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平成 25 日本赤十字放射線技師学術総会座長集約 研究発表Ⅰ 熊本赤十字病院 西小野 昭人 演題1の「ERCP 施行時における放射線防護シートの有用性について」は、ERCP での 術者の被ばくを低減するというものであった。これは透視撮影装置の管球に、照射野を取 り囲むように放射線防護シートを装着するという比較的簡便な方法で、効率よく被ばく低 減が実現できていた。術者は 8090%の被ばく低減が可能で患者の被ばく増加もなく、有 用性が確認できた。ただし、カーテン状に取り付けてあるシートが透視の範囲に写り込む 場合、シートをよける必要があり改善の余地がある。また、既存の機器は防護シートを装 着することを想定しておらず、PL 法などについても、メーカーとの話し合いが不可欠であ ることが示唆された。 演題 2 の「外来患者向け CTMRI 説明書の見直し」は、患者に分かりやすい検査説明 を考えた内容であった。検査時には不安を抱く患者も多く、検査内容の理解は安心して検 査を受けてもらえることにつながる。文字の羅列だけでは分かりにくい説明書を放射線技 師、看護師が協力して問題点をあげ、イラストや認識しやすいフォントを使用し、配置や 配色も工夫し理解しやすい説明書が作成されていた。また、異なる職種が協力することで、 お互い気づかない部分を補えることもチーム医療としてよい結果が出ていると思われた。 演題 3 の「ワイヤレス FPD 搭載ポータブル装置を導入して」では、近年一般撮影におい FPD の普及が進んでいるが、撮影した像を直ちに確認できる FPD の特性は、ポータブ ル撮影との相性がよいことが再認識された。今回はさらに取り回しのよいワイヤレス FPD の使用経験で、業務の簡略化と医療安全面での有用性が示唆された。ただし、既存の CR 置との互換性やパソコントラブルなどの弊害も併せ持つため、院内での運用ルールを定め ることが大切であろう。 演題 4 の「透析サポートチームでの放射線技師の役割」は、透析患者の年 1 回のフォロ CT 画像を流用し、血管の石灰化の進行について視覚的および定量的に表示するというも のであった。実際の画像とカルシウムスコアなどとの相関性についても検討しており有用 な結果が得られていた。薬物療法や食事療法を行う上で、患者に分かりやすい画像が提供 できており、新しい発想で放射線技師の役割が考えられ、チーム医療としても評価できる 内容であった。 演題 5 の「当院の CT 業務におけるヒヤリハットの意識改善」は、CT 業務において起こ しやすいヒューマンエラーを抜き出し、誰でも簡便に報告しやすいチェック方式にて記載 するように工夫した内容であった。また単にチェック用紙を備え付けるだけでは意識の低 下は防げないが、定期的な報告と協力の呼びかけによってそれぞれの事象を共有しており、 安全管理の意識を確実なものに近づけていることが評価できる。フィードバックの大切さ が示唆される内容であった。 このセッションは、われわれの業務の基本となる内容であったが、いずれも業務改善や 医療安全につながるよい演題であった。

ERCP - 日本赤十字社診療放射線技師会¹³成25 年日本赤十字放射線技師学術総会座長集約 研究発表Ⅰ 熊本赤十字病院 西小野 昭人 演題1の「ERCP

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平成 25 年日本赤十字放射線技師学術総会座長集約

研究発表Ⅰ

熊本赤十字病院

西小野 昭人

演題1の「ERCP 施行時における放射線防護シートの有用性について」は、ERCP での

術者の被ばくを低減するというものであった。これは透視撮影装置の管球に、照射野を取

り囲むように放射線防護シートを装着するという比較的簡便な方法で、効率よく被ばく低

減が実現できていた。術者は 80~90%の被ばく低減が可能で患者の被ばく増加もなく、有

用性が確認できた。ただし、カーテン状に取り付けてあるシートが透視の範囲に写り込む

場合、シートをよける必要があり改善の余地がある。また、既存の機器は防護シートを装

着することを想定しておらず、PL 法などについても、メーカーとの話し合いが不可欠であ

ることが示唆された。

演題 2 の「外来患者向け CT・MRI 説明書の見直し」は、患者に分かりやすい検査説明

を考えた内容であった。検査時には不安を抱く患者も多く、検査内容の理解は安心して検

査を受けてもらえることにつながる。文字の羅列だけでは分かりにくい説明書を放射線技

師、看護師が協力して問題点をあげ、イラストや認識しやすいフォントを使用し、配置や

配色も工夫し理解しやすい説明書が作成されていた。また、異なる職種が協力することで、

お互い気づかない部分を補えることもチーム医療としてよい結果が出ていると思われた。

演題 3 の「ワイヤレス FPD 搭載ポータブル装置を導入して」では、近年一般撮影におい

て FPD の普及が進んでいるが、撮影した像を直ちに確認できる FPD の特性は、ポータブ

ル撮影との相性がよいことが再認識された。今回はさらに取り回しのよいワイヤレス FPD

の使用経験で、業務の簡略化と医療安全面での有用性が示唆された。ただし、既存の CR 装

置との互換性やパソコントラブルなどの弊害も併せ持つため、院内での運用ルールを定め

ることが大切であろう。

演題 4 の「透析サポートチームでの放射線技師の役割」は、透析患者の年 1 回のフォロ

ーCT 画像を流用し、血管の石灰化の進行について視覚的および定量的に表示するというも

のであった。実際の画像とカルシウムスコアなどとの相関性についても検討しており有用

な結果が得られていた。薬物療法や食事療法を行う上で、患者に分かりやすい画像が提供

できており、新しい発想で放射線技師の役割が考えられ、チーム医療としても評価できる

内容であった。

演題 5 の「当院の CT 業務におけるヒヤリハットの意識改善」は、CT 業務において起こ

しやすいヒューマンエラーを抜き出し、誰でも簡便に報告しやすいチェック方式にて記載

するように工夫した内容であった。また単にチェック用紙を備え付けるだけでは意識の低

下は防げないが、定期的な報告と協力の呼びかけによってそれぞれの事象を共有しており、

安全管理の意識を確実なものに近づけていることが評価できる。フィードバックの大切さ

が示唆される内容であった。

このセッションは、われわれの業務の基本となる内容であったが、いずれも業務改善や

医療安全につながるよい演題であった。

1.ERCP施行時の放射線防護カーテンの有用性について

松山赤十字病院 中央放射線室

福岡 知宏 水谷 宏 樋口 恵吾

細川 博明 廣瀬 純一 高橋 なつみ

【目的】

当院では内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)や食道静脈瘤硬化療法(EIS)をほぼ

毎日を施行しており、その件数は年間 500 例近くに達している。また、ERCP及びEISでは

透視時間や撮影回数が多くなる場合もあり、患者の被ばく線量も大きいと思われる。さらに、

医師や看護師は患者の近傍で長時間の手技を行うため従事者被ばくが大きいことが懸念

される。そこで、我々は術者および看護師の被ばく低減を目的として透視装置のX線管絞り

に防護カーテンを装着し、その効果を検証した。また、カーテンの装着によって患者自身の

被ばくに変化が無いことを確認した。

【使用装置】

X線TV装置 DAR-8000I 総ろ過 2.5mmAl (島津)

測定器 電離箱式サーベイメーター 450P-DE-SI(千代田テクノル)

電子式線量計 unfors PSD

ファントム マーゲンファントム BM-1 (京都科学)

アクリル板(40枚)

防護カーテン 0.25mmPb当量 3枚 (保科) 総重量 2.1kg

【方法】

Fig.1 に空間線量測定の術者の位置と測定範囲を示す。従事者被ばくの空間線量測定

用に電離箱式サーベイメーターを使用した。測定に用いたファントムは、実際の検査を想定

してマーゲンファントムの前後に胸部・頭部及び下肢としてアクリル板を設置して人体の構

造を模擬したファントムを使用した。

また、空間線量の測定点は,医師の

立ち位置を想定したベッドサイド 90cm

×120cmの範囲と、看護師の立ち位

置を想定したベッドの頭側 90×90cm

の範囲で行い、測定間隔は 30cmとし

た。なお、測定点の高さはファントム中

心である 92cmとし、透視条件は 70kV、

2.2mA、30f/s、照射野サイズ 9 インチ、

SID110cmとした。これらの環境下で、

透視装置に防護カーテンを正面及び

側面の 3方向に装着した場合と、装着

しない場合の測定を行い比較検討し、

防護カーテンの効果を確認した。

また、防護カーテンの装着によって患者皮膚線量に変化が無いか、電子式線量計PSDを

マーゲンファントムの中央に取り付けて検証した。透視条件は防護カーテン有り無しとも 70

kV、2.2mA。撮影条件は、防護無しで平均 70kV、250mA、47.8ms、防護有りで平均 70kV、

250mA、49.4ms。この条件の下でそれぞれ透視では 2分間測定を 6回、撮影では 1回ばく

射を 6回計測し平均値を算出した。

【結果】

Fig.2 及び Fig.3 に防護カーテン無しと有りでの空間線量率の分布を示す。また、表.1 及び

表.2に防護カーテン無しと有りでの術者の位置の空間線量率を示す。

比較のために、表.3に防護カーテン装着時の散乱線遮蔽率を示す。

防護カーテンの装着による患者皮膚線量の変化では、透視では防護無しで 10.94mGy/m、

防護有りで 10.93mGy/m となった。また撮影では、防護無しで 1.005mGy、防護有りで

1.010mGy となり、防護カーテンの装着によって皮膚線量被ばくの変化は無い。

【まとめ】

防護カーテンを用いる長所としては、術者被ばくを 90%以上低減できること。また、防護

カーテン装着によって患者の被ばくは影響されないことが挙げられる。

短所としては、防護カーテンが 3 つのパーツから構成されているため、隙間から散乱線が

漏れること。また、検査中に体位変換やX線管の移動を行った際に透視範囲に防護カーテ

ンが写りこむ場合には、撮影時に術者によけてもらわなければならない場合もあり、術者に

余分な負担がかかることが挙げられる。

2.外来向け CT・MRI検査説明書の見直し

那須赤十字病院 放射線科部

石崎 充

【目的】当院では、外来・院外紹介患者さんに対して CT、MRI 検査の検査説明書を配布

している。しかし、現在配布している説明書には説明不十分な箇所やわかりにくい箇所が

多く見られたり、患者さんの理解度不足や説明書を読む気がなくなったりという問題点が見

受けられている。

昨年7月に当院は大田原赤十字病院から那須赤十字病院へと新しくなり CT、MRI が新

たな装置になった。この機会に、検査説明書の見直しをし、より理解しやすいものを作成す

る。

【方法】担当技師、看護師などで、問題点をあげ、単に検査説明だけなく、イラストやフォント

などを工夫し、見えやすさ、理解のしやすさを目標に作成し、配布する。

実際に患者さんが検査に来た際に、検査説明書について意見を聞いていく。

【結果】担当者で検討した結果、Fig1~2 のように改訂された。工夫した結果、より見やすさ、

読みやすいさが向上した。しかし、誰にでも見えやすいわけではなく、色によっては見にくか

ったり、フォントも違う方がいいといったりする意見などもあった。

しかし、100人に配布し、目を通したか確認したところ96人の患者、もしくは付き添いの

方が目を通したという結果が得られ、見てもらえる機会が向上した。

Fig1 検討前(左)と検討後の CT検査説明書(中央:表面、右:裏面)

Fig2 検討前(左)と検討後の MRI検査説明書(中央:表面、右:裏面)

【考察・まとめ】今回、見直したことによって、理解しやすい、より読んでもらえるという点で

非常に検査説明書が向上した。

しかし、色について高齢の方だとカラーを使うと目がチカチカする、若い方だと見えやす

いなど違いがあれば、フォントにも好みがあり年齢によって使い分けが必要と感じた。

また、当日の検査の流れをフローチャートで示したことによって当日スムーズに動ける環

境、造影室スタッフの負担軽減が見られた。

また、病棟看護師の CT、MRI検査の理解も乏しいことから今後、病棟向けの説明書も作

成していく。

今後は、より多くの患者さんに好まれるように、説明書を随時更新していきたいと思う。

Fig.1 アンケート内容

Fig2. ワークフロー比較

3.ワイヤレス FPD搭載ポータブル装置を導入して

福井赤十字病院 放射線部

二口 亮

【目的】

当院では、病棟用ポータブル装置の更新にあたり、ワイヤレス FPD 搭載のポータブル

装置を導入した。H25年 1月に稼働となった新ポータブル装置は撮影後、すぐに画像確認

ができ、業務効率が格段と向上した。また、院内ネットワークとの接続は無線 LAN 環境下

で行うこととした。

そこで今回、当院での機種選定および使用による改善点と問題点について報告する。

【使用装置】

SHIMADZU 回診用 X線撮影装置 MobileDaRt Evolution

【対象・方法】

・H24 年 5 月に、機種選定のため全技師にアンケートを配布し、評価が高い機種を選定す

ることとした。

・H24 年 12 月に、稼働試験期間として、ポータブル装置を使用した技師に、感想と問題点

を挙げてもらい改善点を把握した。

【結果・考察】

〈機種選定〉

1.Fig.1に機種選定アンケートの内容を示す。

当院では、「PC 画面の操作性」と「装置の

管理」への評価に差がついた。結果、島津

社製ポータブル装置の導入となった。

〈改善点〉

2.FPD搭載ポータブル装置導入に伴う、ワ

ークフローの変化をFig.2に示す。複数枚の

カセッテ搬送や、カセッテ読み取りの作業が

省略されるため、業務の時間短縮となった。

3.ワークリストをポータブル装置に無線取得し、患者情報(病棟、病室、ベッドナンバー、撮

影部位、依頼文内容)の確認ができる(Fig.3)。無線 LAN の周波数帯は院内ネットワーク

で 5GHz帯を使用し、FPDは 2.4GHz帯を

使用しているため、お互いの干渉をうけない。

装置本体で内容の確認ができるためワーク

リストの紙印刷が不要となり、ペーパレス運

用が可能となった。また、追加オーダーは各

病棟のアクセスポイントを経由して取得する

ことができるため、部署に戻らず、撮影に出

向くことができる。

4.バーコードリーダー導入(Fig.4)に伴い、入

院患者のリストバンドを読み取ることで、患者

認証を確実に行えるようになった。ワークリスト

からは該当患者のオーダーのみが展開され、

撮影可能状態となる。撮影時点で画像と患者

情報が紐付けられるため、以前のようなカセッテ

読み取りの際の患者情報間違いがなくなった。

5.撮影後、約 3 秒で画像表示がされるため、

その場で確認し、再撮影の判断が可能となっ

た。再撮影における患者負担が軽減しただけ

でなく、撮影補助者へ迷惑もかけない。また、画像確認時の技師の心理的負担も軽減された。

画像確認画面を Fig.5に示す。

〈問題点〉

6.FPD搭載ポータブル装置は PCの起動時間が 3分もかかるため、装置・PC ともに Off

の時は、緊急撮影時に出遅れることがある。

7.PC の消費電力が多く、未使用時でも本体のバッテリーを消耗するので、充電忘れがな

いよう注意が必要である。

8.画像送信のみ有線で行っている現行の運用では、ポータブル装置の利点を最大に出し

きれていない。無線環境下で画像送信ができるよう体制づくりをしなければならない。

【まとめ】

1.装置導入により、患者認証が確実となった。

2.装置導入により、病棟回診業務が飛躍的に効率化され、患者、技師ともに負担の軽減

となった。

3.今後、FPD の物理的評価や視覚的評価を行うことで、撮影条件をより最適化し、被ばく

低減につとめる必要がある。

Fig3. ワークリスト表示

Fig5. 画像表示

Fig4. バーコードリーダー

Fig.1

Fig.2

4.透析サポートチームでの放射線技師の役割

庄原赤十字病院 医療技術部 放射線技術科

安井 哲士

【目的】当院の透析サポートチームは、月に 1度症例検討、患者への介入、専門知識の共

有を目的として活動を行っている。その中で、P・Caの薬物療法・食事療法等による管理の

重要性は、周知の事実であるが、患者からの理解を得られない場合も存在することを知り、

理解を深めるツールとして画像情報に着目した。

今回、患者に対し有効な説明を行う為、単純CT画像から透析患者の動脈石灰化を定量評

価し、血液データとの関係性を調べることを目的とした。

【使用装置】CT:Aquilion4【4DAS】(TOSHIBA) 2005-2010.2 LightSpeed VCT XT【64DAS】

(GE Healthcare) 2010.3~ WS: virtual place (AZE) AW (GE Healthcare)

【対象・方法】3 年以上透析を行っている患者 22 名について、単純CT像の第1腰椎から股

関節臼蓋上部までのスライスをWsにて3D化し、血管の石灰化のみを選択し体積を求め、

推移の大きい方 3名と少ない方 3名について(社)日本透析学会のガイドラインに従い、P,

Caのコントロール性について調べた。

人数 22名 (男:13名 女:9名)

平均年齢 63.8±8.6 歳

平均透析期間 8.6±4.6 年

【結果・考察】Fig.1 に経過年数に対する石灰化

の変動を表すグラフを示す。DM が石灰化の因

子であることが再確認できる。

その中より選出した 6名の過去 6年間の血液デ

ータをガイドラインより 9 ブロックに分け、石灰化

推移のグラフを重ねて示す。(Fig.2)

9 ブロックでは血液データが中心でコントロール

されていることが望ましいく、左上では低栄養状

態、右下では、食事や薬剤の管理不足等が覗

える。

結果として P・Ca のコントロール性で石灰化の

推移に差が見られた。病歴、透析歴が近い A と

Cの患者で、3D像を作成すると、その差が視的

にもわかりやすい。(Fig.3)

Fig.3

Fig.4

Fig.5

E の患者は通年の P・Ca のコントロール性は

良いにも関わらず石灰化が進んでいた為、経

過年数ごとに9ブロックで表したところ、コント

ロール不良な期間に石灰化の進行が進んで

いることがわかった。(Fig.4)

これらの結果から P・Caのコントロールと石灰

化進行の関係は明らかで、3D 画像は数値で

の説明よりも視的に強く訴えがあることから、

患者へのアプローチとして使えるツールとなり

える。

また、CT 更新時より冠動脈石灰化スコア

(Agatston Score)を定期健診に取り入れ、専

用装置を用いた既存の石灰化スコアと 非専

用装置で求めた今回の石灰化体積との相関

性を調べた。β ブロッカーを使用せず撮影を

行っていることもありモーションアーチファクト

で冠動脈石灰化スコアが高値を示すことがあ

るが強い相関性が得られた。(Fig.5)

人工透析のガイドラインにて推奨されているの

は腹部 CT のみだが、この方法なら冠動脈石

灰化スコアの撮影を行わずに、同様な石灰化

の推移を求められる。

また、心拍数や呼吸によるアーチファクトを

受けにくく、スペックの低い CT 装置でも安

定した評価が行える。

今後、血管イベントとの関係などが検討課

題である。

【まとめ】P・Caが石灰化進行の重要な因子

であることが、画像を通じて確認できた。得

られた結果に基づき、患者説明用の3D 動

画を作成し患者に 3D画像を提供することで、

インパクトのある説明ができ、薬物療法、食事療法の重要性を理解して頂けた。

チームの医療において、専門分野のみ

ならず、他職種の知識も幅広く知りえて

おく必要があると強く感じた。

短時間で作成できる、ごく普通の3D画像や内視鏡モードだが、

数値と言葉で説明を受けるよりも、画像を用いた説明は、端的

で興味深く聞いていただける

5.当院のCT業務におけるヒヤリハットの意識改善

深谷赤十字病院 ○成田 麻美、齋藤 幸夫、清水 文孝

【目的】

ヒヤリハットを意識することは、インシデント・アクシデントを未然に防ぐた

めに重要である。当院の CT業務におけるヒヤリハットは日時、場所、内容、対

策などを記入して提出する形式になっているため、多忙な日常業務中では書く

ことを後回しにして報告を忘れてしまう場合もある。また、年々報告数も減少

傾向にあり、ヒヤリハットに対する意識が薄らいできたと考えられる。そこで、

ヒヤリハット報告をより簡単な形式に変更して報告しやすくさせることで、報

告件数の増加と、「報告」を習慣付けることを目的とした。

【方法】

日頃 CT業務においてヒューマンエラーを起こしそうな因子(表.1)をあらかじめ

表にして挙げておき、自身が遭遇し、未然に防いだエラーをこの項目毎に振り

分けてその都度印鑑を押す手法で行った。この項目は日本 X線 CT 専門技師認定

機構の講習会テキストから抜粋・参考にしている。

1 撮影ミス(撮影場所、スキャン開始位置を間違えた)

2 名前・ID の入力間違い

3 撮影範囲不足

4 データ転送忘れ

5 造影タイミングの間違い

6 転倒・転落、検査台より落下

7 造影準備(針刺し)に 20分以上かかった

8 患者の状態確認不足(検査中急に起き上がり転倒など)

9 造影剤による副作用・漏れ

10 造影剤副作用歴のある患者への造影検査施行(確認不足で施行した場

合のみ)

11 造影剤外漏出(全量の場合)

12 ライン抜去・点滴ルートのひっかけ

13 検査台における外傷事故(ガントリに腕があたるなど)

14 患者の容態急変

15 スタッフが検査室内にいた

16 患者を不快にさせた(怒らせた)

(表.1)

【結果】

形式の変更は 2012年 4月 18日から開始した。当院では同年 11月に電子カルテ

に移行した際に、それ以前のヒヤリハットについての大半のデータが消失して

しまったので、一部データのみ記載する(Fig.1)。

簡易な報告形式に変更したことで、報告件数が増加し、報告への習慣が付き始

めたと思われる。10 月には再度、報告への協力の呼びかけを行った。

当院ではデータの転送や造影剤の副作用・漏れ、ライン抜去において見落とし

が起こりやすいという結果が得られたので、KYTトレーニングを取り入れて対策

を行う必要性を感じた(Fig.2)。造影剤の副作用・漏れとあるが、事例の多くは、

造影剤の血管外漏出であり、今回の報告形式の変更後にインシデント・アクシ

デントは発生していない。

形式の変更について、「以前に比べ報告が楽になった」、「表を検査の注意事項と

して活用できる」といった意見があった。

Fig.1 月別報告件数 Fig.2 項目別報告件数

【考察】

ヒヤリハット報告の意識は少しずつ低下する傾向があり、その都度、改善と対

策を行う必要がある。また、当院のインシデントレポートの明確な報告基準を、

部門内に周知させる必要がある。そのためには、定期的な勉強会で意識改善す

る事や個人の意識改革が必要であり、今後も継続していきたいと思う。

さらに、得られた結果を新人教育に忚用する事や、他部門(MRI、核医学、放射

線治療など)でも行い、院内の医療安全室とも連携して、更なる安全管理の向上

を目指していきたいと思う。

平成25年日本赤十字放射線技師学術総会座長集約

研究発表Ⅱ

大阪赤十字病院

加賀 久喜

まれにみる早さで梅雨入りした平成 25 年の赤十字放射線技師学術大会。研究発表Ⅱの集

約を行う。

【演題番号 6】CBCT 撮影時の画像評価を行った演題。結果は回転速度 20・5・8 秒の順で

MTF 及び高コントラストファントムの視覚的評価は高く、20・8・5 秒の順で NPS 及び低コ

ントラストファントムの視覚的評価は高くなった。原因は Matrix 数及び焦点サイズの影響

と結論付けられていた。2%及び 5%MTF での各プロトコールによる統計解析や CNR の算

出及び統計を行えばより学術的価値は向上したと考える。

【演題番号 7】脳血流シンチ製剤 123I-IMP を投与直後より Dynamic SPECT 収集を行うこ

とにより RI 減量投与の可能性の検討。結果は従来法と、111MBq、148MBq の Dynamic

SPECT で画像上有意差が無く、臨床において Dynamic SPECT により投与量を減量して撮

像を行うとのことであった。本演題ではシェッフェの一対比較法を用いて検討されていた

が一対比較法は他に数種類存在し、主に画像の視覚評価に用いられることが多く RI 分野の

みならず他のモダリティーにおいても応用が可能であるのでその手法を会員諸氏も習得し

ていただきたい。

【演題番号 8】人工関節全置換術時に大腿骨前捻角と臼蓋前方開角を MPR の 3 方向より真

の Axi 像を求め、さらに比較的厚みを持った画像表示をすることにより正確な計測が行え

るとの結果。この方法は比較的簡便で多くの施設で施行可能である。演者は各技師間の従

来法と新法のバラツキを散布図等で表示していたが、統計解析を用いると学術的価値は向

上したと考える。臨床で従来法と新法の比較を今後検討し報告していただきたい。

【演題番号 9】頭部領域におけるヘリカルスキャンとノンヘリカルスキャンでの低コントラ

スト分解能の評価。結果は CNR でノンヘリカルスキャンとヘリカルスキャンでは、統計学

的に有意差は無く、NPS の比較においても差はなかった。本演題では CNR の比較で測定

母数(回数)が少なく測定値が正規分布しないためノンパラメトリックの統計手法の一つで

ある Mann-Whitney の U 検定が用いられ最適な統計解析がなされていた。測定時のノンヘ

リカルスキャンとヘリカルスキャンの回転速度(view 数)及び収集スライス厚(0.5mm×

80,1mm×40など)を同じにして測定すれば両プロトコールのCNR及びNPSの差はさらに

少なくなると考える。

研究発表Ⅱの集約を行った。今回は測定結果を数値で評価し適切な統計解析が行われて

いる演題が多かった。統計解析の手法は若手会員には是非習得して欲しいと考える。最後

に本セッションで最も残念であったのが、抄録と発表時の考察が異なり過ぎている演題が

あったことである。抄録といえども確実なデータを用いて取り組んでいただきたい。

6.FPD搭載型血管造影装置コーンビームCTの条件変化による画像特性

名古屋第一赤十字病院 放射線診断科部

平井 丈温

【目的】FPD搭載型血管造影装置の導入により , アンギオ検査中のコーンビームCT(以

下CBCT)の撮像が可能となった . しかし従来のCTと比べ低コントラストやアーチファクト

に弱いと言われている . そこで撮像条件によりどのような画像特性があるかを知り適正

な撮像条件を検討した .

【使用機器】FPD搭載型血管造影装置(AXIOM artis dBA:SIEMENS) , 自作ワイヤファ

ン ト ム ( φ 0.25mm ス テ ン レ ス ワ イ ヤ ) , Catphan Phantom ( CTP528,CTP515,

CTP486 :Phantom Laboratory) , ImageJ(NIH) , Excel(Microsoft) , FO-BS(東北放射線

技術学会 )

【方法】今回 , 撮像条件としてCBCT回転時間を変えたものと管電圧を変えたもので比

較をおこなった . CBCT 回転時間を変えた時の撮像条件を table1, table2 に示す . なお ,

この回転時間は当院で実際 , 臨床に使っているプロトコルである .

管電圧は Wire Phantom で 40kV, 60kV, 83kV, Catphan Phantom で 60kV, 90kV, 117kV

で比較を行った . 撮像条件は table3 に示す . Recon はすべて table4 に示す条件でおこ

なった .

CBCTの画像評価をするため , 高コントラスト分解能と低コントラスト分解能の評価をお

こなった . 高コントラスト分解能はワイヤファントムによるMTF測定と高コントラスト分解

能ファントム(CTP528)による視覚的評価をおこなった . 低コントラスト分解能は水等価

ファントム(CTP486)によるWienerスペクトル測定と低コントラスト分解能ファントム(CT

P515)による視覚的評価をおこなった .

t ime dose kV Focus Frame Matrix Pixel depth

5sec 0.36μ Gy/p 70 smal l 139 1240×960 12bit

8sec 0.36μ Gy/p 90 Large 419 616×480 14bit

20sec 1.2μ Gy/p 70 smal l 843 1240×960 12bit

Table1. Catphan phantom での撮像条件

t ime dose kV Focus Frame Matrix Pixel depth

5sec 0.36μ Gy/p 40 smal l 139 1240×960 12bit

8sec 0.36μ Gy/p 60 Large 419 616×480 14bit

20sec 1.2μ Gy/p 83 smal l 843 1240×960 12bit

Table2. Wire phantom での撮像条件

dose t ime focus frame matrix pixel depth

0.36μ Gy/p 8sec large 419 616×480 14bit

Table3. 管電圧比較における撮像条件

VOI size Sl ice matrix Kernel Image characleristicl Thick

75×80mm 512×512 HU(bone) Normal 1mm

Table4. Recon 条件

【結果】CBCT回転時間を変化させた時 , MTFは 20sec と 5sec に比べ 8sec が低い結

果となった(Fig.1). 視覚的評価は 20sec, 5sec, 8sec の順に細かく識別することができた

(Fig.2 ). Wiener スペクトルは 20sec, 8sec, 5sec の順によくなった (Fig.3). 視覚的評価

は 20sec 以外 , 識別をすることができなかった(Fig.4).

管電圧を変化させた時 , MTF に変化はほとんど見られなかった(Fig.5) . 視覚的評価でも

違いはなかった(Fig.6) . Wiener スペクトルは若干ではあるが高電圧ほどよくなる傾向が

みられた (Fig.7). 視覚的評価ではすべての管電圧条件において識別することができな

かった .

Fig.1 回転時間変化による MTF Fig.2 回転時間変化による高コントラスト分解能

Fig.3 回転時間比較による Wiener Spectrum Fig.4 回転時間変化による低コントラスト分解能

Fig.5 管電圧変化による MTF Fig.6 管電圧変化による高コントラスト分解能

Fig.7 管電圧変化による Wiener Spectrum

【考察】画質に大きく影響を及ぼすのは回転時間変化であり 5sec に関しては高コントラ

スト分解能が高いが低コントラスト分解能は低くアーチファクトが多い結果となり , 血管像

を見る頭部 DSA に適していると考えられる .

8sec に関しては高コントラスト分解能が低いが低コントラスト分解能は高い結果となった .

よって 軟部組織を見たい腹部に適していると考えられる . 20sec に関しては高コントラス

ト分解能 , 低コントラスト分解能ともに高い結果となったが , 撮像時間が長いため息止め

も長く造影剤量や被ばくの増加となる . そのため軟部まで見たい単純撮像時や骨生検

などに適していると考えられる .

今回 8sec のプロトコルで回転時間が 5sec より長いにも関わらず高コントラスト分解能が

悪くなったのは焦点サイズが他より大焦点でマトリクスサイズも他より小さいことが原因な

のではないかと考えられる .

【結語】今回の結果を踏まえ臨床で用途に合わせた撮像条件の選択を考えることができ

た . またそれぞれのプロトコルの特性を知ることができた . 今後は Recon による再構成フ

ィルタの画像特性を検討課題としたい .

【参考文献】

1) 市川勝弘: CT における金属ワイヤによる MTF の測定法 日本放射線技術学会

Vol.64(2008), No.6

2) 坂本清 : FPD 搭載型コーンビーム CT における低コントラスト分解能の評価

7.連続回転収集 SPECT を用いた 123I-IMP 脳血流シンチにおける投与量減量の検討

伊勢赤十字病院 ○村田 達紀、小林 篤、太田 旭彦

林 奈緒子、森嶋 毅行、岡田 和正、大山 泰

【目的】

当院は、装置更新に伴い Slipring 方式による Dynamic SPECT 収集が可能な装置と

なった。又、脳血流シンチ製剤 123I-IMP は静注後、脳内の放射能分布が安定する 15

~30 分後に収集する(従来法)のが一般的であるが、今回は投与直後より Dynamic

SPECT 収集(Dynamic 法)を行う事で、投与量の減量が可能か検討を行った。

【方法】

SPECT-CT 装置 Infinia Hawkeye4(GE 社製)を用い、臨床例において123I-IMP167MBq 投与直後より 1.5min/rot で 20rot、20 フレーム(30 分間収集)の連続

収集を行った。その後 11~20 フレームを加算した画像(従来法)と、111MBq と

148MBq 相当にそれぞれ減算処理したプロジェクションデータの 2~20 フレームを加

算した画像(Dynamic 法)(Fig.1)との分布の違いについて、シェッフェの一対比較法

(浦の変法)を用いて視覚評価を行った。評価法は、診療放射線技師 6 名と核医学

専門医1名で Dynamic 法 148MBq、Dynamic 法 111MBq、従来法の 3 種類の画像を

ランダムに組み合わされた 6 組の画像を 5 件法にて総合的に評価を行った。

Fig.1 視覚評価画像

【結果】

視覚評価で得られたスコアを基に求めた平均嗜好度を Table1 に示し、分散分析を

行った結果を Table2 に示す。さらに、平均嗜好度の差をわかりやすくするために作

成した尺度図を Fig.2 に示した。これらの結果より、従来法がもっとも見やすく平均嗜

好度の推定値 0.071、次いで Dynamic 法 148MBq の 0.048、 Dynamic 法 111MBq

の-0.119 と続いた。ただし、統計学的有意差については、危険率 5%で主効果に有

意差が認められず、3 種の画像に差があるとは言えなかった。しかしながら主効果×

個人に有意差が認められたことから、7 名の読影者間の画像評価方法には差がある

ということが言えた。

Table 1 全観察者の集計表と平均嗜好度

Table 2 分散分析表

Fig.2 平均嗜好度の尺度値

【考察】

投与早期の脳血流分布の変化は僅かで、これは短時間ローテーションの SPECT

収集を行う事で、全体の分布に影響を及ぼさないと考えられた。また、投与直後より

Dynamic SPECT 収集を行う事で、画像再構成に必要なカウントを得る事ができ、投

与量の減量が可能となった。

読影者合計

i (上) j(下) A 1 A 2 A 3 x i ・・ x ・j・ x i ・・-x ・j ・平均嗜好度の推定値(α i)

A 1 1 2 3 0 3 0.071

A 2 0 2 2 0 2 0.048

A 3 0 -1 -1 4 -5 -0.119

x. j . 0 0 4 4 =x ・・・

分散分析表

要因 平方和 自由度 不偏分散 F 0値

主効果 0.90 2 0.45 1.73主効果×個人 10.10 12 0.84 3.21*組合せ効果 0.10 1 0.10 0.36位置効果 0.38 1 0.38 1.45位置×個人 1.29 6 0.21 0.82

誤差 5.24 20 0.26

総平方和 18.00 42

* : 危険率 5%以下で有意差あり

8.X線 CTを用いた大腿骨前捻角測定法の標準化について

伊勢赤十字病院 医療技術部 放射線技術課

山中 敬之

【目的】当院では、変形性股関節症における人工関節全置換術( Total Hip

Aorthroplasty)の術前、術後に X 線 CT を用いて大腿骨の前捻角と臼蓋前方開角を

測定している。

そこで今回は、前捻角について過去の計測結果を調査すると、同一患者の術前、

術後の角度で手術も行っていない健側にバラツキがみられる症例があった。原因とし

て検査時のポジショニングや処理の個人差が考えられるため、計測方法の標準化を

行った。

【使用機器】GE社製 Discovery CT750HD、

GE社製 Advantage Workstation、左大腿骨ファントム

【方法】左大腿骨ファントムのポジショニング角度を撮影台に

平行、内側に 10°、外側に 10°、大腿骨遠位を上側に 10°

と 4方向に変えてX線 CT装置でスキャンしました。

得られた画像からまず、X線 CT担当技師 8名(A~H)で Fig.1 Coronal像

これまでの方法により前捻角を測定しました。

次に、標準化するための方法により測定しました。

測定方法は、Reformatの Coronal像(Fig.1)で大腿骨の内側

顆と外側顆の下端を合わせるように Obliqueを振って内側外

側のずれをなくし、Sagittal像(Fig.2)で大腿骨体に並行になる

ように Obliqueを振って上下のずれをなくした大腿骨の Axial

像を作成します。大腿骨頚部軸を image saveする時は Fig.3 Fig.2 Sagittal像

に示すように厚みを持たせ、大腿骨頚部がみやすいスライス

で保存します。大腿骨顆部横軸を image saveする時は大腿骨

の内側顆と外側顆が最も大きくみえるスライスで保存します。

保存した大腿骨頚部軸と大腿骨顆部横軸の画像を Fig.4に

示すように重ね合わせて、前捻角の角度を測定します。

Fig.3 大腿骨頚部がみやすい

ように厚みを持たせている画像

Fig.4 大腿骨頚部軸と大腿骨顆部横軸の画像を重ね合わせて前捻角の角度を測定している画像

+ =

【結果】これまでの方法により測定した前捻角の角度と標準化した計測方法により測

定した前捻角の角度をそれぞれ縦軸に角度、横軸に測定者とした散布図で Fig.5、6

に示します。

Fig.5より Aの人に比べると Cや Eの人は全体的に値が低いという測定者による個

人差が見られ、また A~H 全ての人が大腿骨遠位を上側に 10°傾けてポジショニン

グした時は小さく角度を計測してしまっている傾向が見られました。全体では 1~12°

のバラツキがありました。

Fig.6 より A~H 全ての人で測定者による個人差は若干あるものの大きなバラツキ

はみられず、またポジショニングによる大きなバラツキもみられませんでした。全体で

は 8~12°のバラツキがありました。

Fig.5 これまでの方法により測定した Fig.6 標準化した計測方法により測定した

前捻角の角度を表すグラフ 前捻角の角度を表すグラフ

【考察】これまでの方法により測定した前捻角の角度に比べて標準化した測定方法に

より測定した前捻角の方はバラツキが軽減したため有用であると考えます。

できる限り大腿骨が撮影台に平行になるようにポジショニングを行うことで処理時

間を短縮することができると考えます。

【結語】標準化した測定方法はバラツキを軽減することができたため有用。

処理時間短縮のためにできる限り大腿骨が撮影台に平行になるようにポジショニ

ングを行うことが必要。

Fig.1 MHT型ファントムの形状

Table.1 比較した検出器構成 8

80 列 CT 装置における頭部単純 CT 検査での

低コントラスト分解能の基礎的検討

神戸赤十字病院 放射線科部

齋藤 優子 大野 太一 小川 宗久 山崎 幸恵

【目的】

当院では、MELTJAPANを参考に脳梗塞

患者の頭部単純 CT に対して、皮髄コントラ

ストの優れているノンヘリカルスキャンを行

っている。しかし麻痺や、体動のある患者

に対して正確なポジショニングは難しく、左

右対称な画像を提供できない場合がある。

そこで今回、低コントラスト分解能において、

ノンヘリカルスキャンとヘリカルスキャンの

比較を行い、ヘリカルスキャンが脳梗塞患

者の頭部単純CTに適応可能か検討を行う

ことを目的とする。

【使用装置及びソフト】

・X 線 CT 装置:Aquilion PRIME (80 列)東芝社製

・ 低 コ ン ト ラ ス ト 分 解 能 測 定 用 フ ァ ン ト ム :

MHT 型(京都科学社製)

・統計処理ソフトなど:「標準 X 線 CT 画像計

測」附属 NPS 測定ソフト、imageJ 、

【方法】

MHT 型ファントムを使用し、ノンヘリカル

ス キ ャ ン お よ び ヘ リ カ ル ス キ ャ ン で の

CNR(コントラストノイズ比)及び NPS(ノイズ

パワースペクトル)の測定を行った。

撮影条件は、管電流を変化させ、BG(バッ

クグラウンド)の SD(標準偏差)を 3.0 に設定

した。統計ソフトは、「標準 X 線 CT 画像計

測」附属 NPS 測定ソフトと ImageJ(NIH 社

製)を使用した。

MHT 型ファントムは、ベース部分との CT 値

差が最も小さい CT 値 55HU、直径 10mm の

円柱を用いて測定を行った(Fig.1)。4mm ス

ライス厚および 8mm スライス厚の検出器の構

成は Table1 に示す。

【結果・考察】

4mm 厚では 1mm×4 列を基準とし、8mm

厚 で は 2mm × 4 列 を 基 準 に 、

Mann-WhitneyのU検定を行った結果ヘリカ

新井 純一 浅妻 厚 古東 正宜

4m

mス

ライス

ノンヘリカル1mm

×4 列

2mm

×4 列

ヘリカル 0.5mm

×20 列

0.5mm

×40 列

0.5mm

×80 列

8m

mス

ライス

ノンヘリカル2mm

×4列

4mm

×4 列

ヘリカル 0.5mm

×20 列

0.5mm

×40 列

0.5mm

×80 列

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

1*4(4mm) 2*4(4mm) 0.5*20(4mm) 0.5*40(4mm) 0.5*80(4mm)0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

1×4 2×4 0.5×40 0.5×40.5×20

0.121

0.438

1.00

0.438

CNR

Mann‐Whitney U‐test(P>0.05)

Fig.2 CNR4mm 厚(P 値)

Administrator
テキストボックス
9.

0.001

0.01

0.1

1

10

100

0 1 0 3 0 5 0 7 0 9 1 1

5 区間移動平均 (0.5*2

5 区間移動平均 (0.5*4

5 区間移動平均 (0.5*8

5 区間移動平均 (1*4(4

5 区間移動平均 (2*4(4

ルスキャンとノンヘリカルスキャンの間には

有意差は無かった(P>0.05)(Fig.2.Fig.3)。

また NPS においては、ヘリカルスキャンとノ

ンヘリカルスキャンの間には差が見られな

かった。(Fig.4.Fig.5)

【まとめ】

ヘリカルスキャンはノンヘリカルスキャン

より若干怠るものの、ほぼ同等の結果が得

られた。このことにより、低コントラスト分解

能においては、脳梗塞患者の単純頭部 CT

に対するヘリカルスキャンの選択が可能で

あることが示唆された。しかし、実際の使用

においては、MTFや被曝線量などの検討も

必要となる。そのため今後、ヘリカルスキャ

ンの実用化に向けて、これらの検討項目に

ついて取り組んで行きたいと考える。

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

2*4(8mm) 4*4(8mm) 0.5*20(8mm) 0.5*40(8mm) 0.5*80(8mm)

1

1.2

1.4

1.6

0

0.2

0.4

0.6

0.8

2×4 4×4 0.5×40 0.5×40.5×20

1.2

1.4

1.6 0.121

0.434

0.434

0.434

CNR

Mann‐Whitney U‐test(P>0.05)

0.001

0.01

0. 1

1

10

100

5 区間移動平均 (0.5

5 区間移動平均 (0.5

5 区間移動平均 (0.5

5 区間移動平均 (2*5 区間移動平均 (4*

Fig,3 CNR8mm厚(P値)

Fig.5 NPS8mm 厚 Fig.4 NPS4mm 厚

平成 25 年日本赤十字放射線技師学術総会座長集約

研究発表Ⅲ

さいたま赤十字病院

尾形 智幸

研究発表Ⅲでは演題番号 10~13 までの 4 題の演題発表が行われた。

第 10 演題「健診胃透視における画質改善」では健診胃透視の画質向上のために、撮影法を

新・胃 X 線撮影ガイドライン改訂版に変更し、全投薬投与タイミング、発泡剤の投与量、

投与方法、バリウム製剤の変更等において検討を行い、撮影では圧迫枕を使用し前壁の描

出能を向上させた等により検診精度を向上させた。会場からバリウムの混合について問題

はないかについて、製薬メーカーと相談して行っている。バリウムの温度管理については、

常温にて運用している。被ばく線量については、今後の検討課題等の質疑応答が行われた。

検査を根本から検討し改善を行ったことは大変であったと考えるが良い検査方法が確立で

きたと考える。

第 11 演題「線量計アルゴリズム AcurosXB における不均質補正の線量計算制度についての

検討」では三次元治療計画装置の線量計算アルゴリズムについて従来の AAA と AcurosXB

による不均質補正の制度について検討し AcurosXB で良好な結果が得られた。との報告で

あった。質疑応答では AcurosXB の不均質補正の臨床応用について質問があり、AcurosXB

はまだ実績がないため AAA を使用しているとのこと。

今後は良好な実験結果が得られた AcurosXB の臨床への応用も検討していただきたい。

第 12 演題「DT 法でのキャリブレーション誤差の検討」では全人口膝関節置換術、術前シ

ミュレーションのためのデジタルテンプレートのキャリブレーション誤差を三次元方向で

検討したものである。近年は人工関節置換術が増加しており、画像情報は重要であり、術

前シミュレーションに必要な画像の歪みの許容範囲が把握でき有用であると感じる。質疑

応答では、撮影時の基準点については膝関節を基準に撮影を行っている。斜入する想定は

の質問については関節面がきちんと真横に出るようにするため、等であった。

第 13 演題「ステレオガイド下マンモトーム生検におけるスケーラーの作成」ではマンモト

ーム生検時の位置決めを確実に行えるようスケーラーを工夫したもので、診療放射線技師

だけでなく他のマンモトームスタッフにもターゲットと開口部の位置関係が分かりやすく

なっている。ターゲット・開口部の位置関係はマンモトームを実施する際、とても重要で

悩むところである。今後はさらに発展させもっと簡便にターゲット位置が把握できるよう

な検討もお願いしたい。

研究発表Ⅲではスムースな演題発表と会場からの活発な質疑応答により大変有意義なセッ

ションとなった。演者の皆様、会場の皆様、座長の機会を与えてくださった日本赤十字放

射線技師会の皆様に感謝し座長集約としたい。

10.健診胃透視における画質改善

武蔵野赤十字病院

波田野 絢加 関根 絵里 櫻井 和明 荒井 一正

【目的】

今日、日本人の死因別死亡率の第1位はがんであり、部位別でみると胃がん死亡率は

肺がんに続き第2位とかなり高い割合を占めている。しかし早期胃がんの状態で発見され

治療した人の5年生存率は 90%以上と高く、健診において早期胃がんを発見することは、

とても重要であるといえる 1,2)。当院も早期胃がん発見のため健診で胃透視検査を行ってい

るが、かねてより撮影している画像の品質に疑問を抱いた。従来の画像を見直したところ①

読影に必要な撮影方向と枚数について②前壁撮影時の描出が不十分である点③胃が縮

んだ状態でも撮影が行われている点④バリウムの付着が悪い点と問題点が4点挙がり、挙

がった事項を中心に画質改善を目的とした検査方法の見直しを行った。

【方法】

① 従来は当院独自の手順で 27 ばく射撮影していた検査を新・胃 X 線撮影法ガイドライン

(以下ガイドラインとする)に記載の任意型検診撮影法の手順に改め、さらに健診担当医

師の指示のもと 4 種の撮影体位を追加し食道が 2 体位2ばく射、胃が 18 体位 18 ばく

射の撮影法に変更した 3)。当院の撮影手順を表 1に示す。

前壁撮影において従来は少量バリウムで背臥位二重造影の前に腹臥位二重造影(頭

低位)を行っていたため胃壁へのバリウムの付着が悪く、撮影時に圧迫用枕を使用して

いなかったため描出範囲が充分ではなかった。今回ガイドラインに準じバスタオルを素

材とした圧迫用枕を作成し受診者の体型に応じ太っている人には厚い枕、痩せている

人には薄い枕を使用することとした(図 1)。さらに改定に際しマニュアルを作成した。

表 1 当院の撮影手順

撮影順番 当院独自の

追加体位

標的部位 撮影体位

① 食道部 立位二重造影第一斜位(上部・下部)

② 胃部 背臥位二重造影正面位

③ 背臥位二重造影第一斜位

④ 背臥位二重造影第二斜位

⑤ 腹臥位二重造影正面位(頭低位)

⑥ 腹臥位二重造影第二斜位(頭低位)

⑦ ○ 腹臥位二重造影正面位

⑧ 腹臥位二重造影第一斜位

⑨ 右側臥位二重造影

⑩ 半臥位二重造影第二斜位

⑪ 背臥位二重造影第二斜位

⑫ ○ 立位二重造影第一斜位

⑬ ○ 立位二重造影正面位

⑭ ○ 立位充盈

⑮ ○ 十二指腸球部 背臥位二重造影

⑯ 胃部 立位圧迫(胃体部・胃角部・前庭部・幽門部)

図 1 腹臥位二重造影(頭低位)撮影時に使用する圧迫用枕

左より太っている受診者用の圧迫用枕、痩せている受診者用の圧迫用枕

② 発泡剤の投与量・投与法の検討を行い、従来は 3.5gの発泡剤を 20mlの水で服用して

いたが、誤嚥の可能性が少ない受診者には 5gの発泡剤を 20mlのバリウムで服用する

ことに変更した。

③ 前投薬の投与タイミングの検討を行った。当院では健診担当医師と放射線科読影医よ

り胃の蠕動運動があると読影しづらいと指摘があり、胃の蠕動運動を抑制するため前

投薬としてスポラミンを使用している。従来は看護師がタイミングを見計らって注射をし

ていたため、注射から検査までに時間が空いたり、注射が間に合わず検査が滞ったり

することがあった。そこで技師が前の受診者の検査終了2分程前に看護師へ連絡して

から、看護師が問診と注射をするよう運用変更した。

④ バリウム製剤の変更の検討を行った。従来当院はバリトゲンHDを200W/V%で使用して

いたが、本画質改善を行うに当たり見学した施設でバリウム製剤を混合して使用してい

ることを知り、混合使用が画質改善となるか検討を行った。

今回バリトゲンHDの他に当院で手に入りやすいウムブラMDとバリコンミールの2種類の

バリウムを用意し、見学した施設と同様の配合率、濃度で2種類の混合バリウムを作成

した(表2)。

表2 バリウムの種類と混合率

バリウムの種類と混合率 濃度

(約 W/V%)

① 単体バリウム投与群 バリトゲン HD 200

混合バリウム投与群

バリトゲン HD:ウムブラ MD=5:2 210

③ バリトゲン HD:バリコンミール=5:2 210

バリトゲンHD単体投与群、バリトゲンHDとウムブラMDの混合バリウム投与群、バリト

ゲンHDとバリコンミールの混合バリウム投与群から無作為に25例ずつ選び、付着の状

態・辺縁の描出能・胃小区の描出能の3項目に関して背臥位二重造影正面像を対象に、

胃透視検査に従事している放射線技師と放射線科読影医、健診担当医師の10名で二

重盲検法に準じ画像評価を行った。評価方法は良好・どちらともいえない・不良の順に2

点・1点・0点と点数化し得点率を算出した。

【結果・考察】

① ガイドラインに準じた撮影法に変更したことで造影効果は向上し、特に前壁撮影では描

出範囲が拡大した(図 2)。

図 2 前壁撮影の比較

左より圧迫用枕未使用時、圧迫用枕使用時(同一受診者)

② 3.5gの発泡剤を 20mlの水で服用する方法から、5gの発泡剤を 20mlのバリウムで服用

する方法に変更したことで胃の中の空気量は増えた。さらに胃の中でバリウムが薄まら

ないため胃壁へのバリウムの付着具合が大幅に改善する受診者もいた(図 3)。

バリウムで服用する際の欠点としてバリウム内に気泡が残りやすく、発泡終了までに時

間がかかることが挙げられるが、胃の二重造影撮影の前に3回、回転変換を行うことで

胃は充分にふくらみ、気泡はほぼ消失している。

図3 バリウムの飲用方法の違いによるバリウムの付着具合の比較

左より発泡剤を水で服用した際の背臥位二重造影正面像

発泡剤をバリウムで服用した際の背臥位二重造影正面像(同一受診者)

③ 前投薬の投与タイミングを変更したことで、より蠕動運動が少ないタイミングで検査を開

始出来ることが多くなった。ただし、スポラミンの効き目には個人差があり、注射をした

全ての受診者で胃の蠕動が抑えられているわけではない。

④ 表3に各バリウム投与群における付着の状態・辺縁の描出能・胃小区の描出能につい

て算出した得点率を示す。バリウムの付着や辺縁の描出能に関しては濃度が高い混合

バリウム投与群で良好な傾向が得られたが、胃小区の描出能に関してはバリトゲンHD

単体投与群で良好な傾向が得られた。

表3 各バリウム投与群の得点率

得点率

バリウムの種類と混合率 付着の状態 辺縁の描出能 胃小区の描出能

バリトゲン HD 65.5% 88.5% 52.0%

バリトゲン HD とウムブラ MD 72.0% 92.5% 43.0%

バリトゲン HD とバリコンミール 72.5% 94.0% 31.5%

各バリウム製剤の特性を比較するためにバリウム粒子の電顕鏡写真と粒子分布を表 4

に示す。

表 4 バリウム粒子の電顕鏡写真と粒度分布(各メーカ資料より引用)

電顕鏡写真 粒度分布

HD

MD

バリウム粒子は製造工程上の反応条件により粒子サイズの小さい物から大きい物まで

多種のサイズを製造出来る。バリトゲンHDは中粒子を主体とし、ウムブラMDは微粒子

を主体とし、バリコンミールは粗粒子を主体としている 4)。粒子径および粒度分布は造影

剤の物性に大きくかかわるため描出能の違いを生んだ要因の一つとしてこのような粒

子の分布の違いが挙げられるが、実際胃透視画像を比較すると描出能の優位差はな

い(表 5)5)。付着の状態や辺縁・胃小区の描出能は受診者の胃に大きく依存する為、同

一被験者で検討を行わなかったことや、対象画像が少なかったことが結果の差を生ん

だ可能性もあり、今回の検討結果だけではバリウムの性能差は出なかった。実際、当

院の健診担当医師と放射線科読影医で、読影のしやすさ・全体の付着・胃小区の描出

の状態をいくつかの画像で検討したところ、しばらくはバリトゲン HD とバリコンミールの

混合バリウムを使用することとなった。

表 5 バリウム製剤の比較

バリトゲン HD バリトゲン HD+ウムブラ MD バリトゲン HD+バリコンミール

【まとめ】

① ガイドラインに準じた撮影法に変更したことで造影効果は向上し、前壁の描出範囲は拡

大した。

② 発泡剤 5gをバリウムで服用するように変更したことで造影効果の向上がみられた。

③ 前投薬の投与タイミングを変更したことで、当院ではより蠕動運動が少ない状態で検査

を開始出来ることが多くなった。ただし、スポラミンの効き目には個人差があり、注射を

した全ての受診者で胃の蠕動が抑えられているわけではない。

④ バリウム製剤の変更は現在検討途中の段階であり、今後もバリウムの種類や濃度・混

合率など検討が必要である。

⑤ 健診胃透視における画像の見直しを行うことで従来に比べ画質は向上した。しかし当

院の健診胃透視では過去 5 年のデータで早期胃がんは1例も発見出来ていない。この

中には当院の健診胃透視検査を受けたにもかかわらず、後日自覚症状が出て進行胃

がんが発見された症例が1例ある。 早期胃がん発見のため、今後も受診者の利益と

100.0

(%)

100

90

80

100

0 70

60

50

40

30

20

10

10.0 1.0

粒子径(μm)

90

0.1 0

なる検査を提供し続けることが大切である。

【参考文献】

1) 厚生労働省HP 人口動態調査 http://www.mhlw.go.jp/ (2011)

2) 日本胃癌学会(編):胃癌治療ガイドライン 2010年 10月改訂.(株)金原出版(2010)

3) (社)日本消化器がん検診学会 胃がん検診制度管理委員会(編):新・胃 X 線撮影法

ガイドライン改訂版(2011年).医学書院(2011)

4) (株)堺化学工業株式会社:バリウム X線造影剤の特性.非売品(2013)

5) 寺澤 操:上部消化管 X線検査で使われる造影剤.日本放射線技術学会雑誌(2000)

11.線量計算アルゴリズム AcurosXB における不均質補正の

線量計算精度についての検討

伊勢赤十字病院 医療技術部

大岩和由

【目的】 現在、当院では三次元治療計画装置の線量計算アルゴリズムに AAA を使用して

いるが、治療計画装置 Eclipse(ver.10)では、物理密度を考慮した線量計算アルゴリズム

AcurosXB も使用可能である。今回は、AcurosXB における不均質補正の線量計算精度に

ついて検討することを目的とした。

【使用機器】 照射装置:Trilogy (Varian)、治療計画装置:Eclipse(Varian)、治療計画用

CT:Optima580W(GE)、線量計:N30013 型(PTW)、電位計:RAMTEC Smart(東洋メ

ディック)、肺等価ファントム:タフラングファントム(京都科学)、水等価ファントム:タフウォー

タファントム(京都科学)ソリッドウォータファントム(RMI)

【方法】 腫瘍が肺野内に存在している状

態を仮定し、厚さ 4cm のタフウォーターをタ

フラング内に設置し、これを模擬腫瘍とした。

タフラングの厚さは模擬腫瘍の上下を合わ

せて 12cm である。さらにタフラングの外側

にそれぞれ 2cm のタフウォーターを配置し

胸壁を見立て、体厚を合計 20cm とした。

Fig.1 に幾何学的配置を示す。

模擬腫瘍中心へ前方一門照射する治療

計画を作成し、模擬腫瘍の位置を前方から

後方へ 1cm ずつ移動させ各条件にて模擬

腫瘍中心線量を比較した。Fig.2 に各条件

の際の幾何学的配置を示す。また、各条件

において、模擬腫瘍中心へ 200MU 照射時

の実測を行い治療計画装置における計算

線量との比較を行った。臨床における肺野

内の病変を想定しているので X 線のエネル

ギーは 6MV、照射野は 5×5cm とした。

SCD:100cm

Field Size at SCD:100cm:5×5cm

水等価 肺等価

Fig.1 幾何学的配置

Fig.2 タフラングの組み合わせによる 13 パターンのファントム(Test1←→Test13)

【結果・考察】 同じ MU を照射する場合、模擬腫瘍中心線量は AcurosXB の方が AAA より

も低くなった。模擬腫瘍中心における実測線量と治療計画装置での計算線量との比較では、

AcurosXB の方が AAA よりも実測線量に近い値を示した。また、AAA ではファントム表面か

ら模擬腫瘍までの距離が長くなるほど計算結果の差が大きくなり、深部にて最大で 5.4%の

差がみられた。ノンパラメトリック検定の結果、実測線量、AcurosXB、AAA の計算線量にお

いてそれぞれ有意差があった。

Fig.1 各パターンにおける実測線量と計画線量

模擬腫瘍中心の計画線量の比較において AcurosXB の方が AAA よりも実測線量に近か

ったとことについては、AcurosXB の方が物質中の粒子の挙動(輸送や相互作用)を正確に

モデリングしている点や物理密度を計算に含んでいる点が考えられる。

また、AcurosXB では Mass Density と Material の割り当てをする過程で Density の重複す

る範囲(CT 値-966~-957HU の間)では混合物として扱われ、混合比により物理密度が線

形補間されるが、実際に計画時の CT 画像上で肺等価ファントム部分の CT 値を測定すると

-900 以下の部分はなく、線形補間された Material の部分は非常に少なく、それに伴う計算

誤差も少なかったため、より精度が高くなったと考えられる。

【まとめ】 線量計算アルゴリズム AcurosXB は不均質媒体における線量計算に優れ、より

正確な線量評価ができると考えられる。線量計算アルゴリズム AAA では深部にて実測線

量と計算線量に最大で 5.4%の差がある。

12.DT法でのキャリブレーション誤差の検討

広島赤十字・原爆病院 中央放射線科部

湯門 慎治 羽原 幸作 古西 健太 安成 秀人 田中 久善 古川 隆志

【目的】

全人工膝関節置換術(TKA)の術前に膝正面を立位(SID 200cm)で、膝側面を臥位(SID

100cm)で撮影し、整形外科用 PACS 処理ソフトのデジタルテンプレートを用いてシュミレー

ションを行っている(以下、DT法)。DT法では鉄球(25mm)を用いてキャリブレーションを行っ

ている。キャリブレーションでの誤差について検証を行った。

【使用機器】

・島津メディカルシステムズ株式会社製:X線撮影装置 RAD speed safire

・富士フィルムメディカル株式会社製:DR画像診断システム FUJIFILM DR CALNEO U

・インフォコム株式会社製:整形外科用 PACS iRad®-OT

・インフォコム株式会社製:キャリブレーションボール 鉄球(25mm)

【対象・方法】

キャリブレーション基準点を照射野(四つ切)中心上において FPDから 15cm離した点とした。

SID100cm にて撮影を行い、解析ソフトにて鉄球のピクセル値を求めこの数値を基準値

25mm とした。(Fig.1,2)①キャリブレーション基準点から膝 AP 方向に 1cm 刻みで±5cm 移

動させ、ピクセル値を求めた。②キャリブレーション基準点から体軸方向に 1cm 刻みで±

5cm 移動させ、ピクセル値を求めた。③X 線の入射角度を2°刻みで10°まで変えて撮影

し長径と短径のピクセル値を両方求めた。最後に求めた基準ピクセル値、測定したピクセ

ル値から下記の式を用いて誤差を算出した。

この式において、Pnは基準ピクセル値、Pは測定したピクセル値である。測定は 3回行い、

平均を求めたピクセル値を使用した。SID200cmについても同様に行い比較した。

【結果】

①Fig.1に膝 AP方向における基準点からの距離と誤差のグラフを示す。キャリブレーション

基準点をAP方向に移動させると誤差は最大でSID100cm、-5cmのとき-1.68mmであった。

(table.1)②Fig.2 に体軸方向における基準点からの距離と誤差のグラフを示す。体軸方向に

移動させると誤差は最大で-0.11mm で AP 方向に比べ小さかった。(table.1)③Fig.3 に長径

での入射 X 線の角度における誤差のグラフを示す。長径では誤差が大きくなり最大で入射

角度 10°、SID100cm のとき+0.5mm であった。Fig.4 に短径での入射 X 線の角度における

誤差のグラフを示す。入射 X線の斜入を大きくしていくと鉄球は楕円形になり短径では誤差

は小さかった。(table.2)

E = 25 (1 - Pn/P)

【考察】

①鉄球を AP 方向に移動させると誤差が最大で-1.68mm になった。人工膝関節は1サイズ

で 2mm 間隔あるのでテンプレートのサイズ選択に影響があることがわかった。②頭尾方向

では、誤差は最大でも-0.11mmであったので±5cm以内では射入の影響は少ないことがわ

かった。③X線の入射角度の誤差では、長径のとき最大で0.5mmで射入による歪みの影響

を受けることが分かった。一方、短径では最大でも 0.07mmで誤差への影響は少ない。キャ

リブレーションでは、長径ではなく短径行った方が良いことが分かった。

【まとめ】

1.鉄球の配置による誤差は、膝 AP 方向のとき シュミレーションに影響を与える。2.X 線

の斜入による誤差は、鉄球が楕円形に歪むので、キャリブレーションをする際は短径で行う

と影響が小さい。

Fig.1 膝 AP方向における誤差のグラフ

Fig.1膝 AP 方向における誤差のグラフ

Fig.2 体軸方向における誤差のグラフ

Fig.4 短径での入射 X線の角度における誤差のグラフ Fig.3 長径での入射 X線の角度における誤差のグラフ

Table.2 膝 AP方向と頭尾方向に移動させたときの誤差 Table.1 膝 AP方向と頭尾方向に移動させたときの誤差

13.ステレオガイド下マンモトーム生検におけるスケーラーの作成

日本赤十字社和歌山医療センター 放射線科部

○松村 瞳、大西 智子,小森 優美

渡邊 奈美,川村 佳生,岩井 計成

【目的】ステレオガイド下マンモトーム生検とは、組織検査のひとつで、マンモグラフィを用

い、病変である石灰化を確認しながらマンモトーム生検用針(以下、生検針と略す)を刺し

入れ、組織を吸引しながら採取する検査である。当センターでは腹臥位タイプの生検装置

を使用している。患者はうつ伏せになり検査台の穴へ検側乳房を下垂させ、装置の乳房圧

迫板で固定し、ステレオ撮影で生検針を挿入するための位置決めを行う。生検針は11G、

14Gの二種類あり、乳房厚と石灰化の位置によりどちらを使用するか考える。

生検を行うにあたって、乳房厚が薄い症例だと生検針が乳房を突き破ってしまう危険性

があり、また、石灰化が皮膚表面に近い症例だと生検針の開口部が吸引時に皮膚を抉り

取ってしまう危険性がある。このように考慮すべき点が多ければ多いほど、検査に時間が

かかってしまい、患者疲労の結果生じた体動で位置決め写真からズレが生じてしまう。そう

なると、もう一度位置決めからやり直す必要がある。

このような悪循環を回避し、検査をスムーズに行うためには石灰化と生検針の位置関係

を把握する事が重要となる。そこで、検査が困難であった乳房厚が薄い症例と、石灰化が

皮膚表面に近かった症例に対し、検査をスムーズに行えるように工夫した点を報告する。

【使用装置】日立メディコ MultiCare Platinum

【方法】乳房を圧迫固定し、11Gの生検針を挿入した状態を

右図に示す。バックプレートから圧迫板までの乳房厚をコンプ

レッション値、基準点からバックプレートに対して垂直に降ろし

た点から、石灰化までの距離を Z値としている。これら装置と

乳房の位置関係を視覚的に把握しやすくするために、数種類

のパーツを組み合わせてスケーラーを作成した。

(エアギャップ:乳房に厚みをもたせる器具。アクリル板、

厚さ10mm。バックプレートに装着して使用。)

圧迫板

バック

プレート

生検針

基準点

<スケーラーの使用方法>

【まとめ】

・ スケーラーを作成した結果、石灰化や生検針の位置情報を技師だけでなく、医師や看

護師など、生検を行うチーム全員が共有できるようになった。

・ 情報共有が容易になったため、生検中の処置の指示が行いやすくなった。

・ 乳房が薄い症例であっても、スケーラーを使用することで、生検可能かの判断が容易に

なった。

パーツ②:透明のシート状で、圧迫板と Z 値

の目盛りを表示。圧迫板の位置を、実際の

乳房を圧迫したコンプレッションの値の所ま

でパーツ①に沿わせてスライドさせる。

パーツ③:石灰化の位置を表すパーツ。

Z値を目盛の位置に合わせて挿入する。

パーツ①:バックプレート、エアギャップ、

コンプレッション値の目盛りを表示。

パーツ④:生検針を表すパーツ。開口部の中

央部に石灰化が位置するように挿入し、生検

針と石灰化の位置関係をチェックする。