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技術者のための構造力学 20160419 1 はり曲げ問題の一般化 はり曲げ問題の一般化 はり曲げ問題の一般化 はり曲げ問題の一般化 '1 '1 '1 '16.04.19 19 19 19 加藤久人 加藤久人 加藤久人 加藤久人 三好崇夫 三好崇夫 三好崇夫 三好崇夫

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技術者のための構造力学 20160419

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はり曲げ問題の一般化はり曲げ問題の一般化はり曲げ問題の一般化はり曲げ問題の一般化

'1'1'1'16666....00004444....19191919

加藤久人加藤久人加藤久人加藤久人

三好崇夫三好崇夫三好崇夫三好崇夫

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技術者のための構造力学 20160419

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目次目次目次目次

XXXX.棒材の力学.棒材の力学.棒材の力学.棒材の力学

0000 棒材力学の概要棒材力学の概要棒材力学の概要棒材力学の概要

0.10.10.10.1 棒材力学理論の歴史的経過

0.20.20.20.2 曲げ,ねじり問題の一般化

1111 棒材の力学棒材の力学棒材の力学棒材の力学

1.11.11.11.1 棒材棒材棒材棒材

1.21.21.21.2 変形の支配方程式変形の支配方程式変形の支配方程式変形の支配方程式

1.31.31.31.3 変形と変位変形と変位変形と変位変形と変位

1.41.41.41.4 曲率とひずみ曲率とひずみ曲率とひずみ曲率とひずみ

1.51.51.51.5 断面力と変形の関係断面力と変形の関係断面力と変形の関係断面力と変形の関係

1.61.61.61.6 つり合い式つり合い式つり合い式つり合い式

1.71.71.71.7 境界条件境界条件境界条件境界条件

1.81.81.81.8 支配方程式の変位表示支配方程式の変位表示支配方程式の変位表示支配方程式の変位表示

1.91.91.91.9 伸縮問題、曲げ問題伸縮問題、曲げ問題伸縮問題、曲げ問題伸縮問題、曲げ問題

2222 薄肉開断面のはりに生じるせん断応力薄肉開断面のはりに生じるせん断応力薄肉開断面のはりに生じるせん断応力薄肉開断面のはりに生じるせん断応力

2.12.12.12.1 微小板要素に微小板要素に微小板要素に微小板要素に生じるせん断応力生じるせん断応力生じるせん断応力生じるせん断応力

2.22.22.22.2 溝形断面のはりに生じるせん断応力溝形断面のはりに生じるせん断応力溝形断面のはりに生じるせん断応力溝形断面のはりに生じるせん断応力分布分布分布分布

2.32.32.32.3 HHHH 形断面のはりに生じるせん断応力形断面のはりに生じるせん断応力形断面のはりに生じるせん断応力形断面のはりに生じるせん断応力分布分布分布分布

3333 はりのはりのはりのはりの 2222 方向曲げ方向曲げ方向曲げ方向曲げ((((準備中準備中準備中準備中))))

3.13.13.13.1 はりのはりのはりのはりの 2222 方向曲げの概要方向曲げの概要方向曲げの概要方向曲げの概要

3.23.23.23.2 断面断面断面断面 2222 次モーメントと相乗モーメント次モーメントと相乗モーメント次モーメントと相乗モーメント次モーメントと相乗モーメント

3.33.33.33.3 変位と断面力の関係変位と断面力の関係変位と断面力の関係変位と断面力の関係

3.43.43.43.4 2222 方向曲げの例方向曲げの例方向曲げの例方向曲げの例

4444 断面の性質断面の性質断面の性質断面の性質((((準備中準備中準備中準備中))))

4.14.14.14.1 図心の座標図心の座標図心の座標図心の座標

4.24.24.24.2 座標の平行移動座標の平行移動座標の平行移動座標の平行移動

4.34.34.34.3 座標の回転移動座標の回転移動座標の回転移動座標の回転移動

4.44.44.44.4 断面回転に伴う断面諸量の変化断面回転に伴う断面諸量の変化断面回転に伴う断面諸量の変化断面回転に伴う断面諸量の変化

4.54.54.54.5 断面の主軸断面の主軸断面の主軸断面の主軸

4.64.64.64.6 主軸回りの断面主軸回りの断面主軸回りの断面主軸回りの断面 2222 次モーメント次モーメント次モーメント次モーメント

5555 曲げに伴うせん断応力の一般表示曲げに伴うせん断応力の一般表示曲げに伴うせん断応力の一般表示曲げに伴うせん断応力の一般表示((((準備中準備中準備中準備中))))

5555.1.1.1.1 2222 方向曲げに伴うせん断応力方向曲げに伴うせん断応力方向曲げに伴うせん断応力方向曲げに伴うせん断応力

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5.25.25.25.2 閉断面構造の未知せん断流閉断面構造の未知せん断流閉断面構造の未知せん断流閉断面構造の未知せん断流

5.35.35.35.3 円筒断面のせん断流円筒断面のせん断流円筒断面のせん断流円筒断面のせん断流

6666 せん断中心の一般表示せん断中心の一般表示せん断中心の一般表示せん断中心の一般表示((((準備中準備中準備中準備中))))

6.1 6.1 6.1 6.1 せん断流の生成するモーメントとせん断力によるモーメントとの一致せん断流の生成するモーメントとせん断力によるモーメントとの一致せん断流の生成するモーメントとせん断力によるモーメントとの一致せん断流の生成するモーメントとせん断力によるモーメントとの一致

6.2 6.2 6.2 6.2 せん断中心の一般表示せん断中心の一般表示せん断中心の一般表示せん断中心の一般表示

7.7.7.7. 薄肉開断面部材のせん断中心薄肉開断面部材のせん断中心薄肉開断面部材のせん断中心薄肉開断面部材のせん断中心((((準備中準備中準備中準備中))))

7.1 7.1 7.1 7.1 薄肉開断面部材のせん断応力薄肉開断面部材のせん断応力薄肉開断面部材のせん断応力薄肉開断面部材のせん断応力

7.27.27.27.2 薄肉開断面部材のせん断中心薄肉開断面部材のせん断中心薄肉開断面部材のせん断中心薄肉開断面部材のせん断中心

7.3 7.3 7.3 7.3 薄肉折れ板開断面のせん断中心薄肉折れ板開断面のせん断中心薄肉折れ板開断面のせん断中心薄肉折れ板開断面のせん断中心

8.8.8.8. 薄肉閉断面部材のせん断中心薄肉閉断面部材のせん断中心薄肉閉断面部材のせん断中心薄肉閉断面部材のせん断中心((((準備中準備中準備中準備中))))

8.1 8.1 8.1 8.1 薄肉閉断面部材のせん断応力薄肉閉断面部材のせん断応力薄肉閉断面部材のせん断応力薄肉閉断面部材のせん断応力

8.2 8.2 8.2 8.2 薄肉折れ板閉断面と開断面のせん断応力の比較薄肉折れ板閉断面と開断面のせん断応力の比較薄肉折れ板閉断面と開断面のせん断応力の比較薄肉折れ板閉断面と開断面のせん断応力の比較

8.3 8.3 8.3 8.3 薄肉閉断面部材のせん断中心薄肉閉断面部材のせん断中心薄肉閉断面部材のせん断中心薄肉閉断面部材のせん断中心

8.4 8.4 8.4 8.4 薄肉折れ板閉断面のせん断中心薄肉折れ板閉断面のせん断中心薄肉折れ板閉断面のせん断中心薄肉折れ板閉断面のせん断中心

付録-付録-付録-付録-1111 断面断面断面断面 2222 次モーメント,相乗モーメントの公式次モーメント,相乗モーメントの公式次モーメント,相乗モーメントの公式次モーメント,相乗モーメントの公式((((準備中準備中準備中準備中))))

付録付録付録付録 1.11.11.11.1 薄板断面の断面薄板断面の断面薄板断面の断面薄板断面の断面諸量の公式諸量の公式諸量の公式諸量の公式

付録付録付録付録 1.21.21.21.2 IyIyIyIy の公式の証明の公式の証明の公式の証明の公式の証明

付録付録付録付録 1.31.31.31.3 IzIzIzIz の公式の証明の公式の証明の公式の証明の公式の証明

付録付録付録付録 1.41.41.41.4 IyzIyzIyzIyz の公式の証明の公式の証明の公式の証明の公式の証明

付録付録付録付録 2222 せん断中心を求めるための計算式せん断中心を求めるための計算式せん断中心を求めるための計算式せん断中心を求めるための計算式((((準備中準備中準備中準備中))))

付録付録付録付録 2.1 2.1 2.1 2.1 終点終点終点終点 EEEE のせん断流のせん断流のせん断流のせん断流

付録付録付録付録 2.2 2.2 2.2 2.2 板に作用する面内力板に作用する面内力板に作用する面内力板に作用する面内力

付録付録付録付録 2.3 2.3 2.3 2.3 板に作用する面内力によって板に作用する面内力によって板に作用する面内力によって板に作用する面内力によって xxxx 軸方向に生じるずれ軸方向に生じるずれ軸方向に生じるずれ軸方向に生じるずれ

付録付録付録付録 2.4 2.4 2.4 2.4 板の接線と原点がなす距離板の接線と原点がなす距離板の接線と原点がなす距離板の接線と原点がなす距離

付録付録付録付録 2.5 2.5 2.5 2.5 接線距離接線距離接線距離接線距離 hhhh の定義の定義の定義の定義

付録-付録-付録-付録-3333 断面諸量の計算例断面諸量の計算例断面諸量の計算例断面諸量の計算例((((準備中準備中準備中準備中))))

付録付録付録付録 3.13.13.13.1 LLLL 形断面形断面形断面形断面

付録付録付録付録 3.23.23.23.2 CCCC 形断面形断面形断面形断面

付録付録付録付録 3.33.33.33.3 HHHH 形断面形断面形断面形断面

付録付録付録付録 3.43.43.43.4 薄肉矩形断面薄肉矩形断面薄肉矩形断面薄肉矩形断面

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技術者のための構造力学 20160419

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参考文献参考文献参考文献参考文献

1) 川井忠彦,藤谷義信:梁理論の精密化に関する二,三の試み(その 1),生産研究,25巻,6号,1973.

2) 小松定夫:構造解析学Ⅲ,丸善,1986.

3) Timoshenko S. and Goodier J. N.:Theory of Elasticity,1st. ed.,McGraw-Hill,1934.

4) Vlasov V. Z.:Thin Walled Elastic Beams,OTS 61-11400 National Science Foudation,Washington D.C.,

1961.(奥村敏恵,秋山成興,鈴木康弘,落合重俊,佐伯晃一,堀川浩甫 共訳:薄肉弾性ばりの理

論,技報堂,1967.)

5) 藤谷義信:薄肉はり構造解析(コンピュータによる極限解析法シリーズ),1990.

6) R. K. Livesley:Matrix Method of Structural Analysis,Pergamon Press Ltd,1964.(山田嘉昭,川井忠彦

共訳:マトリックス構造解析入門,培風館,1968.)

7) O. C. Zienkiewicz:The Finite Element Method in Engineering Science,McGraw-Hill,1971.

8) William Weaver, JR. and James M. Gere:Matrix Analysis of Framed Structure,D.Van Nostrand Company,

1980.

9) 戸川隼人,下関正義:パソコンによる境界要素法入門,サイエンス社,1983.

10) 吉田 裕,川原睦人:新体系土木工学 3 有限要素法,技報堂,1983.

11) (社)土木学会:構造工学シリーズ 7 構造工学における計算力学の基礎と応用,丸善,1996.

12) Jacob Fish and Ted Belytschko:A First Course in Finite Elements,John Wiley & Sons Ltd,2007.(山田

貴博,永井学志,松井和己 共訳:有限要素法 ABAQUS Student Edition付,丸善,2008.)

13) 邵長城:基本からわかる有限要素法,森北出版,2008.

14) 長谷川彰夫,西野文雄:新体系土木工学 7 構造物の弾性解析,技報堂,1983.

15) 小西一郎,横尾義貫,成岡昌夫,丹羽義次:構造力学Ⅰ,丸善,1966.

16) 小松定夫:薄肉構造物の理論と計算Ⅰ,山海堂,1969.

17) Theodore V. Galambos:Structural Members and Frames,Prentice-Hall,1968.(福本唀士,西野文雄 共

訳:鋼構造部材と骨組み,丸善,1970.)

18) C. P. Heins:Bending and Torsional Design in Structural Members,Lexington Books,First Edition,1975.

19) 青木徹彦:土木系大学講義シリーズ 5 構造力学,コロナ社,1986.

20) (社)日本鋼構造協会:構造物の立体挙動と設計法,JSSCテクニカルレポート,No21,1992.

21) 中井 博,北田俊行:鋼橋設計の基礎,共立出版,1992.

22) 大倉一郎:鋼構造設計学の基礎,東洋書店,2004.

23) (社)土木学会:構造力学公式集,技報堂出版,1974.

24) (一社)日本橋梁建設協会:デザインデータブック,2011.

25) 大地洋三:構造解析,橋梁編纂会刊,1968.

26) 松本芳紀,滝口克己,和田 章,岩田 衛:一次元部材論,実教出版,1981.

27) 深沢泰晴:薄肉曲線材の静力学的解析に関する基礎的理論,土木学会論文集,第 110号,pp.30-51,

1964.10

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0000 棒材力学の概要棒材力学の概要棒材力学の概要棒材力学の概要

0.1 棒材力学理論の歴史的経過

文献 1),2)に紹介される棒材力学理論の歴史的経過を要約する.数学一家,Bernolli 家はアントワー

プの出身で,Jacob Bernoulli (1654-1705) は曲率と曲げの関係を見出している.弟の John Bernoulli

(1667-1748) は仮想仕事の原理を構成したと伝えられる.その息子の Daniel Bernoulli (1700-1782) ははり

の弾性曲線理論に貢献した.さらに,Leonard Euler (1707-1783)は Daniel Bernoulliの弟子で 1727年セン

トペテルブルグのロシア科学院の会員となり変分学の本を出版している.一方,純ねじりの稿で紹介し

た Barre de Saint-Venant (1797-1886) はフランス人で王立科学アカデミーの冊子,Memoirsにねじり理論

を発表している.ここまでが,棒材力学歴史の第 1世代と考えられ,鋼構造実務者は最小限理解してお

くべきアイテムである.

以降,ロシア帝国から米国に帰化した Stephen P. Timoshenkoが 1906年に曲げねじりの基礎式を誘導し

3),1926年のポーランド,ダンチッヒ工科大学にて H. Wagnertが柱のねじり座屈理論を発表,ソビエト

の Vasilli Zakharovich Vlasovは 1949年に殻の一般理論とその応用を出版し薄肉構造解析理論の世界的権

威となった

4).米加州の Eric Reissner は 1941年にせん断遅れ理論を発表している.このころまでが第 2

世代にあたり,実務エキスパートとしてはこのあたりのレベルが消化できていれば十分と考える.その

後,1950年以降,せん断変形の考慮,断面変形の考慮,曲線はりの解析などの検討が進む一方

5), 27),電

算機による数値解析

25~

26)が脚光を浴び,FEM 解析,非線形性の考慮

6~

13)などがはり理論の展開に取り

入れられている.

0.20.20.20.2 曲げ,ねじり問題の一般化曲げ,ねじり問題の一般化曲げ,ねじり問題の一般化曲げ,ねじり問題の一般化

本稿は文献 14)の内容に従い,当該文献の行間を埋める解説を追加するとともに,式の誘導過程を全

て詳細に追跡した.また,章末には付録 3として実構造に即した計算例を付加した.

解説の流れとしては最初に変数のあらましの大きさを捉えるオーダー関数,O( ) を用いて以下のはり

理論展開の前提条件が説明される.

・第 1の仮定 「はりのせん断変形は無視できる」

「部材軸に直角な平面は,変形が生じた後も軸線に直角な平面を保つ」ベルヌイ・オイラーの仮定,

あるいは,「平面直角保持の仮定」

・第 2の仮定 「断面形状は変形後も変化しない」

・第 3の仮定 「はりに生ずる変位は微小とする」

次に,任意地点の変位を数式であらわし,ひずみとの関係づけが行われる.また,ひずみと応力の関

係を用いて断面力を求め,はりに作用する外力と断面力に関する微分方程式が誘導される.さらに,曲

げによって生じるせん断応力の解析方法が示される.

その後,そこまでに展開した 1 方向曲げの問題を 3 次元に一般化した 2 方向曲げ問題として解説し,

その場合のせん断応力の解析方法が示される.

本章の最後に紹介する薄肉断面の曲げを受けるはりに生じるせん断流を用いて,せん断中心の位置を

見出すことができる.横荷重がせん断中心に作用した時,はり断面は回転変形を伴わず,併進変形のみ

を生じる.曲げによるせん断流の考え方をねじりの問題に拡張して適用し,循環せん断流やそりねじり

せん断流の追跡が可能となる.これらの解析手法

15~

24), 27)は次稿以降に引き続き紹介するが,一般論と

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しての任意断面への適用はともかくとして,H 断面やパイプ,薄肉矩形断面といった実構造に頻出する

特定の断面について,その挙動や解析例は実務者として十分認識しておく必要がある.さらに本一連資

料の最終目標である薄肉矩形断面の断面変形論を理解するにはこれらせん断流の考え方が基本となる.

次頁以降に棒材力学の解説の流れを図- 0.1,また,棒材の力学で扱う薄肉断面の種類と検討の対象

となる挙動について表- 0.1に一覧で示す.

棒材力学の流れとして図- 0.1の説明は以下となるが,下記 3.,5.,6.の詳細は別稿での紹介となる.

1. 最初に平面保持,断面形状不変,微小変位の3つの前提条件が設定される.

2. 次に面内の1方向曲げ問題が検討される.ここでは変位とひずみ関係,ひずみと断面力関係,断面力

と外力関係から,曲げを受ける棒材として,はりの微分方程式が誘導される.そして中立軸の概念が説

明されるとともに,薄肉断面に生じるせん断流が求められる.

3. 順番的には、棒材のねじり問題として別稿,「純ねじり」の内容が検討される.ここでは充実棒と薄

肉閉断面構造のねじり挙動が紹介される.

4. その後に1方向曲げ問題を立体に拡張した 2方向曲げ問題が検討される.はり軸に直交する荷重が作

用するとき,荷重方向のみのたわみを生じる条件から主軸が見いだされる.また,この荷重状態で薄肉

断面に生じるせん断流を追跡し,変形にねじりを伴わない条件からせん断中心が決定される.

5. さらに,棒材にねじりが作用する時、薄肉断面に生じるそりの問題が検討される.この問題は別稿,

「そりねじり」で紹介される.ねじりに伴うそり応力が主軸回りの曲げを生じない条件から,ねじり中

心が見いだされるが,一般に先述せん断中心とこのねじり中心が一致することを証明できる.

6. 最後に断面変形の問題が別稿,「断面変形」で検討される.ここまでの検討は荷重の作用後にも断面

形状不変を前提としてきた.しかし,薄肉閉断面にねじり力が作用する場合は,断面に変形が生じるこ

とを仮定しなければ実構造の挙動を厳密に捉えることはできず,隔壁の機能を説明することもできない.

表- 0.1 は薄肉断面構造の実務設計において,断面形状に応じてどのような挙動に着目する必要が

あるかを示したものである.断面形状については記号 1 の開断面,2 の 1室閉断面,3の多室閉断面が

基本となり,5 ,6 はその組み合わせである.4 は 6 の2主桁と同じであるが2主桁を1つの断面とし

て扱う場合を示している.近年,実務設計ではこのような構造は2主桁として各々桁を独立に2つの骨

組みとして解析するのでその各々は 1室閉断面である.7 は特別な挙動として断面変形を取り上げてい

る.四辺形以上の多角形閉断面では,ねじり荷重の作用によって断面変形を生じるが,一般断面の議論

は難解なため本資料では箱断面に限定して解説する.

表中右側の○,△によって,各断面においてどのような挙動の追跡が重要かを示している.例えば,

1 開断面については伸縮,曲げ,そりねじりが重要であり,純ねじりの挙動追跡は可能であるが実務で

は無視されることが多い.一方,閉断面においては伸縮,純ねじり,曲げが重要であり,そりねじりは

無視されることが多い,さらに多室,組み合わせ構造では上記,開断面,閉断面の違いを勘案して重要

な挙動が決定される.断面変形は閉断面がねじり荷重を受ける時の特別の場合である.なお,本一連資

料で直接解説する挙動についは黒塗り●,▲の記号を付している.

1 室閉断面構造の曲げ,あるいはねじり挙動は 1 つの未定せん流を仮定し,これを決定することによ

って追跡される.n 室からなる多室閉断面構造では n 個の未定せん断流の決定が必要となるが,その決

定方法は 1室の場合の応用であり,室が隣接する間にある中間壁に流れるせん断流を適切に評価するこ

とにより n個の未定せん断流を決定できる.よって表中の多室構造の○,△についても 1室構造の方法

が理解されれば,挙動追跡が可能となる.

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技術者のための構造力学 20160419

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図- 0.1 棒材力学解説の流れ

はり理論展開の前提条件

変位とひずみの関係

ひずみと断面力の関係

断面力と外力の関係 微分方程式の誘導

1方向曲げたわみ曲線 1方向曲げのせん断流

(そりねじりのせん断流) 開断面,閉断面 回転中心

そりねじり剛性,Iω

曲げ剛性, Iz

ねじり中心

そりねじりひずみと断面力の関係

そりねじり断面力と外力の関係

そりねじりねじり角曲線

(そりねじり剛性,Iω

)

境界条件

断面積, A

軸力と伸び縮み

中立軸

純ねじりせん断流 閉断面

ねじり剛性,J

閉断面はせん断流補正

断面変形断面力と外力の関係

BEF

微分方程式の誘導 境界条件

微分方程式の誘導 境界条件

中立面

2方向曲げのせん断流

図心 主軸

せん断中心 開断面,閉断面

曲げ剛性,Iy,Iz,Iyz 2

題 閉断面は純ねじりせん断流

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表- 0.1 棒材の力学で扱う薄肉断面の種類と検討の対象となる挙動

断面の種類

(断面形状は

任意)

断面形状のイメージ 伸

記号 TC Pt B Wt PW D

開断面

1 ● ▲ ● ●

1室閉断面

2 ● ● ● ▲

多室閉断面

3 ○ ● ○ △

特殊

多室閉断面

4 2主桁を 1主桁に

置換した場合

○ ○ ●

開断面+

1室閉断面

5 ○ ○ ○

開断面+

多室閉断面

6 2主桁 ○ ○ ○ △

1室矩形

閉断面

7 ● ●

○は実務上要検討,△は実務上無視,黒塗りは本資料で解説,

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技術者のための構造力学 20160419

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1. 1. 1. 1. 棒材の力学棒材の力学棒材の力学棒材の力学

1.1 1.1 1.1 1.1 棒材棒材棒材棒材

図- 1.1に示すように 1 方向の寸法が他の 2 方向の寸法より著しく大きい部材を棒材と呼ぶ.棒材

はそれに作用する主な外力が軸引張力の場合を引張材,軸圧縮力の場合を柱,外力が棒軸に直角方向の

横力,あるいは棒軸にたわみを生じるモーメントの場合にはりと呼ぶ.ここでは断面力と変位の関係,

変位で表示したつり合い式など変形の概念を含めた棒材の力学について述べる.

1.2 1.2 1.2 1.2 変形の支配方程式変形の支配方程式変形の支配方程式変形の支配方程式

図- 1.2に示すように 1平面内に外力が作用し,同じ平面内でのみ変位するはりの問題を取り扱う.

はり軸を x方向として,y方向に単位長さ当り pyの分布荷重が作用するものとする.

はり材の定義による幾何的特性に着目して,はり内部の応力状態を検討する.はり軸方向の任意位置

を切り出した断面に発生するのは xy 面内の応力成分であり,図- 1.3に示す直応力σx,σyとせん断

応力τxyとなる.はりの長さ L,断面寸法のオーダー(変数の大まかな大きさ)を O(L) ,O(b)として,は

りの切断面に働く応力のオーダーO(σ)を考える.せん断力 Qy,曲げモーメント Mzのオーダーは断面内

の応力を積分して,

( ) ( ) ( )2OOO bdAQ xyxyy ττ == ∫ ・・・・・・( 1.1)

( ) ( ) ( )3OOO bdAbM xxz σσ == ∫ ・・・・・・( 1.2)

一方,図- 1.4 に示す分布外力 pyの作用によって断面に働く y方向の力 Pyと z軸まわりのモーメント

外力 Czのオーダーは以下となる.

( ) ( )LpP yy OO = ・・・・・・( 1.3)

( ) ( )2OO LpC yz = ・・・・・・( 1.4)

従って,内力と外力のつり合い条件 yy PQ = , zz CM = より

( ) ( )yy PQ OO = 式( 1.1),( 1.3)から ( ) ( )Lpb yxy OO 2 =→ τ  → ( ) ( )2OO bLpyxy =τ ・・・・・・( 1.5)

( ) ( ) zz CM OO = 式( 1.2),( 1.4)から ( ) ( )23 OO Lpb yx =→ σ  → ( ) ( )32OO bLpyx =σ ・・・・・・( 1.6)

はりの定義としては断面サイズに比較して部材長が十分大きいことであり,これをオーダーを用いて表

現すると,O( b / L )<<1 である.そこでせん断応力と直応力の比のオーダーを計算すると,下記より

1<<xxy στ となることが分かる.

1OOO3

2

2<<

=

=

L

b

b

Lp

b

Lp yy

x

xy

σ

τ

・・・・・・( 1.7)

また,せん断弾性係数 Gと弾性係数 Eは同じオーダー,すなわち ( ) 1O ≒GE であることを考えると,式

( 1.7)より軸方向の伸縮ひずみに比べせん断ひずみが非常に小さいと推察される.

11OOOO <<

=

=

=

L

b

G

E

EG x

xyxxy

x

xy・

σ

τσ

τ

ε

γ

・・・・・・( 1.8)

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技術者のための構造力学 20160419

10

以上の考察から,はりの変形に関して「はりのせん断変形は無視できる」という仮定の合理性が確認

された.このことを第 1の仮定とする.せん断変形が無視できる,すなわち 0であるとすると,図- 1.5

に示すように部材軸に直角な線素は荷重作用による変形後も直角を保つ.このことからはりにおいては

「部材軸に直角な平面は,変形が生じた後も軸線に直角な平面を保つ」と言い直すことができる.これ

は一般にベルヌイ・オイラー(Bernoulli-Euler)の仮定,あるいは平面直角保持の仮定と呼ばれる.

図- 1.6に示す断面内の y方向直応力σyのオーダーを考えると,断面の幅を bとして,

( ) ( )bpyy OO =σ ・・・・・・( 1.9)

ここでσxとσyの比のオーダーを計算すると,式( 1.6)と( 1.9)より,

1OOO2

2

3

2

<<

=

=

L

b

b

Lp

b

p yy

x

y

σ

σ

・・・・・・( 1.10)

従って, 1<<xy σσ となることが分かる.さらに応力をひずみに置き代えると,

11OOO <<

=

=

x

yxy

x

y

EE σ

σ

σσ

ε

ε

・・・・・・( 1.11)

このことは軸方向の直ひずみに比較して,軸に直角方向の直ひずみは非常に小さいことを示す.このこ

とより y方向の伸縮を無視できるということが仮定され,さらに「断面形状は変形後も変化しない」と

いう第 2の仮定となる.

この他,変形に関して「はりに生ずる変位は微小とする」というのが第 3の仮定である.以上 3つの

仮定は,はり材の微小変位理論を規定する変形に関する仮定である.

1.3 1.3 1.3 1.3 変形と変位変形と変位変形と変位変形と変位

はり内の任意の点(x,y)の x,y方向の変位を uy,vyとする.

( )yxuuy ,≡ ・・・・・・( 1.12)

( )yxvvy ,≡ ・・・・・・( 1.13)

y = 0 での変位を

( ) ( )0,0 xuxuu ≡= ・・・・・・( 1.14)

( ) ( )0,0 xvxvv ≡= ・・・・・・( 1.15)

と表すと,はりの変形に関する 3 つの仮定により,図- 1.7 に示すはりの変形前と変形後の変位関係

は次のように与えられる.

( ) ( ) ( ) yxvyxvyxvy ++=+ ≒λcos0,, → ( ) ( )xvyxv =, ・・・・・・( 1.16)

( ) ( ) ( ) ( )dx

xdvyxuyxuyxu −+= ≒λsin0,, ・・・・・・( 1.17)

この結果,断面内の任意点 yの変位は,軸線上 y = 0 の変位 u(x),v(x)と y座標により表示され,軸線上

の点の変位が求まれば,はり内の全ての点の変位が求まることになる.この変位のもとに生じる 6成分

のひずみは,微小変位でのひずみと変位の関係式より以下となる.

( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )2

2,,

dx

xvdy

dx

xdu

dx

xdvyxu

xx

yxuyxx −=

−∂∂=

∂∂=ε ・・・・・・( 1.18)

( ) ( ) ( )0

,, =

∂∂=

∂∂=

y

xv

y

yxvyxyε ・・・・・・( 1.19) (xの関数の yによる偏微分)

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11

( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )xvxdx

xdvyxu

yx

yxv

y

yxuyxxy ∂

∂+

−∂∂=

∂∂+

∂∂= ,,

( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )00101 =+−−=+

∂∂−−

∂∂=

∂∂+

∂∂−

∂∂=

dx

xdvy

dx

xdv

dx

xdv

dx

xdv

yy

dx

xdvxu

yxv

xdx

xdvy

yxu

y・・

・・・・・・( 1.20)

(ここに,dv(x) / dx は xの関数)

面内問題を考えているので z方向の変位は無く,w(x,y) = 0 であるから,

( ) ( )00

,, =

∂∂=

∂∂=

xx

yxwyxzε ・・・・・・( 1.21)

( ) ( ) ( ) ( ) 0000,,

, =+=∂∂+

∂∂=

∂∂+

∂∂=

yxv

zy

yxw

z

yxvyxyzγ ・・・・・・( 1.22)

( ) ( ) ( ) ( ) ( )00000

,,, =−+=

−∂∂+

∂∂=

∂∂+

∂∂=

dx

xdvyxu

zxz

yxu

x

yxwyxzxγ ・・・・・・( 1.23)

式( 1.19)は「断面形状は変形後も変化しない」の仮定,式( 1.20)は「はりのせん断変形は無視できる」

の仮定をひずみで表示したもので,得られたひずみは変形の仮定に一致している.従って 6成分のうち

有意なひずみは式( 1.18)のみとなる.

ひずみが求まると,応力とひずみの関係を用いることにより,はり内部での有意な応力σxが求まる.

これらの結果,軸線上の変位 u(x),v(x)がわかれば,任意点の変位 u(x,y),v(x,y)および,ひずみεx(x,y),

応力σx(x,y)の全てが求められる.すなわち,はりの問題を解くのに xのみの関数である軸線上の変位の

みを問題とすればよく,2次元の構造を 1次元で取り扱えることを示す.

1.4 1.4 1.4 1.4 曲率とひずみ曲率とひずみ曲率とひずみ曲率とひずみ

式( 1.18)のひずみεxの物理的な意味を明らかにするために別の誘導を試みる.図- 1.8に示す軸方

向の変位 u(x)による微小要素 dxの長さの変化⊿dxは以下で求められる.

( ) ( ) ( ) ( )xduxuxduxudx =−+=⊿ ・・・・・・( 1.24)

これより変位 uによって生じるひずみは以下となる.

( )dx

du

dx

xdu

dx

dxx === ⊿

ε ・・・・・・( 1.25)

はりが y方向にたわんだ状態を考えると,たわんだ形状は y方向の変位そのものと一致するため変位し

た状態の軸線形状は以下となる.

( )xvv = ・・・・・・( 1.26)

図- 1.9 を参照し,同図(a)には水平線と円弧始点側の接線の成す角λならびに鉛直線とλの関係を示

す.同図(b)を参照して変形後の軸線の微小区間 ds に対する曲率半径をρ,始点側の軸線の回転角をλ

とすれば,微小変位の範囲では ds ≒ dx ,λ≒ tanλ= -(dv/dx)を考慮するとρと v の関係は以下と

なる.

円弧と中心角の関係より, λρdds= ・・・・・・( 1.27)

2

21

dx

vd

dx

dv

dx

d

ds

d −=

−= ≒

λ

ρ

・・・・・・( 1.28)

ここに,変位 vは下向きに正であり,軸線の回転角λは左回りを正としている.従って vを用いて表記

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12

した右回り正のたわみ角 dv/dxとλの関係では正負逆符号となる.

軸線から y隔たった軸線上の dsに対応する線素の長さ ds'は同図(c)を参照して以下となる.

( ) λρ dysd +=′ ・・・・・・( 1.29)

これよりひずみと曲率半径の関係,さらには式( .1.28)を用いて変位 vとの関係は以下となる.

( )2

21'

dx

vdyy

d

yd

d

ddy

ds

dsdsx −===−+=−=

ρλρ

λ

λρ

λρλρ

ε ・・・・・・( 1.30)

式( 1.30)は y = 0 で定義される軸線が伸び縮みしないとした場合に変形後に軸線が曲線となること

によって軸線から y 離れた点に生じるひずみを表す.式( 1.25)と( 1.30)によるひずみを合計したもの

が式( 1.18)で求めた有意なひずみである.

xに関する微分を d( )/dx = ( )'で表し,ε,κを以下として定義する.ε,κはそれぞれ軸線の伸びひ

ずみ,曲率を表す.

udx

du ′==ε ・・・・・・( 1.31)

vdx

vd ′′−=−=2

2

κ ・・・・・・( 1.32)

u,vが軸線上での変位を表すので,式( 1.31),( 1.32)はそれぞれ,ひずみと変位の関係に相当する.

1.51.51.51.5 断面力と変形の関係断面力と変形の関係断面力と変形の関係断面力と変形の関係

棒材の力学で変形後の断面不変を前提に単軸状態の直応力と直ひずみの関係を以下とする.

xx Eεσ = ・・・・・・( 1.33)

式( 1.18)および式( 1.31),( 1.32)より,

( ) ( ) ( )κε yEdx

xvdy

dx

xduEx +=

−=2

2

σ ・・・・・・( 1.34)

式( 1.20)より

0== xyxy Gγτ ・・・・・・( 1.35)

(せん断変形を無視した変形に適合するせん断応力は 0.ただし,せん断力は存在する.)

任意断面 xに発生する軸力N,および y = 0 での z軸回りの曲げモーメントMzを次のように定義する.

dAN xAσ∫≡ ・・・・・・( 1.36)

ydAM xA

z σ∫≡ ・・・・・・( 1.37)

断面力の符号は軸力については部材に引張を生じる方向を正,また,モーメントについてはモーメント

が生じるたわみが部材軸直角方向の正方向に生じる場合を正とする.

式( 1.34)を式( 1.36),( 1.37)に代入すると,

( ) κεκε zA

EGEAdAyEN +=+= ∫ ・・・・・・( 1.38)

( ) κεκε zzA

z EIEGydAyEM +=+= ∫ ・・・・・・( 1.39)

ここに,A は断面積,Gzは z軸回りの断面 1次モーメント,Izは z軸回りの断面 2次モーメントである.

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13

dAAA∫≡ ・・・・・・( 1.40)

ydAGA

z ∫≡ ・・・・・・( 1.41)

dAyIA

z2

∫≡ ・・・・・・( 1.42)

軸線の選び方に制約はなく,任意であるから,Gz = 0 となるように yの原点を選ぶことができる.すな

わち図心に軸線を一致させると Gz = 0 となり,式( 1.38),( 1.39)は下記の通り簡単になる.

εEAN = ・・・・・・( 1.43)

κzz EIM = ・・・・・・( 1.44)

上式は断面力とひずみの関係を表し,弾性論の応力とひずみの関係に相当する.図心を軸線に一致させ

ることにより,引張あるいは圧縮力を受ける軸力とはりの問題が分離できる.

1.61.61.61.6 つり合い式つり合い式つり合い式つり合い式

図- 1.10 に示すように,棒材から任意の微小要素 dx を切り出し,微小変位理論に従い,変位は小

さく形状の変化が無視できるものとして変位前の形でつり合いを考える.任意の断面 xに働く断面力を

軸力 N(x),曲げモーメント Mz(x),せん断力 Qy(x)とする.要素の水平方向に分布荷重 px(x),鉛直方向に

分布荷重 py(x)が作用するものとする.荷重の種類としては分布モーメント cz(x)も存在するが通常の構造

で czが直接作用することは稀でありここでは省略して考える.水平方向,鉛直方向,左端回りのモーメ

ントのつり合いから以下の式が誘導される.断面力 N(x) , Qy(x) ,Mz(x)が滑らかな x の関数の場合,

x+dxの断面ではテイラー展開して第 1項を残すことにより以下を得る.

( ) ( ) ( ) ( ) ・・・・

222!21 dxdxNddxdxdNxNdxxN ++=+ → ( ) ( ) ( )xdNxNdxxN +=+ ・・・・・・( 1.45)

( ) ( ) ( ) ( ) ・・・・

222!21 dxdxQddxdxdQxQdxxQ yyyy ++=+ → ( ) ( ) ( )xdQxQdxxQ yyy +=+ ・・・・・・( 1.46)

( ) ( ) ( ) ( ) ・・・・

222!21 dxdxMddxdxdMxMdxxM zzzz ++=+ → ( ) ( ) ( )xdMxMdxxM zzz +=+ ・・・・・( 1.47)

・水平方向のつり合い

0=−++ NdxpdNN x ・・・・・・( 1.48)

0=+ xpdx

dN → 0=+′ xpN ・・・・・・( 1.49)

・鉛直方向のつり合い

0=−++ yyyy QdxpdQQ ・・・・・・( 1.50)

0=+ yy

pdx

dQ → 0=+′

yy pQ ・・・・・・( 1.51)

・左端左回りのモーメントのつり合い

( ) 02

=+−−−+ dxdQQMdx

dxpdMM yyzyzz ・・・・・・( 1.52)

微小項を無視しして,

0=− dxQdM yz

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14

0=− yz Q

dx

dM → 0=−′

yz QM ・・・・・・( 1.53)

式( 1.53)を微分して式( 1.51)を代入すると以下となる.

02

2

=−dx

dQ

dx

Md yz

02

2

=+ yz p

dx

Md・・・・・・( 1.54)

式( 1.53)から明らかなように,dM/dx≠0 であるかぎり Qy≠0 である.また,これらのつり合い式は断

面力が滑らかな関数であるとしてテイラー展開を用いて誘導している.集中荷重の作用点のように断面

力が滑らかとならない所では成立しない.

棒材の 1方向曲げ問題の基本関係式を表- 1.1 にまとめて示す.未知変数は u,v,ε,κ,N,Qy,

Mzの 7個であるが支配式も 7個存在し,解が求められる.

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15

図- 1.1 棒材の定義

L

b

L>>b 図- 1.2 棒材の平面問題

x

y

py

px

図- 1.3 はり断面に発生する応力

x

y

σx

τxy b

図- 1.5 平面保持の仮定

変形後

変形前

L

図- 1.4 分布荷重を受ける単純は

x

y

py

RA RB

(a)単純はり

(b)x点の断面力

x RA Py

Cz

σy

py

py

図- 1.6 σyの発生状況

図- 1.7 はりに生ずる変位

x

y

y

ycosλ≒y

λ

ysinλ≒-y(dv/ dx)

u(x,y) x

u(x,0)

v(x,0) v(x,y)

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16

表- 1.1 棒材の面内問題の基本式

ひずみ(変形)と変位の関係 u′=ε v ′′−=κ

応力(断面力)とひずみ(変形)の関係 εEAN = κzz EIM =

つり合い式 0=+′ xpN 0=+′yy pQ

0=−′yz QM

dx

図- 1.8 はりの軸方向変形

dx+⊿dx

u(x) u(x)+ du(x)

x

図- 1.10 はり微小要素の作用力

dx y

N

Qy

Mz py

px

Qy+dQy

Mz+dMz

N+dN

図- 1.9 はりの曲げ変形

(a) 接線の傾斜角の変化

λ

λ+dλ

x

y

λ λ+dλ dλ ρ

ds=ρdλ

(b) 微小要素長と中心角

λ

λ+dλ

x

y

ds=ρdλ

y

dλ ρ

ds'= (ρ+y)dλ

(c) はりの素線長さ

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17

1.71.71.71.7 境界条件境界条件境界条件境界条件

力学問題の境界条件には,力によって与えられる応力境界条件と,変位によって与えられる変位境界

条件とがある.境界では,1 つの自由度に対してそれらのどちらか一方が必ず与えられる.棒材の部材

軸を x 軸とし,棒材が xy面内にあるとき,応力境界条件は部材端では,図- 1.11に示すように軸力,

せん断力,モーメントが考えられる.Px,Py,Czを材端に作用する境界力,N,Qy,Mzを材端近傍での

材端と反対側面での断面力とするとき,図の状況は下式にまとめられる.x軸の正側の断面を正側断面,

負側を負側断面とするとき下記式中の nxは正側断面で 1,負側断面で-1をとる.

xx PNn = , yyx PQn = , zzx CMn −= ・・・・・( 1.55)1,2,3

ここに, 負側断面正側断面, 11 −== xx nn

境界力 Czは z軸正方向に右手親指を置いた中指方向を正回転とするのに対して,断面力 Mzは Mzが生じ

るたわみが部材軸直角方向の正方向に生じる場合を正にとるため,式( 1.55)3 の右辺に負記号が付く.

なお,xz面内の曲げ問題では以下となる. yyx CMn =

従って,材端での境界条件は変位境界条件を加えて以下の①~③となる,

① xx PNnuu == または ・・・・・( 1.56) (水平方向の変位または作用軸力が既知)

② yyx PQnvv == または ・・・・・( 1.57) (たわみまたは作用せん断力が既知)

③ zzx CMn −== またはλλ ・・・・・( 1.58) (たわみ角または作用モーメントが既知)

ここに, λ,,vu は境界点での変位

たわみ vの 1回微分に-を付してたわみ角λとする.すなわち, v′−=λ

たわみ角は反時計回りを正とする.

図- 1.12 に示すように集中荷重の作用点を 1つの境界と見なすとき,断面力と境界作用力の関係は

下式となる.断面力に付される上付き添え字(+),(-)は荷重点の近傍の前後の断面力を表す.

xPNN =− +−, yyy PQQ =− +−

, zzz CMM −=− +−・・・・・( 1.59)1,2,3

従って,集中荷重作用点での境界条件は変位境界条件を加えて以下の①~③となる,

−− = uu かつ

++ = uu (前後近傍の水平変位が既知) ・・・・・( 1.60)1,2,

または 0=− +− uu かつ xPNN =− +− (水平変位が連続で作用軸力が既知) ・・・・・( 1.61)1,2,

−− = vv かつ

++ vv = (前後近傍のたわみが既知) ・・・・・( 1.62)1,2,

または 0=− +− vv かつ yyy PQQ =− +− (たわみが連続で作用せん断力が既知) ・・・・・( 1.63)1,2,

−− ′=′ vv かつ

++ vv ′=′ (前後近傍のたわみ角が既知) ・・・・・( 1.64)1,2,

または 0=′−′ +− vv かつ zzz CMM −=− +− (たわみ角が連続で作用モーメントが既知) ・・・・・( 1.65)1,2

具体的な境界条件の例を表- 1.2 に示す.変位の境界値としては簡単のため 0 として示すが,0 以

外の実数値であってもよい.これらの境界条件を組み合わせることで,つり合い式として求められた支

配微分方程式の解を決定することができる.

1.81.81.81.8 支配方程式の変位表示支配方程式の変位表示支配方程式の変位表示支配方程式の変位表示

支配微分方程式を実際に解くにあたって,方程式,変数の数を減らすことが一般に行われる.1.6 で

求めた支配方程式から断面力 N,Qy,Mz,ひずみε,κを未知数として残す.y 座標の原点を図心に選

ぶことにより,伸縮と曲げの問題を分離して扱う.

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技術者のための構造力学 20160419

18

(1)伸縮の問題(引張材および圧縮材)

表-1.1より, u′=ε , εEAN = , 0=+′ xpN ・・・・・( 1.66)1,2,3

式( 1.66)3を元に,ε,N を消去する.すると変位表示の支配方程式は EA が軸方向に一定として,次

式のように求まる.

02

2

=+′′=+=+′=+=+=+′ xxxxxx puEApdx

duEApu

dx

dEAp

dx

dEApEA

dx

dpN

εε

0=+′′ xpuEA ・・・・・( 1.67)

この微分方程式の解 u には積分定数が 2 つ含まれるから,積分定数を一意的に決めるためには,u に

ついての条件が 2つ必要である.この 2つの条件は,一般に部材の境界で与えられる.例えば,部材両

端のそれぞれで次のように与えられる.

①正側断面で,u = 0 (固定支持) または N = EAu' = Px (可動支持)・・・・・( 1.68)

②負側断面で,u = 0 (固定支持) または -N = EAu' = Px (可動支持)・・・・・( 1.69)

(2)曲げの問題 (はり)

表-1.1より, v ′′−=κ , κzz EIM = , 0=+′yy pQ , 0=−′

yz QM ・・・・・( 1.70)1,2,3,4

式( 1.70)4を元に,κ,Mz,Qyを消去すると,変位表示の支配方程式は EIzが軸方向に一定として,次

式のように求まる.式( 1.70)4を微分して,式( 1.70)3を代入すると,

( ) 02

2

2

2

=+=−−=−′y

zy

zyz p

dx

Mdp

dx

MdQ

dx

dM

dx

d ・・・・・( 1.71)

式( 1.70)2,3を順次代入すると,

( ) 04

4

2

2

2

2

2

2

2

2

=+−=+−=+′′−=+=+=+ yzyzyzyzyz

yz pvEIp

dx

vdEIpv

dx

dEIp

dx

dEIp

dx

EIdp

dx

MdⅣ

κ

κ

0=+− yz pvEI Ⅳ ・・・・・( 1.72)

v は x 軸上の y 方向の変位,つまりたわみであるが,この微分方程式の解 v には積分定数が 4 つ含ま

れるから,積分定数を一意的に決めるためには,vについての条件が 4つ必要である.例えば,図- 1.12

に示すはり構造は境界 1~5までの間に 4つの領域があるから,4つの微分方程式の解を一意的に決定す

るには,4x4 = 16 の境界条件が必要となる.これに対しての境界条件としては,表- 1.2 を参照し,

各行 1行目の vに無関係の水平方向の境界条件を除いて,図- 1.12の境界 1ではローラー・ヒンジ支

持端で示される 2 個の境界条件が,境界 5では固定端で示される 2 個の境界条件が,境界 3ではローラ

ー・ヒンジ中間支持で示される 4 個が,境界 2,4 では集中荷重作用点で示される 2x4 = 8 個が付与さ

れ,合計 16 個の境界条件があることから 4 つの微分方程式が決定することがわかる.このように,は

り構造の問題は,式( 1.72)を特定の境界条件のもとに解く数学的な境界値問題に帰着する.

伸縮問題の支配方程式( 1.67)の一般解は,同次解と特解の和で表される.同次方程式およびその同

次解 u0(x)は,代入して 2回微分すると 0となることから下記と表せる.

0=′′uEA → ( ) 210 cxcxu += → ( ) 002

2

=xudx

d → OK ・・・・・( 1.73)

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19

式( 1.67)の特解を up(x)とすると,一般解 u(x)は以下となる.特解について後述,例で解説する.

( ) ( ) ( ) ( )xucxcxuxuxu pp ++=+= 210 ・・・・・( 1.74)

同様に曲げ問題の支配方程式( 1.72)について同次解は,

0=ⅣEIv → ( ) 432

23

10 dxdxdxdxv +++= → ( ) 004

4

=xvdx

d → OK ・・・・・( 1.75)

式( 1.72)の特解を vp(x)とすると,一般解 v(x)は以下となる.

( ) ( ) ( ) ( )xvdxdxdxdxvxvxv pp ++++=+= 432

23

10 ・・・・・( 1.76)

変位 u(x),v(x)が求まると,伸縮問題の伸びひずみε,軸力 N が,また,曲げ問題の曲率κと曲げモ

ーメント Mz,せん断力 Qyが表 1.1を参照して次のように与えられる.

u′=ε , uEAEAN ′== ε ・・・・・( 1.77)1,2

v ′′−=κ , vEIEIM zzz ′′−== κ ,・・・・・( 1.78)1,2

0' =− yz QM → vEIMQ zzy ′′′−== ' ・・・・・( 1.79)1,2

また,仮定された変形に適合する断面内のひずみεx,および応力σx の分布は式( 1.18),( 1.31) ,

( 1.32)より以下となる.

κε yvyux +=′′−′=ε ・・・・・( 1.80)

κεεσ EyEvEyuEE xx +=′′−′== ・・・・・( 1.81)

さらに,断面力と変位の関係式( 1.77)2,( 1.78)2を用いると直応力は以下となる.

yI

M

A

N

EI

MEy

EA

NEvEyuE

z

z

z

zx +=

−−=′′−′=σ ・・・・・( 1.82)

1.91.91.91.9 伸縮問題、曲げ問題伸縮問題、曲げ問題伸縮問題、曲げ問題伸縮問題、曲げ問題

1.8で解説した支配方程式を用いて,棒の伸縮問題,はりの曲げ問題について例題を示す.

(1)伸縮問題の例

荷重のパターンとして図- 1.13に示す,ⅰ) 先端に集中力 Px,ⅱ) 棒の全長 L に一定の分布荷重 px,

ⅲ) 棒の始点で 0,長さ方向に線形増加する分布荷重 apxxの 3種類を考える.ⅲ)の終点での分布荷重値

は apxL となる.棒軸方向に x軸,伸び変位を u,弾性係数 Eと断面積 Aは軸方向に一定とする.

i) 先端に集中荷重が作用する時,

特解は, ( ) ( )xEAPxu xp = ・・・・・( 1.83)

微分して確認すると, ( ) ( ) ( ) 02

2

2

2

=== EAPdx

dxEAP

dx

dxu

dx

dxxp → 式( 1.67)に適合する.・・・・・( 1.84)

よって,一般解は, ( ) ( ) ( ) ( )xEAPcxcxuxuxu xp ++=+= 210 ・・・・・( 1.85)

始点で変位 0より, ( ) ( ) 0000 21 =++== ・・ EAPccu x ,よって, 02 =c ・・・・・( 1.86)

x点のひずみは, ( ) ( ) ( ) ( )EAPcEAPcxudx

dx xxx +=+== 11ε ・・・・・( 1.87)

終点での作用力は Pxであるから,その地点のひずみは ( )EAPx より,

( ) ( ) ( )EAPEAPcL xxx =+= 1ε ,よって, 01 =c ・・・・・( 1.88)

これらより,一般解は,

( ) ( ) ( ) ( )xEAPxEAPxxEAPcxcxu xxx =++=++= 0021 ・ ・・・・・( 1.89)

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20

ⅱ) 棒の全長 L に一定の分布荷重 pxが作用する時,

特解は, ( ) ( ) 22 xEApxu xp −= ・・・・・( 1.90)

微分して確認すると,

( ) ( ) ( ) ( )EApxEApdx

dxEAp

dx

dxu

dx

dxxxp −=−=−= 2

2

2

2

2

2 → 式( 1.67)に適合する.・・・・・( 1.91)

よって,一般解は, ( ) ( ) ( ) ( ) 2210 2 xEApcxcxuxuxu xp −++=+= ・・・・・( 1.92)

始点で変位 0より, ( ) ( ) 00200 221 =−++= ・・ EApccu x ,よって, 02 =c ・・・・・( 1.93)

x点のひずみは, ( ) ( ) ( ) ( )xEApcxEApcxudx

dx xxx 2222 11 −+=−+==ε ・・・・・( 1.94)

終点での作用力は 0であるから,その地点のひずみは 0より,

( ) ( ) 0221 =−+= LEApcL xxε ,よって, ( )LEApc x=1 ・・・・・( 1.95)

これらより,一般解は,

( ) ( ) ( ) ( )

−=+=−++=22

2221 2

222

L

x

L

x

EA

LpxEApLxEApxEApcxcxu x

xxx ・・・・・( 1.96)

ⅲ) 棒の始点で 0,長さ方向に線形増加する増加分布荷重 apxxが作用する時,

特解は, ( ) ( ) 36 xEAaxu pxp −= ・・・・・( 1.97)

微分して確認すると,

( ) ( ) ( ) ( )xEAaxEAadx

dxEAa

dx

dxu

dx

dpxpxpxp −=−=−= 23

2

2

2

2

26 → 式( 1.67)に適合する.・・・・・( 1.98)

よって,一般解は, ( ) ( ) ( ) ( ) 3210 6 xEAacxcxuxuxu pxp −++=+= ・・・・・( 1.99)

始点で変位 0より, ( ) ( ) 00600 321 =−++= ・・ EAaccu px ,よって, 02 =c ・・・・・( 1.100)

x点のひずみは, ( ) ( ) ( ) ( ) 21

21 236 xEAacxEAacxu

dx

dx pxpxx −+=−+==ε ・・・・・( 1.101)

終点での作用力は 0であるから,その地点のひずみは 0より,

( ) ( ) 02 21 =−+= LEAacL pxxε ,よって, ( ) 2

1 2 LEAac px= ・・・・・( 1.102)

これらより,一般解は,

( ) ( ) ( ) ( )

−=−+=−++=33

32321 3

6626

L

x

L

x

EA

LaxEAaxLEAaxEAacxcxu px

pxpxpx ・・・・・( 1.103)

(2)曲げ問題の例

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21

図- 1.14に示す単純はりに等分布荷重 pyが作用するとき

特解は, ( ) ( ) 424 xEIpxv zyp = ・・・・・( 1.104)

微分して確認すると,

( ) ( ) ( )zyzyp EIpxEIpdx

dxv

dx

d == 44

4

4

4

24 → 式( 1.72)に適合する.・・・・・( 1.105)

よって,一般解は, ( ) ( ) ( ) ( ) 443

22

310 24 xEIpcxcxcxcxvxvxv zyp ++++=+= ・・・・・( 1.106)

始点で変位 0より, ( ) ( ) 00240000 443

22

31 =++++= ・・・・ zy EIpccccv ,よって, 04 =c ・・・・・( 1.107)

式( 1.70)1,2から,

2

2

dx

vdEIEIM zzz −=−= κ

従って,

( ) ( ) ( ) 2212

2

226 xEIpcxcxvdx

d

EI

xMzy

z

z ++==− ・・・・・( 1.108)

始点でモーメント 0より,

( ) ( ) 0022060 2

21 =++=− ・・ zyz

z EIpccEI

M,よって, 02 =c ・・・・・( 1.109)

終点での変位 0より, ( ) ( ) 024 43

31 =++= LEIpLcLcLv

zy ・・・・・( 1.110)

終点でモーメント 0より,

( ) ( ) 026 21 =+=− LEIpLc

EI

LMzy

z

z,よって, ( )LEIpc zy 121 −= ・・・・・( 1.111)

式( 1.110)に代入して, ( ) ( ) 02412 43

3 =++− LEIpLcLLEIp zyzy ・・・・・( 1.112)

( ) 43 24 LEIpLc zy= ,よって, ( ) 3

3 24 LEIpc zy= ・・・・・( 1.113)

これらより,一般解は,

( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 4323443

22

31 2402401224 xEIpxLEIpxLxEIpxEIpcxcxcxcxv zyzyzyzy ++++−=++++=

( ) ( ) ( ) ( )

+

=++−=L

x

L

x

L

x

EI

LpxEIpxLEIpLxEIpxv

z

y

zyzyzy

344433 2

24242412 ・・・・・( 1.114)

このたわみ曲線を微分して,たわみ角,モーメント,せん断力の分布曲線が得られる.

たわみ角 λの正方向は,反時計回りを正として,

( )

+

−=−= 16424

233

L

x

L

x

EI

Lpxv

dx

d

z

yλ ・・・・・( 1.115)

モーメント Mz,式( 1.78) 1,2より, ( )

−=

−=−=L

x

L

xLp

L

x

L

xLpxv

dx

dEIM yy

zz

2222

2

2

21212

24

・・・・・( 1.116)

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22

せん断力 Qy,式( 1.79) 1,2より, ( )

−=−= 1223

3

L

xLpxv

dx

dEIQ y

zy ・・・・・( 1.117)

以上を図に示すと図- 1.15にのようになる.

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23

i) 先端に Px ⅱ) 等分布 px ⅲ) 線形増分 apxx

Px x

L

px

L

apxx

L

図- 1.13 伸縮問題の例

x

図- 1.14 等分布荷重が 作用する単純はり

EIz: const

L

py

(a)たわみ:v

図- 1.15 等分布荷重が作用する 単純はりの変位と断面力

(b)たわみ角:λ

(c)モーメント :Mz

(d)せん断力 :Qy

+ -

+ -

x

図- 1.11 部材端での境界力

A y

Cz Px

Py B 境界力

Cz Px Py

B 負側近傍断面力

Mz

Qy N

A 正側近傍断面力

N Qy

Mz

x

図- 1.12 集中荷重点での境界力

y

Cz

Px Py

集中荷重⇒境界力

Qy-

断面力 Mz

- N -

Qy+

N +

Mz+

図- 1.12 はり構造の例

境界 1 2 3 4 5 条件数 2 4 4 4 2

領域 1 2 3 4

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24

表- 1.2 具体的な境界条件

固定端

u = 0

v = 0

v' = 0

u = 0

v = 0

v' = 0

ローラー・

ヒンジ支持端

-N = Px

v = 0

-Mz = -Cz

N = Px

v = 0

Mz = -Cz

ヒンジ支持端

u = 0

v = 0

-Mz = -Cz

u = 0

v = 0

Mz = -Cz

自由端

-N = Px

-Qy = Py

-Mz = -Cz

N = Px

Qy = Py

Mz = -Cz

集中荷重作用点

u-

-u + = 0 and⇒

v--v + = 0 and⇒

v'--v' + = 0 and⇒

N-

-N + = Px

Qy-

-Qy + = Py

Mz-

-Mz + = -Cz

ローラー・

ヒンジ

中間支持

u-

-u + = 0 and⇒

v-= 0 and⇒

v'--v' + = 0 and⇒

N-

-N + = Px

v + = 0

Mz-

-Mz + = -Cz

ヒンジ

中間支持

u-= 0 and⇒

v-= 0 and⇒

v'--v' + = 0 and⇒

u + = 0

v + = 0

Mz-

-Mz + = -Cz

Px Cz

Cz

Px

Py

Cz

Px Cz

Cz

Py

Px Cz

Px Py

Cz

Px Cz

Cz

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25

2. 2. 2. 2. 薄肉開断面のはりに生じるせん断応力薄肉開断面のはりに生じるせん断応力薄肉開断面のはりに生じるせん断応力薄肉開断面のはりに生じるせん断応力

2.1 2.1 2.1 2.1 微小板要素に生じるせん断応力微小板要素に生じるせん断応力微小板要素に生じるせん断応力微小板要素に生じるせん断応力

薄肉断面部材のうち,溝形、H、I 形のように薄肉中心線が閉曲線とならない断面を開断面、箱形やパ

イプのように閉曲線となる断面を閉断面と呼ぶ.薄肉板断面に曲げに伴う直応力が生じると,それとつ

りあうせん断応力が断面の板幅の方向に生じる.図- 2.1 に示すように開断面部材の軸方向を x 軸と

し,板厚中心線に沿って s軸とし,s軸と x 軸の両者に対して直角で板厚中心線上を起点とする n 軸を

設定する.これら座標軸(x,n,s)が右手系直交座標系となるように選ぶ.図- 2.2に示すように薄肉開断

面部材から微小要素 tdsdxを取り出し、x方向のつりあいを考える.

( ) ( )0=−

∂∂

++−

∂∂

+ tdxdxdss

tttdsdsdx

x

tt sx

sxsxx

xx τ

τ

τσ

σ

σ ・・・・・・( 2.1)

( ) ( )0=

∂∂

+

∂∂

dxdss

tdsdx

x

t sxx τσ

dxdsで除して,

( ) ( )0=

∂∂

+∂

∂s

t

x

t sxx τσ

・・・・・・( 2.2)

部材断面は x軸方向に変化しないとして,t = t(s) とおいて式( 2.2)を so~sについて積分する.

( ) ( )0=

∂∂

+∂

∂∫∫ ds

s

tds

x

t sxs

so

xs

so

τσ

・・・・・・( 2.3)

( ) [ ] 0=+∂

∂∫

ssosx

xs

sotds

x

σ

( ) [ ] [ ] 0=−+∂

∂==∫ sossxsssx

xs

sottds

x

tττ

σ

[ ] [ ] ( )ds

x

ttt x

s

sosossxsssx ∂∂

−= ∫==σ

ττ ・・・・・・( 2.4)

直応力の分布と作用曲げモーメント Mzの関係が以下の場合,

yI

M

z

zx =σ ・・・・・・( 2.5)

図- 2.3に微小板要素に作用するせん断応力の正の方向を示す.式( 2.4)を t(s)で除し,さらに別資料,

「共役せん断応力」に示す関係を左辺に用い,また,右辺第 2項に式( 2.5)を代入する.

[ ] [ ] [ ][ ] [ ] ydst

I

M

xtt

t

z

zs

sossss

sossxssxssssx

∂∂−== ∫

==

===

ττ ・・・・・・( 2.6)

Iz,t,yは x方向に変化せず偏微分の影響を受けない.モーメント Mzの微分はせん断力 Qyであるから,

[ ] [ ][ ] [ ] dsM

xIyt

tt

tz

z

s

sossss

sossxssxs ∂

∂−= ∫==

==

11τ

τ

[ ] [ ][ ] [ ] dsQ

Iyt

tt

ty

z

s

sossss

sossxssxs

11∫

==

== −=

τ

τ ・・・・・・( 2.7)

Iz,Qyは断面内で一定であるから,

[ ] [ ][ ] [ ] ytds

I

Q

tt

t s

soz

y

ssss

sossxssxs ∫

==

== −= 1τ

τ ・・・・・・( 2.8)

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26

図- 2.4に示すように sに関する積分の開始点 soを薄肉板断面の端部にとりこれを s = 0として表示す

ると,端部すなわち s = 0の x方向にある面の表面には外力が作用していないので表面の境界条件から,

下記となり,式( 2.8)の第 1項は消滅する.

[ ] [ ] 00 =⇒ == ssxsossx ττ ・・・・・・( 2.9)

[ ] [ ] tydsI

Q

t

s

z

y

ssssxs ∫

== −=

0

1τ ・・・・・・( 2.10)

従って,改めて s = sにおけるせん断応力をτxs,板厚を t とすると,

z

zsys

z

yxs tI

GQtyds

I

Q

t−=−= ∫0

1τ ・・・・・・( 2.11)

ここに, ytdsGs

zs ∫=0

・・・・・・( 2.12)

ただし,板厚は s方向に変化するとして,積分内の t は sの関数である.

式( 2.11)は s = 0におけるせん断応力が [ ] 00 ==ssxτ の場合の s = sにおけるせん断応力を求める式である.

[ ] 00 ≠=ssxτ の場合の式は式( 2.8)の [ ] sst = を tsに書き改めた下式となる.

[ ]ytds

I

Q

tt

t s

soz

y

ss

sossxxs ∫−= = 1τ

τ ・・・・・・( 2.13)

両辺に tsを乗じ,右辺第 1項にも共役せん断応力の関係を用いると

[ ] ytdsI

Qtt

s

soz

ysosxssxs ∫−= =ττ ・・・・・・( 2.14)

ここで,板厚中心線方向のせん断応力τxsと板厚 t の積をせん断流 qと定義する.式( 2.14)右辺の s = 0

におけるせん断流 [ ] sosxst =τ を q0とし,左辺の s = sにおけるせん断流τxstsを qsとすると下記となる.

ytdsI

Qqq

s

soz

ys ∫−= 0 ・・・・・・( 2.15)

上記は s = 0におけるせん断流が 00 ≠q の場合の s = sにおけるせん断流を求める式である.

以下では 2枚以上の板が会合する地点で既に定義したせん断流がどのように表記されるかを検討する.

2枚以上の板要素が集まる点あるいは板の折れ点においては,それぞれの板要素に対して座標 s1,s2,s3

を導入し,折れ点を含む長さ dxの微小要素に対して x方向の力のつり合いを考える.図- 2.5の(a)に

示すように s座標を選ぶと,折れ点を含む図(a)に示す斜線部分の面の正,負は図(b)のようになる.板厚

の中心が折れ点で会合し,板厚が理想的にその地点で変化するものとする.板幅方向の長さ ds1,ds2,

ds3は微小でこれらの範囲の中で直応力σxは一定とする.

0333322221111

221133

=−

∂∂

++−

∂∂

++−

∂∂

++

−−

tdstdsdxx

tdstdsdxx

tdstdsdxx

dxtdxtdxt

xx

xxx

xxx

x

xsxsxs

σ

σ

σσ

σ

σσ

σ

σ

τττ

・・・・・・( 2.16)

0332211221133 =+++−− tdsdtdsdtdsddxtdxtdxt xxxxsxsxs σσστττ

( ) ( ) 0332211221133 =+++−− tdstdstdsddxttt xxsxsxs στττ ・・・・・・( 2.17)

長さ ds1,ds2,ds3を無限小にすると,dσxに関する第 2項は微小項どおしの掛け算であるから 0となり,

第 1項から以下を得る.

221133 ttt xsxsxs τττ += ・・・・・・( 2.18)

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27

共役せん断応力の関係を用いると,

221133 ttt sxsxsx τττ += ・・・・・・( 2.19)

この式は折れ点でのせん断応力について境界条件となる.会合点近傍のせん断流を q1,q2,q3とすれば,

式( 2.19)はせん断流として表示すると下記となり,せん断流の連続条件と考えることができる.

123 qqq += ・・・・・・( 2.20)

2.2 2.2 2.2 2.2 溝形断面のはりに生じるせん断応力分布溝形断面のはりに生じるせん断応力分布溝形断面のはりに生じるせん断応力分布溝形断面のはりに生じるせん断応力分布

図- 2.6に示すような溝形断面のはりを考え,任意の断面でのせん断力 Qy = dMz/ dxがわかっている

ものとする.断面内の y 軸 z 軸の原点を計算の便宜上ウェブの中心に選ぶ.図- 2.7に示すように xy

面内の曲げに対する断面 2次モーメントは,tf,tw << b,dを考慮して

1222 3

22 w

fA

zt

dd

btdAyI +

= ∫ ≒ ・・・・・・( 2.21)

各板要素に対するせん断応力を式( 2.15)に従って求める.

①上フランジ (0≦s1≦b,s1 = -z+b,y = -d/2)

端部での応力境界条件から,[τx s1]s1=0 = 0・・・・・・( 2.22)

上フランジ上の任意点 s1におけるせん断流は,

[ ] 1

1

00111 0 dsytI

Q

I

GQ

I

GQtt f

s

z

y

z

zsy

z

zsy

sfsxfsx ∫−=−=−==

ττ ・・・・・・( 2.23)

変数 s1を zに置き代えると,

0

0

1

1

=→==→=

zbs

bzs

 

 

11 =−dz

dsの関係を用いて,

( ) [ ] ( )bztd

I

Qzt

d

I

Qdzt

d

I

Qt f

z

yzbf

z

yf

z

bz

yfsx −−=−=−−−= ∫ 2221τ ⇒ 直線分布・・・・・・( 2.24)

始点 00 11 =→=→= fsx tbzs  τ  ・・・・・・( 2.25)

終点 btd

I

Qtzbs f

z

yfsx 2

0 11 =→=→=  τ  ・・・・・・( 2.26)

②ウェブ (0≦s2≦d,s2 = y+d/2)

この区間の始点すなわち,上フランジとウェブの交点のせん断応力はせん断流の連続条件より

[ ] [ ] btd

I

Qtt f

z

y

bsfsxswsx 211022 ====

ττ ・・・・・・( 2.27)

ウェブ上の任意点 s2におけるせん断流は,

[ ] 2

2

00222 2dsyt

I

Qbt

d

I

Q

I

GQtt w

s

z

yf

z

y

z

zsy

swsxwsx ∫−=−==

ττ ・・・・・・( 2.28)

変数 s2を yに置き代えると,

Page 28: はり曲げ問題の一般化miyoshi/str_eng/Theme04/はり...プの出身で, Jacob Bernoulli (1654-1705) は曲率と曲げの関係を見出している.弟の John Bernoulli

技術者のための構造力学 20160419

28

2

20

2

2

dyds

dys

=→=−=→=

 

 

12 =dy

dsの関係を用いて,

−−=

−=−=

−−∫ 42

1

2222

22

2

2

22

dyt

I

Qbt

d

I

Qyt

I

Qbt

d

I

Qdyyt

I

Qbt

d

I

Qt w

z

yf

z

yy

d

wz

yf

z

yw

y

dz

yf

z

ywsxτ ⇒放物線分布

・・・・・・( 2.29)

始点 btd

I

Qddt

I

Qbt

d

I

Qtdys f

z

yw

z

yf

z

ywsx 2442

1

220

22

22 =

−−=→−=→=  τ  ・・・・・・( 2.30)

中点

+=

−−=→=→= wf

z

yw

z

yf

z

ywsx t

dt

db

I

Qdt

I

Qbt

d

I

Qty

ds

8240

2

1

20

2

222

22 τ  ・・・・・・( 2.31)

終点 btd

I

Qddt

I

Qbt

d

I

Qtdyds f

z

yw

z

yf

z

ywsx 2442

1

22

22

22 =

−−=→=→=  τ  ・・・・・・( 2.32)

③下フランジ (0≦s3≦b,s3 = y)

この区間の始点すなわち,ウェブと下フランジの交点のせん断応力はせん断流の連続条件より

[ ] [ ] btd

I

Qtt f

z

y

dswsxsfsx 222033 ====

ττ ・・・・・・( 2.33)

下フランジ上の任意点 s3におけるせん断流は,

[ ] 3

3

00333 2dsyt

I

Qbt

d

I

Q

I

GQtt w

s

z

yf

z

y

z

zsy

sfsxfsx ∫−=−==

ττ ・・・・・・( 2.34)

変数 s3を zに置き代えると,

bzbs

zs

=→==→=

 

 

3

3 00

13 =dz

dsの関係を用いて,

[ ] ztd

I

Qbt

d

I

Qzt

d

I

Qbt

d

I

Qdzt

d

I

Qbt

d

I

Qt f

z

yf

z

yzf

z

yf

z

yf

z

z

yf

z

yfsx 222222 0

03 −=−=−= ∫τ ⇒ 直線分布・・・・・( 2.35)

始点 btd

I

Qt

d

I

Qbt

d

I

Qtzs f

z

yf

z

yf

z

yfsx 2

022

00 33 =−=→=→=  τ  ・・・・・・ ( 2.36)

終点 02233 =−=→=→= btd

I

Qbt

d

I

Qtbzbs f

z

yf

z

yfsx τ  ・・・・・・( 2.37)

となり,上フランジと同様,直線状の分布をする.以上の結果を直応力σxの分布を含めて図- 2.8に

示す.また,せん断流の分布を図- 2.9 に示す.フランジとウェブの交点におけるせん断応力は図-

2.8に示すように,フランジとウェブで異なるが,個々の板厚を乗じたせん断流は図- 2.9に示すよう

に同じ値となる.

2.3 H2.3 H2.3 H2.3 H 形断面のはりに生じるせん断応力分布形断面のはりに生じるせん断応力分布形断面のはりに生じるせん断応力分布形断面のはりに生じるせん断応力分布

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技術者のための構造力学 20160419

29

H 形断面の場合も同様にして計算することができる.この場合の座標のとりかたを図- 2.10に,せ

ん断流の分布を図- 2.11に示す.断面内の y 軸 z軸の原点を計算の便宜上ウェブの中心に選ぶ.図-

2.10に示すように xy面内の曲げに対する断面 2次モーメントは,tf,tw << f,wを考慮して

1222 3

22 w

fA

zt

ww

ftdAyI +

= ∫ ≒ ・・・・・・( 2.38)

各板要素に対するせん断応力を式( 2.15)に従って求める.

④上右フランジ (0≦s4≦f/2,s4 = -z+ f/2,y = -w/2)

端部での応力境界条件から,[τx s4]s4=0 = 0

上フランジ上の任意点 s4におけるせん断流は,

[ ] 4

4

00444 0 dsytI

Q

I

GQ

I

GQtt f

s

z

y

z

zsy

z

zsy

sfsxfsx ∫−=−=−==

ττ ・・・・・・( 2.39)

溝形断面の①と同様に,

−−=224f

ztw

I

Qt f

z

yfsxτ ⇒ 直線分布・・・・・・( 2.40)

始点 020 44 =→=→= fsx tfzS  τ   ・・・・・・( 2.41)

終点

220

2 44f

tw

I

Qtz

fS f

z

yfsx =→=→=  τ   ・・・・・・( 2.42)

⑤上左フランジ (0≦s5≦f/2,s5 = z+ f/2,y = -w/2)

④の向きが反転したものであり,

+=225f

ztw

I

Qt f

z

yfsxτ ⇒ 直線分布・・・・・・( 2.43)

始点 020 55 =→−=→= fsx tfzS  τ   ・・・・・・( 2.44)

終点

220

2 55f

tw

I

Qtz

fS f

z

yfsx =→=→=  τ   ・・・・・・( 2.45)

⑥ウェブ (0≦s6≦w,s6 = y+w/2)

②の溝形断面ウェブと考え方は同じであるが,フランジとウェブの交点部では上右フランジからのせん

断流と上左フランジからのせん断流が合計してウェブへ流れる.

[ ] [ ] [ ] ftw

I

Qttt f

z

y

fsfsxfsfsxswsx 2255244066 =+====

τττ ・・・・・・( 2.46)

ウェブ上の任意点 s6におけるせん断流は,

[ ] 6

6

00666 2dsyt

I

Qft

w

I

Q

I

GQtt w

s

z

yf

z

y

z

zsy

swsxwsx ∫−=−==

ττ ・・・・・・( 2.47)

変数 s6を yに置き代えると,

2

20

6

6

wyws

wys

=→=−=→=

 

 

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30

16 =dy

dsの関係を用いて,

−−=

−=−=

−−∫ 42

1

2222

22

2

2

26

wyt

I

Qft

w

I

Qyt

I

Qft

w

I

Qdyyt

I

Qft

w

I

Qt w

z

yf

z

yy

w

wz

yf

z

yw

y

wz

yf

z

ywsxτ

⇒ 放物線分布・・・・・・・・( 2.48)

始点 ftw

I

Qwwt

I

Qft

w

I

Qtwys f

z

yw

z

yf

z

ywsx 2442

1

220

22

66 =

−−=→−=→=  τ  ・・・・・・( 2.49)

中点

+=

−−=→=→= wf

z

yw

z

yf

z

ywsx t

wt

wf

I

Qwt

I

Qft

w

I

Qty

ws

8240

2

1

20

2

222

66 τ 

・・・・・・( 2.50)

終点 ftw

I

Qwwt

I

Qft

w

I

Qtwyws f

z

yw

z

yf

z

ywsx 2442

1

22

22

66 =

−−=→=→=  τ  ・・・・・・( 2.51)

ここでは Mzの変化に伴う y方向のせん断力 Qyのみを考慮したが,溝形、H 形ともに xy面内の曲げ変

形をする場合の結果であるにもかかわらず,フランジにはせん断力の方向と直角の s方向に沿ったせん

断応力が生じる

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31

図- 2.1 薄肉開断面の座標設定

s

x

n

s

n y

z

図- 2.5薄板集合点での力のつり合い

s1

s2

s3

dx

(a) 座標 s1,s1,s1,の方向

(b) 斜線微小要素の詳細

負の面

σx+dσx

σx

τs1x

τs3x

τs2x

t1

t2

t3

ds3

ds2 ds1 負の面

正の面 図- 2.6溝形断面単純はり

x

y

z

s

x

τsx +dτsx

τsx

σx

σx +dσx

τxs

τxs +dτxs

x方向の正面

x方向の負面

s方向の負面

s方向の正面

図- 2.3微小要素に作用するせん断応力の方向 図- 2.4薄肉開断面の端部

s x

τsx +dτsx

τsx =0 σx

σx +dσx

図- 2.2 薄肉開断面の微小要素

s x

τsx +dτsx

τsx σx

σx +dσx

ds

dx

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32

x

図- 2.8 曲げを受ける溝形断面の応力分布

(a)せん断応力分布 τxs (b)直応力分布 σx

正断面

負断面

図- 2.9溝形断面のせん断流分布

btd

I

Qq f

z

y

21 =

tf

tw

b

d qmax

q1

+= wf

z

yt

dt

db

I

Qq

82

2

max

s6

図- 2.10 H 形断面での座標

tf

tw

f

w

s4

s5

z

y

224f

tw

I

Qq f

z

y=

ftw

I

Qq f

z

y

25 =

+= wf

z

y tw

twf

I

Qq

82

2

max

図- 2.11 H 形断面のせん断流分布

tf

tw

f

w qmax

q5

q4

図- 2.7溝形断面での座標

z

y tf

tf tw

s3

s2 s1

d

b