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周術期の集中治療
慈恵ICU勉強会
2017.11.21青栁 佑加理
本日のお話
• 集中治療室における術後患者の位置づけ
• 血圧管理
• 今後の展望
本日のお話
• 集中治療室における術後患者の位置づけ
• 血圧管理
• 今後の展望
集中治療室における術後患者
何故術後患者がICUに入室するのか?
⬇
術後重症患者は重要臓器不全になる可能性が高く、厳密なモニタリングを行う必要がある。
そもそも術後患者は
それだけリスクが高いのか?
EuropeanSurgicalOutcomesStudy;EuSOS
現在このイメージを表示できません。
• 期間:2011年4月4~11日• ヨーロッパの28ヵ国498施設• 7日間のコホート研究• Primaryoutcome:院内死亡率• Secondaryoutcome:入院期間および集中治療室滞在期間
Lancet2012;380:1059–65
方法• 498施設、28国籍• 16歳以上• 術後患者
• 除外手術:日帰り、心臓外科、脳神経外科、放射線、産科
• それぞれの地区でローカルが情報をインターネットのウェブフォームで収集。
• 術後60日間フォローアップ
• 統計方法• 目標サンプルサイズ20000人(死亡率を200以上のイベントでロジスティック解析)• SPSSversion19.0• χ2検定、Fisher’sexacttests、ttest、Mann-WhitneyUtest• P<0.05を有意差あり
全患者 ICU入室患者
患者背景
• 高齢、男性、ASAscore高値、緊急なほど死亡リスクは高い。
• 部位としては上部・下部消化管、血管、肝胆道系の順。
• 既往歴としては肝硬変がOddsratio3.64、CHFが2.10とリスクが高い。
各国の死亡率在院日数 ICU入室率 院内粗死亡率
各国の死亡率
在院日数:
キプロスの1日〜ポーランド・ルーマニア・セルビアの5日間ICU入室率:キプロスの0%〜ドイツの22.6%粗死亡率:
アイスランドの1.2%〜ラトビアの21.5%
まで、かなりバラつきがみられた。
マルチレベル・ロジスティック回帰モデルで調整した院内死亡Oddsratio(Op件数の多いUKを基準)
緊急度別のICU入室
定時 35040(75%)死亡1132(3%)
準緊急 8919(19%)死亡483(5%)
緊急 2557(5%)死亡249(10%)
予定入室 1864(5%)死亡32(2%)帰室1832(98%)➡ 帰室後死亡88(5%)
予定外入室278(1%)死亡22(8%)帰室256(92%)➡ 帰室後死亡16(6%)
病棟帰室32895(94%)死亡973(3%)
予定入室 490(5%)死亡54(11%)帰室436(89%)➡ 帰室後死亡30(7%)
予定外入室391(4%)死亡63(16%)帰室328(84%)➡ 帰室後死亡33(10%)
病棟帰室8033(90%)死亡301(4%)
予定入室 201(8%)死亡207(18%)帰室164(82%)➡ 帰室後死亡23(14%)
予定外入室356(14%)死亡79(22%)帰室277(78%)➡ 帰室後死亡26(9%)
病棟帰室1999(78%)死亡84(4%)
対象 46539人死亡1864(4%)
ICU入室 3599人 (8%)予定入室 2555人 (71%)ICU滞在期間1.2日(0.9-3.6)全体の死亡者のうちICU入室した患者は506人(27%)
• 交絡因子を調整後に、op件数が最大のUKと比較したところ、オッズ比でフィンランドの0.44からポーランドの6.92まで大きな差が認められた(p=0.0004)。
• 登録された46539人のうち、1864人(4%)が退院前に死亡。
• 術後にICU入室したのは3,599人(8%)で、入院日数は中央値1.2日。
• 院内死亡例のうち1,358人(73%)が、術後に集中治療室に入室していなかった。
想像していたよりずっと死亡率高い!!!
病棟で亡くなった73%の患者は、
ICUに入室していたら何か変わっていた・・・???
慈恵ICUでは
入室患者全体 3725術後患者 3202
院内死亡 68 (2.1%)ICU内死亡 23(0.7%)
定時一泊入室を除いた術後患者 901院内死亡 47(5.2%)
ICU内死亡 20(2.2%)
当院ICUにおける術後患者の割合は86.0%(JIPADでは78.7%(2015年度))
期間:2014.1.1– 2015.12.31(2年間) JIPADにて検索
集中治療室において
術後患者の管理は避けては通れない
本日のお話
• 集中治療室における術後患者の位置づけ
• 血圧管理
• 今後の展望
血圧管理
• 術後患者は重要臓器不全になる可能性が高く、厳密なモニタリングを行う必要がある。
• 周術期のモニタリングにおいて、血圧管理は核となるパラメーターである。
• どこをターゲットにして、どう管理するべきか?
NEngl JMed.2014Apr24;370
• フランス 29施設• 多施設共同、前向き、無作為、非盲検化、比較試験• 期間:2010年3月〜2011年12月• 慢性高血圧(過去に高血圧を指摘、あるいは降圧薬の内服をした
ことがあるか)の有無で層別化LowMAP群 (MAP65-70mmHg)vs HighMAP群(MAP80-85mmHg)
敗血症患者において、慢性高血圧患者の血圧ターゲットを考察。
⬇SepsisandMeanArterialPressure(SEPSISPAM)trial
Journalclub2014.5.13齋藤 慎二郎
NEngl JMed.2014Apr 24;370(17):1583-93.
23
Methods【選択患者】• 18歳以上• 敗血症性ショック– 輸液に不応性のショック
• 30ml/kgの輸液 orright-heartcatheterization,pulse-pressuremeasurement,stroke-volumemeasurement,orechocardiography
– 血管収縮薬(ノルアドorアドレナリン)使用– 血管収縮薬使用から6時間以内
【除外基準】• 法的に保護されるもの• フランスの健康保険に未加入のもの• 妊婦
• 他の医学的研究や介入研究に参加しているもの
• 治療者が蘇生不可と判断したものJournalclub(2014.5.13齋藤先生)スライドより引用
【治療プロトコール】
• LowMAPgroup– ターゲットのMAPは65-70mmHg。MAPが>70mmHgに達したら0.05μg/Kg/minずつ、>75mmHgの時は0.1μg/Kg/minずつ血管収縮薬を下げる。最低1時間ごとに評価。
• HighMAPgroup– ターゲットのMAPは80-85mmHg。MAPが>85mmHgに達したら0.05μg/Kg/minずつ、>95mmHgの時は0.1μg/Kg/minずつ血管収縮薬を下げる。最低1時間ごとに評価。
LowMAPgroupvs.HighMAPgroup
血管収縮薬は1施設のみアドレナリンで、その他の施設ではノルアドレナリンを使用
最長で5日間継続。その後は医師の判断。
Journalclub(2014.5.13齋藤先生)スライドより引用
Methods
• 90日死亡率
• 臓器不全のない生存日数– カテコラミン投与– 人工呼吸– RRT
• 重大な合併症イベント– 心臓– 虚血– その他
【1次評価項目】
28日死亡率
【2次評価項目】
Journalclub(2014.5.13齋藤先生)スライドより引用
Results【患者選択】
• 800人の患者が登録され、最終的にそれぞれ388人ずつが90日間追跡、分析された。
• High-targetgroupのうち14人(3.6%)がadverseeffectのためターゲットを65-70mmHgへ下げた。
• 追跡率 84%
800人の登録患者(2名から同意得られず)
Journalclub(2014.5.13齋藤先生)スライドより引用
Results【治療期間である5日間のMAPの推移】
• Low-targetgroupのMAPは明らかにHigh-targetgroupより低い.• さらに、Low-targetgroupのMAPはターゲット(65-70)よりかなり高い。
Journalclub(2014.5.13齋藤先生)スライドより引用
Results【血管収縮薬使用と体液バランス】
• 両群で総輸液量、尿量、総体液バランスに有意差ない。• ノルアド投与速度はHigh-targetgroupで有意に高い。• Day1でノルアド投与速度の中央値はLow-Targetgroupで0.45μg/kg/min• High,Low-targetgroupでターゲットに到達できなかった患者はそれぞれ64人(16.5%)、40人(10.3%)
Journalclub(2014.5.13齋藤先生)スライドより引用
Results【1次評価項目と2次評価項目】
• 1次評価項目である28日死亡率に両群で有意差を認めなかった。34%vs.36.6%,HR1.07(95%CI0.89-1.29),P=0.57
• 2次評価項目である慢性高血圧を持つ患者のRRT施行率は、High-TargetGroupで有意に低かった。 (サブグループ間のinteractionは有意。P=0.04)
42.2%vs.31.7%,OR0.64(95%CI0.41-0.99),P=0.46Journalclub(2014.5.13齋藤先生)スライドより引用
Results【安全性】
• 重大な合併症全体では、両群に発生率に有意差無し。• 心房細動発生率は、High-targetgroupで有意に高い。(2.8%vs.6.7%,
P=0.02)• 心筋梗塞、VForVT、虚血、出血の発生率に有意差無し。
Journalclub(2014.5.13齋藤先生)スライドより引用
まとめ
敗血症性ショック患者の蘇生管理において
• 目標MAPを80-85mmHgとした管理は、65-70mmHgの管理と比較して28 or90日死亡率に有意な差を認めなかった。
• 敗血症性ショック患者に対してルーチンに高いMAPをターゲットにした管理を行う根拠はいまのところない。
• 慢性高血圧症を持つ患者は、高いMAPで管理した方がRRTの施行リスクを減らすかもしれない。
Journalclub(2014.5.13齋藤先生)スライドより引用
Saitoetal.CriticalCare(2016)20:74
当院ICUにおける単一施設後ろ向き観察研究。
昇圧薬を4時間以上用いた心臓外科術後患者において、AKIが進行したものとそうでないものを比較し、収縮期血圧(SAP)、 拡張期血圧(DAP)、 平均血圧(MAP)、中心静脈圧(CVP)、平均灌流圧(MPP),and拡張期灌流圧(DPP)の術前からの変化を評価。
→対象となった76人のうち36人(47%)でKDIGO scoreがshift。
結果
AKI+群は、AKI-群に比較してDAP(P=0.027),MPP(P=0.023),andDPP(P=0.002)が有意に変化。
AKI-群
AKI+群術前からの変化率
AKIが進行した患者においては、そうでない患者と比較してDAP,MPP,andDPPが術前と比べ大きく低下していた。
心臓外科術後患者の周術期において、
術前血圧からの大きな血圧低下はAKIのリスクとなっている可能性がある。
術前血圧を考慮した大規模RCT??
周術期の血圧管理
血圧の目標値は、個別に設定するべきか?⬇
IntraoperativeNorepinephrinetoControlArterialPressure;INPRESSstudy
JAMA2017;318(14):1346-1357
Methods
• 多施設共同前向きランダム化比較試験
• 目的:患者の術前血圧に合わせた血圧管理は術後臓器障害を改善させるかを検証
• フランス9施設
• 期間:2012年12月-2016年8月• 対象:高リスク外科手術患者
• 標準治療群 vs 個別治療群
PrimaryOutcome(day7)• SIRS• 一つ以上の臓器障害
SecondaryOutcome• SOFAscore(day1,2,7)• SIRSscore• 術後合併症• ICU滞在期間、入院日数• 術後30日死亡率• 周術期低血圧、高血圧• 動脈圧variability• 術後腸管機能改善、
悪心・嘔吐• 輸血• 輸液量• 術後罹患率• 入院日数• 術後死亡率
通常血圧の記録がない患者は、術前日に安静時(5分の仰臥位後)の血圧を測定。
• 標準治療群:ephedrine6mgbolus投与
SBP<80mmHglowerthan40%from術前血圧(max60mg.それ以上必要になったらNAD)
• 個別治療群:NAD持続投与
SBPwithin±10%of 術前血圧
プロトコール• Propofol 2-3mg/kg• Sufentanil 0.2μg/kg/hr• Cis-atracurium 0.15mg/kg
• 吸入麻酔→target:BIS40-60• Sufentanil 0.1-0.2μg/kg/hr• 呼吸器設定:TV8-10ml/kg,PEEP5-10cmH2O,
SpO2>95%になるFiO2,etCO230-35• 輸血:Hb>10g/dl• 体温37℃• 硬膜外麻酔は術後のみ使用
• ケタミン、ステロイド、ベンゾジアゼピンは使用しない
• ACE-I,ARBも術前継続
導入
維持
輸液方法
• 術中維持:乳酸リンゲル液 4ml/kg/hr
• ボーラス:GDTプロトコールHES製剤(130/0.4/6%)を250ml/10分SVI>fluidchallenge前の+10%で反応ありと判断し+250ml術前bolusは500mlまで
術中はそのSVIを維持。輸液によりstrokevolumeが増えると判断すれば250ml bolus(max30ml/kg/per24hr)
l 50歳以上l 腹部手術l ASAPS2以上l AKIriskindex4つ以上
• >56歳• 男性• 慢性心不全• 高血圧症• 緊急手術• 腹部手術• 腹水• 血清Cr>1.2mg/dlor>105.6μmol/l• 糖尿病 (経口薬orインスリン使用)
ExclusionCriteria
l コントロール不良の重度高血圧l GFR<30ml/min/1.73m2or
末期腎障害による透析l 急性心イベント(急性心不全 or
急性冠症候群)l 腎血管手術l 術前敗血症l 循環不全l 術前よりNAD使用
InclusionCriteria
統計• サンプルサイズ
N=268人primaryoutcomeのイベント発生率を40%と仮定差異を20%とし、両側αを0.05、power=95%とした
• χ2検定:Primaryoutcome• ロジスティック回帰解析:baseline• TheHochbergprocedure• Kaplan-Meier曲線• Coxハザードモデル• 有意水準 P<0.05• Stata softwareversion13.0(Stata CorpLP)• Intention-to-Treat解析
結果
患者割付
298人
標準治療群149人
個別治療群149人
1494人
患者背景 70歳男性 85%BP135/76mmHg
高血圧 82%降圧薬内服 67%Cr0.93mg/dL
GFR88ml/min/1.73m3
両群に有意差なし
術中血圧
標準治療群 SBP123mmHg(SD=25)、個別治療群 116mmHg(24)両群の差は 6.5mmHg(95%CI,3.8-9.2)p<0.001byrandom-effectmodel
個別 vs 標準
晶質液volume合計:2275ml vs 2500ml術中:1500mlvs 2000mlp<0.001術後:750mlvs 600ml
膠質液、輸血量、出血量は有意差なし
術前血圧は有意差なし術終了時血圧 mean(SD)mmHgSBP120 (22)vs 110 (19)p<0.001DBP60 (10)vs 56 (9)p<0.001MBP81 (14)vs 75 (13)p<0.001
rescue個別 vs 標準
CardiacIndex (baseline・術終了時), 硬膜外麻酔、術後病棟 orHCUorICU入室の割合に有意差なし
術中血管作動薬不使用6(4.1%)vs 22(15.2%)p=0.001
術中NAD使用量 mean(SD) μg/kg/min0.06 (SD0.14)vs 0.03 (0.03)p=0.03(人数:140人95.2%vs 18人26.2%)
Outcomes
術後7日のSIRS+臓器障害発生は、個別治療群 38.1%標準治療群 51.7%
(補正相対リスク,0.73;95%CI0.56-0.94;P=0.02)
絶対リスク減少率 -14%
術後7日間
個別 vs 標準
SIRS発生、 透析導入、急性心不全、心筋虚血、脳梗塞、凝固障害、低酸素血症、肺炎、ARDS、再挿管、人工呼吸器使用、SOFAscore(day1,2,7)、敗血症、重症敗血症性ショック発生率に有意差なし
腎障害全体個別治療群 48人(32.7%)vs 標準治療群 71人(49.0%)
絶対リスク減少率 -16%;95%CI,-27%to-5%補正相対リスク 0.70;95%CI,0.53to0.92;P=0.01
意識変容個別治療群 8人(5.4%)vs 標準治療群 23人(15.9%)
絶対リスク減少率 -10%;95%CI,-17%to-3%補正相対リスク 0.34;95%CI,0.16to0.75;P=0.007
術後30日間
術後30日間
個別 vs 標準
透析率、ARDS、再挿管、人工呼吸器使用、急性心不全、心筋虚血、脳梗塞、再手術、重症徐脈、再出血率に有意差なし
肺炎個別治療群 6人(4.1%)vs 標準治療群 16人(11.0%)
絶対リスク減少率 -7%;95%CI,-13%to-1%補正相対リスク 0.38;95%CI,0.15to0.93;P=0.03
敗血症個別治療群 22人(15.0%)vs 標準治療群 38人(26.2%)
絶対リスク減少率 -11%;95%CI,-20%to-2%補正相対リスク 0.54;95%CI,0.34to0.86;P=0.009
SSI個別治療群 23人(15.7%)vs 標準治療群 36人(24.0%)
絶対リスク減少率 -9%;95%CI,-18%to0%補正相対リスク 0.63;95%CI,0.40to0.98;P=0.04
個別治療群は標準治療群と比較して、術後7日のSIRS+臓器障害発生 が少ない。
個別治療群は標準治療群と比較して、・術後7日間の腎障害、意識変容・術後30日間の肺炎、敗血症、SSI が少ない。
結果まとめ
術後臓器障害 Kaplan-Meier曲線
標準治療群
個別治療群
HazardRatio0.66;95%CI,0.52to0.84,P=0.001
63.2%
46.3%30日
考察
• 個別治療群は標準治療群に比べて、術後臓器障害が少ない。
• 同様に、腎障害・意識変容の発生も低い。• 個別治療をする効果はリスクを20%軽減させると予想して
デザインしたが、結果としてわずかにそれを下回った。
• 本研究は、術前データを用いた個別血圧管理についての初めてのトライアルである。
• 周術期の血圧管理について様々な議論がされてきたが、今回、高リスク患者において血圧を個別に管理する意義が示唆された。
• 個別治療群で敗血症が減少したが、組織の酸素化と灌流が関係して感染の影響を受けにくくしているかもしれない。今後の研究が望まれる。
Strength• 輸液プロトコールを設けており、累積輸液量は両群同等。
Limitation• 標準治療群においてphenylephrine等ではなくephedrineの
みを用いた。
• 標準治療群でNadを用いたが、手術室での血圧管理のデータは乏しい。
• また、bolus投与は広く研究されていない。
• 低血圧時間は記録されておらず血圧測定pointはバラバラ。
• 低リスクの患者は含まれていない。
• 使用した術前血圧が、本来の血圧とは異なる可能性。
• Onlinerandomizationを用い、またhealthcareworkerには割付を隠しバイアスを最小限にしているが、完全な盲検化は出来ていない。
まとめ
• 高リスク患者の腹部手術周術期管理において、患者の術前血圧にあわせた管理は術後の臓器障害のリスクを減少させた。
• 高リスク患者の手術が増えている。• 周術期の適切な血圧管理は、術後のアウトカム改善に直結する。
• β・α作動薬を用いた術前血圧に合わせ個別な血圧管理は有用であると示した。
• 患者は個々に術前血圧に基づいて、許容できる低血圧の閾値があり、術前高血圧の患者は許容できる低血圧が高いと推察される。その理由として、本研究では言及されていないが、慢性高血圧の結果として末端器官の灌流圧は代償的に変化していることが考えられる。
• 心臓、脳、腎臓など、虚血による低酸素に弱い臓器でその役割は大きい。
• 術前血圧の測定が大きなキーとなるが、基本的に外来での測定1回のみ。
私見• 本来の血圧を意識した管理が重要。
• 平均血圧でのターゲット設定も見たい。
• 標準治療群においても術前血圧を取り入れたプロトコールがあり、ボーラス投与による血圧変動と持続投与による血圧の安定の差が結果に影響を及ぼした可能性もあるのではないか。
• 感染や意識変容など、血圧管理と直結しないイメージのある項目において、アウトカムに差が出た印象。さらなる研究が望まれる。
本日のお話
• 集中治療室における術後患者の位置づけ
• 血圧管理
• 今後の展望
今後の周術期集中治療に関して
現状何が分からないか?
今後何を調べていくべきか?
IntensiveCareMed(2017)43:1173–1186
IntensiveCareMedicineのeditorial boardから。Delphiによるprioritysettingprocess(PSP)を利用。周術期集中治療の専門家をあらゆる地区から集め調査。
PSP
Phase 1:FirstSurvey集中治療の専門家を呼んで、
Q1. 自分がいつも行う標準治療
Q2.最近の進歩
Q3. 重要な不明点
Q4.最近の研究のpriority
Phase2:収集、洗練、立証
不確かな事実や臨床疑問からキーポイントを抽出し、専門家で議論。
Phase3:優先順位付け
専門家・患者代表で、それらのキーポイントをランキング。
Phase 1 Phase 2
Phase 3
10のsubject1.水分管理
2.ICU入室
3.GDT4.せん妄
5.AKI6.呼吸器合併症
7.輸血
8.呼吸器設定
9.免疫機能
10.抗生剤
1.水分管理
術後患者にとって最も効果的な輸液方法とは??
• 水分管理は周術期管理においてとても重要である。
• 近年では、グリコカリックスの、血管透過や血漿膠質浸透圧において重要な役割が指摘されている。(Curr Opin Crit Care.21(4)358-363)
• どの輸液製剤がいいのか、どのように輸液するべきなのかについては未だにコンセンサスが得られていない。(Perioper Med 2015,4(1):3)
現在進行中のトライアル
• PerioperativeFruidtherapywithbalancedcrystallads(NCT0269167) :周術期患者の輸液を、Plasmalyte群とRingerfundin群に振り分け→酸塩基平衡異常を比較(多施設RCT)
• Plasma-Lyte148versUSSalineStudy;PLUS(NCT02721654) :hypovolemicなICU患者に対して、Plasma-Lyteか生理食塩水で負荷→90日間死亡率を比較(多施設RCT)
• REstrictive VersusLIbEral FluidTherapyinMajorAbdominalSurgery;RELIEFStudy(RELIEF)(NCT01424150):腹部術後患者において、輸液負荷群(<6l/day)と輸液制限群(<2l/day)に振り分け→1年死亡率を比較(多施設RCT)
2.ICU入室
周術期患者においてベストなICUの利用方法とは??
• 合併症が起こりうるリスクの高い術後患者はICUで管理されるべき。(BMJ 2011,343:d5759)
• 低リスクの患者の場合は、かえって入院日数が延長しコストもかさんでしまう。(Anesthesiology2015,124:761-762)
• ハイリスク患者の術前評価をしっかり行い、トリアージすることが大切。術前のbiomarkerは有用である。(NTpro-BNP等)(JAmColl Cardiol 2011,58:522-529)
5. 術後予定外ICU入室
l 待機的な人工股関節置換術後の予定外ICU入室の予測因子として、下記の項目があげられる。①年齢 >75歳②再手術③ CCr < 60mL/min④心筋梗塞既往⑤ BMI > 35kg/m2
満たす項目が増えることに予定外ICU入室のリスクは増加する。1つ:40%、2つ:75%、3つ:93.5%、4つ:98.5%、5つ:99%
l 術後48時間以内のRRS発動を調査したところ、①術前のオピオイド使用②中枢神経疾患③術中の血行動態不安定上記と術後の全身状態悪化とに相関がみられた。
Ungraded術後の全身状態が不安定になる可能性が高い患者や急変のリスクが高い患者は、モニタリングができるよう、一般病棟ではなくよりレベルの高いIMUやICUへの入室が望ましい。
J Arthroplasty 2012; 27:1027–32.e1
Mayo Clin Proc 2012; 87:41–49
2017.1.14 慈恵ICU勉強会(長尾先生)より
3.GDT
GDTは患者のアウトカムを改善させるのか?
• スワンガンツカテーテル等のCardiacモニタに基づいて作られたアルゴリズムを使用し輸液管理をするGoal-directedtherapyは、ハイリスク患者における周術期死亡率及びコストを低下させる。(Perioper Med 2015, 4:13)
• 一方で反対の結果もあり、また長期的なデータはない。
• 現在大規模トライアル進行中Optimisation ofperioperativecardiovascularmanagementtoimprovesurgicaloutcomeII(ISRCTN39653756):開腹消化管術後患者に対して、通常の管理をした群とGDT群を比較→感染率を比較。目標人数は2502人。(多施設RCT)
当院GDTプロトコール
4.せん妄
どうすれば術後せん妄を防げるのか?
• せん妄は術後患者でよく見受けられ、入院日数・認知機能低下・他の大きな合併症や死亡率にも関係する重要な合併症である。(AnnSurg 2009, 249:173-178)
• 予防する手段として、誘因となる薬剤(benzodiazepines等)を避ける、オピオイドを避けて局所的な鎮痛手段を取る方法が挙げられる。(JAmcoll Surg 2015,220:136-149)
• 術後早期のα2-agonist(DEX等)使用がせん妄を減らすかもしれない。(Lancet2016,6736(16):1-10)
• 麻酔深度と認知機能低下や死亡率との関連性の大規模研究が望まれる。
5.AKI
どうすれば術後AKIを防げるのか?
• 敗血症と外科手術は、AKIの大きな要因であり、死亡率に関与する。(intensiveCareMed2016, 42:521-530)
• 術前の腎障害のベースラインは術後死亡率において重要なファクター。(BrJSurg 2016,103:1316-1325)
• 低血圧・循環血漿量過多及び不足を防ぎ、腎毒性のある薬物を避けることで、術後AKIの発生を抑え、軽症化する。(Curr Opin Crit Care2014,20:451-459)
• リスク患者の想定や、バイオマーカーの測定は有用である。(BrJAnaesth 2012,109:843-850)
現在進行中トライアル
• PreventionofPostoperativeAcuteKidneyInjury(PrevenAKI)(NCT02583945)
KDIGObundle(血行動態の安定化、腎毒性薬物を避ける、血糖正常化、尿中・血中クレアチニン測定)を用いて術後5日目のAKI発生率を調査。500人規模。
6. 呼吸器合併症
どうすれば術後呼吸器合併症を防げるのか?
• 呼吸器合併症は術後1週間における死亡理由として大きなファクター。(Ann Surg 2000, 232(2):242-253)
• ハイリスク患者に虚脱を防ぐCPAPを用いることは有用である (IntensiveCaremed2011,37(6):918-929)
• 術後ルーチンで高濃度酸素は投与すべきではない(IntensiveCareMed2016,42(12):1888-1898)
• 感染や人工呼吸器時間延長をリスクをあげる高濃度酸素投与は医原性の呼吸器合併症へと繋がる。(JAMA2009,302:1543-1550)
• 同様に、肺手術での過剰輸液も挙げられる。(Eur JCardiothorac Surg 2012,41:e161-e165)
どうすれば術後呼吸器合併症を防げるのか?
• 呼吸器合併症は術後1週間における死亡理由として大きなファクター。(Ann Surg 2000, 232(2):242-253)
• ハイリスク患者に虚脱を防ぐCPAPを用いることは有用である (IntensiveCaremed2011,37(6):918-929)
• 術後ルーチンで高濃度酸素は投与すべきではない(IntensiveCareMed2016,42(12):1888-1898)
• 感染や人工呼吸器時間延長をリスクをあげる高濃度酸素投与は医原性の呼吸器合併症へと繋がる。(JAMA2009,302:1543-1550)
• 同様に、肺手術での過剰輸液も挙げられる。(Eur JCardiothorac Surg 2012,41:e161-e165)
JAMA2009,302:1543-1550
術中術後の高濃度酸素投与はSSI予防効果を持つのか?
デンマークの14施設RCT対象:開腹手術がおこなわれた患者1400人。除外:化学療法施行中の患者、術前低酸素血症
80%投与群(n=694)vs 30%投与群(n=706) にランダム割付。術中から術後2時間にかけて割付られた酸素濃度で管理し、低酸素血症となった場合はSpO294%以上となるように酸素濃度の増量。
Primary Outcome:14日以内のSSI 19.1% vs.20.1%(p=0.64)と有意差なし。
無気肺発生:7.9% vs.7.1%(p=0.6)、肺炎:6.0% vs.6.3%(p=0.82)、呼吸不全:5.5% vs.4.4%(p=0.34)、30日死亡:4.4% vs.2.9%(p=0.13)
と、いずれも有意差なし。
Anesth Analg.2012Oct;115(4):849-54
死亡率は23.2% vs.18.3%(HR1.30;p=0.03)と、有意に80%群で死亡率が高かった。
前述のThePROXI RandomizedTrialの長期予後調査。
中央値2.3年の追跡。
悪性腫瘍手術ではHR1.45(1.10-1.90)、非悪性腫瘍手術ではHR1.06(0.69-1.65)喫煙歴、糖尿病と長期死亡率の相関についてはパワーが足りていなかった。
WHOSSIguideline2016
全身麻酔で挿管管理される外科患者においては、術中と術後2-6hrはFiO2 80%管理されるべきである。
WHOSurgicalSiteInfectionPreventionGuidelines
Summaryofsystematicreviewonperioperativeoxygenation
• 低体温、低酸素、低灌流を避けるとSSIのリスクを下げる。
• 2000年頃よりいくつかの研究で、周術期の高濃度酸素がSSI予防に有効であると報告されていた。
• Medline(PubMed)、Excerpta Medica Database(EMBASE)、 CumulativeIndextoNursingandAlliedHealthLiterature(CINAHL)、CochraneCentralRegisterofControlledTrials(CENTRAL)、WHOregionalmedicaldatabasesより検索
• 期間:1990年1月〜2014年1月
→ 15のRCT (患者数7237人)を解析
2人の検査員で不適切なものをexcludeしていく。
IncreasedFiO2 (FiO2 80%)vs
Standardoxygenation(FiO2 30-35%)
Favours高濃度酸素
Favours標準酸素
挿管管理された全麻患者と、マスク ornasalを用いた局麻患者を分けたサブ解析
Favours高濃度酸素
Favours標準酸素
• 高濃度群は全研究においてFiO280%、標準群は14研究でFiO230%・1研究で35%。
• 高濃度群では、標準群と比較してSSI少ない傾向があった。(OR:0.84; 95%CI 0.66-1.06, P=0.14)
• 肺障害を含めた合併症は、両群に有意差はなかった。しかし、もともとCOPD等の肺疾患を有する患者は除外されている。
• 長期生存率はいくつかの研究で検証されているが、powerが小さかったりと未だエビデンスが確立されていない。
• また、サブ解析で挿管管理された全身麻酔患者では高濃度群でSSIが有意に減少 (OR:0.72;95%CI0.55-0.94,P=0.05)したが、マスクやnasalを用いて酸素投与した局麻患者では有意差は認められなかった。(OR:1.23;95%CI0.90-1.96)
• ガイドラインではこの結果を受けて、挿管管理される全身麻酔患者に限って高濃度酸素を推奨している。
私見
• WHOのガイドラインは時期尚早な印象?
• 酸素投与の期間などは検証されておらず、長期的な予後も確立されていないため、今後さらなる研究が望まれる。
• FiO280%で全身麻酔管理をすることは少なくとも今までの慣習とは大きく異なり、抵抗感はある。
現在進行中トライアル
• CPAPが術後の合併症を抑えるか
PRISM:preventionofrespiratoryinsufficiencyaftersurgicalmanagement(ISRCTN56012545)ICU入室した腹部手術患者を、通常のケア群・4時間以上CPAPする群に振り分け→術後30日間の肺炎、再挿管、死亡率。4800人規模。(他施設RCT)
7.輸血
外科患者への最適な輸血マネージメントとは?
• ICUの患者を含めて、最小限の輸血をすべきである。(BMJ 2015,350:h1354)
• 一方で、心疾患のある患者へ輸血を絞るのは危険との意見も。(BMJ2016,352:i1351)
• Pointofcare凝固テストは、輸血管理として多く用いられつつあるが、そのアウトカムは未だ不明。(Crit care2014,18:518)
• あるMeta-analysisでは外傷患者においてそのpointofcareの有用性を示唆。(Cohrance DatabaseSyst Rev2015,(2):CD010438)
当院の治療法事情
【輸血】
・RBC:A(+)40単位、O(+)40単位、B(+)20単位、AB(+)10単位
・FFP-LR480:A32単位、O32単位、B24単位、AB24単位
・PC
【凝固因子製剤】
・ファイバ®:第II因子製剤
・ノボセブン®:第VII因子製剤
・クロスエイト®・アドベイト®・コンファクトF:第VIII因子製剤
・ベネフィクス®・PPSB-HT「ニチヤク」®:第IX因子製剤
・フィブロガミン®:第XIII因子製剤
・ノイアート®・アンスロビン:AT-III製剤
・クリオプリシピテート:第VIII因子を主としたFFP濃縮製剤。
2015.12.15 慈恵ICU勉強会(鈴木先生)より改変
当院の治療法事情
【輸血】
・RBC:A(+)40単位、O(+)40単位、B(+)20単位、AB(+)10単位
・FFP-LR480:A32単位、O32単位、B24単位、AB24単位
・PC
【凝固因子製剤】
・ファイバ®:第II因子製剤
・ノボセブン®:第VII因子製剤
・クロスエイト®・アドベイト®・コンファクトF:第VIII因子製剤
・ベネフィクス®・PPSB-HT「ニチヤク」®:第IX因子製剤
・フィブロガミン®:第XIII因子製剤
・ノイアート®・アンスロビン:AT-III製剤
・クリオプリシピテート:第VIII因子を主としたFFP濃縮製剤。
2015.12.15 慈恵ICU勉強会(鈴木先生)より改変
• FFPを4°Cて◌゙24-30時間かけ緩やかに解凍した沈殿物。
• FFPでは、急速なフィフ◌゙リノケ◌゙ンの補充には大量投与か◌゙必要となり容量負荷や肺障害なと◌゙の合併症の懸念か◌゙ある。
• クリオはおよそ10倍に濃縮。• 我か◌゙国て◌゙は、大量出血による後天性低フィフ◌゙リノ
ケ◌゙ン血症に対するフィフ◌゙リノケ◌゙ン濃縮製剤の薬事承認は得られていないため、新鮮凍結血漿使用に対する上記懸念なと◌゙から、現在、クリオフ◌゚レシヒ◌゚テート製剤を院内調製し使用している施設か◌゙増加している。
• 慈恵では2016年から精製可能に。
クリオプレピシレート
日本輸血・細胞治療学会 指針・ガイドライン平成26年度血液製剤使用実態調査テ◌゙ータ集より
希釈性凝固障害の本態か◌゙高度な低フィフ◌゙リノケ◌゙ン血症て◌゙ある以上、その治療は、濃縮されたフィフ◌゙リノケ◌゙ンの補充に尽きる。
• FFP480ml→クリオフ◌゚レシヒ◌゚テート 40~50mL(フィフ◌゙リノケ◌゙ンとして0.6~0.8g、第VIII因子、vonWillebrand因子、第XIII因子、フィフ◌゙ロネクチン、ヒ◌゙トロネクチン等の接着性凝固タンハ◌゚ク)
• たた◌゙し、クリオフ◌゚レシヒ◌゚テートのフィフ◌゙リノケ◌゙ン含有量は献血ト◌゙ナーの血中フィフ◌゙リノケ◌゙ン値に左右されるのて◌゙、ハ◌゙ック◌゙こ◌゙とにかなりのハ◌゙ラツキか◌゙見られる。
• Despitealmost50yearsofuse,evidenceofefficacyisverylimited.
• いくつかの小規模研究(共に対象患者20人程度)では輸血量を減らしているが(RR0.47,95%CI0.32–0.72)、死亡率減少にはパワーが少なかった。CochraneDatabaseSyst Rev.2013Aug29;(8):
• 重大な出血、大量輸血、DIC、低フィブリノゲン血症の患者が侵襲的処置をする前に使用されるべきである。
• 臨床的に出血の認められるfibrinogenlevel<1.5g/dl(高くはないエビデンスを持って推奨) 。成人では、10bagsでfibrinogen1g/dL上昇。Anaesthesia,2010,65,1153–1161
Anaesthesia2015,70(Suppl.1),10–19
大量・緊急出血症例に対するクリオプレピシレートの有効性や必要投与量に関しては、
未た◌゙質の高いエヒ◌゙テ◌゙ンスとして確立されておらす◌゙、今後も検討か◌゙続くものと思われる。
現在進行中トライアル
• PreoperativeIntravenousIrontoTreatAnaemiainMajorSurgery(PREVENTT) (NCT01692418)
• 腹部手術を受けるHb 9.0-12.0(男性13.0)の貧血患者を、鉄剤注射群と生食群に振り分け→30日後までの合併症、死亡率、輸血レートを比較。500人規模 (RCT)
• HiFITStudy:HipFracture:IronandTranexamicAcid(HiFIT) (NCT02972294)
• 大腿骨骨折ORIFを受けるHb9.5-13の患者780人に対して、鉄剤(IIM)とトラネキサム酸(TXA)のを組み合わせで4群に振り分け→術後入院中の輸血を比較。780人規模(RCT)
8.呼吸器設定
ハイリスク手術における最適な人工呼吸とは?
• 呼吸器設定は術後アウトカムに関与する。最近の知見では、TidalVolume・PEEP・drivingpressureの3つが肺合併症に影響するとされている。(Anaesthesiology 2015,123(1):66-78)
• 術中においてはHighPEEPは利益がない?(Lancet2014,384:495-503)
• 肺保護的な観点からは、Tidalvolumeを減らす・PEEPを増やさない。(Anaesthesiology 2015,123(1):66-78)
*Controlのみ
Drivingpressure(ΔP)とは
ΔP=Pplat-PEEP⇒ ΔP=VT/CRS
PEEP
Ppeak
Pplat
ΔP
オーバーシュート
(sec)
(cmH2O)
2015.4.14ICU勉強会 井上さん
現在進行中トライアル
drivingpressureと適切なPEEPが肺障害を防ぐ?
• DrivingPressureandPostoperativePulmonaryComplications(NCT02851238)
分離肺換気を必要とする手術患者を、
標準群(TV:標準体重6mL/kg+PEEP6cmH2O)と
制限群(drivingpressureをミニマムに +PEEP2-10cmH2O)
→術後3日間の肺障害を比較。306人規模 (RCT)
9.免疫機能
術後の感染を見分けることが出来るか?
• 術後は炎症と免疫機能の活性化が起こる。全身麻酔により、その反応は抑制され感染を引き起こす可能性がある。(Curr Opin Anaesthesiol 2015, 29(3):376-383)
• IL-6,10,HLA-DR等は炎症に鋭敏に反応するが、どのバイオマーカーが感染を最も示唆するかは明らかではない。IFNγ、GM-CSFも同様である。(AnnSurg 2016,264:370-377、PLoSOne2015,10:e0144003)
• 持続的な免疫抑制や異化は、重症外傷や敗血症には関与しているが、侵襲の少ない外科手術については未だ定まっていない。(JTraumaAcuteCareSurg 2012,72:1491-1501)
術後の感染を見分けることが出来るか?
• 術後は炎症と免疫機能の活性化が起こる。全身麻酔により、その反応は抑制され感染を引き起こす可能性がある。(Curr Opin Anaesthesiol 2015, 29(3):376-383)
• IL-6,10,HLA-DR等は炎症に鋭敏に反応するが、どのバイオマーカーが感染を最も示唆するかは明らかではない。IFNγ、GM-CSFも同様である。(AnnSurg 2016,264:370-377、 PLoSOne2015, 10:e0144003)
• 持続的な免疫抑制や異化は、重症外傷や敗血症には関与しているが、侵襲の少ない外科手術については未だ定まっていない。(JTraumaAcuteCareSurg 2012, 72:1491-1501)
?
PICS;persistentinflammation,immunosuppression,andcatabolismsyndrome
CARS;compensatory anti-inflammatory response
・抗炎症サイトカイン(e.g.IL-10,IL-6)・サイトカインアンタゴニスト(e.g.IL-1ra,sTNFRI)
JExp Med.2011;208(13):2581–90.
Chest.1997;112(1):235–43.
炎症性サイトカイン産生の高まるSIRSに拮抗する病態として,白血球系細胞の自己免疫抑制状態
SIRSとCARSがともに生じている
MARS(mixedantagonisticresponsesyndrome;混合性拮抗反応症候群)
SIRS-CARSの反応後。
これらの患者は、低栄養・貧弱な創傷治癒・再発性の感染症を示す。
マクロファージ麻痺、増加したMDSC、およびEffector T細胞の数および機能の低下
↓持続性免疫機能低下
低悪性度炎症
これらの患者は最終的に長期の急性期治療(LTAC)施設
を退院し、機能的な生活に戻ることはめったになく、通常は長期にわたる衰弱および死に苦しむ。
SIRS-CARSの反応後。
これらの患者は、低栄養・貧弱な創傷治癒・再発性の感染症を示す。
マクロファージ麻痺、増加したMDSC、およびEffector T細胞の数および機能の低下
↓持続性免疫機能低下
低悪性度炎症
これらの患者は最終的に長期の急性期治療(LTAC)施設
を退院し、機能的な生活に戻ることはめったになく、通常は長期にわたる衰弱および死に苦しむ。
重症外傷や敗血症には関与しているが、
侵襲の少ない外科手術については未だ定まっていない。
10.抗生剤
周術期患者への抗生剤使用方法は?
• 感染は予防こそが最も効果的であり、周術期の抗生剤投与は広く行われている。しかしそのエビデンスはかなり古いものであり、空調などを含めた現代の環境条件や低侵襲手術にそぐうかは不明である。
• 虫垂切除や胆摘などの単純な手術では抗生剤は不要との報告もある。(Cohrance DatabaseSyst Rev 2005,(3):CD001439)
• 重篤な敗血症の場合、そのhyperdynamicな循環、血管透過性亢進、低アルブミン、必要な大量の輸液等によりその薬物動態は変化する。医療者は、至適な血中濃度になっているか注意を払うべきである。(IntensiveCareMed2016,42:1797-1800)
• 最適な投与方法の検討が望まれる。
現在進行中1.水分管理:晶質液 vs 膠質液の電解質・90日間死亡率、
輸液量による1年死亡率の比較
2.ICU入室
3.GDT: GDTによる感染率への影響
4.せん妄
5.AKI: KDIGO bundleを用いた術後5日AKI発生率
6.呼吸器合併症: CPAPを用いた術後90日の死亡率
7.輸血: 貧血患者における鉄剤注射の術後30日死亡率・輸血量、
鉄剤・トラネキサム酸投与による輸血量への影響
8.呼吸器設定: 分離肺換気時にdriving pressureを低くした場合の
術後3日間の肺障害
9.免疫機能
10.抗生剤
まとめ
• ヨーロッパの国別周術期死亡率に大きく差があって驚いた。今回は調査していないが、日本がどの程度の位置に当たるか興味深い。
• 現在、甚大な数の手術が行われており、日々の疑問を解決することは大きなbenefitを得る。
• 次の10年でこれらの研究が進むことを願い、
そしてこれらの疑問が新たなる研究テーマの選択に繋がると考える。