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するバランスシート 営を 革する 13 委員

機能するバランスシート機能するバランスシート - 東京都の経営を改革する冷徹な用具 - 要約版 平成13年3月 東京都参与 中 地 宏 東京都専門委員

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機能するバランスシート

- 東京都の経営を改革する冷徹な用具 -

要約版

平成13年3月

東京都参与 中 地 宏

東京都専門委員 安 藤 算 浩

同 鵜 川 正 樹

同 小 早 川 久 佳

同 野 村 文 雄

同 米 田 正 巳

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第1章第1章第1章第1章 機能するバランスシート機能するバランスシート機能するバランスシート機能するバランスシート(東京都の経営を改革する冷徹な(東京都の経営を改革する冷徹な(東京都の経営を改革する冷徹な(東京都の経営を改革する冷徹な用具)の作成用具)の作成用具)の作成用具)の作成

1111 経営改革の出発点の線引き経営改革の出発点の線引き経営改革の出発点の線引き経営改革の出発点の線引き

平成 11 年 6 月、東京都は財政的に危機的状態にあった。昨年と同じような活動

をしようとしても金が足りない。借入金の枠も一杯使ってある。手持ちの有価証券

も赤字だらけの未上場株で売却できない。土地も法的な規制がかかっていて簡単に

は売れない。このままの状態が続くと“財政再建団体”という烙印を押されて、自

治権を国に奪われてしまう。民間会社でいえば、破産宣告を受けるということにな

る瀬戸際に立たされていた。その時、我々は、バランスシートの作成を依頼された。

その時の知事の言葉、「負の遺産はいくらあるか知りたい」の意味するところは明

白であった。経営改革出発点にきちんとした一本の線を引き、負債を清算し、将来

へ向けて建設的施策に着手しようとの意欲が読みとれた。

2222 東京都を経営する組織を責任会計に立脚したヤジロベー軍団として把握東京都を経営する組織を責任会計に立脚したヤジロベー軍団として把握東京都を経営する組織を責任会計に立脚したヤジロベー軍団として把握東京都を経営する組織を責任会計に立脚したヤジロベー軍団として把握

平成 11年 7月、都財政自主再建への道を指し示すために「財政再建推進プラン」

が公表された。「これまでの制度や施策を聖域なく見直し、時代にそぐわなくなっ

たシステムを時代に適合した柔軟で効率のよいものに改めて・・・「財政再建団体」

への転落を回避するとともに、財政の弾力性を回復させることを目標に策定するも

のであり、自主的な財政再建に向けての道筋を示すものである。」と謳ってある。

 続いて、同年 11月、「危機突破・戦略プラン-21世紀へのステップ-」が公表さ

れた。このプランの性格は、21世紀に向け、東京が直面する危機を打開するための

第一ステップとなるものであり、緊急かつ戦略的に取り組むべき具体的な施策・事

業を提示し、都職員の意識改革、都庁の体質改善の方向性を明らかにすることであ

る。

このようなプランには、解決すべき課題は厳しく指摘されているし、政策の苗も

戦略的に提示されているが、実行計画の組織とステップごとのコスト意識及び責任

のありかが明確には描かれていないと思われた。

 我々が「機能するバランスシート」と呼ぶときには、組織体の活動を会計数値で

表現し、要所要所に一つにくくったバランスシートを作り、その経営の責任者を置

くことで表示しようとするものである。つまり、部門ごとに会計数字が借方と貸方

に仕訳され、そして、貸借対照表(ストック情報)が作成され、その部門長がその

グループの活動に対して責任を負う仕組みを考えているわけである。責任者頭とし

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て借方、貸方がバランスするような仕組みであるからヤジロベーと呼び、東京都の

組織は中・小の部署の総体であるからヤジロベー軍団と呼ぶことにした。

 東京都の会計帳簿は 1 の一般会計(単式簿記官庁会計)と 19 の特別会計(単式

簿記官庁会計)と 11の公営企業会計(複式簿記会計)及び 64の東京都監理団体(複

式簿記会計)からなっている。(平成 12年度から特別会計 18、公営企業会計 12、

東京都監理団体 62)。東京都の行政組織は 2室 18局及び 10行政委員会から構成さ

れていて、一般会計を中心として、特別会計及び公営企業会計が管轄下に入ってい

るが、必ずしも個別のヤジロベー責任会計で把握していない。東京都監理団体を統

計的にコントロールしているところは総務局である。総務局行政改革推進室が設置

されて監理団体総点検を行い、経営評価が行われている。これらの動きの中で、「機

能するバランスシート」を東京都の組織の中で作り上げていき、ヤジロベー軍団が

機能的に活動したとき、東京都の勘定体系は存在意義を発揮する。それらの勘定体

系は冷徹な数値で、その業績を語り、その時々の資産、負債の有り高を示し、過去

の反省と未来の方向を指向する。

3333 責任のありかを明確にする責任のありかを明確にする責任のありかを明確にする責任のありかを明確にする「機能するバランスシート」は「機能するバランスシート」は「機能するバランスシート」は「機能するバランスシート」は「貸借対照表」、「貸借対照表」、「貸借対照表」、「貸借対照表」、「キャッシュ「キャッシュ「キャッシュ「キャッシュ・フロー計算書」、・フロー計算書」、・フロー計算書」、・フロー計算書」、「行政コスト計算書」の三体系と会計方針及「行政コスト計算書」の三体系と会計方針及「行政コスト計算書」の三体系と会計方針及「行政コスト計算書」の三体系と会計方針及び注記事項の開示からなるび注記事項の開示からなるび注記事項の開示からなるび注記事項の開示からなる

 一般会計と公営企業会計とは、毎期、予算及び決算が公表されているが、それら

に代わるべくストック情報、キャッシュの流れ、行政コスト情報を毎期的確にとら

えた「機能するバランスシート」を作成し、時系列を作ったなら、行政活動の数字

による歴史が開示される。さらに行政評価と連携していくことも可能である。(第

2章)

 もう一歩進めて、東京都監理団体の会計数字も含めた連結ベースの「機能するバ

ランスシートを作成すれば、より的確に各年度の行政責任の度合いを数字で表示す

ることが可能となる。(第3章)

 この冷徹な、数字により表現された会計システム、すなわち「機能するバランス

シート」を活用することによって、民間企業経営手法の導入を図ることが可能にな

り、官庁会計の弱点を打ち破ることができる。

4444 事業別バランスシートの作成で財政改革の方向を探る事業別バランスシートの作成で財政改革の方向を探る事業別バランスシートの作成で財政改革の方向を探る事業別バランスシートの作成で財政改革の方向を探る

 我々は、中間報告書で、多摩ニュータウン計画を取りあげて、事業別バランスシー

トを作成し、問題点を例示してみた。そこでは、「機能するバランスシート」に未来

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の可能性を語らせた。過去の経緯はともかく、今後についても、その展望、閉塞状

態を数字で説明させた。そして、その後の対策、処理も収支均衡型事業として検討

した。

 さらに、税金投入型事業の場合の「機能するバランスシート」の活用法も文化事

業部門を例にとって検討した。(第4章)

両方ともに、住民主役のアプローチに変わりはない。

5555 より有効な用具となるためにより有効な用具となるためにより有効な用具となるためにより有効な用具となるために

「機能するバランスシート」として三つの財務諸表が毎期タイムリーに作成され

るためには、一般会計と特別会計の複式簿記化、機械計算化が望ましい。そして、

そこから生まれる三つの財務諸表の数字を使って、時宜に適した説明をして、住民

に説明を続けることが、今後の明るい行政、幸せな東京都へと発展していくであろ

う。

 冷徹な用具、「機能するバランスシート」が未来をひらいていくことを祈る。と同

時に、この新しい手法を感覚として身につけ、硬直化していた会計組織を民間企業

経営手法に近づける努力を惜しまなかった東京都職員関係者に心から感謝の意を表

する。

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第2章第2章第2章第2章 東京都の財務報告書の体系、特徴、活用方法及び今後の東京都の財務報告書の体系、特徴、活用方法及び今後の東京都の財務報告書の体系、特徴、活用方法及び今後の東京都の財務報告書の体系、特徴、活用方法及び今後の課題課題課題課題

1111 東京都の財務報告書東京都の財務報告書東京都の財務報告書東京都の財務報告書(1)東京都の(1)東京都の(1)東京都の(1)東京都の「機能するバランスシート「機能するバランスシート「機能するバランスシート「機能するバランスシート(中間報告)」の公表(中間報告)」の公表(中間報告)」の公表(中間報告)」の公表

平成 11 年 7 月、東京都は自主的な財政再建への道筋を示した「財政再建推進プ

ラン」を発表し、この別紙1において、初めて東京都の平成 9年度普通会計のバラ

ンスシートを公表した。

平成 12 年 5 月に「機能するバランスシート(中間報告)」(以下「中間報告」)

を報告した。この「中間報告」は、単に民間の視点でコスト意識をもつという意味

だけでなく、事業別にバランスシートを作成し、それに対して責任の所在を明らか

にするようなバランスシートの活用のあり方まで言及している。

本章では、この「中間報告」に続き、最終報告としての東京都の財務報告書につ

いて記述する。

(2)東京都の(2)東京都の(2)東京都の(2)東京都の「機能するバランスシート」とは「機能するバランスシート」とは「機能するバランスシート」とは「機能するバランスシート」とは

「機能するバランスシート」は、「貸借対照表」だけでなく、「キャッシュ・フロー

計算書」、「行政コスト計算書」の三体系とする。ここでいう「行政コスト計算書」

は、「現金収支を伴うコスト」と「現金収支を伴わないコスト」に区分し、正味財

産の動きも表示したものである。

「機能するバランスシート」の三本化による会計システムの関係図及び東京都に

おける普通会計(一般会計と特別会計(収益事業会計を除いた 14の会計))の①貸

借対照表、②キャッシュ・フロー計算書、③行政コスト計算書の関係、「公営企業

会計」、「東京都監理団体」との全体イメージ図は次のとおりである。

○ 「機能するバランスシート」の三本化による会計システムの関係図

(貸借対照表)(資産の部)流動性資金その他の資産

(負債の部)負債(正味財産の部)正味財産

(キャッシュ・フロー計算書) (行政コスト計算書)支出 収入 諸費用

正味財産減少項目諸収益正味財産増加項目

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2222 貸借対照表貸借対照表貸借対照表貸借対照表 東京都の「機能するバランスシート」の作成に当たっては、発生主義会計に基づ

く会計報告書を作成するために、資産・負債等の概念規定を行いながら、それぞれ

に該当するものを計上するという方法をとった。今回の作成に当たって考慮した会

計上の論点については、「中間報告」で取り上げた論点を含めて、大幅に加筆の上、

整理を行った。資産・負債・収入・支出については、IFAC(国際会計士連盟

(International Federation of Accountants))における PSC(公会計委員会(Public

Sector Committee))が発行した Study 11 ”Governmental Financial Reporting”

(May 2000、研究報告 11 号「政府等会計報告」)を参考にしたが、個別の項目に

ついては、わが国の地方自治体の経営にとってどのような意味や役立ちがあるのか

を一つづつ検討した。

2-12-12-12-1 資資資資 産産産産(1)資産の意義(1)資産の意義(1)資産の意義(1)資産の意義

 資産とは、次の定義と認識基準を満たすものとして概念規定を行った上で、該当

するものを検討した。

① 定義… 経済的利益とサービス提供能力をもつ、過去の取引・事象から発生し

たもの、報告主体によりコントロールされるもの

② 認識… 将来において経済的利益がその団体にもたらされる可能性が高く、か

つ信頼に足る測定可能な価値をもつこと

(2)基準日(2)基準日(2)基準日(2)基準日

 地方自治体の会計年度末は 3 月 31 日であり、出納整理期間(4 月 1 日から 5 月

末日まで)におけるその年度に係る資金の収入・支出は、発生主義によれば未収金、

未払金として計上すべきであるが、実務的な面を考慮して、3月 31日までに終了し

たものとして処理した。

(3)流動性配列法と固定性(3)流動性配列法と固定性(3)流動性配列法と固定性(3)流動性配列法と固定性配列法配列法配列法配列法

 貸借対照表の表示には流動性配列法と固定性配列法とがあるが、東京都では、流

動性配列法を適用した。

(4)開始貸借対照表はどのような方法で作成するのか(4)開始貸借対照表はどのような方法で作成するのか(4)開始貸借対照表はどのような方法で作成するのか(4)開始貸借対照表はどのような方法で作成するのか

 東京都では、「財産台帳の整備により個別資産を認識する方法」と「決算統計の積み

上げによる方法」の二つの方法を併用した。いずれも取得原価による。この方法は、

将来の複式簿記、発生主義の導入にも対応が可能となることから、現状では最善の方

法と考える。

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資産の種類 作成方法 意義行政財産と普通財産

公有財産台帳より個別資産の取得価額を集計

現行の財務データを基本として、決算書を整理、加工する。正確な固定資産明細がわかる。

道路・橋りょう 昭和 44 年度以降の決算統計の普通建設事業費を累計

公有財産台帳に原価データの記載がないため、投下資本の累計を取得価額とみなす。

機械及び装置、車両運搬具、工具、器具及び備品

備品台帳を備えており、数量の管理は行っているものの、取得価格の管理を行っていないため計上しない

台帳の整備と資産計上は今後の課題とする。

建設事業負担金や建設事業補助金等

所有権がないため資産計上しない。金額を注記する。

資産の定義に該当しない。

 

(5)インフラ資産の取扱いをどうするか(5)インフラ資産の取扱いをどうするか(5)インフラ資産の取扱いをどうするか(5)インフラ資産の取扱いをどうするか

①①①① インフラ資産とは何かインフラ資産とは何かインフラ資産とは何かインフラ資産とは何か

 インフラ資産とは、道路、橋りょう、河川、海岸、港湾及び漁港、上水道、下

水道、電力、埋立地等のような種類の資産を指す。

 インフラ資産は、利用者にとってその経済価値とそれが供給するサービスの両

方が重要であるので、財務報告書においてインフラ資産を別掲表示することに有

用性があるといえる。インフラ資産は資産の定義に適合するが、原価情報の欠如

や市場のないことから、信頼に足るような測定を行うことに困難なものがあるこ

とに留意するべきである。

②②②② インフラ資産の評価と作成方法インフラ資産の評価と作成方法インフラ資産の評価と作成方法インフラ資産の評価と作成方法

 東京都では、道路・橋りょうのインフラ資産を資産として計上した。中間報告

では、有形固定資産を公有財産台帳に記載されているものとして計上したため、

台帳に記載がない道路・橋りょうについてはその投資累計額のみを注記した。今

回は、インフラ資産が広く経済的価値やサービス提供能力をもつことから資産概

念に適合するとして資産計上した。その評価額は投資累計額の減価償却後の価額

を計上した。

③③③③ インフラ資産の減耗インフラ資産の減耗インフラ資産の減耗インフラ資産の減耗(減価償却と経済価値の減少)(減価償却と経済価値の減少)(減価償却と経済価値の減少)(減価償却と経済価値の減少)

 道路・橋りょうについては、普通建設事業費を取得価額とみなして土地を除く

償却資産相当額について耐用年数 15年(残存割合 100分の 10)にわたり定額法

により減価償却した。

(6)建設仮勘定(6)建設仮勘定(6)建設仮勘定(6)建設仮勘定

 物件の購入等に係る債務負担行為のうち工事が数年度にわたるものの債務負

担行為限度額と翌年度以降の支出予定額との差額を有形固定資産についての未

完成部分に対する既支出額とみなし、建設仮勘定に計上した。ただし、道路・

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橋りょうについては、決算統計の累計額を計上しているため、建設仮勘定の算

出からは除外している。

(7)建設負担金等(7)建設負担金等(7)建設負担金等(7)建設負担金等

建設負担金等は東京都に所有権がないことから、東京都の所有に属さない固定資

産に係る支出額として、普通建設事業費のうち補助金等決算額累計額を注記した。

建設負担金の評価方法、減価償却には次のような意見があるが、金額的に重要な

場合は、継続的処理が望まれる。地方自治体に所有権はないが、その経済的効果は

将来に及ぶものであり、住民は便益を受けることができるものであるから、固定資

産と同様に、減価償却の上、資産計上すべきである。貸借対照表の計上科目は、そ

の他の固定資産が考えられる。

(8)災害復旧事業費の会計処理(8)災害復旧事業費の会計処理(8)災害復旧事業費の会計処理(8)災害復旧事業費の会計処理

災害復旧事業費は、支出時の費用として行政コスト計算書上の支出として計上し

ている。現状では資本的支出に該当するものがないが、今後原形復旧を超えた投資

を行う場合には、資産計上を検討することになろう。

(9)有価証券(9)有価証券(9)有価証券(9)有価証券・出資金の範囲と評価基準・出資金の範囲と評価基準・出資金の範囲と評価基準・出資金の範囲と評価基準

①①①① 有価証券有価証券有価証券有価証券・出資金の範囲・出資金の範囲・出資金の範囲・出資金の範囲

地方自治体における出資の会計処理をまとめると以下のとおりである。

出資の計上区分出資の相手先

地方自治法の財産区分 公会計上の区分株式会社 有価証券(株券)

財団法人等への出えん金株式会社以外その他

出資による権利 費 用

地方公営企業への繰出 ― 出資金

 東京都では、有価証券については、公有財産台帳に基づき、都が保有する監

理団体等の株券等を取得価額で計上した。公益法人への出資による権利(出え

ん金)は計上していない。出資金は、公営企業における繰入資本金の総額を

公営企業に対する出資金の累計額とみなして計上した。

②②②② 有価証券有価証券有価証券有価証券・出資金の評価基準・出資金の評価基準・出資金の評価基準・出資金の評価基準

公会計では、有価証券は、保有目的により、時価あるいは取得原価をもって貸

借対照表価額とする。具体的には、下表のとおり評価することになろう。

 東京都では、有価証券及び出資金は取得原価で評価している。時価評価は今後

の課題とする。

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種類 貸借対照表の評価 注記 評価損益売買目的有価証券 時価 当年度の損益

市場性有り 取得原価強制評価減の適用有り

時価 当年度の損益売買目的以外の有価証券

市場性無し 取得原価強制評価減の適用有り

時価(純資産)

当年度の損益

出資金 取得原価強制評価減の適用有り

時価(純資産)

当年度の損益

((((10101010)基金)基金)基金)基金

 基金とは、特定の目的のために設けられた資金又は財産である。

 基金の評価については、基金を構成する資産に応じて適切な評価基準を適用すべ

きである。基金は一般的に元本保証かつ確定利回りによる金融商品(銀行預金や国

債等)で運用されるが、土地開発基金のように大半が土地で構成される基金もあり、

時価の注記が必要であろう。貸付基金は通常の貸付と同一であるから、回収可能性

について同様な評価をする必要がある。

 東京都では、財政調整基金については、「現金」、「有価証券」などの運用形

態による区分を行わず、「基金」という勘定科目を設けて整理した。その他の

基金については、「財政調整基金」を除く各種基金(例えば社会資本等整備基

金)の決算統計上の年度末残高を計上した。

((((11111111)繰延資産)繰延資産)繰延資産)繰延資産

 東京都では、支出の効果が次年度以降に及ぶものとして、都債発行差金を繰延

勘定として計上し、償還までの年数で除して均等償却した。

((((12121212)貸倒引当金)貸倒引当金)貸倒引当金)貸倒引当金(不納欠損引当金)(不納欠損引当金)(不納欠損引当金)(不納欠損引当金)

 東京都では、不納欠損引当金として、都税、使用料等の収入未済額の一部につい

て時効の到来等によって不納欠損となるおそれがあるため、平成 6年度から平成 10

年度までの五ヵ年における不納欠損額の収入未済額に対する割合の平均値を収入未

済額に乗じた額を引き当てている。

2-22-22-22-2 負負負負 債債債債(1)負債の意義(1)負債の意義(1)負債の意義(1)負債の意義

 負債とは、次の定義と認識基準を満たすものとして概念規定を行った上で、該当

するものを検討した。

① 定義… 過去の事象から発生した現在の債務であり、現金等の流出をもたらす

もの

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② 認識… 経済的利益を含む資源の流出の可能性が高く、かつ、金額が信頼する

に足る測定可能な価値をもつこと

(2)地方債(2)地方債(2)地方債(2)地方債・借入金・借入金・借入金・借入金

 地方債の表示については、一年基準に基づき次年度の償還予定金額を地方債翌年

度償還額として流動負債に計上し、その他を地方債として固定負債に計上する。

 なお、交付税措置が予定されているもの、例えば「義務教育施設整備事業債」や

「減収補てん債」などについては、将来の償還時の交付税措置の計算に一定割合を

含めるという趣旨であり、債務性がなくなるわけではない。したがって、負債とし

て計上し、附属書類等でその旨を説明することになる。

 東京都では、都債として減税補てん債を含め、決算統計上のすべての都債残高

を計上した。また、借入金として「他会計借入金」と「基金運用金」を計上した。

(3)退職給与引当金と年金(3)退職給与引当金と年金(3)退職給与引当金と年金(3)退職給与引当金と年金

 理論的には、企業会計における「退職給付会計」の基準を適用して退職金と退職

年金をまとめて、退職給付引当金の計上をすべきであると考えるが、地方自治体の

バランスシート作成においては、当面便宜的な計上基準を採用することも認められ

よう。

 退職金については、職員の退職手当の支給に備えるため、年度末に在籍する職員

の自己都合による期末要支給額の 100%を計上する。

 年金債務については、職員共済年金制度に係る地方自治体負担分の年金債務を合

理的に算定することが実務的に困難な場合は、共済年金制度に加入している旨、年

金資産の合計額等を注記する方法も認められよう。

 東京都では、退職給与引当金として、当年度末に在職する職員が全員自己都合で

退職すると仮定して、必要となる退職金の全額を計上した。また、共済年金に関す

る事項は会計方針に記載した。

2-32-32-32-3 正味財産正味財産正味財産正味財産(1)正味財産の考え方(1)正味財産の考え方(1)正味財産の考え方(1)正味財産の考え方

公会計においては、自治体そのものが構成員の幸福な生活を送るための協力組織

として生まれてきたものであり、地方自治体がその目的に合致したように動き、住

民が幸福に暮らせるように組織が経営されることが必要であるため、この自治体組

織の活動目的は、民間企業と異なり、決して利益追求ではないことから、正味財産

の概念自体も企業会計の資本概念とは全く異なる。したがって、資産、負債を把握

し、そのバランスとしての正味財産についても、その内容を正しく理解する必要が

ある。

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 東京都では、正味財産を住民・行政責任累積とした。これは、地方自治体の会

計において、資産と負債の差額は、過去の税や国庫補助金などの消費残高及び

都債発行による資金収支が累積された部分であると考えられると同時に、その

時々の行政責任者及び住民を代表した都議会議員の判断結果としての毎年のプ

ラス・マイナス財産の累積額である。東京都の資産・負債を管理・活用するア

カウンタビリティ(説明責任)の集約的数値表現として表現している。

(2)正味財産(2)正味財産(2)正味財産(2)正味財産(内訳明細)の表示(内訳明細)の表示(内訳明細)の表示(内訳明細)の表示

東京都では、正味財産の内訳明細は作成せず、住民・行政責任累積として表示し

た。

 正味財産を経営責任の場にある人たちの「責任の蓄積」、すなわち「住民と行政の

責任」を遂行してきた今までの蓄積であり、これからの責任の所在であるとする考

え方では、正味財産の内訳明細は特に区分されない。

 一方、正味財産を資金運用されている資産等との関係で考える場合、正味財産の

内訳明細は、その資金源泉別に区分表示される必要がある。

例えば、貸借対照表の「正味財産の部」は、次の科目で内訳表示することになる。

ⅰ)国庫支出金

ⅱ)都道府県支出金

ⅲ)分担金・負担金、寄附金

ⅳ)積立金

ⅴ)一般財源(あるいは当年度末剰余金)

 

2-42-42-42-4 注注注注 記記記記(1)偶発債務(1)偶発債務(1)偶発債務(1)偶発債務・債務負担行為・債務負担行為・債務負担行為・債務負担行為

 東京都では、偶発債務として債務保証又は損失補償に係る債務負担行為のうち履

行すべき額が未確定なものを注記した。係争中の訴訟で損害賠償請求を受けている

ものには金額的に重要なものはない。その他の債務負担行為として、利子補給等に

係る翌年度以降支出予定額を注記した。

3333 キャッシュキャッシュキャッシュキャッシュ・フロー計算書・フロー計算書・フロー計算書・フロー計算書(1)キャッシュ(1)キャッシュ(1)キャッシュ(1)キャッシュ・フロー計算書の様式・フロー計算書の様式・フロー計算書の様式・フロー計算書の様式

 東京都では、大きく行政活動と財務活動の二つに区分し、さらに行政活動の内訳

を三区分した。

① 行政活動(租税徴収移転活動+サービス提供活動+社会資本整備等活動)

② 財務活動

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 行政活動はサービス提供と社会資本整備とが一体となったものであり、税金を二

つに区分できないことから、行政活動を一区分とし、その内訳として租税徴収移転

活動があり、そこからサービス提供活動と社会資本整備等活動とがなされているこ

とをあらわしている。もう一区分は財務活動とした。行政活動での資金不足を都債

発行や他会計繰入金という財務活動で収支尻を合わせていることを表している。

4444 行政コスト計算書行政コスト計算書行政コスト計算書行政コスト計算書(1)収入の意義(1)収入の意義(1)収入の意義(1)収入の意義

 収入とは、次の定義と認識基準を満たすものとして概念規定を行った上で、該当

するものを検討した。

① 定義… 収入は歳入と利得の両方を含む。歳入は、通常の活動にしたがって発

生するものであり、直接税、間接税等様々な名称で呼ばれるものである。

利得は、歳入以外の項目で、経済的利益を増加させるものである。公益

部門は、歳入と利得の両方を含めて、歳入と呼んでいるところが多い。

② 認識… 将来の経済的利益が流入する可能性が高く、金額を合理的に見積もる

ことができること。

(2)費用の(2)費用の(2)費用の(2)費用の意義意義意義意義

 費用とは、次の定義と認識基準を満たすものとして概念規定を行った上で、該当

するものを検討した。

① 定義… 費用は、その会計期間において資産の流出や減少あるいは負債の増加

を通して経済的利益を減少させるものであり、その結果正味財産の減少

をもたらすもの。

② 認識… 資産の減少あるいは負債の増加を通じて将来の経済的価値の減少が生

じるとき、金額を合理的に測定できること。特定の収入と対応した費用

も含む。

(3)行政コスト計算書の様式(3)行政コスト計算書の様式(3)行政コスト計算書の様式(3)行政コスト計算書の様式

 東京都では、行政コスト計算書の中に、正味財産のみに変動を与える項目を別途

入れるという様式によっている。一つの表のなかで、コスト計算の収支差額を一度

計算し、その後に「社会資本整備等活動財源調整」を設けて正味財産増減額を示す

ことで、最終の収支差額が貸借対照表の正味財産の増減と一致させている。

(4)(4)(4)(4)収支差額の意味収支差額の意味収支差額の意味収支差額の意味

 収支差額の意味としては、基本的には当年度のサービス・コストが当年度の税収

で賄われたかどうかを表している。また、それは資産形成や債務償還の原資となっ

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13

ており、正味財産の増減に影響を与えている。

5555 自治省方式のバランスシートと比較する自治省方式のバランスシートと比較する自治省方式のバランスシートと比較する自治省方式のバランスシートと比較する(1)自治省方式の貸借対照表の(1)自治省方式の貸借対照表の(1)自治省方式の貸借対照表の(1)自治省方式の貸借対照表の意義と課題意義と課題意義と課題意義と課題

 <意義>

① 全国の地方自治体が統一的に計算、作成でき、自治体間での比較が容易である。

② 全体的な投資分野とその財源についての説明ができる

 <課題>

① 有形固定資産は実在する資産とは必ずしも一致しない。

② 行政コスト計算書を作成していない。仮に行政コスト計算書を作成しても、正

確な事業別コスト計算を直接行うことができない(間接的にはできる)。

(2)東京都の(2)東京都の(2)東京都の(2)東京都の「機能するバランスシート」は、これらの課題を解決する一つの方法「機能するバランスシート」は、これらの課題を解決する一つの方法「機能するバランスシート」は、これらの課題を解決する一つの方法「機能するバランスシート」は、これらの課題を解決する一つの方法

① 貸借対照表の固定資産は実在する資産と一致するので、財務報告書を部門

別・事業別に展開できる。首長が行政全体の数値に責任をもち、さらに部門責

任者がそれぞれの部門の資産と負債の両方を管理する、という権限委譲・分権

志向に基づく責任会計への展開が可能である。

② サービスコストの計算が、財務報告書から直接導き出される。「機能するバ

ランスシート」は、都全体の財務報告書を体系的に作成し、それを部門別・責

任会計別にブレークダウンしたり、あるいはセグメント別に連結することに

よって、分野別・部門別の連結財務諸表(以下「事業別バランスシート」)を

作成することが可能である。サービスコストはその事業別バランスシートから

直接計算される。

③ 事業別バランスシートは責任会計という考えのもとで、東京都が進めている

行政評価と連携することが期待される。首長が自治体全体の経営に責任をもつ

ように、部門責任者はその部門の経営戦略について責任をもつ。部門責任者の

成果は政策評価と事業別バランスシートにより総合的に評価され、その結果が

新たな戦略計画へとフィードバックされることになる。このように「機能する

バランスシート」は、行政経営のマネジメント・サイクルへ導入されることに

よって、行政経営の新しい手法として政策評価とともに行財政改革の推進に役

立つことを目的としている。

6666 平成平成平成平成 11111111年度の東京都の財務報告書から何年度の東京都の財務報告書から何年度の東京都の財務報告書から何年度の東京都の財務報告書から何がわかるかがわかるかがわかるかがわかるか(1)貸借対照表(1)貸借対照表(1)貸借対照表(1)貸借対照表

① 平成 11年度末普通会計の資産合計は、18兆 8,465億円であり、行政活動の収

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入 5 兆 5,255 億円(都債発行と他会計借入を除いた地方税等の収入で、キャッ

シュ・フロー計算書の行政活動の収入合計)の 3.4倍に相当する。

② 流動資産では、財政調整基金がピークであった平成元年度の残高が 3,522億円

であったものの、わずか 15 億円にまで減少しており、財政危機の深刻さをあら

わしている。

③ 有形固定資産(行政財産及び普通財産のうち有形固定資産、道路・橋りょう、

建設仮勘定の合計を指す、以下同じ)は 14 兆 2,263 億円であり、総資産に占め

る比率は 75.5%である。そのうち土地は 7兆 3,816億円で有形固定資産の 51.9%

を占める。有形固定資産の比率が高く、その中でも土地の比率が高いのは、地価

の高い東京の特徴といえる。これらの多額な固定資産が、都民にとって本当に必

要でかつ有効に活用されているかどうかを検討することが、金額的にもいかに重

要であるかがよくわかる。

④ 投資等は 4兆 2,560億円であり、総資産に占める比率は 22.6%である。投資等

の比率が比較的高いのは、普通会計から特別会計や監理団体等への投資や貸付金

が多いためである。東京都全体の活動をみるには、連結貸借対照表が非常に重要

であることを示している。

⑤ 負債は 9兆 5,094億円であり、そのうち都債と他会計借入金等を合わせた借入

金は 8兆 382億円である。借入金の水準は、一年間の都税等収入 4兆 8,619億円

(都債発行や他会計借入、社会資本形成のための収入を除いた、一般的な税収入。

行政コスト計算書の現金収入)の約 1.65倍である。今後、平成 14年度以降大量

の都債の償還が見込まれており、その資金をどう確保するかが課題となっている。

⑥ 有形固定資産形成に占める借入金の比率は、56.5%であり、残りの 43.5%は正

味財産で賄っていることになる。これは世代間負担という観点から見ると、有形

固定資産の半分は現役世代によって賄っているが、残り半分は将来世代から借り

ているということになる。現在の資産が、将来世代にとっても十分な価値がある

かどうかを検討することの意味はここにもある。

⑦ 正味財産は 9兆 3,370億円であり、総資産に占める正味財産の比率は 49.5%で

ある。この数値の意味はいろいろな観点から考える必要があるだろう。

一つの見方として次のようなことがいえるだろう。東京都は、地方交付税の不

交付団体であり、また、国庫補助事業の割合も低く、都税等の一般財源を用いる

ことによって自主的に政策を計画し、多くの事業を実行してきた。都民にとって

は、長期的な都市づくりのプランや、質の高いきめ細かな住民サービスが提供さ

れてきたといえる。他方で、バブル経済の右肩上がりの成長を見込んだ大型投資

も行われた。住民福祉の向上に資するためといっても、行政の守備範囲が拡張さ

れすぎた面もあった。さらに近年の税収の鈍化、減収の影響を受け、さまざまな

財源対策をとらざるをえなかったのである。

東京都は、現在、財政再建推進プランに基づく財政再建に取り組み、こうした

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負の遺産の整理に着手しているが、このことによってバランスシート上の正味財

産の復元も期待できる。

(2)キャッシュ(2)キャッシュ(2)キャッシュ(2)キャッシュ・フロー計算書・フロー計算書・フロー計算書・フロー計算書

① 行政活動に係る収入合計は 5兆 5,255億円であり、このうち地方税は 4兆 333

億円と収入の 73.0%を占めている。法人二税(事業税と法人住民税)が景気変動

の影響を受けて大きく減少しているが、低成長の成熟社会では現状の税収をベー

スラインとして、行政経営を行わざるを得ないことを示している。

② 都債発行高 7,844 億円のうち、6,487 億円が社会資本整備等活動に投入され、

残額がサービス提供活動等に充てられている。これは、社会資本整備等活動にお

ける収支差額のうち 91.3%を都債によって資金調達したことになる。このことか

らも、都財政の非常に厳しい状況が明らかになる。

③ 収支差額は、形式収支と実質収支に区分して表示している。平成 11 年度の形

式収支では 368億円の資金余剰であるが、実質収支では 881億円の資金不足であ

る。平成 10 年度においても実質収支は 1,067 億円の資金不足であることから、

この二年間は財政危機の深い谷をわたっていることがわかる。

(3)行政コスト計算書(3)行政コスト計算書(3)行政コスト計算書(3)行政コスト計算書

① 行政サービスの収支差額は 2,612億円の赤字であり、これは、現金以外の支出

である減価償却費 2,874億円などによる。収支差額が赤字であったということは、

当年度に提供された行政サービスのトータル・コストが、当年度の収入で賄いき

れなかったということを意味する。その分、社会資本整備や都債の償還に充てる

財源が不足しており、正味財産を減少させる結果になっている。

② 将来のサービス水準を維持していくためには、正味財産を維持していくことが

必要といわれているが、東京都においては、バブル経済崩壊後の税収の減収に対

して、都民サービスの水準を維持していくために、基金取崩や他会計からの借入

などの特別な財源対策をとらざるをえなかったのである。東京都では、現在、財

政再建推進プランに基づく取組みを開始しており、この取組みの今後の成果を見

極めていきたい。

7777 バランスシートをどう活用するかバランスシートをどう活用するかバランスシートをどう活用するかバランスシートをどう活用するか(1)作成から活用へ(1)作成から活用へ(1)作成から活用へ(1)作成から活用へ

 会計情報は、発生主義会計がもつ本来の機能が十分発揮されてこそ、地方自治体

の行財政改革へ活用できるし、それをどう活かすかは地方自治体の経営戦略そのも

のである。経営戦略として財務報告がどうあるべきかが問われているのである。

 発生主義会計は、現金主義会計に比較すると、より包括的な情報を提供すること

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ができる。しかし、公的部門が説明しなければならないこともより多くなり複雑と

なる。ここでは、地方自治体がそれぞれ固有の財務状況を分析し、行政経営に役立

てるためのヒントとなるようなことを中心に、公会計に発生主義会計を適応した場

合の効用と限界について検討したい。

 IFACの PSCが発行した Study 11 “Governmental Financial Reporting”(May

2000)によると、現在、公会計制度に発生主義を導入している主な国や地方は以下

のとおりで多数ある。

・ オーストラリア(州、連邦、地方政府)

・ カナダ(政府の目標年度 2001-2002)

・ フランス(地方政府)

・ ドイツ(政府組織)

・ ニュージーランド(政府、地方政府)

・ スウェーデン(政府エージェンシー、地方政府)

・ イギリス(地方政府、エージェンシー、ヘルス・サービス・トラスト)

・ アメリカ(連邦政府)など

(2)発生主義は自治体会計の役割と機能をどう変えるか(2)発生主義は自治体会計の役割と機能をどう変えるか(2)発生主義は自治体会計の役割と機能をどう変えるか(2)発生主義は自治体会計の役割と機能をどう変えるか

 自治体会計は、納税者向けの外部報告(財務会計)と自治体経営責任者向けの内

部報告(管理会計)という二つの役割をもっている。これからの地方自治体の首長

や財務責任者、部門責任者はいずれにも精通する必要がある。

 地方自治体の財務会計は、住民に対する説明責任と情報提供の二つの機能をもっ

ている。発生主義会計の適用により、公会計はより総合的な情報を提供し、住民の

意思決定に役立つことができる。

 例えば次のようなことが考えられる。

① 自治体の財務評価を、一般会計・特別会計・外郭団体を含めた連結ベースで

行う

② 自治体の経営評価を、政策評価・行政評価を含んだ業績報告書、財務状況、

キャッシュフローで行う

③ 施策・事業のサービスのトータル・コストが情報開示される

④ 予算と実績を比較することで予算の執行が法令に遵守しているかどうかを評

価する

⑤ 基本計画や予算の意思決定に財務情報を活用する

⑥ 資源を有効に活用しているかを説明するために活用する

⑦ 資産と負債の管理責任を十分に果たしているかを説明するために使う

⑧ サービスのコストを賄うためにどのような税金を徴収しているか

⑨ 負債の償還や債務保証の実行をするために、どのような財源を使ったか

⑩ 現在提供されているサービスの水準が今後とも持続可能なのかどうか

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⑪ 正味財産の残高とその変動の要因は何か

⑫ 行政サービスについて、サービスの経済性、効率性、達成度をどう評価した

 地方自治体は、このようなより包括的な情報を、よりわかりやすく説明すること

によって、住民に対しての財務責任を果たすことができるのである。

<貸借対照表><貸借対照表><貸借対照表><貸借対照表>

(3)権限委譲は管理責任(3)権限委譲は管理責任(3)権限委譲は管理責任(3)権限委譲は管理責任と共にと共にと共にと共に

 地方分権の進展と同様に、自治体内部での権限委譲が進むと、部門責任者には多

額な資産と負債の管理が任される。部門責任者は、資産を最も効率的に運用し、負

債をきちんと管理することで、その執行責任を果たしたことになる。

(4)有形固定資産(4)有形固定資産(4)有形固定資産(4)有形固定資産

①①①① 固定資産の維持コストを意識する固定資産の維持コストを意識する固定資産の維持コストを意識する固定資産の維持コストを意識する

 サービスのトータル・コストを計算するときに、直接事業費に加えて、減価償

却費と資金調達コスト(支払利子)を加算することで、費用対効果の測定はトー

タル・コストで行うことができる。

②②②② リスク管理に使うリスク管理に使うリスク管理に使うリスク管理に使う

 万が一地震や災害が発生したときに、固定資産の地震や災害による被害額の情

報がより正確に計算できる。

(5)負債(5)負債(5)負債(5)負債

①①①① 負債情報の価値負債情報の価値負債情報の価値負債情報の価値

 すべての負債情報の価値は、自治体にそれを認識させ、返済の計画を作成させ

ることである。負債は借金だけでない。年金債務など会計上の負債を含む。債務

保証も将来の負債となる可能性が高い。返済の原資として将来の税収が必要とな

ることを示すことが重要である。負債は将来の資金需要を示すものである。

②②②② 権限委譲権限委譲権限委譲権限委譲

 権限委譲には、すべての債務が認識されてはじめて責任委譲ができる。正確な

執行評価は負債情報なしにできない。

③③③③ 偶発債務の意味偶発債務の意味偶発債務の意味偶発債務の意味

 偶発債務は、自治体の潜在的なリスクを示す。将来の支払いの約束は、将来の

財務資源の流出を意味し、債務保証は監視を要する。

(6)正味財産(6)正味財産(6)正味財産(6)正味財産(純資産(純資産(純資産(純資産・持分)・持分)・持分)・持分)

①①①① 正味財産の情報の価値正味財産の情報の価値正味財産の情報の価値正味財産の情報の価値

 正味財産の情報の価値は、債務水準を監視するために、保有する資産や他の負

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債との関係でみることにある。

 現在のサービス活動は現在の歳入で賄われているかどうか、あるいは、正味財

産の減少で賄われているか。正味財産の減少は将来のサービス低下や増税をもた

らす可能性がある。正味財産の減少は、現金支出によるサービス提供だけでなく、

現存している資産の減価償却、資産の売却・移管、借入金の増加、年金債務など

の債務負担の増加によってももたらされる。

 行政責任者は、正味財産の情報として、現在及び将来の意思決定が正味財産に

どのような財務的影響を与えるかについて説明責任を負うのである。

②②②② キャピタルキャピタルキャピタルキャピタル・チャージ・チャージ・チャージ・チャージ・システム・システム・システム・システム(資本費用)の導入(資本費用)の導入(資本費用)の導入(資本費用)の導入

 正味財産の水準は、キャピタル・チャージ(資本費用)のシステムを導入する

ために利用することができる。キャピタル・チャージ・システムでは、資産形成

に使われている資金のコストを意識するために、政府部門のエージェンシー(執

行部門)は、政府部門に資本を利用することで資本費用(利息)を支払うことを

要求される。

 自治体経営においては、このシステムの目的と方法を十分に検討した上で、よ

り効率的な運営と業務改善に役立てることが望まれる。

③③③③ 政府政府政府政府・自治体会計における正味財産の固有な課題について・自治体会計における正味財産の固有な課題について・自治体会計における正味財産の固有な課題について・自治体会計における正味財産の固有な課題について

 正味財産は資産・負債差額として表される。しかし、政府・自治体会計では、

資産・負債の概念を満たさない資産や負債が多くある(例えば、将来の課税権、

年金・保険等の社会保障における将来の支払債務など)ことに留意すべきである。

 正味財産は将来のキャッシュ・フローの予測には十分ではないという意見があ

るかもしれない。しかしながら、正味財産は政府・自治体の財務状況を示す重要

な指標である。現在の政策方針のもとで予想される将来の財政の動向を十分に説

明するためには、正味財産を意思決定に役立つ情報として提供することが必要で

ある。

<キャッシュ<キャッシュ<キャッシュ<キャッシュ・フロー計算書>・フロー計算書>・フロー計算書>・フロー計算書>

(7)効率的な資金管理を可能にする(7)効率的な資金管理を可能にする(7)効率的な資金管理を可能にする(7)効率的な資金管理を可能にする

 キャッシュ・フロー計算書は発生主義会計の重要な情報の一部であり、主要な外

部報告書の一つである。発生主義は、現金主義での情報の価値を少しも減少するも

のではなく、より有用なキャッシュ・フロー情報や資金管理を可能にする。

<業績報告書<業績報告書<業績報告書<業績報告書・行政コスト計算書>・行政コスト計算書>・行政コスト計算書>・行政コスト計算書>

(8)収入(8)収入(8)収入(8)収入・支出・支出・支出・支出(コスト)情報の活用(コスト)情報の活用(コスト)情報の活用(コスト)情報の活用

 収入・支出の情報は、自治体の財政状況と業績を評価する上で重要である。

 収入の情報は、自治体の全体的な水準(税金等収入の種類と水準、サービス水準、

長期債務の返済など)に関する意思決定に重要である。

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 支出の情報は、将来のサービスや資源配分に関する意思決定に重要である。支出

の情報を個別に展開することにより、個別のサービスに係るトータル・コスト情報

を提供し、特別の施策や事業のより正確なコストを計算することができる。

(9)収支差額の意味を考える(9)収支差額の意味を考える(9)収支差額の意味を考える(9)収支差額の意味を考える

 すべての収入と支出は、現金と非現金の両方を含む。収支差額の情報により、当

年度のサービス・コストのすべてが当年度の税収等で賄われたかどうかを知ること

ができる。その結果、正味財産が増加したのか減少したのかを知ることができる。

((((10101010)トータル)トータル)トータル)トータル・コスト情報の有用性・コスト情報の有用性・コスト情報の有用性・コスト情報の有用性

①①①① サービスのトータルサービスのトータルサービスのトータルサービスのトータル・コストの必要性・コストの必要性・コストの必要性・コストの必要性

 行政の幅広い社会的な効果とコストを評価することには難しい面があろうが、

特別な施策・事業について、そのコストを計算することは可能である。直接的な

サービス・コストだけでなく、資産の利用コスト(減価償却費)や資金コストや

人件費の非現金コスト(公債利子や退職給付引当金繰入など)を含めた事業のトー

タル・コストを計算することができる。トータル・コストの情報を提供すること

は、現在の資源配分のあり方を変革する可能性がある。

②②②② 現金ベースのコスト意識から発生ベースのコスト意識へ現金ベースのコスト意識から発生ベースのコスト意識へ現金ベースのコスト意識から発生ベースのコスト意識へ現金ベースのコスト意識から発生ベースのコスト意識へ

 発生ベースの費用認識は、実際の現金支払いとは切り離すことができる。

 例えば人件費の正しいコストが、現金支出とは別に計算できる。給与から年金

プランへの変更は、現金支出を将来に延ばすが、毎年のコストは変わらないはず

である。また、逆に年金プランから給与への変更は、現金支出を増やすが、人件

費のコストは変わらないはずである。

 以上挙げてきたようなことが、地方自治体の経営に導入されて、発生主義会計のも

つ効果として、行財政改革の方法の一つとなれば幸いである。新しく試みることで、

わかってくることも多い。実践の中に次の解答があるともいえる。その結果として、

地方自治体の経営の中に何らかの成果があらわれることを願っている。

8888 行政評価と行政評価と行政評価と行政評価と「機能するバランスシート」の連携「機能するバランスシート」の連携「機能するバランスシート」の連携「機能するバランスシート」の連携(1)東京都の行政(1)東京都の行政(1)東京都の行政(1)東京都の行政評価制度評価制度評価制度評価制度

国においては政策評価制度の法制化が進んでいるが、東京都においては平成 11

年度、12 年度にわたり、行政評価、事務事業評価の試行を実施し、制度導入に当

たっての課題の整理を行っている。

平成 12年 12月発表の「都庁改革アクションプラン」によると、行政評価制度の

構築・実施に当たっての改革の方針は、成果重視の都政への転換、施策・事業の不

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断の見直しのため、都にふさわしい行政評価制度を確立し、政策立案(Plan)-事

業執行(Do)-検証・評価(Check)-見直し(Action)=PDCAサイクルを再構

築をすることとしている。

改革の体系は下表のとおりである。

○ 改革の体系

ア.「行政評価制度」の本格実施

①総合的な行政評価制度の構築政 策 評 価 の 実 施

イ. 大 規 模 公 共 事 業 等 の

評 価 制 度 の 構 築

事 務 事 業 評 価 の 実 施

事 前 評 価 制 度 の 構 築

事 後 評 価 制 度 の 検 討

自己検証システムの構築・実施 ②自己検証システムの構築・実施

(2)(2)(2)(2)「東京都政策指標」について「東京都政策指標」について「東京都政策指標」について「東京都政策指標」について

政策評価の視点が、必要性、優先性、有効性などが必要であることから、成果(ア

ウトカム)指標が重要である。

従来、行政における効果は、事業にいくら予算を使ったとか、何人の職員が従事

したという投入(インプット)指標で表現していた。しかし、住民の側に立てば、

行政がいくら予算や人員を使ったかということよりも、実際にどれだけの結果や効

果があったのかということが重要である。

渋滞の時間の減少などの成果指標は、住民から見てわかりやすい指標であると考

えられる。しかし、成果指標は住民から見てわかる反面、行政にとっては成果指標

には明確な基準がなく、把握しにくい側面がある。東京都が平成 11 年 8 月に公表

した「東京チェックアップ・リスト 99」は政策指標の把握の一つの試みであった。

その後、必要な見直しを行い、「東京構想 2000」において「東京都の政策指標」

を示している。

東京都の政策指標は、16 の政策目標の水準を、都民の生活実感に即したわかり

やすい 60 の指標で、具体的に示した「東京都政策指標一覧」をインターネット等

で公表している。

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(3)東京都の総合的な行政評価制度の構築(3)東京都の総合的な行政評価制度の構築(3)東京都の総合的な行政評価制度の構築(3)東京都の総合的な行政評価制度の構築

----「行政評価制度」の本格実施について-「行政評価制度」の本格実施について-「行政評価制度」の本格実施について-「行政評価制度」の本格実施について-

①①①① 政策評価の実施政策評価の実施政策評価の実施政策評価の実施

平成 11 年度、12 年度の試行においては、以下のテーマを対象に、政策の達成

度を総合的に評価した。

(平成 11年度)

・ 「環境優先の自動車交通対策」

・ 「いつまでも安心して住み続けることのできる住宅の整備」

(平成 12年度)

・ 「魅力と活力のある市街地への再生」

・ 「世界に誇れる魅力ある都市文化づくり」

平成 13年度以降は政策評価を本格実施する。

②②②② 事務事業評価の実施事務事業評価の実施事務事業評価の実施事務事業評価の実施

平成 11年度、12年度の試行においては、以下の事務事業を対象に達成度、効

率性、必要性等の項目から評価し、事業の廃止・休止、抜本的見直しなどの方向

性を含めた総合評価を行った。

(平成 11年度)

・ 政策評価に関連する事務事業(10事業)

・ 各局の課題に関する事務事業(27事業) 計 37事業

(平成 12年度)

・ 政策評価に関連する事務事業(30事業)

・ 特定の課題(試験研究機関の運営、各種相談事業)

に関する事務事業(18事業) 計 48事業

平成 13年度以降は、事務事業評価を本格実施する。

以上のように、東京都において、政策・事務事業評価を実施することにより、政

策立案(Plan)-事業執行(Do)-検証・評価(Check)-見直し(Action)=PDCA

サイクル、いわゆるマネジメント・サイクルの再構築が行われている。

平成 12 年 11 月総務局より公表された「平成 12 年度行政評価制度の試行におけ

る評価結果報告書」において、48事業の事務事業の概要、評価、指標・関連データ

等の評価概要を報告している。

当該報告書において、単位当り費用など費用対効果を表す数値が記載されている。

当該数値は、現行の収支報告書の支出額であり、減価償却費、金利等は含まれてお

らず、いわゆる費用(コスト)ではない。

行政評価の基礎的判断資料となる正確な行政コストを把握することが必要となる。

この正確なコストを把握するために「機能するバランスシート」が役立つのである。

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22

(4)行政評価と(4)行政評価と(4)行政評価と(4)行政評価と「機能するバランスシート」の連携「機能するバランスシート」の連携「機能するバランスシート」の連携「機能するバランスシート」の連携

費用(コスト)による評価を実施するために、事務事業別等のキャッシュ・フロー

計算書、行政コスト計算書等の作成が必要となる。

現在、多くの地方自治体において行政評価が実施されている。しかし、費用(コ

スト)を客観的に把握する方法は確立されていない。

今後は、事務事業(ヤジロベーの一つ)別の費用の把握基準を設定することによ

り、明確に費用を把握し、行政評価のための一つの資料を提供する。この点が、行

政評価と「機能するバランスシート」が連携するところである。

「中間報告」において、行政評価と「機能するバランスシート」を連携する試み

として、多摩ニュータウン計画を所管する多摩都市整備本部を選定し、特別会計で

ある新住宅市街地開発事業、相原小山開発事業、株式会社である(株)多摩ニュー

タウン開発センター、(株)東京スタジアムについて、具体的な問題点を指摘し、

今後、抜本的な対策を講じる必要があると関連づけた。最終報告では、東京国際

フォーラム、東京都江戸東京博物館等の文化事業部門を分析している。

「機能するバランスシート」は、都の各組織のバランスシートが積み重なって都

全体のバランスシートが作成され、それに対し、都知事が説明責任を負う構図と

なっている。さらに都の行政評価にも連携するものであり、総合的な組織や行政運

営のあり方にもつながるものである。「都庁改革アクションプラン」において、「コ

スト管理の徹底」の事項の中で、予算・財政制度の見直しのため、「機能するバラ

ンスシート」の必要性を指摘している。

東京都において「機能するバランスシート」の作成・活用を、事業効果の評価、

コスト管理の徹底など経営的分析の観点から、次のことを推進する。

①①①① 事業別バランスシートの導入事業別バランスシートの導入事業別バランスシートの導入事業別バランスシートの導入

事業別に都の活動を会計数値で表現し、各事業別の経営分析・検討に役立て、

経営責任を明らかにし、都民にわかりやすい情報提供を行うことを目的として、

「機能するバランスシート」を作成する。

平成 13 年度より、マニュアル等を作成し適用事業を拡大する予定となってい

る。

②②②② 行政評価制度との連携と行政コストの公表行政評価制度との連携と行政コストの公表行政評価制度との連携と行政コストの公表行政評価制度との連携と行政コストの公表

行政評価(事務事業評価)を行うに当たっては、作成したバランスシートを効

率性などの判断に活用し、評価結果を公表する際には、行政コストの情報もあわ

せて提供する。

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9999 今後の課題今後の課題今後の課題今後の課題(1)アニュアルレポートの作成(1)アニュアルレポートの作成(1)アニュアルレポートの作成(1)アニュアルレポートの作成

国際的に事業展開する民間企業においては、毎年決算終了後、任意に年次報告

書(アニュアルレポート)を投資家向けに発行し、当該事業年度における事業活動

の内容を財務情報及び非財務情報を含めて報告している。企業は事業活動の内容を

投資家に報告することにより、説明責任を果たしており、投資家はアニュアルレ

ポートを意思決定に役立てている。英米の地方自治体においては、民間企業以上の

アニュアルレポートを作成し、公表している。

英米のアニュアルレポートは、非財務情報と財務情報を記載し、行政サービスご

との経済性、効率性、有効性についての行政活動の説明、業績指標の比較説明等に

より、住民への説明責任を果たしている。

都においても、その任務を都民生活向上のためのサービスの提供と理解すれば、

行政活動に監視、都民に対して説明責任を果たすという点においては民間企業と何

ら変わることはない。

都民に対して説明責任を果たすため、年次報告書(アニュアルレポート)をわか

りやすく、興味を引く内容で作成することによって、都民は行政活動の状況をより

正しく知ることになり、都政への積極参加にもつながることが期待できる。

このような説明責任を果たすための情報の情報媒体として、英米のアニュアルレ

ポート等を参考にして、年次報告書の作成を提案する。

年次報告書のうち財務情報に関するものとして、以下の事項の掲載が必要であ

る。

ⅰ)予算

ⅱ)決算

ⅲ)事業成果

ⅳ)事業の執行経過

また、年次報告書が都民に対する説明責任を果たす手段という観点からは、

・ 理解が容易である

・ 経済性、効率性及び有効性の評価ができる

・ 開示範囲が妥当

・ 早期開示

・ 情報へのアクセスが容易である

という要件が必要である。

また、年次報告書は当該年度の結果報告を年一度行うことを想定しているため、

当初予算の速報及び地方自治法第 243条の 3第 1 項で規定されている「毎年二回

以上歳入歳出予算の執行状況並びに財産、地方債及び一時的借入金の現在高その他

財政に関する事項を住民に公表しなければならない」という要求を満たすことがで

きない。そこで、年次報告書を補完するものとして半期報告書の作成を提案する。

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(2)複式簿記、発生主義の導入(2)複式簿記、発生主義の導入(2)複式簿記、発生主義の導入(2)複式簿記、発生主義の導入

現在種々の団体において作成されている貸借対照表等は、既存の会計デ-タを企

業会計的手法により加工して財務書類を作成し、これを分析活用したものであるが、

企業会計本来の利点を活用するには複式簿記による会計処理が欠かせない。これに

より会計記録の正確性、会計処理の経済性が図られるだけでなく貸借対照表、

キャッシュ・フロー計算書、行政コスト計算書が自動的に作成される。

また、複式簿記の導入は特定の部課に限った運用では成果が少なく、全ての部署

が取り組むことが必要であり、そのためには会計システムだけでなく財産管理や給

与計算などとも連携した総合システムとして設計することが効果的なことはいう

までもない。

複式簿記は、道具である。この道具を得ることにより「機能するバランスシート」

はさらにバージョンアップすると確信する。

複式簿記への変更は、高度情報化が発達している現在では困難なことではない。

現行の科目に相手勘定を設定し、そのようなシステムを設定すれば、日常の取引を

複式簿記で記録することは容易である。

現状では地方自治法に基づいた財務書類の作成と二重業務になり不経済となる

ことは否めないので、企業会計手法が活用されるシステム改革を図っていくことが

大切であり、このための研究調査を進めることが望まれる。

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第3章第3章第3章第3章 連結財務報告書の必要性と作成上の課題連結財務報告書の必要性と作成上の課題連結財務報告書の必要性と作成上の課題連結財務報告書の必要性と作成上の課題

1111 東京都の連結バランスシート東京都の連結バランスシート東京都の連結バランスシート東京都の連結バランスシート(1)(1)(1)(1) 中間報告以降にどのような検討を行ったか中間報告以降にどのような検討を行ったか中間報告以降にどのような検討を行ったか中間報告以降にどのような検討を行ったか

中間報告時点では、東京都の場合は東京都全体の財政状態(資産・負債等の状態)

を見極めることが緊急の課題であり、時間的な制約もあって、まず平成 11 年 3 月

31日現在の連結貸借対照表(「都全体のバランスシート」)を作成した。

「都全体のバランスシート」は、普通会計のバランスシートのみでは見えない東

京都全体の「負の遺産」を明らかにしてくれ、東京都全体を概観的に見ることがで

きた。

その後、連結貸借対照表以外に、連結キャッシュ・フロー計算書と連結行政コス

ト計算書を加えた三つの基本的連結財務報告書を作成するか否かの検討を行ったが、

機能するバランスシートという観点から見た有効性、作成体制の整備等からして、

当面は連結貸借対照表のみを作成することとした。連結貸借対照表のみでも、時系

列に並べてみれば財政状態の推移を把握することができ、その作成の意義は十分に

あるものと考える。

したがって、中間報告以降は、時点更新して、平成 12年 3月 31日現在の連結貸

借対照表を作成することとし、前回における作成上の課題を極力解決するとともに、

会計方針及び注記事項を新たに作成することに注力した。

(2)(2)(2)(2) 連結財務報告書の体系と様式について連結財務報告書の体系と様式について連結財務報告書の体系と様式について連結財務報告書の体系と様式について

①①①① 複数の会計を総合化する方法複数の会計を総合化する方法複数の会計を総合化する方法複数の会計を総合化する方法

複数の会計を総合化するには、通常三つの方法(連結方式、結合方式、並記方

式)がある。

東京都は、基本的に連結方式を採用することとした。ただし、連結貸借対照表

以外に連結精算表を添付し、東京都(普通会計、「特別会計」及び公営企業会計)

及び東京都監理団体(株式会社及び公益法人等)の二つの大きなグループにまと

めたものと東京都全体の三つのかたまりを一種の並記方式で表記することとした。

②②②② 連結財務報告書の体系連結財務報告書の体系連結財務報告書の体系連結財務報告書の体系

単独(本体部分)の会計と同様に、連結においても、基本的な財務報告書とし

ては、①連結貸借対照表、②連結キャッシュ・フロー計算書及び③連結行政コスト

計算書が考えられる。これらに、必要に応じた各種の注記事項を加えたものが連

結財務報告書となる。

ただし、機能するバランスシートという観点からすると、連結キャッシュ・フ

ロー計算書及び連結行政コスト計算書については、連結貸借対照表ほどの意義が

見出せない、つまりキャッシュ・フロー及び行政コストは個々の事業の状況が把

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握できれば十分ではないかという意見が強かった。特に、連結行政コスト計算書

(あるいは損益計算書)は、営利事業と非営利事業の混在したものとなるため、

理解し難いものとなる可能性がある。

したがって、東京都の場合は、最終報告でも当面は連結貸借対照表のみを作成

し、それ以外は今後の課題とした。

③③③③ 連結貸借対照表の様式連結貸借対照表の様式連結貸借対照表の様式連結貸借対照表の様式

基本的には、単独の会計と同様である。ただし、連結貸借対照表における勘定

科目の精粗については、根拠法令や会計基準等が異なる各種団体が連結の範囲に

含まれ、勘定科目の統一が困難であるため、単独の会計と比べると一部要約した

ものとした。

なお、正味財産の部については、普通会計と「特別会計」の正味財産を正味財

産として、それ以外の公営企業と東京都監理団体の資産負債差額を剰余金として

並べることとした。したがって、監理団体中の公益法人等については、正味財産

から剰余金への組替修正を行った。

(3)連結の範囲について(3)連結の範囲について(3)連結の範囲について(3)連結の範囲について

東京都の全会計(普通会計、5 の「特別会計」及び 11 の公営企業会計)及び 64

の東京都監理団体を連結対象とした。具体的な会計及び団体名については、会計方

針の「連結範囲」に記載してある。

なお、東京都監理団体については、全庁的に指導監督又は関与を行う必要がある

ことから企業会計でいう支配力基準に近い考え方を適用してそのすべてを連結対象

とした。また、それらに対する持分は全て 100%とみなした。

(4)連結基準日について(4)連結基準日について(4)連結基準日について(4)連結基準日について

東京都の決算日である平成 12年 3月 31日を基準日とするが、普通会計及び「特

別会計」については、4月 1日から 5月末日までの、いわゆる出納整理期間の入出

金を取り込んだ。

さらに、公営企業会計及び監理団体についても、出納整理期間における普通会計

及び「特別会計」との間の入出金を取り込んだ。

(5)連結貸借対照表作成に際して使用した基礎数値について(5)連結貸借対照表作成に際して使用した基礎数値について(5)連結貸借対照表作成に際して使用した基礎数値について(5)連結貸借対照表作成に際して使用した基礎数値について

普通会計及び「特別会計」については、決算情報及び公有財産台帳の価格等の既

存情報を編集・加工して用いた。

また、公営企業会計及び監理団体については、各々の貸借対照表を用いた。

(6)その他主要な会計方針と(6)その他主要な会計方針と(6)その他主要な会計方針と(6)その他主要な会計方針と注記事項について注記事項について注記事項について注記事項について

上記で説明した連結の範囲、連結基準日、連結貸借対照表作成に際して使用した

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基礎数値以外に、会計方針には流動性配列法の適用、一年基準の適用、棚卸資産の

評価基準及び評価方法、固定資産の減価償却の方法、普通会計及び「特別会計」に

おける機械及び装置・車両運搬具・工具・器具及び備品の計上、有価証券の評価基

準及び評価方法、繰延資産の処理方法、引当金の計上基準を記載した。

なお、会計処理の統一については今後の課題とし、今回は各会計及び団体におけ

る会計処理方法をこの会計方針において説明することとした。

また、注記事項については、金額の表示方法、会計及び団体のグループ別に有形

固定資産の減価償却累計額、借入金及び社債の返済・償還予定額、担保に供してい

る資産を記載した。

(7)主な連結手続について(7)主な連結手続について(7)主な連結手続について(7)主な連結手続について

① 公営企業の借入資本金…公営企業会計の資本勘定に計上されている借入資本金

については、その内容が起債残高であることから、連結

に際しては負債(借入金)へ振替えた。

② 投資と資本の相殺消去…会計間及び都から東京都監理団体である株式会社に対

する出資等については、投資と資本を相殺消去した。

なお、公営企業については、普通会計からの出資は繰

入資本金相当額であり、その金額を相殺している。固有

資本金及び組入資本金ついては、連結上は剰余金に振替

えている。

また、公益法人に対する東京都の出捐金については、

解散時に返還されないため東京都の貸借対照表には計上

されていないが、公益法人の基本財産の構成要素となっ

ている。したがって、連結上は特に相殺消去をせず、そ

のまま剰余金として合算されている。

③ 債権と債務の相殺消去…会計間及び都と東京都監理団体との貸付・借入等の債

権・債務を相殺消去した。

2222 平成平成平成平成 12121212年年年年 3333月月月月 31313131日現在の連結貸借対照表を見て何がわかる日現在の連結貸借対照表を見て何がわかる日現在の連結貸借対照表を見て何がわかる日現在の連結貸借対照表を見て何がわかるかかかか

添付の連結貸借対照表等を見ると、次のような状態がわかる。

① 資産合計は、普通会計が 18兆 8,465億円に対し、都全体では 32兆 8,781億円

と約 1.7倍の規模である。

② なかでも、有形固定資産が、普通会計 14 兆 2,263 億円に対し、公営企業会計

10兆 7,696億円、都全体では 27兆 9,450億円(資産合計の約 85%)を占めてお

り、この内容の吟味が必要であることがわかる。なお、都全体の有形固定資産中

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の土地は 9兆 4,835億円でその 3分の 1を占めている。

したがって、遊休資産、不要資産等の有無、土地を中心とした含み損の有無等

を十分に検討した上で、有効利用、売却処分、流動化等を進めることが緊急の課

題となる。平成 12年 11月に財務局から財産利活用総合計画が発表されているが、

当計画の確実な実施が期待される。

③ 一方、負債合計は、普通会計が 9兆 5,094億円に対し、都全体では 18兆 1,879

億円と約 1.9倍の規模である。

④ なかでも、長短合わせた借入金等が、組替修正・連結消去後で普通会計7兆6,682

億円に対し、公営企業会計 5兆 3,260億円、都全体では 15兆 1,617 億円(負債

合計の約 83%)を占めており、今後の返済スケジュールを十分に念頭においた都

全体の事業運営が必須であることがわかる。

特に、注記事項「借入金及び社債の返済・償還予定額」を見ると、平成 15 年

度のピーク時には、都全体で 1兆 7,177億円の返済が必要になることがわかる。

⑤ 正味財産合計では、監理団体の正味財産合計が 5,048億円でその資産合計 4兆

915億円の約 12%しかないこと、さらに監理団体の株式会社関係を見ると剰余金

がマイナスの 1,014億円、当年度に 155億円の損失が発生していることがわかる。

現在、東京都監理団体の総点検が実施されているが、この分野での出血を止める

こと、いわゆるリストラが引き続き緊急の課題となる。

3333 連結財務報告書を作成するための今後の課題は何か連結財務報告書を作成するための今後の課題は何か連結財務報告書を作成するための今後の課題は何か連結財務報告書を作成するための今後の課題は何か

東京都の連結財務報告書としては、以上のように連結貸借対照表のみの作成で、し

かも既存資料等の数値を編集・加工しての作成に留まっている。そこで、一般に公正

妥当と認められた公会計の連結作成基準、連結財務諸表原則等あるいは連結手法が存

在しない現状において、今後東京都の場合は、企業会計手法を導入しつつ、どの程度

の連結財務報告書を作成することが適当であるのか、その課題を探った。以下は、中

間報告でも指摘した事項であるが、今回の最終報告においても将来の課題としたもの

である。

① 連結財務報告書の体系はどのようなものが適当か(連結キャッシュ・フロー計

算書及び連結行政コスト計算書は必要か)

② 会計処理の統一をどこまで行うか

③ 連結財務報告書作成のための資料と勘定コードの体系をどうするか

④ どのように連結財務報告書作成のための体制を作るか

⑤ 都民にどのようにディスクローズするか

⑥ 将来的には連結財務報告書の監査が必要である

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第4章第4章第4章第4章 事業の経営と行政評価に有効な事業別バランスシート事業の経営と行政評価に有効な事業別バランスシート事業の経営と行政評価に有効な事業別バランスシート事業の経営と行政評価に有効な事業別バランスシート

1111 多摩都市整備本部に続いて生活文化局を今回のテーマに選んだねらい多摩都市整備本部に続いて生活文化局を今回のテーマに選んだねらい多摩都市整備本部に続いて生活文化局を今回のテーマに選んだねらい多摩都市整備本部に続いて生活文化局を今回のテーマに選んだねらい―――― 多摩都市整備本部事業別バランスシート公表の多摩都市整備本部事業別バランスシート公表の多摩都市整備本部事業別バランスシート公表の多摩都市整備本部事業別バランスシート公表の「その「その「その「その

後」後」後」後」

「中間報告」において、多摩都市整備本部を取り上げ、事業別バランスシートを作

成し、事業内容の検討を行った。検討の結果として、相原小山開発事業会計及び新住

宅市街地開発事業会計においては、債務超過が 1,000億円を超える可能性もあり、財

政的には破綻状態にあることを明らかにした。報告書では、一刻も早く事業を収束さ

せ、高金利の都債を繰上償還して、これ以上の財政状態の悪化を防ぐよう抜本的な手

段を講ずる必要がある旨を提言した。

この提言は直ちに取り上げられ、早くも平成 13 年度の予算編成において反映され

ることとなった。

ア 相原小山開発事業会計を廃止し、多摩ニュータウン事業会計(以下「新会計」)

を新設する。そして未処分地の一体的処分を進める。土地処分のために土地処分

規制の撤廃や販売の民間委託を行い、平成 20 年度までに 147 ヘクタールを売り

切る計画である。処分収入は年間平均 264 億円(18 ヘクタール)、平成 20 年度ま

でに 2,112億円を見込み、新会計終了時までに最終欠損を 300億円程度に抑える

ことを目標とする。

イ 新住宅市街地開発事業会計は、未処分地を新会計に造成原価で売却し、売却代

金を新会計から回収し、これを現在の金利の高い都債の繰上償還の原資とする。

このことは、事業別バランスシートが事業を管理する事業局の経営管理の用具とし

て極めて有効であることを示した好例である。このような財政政策上の抜本的な改革

が図られたことを、一つの模範として、建設局が自主的に、市街地再開発事業につい

て、亀戸・大島・小松川地区等事業収束間近の地区について収支見通しについて検討

していた。その結果、1,500 億円に及ぶ事業収支上の赤字が確実に出ることが試算さ

れた。この再構築計画においては、今後の事業収支を明確化するために、バランスシー

トを作成した上で、さらに公営企業会計化していくことになっている。これは、市街

地再開発事業における事業責任者が自らのコスト意識、経営感覚に基づき、自主的に

行った事業別バランスシートの考え方の積極的活用であると評価できる。

ところで、「中間報告」で対象とした事業は収支均衡型の都市開発事業であり、その

範囲でのバランスシートの有効性は認められるが、税金投入型の事業の場合にはバラ

ンスシートは機能しないのではないか、という疑問が残る。 そこで今回、残された課

題である「税金投入型」の事業について、機能するバランスシートはどうあるべきな

のか、あるいは「税金投入型」事業の場合にバランスシートは本当に機能するのか、

といった問題を取り扱うこととした。生活文化局はその観点から選定したのである。

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2 事業別バランスシートの作成2 事業別バランスシートの作成2 事業別バランスシートの作成2 事業別バランスシートの作成(1)生活文化局全体の連結貸借対照表(1)生活文化局全体の連結貸借対照表(1)生活文化局全体の連結貸借対照表(1)生活文化局全体の連結貸借対照表

---- 肥満した財務体質をどうしたらスリムにできるか肥満した財務体質をどうしたらスリムにできるか肥満した財務体質をどうしたらスリムにできるか肥満した財務体質をどうしたらスリムにできるか ----

64頁に生活文化局全体の要約連結貸借対照表を示している。

この要約連結貸借対照表は普通会計と四監理団体の貸借対照表を連結したもので

あるが、その特徴は次のとおりである。

① 3千億円を超える資産を保有し、そのうち 80%以上を建物構築物と土地が占

めている。

② したがって、これら建物等の維持運営に多額の経費がかかることが推測され

る。

③ 資産に比べて都債の金額は約 5%と少なく、資産投資のほとんどが過去の税

金で賄われている。

④ 大半(約 94%)が正味財産相当であり、一見すると極めて健全な財務内容に

見える。

連結貸借対照表を見ると、生活文化局全体として平成 11 年度末で正味財産が

3,111 億円となっている。これは主に、行政施設である有形固定資産や投資等に

3,318億円投資され、その資金源として都債等の借入により 207億円が賄われ、残

りの 3,111億円について税金が投入されたことを示している。

連結貸借対照表を見る限り、少なくとも負債超過ではないわけであり、一見する

と健全そうに見えるが、はたしてそのように解釈してよいであろうか。

① 税金投入型事業の貸借対照表は特別に都債を発行しない限り、固定資産への

税金投入額がそのままプラスの正味財産になって貸借対照表上にあらわれるた

め、税金投入型の事業では正味財産がプラスになるのはむしろ当然である。

② 問題は、資産の中味と事業の採算性にあり、巨額の資産や正味財産は、むし

ろ将来の費用の塊と見ることもできる。すなわち肥満した体型にも喩えられ

るのである。

(2)事業別バランスシートから何が読み取れるか(2)事業別バランスシートから何が読み取れるか(2)事業別バランスシートから何が読み取れるか(2)事業別バランスシートから何が読み取れるか

都の事業を民間企業の事業と比較するとき注意すべき重要な点が三つある。

ⅰ)発生主義会計が採用されていないため、減価償却の概念がない。

ⅱ)資金調達コストの概念がないため、金利が考慮されていない。

ⅲ)原価計算の概念がないため、資産や費用の正確な算定ができない。

したがって、この点の差異があることを考慮の上、以下の分析をみることが必要

である。

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①①①① バランスシートはバランスシートはバランスシートはバランスシートは「公共性の対価」を教える「公共性の対価」を教える「公共性の対価」を教える「公共性の対価」を教える

今回のテーマである税金投入型事業の行政評価にとって重要と考えられる行政

コスト計算書に焦点を当てて検討する。選定した四事業の行政コスト計算書は添

付のとおり(国際フォーラム 67頁、江戸東京博物館 70頁、写真美術館 73頁、

庭園美術館 76 頁)であるが、税金投入がなく金利を加味したときに各事業の行

政コスト計算書がどうなるかを示すと、以下のとおりである。

○ 平成 11年度行政コスト計算書(税金投入がなく金利負担を加味した場合)

(単位:百万円)

区 分 国際フォーラム 江戸東京博物館 写真美術館 庭園美術館

収入

一般財源(税金投入) 0 0 0 0

入場料等 5,413 477 62 82

その他収入 328 96 24 50

財源振替 △252 0 0 0

収入計 5,489 573 87 133

支出

運営費 5,036 4,745 1,040 479

減価償却費 3,933 1,254 107 11

退職給与引当金繰入額 11 9 0 0

その他 13 15 5 0

支出計 8,993 6,025 1,154 491

金利負担 5,376 3,337 175 485

支出計再計 14,370 9,362 1,329 976

収支差額 △8,880 △8,788 △1,242 △843

注1:国際フォーラム関係の生活文化局一般会計決算において東京熱供給(株)等への建

物賃貸料収入が支出を上回るため、他の事業に財源を振り替えている。

注2:金利は、各事業の正味財産相当額に都債の 11年度決算残高の平均利率 3.43%を乗じ

て計算した。

上記の行政コスト計算書で示されるとおり、税金投入がなく金利負担を加味し

た場合には、事業から得られる収入では、運営経費等を賄えない状況にあるとい

える。この点、これらの施設の設立目的からすれば、収支差額がマイナスである

こと自体を単純に問題視することは適切ではない。

問題は、収支差額のマイナスの程度である。上記のマイナス収支差額は、これ

らの施設運営上の「公共性の対価」であると解釈できるはずである。それゆえ、

収支差額のマイナスの程度であらわされる「公共性の対価」が高いか、低いかが

議論されなければならない。

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32

②②②② 施設運営上の非効率も施設運営上の非効率も施設運営上の非効率も施設運営上の非効率も「公共性の対価」に含まれる「公共性の対価」に含まれる「公共性の対価」に含まれる「公共性の対価」に含まれる

収支差額は、収入が小さければ小さいほど、また支出が大きければ大きいほど、

大きくなる。したがって、運営が効率的でなくその結果、運営経費が大きくなっ

てしまった場合には収支差額は悪化する。結果として、上記のように税金投入を

除いた収支差額を「公共性の対価」と考えた場合、経費の非効率性も「公共性の

対価」の中に含まれてしまうことになる。

(3)事業別バラン(3)事業別バラン(3)事業別バラン(3)事業別バランスシートの利用法スシートの利用法スシートの利用法スシートの利用法

①①①① 行政評価に事業別バランスシートを役立てる行政評価に事業別バランスシートを役立てる行政評価に事業別バランスシートを役立てる行政評価に事業別バランスシートを役立てる

都では、現在、行政評価を推進し、行政施策の見直しを図っているが、事業別

バランスシートから得られた財務情報を行政評価に役立てることは非常に有効で

ある。「東京都政策指標」や「行政評価報告書」では、非会計的側面での評価が中

心となっている。事業別バランスシートから財務的な指標を取り出し、ここから

財務的な行政評価指標を示すことは非常に意味がある。

②②②② 行政コスト計算書と民間企業の損益計算書との比較により、行政コストの効率行政コスト計算書と民間企業の損益計算書との比較により、行政コストの効率行政コスト計算書と民間企業の損益計算書との比較により、行政コストの効率行政コスト計算書と民間企業の損益計算書との比較により、行政コストの効率

性を把握する性を把握する性を把握する性を把握する

バランスシートの一部を構成する行政コスト計算書は、民間企業における損益

計算書を勘案して作成している。したがって、各事業が独立の経済主体として活

動した場合の収入と行政コストとを対応させた一覧表であり、各事業の管理責任

者の業績をあらわす最も客観的な指標を提供するものである。この行政コスト計

算書は、同種の事業を行っている民間企業の損益計算書との比較検討が可能であ

る。

③③③③ 他自治体の行政コスト計算書との比較によって税金投入型事業のあり方を検討他自治体の行政コスト計算書との比較によって税金投入型事業のあり方を検討他自治体の行政コスト計算書との比較によって税金投入型事業のあり方を検討他自治体の行政コスト計算書との比較によって税金投入型事業のあり方を検討

するするするする

現在は、複式簿記原理に基づいて事業別バランスシートを検討しているのは東

京都のみであるが、この手法が他の自治体に受け入れられ、作成された場合に、

バランスシートの意義は大きく前進する。とりわけ、東京都のように地方交付税

の不交付団体におけるバランスシートと、地方交付税など潤沢な国からの資金を

受け入れている他自治体のバランスシートとを比較することは、国税の行方を客

観的に観察する上でも大きな意義をもつはずである。

④④④④「都庁改革アクションプラン」の実現「都庁改革アクションプラン」の実現「都庁改革アクションプラン」の実現「都庁改革アクションプラン」の実現

都は、行政改革のためのアクションプランを策定した。今後の各局における事

業の見直し、プランの進行管理に当たっては、プランで指摘している「行政サー

ビスのコストに対して、職員の意識だけでなく都民の意識も高まることを期待す

る」ことからも、コストパフォーマンスの向上をより一層重視すべきである。非

効率化した行政コストを実施計画期間に改善できるようバランスシートから得ら

れる財務諸表を今後の都政改革の中に着実に取り入れていくべきである。

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33

⑤⑤⑤⑤ 予算策定時における予算ベースのバランスシートの作成と評価予算策定時における予算ベースのバランスシートの作成と評価予算策定時における予算ベースのバランスシートの作成と評価予算策定時における予算ベースのバランスシートの作成と評価

ハコモノ行政の実施によって、最もコストを要するのは建設コストではなく、

むしろ建設後の運営費であることが、行政コスト計算書を見れば明らかであろう。

しかし、バブル期におけるハコモノの建設に際しては、予算編成上、建設費予算

は作成され、議会承認(議決)を経ていたが、建設後の運営費については、長期

的予算はおろか中期的にも十分な見積りは立てられていなかった。そのためには

まず、施設建設の前段階で中・長期的な予算バランスシートを作成し、これを議

会に示した上で承認をとるといった手続きを踏む必要があるのではないか。

3333 事業別バランスシートから見た財政上の課題事業別バランスシートから見た財政上の課題事業別バランスシートから見た財政上の課題事業別バランスシートから見た財政上の課題(1)東京国際フォーラムの経営と課題(1)東京国際フォーラムの経営と課題(1)東京国際フォーラムの経営と課題(1)東京国際フォーラムの経営と課題

---- 年間年間年間年間 89898989 億円の赤字億円の赤字億円の赤字億円の赤字を出し損失解消の見込みのない収益事業を出し損失解消の見込みのない収益事業を出し損失解消の見込みのない収益事業を出し損失解消の見込みのない収益事業

----

東京国際フォーラムは、昭和 60 年に決定された「東京都シティ・ホール建設計

画基本構想」に基づき、都庁舎の移転に際して、シティ・ホール機能のうち、文化

交流、情報交流、国際交流の三つの機能を合わせ持つ総合的な文化施設として、都

庁跡地となる丸の内地区に設置する必要があるとされたものである。したがって、

東京国際フォーラムの建設に当たっては、計画的、政策的な判断があったといえる。

しかしながら現実には、その主要事業は国際会議場であり、そこで提供されている

サービスは会議・展示施設の提供という収益事業に属している。すなわち、税金投

入型収益事業ということができるだろう。

都が民業と競争して収益事業を行う場合には、その事業が都民の富を増大させ価

値を創造させる場合にのみ正当化できるであろう。

事業の採算性をみるには、通常二つの計算書が使われる。一つが行政コスト計算

書であり、そこに示された期間事業損益である。67頁に行政コスト計算書を付した

が、この事業が平成 11 年度に約 35 億円の赤字を計上したことを示している。 も

う一つが貸借対照表(65頁)である。貸借対照表によりこの事業への平成 11 年度

末投資額(正味財産相当)として 1,568億円を知ることができる。また、採算性を

測るためには、事業の期間損益を絶対額で測るだけでなく、同時に投資効率性を測

ることが必要である。すなわち、投資額(正味財産相当)1,568億円に対するリター

ンの割合をみることが、投資の成否を知り、効率性を判断するために不可欠である。

この事業を、民間企業の指標である ROI (Return on Investment: 投資収益率)

で測定・比較すると以下のようになる。

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34

                     (単位:百万円)

区 分 平成 10 年度 平成 11 年度

投資額(正味財産相当)a 160,265 156,761

純損失(金利を含まない)b △2,985 △3,503

ROI b/a △1.9% △2.2%

金利を加味した場合の損失c △8,482 △8,880

ROI c/a △5.3% △5.7%

 (金利は、都債の 11年度決算残高の平均利率 3.43%を使用して計算した。)

先に触れたように、期間損益や投資効率性を民間企業と比較する場合に、いくつ

かの注意が必要である。

第一に、民間企業と資産の計上基準が相違している。例えば、上記の投資額には、

土地(面積約 3万㎡、公有財産台帳価格約 350億円、推定時価約 600億円)が含ま

れていない。

第二に、民間企業では建物のコストに入れられる間接費等の配賦が都ではない。

すなわち、民間企業と比べ、この件だけでも投資額(分母となる)が過小に表示さ

れているものと思われる。

第三に、行政コスト計算書の事業損失の中にも、民間企業では通常加算される間

接費や一般管理費等の費用が配賦されていない。事業損失の額も民間の損益計算に

比べ過小に表示されているものと思われる。

第四に、修繕維持費等、今後発生が当然に見込まれる費用に対する資金の手当て

や会計上の引当てが行われていない。

第五に、投資に対する資金調達コストの概念がなく、金利が考慮されていない。

投資が行われると、その資金が内部資金であろうと外部資金であろうと、事実上、

金利を負担していることになる。

すなわち、上記の三から五に掲げられた費用が考慮されていないため、事業損失

(分子となる)も過小表示されている。

さて、ここで金利について少し考慮してみよう。この事業は全額税金で賄われて

おり、都債は使われていない。それなのになぜ金利を考慮しなければならないのか。

その理由は以下のとおりである。

① この事業に投資すべきかどうかを判断するとき、選択肢が常に二つあるはず

である。すなわちその事業を行い税金を投入するか、あるいはその事業を行わ

ないでその税金を都債の充当を予定していた他の事業に充てるかである。後者

を選択すれば都債の金利を将来にわたり削減できる。すなわち、この事業へ投

資したことはそのチャンスを放棄したことになる。したがって、事業に投資し

た場合には、たとえ都債が使われなくても、削減できたはずの金利相当額を加

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味しなければならない。

② 特に、収益事業では経済的な価値の創造が事業の目的である。価値が創造で

きない収益事業は、社会的に何らの効用を生んでいないことになる。価値の創

造とは事業からもたらされる収入が事業費(減価償却費を含む)と資金調達コ

スト(金利)を超過した金額をいう。すなわち、減価償却費や資金調達コスト

(金利)を賄いきれない事業は価値を破壊しており、社会的に存在理由をもた

ないものと考えられている。

上記の数値から、このプロジェクトの採算性をどのように理解すればよいのであ

ろうか。平成 11年度末の資産総額 1,591億円、事業損失約 35億円(金利を含める

と事業損失は 86億円)、開業以来損失が累積し採算の見通しはつかない。このよう

な巨額な投資プロジェクトが赤字のまま、採算の見通しがつかないとすれば、民間

企業であれば大赤字プロジェクトの部類に入り、投資の失敗が重大な経営問題とさ

れていることであろう。 実際、この規模のプロジェクトが失敗すると相当の企業で

も、倒産の危機に追い込まれる可能性が高くなる。

このプロジェクトは、いろいろな教訓を教えてくれる。都が収益事業を行う場合

には最低でも満たさなければならない基本条件があるということである。

① 収益事業は、一定の採算が確実に見込まれる事業に限定されなければならな

い。

② 収益事業は、民間企業並みの経営指標により、期間損益だけでなく、投資効

率の観点から監視され評価されなければならない。

③ 収益事業は、定期的に報告され、監査され、その実態が住民に開示されなけ

ればならない。

④ 投資の失敗には、責任が求められるべきである。

(2)東京都江戸東京博物館の経営と課題(2)東京都江戸東京博物館の経営と課題(2)東京都江戸東京博物館の経営と課題(2)東京都江戸東京博物館の経営と課題

---- 利用者一人当たり利用者一人当たり利用者一人当たり利用者一人当たり 6,8016,8016,8016,801円の経費に対して入場料は円の経費に対して入場料は円の経費に対して入場料は円の経費に対して入場料は 347347347347円円円円 ----

東京都江戸東京博物館は、世界都市東京の文化を象徴する展示、資料収蔵を行う

ため、平成 5年に両国国技館の敷地に隣接して建設された壮大な建造物である。開

業以来すでに千三百万人余の入場者を集めている。しかしながら、開業初年度こそ

300万人を数えた入場者も、その後は年々減少し、最近では 100万人を少し超える

程度で推移している。

さて、年間約 47億円の税金を使い、金利を含めて 94億円を実質的に負担してい

る江戸東京博物館は、はたして住民にそれ以上の効用をもたらしているのであろう

か。住民は、現下の逼迫する財政のもとで、このような巨額な負担をしてまでも、

この施設の存続を希望し続けるのであろうか。平成 11 年度の入場者一人当たりの

収入と費用の関係を以下にみていく。

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区 分 総額(単位:百万円) 一人当たり(単位:円)

総費用(金利を含まない場合) 6,025 4,376

総費用(金利を含む場合) 9,362 6,801

入場料収入等 477 347

税金による補助額 4,781 3,473

事業損失(金利を含まない場合) △670 △487

税金補助がなく金利を加味した損失 △8,788 △6,384

(金利は、正味財産相当額 97,295百万円に、都債の 11年度決算残高の平均利率 3.43%

を乗じて計算した。)

この博物館の運営費は、入場者一人当たり 4,376円(金利を加味すると一人当た

り 6,801 円)を要しており、入場料は 10%にも満たない 347 円となっている。上

記の数値は、この事業がいかに税金に依存しているかを示しているばかりでなく、

税金では十分に費用を賄いきれておらず、事業損失として将来に負担を繰り延べて

いることを明らかにしている。将来の負担は、修繕維持費や建替えの資金という形

で都民にかかってくる。将来の住民はこのような負担を承知しており、それでもな

おこの施設の存続を望むのであろうか。

(3)東京都写真美術館の経営と課題(3)東京都写真美術館の経営と課題(3)東京都写真美術館の経営と課題(3)東京都写真美術館の経営と課題

---- 年間年間年間年間 10101010億円の億円の億円の億円の税金を投入、都民に遠い存在税金を投入、都民に遠い存在税金を投入、都民に遠い存在税金を投入、都民に遠い存在 ----

東京都写真美術館は、平成 7年に、都民が映像文化に親しむ新たな文化創造の場

をつくることを目的に開館された。所在地は恵比寿ガーデンプレイス内にあり、ヨー

ロッパ調のたたずまいと洒落た町並みが、多くの人々を惹き付けている。美術館と

しては、申し分のない好立地にあり、施設も充実し優れている。

それにもかかわらず、当美術館はその運営のため年間 10 億円近い税金を必要と

している。そして、収入総額に占める税金の割合は、約 92%に達しており、事業そ

のものからの収入がいかに低いかを示している。

この事業への投資額は、平成 11年度末で約 51億円であり、金利(都債の平成 11

年度決算残高の平均利率 3.43%を使用して計算)を約 1.8億円生じていることにな

る。税金投入を除いた収支を前提とすると、都民の実質的な負担額は年額で 12.4

億円となっている。

この施設の問題は、一重に経営の方針にかかっている。以下のような問題を指摘

できる。

① 当美術館の知名度が低く、立地の良さを生かせていない。

② 当美術館の設立目的があまりにも壮大であり、これらの目的の全てを満たす

ことは不可能であり、そのための財政負担に耐えきれない。

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③ 展示品(写真作品)が専門的すぎるため、一般に馴染みにくい。また、一時

代前の写真作品が主体であるため、若者にアピールしにくい。

④ 施設が有効に活用されていない。人々が多数訪れ、夜間の流入人口が多い地

域の特性を十分に利用していない。

⑤ 都民参加の不足(施設運営への NPO・ボランティアの活用、文化教室や実習

講座等の更なる充実、ホールの有効利用、写真同好会等への施設の開放、収集

写真美術品の有効活用等)

財政問題を解決するためには、立地や施設の利点を生かし、民間企業のスポンサー

シップを積極的に導入することを検討すべきであろう。その場合、民間企業との共

同運営化を含めた柔軟な対応が必要である。エントランスにスポンサー企業名を表

示したり、社名入りの展示機器の使用を認めることも必要であろう。

また、今年度から映像文化振興事業としてホールを活用し、映画上映事業を開始

し、写真美術館の知名度向上と集客を図っているが、さらに施設の稼働率を増やす

ための利用促進策を検討するなど、夜間・休日利用(文化講座や体験学習等の充実、

クラブ活動の支援等)を拡大すべきである。現在、新館長のもと、写真美術館の効

果的かつ機動的な運営のための抜本的な組織・人事の見直しに着手するとともに、

集客力の向上と財政基盤の確立のための賛助会員制度の創設、ミュージアムショッ

プの新展開、効果的・戦略的な広報の実施、マーケティング機能を強化した上での

集客性の高い展覧会の実施、新進作家の発掘、育成等の取組みを開始しており、新

たな事業展開を期待したい。

(4)東京都庭園美術館の経営と課題(4)東京都庭園美術館の経営と課題(4)東京都庭園美術館の経営と課題(4)東京都庭園美術館の経営と課題

---- この都民のささやかな贅沢はいつまで許されるのかこの都民のささやかな贅沢はいつまで許されるのかこの都民のささやかな贅沢はいつまで許されるのかこの都民のささやかな贅沢はいつまで許されるのか ----

東京都庭園美術館は旧朝香宮邸を利用して、昭和 58 年に開設された。平成 5 年

には、本館建物が東京都指定有形文化財に指定されており、建物自体が文化的価値

をもつばかりでなく、約 35,000 ㎡の敷地に、庭園や茶室とあわせて大正デモクラ

シー期の洋風建築の一端を今に伝えている。目黒駅からも近く、ユニークな企画展

が年数回開催され、年間約 20万人(有料入場者約 16万人)の愛好者をほぼコンス

タントに惹き付けている。

当施設は、都が昭和 56 年に西武鉄道(株)から約 138 億円で買い受けたもので

ある。しかしながら、もともと既存の個人邸宅として建設された建物であり、美術

館としては規模的にも限界がある。また美術品の収集もなく、専ら借り受けた美術

品を公開展示することで運営されている。

さて、東京都庭園美術館は今後もこのままの形で存続させる意義があるのであろ

うか。そのための問題点を整理すると、以下の四点に要約される。

① 東京都には、すでに都営の美術館が四つ、民間も含めた美術館・博物館が 200

を超えて存在するなかで、さらにその上にこの小規模な美術館の存在が、都民

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の効用にどこまでプラスとなっているか。

② 施設に限界があるなかで、この規模の美術館を都が税金を投入して行わなけ

ればならない緊急性・必然性があるか。

③ 入場料収入総額は約 1億円(収入総額に占める割合は 16%)であるのに対し、

税金補助は、年間約 3.8億円で収入総額に占める割合は約 74%と高く、事業と

しての効率性が低い。効率性の飛躍的な向上が望みにくい中で、このように非

効率的な事業を継続する意味があるか。

④ この事業への投資額は、平成 11 年度末で約 141 億円に達しており、③で触

れた税金補助以外に、金利(都債の平成 11 年度決算残高の平均利率 3.43%を

使用して計算)を年間約 4.9 億円負担していることになる。すなわち、都民の

実質負担額は年額 8.4億円となる。

財政危機のため、行政サービスの内容が厳しく見直しを求められている中で、従

来型の「あった方が良い」といったタイプのサービスはその存在理由を厳しく再検

討されるべきであろう。都民が行政に期待するのは、今や「なくてはならない」最

小限度のサービスだと思われる。小さな政府による的を絞った効率的な行政サービ

スこそ、今求められているものだと思われる。

4444 事業別バランスシートは事業の管理と情報開示に不可欠な用具である事業別バランスシートは事業の管理と情報開示に不可欠な用具である事業別バランスシートは事業の管理と情報開示に不可欠な用具である事業別バランスシートは事業の管理と情報開示に不可欠な用具である

    今回のプロジェクトでは、わが国で初めて事業別バランスシートの作成を試みた。その結果、事業別バランスシートが事業管理だけでなく、行政評価や情報開示の用具

としても極めて有用なものであることが判明した。

 

(1)事業管理の用具としてのバランスシートの有用性と課題(1)事業管理の用具としてのバランスシートの有用性と課題(1)事業管理の用具としてのバランスシートの有用性と課題(1)事業管理の用具としてのバランスシートの有用性と課題

    拡大した都の事業を適正に管理し、行政のスリム化・効率化を最大限に高めていくためには、事業の存廃を含めた厳しい不断の経営努力と評価が必要である。その

ためには、事業の管理と評価を適正に行うための用具が必要である。事業別バラン

スシートは、事業遂行を行う担当部局の経営のための用具としてだけでなく、都の

行政評価の資料として、下記の点からみても、特に事業の経済性を評価するために

極めて有用なものである。

① 事業への投資額を単年度だけでなく累積値で示す。これにより、投資効率が

測定できる。

② 年度ごとの事業の成果を収支差額だけでなく事業損益として表示する。

③ 減価償却費や資本コスト等の非支出コストを表示する。

④ 投資と成果の年度比較が容易であり、事業の推移を把握しやすい。

⑤ 民間企業の経営情報や財務諸表との比較が可能となる。

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⑥ より正確な行政評価のための情報を提供し、関係者の理解が得やすい。

(2)行政評価へのバランスシートの活用範囲は広い(2)行政評価へのバランスシートの活用範囲は広い(2)行政評価へのバランスシートの活用範囲は広い(2)行政評価へのバランスシートの活用範囲は広い

    バランスシートは行政の多くの事業で広く利用できる。それは収支均衡型の各種

事業、例えば市街地再開発事業や水道事業、収益事業である都市交通、賃貸ビルや

展示場等の利用料収入のある施設事業、税金投入型事業の領域でも、料金を徴収す

る病院・学校・都営住宅、検定や旅券発行等においても料金の適正額や行政事務の

効率性を知るために事業別バランスシートが極めて有効である。

 拡大した都の事業を適正に運営し、多様化したサービスを効率良く提供するには、

そのための経営のための用具が必要である。バランスシートにより単年度収支だけ

でなく、財産の状況や事業損益の推移を把握することができ、事業の実態を知るこ

とができる。これは税金と受益者負担(利用料)の適正化へのはずみともなりうる。

行政評価は、都民の立場に立って行政の実態を分析し、納税者である都民への説

明責任を果たすためのものである。その場合に、行政が提供するサービスの質と内

容、それに要する投資と経費、サービスを受ける人の対価(税金)と負担(利用料)

の関係が適正に示されなければならない。バランスシートなしではそれは不可能で

あるともいえよう。

昨年度より開始された外部監査もバランスシートの作成により、より効果的なも

のになることが期待できる。

(3)都民への情報開示と議論の場を(3)都民への情報開示と議論の場を(3)都民への情報開示と議論の場を(3)都民への情報開示と議論の場を

---- 公共性の対価を評価するのは都民である公共性の対価を評価するのは都民である公共性の対価を評価するのは都民である公共性の対価を評価するのは都民である ----

都民は、行政に多くのサービスを求める。しかし、それらのサービスにいくらの

費用がかかり、いくらの税金が投入されているかは知らされていない。この報告書

に示したような事業への投資額や運営費用・事業損失の額を都民が知り、その補て

んのための税金の投入額を知った場合、都民はどのような反応を示すであろうか。

今回の報告書では、税金投入型の四つの事業についてのバランスシートを作成し、

現行の収支報告書との違いを説明した上で、各事業についてバランスシートに基づ

いた問題点の分析と提言を行った。しかし、ここでの提言は一つの意見にすぎず、

都民の意見を代弁したものではない。我々の任務は、バランスシートを作成し、行

政への利用可能性を模索することにあった。事業の実態を把握した上で、それをど

う評価するかは納税者である都民の仕事である。バランスシートは、都民が行政評

価を行う際の財務情報である。

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第5章第5章第5章第5章 あとがきあとがきあとがきあとがき

1111 「機能するバランスシート」は経営を分析「機能するバランスシート」は経営を分析「機能するバランスシート」は経営を分析「機能するバランスシート」は経営を分析・検討する用具・検討する用具・検討する用具・検討する用具(1)(1)(1)(1)“機能する”とは“機能する”とは“機能する”とは“機能する”とは

広辞苑によれば、「機能」とは「相互に連関し合って全体を構成している各因子が

有する固有な役割。また、その役割を果たすこと。」とある。

東京都の場合、「機能する」とは、都を構成する各部門(事業)が、その固有な役

割を果たすことといえる。また、役割を果たすに当たっては権限と責任とが一体と

なり、機能しなければならない。

各部門の会計を厳密にすることで個別事業の失敗が明らかになったら、管理者は

責任を追及される。そのための冷徹な用具となって、初めて、バランスシートは「機

能する」と考えられる。

(2)改革は前進したか(2)改革は前進したか(2)改革は前進したか(2)改革は前進したか

「機能するバランスシート」は①資産・負債の全体を表す貸借対照表、②活動分

野ごとの資金収支を表すキャッシュ・フロー計算書、③行政コストを明確ににする

行政コスト計算書の三つの財務諸表から構成される。

中間報告では、多摩ニュータウン計画、この最終報告では都の文化事業部門につ

いて、バランスシートのモデルとして作成した。

中間報告の対応として、平成 13 年度の予算により、多摩ニュータウン事業、都

施行市街地再開発事業について見直し・再構築を図り、今後発生が見込まれる財政

負担をできる限り小さくするための対応が講じられた。

また、「都庁改革アクションプラン」によると、平成 13年度から、分野別バラン

スシートの導入の適用部門を拡大し、「機能するバランスシート」と行政評価制度と

の連携、そして行政コストの公表を予定しているなど、改革は一歩、一歩前進して

いる。

(3)今後の改革の方向信号は点灯しているか(3)今後の改革の方向信号は点灯しているか(3)今後の改革の方向信号は点灯しているか(3)今後の改革の方向信号は点灯しているか

「機能するバランスシート」は、行政評価制度との連携により、都の活動を会計

数値で表現し、各事業別の経営分析・検討に役立て、経営責任を明らかにし、都民

にわかりやすい情報提供を行うことを目的として作成・活用する。

東京都は事務事業評価の実施に当たっては、政策立案(Plan)-事業執行(Do)

-検証・評価(Check)-見直し(Action)=PDCAサイクルを再構築し、特に、

評価結果反映のための進行管理として、「評価主管部署が評価結果に沿って、各局が

具体的にどのように見直したかを原則として三年を限度に追跡調査する。また、一

旦評価された対象であっても、必要に応じて、一定期間経過後、再度、評価対象と

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し、見直しの効果を検証する。」ことになっている。

この行政評価制度と「機能するバランスシート」は連携しており、会計数値の面

からも、今後の改革の方向信号は点灯することになる。

2222 行政評価は行政評価は行政評価は行政評価は「機能するバランスシート」と連携「機能するバランスシート」と連携「機能するバランスシート」と連携「機能するバランスシート」と連携(1)(1)(1)(1)「機能するバランスシート」はヤジロベー軍団の責任を明確にする「機能するバランスシート」はヤジロベー軍団の責任を明確にする「機能するバランスシート」はヤジロベー軍団の責任を明確にする「機能するバランスシート」はヤジロベー軍団の責任を明確にする

「機能するバランスシート」は、組織体の活動を合計数値で表現し、要所要所に

一つにくくったバランスシートを作り、その経営の責任者を置くことで表示しよう

とするものである。つまり、部門ごとの会計数字が借方と貸方に仕訳され、そして、

財務諸表が作成され、その部門長がそのグループの活動に対して責任を負う仕組み

を考えている。責任者を頭として借方、貸方がバランスするような仕組みであるこ

とから、ヤジロベーと呼び、都の組織は知事を頭とする中・小の部署の総体である

ことから、ヤジロベー軍団と呼んでいる。

「機能するバランスシート」は冷徹な数値で、ヤジロベー軍団の業績の成果を語

り、その時々の資産、負債の有り高を示し、過去の反省と未来の方向を指向するも

のである。

(2)行政評価には責任の所在、コストの確定が不可欠(2)行政評価には責任の所在、コストの確定が不可欠(2)行政評価には責任の所在、コストの確定が不可欠(2)行政評価には責任の所在、コストの確定が不可欠

東京都の PDCAサイクルの再構築は、経営・運営の基本理念であるマネージメン

ト・サイクルの構築であり、権限と責任を明確にすることが前提条件である。特に

検証・評価(Check)と見直し(Action)が重要となる。責任を明確にし、検証・

評価を予算にフィードバックすることである。

事務事業評価において、事業の成果を図る基準として費用の把握は必要である。

したがって、現行の収支報告書だけでなく、減価償却費、人件費、金利などのフル

コストの情報の把握が必要となる。

政策・事務事業評価は責任の所在、コストの確定の上で所与の基準に照らして決

定されることになる。

(3)定性評価も数値化して説得的となる(3)定性評価も数値化して説得的となる(3)定性評価も数値化して説得的となる(3)定性評価も数値化して説得的となる

東京都の評価方法として、政策評価においては「東京都政策指標」が用いられ、

事務事業評価においては達成度、効率性、必要性、公平性などにより評価を行う。

これらの指標は非財務的で定性的なものも含まれている。定性評価も重要な意味を

もつが、数値化することにより、より説得的となる。

3333 住民への定期報告書住民への定期報告書住民への定期報告書住民への定期報告書(1)住民の理解できる言葉で報告(1)住民の理解できる言葉で報告(1)住民の理解できる言葉で報告(1)住民の理解できる言葉で報告

わが国行政の報告書は正確性を第一にするために、極めてわかりにくい表現と

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42

なっている。また法律用語それ自体がわかりにくい。

定期報告が都民に関心をもって読まれるためには、わかりやすく、面白く、イン

パクトのある内容であることが条件となる。また都民への広報であれば、なお斬新

でなければ、読者の心をつかむことはできない。

住民の視点に立つという行政改革の理念から、都民の目線で、都民にわかる財務

情報の公開が必要となる。

(2)行政活動の成果を評価するのは住民(2)行政活動の成果を評価するのは住民(2)行政活動の成果を評価するのは住民(2)行政活動の成果を評価するのは住民

成果重視の都政への転換、施策・事業の不断の見直しのため、都にふさわしい行

政評価制度等の確立を目指している。

成果(アウトカム)は、供給者の立場からでなく、顧客すなわち都民の視点から

の効果である。

評価結果等を公表することにより、数値で行政アクションの順序を決めて、都民

に納得してもらうことが重要である。

(3)住民と対話する心で財政状態の報告(3)住民と対話する心で財政状態の報告(3)住民と対話する心で財政状態の報告(3)住民と対話する心で財政状態の報告

都においては、インターネット等により公報が行われている。地域経営を促する

のは都民との情報の共有であり、その情報は自治体の全体の情報だけでなく、街の

自近な情報、そしてこれからの計画等を語るものも含まれていなければならない。

住民を顧客としてとられた満足度、ニーズ(成果-有効性(アウトカム))の把握

のためにも、住民と対話する心で、財務、非財務を含んだ財政状態を報告し、これ

からの計画を話す必要がある。

4444 これからのこれからのこれからのこれからの ITITITIT革命とスピード化に革命とスピード化に革命とスピード化に革命とスピード化に対応する準備が必要対応する準備が必要対応する準備が必要対応する準備が必要 インターネットの普及に代表される IT の急激な進歩は瞬時に多しの情報の収

集・伝達を可能とする等、日常生活を急速に変えようとしている。都民との新たな

コミュニケーションを進め、事務の迅速化・効率化を図り、都民サービスの向上を

目指すことは急務である。

バランスシートは「用具」にすぎない、用具を使うのは「人」であり、「人」が良

い仕事をするためには、より良い「用具」が必要となる。

「機能するバランスシート」をより良い用具とするためには、行政評価、人事シ

ステム等の総合的な管理システムとの連携、現行の財務システムを固守することな

く、発生主義、複式簿記の導入など、これからの IT 革命とスピード化に対応する

準備が必要である。

以上

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43

付付付付 表表表表

〔第2章関係〕〔第2章関係〕〔第2章関係〕〔第2章関係〕◎◎◎◎ 東京都普通会計貸借対照表東京都普通会計貸借対照表東京都普通会計貸借対照表東京都普通会計貸借対照表(平成11年度末)

◎◎◎◎ 東京都普通会計キャッシュ東京都普通会計キャッシュ東京都普通会計キャッシュ東京都普通会計キャッシュ・フロー計算書・フロー計算書・フロー計算書・フロー計算書((((平成11年度)

◎◎◎◎ 東京都普通会計行政コスト計算書東京都普通会計行政コスト計算書東京都普通会計行政コスト計算書東京都普通会計行政コスト計算書(平成11年度)

◎◎◎◎ 東京都普通会計財務諸表作成にかかる会計方針及び注記東京都普通会計財務諸表作成にかかる会計方針及び注記東京都普通会計財務諸表作成にかかる会計方針及び注記東京都普通会計財務諸表作成にかかる会計方針及び注記

〔第3章関係〕〔第3章関係〕〔第3章関係〕〔第3章関係〕◎◎◎◎ 東京都連結貸借対照表東京都連結貸借対照表東京都連結貸借対照表東京都連結貸借対照表(平成11年度末)

◎◎◎◎ 東京都連結貸借対照表作成にかかる会計方針及び注記東京都連結貸借対照表作成にかかる会計方針及び注記東京都連結貸借対照表作成にかかる会計方針及び注記東京都連結貸借対照表作成にかかる会計方針及び注記

◎◎◎◎ 東京都連結要約精算表東京都連結要約精算表東京都連結要約精算表東京都連結要約精算表(貸借対照表)(貸借対照表)(貸借対照表)(貸借対照表)

〔第4章関係〕〔第4章関係〕〔第4章関係〕〔第4章関係〕◎◎◎◎ 生活文化局連結貸借対照表生活文化局連結貸借対照表生活文化局連結貸借対照表生活文化局連結貸借対照表(平成11年度末)

◎◎◎◎ 東京国際フォーラム財務諸表東京国際フォーラム財務諸表東京国際フォーラム財務諸表東京国際フォーラム財務諸表 (貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書、行政コスト計算書)

◎◎◎◎ 東京都江戸東京博物館財務諸表東京都江戸東京博物館財務諸表東京都江戸東京博物館財務諸表東京都江戸東京博物館財務諸表 (貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書、行政コスト計算書)

◎◎◎◎ 東京都写真美術館財務諸表東京都写真美術館財務諸表東京都写真美術館財務諸表東京都写真美術館財務諸表 (貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書、行政コスト計算書)

◎◎◎◎ 東京都庭園美術館財務諸表東京都庭園美術館財務諸表東京都庭園美術館財務諸表東京都庭園美術館財務諸表 (貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書、行政コスト計算書)

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◎◎◎◎ 東京都普通会計貸借対照表東京都普通会計貸借対照表東京都普通会計貸借対照表東京都普通会計貸借対照表(平成11年度末)

(単位:億円)金  額 金   額

(資産の部) (負債の部)流動資産 3,401 流動負債 8,090 現金預金 368 還付未済金 47 収入未済額 2,616 未払金 2,095 不納欠損引当金 △ 363 債務負担行為 127 未収金 765 繰越事業 1,086 繰越事業 765 支払繰延 881

財政調整基金 15 短期借入金 5,947 固定資産 184,916 都債 5,947 行政財産 64,204 固定負債 87,004 有形財産 64,144 長期未払金 1 建物 30,304 債務負担行為 1 構築物 3,612 長期借入金 74,435 立木 48 都債 70,735 船舶等 92 他会計借入金 2,900 浮標等 21 基金運用金 800 土地 30,065 退職給与引当金 12,568

無形財産 60 負債の部 95,094 地上権等 60 (正味財産の部)

普通財産 18,377 住民・行政責任累積 93,370 有形財産 18,345 (うち当年度増減額) (△ 7,459) 建物 6,820 構築物 1,364 立木 9 船舶等 9 浮標等 17 土地 10,124

無形財産 31 地上権等 31

道路・橋りょう 53,929 土地 33,625 土地以外 20,304

建設仮勘定 5,843 投資等 42,560 有価証券 1,606 出資金 12,198 長期貸付金 19,279 差入保証金 76 その他の基金 7,713 その他の投資等 1,686

繰延資産 147 正味財産合計 93,370 資産の部 188,465 負債・正味財産合計 188,465

科     目 科     目

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◎◎◎◎ 東京都普通会計キャッシュ東京都普通会計キャッシュ東京都普通会計キャッシュ東京都普通会計キャッシュ・フロー計算書・フロー計算書・フロー計算書・フロー計算書(平成11年度)

○ 租税徴収移転活動 (単位:億円)

租税徴収活動経費 926 地方税 40,333 (除く普通建設事業費) (うち税連動経費充当分) (8,839) 税連動経費 8,839 地方譲与税 35

地方特例交付金 344 9,765 計(一般財源) 40,713

経費を除いた一般財源収入額 30,947 ○ サービス提供活動

人件費(*) 17,592 交通安全対策特別交付金 47 物件費(*) 3,166 分担金・負担金・寄附金 572 維持補修費(*) 865 使用料・手数料 1,977 扶助費 1,939 国庫支出金 3,724 補助費等(除く税連動経費)(*) 10,374 国有提供施設等所在市町村助成交付金 0 普通建設事業費(補助金) 1,553 財産収入 115 普通建設事業費(国直轄事業負担金) 471 繰入金(除く基金、借入金) 185 普通建設事業費(受託事業) 72 諸収入 1,211 災害復旧事業費 11 諸収入(受託事業収入) 72 公債費(利子及び一時借入金利子) 2,799 繰出金(と場・新住・相原) 48 (* 除く租税徴収活動経費)

計 38,896 計 7,905 サービス提供活動による収支差額 △ 30,990

○ 社会資本整備等活動

普通建設事業費 8,207 国庫支出金 1,885 積立金(財政調整基金) 1 使用料・手数料 26 積立金(除く財政調整基金) 211 分担金・負担金・寄附金 173 投資及び出資金 861 財産収入 88 貸付金 4,388 財産収入(土地・建物売払収入) 482 繰出金(区市町村振興基金) 76 繰入金(基金) 911

諸収入 57 諸収入(貸付金元金回収額) 3,011

13,746 計 6,636 社会資本整備等活動による収支差額 △ 7,109

○ 行政活動(租税徴収活動+サービス提供活動+社会資本整備等活動)支出合計 62,408 収入合計 55,255

収支差額合計 △ 7,152 ○ 財務活動

公債費(元金) 2,549 繰入金(他会計借入金) 2,000 都債 7,844  (うち減収補てん債) (1,500)  (うち減税補てん債) (136)

2,549 計 9,844 財務活動による収支差額 7,294

○ 総括支出合計 64,957 収入合計 65,100

収支差額合計 142 前年度からの繰越金 226 形式収支 368 翌年度に繰り越すべき財源 1,249 実質収支 △ 881

支出合計(決算) 64,957 収入合計(決算) 65,326

支 出 の 部 収 入 の 部

支 出 の 部 収 入 の 部

支 出 の 部 収 入 の 部

支 出 の 部 収 入 の 部

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◎◎◎◎ 東京都普通会計行政コスト計算書東京都普通会計行政コスト計算書東京都普通会計行政コスト計算書東京都普通会計行政コスト計算書(平成11年度)

○ 現金支出・収入を伴うもの (単位:億円)

人件費 18,031 地方税 40,333 物件費 3,311 地方譲与税 35 維持補修費 867 地方特例交付金 344 扶助費 1,939 交通安全対策特別交付金 47 補助費等 19,553 分担金・負担金・寄附金 572 普通建設事業費(補助金) 1,553 使用料・手数料 1,977 普通建設事業費(国直轄事業負担金) 471 国庫支出金 3,724 普通建設事業費(受託事業費) 72 国有提供施設等所在市町村助成交付金 0 災害復旧事業費 11 財産収入 115 公債費(利子+一時借入金利子) 2,799 繰入金(除く基金、借入金) 185 繰出金 48 諸収入 1,211

諸収入(受託事業収入) 72

計 48,661 計 48,619 収 支 差 額 △ 42

○ 現金支出・収入を伴わないもの

減価償却費 2,874 不納欠損引当金戻入 42 還付未済金増減 5 退職給与引当金戻入 452

支払繰延戻入 118 収入未済額増減 △ 303

計 2,879 計 309 収 支 差 額 △ 2,570

○ 合計支 出 計 51,541 収 入 計 48,928

収 支 差 額 △ 2,612

○ 社会資本整備等活動財源調整支 出 計 収 入 計 △ 4,846

収 支 差 額 △ 4,846

○ 再計支 出 計 51,541 収 入 計 44,081

収 支 差 額 △ 7,459

支 出 の 部 収 入 の 部

支 出 の 部 収 入 の 部

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◎◎◎◎ 東京都普通会計財務諸表作成にかかる会計方針及び注記東京都普通会計財務諸表作成にかかる会計方針及び注記東京都普通会計財務諸表作成にかかる会計方針及び注記東京都普通会計財務諸表作成にかかる会計方針及び注記

[[[[会計方針会計方針会計方針会計方針]]]]

1 対象範囲

普通会計(一般会計と自治省基準の特別会計(14 会計))を対象としてお

り、会計間の重複、債権・債務等は全て消去している。

2 基準日

平成 12 年 3 月 31 日時点を基準としつつ、4月 1日から 5月末日まで(出納

整理期間)の入出金を取り込んだ。

3 資産・負債項目等の認識基準

現行の公会計制度は、原則的に入金・出金のときに取引を認識する現金主義

を基本とし、期末のみ出納整理期間内の入出金も年度内の取引として取り込む

修正現金主義によっている。これに発生主義会計の考え方を取り入れ、資産・

負債等の概念規定を行い、それに該当するものを計上している。

4 流動性配列法の適用

資産及び負債の項目の配列は、流動項目、固定項目の順に配列する流動性配

列法を適用した。

5 一年基準の適用

流動、固定の区分については、一年基準を適用し、基準日の翌日から一年以

内に期限の到来する資産と負債を流動項目に区分する一方、それ以外を固定項

目に区分した。

ただし、貸付金については今後調査を要するため、今回は全て固定項目に区

分した。

6 固定資産の減価償却の方法

行政財産及び普通財産のうち償却資産については、「減価償却資産の耐用年数

等に関する省令」(昭和 40 年大蔵省令)による耐用年数等にしたがって定額法に

よっている。

なお、道路・橋りょうについては、償却資産相当額について耐用年数 15年(残

存割合 100分の 10)として定額法によっている。

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7 機械及び装置、車両運搬具、工具、器具及び備品の計上

機械及び装置、車両運搬具、工具、器具及び備品については、都では備品台帳

を備えており、数量の管理は行っているものの、価額の管理を行っておらず、計

上していない。今後、システム等の再構築を踏まえて計上することとする。

8 繰延資産の処理方法

都債発行差金を繰延資産として計上しているが、償還までの年数で均等償却

している。

9 引当金の計上基準

(1)不納欠損引当金

都税、使用料等の収入未済額の一部について時効の到来等によって不納欠

損となるおそれがあるため、平成 6年度から平成 10年度までの五ヵ年におけ

る不納欠損額の収入未済額に対する割合の平均値を収入未済額に乗じた額を

引き当てている。

なお、この平均値は、五年ごとに再計算することとしている。

(2)退職給与引当金

当年度末に在職する職員が全員自己都合で退職すると仮定して、必要とな

る退職金の全額を計上した。

算出に当たっては、職員の平均給料月額に平均勤続年数から算定した普通

退職の退職手当支給率と普通会計の範囲に相当する職員数を乗じた上で、当

年度の退職手当決算額を控除している。

10 有価証券・出資金の計上方法及び評価方法

有価証券は、都が保有する監理団体等の株券を計上しているが、いずれも取得

価額により計上している。

 出資金は、公営企業における繰入資本金の総額を公営企業に対する出資金の

累計額とみなして計上した。

11 共済年金に関する事項

平成11年度末現在東京都職員共済組合は、160,688人の組合員を擁している(特

別区及び一部事務組合を含む。)が、その年金資産の額は、12,544 億円(うち長

期給付積立金 12,542億円)であり、平成 11年度の年金受給者は 100,165人であっ

た。

年金給付に要する費用の予想額(少なくとも五年ごとに再計算する。前回の再

計算は平成 11年 12月)と年金給付に係る掛金、負担金の額並びにその予定運用

収入の額の合計額が、将来にわたって財政の均衡を保つことができるよう定めら

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れており、平成 11年度末現在で普通会計に対しての影響はないものとして、負債

として計上していない。

なお、警視庁及び学校教員については、それぞれ全国組織である警察共済組合、

公立学校共済組合において経理されており、同じく負債として計上していない。

12 収入・支出の計上基準

 発生主義会計の考え方に基づき収入・支出の概念規定を行い、それに該当する

ものを計上した。

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[[[[注記事項注記事項注記事項注記事項]]]]

(貸借対照表関係)(貸借対照表関係)(貸借対照表関係)(貸借対照表関係)

1 金額の表示方法

記載金額は、それぞれ表示単位未満を切り捨てている。

2 固定資産の減価償却累計額

(単位:億円)

区 分 減価償却累計額

行政財産 10,430建物 8,832構築物 1,477船舶等 113浮標等 6

普通財産 1,827建物 904構築物 889船舶等 4浮標等 4特許権 25

道路・橋りょう 17,335計 29,593

3 偶発債務

(1)債務保証又は損失補償に係る債務負担行為のうち履行すべき額が未確定なもの

(単位:億円)

区 分 金 額

公社・協会等に係るもの 10,726

その他 3,948

(2)係争中の訴訟で損害賠償請求を受けているものには金額的に重要なものはない。

4 その他の債務負担行為

○ 利子補給等に係る翌年度以降支出予定額

(単位:億円)

区 分 金 額

利子補給等に係るもの 2,267

その他 6,836

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5 借入金等の償還予定額

(単位:億円)

区 分 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度~ 計都債 5,947 5,313 7,933 11,248 9,052 37,186 76,682他会計借入金 200 300 400 2,000 2,900基金運用金 800 800

計 5,947 5,513 8,233 11,648 9,852 39,186 80,382

なお、平成 11年度末現在における都債の残高 76,682億円については、将来に

わたって総額 14,826億円の利払いを生じる。

6 東京都の所有に属さない固定資産に係る支出額

○ 普通建設事業費のうち補助金等決算額累計額(44年度~11年度)

(単位:億円)

区 分 金 額

補助金 20,291

補助事業 6,930

単独事業 13,361

国直轄事業等 7,457

計 27,749

(参考)普通建設事業費のうち補助金等決算額の推移

(単位:億円)

区 分 7年度 8年度 9年度 10年度 11年度

総務費 245 221 221 254 201

民生費 482 436 463 503 470

衛生費 151 162 106 76 199

労働費 1 1 0 0 0

農林水産費 32 35 37 34 29

商工費 1 1 1 1 1

土木費 1,430 1,035 1,002 1,619 1,192

警察費 3 3 3 3 3

消防費 0 0 0 0 0

教育費 0 0 0 0 0

その他 0 0 0 0 0

計 2,349 1,899 1,837 2,492 2,097

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(キャッシュ(キャッシュ(キャッシュ(キャッシュ・フロー計算書関係・フロー計算書関係・フロー計算書関係・フロー計算書関係))))

1 金額の表示方法

記載金額は、それぞれ表示単位未満を切り捨てている。

2 資金の範囲

資金(現金及び現金同等物)は、普通会計における前年度からの繰越金及び当

該年度における現金収入全てを対象としている。

3 現金及び現金同等物の期末残高(形式収支)と貸借対照表に掲記されている科目

の金額との関係

(単位:億円)

区 分 金 額

現金預金勘定 368

現金及び現金同等物期末残高(形式収支) 368

4 財務活動における都債収入の充当先

(単位:億円)

区 分 金 額

都債収入額 7,844

サービス提供活動 1,220

社会資本整備等活動 6,487

その他 136

(行政コスト計算書関係(行政コスト計算書関係(行政コスト計算書関係(行政コスト計算書関係))))

1 金額の表示方法

記載金額は、それぞれ表示単位未満を切り捨てている。

2 社会資本整備等活動財源調整

行政コスト計算書と貸借対照表を連関させるために、正味財産を直接増減させる

項目として社会資本整備等活動財源調整項目を設けた。例えば、キャッシュ・フロー

計算書における社会資本整備等活動の収入は、行政コスト計算書上収入として計上

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されないが、資産形成の財源の一部として正味財産を直接変動させる。また、固定

資産の移管・売却による減少も同じように正味財産を直接変動させる。

 これにより、行政コスト計算書上の収支差額と貸借対照表における正味財産の増

減額とが一致する。

3 収入項目の内容及び計上基準

区 分 内 容 及 び 計 上 基 準

地方税地方税法に規定する普通税、旧法による税、目的税について当該年度に収入した額を計上する。ただし、地方消費税については、都道府県間での清算後の額を計上する。

地方譲与税地方道路譲与税、特別とん譲与税、石油ガス譲与税及び航空機燃料譲与税について当該年度に収入した額を計上する。

地方特例交付金11年度から、恒久的な減税に伴う地方税の減収の一部を補てんするため、地方税の代替的性格を有する財源として交付されており、当該年度に交付された額を計上する。

交通安全対策特別交付金地方公共団体の道路交通安全施設の設置及び補修を促進するため、国庫に納付された反則金に係る収入額が交付されるものであり、当該年度に交付された額を計上する。

分担金・負担金・寄附金 当該年度に収入した額を計上し、繰越事業分を含む。

使用料・手数料 当該年度に収入した額を計上する。

国庫支出金当該年度の支出に対する収入のあった額を計上し、繰越事業分を含む。

国有提供施設等所在市町村助成交付金

国有提供施設が所在する市町村に対して固定資産税の見返として交付されるものであり、当該年度に交付された額を計上する。

財産収入地方公共団体が所有する財産に係る貸付け、私権の設定、出資、交換又は売払いによって生ずる収入であり、当該年度に収入した額を計上する。

繰入金普通会計外の会計及び基金から当該年度に繰り入れた額を計上し、繰越事業分を含む。

諸収入 当該年度に収入した額を計上し、繰越事業分を含む。

 東京都は、都道府県のなかで唯一の地方交付税の不交付団体であり、自主財源

により多くの政策・施策を実行している。

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4 現金支出を伴うものの目的別内訳

(単位:億円)

区 分 金 額

議会費 59

総務費 4,400

民生費 5,692

衛生費 3,464

労働費 253

農林水産費 114

商工費 543

土木費 4,612

警察費 5,719

消防費 2,127

教育費 9,486

その他 12,187

計 48,661

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◎◎◎◎ 東京都連結貸借対照表東京都連結貸借対照表東京都連結貸借対照表東京都連結貸借対照表(平成11年度末)

(単位:億円)

(資産の部)(資産の部)(資産の部)(資産の部) (負債の部)(負債の部)(負債の部)(負債の部)流動資産 19,078 流動負債 18,684 現金預金 7,246 仕入債務 728 売上債権 4,665 短期借入金 12,962 棚卸資産 2,115 都債 10,069 短期貸付金 42 その他 2,893 未収金 4,285 短期未払金 3,562 貸倒引当金 △ 367 その他流動負債 1,430 その他流動資産 1,090

固定負債 163,195 固定資産 309,240 社債 1,932 有形固定資産 279,450 長期借入金 136,721 建物 55,707 都債 121,752 構築物 83,955 その他 14,968 機械装置 16,287 長期未払金 4,009 土地 94,835 退職給与引当金 13,221 建設仮勘定 27,343 その他引当金 1,039 その他有形固定資産 1,322 その他固定負債 6,269

無形固定資産 2,010 借地権、地上権 1,512 負 債 合 計 181,879 その他無形固定資産 498

(正味財産の部)(正味財産の部)(正味財産の部)(正味財産の部)投資等 27,779 正味財産 94,141 有価証券 2,119 長期貸付金 10,968 投資不動産 4,575 剰余金 52,759 長期預金 1,962 基金 7,088 貸倒引当金 △ 14 その他投資等 1,080

繰延資産 462 正 味 財 産 合 計 146,901

資 産 合 計 328,781 負 債・正味財産 合 計 328,781

科     目 金 額 科     目 金 額

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◎◎◎◎ 東京都連結貸借対照表作成にかかる会計方針及び注記東京都連結貸借対照表作成にかかる会計方針及び注記東京都連結貸借対照表作成にかかる会計方針及び注記東京都連結貸借対照表作成にかかる会計方針及び注記

[[[[会計方針会計方針会計方針会計方針]]]]

1 連結範囲

東京都の全会計(普通会計、「特別会計」及び公営企業会計)及び東京都監理

団体を連結対象とする。

(1)普通会計

一般会計と自治省基準の特別会計(14 会計)を合算しており、会計間の重

複、債権・債務等は全て消去している。

(2)「特別会計」

普通会計の範囲外の特別会計である次の 5の会計

と場会計 都営住宅等保証金会計

新住宅市街地開発事業会計 相原小山開発事業会計

港湾事業会計

(3)公営企業会計

次の 11の公営企業会計

病院会計 中央卸売市場会計

埋立事業会計 臨海副都心開発事業会計

羽田沖埋立事業会計 交通事業会計

高速電車事業会計 電気事業会計

水道事業会計 工業用水道事業会計

下水道事業会計

(4)東京都監理団体

東京都が出資又は出えんを行っている団体並びに継続的な財政支出及び人

的支援を行っている団体のうち全庁的に指導監督又は関与を行う必要がある

団体。22 特別監理団体、16 一般監理団体、26 協議団体の合計 64 団体全てに

ついて東京都の持分を 100%とみなした。

ⅰ)株式会社(23団体)

(特別監理団体)

東京臨海高速鉄道(株) 東京熱供給(株)

(株)ゆりかもめ 東京臨海熱供給(株)

(株)東京テレポートセンター 竹芝地域開発(株)

東京臨海副都心建設(株) (株)多摩ニュータウン開発センター

東京都地下鉄建設(株)

(一般監理団体)

多摩都市モノレール(株) (※)東京鉄道立体整備(株)

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(株)東京スタジアム 東京トラフィック開発(株)

水道マッピングシステム(株) 東京都下水道サービス(株)

(協議団体)

(株)首都圏建設資源高度化センター 首都圏新都市鉄道(株)

東京ファッションタウン(株) (株)東京国際貿易センター

(株)沿岸環境開発資源利用センター 東京食肉市場(株)

東京都市開発(株) 水道総合サービス(株)

ⅱ)公益法人等(41 団体)

(特別監理団体)

(財)東京国際交流財団 (財)東京都歴史文化財団

(財)東京女性財団 (財)東京都防災・建築まちづくりセンター

(財)東京都地域福祉財団 (財)東京都医学研究機構

(財)東京都健康推進財団 (財)東京都農林水産振興財団

(財)東京港埠頭公社 (財)東京都環境整備公社

(財)東京都生涯学習文化財団 (社福)東京都社会福祉事業団

(特)東京都住宅供給公社

(一般監理団体)

(財)東京税務協会 (財)東京都新都市建設公社

(財)東京都保健医療公社 (財)東京都勤労福祉協会

(財)東京都高齢者事業振興財団 (財)東京都駐車場公社

(財)東京都公園協会 (財)東京都老人総合研究所

(社)東京国際見本市協会 (特)東京都道路公社

(協議団体)

(財)東京都島しょ振興公社 (財)東京都私立学校教育振興会

(財)東京都人権啓発センター (財)山谷労働センター

(財)東京都心身障害者職能開発センター (財)東京都中小企業振興公社

(財)東京動物園協会 (財)東京都交響楽団

(財)東京都体育協会 (財)暴力団追放運動推進都民センター

(財)東京救急協会 (財)東京連合防火協会

(財)東京防災指導協会 (※)(社)東京都映画協会

(社)東京コンベンション・ビジターズ ビューロー (社)東京都農住開発協会

(社)東京都港湾振興協会 (特)東京都漁業信用基金協会

((※)東京鉄道立体整備(株)及び(社)東京都映画協会は、平成 11年度末を

もって解散した。)

2 連結基準日

平成 12 年 3 月 31 日時点を基準とするが、普通会計及び「特別会計」について

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は、4月 1日から 5月末日まで(出納整理期間)の入出金を取り込んだ。

さらに、公営企業会計及び監理団体についても、出納整理期間における普通

会計及び「特別会計」との入出金を取り込んだ。

3 連結貸借対照表作成に際して使用した基礎数値

普通会計及び「特別会計」については、原則として、決算情報及び公有財産台

帳の価格など、既存のデータを編集・加工して用いた。

公営企業会計及び監理団体については、各々の貸借対照表を用いた。

4 流動性配列法の適用

資産及び負債の項目の配列は、流動項目、固定項目の順に配列する流動性配

列法を適用した。

5 一年基準の適用

流動、固定の区分については、一年基準を適用し、基準日の翌日から一年以

内に期限の到来する資産と負債を流動項目に区分する一方、それ以外を固定項

目に区分した。

ただし、普通会計及び「特別会計」における貸付金については、今後調査する

こととしており、今回は全て固定項目に区分した。

6 棚卸資産の評価基準及び評価方法

公営企業会計における棚卸資産は、主に移動平均法による原価法によっている。

また、監理団体における棚卸資産は、主に先入先出法による原価法によってい

る。

7 固定資産の減価償却の方法

普通会計及び「特別会計」における行政財産及び普通財産のうち償却資産につ

いては、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和 40年大蔵省令)による

耐用年数等にしたがって定額法によっている。

なお、普通会計における道路・橋りょうについては、償却資産相当額について

耐用年数 15年(残存割合 100分の 10)として定額法によっている。

公営企業会計における償却資産については、地方公営企業法施行規則による

耐用年数等にしたがって定額法によっている。

監理団体については、主として税法による耐用年数等にしたがって定額法に

よっている。

8 普通会計及び「特別会計」における機械及び装置、車両運搬具、工具、器具及び備

品の計上

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普通会計及び「特別会計」における機械及び装置、車両運搬具、工具、器具及び

備品については、都では備品台帳を備えており、数量の管理は行っているものの、

価額の管理を行っておらず、計上していない。今後、システム等の再構築を踏ま

えて計上することとする。

9 有価証券の評価基準及び評価方法

普通会計、「特別会計」においては、いずれも取得価額により計上している。

監理団体においては、主として移動平均法による原価法により評価している。

10 繰延資産の処理方法

普通会計、「特別会計」及び公営企業会計においては、都債発行差金を繰延資

産として計上しているが、償還までの年数で均等償却している。

監理団体においては、新株発行費等を繰延資産として計上しているが、商法

上の最長期間で均等償却している。

11 引当金の計上基準

主な引当金は以下のとおりである。

(1)貸倒引当金

普通会計、「特別会計」においては、都税、使用料等の収入未済額の一部に

ついて時効の完成等によって不納欠損となるおそれがあるため、平成 6 年度

から平成 10 年度までの五ヵ年における不納欠損額の収入未済額に対する割

合の平均値を収入未済額に乗じた額を引き当てており、貸倒引当金として計

上している。

なお、この平均値は、五年ごとに再計算することとしている。

監理団体においては、債権の貸倒れによる損失に備えるため、法人税法の規定

による税法限度額のほか、個別債権の回収不納見積り額を計上している。

(2)退職給与引当金

当年度に、全職員が自己都合で退職する場合、必要となる退職金の全額か

ら当年度支出した退職手当を控除した額を計上した。

算出に当たっては、職員の平均給料月額に平均勤続年数から算定した普通

退職の退職手当支給率と普通会計の範囲に相当する職員数を乗じた上で、当

年度の退職手当決算額を控除している。

(3)主なその他引当金

① 修繕引当金

将来の修繕に備えるため、財政計画等による当該年度の予定修繕額に対し、

当該年度の執行額がそれを下回る場合にその差額を引き当てている。

② 年賦未収引当金

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資産売却に伴う年賦未収金の額を引き当てている。

③ 新規水源開発引当金

将来の新規水源開発に備えるため、新規水源対策費として予算に計上した額

のうち、当該年度の未執行額を引き当てている。

④ 渇水準備引当金

電気事業会計において渇水期の料金収入不足に備えるため、従量制分に係る

予定料金収入額に対して収入額が上回る場合に、予定を上回る電力量に対する

運転費を控除した額を引き当てている。

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[[[[注記事項注記事項注記事項注記事項]]]]

1 金額の表示方法

記載金額は、それぞれ表示単位未満を切り捨てている。

2 有形固定資産の減価償却累計額

区 分 減価償却累計額普通会計 29,593億円「特別会計」 235億円公営企業会計 27,546億円株式会社 1,221億円公益法人 1,267億円

計 59,864億円

3 借入金及び社債の返済・償還予定額

(単位:億円)

区 分 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度17年度以降

普通会計 5,947 5,313 7,933 11,248 9,052 37,186 76,682「特別会計」 90 85 134 65 122 1,378 1,878公営企業会計 4,030 3,101 3,528 4,176 5,699 32,724 53,260株式会社 723 571 582 1,450 587 8,336 12,252公益法人 317 218 227 235 161 6,381 7,542

計 11,110 9,290 12,406 17,177 15,623 86,008 151,615

4 担保に供している資産

株式会社における資産のうち 5,731億円は担保に供している。

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◎◎◎◎ 生活文化局連結財務諸表生活文化局連結財務諸表生活文化局連結財務諸表生活文化局連結財務諸表

Ⅰ 生活文化局連結貸借対照表

(単位:百万円)9年度 10年度 11年度

(資産の部)流動資産 4,316 3,972 3,679 現金預金 3,585 3,172 2,918 未収金 456 575 479 その他流動資産 274 224 292 貸倒引当金 0 0 △ 10

固定資産 337,129 333,549 328,105 有形固定資産 291,426 287,668 281,764 建物構築物 204,412 199,544 193,529 工具器具備品 1,020 857 940 絵画工芸品等 4,696 5,952 6,115 土地 81,027 81,027 81,027 その他有形固定資産 268 285 152

無形固定資産 3,437 3,339 3,237 地上権 3,089 3,089 3,089 特許権等 345 247 144 その他無形固定資産 3 3 4

投資等 42,265 42,541 43,103 長期貸付金 1,276 1,267 1,179 差入保証金 1,336 1,336 1,336 長期預金 1,949 1,954 1,973 積立金 37,469 37,740 38,365 その他投資等 233 241 248

繰延資産 43 34 24 資産合計 341,489 337,555 331,809 (負債の部)流動負債 4,231 3,736 3,568 未払金 3,176 2,565 2,383 前受金 576 538 725 短期借入金 421 566 406 都債 421 566 406

その他流動負債 39 65 53

固定負債 17,959 17,390 17,124 長期借入金 17,308 16,736 16,468 都債 17,293 16,727 16,466 その他 14 8 1

退職給与引当金 147 158 157 受入保証金 503 495 498

負債合計 22,190 21,126 20,693 (正味財産の部)正味財産相当 315,325 312,075 305,953 剰余金 3,972 4,353 5,162 正味財産合計 319,298 316,428 311,116 負債・正味財産合計 341,489 337,555 331,809

科     目

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◎◎◎◎ 東京国際フォーラム財務諸表東京国際フォーラム財務諸表東京国際フォーラム財務諸表東京国際フォーラム財務諸表

Ⅰ 東京国際フォーラム貸借対照表

(単位:百万円)9年度 10年度 11年度

(資産の部)流動資産 2,000 2,239 2,051 現金預金 1,595 1,739 1,604 未収金 404 499 408 その他流動資産 0 0 49 貸倒引当金 0 0 △ 10

固定資産 163,545 160,267 157,071 有形固定資産 162,957 159,589 155,816 建物構築物 161,767 158,485 154,617 工具器具備品 540 455 549 絵画工芸品等 573 573 573 その他有形固定資産 76 76 76

無形固定資産 52 44 36 特許権等 51 43 35 その他無形固定資産 1 1 1

投資等 536 633 1,218 長期預金 536 626 1,203 その他投資等 0 7 14

資産合計 165,546 162,507 159,122 (負債の部)流動負債 1,759 1,711 1,815 未払金 1,163 1,148 1,069 前受金 571 537 724 その他流動負債 24 25 21

固定負債 536 531 545 退職給与引当金 33 35 46 受入保証金 503 495 498

負債合計 2,295 2,242 2,360 (正味財産の部)正味財産相当 163,250 160,265 156,761

正味財産合計 163,250 160,265 156,761 負債・正味財産合計 165,546 162,507 159,122

科     目

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Ⅱ 東京国際フォーラムキャッシュ・フロー計算書

○ サービス提供活動 (単位:百万円)10年度 11年度

収 入 5,718 5,345 事業収入 5,607 5,413 財産収入 131 131 雑収入 61 52 〔財源振替〕 △ 81 △ 252

支 出 5,281 5,036 管理事務費 182 153 維持補修費 48 29 事業費 4,708 4,656 法人税及び住民税等 342 196

サービス提供活動による収支差額 437 309

○ 投資活動10年度 11年度

収 入 23 3 受入保証金収入 3 3 長期預金収入 19 0

支 出 155 653 固定資産取得支出 35 64 長期預金支出 10 10 貸倒繰入支出 109 577

投資活動による収支差額 △ 132 △ 650

○ 行政活動(サービス提供活動+投資活動)10年度 11年度

収 入 合 計 5,741 5,348 支 出 合 計 5,316 5,689 収支差額合計 425 △ 341

○ 財務活動10年度 11年度

収 入 0 0

支 出 0 0

財務活動による収支差額 0 0

○ 総括10年度 11年度

収 入 合 計 5,741 5,348 支 出 合 計 5,436 5,689 収支差額合計 305 △ 341 前年度からの繰越金 240 546 形 式 収 支 546 204

科 目

科 目

科 目

科 目

科 目

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Ⅲ 東京国際フォーラム行政コスト計算書

○ 現金支出・収入を伴うもの (単位:百万円)10年度 11年度

収 入 5,718 5,345 事業収入 5,607 5,413 財産収入 131 131 雑収入 61 52 〔財源振替〕 △ 81 △ 252

支 出 5,281 5,036 管理事務費 182 153 維持補修費 48 29 事業費 4,708 4,656 法人税及び住民税等 342 196

収 支 差 額 437 309

○ 現金支出・収入を伴わないもの10年度 11年度

収 入 0 144 棚卸資産 0 47 賞与引当金戻入 0 0 機械工具備品組替差金 0 95

支 出 3,422 3,957 減価償却費 3,402 3,933 退職給与引当金繰入 1 11 長期前払費用償却 0 2 貸倒引当金繰入 0 10 機械工具備品組替差金 0 0 賞与引当金繰入 17 0

収 支 差 額 △ 3,422 △ 3,812

○ 合計10年度 11年度

収 入 計 5,718 5,489 支 出 計 8,703 8,993 収 支 差 額 △ 2,985 △ 3,503

科 目

科 目

科 目

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◎◎◎◎ 東京都江戸東京博物館財務諸表東京都江戸東京博物館財務諸表東京都江戸東京博物館財務諸表東京都江戸東京博物館財務諸表

Ⅰ 東京都江戸東京博物館貸借対照表

(単位:百万円)9年度 10年度 11年度

(資産の部)流動資産 1,365 848 698 現金預金 1,319 828 668 その他流動資産 46 19 29

固定資産 116,174 115,077 114,005 有形固定資産 108,505 107,494 106,500 建物構築物 38,076 37,142 36,195 工具器具備品 374 276 200 絵画工芸品等 3,050 3,050 3,213 土地 66,884 66,884 66,884 建設仮勘定 117 133 0 その他有形固定資産 1 7 7

無形固定資産 3,354 3,265 3,177 地上権 3,089 3,089 3,089 その他無形固定資産 265 176 88

投資等 4,314 4,317 4,326 積立金 4,297 4,297 4,297 その他投資等 17 19 29

繰延資産 43 33 24

資産合計 117,583 115,960 114,727 (負債の部)流動負債 1,786 1,269 1,104 未払金 1,365 848 697 短期借入金 421 421 406 都債 421 421 406

その他流動負債 0 0 0

固定負債 17,143 16,724 16,327 長期借入金 17,125 16,704 16,298 都債 17,125 16,704 16,298

退職給与引当金 17 19 29

負債合計 18,929 17,994 17,431 (正味財産の部)正味財産相当 98,653 97,966 97,295

正味財産合計 98,653 97,966 97,295 負債・正味財産合計 117,583 115,960 114,727

科     目

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Ⅱ 東京都江戸東京博物館キャッシュ・フロー計算書

○ サービス提供活動 (単位:百万円)10年度 11年度

収 入 5,771 5,354 入場料収入等 530 477 その他事業収入 77 56 雑収入 50 39 〔一般財源〕 5,112 4,781

支 出 5,150 4,745 管理事務費 704 697 維持補修費 0 41 江戸東京博物館費 3,461 3,046 公債費(利子) 983 961

サービス提供活動による収支差額 620 609

○ 投資活動10年度 11年度

収 入 1 0 長期預金取崩収入 1 0

支 出 200 187 普通建設事業費 192 174 機械工具備品購入支出 5 3 長期預金支出 3 9

投資活動による収支差額 △ 199 △ 187

○ 行政活動(サービス提供活動+投資活動)10年度 11年度

収 入 合 計 5,772 5,354 支 出 合 計 5,351 4,933 収支差額合計 421 421

○ 財務活動10年度 11年度

収 入 0 0

支 出 421 421 公債費(元金) 421 421

財務活動による収支差額 △ 421 △ 421

○ 総括10年度 11年度

収 入 合 計 5,772 5,354 支 出 合 計 5,772 5,354 収支差額合計 0 0 前年度からの繰越金 0 0 形 式 収 支 0 0

科 目

科 目

科 目

科 目

科 目

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Ⅲ 東京都江戸東京博物館行政コスト計算書

○ 現金支出・収入を伴うもの (単位:百万円)10年度 11年度

収 入 5,771 5,354 入場料収入等 530 477 その他事業収入 77 56 雑収入 42 39 〔一般財源〕 5,112 4,781

支 出 5,150 4,745 管理事務費 704 697 維持補修費 0 41 江戸東京博物館費 3,461 3,046 公債費(利子) 983 961

収 支 差 額 620 609

○ 現金支出・収入を伴わないもの10年度 11年度

収 入 0 0

支 出 1,308 1,279 減価償却費 1,260 1,254 退職給与引当金繰入 2 9 繰延資産償却 9 9 機械器具備品除却 35 6

収 支 差 額 △ 1,308 △ 1,279

○ 合計10年度 11年度

収 入 計 5,771 5,354 支 出 計 6,458 6,025 収 支 差 額 △ 687 △ 670

科 目

科 目

科 目

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◎◎◎◎ 東京都写真美術館財務諸表東京都写真美術館財務諸表東京都写真美術館財務諸表東京都写真美術館財務諸表

Ⅰ 東京都写真美術館貸借対照表

(単位:百万円)9年度 10年度 11年度

(資産の部)流動資産 203 167 154 現金預金 177 135 130 その他流動資産 25 32 23

固定資産 5,266 5,212 5,105 有形固定資産 5,212 5,164 5,064 建物構築物 4,123 4,026 3,928 工具器具備品 16 13 10 絵画工芸品等 1,072 1,125 1,125

無形固定資産 34 27 20 特許権等 34 27 20

投資等 19 20 20 長期預金 19 20 20

資産合計 5,469 5,380 5,259 (負債の部)流動負債 187 144 136 未払金 186 143 136 その他流動負債 1 1 0

固定負債 8 10 10 退職給与引当金 8 10 10

負債合計 196 154 147 (正味財産の部)正味財産相当 5,272 5,225 5,112

正味財産合計 5,272 5,225 5,112 負債・正味財産合計 5,469 5,380 5,259

科     目

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Ⅱ 東京都写真美術館キャッシュ・フロー計算書

○ サービス提供活動 (単位:百万円)10年度 11年度

収 入 1,188 1,041 入場料収入等 82 62 その他事業収入 17 15 雑収入 13 8 〔一般財源〕 1,074 954

支 出 1,133 1,040 管理事務費 636 632 写真美術館費 497 408

サービス提供活動による収支差額 54 0

○ 投資活動10年度 11年度

収 入 0 0

支 出 54 0 絵画工芸品等購入 53 0 長期預金支出 1 0

投資活動による収支差額 △ 54 0

○ 行政活動(サービス提供活動+投資活動)10年度 11年度

収 入 合 計 1,188 1,041 支 出 合 計 1,188 1,041 収支差額合計 0 0

○ 財務活動10年度 11年度

収 入 0 0

支 出 0 0

財務活動による収支差額 0 0

○ 総括10年度 11年度

収 入 合 計 1,188 1,041 支 出 合 計 1,188 1,041 収支差額合計 0 0 前年度からの繰越金 0 0 形 式 収 支 0 0

科 目

科 目

科 目

科 目

科 目

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Ⅲ 東京都写真美術館行政コスト計算書

○ 現金支出・収入を伴うもの (単位:百万円)10年度 11年度

収 入 1,188 1,041 入場料収入等 82 62 その他事業収入 17 15 雑収入 13 8 〔一般財源〕 1,074 954

支 出 1,133 1,040 管理事務費 636 632 写真美術館費 497 408

収 支 差 額 54 0

○ 現金支出・収入を伴わないもの10年度 11年度

収 入 8 0 棚卸資産 8 0

支 出 109 113 減価償却費 107 107 退職給与引当金繰入 1 0 棚卸資産 0 5

収 支 差 額 △ 101 △ 113

○ 合計10年度 11年度

収 入 計 1,196 1,041 支 出 計 1,243 1,154 収 支 差 額 △ 46 △ 113

科 目

科 目

科 目

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74

◎◎◎◎ 東京都庭園美術館財務諸表東京都庭園美術館財務諸表東京都庭園美術館財務諸表東京都庭園美術館財務諸表

Ⅰ 東京都庭園美術館貸借対照表

(単位:百万円)9年度 10年度 11年度

(資産の部)流動資産 78 74 102 現金預金 58 63 82 その他流動資産 19 10 19

固定資産 14,114 14,117 14,130 有形固定資産 14,110 14,113 14,125 建物構築物 182 185 193 工具器具備品 56 56 60 土地 13,807 13,807 13,807 その他有形固定資産 63 63 63

無形固定資産 0 0 0

投資等 4 4 5 長期預金 4 4 5

資産合計 14,193 14,192 14,233 (負債の部)流動負債 63 64 83 未払金 63 64 83 その他流動負債 0 0 0

固定負債 4 4 5 退職給与引当金 4 4 5

負債合計 68 68 88 (正味財産の部)正味財産相当 14,125 14,123 14,144

正味財産合計 14,125 14,123 14,144 負債・正味財産合計 14,193 14,192 14,233

科     目

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Ⅱ 東京都庭園美術館キャッシュ・フロー計算書

○ サービス提供活動 (単位:百万円)10年度 11年度

収 入 472 503 入場料収入等 69 82 その他事業収入 24 25 雑収入 10 16 〔一般財源〕 367 379

支 出 458 479 管理事務費 204 244 庭園美術館費 254 235

サービス提供活動による収支差額 13 24

○ 投資活動10年度 11年度

収 入 0 0

支 出 13 24 建物付属設備購入支出 8 18 機械工具備品購入支出 4 4 長期預金支出 0 0

投資活動による収支差額 △ 13 △ 24

○ 行政活動(サービス提供活動+投資活動)10年度 11年度

収 入 合 計 472 503 支 出 合 計 472 503 収支差額合計 0 0

○ 財務活動10年度 11年度

収 入 0 0

支 出 0 0

財務活動による収支差額 0 0

○ 総括10年度 11年度

収 入 合 計 472 503 支 出 合 計 472 503 収支差額合計 0 0 前年度からの繰越金 0 0 形 式 収 支 0 0

科 目

科 目

科 目

科 目

科 目

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Ⅲ 東京都庭園美術館行政コスト計算書

○ 現金支出・収入を伴うもの (単位:百万円)10年度 11年度

収 入 472 503 入場料収入等 69 82 その他事業収入 24 25 雑収入 10 16 〔一般財源〕 367 379

支 出 458 479 管理事務費 204 244 庭園美術館費 254 235

収 支 差 額 13 24

○ 現金支出・収入を伴わないもの10年度 11年度

収 入 0 8 棚卸資産 0 8

支 出 15 11 減価償却費 10 11 退職給与引当金繰入 0 0 棚卸資産 4 0

収 支 差 額 △ 15 △ 2

○ 合計10年度 11年度

収 入 計 472 512 支 出 計 474 491 収 支 差 額 △ 1 21

科 目

科 目

科 目