8
火山灰質地盤における杭の地震時水平地盤反力の評価に関する遠心模型実験 Centrifuge model test on evaluation of horizontal subgrade reaction of piles in volcanic ash ground during earthquake 江川拓也*,冨澤幸一**,山梨高裕*** Takuya EGAWA, Koichi TOMISAWA and Takahiro YAMANASHI 本検討では,火山灰質地盤の地震時における地盤~杭基礎系の相互作用に関し,火山灰質地盤と 砂地盤の杭を対象とした遠心模型実験から,地震時水平地盤反力~変位関係について考察を行った。 その結果,杭と地盤の相対変位は,加振初期に大きな値の振幅を示すが液状化の進展に伴い振幅が 減少し,これは,液状化の進展に伴う地盤反力ならびに地盤反力係数の低減によるものと考えられ た。液状化中における地盤反力係数の低減傾向は,火山灰質地盤と砂地盤で同程度の傾向を示した が,加振前の静的地盤反力係数の低減度合いは,砂地盤に比べ火山灰質地盤で小さいものと考察さ れた。 キーワード:火山灰質土,液状化,杭基礎,地盤反力,遠心模型実験 Volcanic ash soil, Liquefaction, Pile, subgrade reaction, Centrifuge model test 1.はじめに 火山灰質地盤における杭基礎の設計は砂質土や粘性土 に準じており,地震時の静的照査法においても同様に杭 の水平方向地盤反力係数等を常時(静的)の設計値を基 本に一義的に決定されている 1), 2) 。しかしながら,北海 道の火山灰質土は特異な力学特性を示すことや 3) ,砂質 土として設計された常時の(静的な)杭の鉛直支持力や 水平抵抗の発現が設計値とは異なることが報告されてお 4) ,地震時における地盤~杭基礎系の相互作用も砂質 土とは異なることが考えられる。地震時ならびに液状化 時の杭の水平地盤反力~変位関係を明らかにすることは, 地震時における地盤~杭基礎系の相互作用を検討するう えで重要であり,本検討では,火山灰質地盤における杭 の地震時水平地盤反力~変位関係について,火山灰質地 盤と砂地盤を対象とした杭の遠心模型実験から考察を行 った。 2.実験概要 遠心模型実験は,図-1 に示す縮尺 1/50 の模型地盤に 模型杭を組杭としてたて込み,50G の遠心加速度場にお いて表-1 に示す実験ケースに対し動的加振実験と動的 加振実験前に静的水平載荷実験を行った。入力地震動は レベル 2 相当とし,実物換算で最大加速度 750gal 程度, 周波数 1.5Hz の正弦波 20 波とした。 模型杭は,外径 10.0mm,厚さ 0.2mm,長さ 400mm (実 スケール換算で外径 500mm,肉厚 10mm,杭長 20m)の スチール製(SS400)とし,杭配列は図-1 に示すように 2 ×2 列の組杭とした。4 本組杭のうち 1 本は杭内部 12 カ所(6 深度各 2 点)にひずみゲージを貼付している。 杭先端は固定端とし,杭頭はおもりを取り付けた自由端 としている。 * 寒地土木研究所 寒地地盤チーム 研究員 Researcher, Civil Engineering Research Institute for Cold Region ** 寒地土木研究所 寒地地盤チーム 主任研究員 Senior researcher, ditto *** 寒地土木研究所 寒地地盤チーム 上席研究員 Team leader , ditto 図-1 実験模型概要 表-1 実験ケース 静的載荷点 レーザー変位計 単位mm 加振方向 火山灰質土 D r =85% ρ d =1.097g/cm 3 正弦波20周波数1.5Hz 最大750gal 程度 単発加振 ※実スケール換算値 模型地盤 豊浦砂 D r =85% ρ d =1.590g/cm 3 入力地震動 ケース1 ケース2

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火山灰質地盤における杭の地震時水平地盤反力の評価に関する遠心模型実験

Centrifuge model test on evaluation of horizontal subgrade reaction of piles in volcanic ash ground during earthquake

江川拓也*,冨澤幸一**,山梨高裕***

Takuya EGAWA, Koichi TOMISAWA and Takahiro YAMANASHI

本検討では,火山灰質地盤の地震時における地盤~杭基礎系の相互作用に関し,火山灰質地盤と

砂地盤の杭を対象とした遠心模型実験から,地震時水平地盤反力~変位関係について考察を行った。

その結果,杭と地盤の相対変位は,加振初期に大きな値の振幅を示すが液状化の進展に伴い振幅が

減少し,これは,液状化の進展に伴う地盤反力ならびに地盤反力係数の低減によるものと考えられ

た。液状化中における地盤反力係数の低減傾向は,火山灰質地盤と砂地盤で同程度の傾向を示した

が,加振前の静的地盤反力係数の低減度合いは,砂地盤に比べ火山灰質地盤で小さいものと考察さ

れた。

キーワード:火山灰質土,液状化,杭基礎,地盤反力,遠心模型実験

Volcanic ash soil, Liquefaction, Pile, subgrade reaction, Centrifuge model test

1.はじめに

火山灰質地盤における杭基礎の設計は砂質土や粘性土

に準じており,地震時の静的照査法においても同様に杭

の水平方向地盤反力係数等を常時(静的)の設計値を基

本に一義的に決定されている 1), 2)。しかしながら,北海

道の火山灰質土は特異な力学特性を示すことや 3),砂質

土として設計された常時の(静的な)杭の鉛直支持力や

水平抵抗の発現が設計値とは異なることが報告されてお

り 4),地震時における地盤~杭基礎系の相互作用も砂質

土とは異なることが考えられる。地震時ならびに液状化

時の杭の水平地盤反力~変位関係を明らかにすることは,

地震時における地盤~杭基礎系の相互作用を検討するう

えで重要であり,本検討では,火山灰質地盤における杭

の地震時水平地盤反力~変位関係について,火山灰質地

盤と砂地盤を対象とした杭の遠心模型実験から考察を行

った。

2.実験概要

遠心模型実験は,図-1 に示す縮尺 1/50 の模型地盤に

模型杭を組杭としてたて込み,50G の遠心加速度場にお

いて表-1 に示す実験ケースに対し動的加振実験と動的

加振実験前に静的水平載荷実験を行った。入力地震動は

レベル 2 相当とし,実物換算で最大加速度 750gal 程度,

周波数 1.5Hz の正弦波 20 波とした。

模型杭は,外径 10.0mm,厚さ 0.2mm,長さ 400mm(実

スケール換算で外径 500mm,肉厚 10mm,杭長 20m)の

スチール製(SS400)とし,杭配列は図-1 に示すように

2 本×2 列の組杭とした。4 本組杭のうち 1 本は杭内部 12

カ所(6 深度各 2 点)にひずみゲージを貼付している。

杭先端は固定端とし,杭頭はおもりを取り付けた自由端

としている。

* 寒地土木研究所 寒地地盤チーム 研究員 Researcher, Civil Engineering Research Institute for Cold Region

** 寒地土木研究所 寒地地盤チーム 主任研究員 Senior researcher, ditto

*** 寒地土木研究所 寒地地盤チーム 上席研究員 Team leader, ditto

図-1 実験模型概要

表-1 実験ケース

静的載荷点レーザー変位計

単位mm 加振方向

火山灰質土

D r=85% ρ d=1.097g/cm3 正弦波20波 周波数1.5Hz 最大750gal程度

 単発加振  ※実スケール換算値

模型地盤

豊浦砂

D r=85% ρ d=1.590g/cm3

入力地震動

ケース1

ケース2

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模型地盤は,火山灰質地盤には札幌市近郊の土取場か

ら採取した支笏軽石流堆積物 Spfl の 0.85mm ふるい通過

分を用い,表-1 に示す採取現場密度相当で作製した。砂

地盤には豊浦砂を用い,火山灰質地盤模型と同等の相対

密度となるように作製した。各模型地盤の間隙流体には

水の 50 倍の動粘度を持つシリコンオイルを脱気して用

いており,脱気槽内で飽和させた。

各模型地盤材料の物理力学特性と粒径加積曲線を表-2

と図-2 に示す。火山灰質土(Spfl)の細粒分が豊浦砂に

比べ多いものの,各材料とも液状化の判定を行う必要が

ある砂質土層(FC≦35%,D50≦10mm かつ D10≦1mm)

に分類される 5)。図-3 に各模型地盤の繰返し非排水三軸

試験による液状化強度曲線を示す。火山灰質土(Spfl)

の液状化強度比RL20は相対密度を同等であるとした豊浦

砂よりも低い値となっている。

3.実験結果と考察

上記の条件で実施した遠心力模型実験から得られた計

測データを整理し考察を行った。なお,以降に示す計測

値等の数値は実スケール換算として整理している。

3.1 地盤内過剰間隙水圧の挙動

図-4 に,加振により地盤内に発生した各ケースの過剰

間隙水圧とその消散過程を示す。砂地盤では,発生した

過剰間隙水圧が時間の経過とともに速く消散する様子が

確認されるが,火山灰質地盤では,発生した過剰間隙水

圧の消散が遅くなっており,これは,細粒分が多く含ま

れることが原因と考えられる。図-5 は図-4 の 0~20 秒

における各深度の値を過剰間隙水圧比として整理したも

のである。各ケースともに地盤深部においても過剰間隙

水圧比が 1 に達しており,地盤全体に液状化が生じてい

ることがわかる。地盤深部では地盤浅部に遅れて過剰間

隙水圧が上昇しており,地盤浅部から液状化が生じてい

ることがわかる。

図-2 模型地盤材料の粒径加積曲線 図-3 模型地盤の液状化強度曲線

図-4 加振により発生した地盤内過剰間隙水圧の時刻歴(0~600sec)

表-2 模型地盤材料の物理力学特性

繰返し三軸強度比 R L20 0.183 0.412

曲率係数 U c' 2.60 0.91

最大粒径 D max(mm) 0.85 0.43

土粒子の密度 ρ s(g/cm3) 2.434 2.643

均等係数 U c

50%粒度 D 50(mm) 0.143 0.164

10%粒度 D 10(mm) 0.007 0.115

29.90 1.60

粘土分(%) 8.7 0.1

細粒分含有率 F C(%) 32.9 0.1

シルト分(%)

砂分(%) 67.1 99.8

24.2 0.1

火山灰質土 豊浦砂

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0.001 0.01 0.1 1 10 100

通過質量百分

率(

%)

粒 径 (mm)

Spfl-0.85mm以下

豊浦砂

Spfl不撹乱試料

Spfl-現場粒度

Spflの一般粒度の範囲0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

0.45

0.50

0.55

0.60

0.1 1 10 100 1000

繰返し応力比σd

/2σ 0

'

繰返し回数Nc

DA=5%

Spfl(再構成)Dr=85%豊浦砂Dr=85%

RL20=0.412

RL20=0.183

20回

0

50

100

150

200

0 100 200 300 400 500 600

過剰間隙水圧

(kP

a)

経過時間 (sec)

火山灰質地盤

PPT1, G.L. -14.5m

PPT2, G.L. -10.0m

PPT3, G.L. -6.0m

PPT4, G.L. -2.0m

0

50

100

150

200

0 100 200 300 400 500 600

過剰間隙水圧

(kP

a)

経過時間 (sec)

砂地盤

PPT1, G.L. -14.5m

PPT2, G.L. -10.0m

PPT3, G.L. -6.0m

PPT4, G.L. -2.0m

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3.2 杭の地盤反力係数の評価

(1) 静的水平載荷実験による地盤反力係数

図-6 に各ケースの加振前に実施した静的水平載荷実

験から得られた杭頭載荷点における荷重~変位の関係を

示す。一般に杭の水平載荷試験結果からの地盤反力係数

の評価は,杭の弾性地盤反力法の基本方程式 1)により基

準変位量時(杭径の 1%変位時)の値を用いて評価され

るが,本検討では,杭変位に伴う地盤反力係数の変化を

評価するため,実験により各深度で計測される杭の曲げ

ひずみから曲げモーメントを求め,これを深度方向に二

階微分または二階積分することで求まる地盤反力,杭の

変位から評価する時松らの整理方法 6)を参考とした。

図-7 に静的水平載荷実験結果から地盤反力係数を算出

する方法を示す。なお,杭の曲げモーメントの深度分布

は,3次スプライン補間法 7)により各計測点間を補間し

作成した。加振中の地盤反力係数の評価も同様としてお

り,各数値の算出方法の詳細については後述する。

図-8~図-11 に,各ケースの静的水平載荷実験から得

られた,杭の曲げモーメント,杭変位,地盤反力,地盤

反力係数の深度分布と,杭の水平抵抗領域である杭の特

性長 1/β相当の範囲に位置するひずみゲージ P4 と P5 で

の杭変位と地盤反力・地盤反力係数の関係を示す。

各ケースともに杭頭水平変位の増加に伴い,地盤内にお

(a)ケース 1:火山灰質地盤 (b)ケース 2:砂地盤

図-5 0~200sec 部分における過剰間隙水圧比の時刻歴

0

0.5

1

1.5

2

PPT4 , G.L.-2.0m

火山灰質地盤

過剰

間隙

水圧比

Δu/σ v

'

0

0.5

1

1.5

2

PPT3 , G.L.-6.0m

火山灰質地盤

過剰間隙

水圧比

Δu/σ v

'

0

0.5

1

1.5

2

PPT2 , G.L.-10.0m

火山灰質地盤

過剰

間隙

水圧比

Δu/σ v

'

0

0.5

1

1.5

2

0 5 10 15 20

経過時間(sec)

PPT1 , G.L.-14.5m

火山灰質地盤

過剰間

隙水圧

Δu/σ v

'

-800

-400

0

400

800

基盤

火山灰質地盤

基盤応答

加速度

(gal

)

0

0.5

1

1.5

2

PPT4 , G.L.-2.0m

砂地盤

過剰間隙

水圧比

Δu/σ v

'

0

0.5

1

1.5

2

PPT3 , G.L.-6.0m

砂地盤

過剰間隙

水圧比

Δu/σ v

'0

0.5

1

1.5

2

PPT2 , G.L.-10.0m

砂地盤

過剰間隙

水圧比

Δu/σ v

'

0

0.5

1

1.5

2

0 5 10 15 20

経過時間(sec)

PPT1 , G.L.-14.5m

砂地盤

過剰間隙

水圧比

Δu/σ v

'

-800

-400

0

400

800

基盤

砂地盤

基盤応答

加速度

(gal

)

図-6 杭頭載荷点における荷重~変位関係

図-7 静的地盤反力係数の算出方法(文献 6)に加筆)

2

2

dx

MdP

2

2

dx

ydEIM

yD

Pkh

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 1 2 3 4 5 6 7

水平

荷重

(kN

)

載荷点の変位 (cm)

ケース2

砂地盤ケース1

火山灰質地盤

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ける杭の曲げモーメント,杭変位,地盤反力は増加し,

地盤反力係数は減少し概ね収束した。その傾向は非線形

的に増減することが確認され,微小な変位内での評価で

はあるが,砂地盤に比べ火山灰質地盤のほうが増減の程

度が小さい。収束した地盤反力係数を静的地盤反力係数

と評価すると,火山灰質地盤の静的地盤反力係数は相対

密度が同等の砂地盤に比べて 1/10 程度と小さい。

図-8 静的水平載荷実験による杭の曲げモーメント,水平変位,地盤反力,地盤反力係数(ケース 1:火山灰質地盤)

図-9 杭の特性長 1/β の範囲に位置する P4 と P5 での杭変位と地盤反力・地盤反力係数の関係(ケース 1:火山灰質地盤)

図-10 静的水平載荷実験による杭の曲げモーメント,水平変位,地盤反力,地盤反力係数(ケース 2:砂地盤)

図-11 杭の特性長 1/β の範囲に位置する P4 と P5 での杭変位と地盤反力・地盤反力係数の関係(ケース 2:砂地盤)

0

2

4

6

8

10

12

14

16

-150 -100 -50 0 50

杭の

高さ

(m)

曲げモーメント (kN・m)

←増加

0

2

4

6

8

10

12

14

16

-20 0 20 40地盤反力 (kN/m)

増加→

0

2

4

6

8

10

12

14

16

-1 0 1 2 3水平変位 (cm)

増加→

0

2

4

6

8

10

12

14

16

0 40000 80000地盤反力係数 (kN/m3)

←減少

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

杭の地盤

反力

(kN

/m)

杭の水平変位 (cm)

P5 (G.L.-2m)

P4 (G.L.-3.5m)

P5 (G.L.-2m)

P4 (G.L.-3.5m)

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

杭の地盤

反力係数

kh (

kN/m

3 )

杭の水平変位 (cm)

P5 (G.L.-2m)

P4 (G.L.-3.5m)

P4 (G.L.-3.5m)

P5 (G.L.-2.0m)

0

2

4

6

8

10

12

14

16

-150 -100 -50 0 50

杭の高

さ(m

)

曲げモーメント (kN・m)

←増加

0

2

4

6

8

10

12

14

16

-20 0 20 40地盤反力 (kN/m)

増加→

0

2

4

6

8

10

12

14

16

-1 0 1 2 3水平変位 (cm)

増加→

0

2

4

6

8

10

12

14

16

0 40000 80000地盤反力係数 (kN/m3)

←減少

0

20000

40000

60000

80000

100000

120000

140000

160000

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

杭の地盤

反力係数

kh (

kN/m

3 )

杭の水平変位 (cm)

P5 (G.L.-2m)

P4 (G.L.-3.5m)

P5 (G.L.-2m)

P4 (G.L.-3.5m)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

杭の地

盤反力

(kN

/m)

杭の水平変位 (cm)

P5 (G.L.-2m)

P4 (G.L.-3.5m)

P5 (G.L.-2m)

P4 (G.L.-3.5m)

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(2) 加振中の地盤反力係数

図-12 に加振中の地盤反力係数の算

出手順を示す。加振中の地盤反力係数

は,式(1)に示すように地盤反力 P を

杭と地盤の相対変位 yR と杭径 D で除

すことで求められる。杭と地盤の相対

変位 yR は,杭の変位 y から地盤の相対

変位 yGR を引いたものであり,地盤の

相対変位 yGR は,地盤の変位 yGから基

盤の変位 yBを引いたものである。杭の

変位 y は,式(2)の杭の変位と曲げモー

メントの関係を用いて,杭の曲げモー

メントを高さ x で二階積分すること

で求め,杭の曲げモーメントは,式(3)

に示すように測定された杭の曲げひず

み εより求める。地盤の変位 yGと基盤

の変位 yBは,その地点の計測された加

速度を二階積分することで求める。二

階積分は台形公式を用いた数値積分に

より行った。地盤反力 P は,式(4)に示

すように杭の曲げモーメントを高さ x

で二階微分することで求め,二階微分

は,式(5)に示すように微分式を差分化

して近似的に行った。

図-13,図-14 に,各ケースの杭の特

性長 1/β 相当の範囲に位置する P4 と

P5 における主要計測値の時刻歴を示

した。図-13 では P4(G.L.-3.5m)深度で

の間隙水圧を計測していないが,過剰

間隙水圧の上昇に伴う杭の挙動を確認

するために,P5(G.L.-2.0m)深度での過

剰間隙水圧比を示した。各図より,地

盤と基盤の相対変位は比較的同程度の

振幅をもって継続しているが,杭の曲

げモーメント,杭の変位,杭と地盤の

相対変位,ならびに地盤反力は,加振

初期に大きな値の振幅を示し,加振に

よる過剰間隙水圧の上昇すなわち液状

Rh yD

Pk

(1)

2

2

dx

ydEIM

(2)

r

EIM

(3)

2

2

dx

MdP

(4)

211

2

2 2

x

MMM

dx

MdP nnn

(5)

図-12 加振中の地盤反力係数の算出方法(文献 6)に加筆)

2

2

dx

MdP

2

2

dx

ydEIM

GRR yyy

BGGR yyy

Rh yD

Pk

(a)ケース 1:火山灰質地盤 (b)ケース 2:砂地盤

図-13 P4(G.L.-3.5m)における主要計測値の時刻歴

-15

-10

-5

0

5

10

15

地盤

と基

盤の

相対

変位

(cm

)

0

1000

2000

3000

4000

5000

0 5 10 15 20

経過時間 (sec)

地盤

反力

係数

(kN

/m3 )

-500

-250

0

250

500

曲げ

モー

メン

ト(k

N.m

)

-15

-10

-5

0

5

10

15

杭と

地盤

相対

変位

(cm

)

-15

-10

-5

0

5

10

15

地盤

と基

盤の

相対

変位

(cm

)

-800

-400

0

400

800

基盤

応答

加速度

(gal

)

-15

-10

-5

0

5

10

15

杭の

変位

(cm

)

-100

-50

0

50

100

地盤

反力

(kN

/m)

0

0.5

1

1.5

2

過剰

間隙

水圧比

Δu/σ v

'

PPT4, G.L.-2.0m

0

0.5

1

1.5

2

過剰

間隙

水圧

Δu/σ v

'

PPT4, G.L.-2.0m

-800

-400

0

400

800

基盤

応答

加速

度(g

al)

-15

-10

-5

0

5

10

15

杭の

変位

(cm

)

-500

-250

0

250

500

曲げ

モー

メン

ト(k

N.m

)

-15

-10

-5

0

5

10

15

杭と

地盤

相対

変位

(cm

)

-100

-50

0

50

100

地盤

反力

(kN

/m)

0

1000

2000

3000

4000

5000

0 5 10 15 20

経過時間 (sec)

地盤

反力

係数

(kN

/m3 )

杭の動的加振実験

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化の進展に伴い振幅が減少していく様

子が確認される。この関係から求まる

地盤反力係数も液状化の進展に伴い低

減していくことがわかる。

これらのことから,液状化が生じる

地盤における地盤~杭基礎系の地震時

相互作用として,地震動の初期では地

盤の振幅に追随して杭は大きな振幅を

示すが,液状化が進展した状況では,

地盤反力ならびに地盤反力係数の低減

すなわち地盤が杭の反力体としての作

用を損ない,杭の振幅が減少したもの

と考えられる。飛田らの同様の研究 8)

においても,乾燥砂では曲げモーメン

トや杭変位の振幅が減少せずに継続す

るが,飽和砂では今回の結果と同様に

加振初期に大きな値の振幅を示し液状

化が進展するにつれて減少していくこ

とが報告されており,その原因として,

杭と地盤がほぼ一体となって動いてい

る可能性や,振動による地盤の非線形

性による振動時の地盤反力係数の低下

などが考えられている。

3.3 地盤の液状化に伴う杭の地盤反力

係数の低減傾向の評価

図-15,図-16 は,各ケースの加振前

と加振中(液状化中)の杭の地盤反力

係数を杭と地盤の相対変位との関係と

して比較したものである。各ケースに

おける液状化中の地盤反力係数は,加

振前の静的水平載荷実験から得られた

静的地盤反力係数よりも低減している

ことが確認され,その低減度合いは砂

地盤に比べて火山灰質地盤の方が小さ

い。

(a)ケース 1:火山灰質地盤 (b)ケース 2:砂地盤 図-14 P5(G.L.-2.0m)における主要計測値の時刻歴

-800

-400

0

400

800

基盤

応答

加速

度(g

al)

-500

-250

0

250

500

曲げ

モー

メン

ト(k

N.m

)

-100

-50

0

50

100

地盤

反力

(kN

/m)

-15

-10

-5

0

5

10

15

杭と

地盤

相対

変位

(cm

)

0

1000

2000

3000

4000

5000

0 5 10 15 20

経過時間 (sec)

地盤反力係数

(kN

/m3 )

-15

-10

-5

0

5

10

15

地盤と

基盤の

相対

変位

(cm

)

.

-15

-10

-5

0

5

10

15杭

の変

位(c

m)

-800

-400

0

400

800

基盤

応答

加速

度(g

al)

-500

-250

0

250

500

曲げ

モー

メン

ト(k

N.m

)

-100

-50

0

50

100

地盤

反力

(kN

/m)

-15

-10

-5

0

5

10

15

杭と

地盤

相対

変位

(cm

)

0

1000

2000

3000

4000

5000

0 5 10 15 20

経過時間 (sec)

地盤反力係数

(kN

/m3 )

-15

-10

-5

0

5

10

15

杭の

変位

(cm

)

-15

-10

-5

0

5

10

15

地盤

と基

盤の

相対

変位

(cm

)

0

0.5

1

1.5

2

過剰

間隙

水圧

Δu/σ v

'

PPT4, G.L.-2.0m

0

0.5

1

1.5

2

過剰間

隙水圧

Δu/σ v

'

PPT4, G.L.-2.0m

(a) P5(G.L.-2.0m) (b) P4(G.L.-3.5m)

図-15 加振前と加振中(液状化中)の地盤反力係数の比較(ケース 1:火山灰質地盤)

0

3000

6000

9000

12000

15000

0 2 4 6 8 10 12

杭の

地盤

反力

係数

kh (

kN/m

3 )

杭と地盤の相対変位 (cm)

加振実験

静的水平載荷実験

静的水平載荷実験(加振前収束値)

加振実験(加振中(液状化中))

P5 (G.L.-2m)

0

3000

6000

9000

12000

15000

0 2 4 6 8 10 12

杭の

地盤

反力

係数

kh(k

N/m

3 )

杭と地盤の相対変位 (cm)

加振実験

静的水平載荷実験

静的水平載荷実験(加振前収束値)

加振実験(加振中(液状化中))

P4 (G.L.-3.5m)

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図-17,図-18 は,図-15 と図-16 の関係を火山灰質地

盤と砂地盤をあわせて深度別に比較したものである。両

図(a)は,液状化中における地盤反力係数の低減傾向を確

認するために,両図(b)の加振中(液状化中)のデータを

抽出し縦軸のスケールを変えて示したものであるが,地

盤種別による傾向の違いはほとんどなく,地震時の液状

化に伴い加振前の静的地盤反力係数は両者で同程度まで

低下し同様の低減傾向を示すものと考えられる。しかし,

両図(b)に示す通り,砂地盤では加振前の静的地盤反力係

数が大きいため地震時の液状化に伴う静的地盤反力係数

の低減度合いが大きく,火山灰質地盤では加振前の静的

地盤反力係数が小さいため地震時の液状化に伴う静的地

盤反力係数の低減度合いは砂地盤に比べ小さいものと考

察される。

(a) P5(G.L.-2.0m) (b) P4(G.L.-3.5m)

図-16 加振前と加振中(液状化中)の地盤反力係数の比較(ケース 2:砂地盤)

(a) (b)

図-17 P5(G.L.-2.0m)における火山灰質地盤と砂地盤の地盤反力係数の比較

(a) (b)

図-18 P4(G.L.-3.5m)における火山灰質地盤と砂地盤の地盤反力係数の比較

0

10000

20000

30000

40000

50000

0 2 4 6 8 10 12

杭の

地盤

反力

係数

kh(k

N/m

3 )

杭と地盤の相対変位 (cm)

加振実験

静的水平載荷実験

静的水平載荷実験(加振前収束値)

加振実験(加振中(液状化中))

P4 (G.L.-3.5m)

0

10000

20000

30000

40000

50000

0 2 4 6 8 10 12

杭の地

盤反

力係

数kh

(kN

/m3 )

杭と地盤の相対変位 (cm)

加振実験

静的水平載荷試験

静的水平載荷実験(加振前収束値)

加振実験(加振中(液状化中))

P5 (G.L.-2m)

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

0 2 4 6 8 10 12

杭の地

盤反

力係

数kh

(kN

/m3 )

杭と地盤の相対変位 (cm)

○加振実験(火山灰質地盤)

●加振実験(砂地盤)

P5 (G.L.-2.0m)

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

0 2 4 6 8 10 12

杭の

地盤

反力

係数

kh (

kN/m

3 )

杭と地盤の相対変位 (cm)

静的水平載荷実験(火山灰質地盤収束値)

静的水平載荷実験(砂地盤収束値)

加振実験(加振中(液状化中))

○加振実験(火山灰質地盤)□静的水平載荷試験(火山灰質地盤)●加振実験(砂地盤)■静的水平載荷試験(砂地盤)

P5 (G.L.-2.0m)

0

1000

2000

3000

4000

5000

0 2 4 6 8 10 12

杭の

地盤

反力

係数

kh (

kN/m

3 )

杭と地盤の相対変位 (cm)

P4 (G.L.-3.5m)

○加振実験(火山灰質地盤)

●加振実験(砂地盤)

0

10000

20000

30000

40000

50000

0 2 4 6 8 10 12

杭の

地盤

反力

係数

kh(k

N/m

3 )

杭と地盤の相対変位 (cm)

静的水平載荷実験(砂地盤収束値)

加振実験(加振中(液状化中))

静的水平載荷実験(火山灰質地盤収束値)

P4 (G.L.-3.5m)

○加振実験(火山灰質地盤)□静的水平載荷試験(火山灰質地盤)●加振実験(砂地盤)■静的水平載荷試験(砂地盤)

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4.まとめ

本検討では,火山灰質地盤における杭の地震時水平地

盤反力~変位関係について,火山灰質地盤と砂地盤を対

象に実施した杭の静的ならびに動的遠心模型実験結果に

基づき考察を行った。その結果を以下にまとめる。

(1)加振中における杭の曲げモーメントならびに杭と地

盤の相対変位は,加振初期に大きな値の振幅を示し,液

状化の進展に伴い振幅が減少した。

(2)(1)のことは,液状化が生じる地盤における地盤~杭基

礎系の地震時相互作用として,液状化の進展に伴う地盤

反力ならびに地盤反力係数の低減,すなわち,地盤が杭

の反力体としての作用を損なうものと考えられる。

(3)加振前の静的地盤反力係数は,地震時の液状化に伴い

火山灰質地盤と砂地盤で同程度まで低下し,液状化中に

おける杭の地盤反力係数の低減傾向は,両者で同様の傾

向を示すものと考えられる。

(4)砂地盤と相対密度が同等の火山灰質地盤における杭

の地盤反力係数は,加振前の静的地盤反力係数が砂地盤

に比べて 1/10 程度と小さいため,液状化による静的地盤

反力係数の低減度合いは砂地盤に比べ小さいものと考察

される。

参考文献

1) 日本道路協会(2012):道路橋示方書・同解説,Ⅳ

下部構造編.

2) 日本道路協会(2012):道路橋示方書・同解説,Ⅴ

耐震設計編.

3) 地盤工学会北海道支部 北海道の火山灰質土の性質

と利用に関する研究委員会(2010):実務家のため

の火山灰質土~特徴と設計・施工,被災事例~,

pp.1-80.

4) 冨澤幸一・三浦清一(2007):火山灰地盤における

杭基礎の支持力特性に関する検討,土木学会論文集

C,Vol.63,No.1,pp.125-139.

5) 日本道路協会(2012):道路橋示方書・同解説,Ⅴ

耐震設計編,pp.132-143.

6) 時松孝次・鈴木比呂子・鈴木康嗣・藤井俊二(2002):

大型振動台実験に基づく液状化過程における杭の

水平地盤反力の評価,日本建築学会構造系論文集,

No.553,pp.57-64.

7) 例えば,松本英敏:3次スプライン補間法,

http://www.civil.kumamoto-u.ac.jp/matsu/spline.pdf

8) 飛田哲男・井合進・原哲郎(2003):遠心力場におけ

る群杭の振動実験-静的水平載荷実験との比較お

よび液状化地盤中の挙動-,第 38 回地盤工学研究

発表会,平成 15 年度発表講演集,pp.1443-1444.

In this study, the relationship between horizontal subgrade reaction and displacement during

earthquakes was investigated by centrifuge model tests of piles in volcanic ash and sandy soil to

clarify interaction between the ground and piles in volcanic ash ground during earthquakes. The

results revealed that the amplitude of relative displacement between piles and ground decreased with

the progress of liquefaction, although large amplitude was observed in the early stage of excitation.

This was considered to be due to the reduction in subgrade reaction and the modulus of subgrade

reaction with the progress of liquefaction. While the same decreasing tendency was also observed in

both volcanic ash and sandy ground, the degree of reduction in the static modulus of subgrade reaction

before excitation was found to be smaller in volcanic ash ground than in sandy ground.