ公園とすることを目指している。 イメージとしては、P30の写真にあるように、緑を保全し、公園と周囲の農地等の

私有地との区別が景観的にはわからない、エッジレス(縁のない)な周辺と一体となっ

た魅力ある地域景観の形成が望ましいと考える。

当地域は地理的特性から3地区にわけて考えることができるが、

各地区の現況を活かした将来の方向性(イメージ)は以下のとおりである。

(緑地のイメージ-①(P29)参照)

○ 中地区・・・平坦地を活かし、ビジターセンターや駐車場など公園としての管理機

能を配置するとともに、棚田跡地を活用した景観づくりなどを行う。ま

た、近郊緑地保全区域外における民活導入検討との連携を図る。

○ 東地区・・・現在の植生を生かした植物鑑賞空間を創出するとともに、生きがい、

安らぎ、交流の場となりえる多様な自然空間の提供を行う。

○ 西地区・・・希少動植物の生息環境を保全するとともに、自然観察・自然学習が行

える場の確保や、府南部の風景緑地再生活動の拠点となることを目指す。

また、現況を活かした整備における将来のイメージ例は、緑地のイメージ-②(P29)

のとおりである。

なお、シナリオタイプの公園の例や類似施設との違いについても併せて検証を行った。

<参考> 【資料13】シナリオタイプの公園の例

【資料14】検討区域の誘致圏内における類似施設との違い

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景観を重視した緑地のイメージ ― ①

<新しいタイプの公園> 住民参加も得て、現況を活かし、最小限の経費で整備・管理し、環境にふれあい楽しむ公園にする。

●棚田と一体となって地域景観の骨格を形成する樹林地(国営飛鳥歴史公園:祝戸(いわいど)地区)

●周辺農地と一体となって地域景観魅力を高める樹林地(国営飛鳥歴史公園:高松塚周辺地区) ↑ 公園と私有地(農地・果樹園等)の区別が景観的にはわからない、エッジレス(縁のない)景観を形成 ↑

<<<西西西地地地区区区>>>

・・・希希希少少少動動動植植植物物物ののの生生生育育育環環環境境境ののの保保保全全全

・・・生生生ききき物物物とととふふふれれれあああえええるるるここことととがががででできききるるる

自自自然然然観観観察察察・・・自自自然然然学学学習習習ががが行行行えええるるる場場場ののの

確確確保保保

・・・大大大阪阪阪府府府南南南部部部ののの風風風景景景緑緑緑地地地再再再生生生活活活動動動

拠拠拠点点点ののの形形形成成成

<<<中中中地地地区区区>>>

・・・近近近郊郊郊緑緑緑地地地保保保全全全区区区域域域外外外にににおおおけけけるるる民民民活活活検検検討討討

とととののの連連連携携携

・・・まままとととまままっっったたた平平平坦坦坦地地地ををを活活活かかかししし、、、ビビビジジジタタターーー

セセセンンンタタターーーややや駐駐駐車車車場場場なななどどど、、、公公公園園園とととしししてててののの

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・・・棚棚棚田田田ののの跡跡跡地地地ををを活活活用用用しししたたた風風風景景景ののの再再再生生生

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<<<東東東地地地区区区>>>

・・・現現現況況況植植植生生生ををを活活活かかかしししたたた植植植物物物鑑鑑鑑賞賞賞空空空間間間ののの

創創創出出出

・・・生生生きききがががいいい、、、安安安らららぎぎぎ、、、交交交流流流等等等ののの場場場ととと

なななりりりえええるるる多多多様様様ななな自自自然然然空空空間間間ののの提提提供供供

<これまでの公園> 住民からの施設需要を公園で受け止め、土地造成をし、体育館・野球場・テニスコート等を設置。

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景観を重視した緑地のイメージ ― ②

<現 況>

●関西空港自動車道から望む和泉・葛城山系(検討区域は市街地に近い前山にあたる)

●中地区エントランス部分(ササ、クズが繁茂している)

●中地区向井池のパノラマ風景(豊かな水量をたたえるため池風景)

●中地区向井池の堤防から北を望む(棚田の名残が感じられる)

30<将来イメージ>

●美しい樹林地

●出入り口の棚田を菜の花で飾る(季節感あふれる演出で来園者を迎えるもてなし)

●自然の営みとしては最も美しい湿地ゾーン形成(エコトーン※があること

で、種多様性や個体数が増加する。)

※:2種類以上の生態系の移行帯。

●棚田を活かして草地広場を整備した例(背後に美しい疎開林を備えることが大切)

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7.おわりに

・ 本委員会においては、民間活力導入の可能性の見極めや土地利用にあたっての都市

公園事業を導入することの意義、及びそれを進める際に求められる整備・運営の考

え方などについて、基本的な方向を示した。

・ 今後、将来に向かっては、過去の「負の遺産」を将来の世代を含めた府民のよき資

産にするため、府民の理解を得ながら、すばらしい環境を残し、地域の活性化に寄

与するよう努めるとともに、多くの府民利用に供し満足していただける都市公園に

していくことが最適であると考える。

・ 本提言においては、都市公園事業の整備の内容や事業スキーム等について、これま

でとは異なる全く新しい方向性やイメージを「シナリオタイプ」という表現で示し

たが、具体的な整備の内容や整備費の精査、事業の進め方、充実した多様なプログ

ラム展開などについては、今後の大阪府の取り組みに委ねたい。

・ 近郊緑地保全区域外地域における民活については、民間事業者参入の意向調査結果

への府の評価も踏まえ、民活導入によりにぎわい創出と地域活性化、公園利用者の

利便性向上のためのゾーンと位置づけた。ただ、実現にあたっては諸課題があるた

め、府において、地元市とも連携の上、その実現に向けた有効な方策を見い出され

たい。

・ 最後に、今後の事業化にあたっては、本検討委員会提言を踏まえつつ、パブリック

コメント等により、より多くの府民の意見を聞きながら、地域の活性化への寄与や

よりよい「育てていく」公園づくりに取り組んでいただきたい。

また、将来に渡って、常に府民ニーズに即したものとなるよう、公開性を担保しつ

つ、第三者の意見を反映する機能をもつ委員会等を設置し、整備や管理運営を進め

ることが重要であることも付言しておきたい。