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LY3009806 2.6.1 緒言 サイラムザ点滴静注液 サイラムザ点滴静注液 100 mg サイラムザ点滴静注液 500 mg 2.6.1 緒言 日本イーライリリー株式会社

サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

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目次 2.6.1 緒言 ............................................................................................................................. 2

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サイラムザ点滴静注液

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略語一覧

ADCC 抗体依存性細胞障害活性ADSC 脂肪由来幹細胞Ang アンジオポエチンAUC 血清中又は血漿中濃度-時間曲線下面積Biacore 表面プラズモン共鳴分析法BLQ 定量限界未満BSC Best supportive careCDC 補体依存性細胞障害CEP 循環血管内皮前駆細胞CL クリアランスcLEC Collecting lymphatic endothelial cellCmax 最高血清中又は血漿中濃度EC50 50%効果濃度ECFC 血管内皮前駆細胞ECL ElectrochemiluminescenceEGFR 上皮成長因子受容体ELISA 酵素免疫測定法FITC フルオレセインイソチオシアネートFlk Fetal liver kinaseFlt-1 Fms-like tyrosine kinase 1FSH 卵胞刺激ホルモンGLP 医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準HE ヘマトキシリン・エオジンHIF-1 Hypoxia-inducible factor 1HRP Horseradish peroxidaseIC50 50%阻害濃度ICH 日米 EU医薬品規制調和国際会議Ig 免疫グロブリンIg D3 Immunoglobulin-like extracellular domain 3ISR Incurred sample reanalysisKd 解離定数KDR Kinase insert domain-containing receptorKLH Keyhole limpet hemocyaninkoff 解離速度定数kon 結合速度定数NOAEL 無毒性量PBS リン酸緩衝生理食塩液Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析Rmax 最大結合量SD 標準偏差T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比t1/2 消失半減期tmax 最高血漿中濃度到達時間TMB TetramethylbenzidineVd 分布容積VEGF 血管内皮増殖因子VEGFR 血管内皮増殖因子受容体Vss 定常状態における分布容積Vz 終末相の分布容積

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2.6.1 緒言

ラムシルマブは、血管内皮増殖因子受容体 2(vascular endothelial growth factor receptor

2:VEGFR-2)に対する遺伝子組換えヒト免疫グロブリン G1(immunoglobulin G1:

IgG1)モノクローナル抗体である。

ラムシルマブは、血管新生に重要な VEGF(VEGF-A、VEGF-C 及び VEGF-D)の

VEGFR-2 への結合を阻害する(評価資料 IMC04; 参考資料 Lu 2003; 参考資料 Zhu 2003)。

その結果、ラムシルマブは VEGFR-2 及びその下流の細胞内シグナル伝達の活性化を阻

害し、ヒト内皮細胞の増殖及び遊走を阻害する(参考資料 Lu 2003; 参考資料 Zhu 2003;

参考資料 Miao 2006; 参考資料 Goldman 2007; 参考資料 Tvorogov 2010)。

ラムシルマブの固形癌治療における有用性を評価するための臨床開発が、用量、投与

スケジュール及び安全性を評価する第 I 相試験から開始された。臨床開発は、VEGF-A

を含む各種 VEGF リガンド及び VEGFR-2 が過剰発現している腫瘍やアンメット・メデ

ィカル・ニーズの高い腫瘍に重点を置いた。今回の製造販売承認申請における主要な臨

床試験は、I4T-IE-JVBE(IMCL CP12-0922、RAINBOW)試験(以下、JVBE 試験)及び

I4T-IE-JVBD(IMCL CP12-0715、REGARD)試験(以下、JVBD 試験)であり、一次化

学療法の施行中又は施行後に増悪の認められた進行(転移性又は局所進行の切除不能

な)胃又は胃食道接合部腺癌患者を対象に、ラムシルマブ+パクリタキセル併用群とプ

ラセボ+パクリタキセル併用群及びラムシルマブ+ best supportive care(BSC)群とプラセ

ボ+ BSC 群の有効性及び安全性をそれぞれ比較した。

JVBE 試験は、国際共同無作為化二重盲検比較試験であり、統計学的に有意かつ臨床

的に意義のある有効性と忍容かつ管理可能な安全性プロファイルを示した。JVBE 試験

では、日本人 140 例を含む 665 例(未投与例 9 例)の被験者がラムシルマブ+パクリタキ

セル併用群とプラセボ+パクリタキセル併用群に割付比 1:1 で無作為に割り付けられた。

治験薬の投与は、原疾患の増悪や許容できない毒性が認められるか同意が撤回されるま

で、又は他の中止基準に該当するまで続けられた。

JVBE 試験は、進行胃又は胃食道接合部腺癌患者を対象とした 2 番目の無作為化第 III

相試験であった。この対象疾患に対してラムシルマブの有効性が示された最初の試験は

JVBD 試験であった。JVBD 試験では、一次化学療法後に増悪の認められた進行胃又は胃

食道接合部腺癌患者を対象に、ラムシルマブ+ BSC 群とプラセボ+ BSC 群の有効性及び

安全性を比較した。JVBD 試験では、355 例(未投与例 4 例含む、日本人不参加)の被験

者がラムシルマブ+ BSC 群とプラセボ+ BSC 群に割付比 2:1 で無作為に割り付けられた。

治験薬の投与は、原疾患の増悪や許容できない毒性が認められるか同意が撤回されるま

で、又は他の中止基準に該当するまで続けられた。試験の結果、統計学的に有意かつ臨

床的に意義のある有効性が示され、安全性プロファイルは忍容できるものであり、発現

した有害事象はプラセボ投与時と類似していた。

各国規制当局への申請及び承認状況(2014 年 12 月時点)について、ラムシルマブの

単独投与は、米国にて fast track に指定された後、2013 年 8 月、JVBD 試験の結果等に基

づいて、米国及び EU で一次化学療法後に増悪の認められた進行胃又は胃食道接合部腺

癌の適応にて承認申請を行った。米国では、優先審査にて 2014 年 4月、EUでは 2014年

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12 月にそれぞれ承認を取得した。また、ラムシルマブとパクリタキセルの併用投与につ

いて、EUでは 20 年 月、米国では 2014 年 5月に JVBE 試験の結果等に基づいて、一

次化学療法後に増悪の認められた進行胃又は胃食道接合部腺癌の適応にて承認申請を行

い、EUでは 2014 年 12 月、米国では 2014 年 11 月にそれぞれ承認を取得した。その他、

胃癌の単独投与及びパクリタキセルとの併用投与について、 (20 年 月)、

(20 年 月)、 (20 年 月)、 (20 年 月)、

(20 年 9 月)、 (20 年 月)及び (20 年 月)で承認申請を行っ

た。なお、胃癌以外に、米国では、2014 年 6 月に非小細胞肺癌に対するドセタキセルと

の併用投与の承認申請も行い、2014年 12 月に承認を取得した。

今回、日本では、JVBD 試験、JVBE 試験の結果等に基づいて、胃癌を対象とする製造

販売承認申請を行うこととした。

日本の申請時点において、胃癌以外に、肺癌におけるドセタキセル併用投与[I4T-

MC-JVBA 試験(IMCL CP12-1027、REVEL)]及び直腸結腸癌における FOLFIRI(ロイ

コボリン、5-フルオロウラシル及びイリノテカン)併用投与[ I4T-MC-JVBB 試験

(IMCL CP12-0920、RAISE)]の第 III 相試験の結果が得られており、いずれも主要評

価項目である全生存期間が有意に延長することが認められた。一方、乳癌におけるドセ

タキセル併用投与[I4T-IE-JVBC 試験(IMCL CP12-0606、ROSE)]及び肝細胞癌にお

ける単独投与[I4T-IE-JVBF 試験(IMCL CP12-0919、REACH)]の第 III 相試験では主

要評価項目を達成できなかった。

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2.6.2 薬理試験の概要文

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文 サイラムザ点滴静注液

目次 2.6.2 薬理試験の概要文 ..................................................................................................... 1

2.6.2.1 まとめ ................................................................................................................. 1 2.6.2.2 効力を裏付ける試験 ......................................................................................... 2

2.6.2.2.1 In Vitro 薬効薬理試験 ................................................................................ 2 2.6.2.2.1.1 ラムシルマブを用いた In Vitro 薬効薬理試験 ....................................... 2

2.6.2.2.1.1.1 ラムシルマブの In Vitro 結合試験 ................................................... 4 2.6.2.2.1.1.2 VEGF-C 及び-D の VEGFR-2 への結合に対するラムシルマブ

の作用 ................................................................................................. 8 2.6.2.2.1.1.3 ラムシルマブの細胞機能に対する作用.......................................... 9 2.6.2.2.1.1.4 ラムシルマブによる VEGFR-2 の内在化 ..................................... 14 2.6.2.2.1.1.5 ラムシルマブのエフェクター活性 ............................................... 15 2.6.2.2.1.1.6 ラムシルマブのエピトープ ........................................................... 17

2.6.2.2.1.2 DC101 を用いた In Vitro 薬効薬理試験 ................................................. 18 2.6.2.2.1.2.1 DC101 の In Vitro 結合試験 ............................................................ 18 2.6.2.2.1.2.2 DC101 の細胞機能に対する作用 ................................................... 20

2.6.2.2.2 In Vivo 薬効薬理試験 .............................................................................. 21 2.6.2.2.2.1 作用機序に関する試験 ........................................................................... 21 2.6.2.2.2.2 ヒト癌のマウス異種移植モデルにおける DC101 の抗腫瘍効果 ...... 25

2.6.2.2.2.2.1 試験方法及びデザインの概要 ....................................................... 25 2.6.2.2.2.2.2 ヒト膵臓癌マウス異種移植モデルを用いた Proof-of-Concept

試験 ................................................................................................... 25 2.6.2.2.2.2.3 ヒト胃癌のマウス異種移植モデルにおける DC101 の抗腫瘍

効果 ................................................................................................... 27 2.6.2.2.2.2.3.1 DC101 の単独投与試験 ........................................................... 27 2.6.2.2.2.2.3.2 DC101 とパクリタキセルの併用投与試験 ........................... 28

2.6.2.2.2.2.4 胃癌以外のマウス異種移植モデルにおける DC101 の抗腫瘍

効果 ................................................................................................... 30 2.6.2.3 副次的薬理試験 ............................................................................................... 30 2.6.2.4 安全性薬理試験 ............................................................................................... 30 2.6.2.5 薬力学的薬物相互作用 ................................................................................... 30 2.6.2.6 考察及び結論 ................................................................................................... 30 2.6.2.7 図表 ................................................................................................................... 32 2.6.2.8 参考文献 ........................................................................................................... 32

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

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2.6.2 薬理試験の概要文

2.6.2.1 まとめ

ラムシルマブはヒト血管内皮増殖因子受容体 2[vascular endothelial growth factor

receptor 2:VEGFR-2(別称は kinase insert domain-containing receptor:KDR)]に対する

遺伝子組換えヒト免疫グロブリン G1(immunoglobulin G1:IgG1)モノクローナル抗体

である。ラムシルマブは 4 本のポリペプチド鎖[各々2 本の同一重鎖(446 アミノ酸)及

び軽鎖(214 アミノ酸)]から構成され、Fc 領域に 1 ヵ所、N-結合型グリコシル化部位

を有する。

ラムシルマブの薬理学的特性を明らかにする目的で、VEGFR-2 に対する結合能、選択

性及びリガンド刺激による活性化に対する阻害能を in vitroで評価した。ラムシルマブは

マウス VEGFR-2 とは交差反応しないため、マウスを用いて血管新生阻害作用や抗腫瘍

効果を検討した in vivo 試験にはマウス VEGFR-2 に阻害作用を示す DC101 をサロゲート

抗体として用いた。

ラムシルマブを用いた薬効薬理試験で得られた主な成績を以下に示す。

ラムシルマブはヒト VEGFR-2 に高い親和性で結合し[解離定数:0.01 nM(評価資

料 1001- )~0.05 nM(参考資料 Lu 2003; 参考資料 Zhu 2003)]、VEGF-A(一般

的に VEGF と呼称される)の VEGFR-2 への結合を強く阻害した[50%阻害濃度:約

0.8 nM(参考資料 Lu 2003; 参考資料 Zhu 2003)]。

ラムシルマブは VEGFR-1 及び VEGFR-3 とは交差反応せず(評価資料 IMC01)、評

価した他の増殖因子受容体型チロシンキナーゼにも交差反応性を示さなかった(評

価資料 PT-1202)。

In vitro 試験において、ラムシルマブはヒト VEGFR-2 に結合したが、マウス

VEGFR-2 には明らかな結合性を示さなかった(評価資料 1001- )。ラムシルマブ

は同程度の親和性でヒト及びサルの VEGFR-2 に結合した(評価資料 bTDR275)。

ラムシルマブは VEGF-C 及び VEGF-D のヒト VEGFR-2 への結合も阻害した(評価

資料 IMC04)。

ラムシルマブは VEGF 刺激による VEGFR-2 自己リン酸化を阻害し(参考資料 Lu

2003)、VEGF による血管内皮細胞増殖(参考資料 Zhu 2003)及びヒト白血病細胞

遊走を阻害した(参考資料 Zhu 2003)。

DC101 を用いた薬効薬理試験で得られた主な成績を以下に示す。

DC101 はマウス VEGFR-2 に結合したが、ヒト VEGFR-2 には結合性を示さなかった

(評価資料 1001- )。

DC101 はマウス VEGFR-2のシグナル伝達を阻害した(参考資料 Rockwell 1995)。

DC101 の担癌マウスへの投与で腫瘍の微小血管密度の減少及び腫瘍増殖抑制が見ら

れ、ラムシルマブの抗腫瘍効果における血管新生阻害作用の関与が示唆された(参

考資料 Franco 2006)。

ヒト膵臓癌マウス異種移植モデルにおいて、DC101は 18 g/mL以上の血清中濃度を

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もたらす用量で有意な抗腫瘍効果を示した(評価資料 2212- )。

17 種の胃癌患者由来腫瘍組織片を用いたマウス異種移植モデルのうち 7 種において、

DC101 を投与することにより統計学的に有意かつ 50%以上の腫瘍増殖抑制が見られ

た(評価資料 5538- )。

ヒト胃癌細胞株を用いたマウス異種移植モデルにおいて、DC101 又はパクリタキセ

ルの単独投与で顕著な腫瘍増殖抑制が見られたが、併用投与では明らかな相加作用

は認められなかった(評価資料 5569- )。両薬剤の用量を減量したところ、統計

学的有意差は認められなかったが、併用投与による相加作用を示唆する結果が得ら

れた(評価資料 5634- )。

DC101 は胃癌以外の癌を用いた担癌モデルにおいても有効性を示した(試験一覧を

Appendix Aに示す)。

ラムシルマブの安全性薬理評価で見られた主な成績を以下に示す。

サルにおける毒性試験で、安全性薬理パラメータに特記すべき所見はなかった(評

価資料 1163-110)。

以上、ラムシルマブはヒト VEGFR-2 に特異的かつ高い親和性で結合し、VEGF による

VEGFR-2 の活性化、シグナル伝達及び血管内皮細胞の応答を阻害することが示された。

担癌マウスを用いた検討では、DC101 の投与による血管新生阻害作用及び抗腫瘍効果が

認められた。これらの成績は、胃癌患者へのラムシルマブ投与の妥当性を支持するもの

であった。

2.6.2.2 効力を裏付ける試験

ラムシルマブ及び DC101(抗げっ歯類 VEGFR-2 抗体、ラムシルマブのサロゲート抗

体として使用)の VEGFR-2 に対する結合特性及び VEGF の受容体活性化作用に対する

阻害能を各種 in vitro試験で評価した。また、ラムシルマブの胃癌に対する有効性を裏付

ける目的で、マウス担癌モデルにおける DC101 の効果を評価した。

2.6.2.2.1 In Vitro 薬効薬理試験

2.6.2.2.1.1 ラムシルマブを用いた In Vitro 薬効薬理試験

ラムシルマブ(IMC-1121B)はヒト VEGFR-2 に対して拮抗作用を有するモノクローナ

ル抗体(2C6)を親抗体とする親和性成熟を経て産生された(Lu 2002)。最初にヒト

Fab フラグメントのナイーブファージディスプレイライブラリを用いた検討から、ヒト

VEGFR-2 に高い親和性を示す Fabとして 2C6 Fab を同定した(de Haard 1999)。次いで、

チェーンシャッフリング法を用いた親和性成熟を経て、VEGFR-2 への結合親和性が 30

倍以上高いクローン(1121 Fab)を見いだした(参考資料 Lu 2003)。完全長の IgG 抗体

(IMC-1121)を得るため、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインをクローン化し、そ

れぞれヒト IgG1 定常領域及びヒト κ 定常領域をコードする遺伝子配列と遺伝子融合させ

た。ラムシルマブは IMC-1121 とアミノ酸配列が同一であるが、発現ベクターからイン

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トロンが除去されている。ラムシルマブは安定なマウス骨髄腫細胞株(NS0)から発現

させた。

ラムシルマブを用いた in vitro 薬効薬理試験の一覧を表 2.6.2-1 に示す。これらの試験

から得られたデータにより、ラムシルマブはヒト VEGFR-2 に選択的かつ高い親和性を

有し、血管新生時に重要な VEGFR-2 の活性化並びにその下流のシグナル伝達を強力に

阻害することが示唆された。

表 2.6.2-1 ラムシルマブの In Vitro 薬効薬理試験の一覧

試験目的 評価項目 評価系 資料

結合能/阻害

能の評価

ヒト VEGFR-2 への結合能 Biacore 参考資料 Lu 2003

参考資料 Zhu 2003

評価資料 1001-

ELISA 評価資料 1001-

VEGF のヒト VEGFR-2への結合

に対する阻害能

ELISA 参考資料 Lu 2003

参考資料 Zhu 2003125I-VEGF の VEGFR-2 陽性細胞

への結合に対する阻害能

HUVEC 参考資料 Zhu 2003

受容体選択

性の評価

他の増殖因子受容体型チロシン

キナーゼへの結合能

ELISA 評価資料 PT-1202

VEGFR-1、-2、-3 への結合能 ELISA 評価資料 IMC01

ヒト、サル、ウサギ及びイヌの

VEGFR-1、-2、-3 への結合能

Biacore 評価資料 bTDR275

リガンド選

択性の評価

VEGF-C 及び-D の VEGFR-2へ

の結合に対する阻害能

ELISA 評価資料 IMC04

VEGF-C の内皮細胞増殖に対す

る阻害能

ヒトリンパ管内皮細胞 参考資料 Goldman 2007

VEGF-C の内皮細胞発芽に対す

る阻害能

ヒト皮膚微小血管内皮

細胞

参考資料 Tvorogov 2010

VEGF-C の VEGFR ヘテロ二量体

形成に対する阻害能

HSaVEC を用いた in

situ PLAアッセイ

参考資料 Nilsson 2010

細胞機能の

評価

VEGF の VEGFR-2リン酸化に対

する阻害能

HUVEC 及び PAE-KDR

細胞

参考資料 Lu 2003

VEGF のカルシウム動員に対す

る阻害能

PAE-KDR 細胞 参考資料 Miao 2006

VEGF の内皮細胞増殖に対する

阻害能

HUVEC 参考資料 Zhu 2003

VEGF の白血病細胞遊走に対す

る阻害能

HL60 及び HEL細胞 参考資料 Zhu 2003

受容体内在

化の評価

VEGFR-2 のダウンモジュレーシ

ョン

PAE-KDR 細胞並びにヒ

ト大動脈内皮細胞及び

皮膚微小血管内皮細胞

の初代培養細胞

評価資料 IMC02

略号:Biacore 表面プラズモン共鳴分析法、ELISA 酵素免疫測定法、HUVEC ヒト臍帯静脈内皮細胞、

HSaVEC ヒト伏在静脈内皮細胞、in situ PLA アッセイ in situ 近接ライゲーションアッセイ、PAE-KDR 細胞 ヒ

ト VEGFR-2 を遺伝子導入したブタ大動脈内皮細胞

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

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2.6.2.2.1.1.1 ラムシルマブの In Vitro 結合試験

評価資料:1001- (4.2.1.1.3)、PT-1202(4.2.1.1.4)、IMC01(4.2.1.1.5)、bTDR275(4.2.1.1.6)

参考資料:Lu 2003(4.2.1.1.1)、Zhu 2003(4.2.1.1.2)、Franklin 2011(4.2.1.1.7)

Biacore(表面プラズモン共鳴分析法)を用いた検討におけるラムシルマブのヒト

VEGFR-2 に対する解離定数(Kd)は約 0.05 nM であった(参考資料 Lu 2003; 参考資料

Zhu 2003)。親抗体(IMC-2C6)と比較したところ、ラムシルマブの Kd は IMC-2C6 の

約 1/4 であり、また、1121 Fab の Kd は 2C6 Fab の約 1/36 であった(参考資料 Lu 2003;

表 2.6.2-2)。Biacore を用いた別の検討におけるラムシルマブのヒト VEGFR-2 への Kd

は 0.01 nM であった(評価資料 1001- )。ELISA(酵素免疫測定法)を用いた検討でも

ラムシルマブはヒト VEGFR-2 に結合し、その 50%効果濃度(EC50)は 0.16 nM であっ

た(評価資料 1001- )。

表 2.6.2-2 ラムシルマブのヒト VEGFR-2に対する結合親和性

抗体 *kon (104 M-1S-1) *koff (10-4 S-1) *†Kd (nM)

2C6 Fab 17.1 5.7 5.5 0.76 3.6 1.7

1121 Fab 29.6 7.3 0.30 0.06 0.10 0.02

IMC-2C6 21.2 8.1 0.43 0.03 0.20 0.01

ラムシルマブ 47.9 2.4 0.25 004 0.05 0.01

略号:Kd 解離定数、kon 結合速度定数、koff 解離速度定数† koffを konで除した値を算出し、その平均値を Kd とした。* データは 3 回以上の測定の平均値±標準誤差で示す。

参考資料 Lu 2003 の表 3 を転載。

ラムシルマブのヒト VEGFR-2 に対する結合能及び阻害能を ELISA で評価したところ、

50%阻害濃度(IC50)は約 0.8 nM であった(参考資料 Lu 2003; 図 2.6.2-1、参考資料 Zhu

2003)。Biacore での結果と一致し、その作用は親抗体 2C6 よりも強かった。

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

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酵素免疫測定法での検討。縦軸は 405 又は 450 nm での吸光度を示す(平均値±標準偏差、triplicate で 3 回以上実

施)。IMC-1H4 は別の抗 VEGFR-2 抗体であり、比較対照に用いた。VEGF の VEGFR-2 への結合阻害に関する IC50

はラムシルマブ(IMC-1121)、IMC-2C6 及び IMC-1H4 でそれぞれ約 0.8、1.2 及び 6.2 nM であった。参考資料 Lu

2003 の図 4 を転載。

図 2.6.2-1 ラムシルマブ(IMC-1121)のヒト VEGFR-2 への結合能(A)及び VEGF の

VEGFR-2 への結合に対する阻害能(B)

ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いて、125I 標識 VEGF の VEGFR-2 への結合に

対する抗 VEGFR-2 抗体(ラムシルマブ、IMC-1C11 及び IMC-2C6)の競合阻害反応を検

討した(参考資料 Zhu 2003; 図 2.6.2-2)。いずれの抗 VEGFR-2 抗体も VEGFR-2 への

125I 標識 VEGF 結合を阻害したが、陰性対照として用いた IMC-C225[セツキシマブ、抗

ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)抗体]は明らかな阻害を示さなかった。

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

6

Antibody concentration (nM)

0.1 1 10

125

I-V

EG

F b

ou

nd

(cp

m)

500

1000

1500

2000

IMC-1C11

IMC-2C6

IMC-1121 IMC-C225

データは平均値±標準偏差で示す(triplicate)。種々濃度の抗 VEGFR-2 抗体を 125I 標識 VEGF と混合し、プレート

内でサブコンフルエントにまで増殖させたヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に添加した。プレートを室温で 2 時間

インキュベートし、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、細胞に結合した 125I 標識 VEGF の量を定量した。参

考資料 Zhu 2003 の図 2a を転載。

図 2.6.2-2 125I-VEGF のヒト内皮細胞発現 VEGFR-2 への結合に対するラムシルマブ

(IMC-1121)の阻害能

ELISA により、ヒト VEGFR-2 に対するラムシルマブの結合能をヒト VEGFR-1、ヒト

VEGFR-3、並びに他の増殖因子受容体型チロシンキナーゼに対する結合能と比較したと

ころ、ラムシルマブはヒト VEGFR-2 に対する高い特異性を示した(評価資料 PT-1202;

図 2.6.2-3)。抗ヒト EGFR 抗体である IMC-C225(セツキシマブ)は EGFR に結合した

が、VEGFR-2 を含む他の受容体には結合しなかった。ELISA を用いた別の試験でも、ラ

ムシルマブは VEGFR-2に特異的に結合し、VEGFR-1 及び VEGFR-3 には明らかな結合性

を示さなかった(評価資料 IMC01)。

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

7

酵素免疫測定法での検討。縦軸は 450 nm での吸光度を示す。青、赤、黒のバーはそれぞれラムシルマブ(1121B)、

IMC-C225 及び PBS を示す。評価資料 PT-1202 の図 1 を転載。

図 2.6.2-3 増殖因子受容体パネルを用いたスクリーニングアッセイにおけるラムシル

マブの VEGFR-2 への結合特異性

第 2.6.2.2.1.2.1 項に示すように、ラムシルマブのマウス VEGFR-2 に対する結合能は低

いこと(評価資料 1001- )から、マウスを用いた in vivo試験にはマウス VEGFR-2に阻

害作用を示す DC101 をサロゲート抗体として用いる必要があった。ラムシルマブは構造

的にヒト VEGFR-2の immunoglobulin-like extracellular domain 3(Ig D3)に結合すること

が判明しており(参考資料 Franklin 2011)、エピトープも明らかにされている。図

2.6.2-4 に示すとおり、ラムシルマブのエピトープはヒトとサルの間で完全に一致してい

る(Ig D3 配列での唯一の相違はアミノ酸 234 位のイソロイシンとバリンの同類置換であ

るが、これはエピトープに含まれない)

アミノ酸番号は NCBI リファレンス配列(NP_002244.1)に準じ、IMC-1121B Fab のエピトープを決定した文献(参

考資料 Franklin 2011)で用いた番号に対応している。ラムシルマブのエピトープ(赤)はヒトとサルの間で完全に

一致しており、Ig D3 配列での唯一の相違はアミノ酸 234 位のイソロイシンとバリンの同類置換(緑)である。

図 2.6.2-4 ヒト及びカニクイザルにおける VEGFR-2 Ig D3 のアミノ酸配列

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

8

Biacore を用いて、ヒト、カニクイザル、ウサギ及びイヌの VEGFR-2 に対するラムシ

ルマブの親和性を検討したところ(評価資料 bTDR275)、ヒト及びサルの VEGFR-2 に

対するラムシルマブの親和性は同程度で、ウサギ及びイヌの VEGFR-2 に対する親和性

はより低かった(表 2.6.2-3)。なお、評価資料 bTDR275 で得られた Kdは 3.5 nM であっ

たが、第 2.6.2.2.1.1.1 項に示した Kd は 0.05 あるいは 0.01 nM であった(参考資料 Lu

2003 及び評価資料 1001- )。評価資料 bTDR275 の目的は各動物種の VEGFR-2 に対す

るラムシルマブの親和性を比較することであったため、より比較に適切な試験方法を用

いた。これが評価資料 bTDR275 で得られた Kd が他の試験で得られた値と大きく異なる

結果になった原因と考えられる。

表 2.6.2-3 ラムシルマブのヒト、カニクイザル、ウサギ及びイヌの VEGFR-2に対す

る結合親和性

ラムシルマブ *kon (1/Ms) *koff (1/s) *†Kd (nM)

ヒト VEGFR-2 2.8 0.1 x 104 1.0 0.1 x 10-4 3.5 0.1

カニクイザル VEGFR-2 4.0 0.1 x 104 0.97 0.03 x 10-4 2.7 0.1

ウサギ VEGFR-2 4.0 0.1 x 104 3.6 0.1 x 10-4 9.1 0.2

イヌ VEGFR-2 5.1 0.1 x 104 1.9 0.2 x 10-2 370 50

略号:Kd 解離定数、kon 結合速度定数、koff 解離速度定数

† koffを konで除した値を算出し、その平均値を Kd とした。

* データは 3 回の測定の平均値±標準誤差で示す。

評価資料 bTDR275 の表 1 を転載。

以上、ラムシルマブは VEGFR-2 に特異的かつ高い親和性で結合し、VEGF の VEGFR-

2 への結合を効果的に阻害することが示唆される。

2.6.2.2.1.1.2 VEGF-C 及び-D の VEGFR-2 への結合に対するラムシルマブの作用

評価資料:IMC04(4.2.1.1.8)

参考資料:Goldman 2007(4.2.1.1.9)、Tvorogov 2010(4.2.1.1.10)、Nilsson 2010(4.2.1.1.11)

VEGF-A(一般的に VEGF と呼称される)は VEGFR-2 の主要リガンドであるが、N 及

び C 末端切断を受けた VEGF-C 及び VEGF-D も VEGFR-2 を活性化させる。そこで、こ

れらリガンドのヒト VEGFR-2 への結合に対するラムシルマブの阻害能を in vitro で評価

した(評価資料 IMC04)。ラムシルマブは可溶性 VEGFR-2 細胞外ドメイン(VEGFR-2-

Fc)に対する VEGF-A、VEGF-C 及び VEGF-D の結合を濃度依存的に阻害した(図

2.6.2-5)。IC50はそれぞれ 2.3、0.7 及び 0.3 nM で、VEGFR-2 の各リガンドに対する親和

性の序列(VEGF-AVEGF-CVEGF-D)と一致した。一方、陰性対照の IMC-3C5

(VEGF-C 及び VEGF-D の主要受容体 VEGFR-3 に対し拮抗作用を示す抗体)は明らかな

作用を示さなかった。なお、本試験における VEGF-A の VEGFR-2 への結合に対するラ

ムシルマブの阻害作用の IC50 は、ELISA で評価した参考資料 Lu 2003 での値(0.8 nM)

の約 3 倍であるが、この差は試験法の違いを反映している可能性がある。

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9

酵素免疫測定法での検討。縦軸は 405 nm での蛍光強度を示す。ラムシルマブ(IMC-1121B)は VEGFR-2-Fc への

VEGF-A(A)、VEGF-C(B)及び VEGF-D(C)の結合を濃度依存的に阻害した。陰性対照抗体(IMC-3C5)は明

らかな作用を示さなかった(○で囲ったシンボルで示す)。各リガンド結合に対するラムシルマブの阻害能を最大

結合に対する%値として Dに示した。

96 ウェルプレートに VEGFR-2-Fc を添加し、翌朝、洗浄により非結合受容体を除去した。ラムシルマブ希釈液を各

終濃度の 2 倍濃度で調製し、ブロッキング緩衝液で終濃度(0.2 g/mL)の 2 倍濃度に調製したビオチン化リガンド

(VEGF-A、VEGF-C 又は VEGF-D)と混合した。VEGFR-2-Fc をコートしたプレートにラムシルマブ/リガンド混合

液を添加し 2 時間反応させた。洗浄後、ストレプトアビジン-Horseradish Peroxidase(HRP)を 1 時間処理し、HRP

基質による発光により結合したビオチン化リガンドを検出した。評価資料 IMC04 の図 1 を転載。

図 2.6.2-5 VEGF-A、-C 及び-D のヒト VEGFR-2-Fc への結合に対するラムシルマブの

阻害能

その他、ラムシルマブの VEGF-C に対する作用については、VEGF-C の内皮細胞活性

化(発芽、増殖)を阻害すること(参考資料 Goldman 2007; 参考資料 Tvorogov 2010)、

VEGF-C による VEGFR-2 と VEGFR-3 のヘテロ二量体形成を阻害すること(参考資料

Nilsson 2010)も報告されている。

2.6.2.2.1.1.3 ラムシルマブの細胞機能に対する作用

参考資料:Lu 2003(4.2.1.1.1)、Zhu 2003(4.2.1.1.2)、Miao 2006(4.2.1.1.12)

ラムシルマブの細胞機能に対する作用を評価した、以下に詳述する試験成績(参考資

料 Lu 2003; 参考資料 Zhu 2003; 参考資料 Miao 2006)から、ラムシルマブは血管内皮細胞

の VEGFR-2 を阻害することで血管新生を阻害することが示唆されている。

VEGF 刺激による VEGFR-2 自己リン酸化に対するラムシルマブの阻害作用を図 2.6.2-6

に示す(参考資料 Lu 2003)。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)及びヒト VEGFR-2 を

遺伝子導入したブタ大動脈内皮細胞(PAE-KDR 細胞)を VEGF で刺激すると VEGFR-2

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サイラムザ点滴静注液

10

の顕著なリン酸化が見られたが、このリン酸化をラムシルマブは用量依存的に阻害した。

いずれの細胞を用いた試験においても、ラムシルマブの効力は親抗体 IMC-2C6 よりも強

力であった(5~25倍)。

略号:HUVEC ヒト臍帯静脈内皮細胞、PAE-KDR 細胞 ヒト VEGFR-2 を遺伝子導入したブタ大動脈内皮細胞

血清飢餓細胞にラムシルマブ及び IMC-2C6 を室温で 30 分間処理後、VEGF で 15 分間刺激した。細胞を溶解させ、

ポリクローナル抗 VEGFR-2 抗体とプロイン A セファロースビーズを用いて VEGFR-2 を単離した。電気泳動後、抗

リン酸化チロシン抗体で免疫ブロッティングし増感化学発光でシグナルを検出した。参考資料 Lu 2003 の図 6 を転

載。

図 2.6.2-6 HUVEC 及び PAE-KDR 細胞における VEGF 刺激性 VEGFR-2 自己リン酸

化に対するラムシルマブ(IMC-1121)の阻害作用

内皮細胞を VEGF で刺激した際に見られる早期の細胞応答の 1 つに細胞内カルシウム

濃度変化がある。細胞内カルシウム濃度の上昇は VEGF 誘発性の血管透過性亢進及び内

皮細胞増殖に重要な役割を果たす。内皮細胞において VEGFR-2 の活性化は VEGF を介

したカルシウム動員に重要であり、ホスホリパーゼ C 経路による制御を受ける。

図 2.6.2-7 に示すように、PAE-KDR 細胞を VEGF で刺激すると顕著な細胞内カルシウ

ム動員が生じるが、これを 1121B Fabは用量依存的に阻害した(参考資料 Miao 2006)。

各濃度の 1121B Fabで得た曲線下面積から算出した IC50は約 7.3 nM であった。

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略号:PAE-KDR 細胞 ヒト VEGFR-2 を遺伝子導入したブタ大動脈内皮細胞

縦軸は蛍光強度を示す。PAE-KDR 細胞をプレートに播種し、0.1% 牛血清アルブミン含有 F-12 培地で一晩培養する

ことにより血清飢餓状態を導いた。1121B Fab 及び FLIPER カルシウム色素を 37˚C で 1 時間処理した後に、室温で

20 分間冷却した。プレートを FlexStation II 蛍光光度計に載せ、各ウェルに VEGF(10 ng/mL)を添加した直後から

各ウェルの蛍光強度を測定しカルシウム変動を調べた。参考資料 Miao 2006の図 3 を転載。

図 2.6.2-7 PAE-KDR 細胞における VEGF 誘発性細胞内カルシウム動員に対する

1121B Fab の阻害作用

HUVEC を用いて、VEGF による内皮細胞増殖に対するラムシルマブの阻害作用を評価

した(参考資料 Zhu 2003; 図 2.6.2-8)。評価した 3つの抗 VEGFR-2 抗体のうちラムシル

マブが VEGFR-2 に対して最も高い親和性を有するが(参考資料 Zhu 2003)、これに一

致して、ラムシルマブの増殖阻害作用は最も強く、検討した他の抗体(IMC-1C11 及び

IMC-2C6)の EC50 は約 1.5 nM であったのに対し、ラムシルマブの EC50 は約 0.7 nM で

あった。陰性対照として用いた IMC-C225(セツキシマブ、抗ヒト EGFR 抗体)は明ら

かな作用を示さなかった。

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12

略号:HUVEC ヒト臍帯静脈内皮細胞

縦軸は阻害率を示す(duplicate の平均値、複数回実施した実験の代表)。増殖因子を含まない培地で培養した

HUVEC に種々濃度の抗 VEGFR-2 抗体を 37˚C で 1 時間処理した後に、VEGF を終濃度 16 ng/mL となるように各ウ

ェルに添加した。18 時間後、各ウェルに[3H]-チミジンを添加し、さらに 4 時間インキュベートした。細胞を採取し、

DNA に取り込まれた放射能をシンチレーションカウンターで計測した。参考資料 Zhu 2003 の図 2b を転載。

図 2.6.2-8 HUVEC における VEGF 誘発性細胞増殖に対するラムシルマブ(IMC-1121)

の阻害作用

ヒト白血病細胞株 HL60、HEL及び U937 は VEGF刺激に反応し遊走することが知られ

ている。図 2.6.2-9のとおり、ラムシルマブ及び他の抗 VEGFR-2 抗体(IMC-1C11、IMC-

2C6)は、VEGFR-2 を発現する HL60 細胞及び HEL細胞に対しては VEGF 誘発性の遊走

を用量依存的に阻害した(参考資料 Zhu 2003; それぞれ図 2.6.2-9、A 及び B)が、

VEGFR-2 を発現しない U937 細胞の遊走は阻害しなかった(図 2.6.2-9、C)。一方、抗

VEGFR-1 抗体の MAB612 は HEL 細胞と U937 細胞の VEGF 誘発性遊走を阻害した(そ

れぞれ図 2.6.2-9、B 及び C、HL60 細胞では評価せず)。陰性対照として用いた IMC-

C225 は明らかな作用を示さなかった。以上のデータから、ラムシルマブは VEGF の

VEGFR-1 を介した作用には影響を及ぼさず、VEGFR-2 を介した作用を選択的に抑制す

ることが示唆された。

Antibody concentration (nM)

0.1 1 10 100

Pe

rcen

t o

f in

hib

itio

n

0

20

40

60

80

100

IMC-1C11

IMC-2C6

IMC-1121

IMC-C225

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13

縦軸は遊走した細胞数を示す(平均値±標準偏差、triplicate)。MAB612 は HL60 細胞では評価しなかった。白血病

細胞遊走は改変ボイデンチャンバーを用いて評価した。ポリカーボネート製細胞培養インサート内で白血病細胞と

種々濃度の抗体を 37˚C、30 分間インキュベートした。その後、無血清培地を入れた 24 ウェルプレートのウェルに

インサートを入れ、VEGF の存在下、37˚C で 4 時間インキュベートした。インサートの膜を透過した細胞を回収し、

自動細胞計数装置で計測した。参考資料 Zhu 2003 の図 4 を転載。

図 2.6.2-9 VEGF 刺激性ヒト白血病細胞遊走に対するラムシルマブ(IMC-1121)の阻

害作用

H E L

Contro l V E G F 40 10 2 .5 0 .6

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000 IM C -1 C 1 1

IM C -2 C 6

IM C -1121

IM C -C 2 2 5

M A B 6 1 2

B

U 93 7

A n tib o d y (n M )

C o n tro l V E G F 4 0 1 0 2.5 0 .6

0

1 0 0 0

2 0 0 0

3 0 0 0

4 0 0 0

5 0 0 0

C

HL60

Control VEGF 40 10 2.5 0.6

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

A

Num

ber

ofcells

mig

rate

d

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14

以上、ラムシルマブは VEGFR-2 を介して VEGF により誘発される様々な生物学的反

応を効果的に阻害することが示され、血管内皮細胞の VEGFR-2 を阻害することで血管

新生を阻害することが期待される。

2.6.2.2.1.1.4 ラムシルマブによる VEGFR-2 の内在化

評価資料:IMC02(4.2.1.1.13)

受容体を標的とする抗体は、リガンド結合阻害に加えて、エンドサイトーシスにより

細胞膜受容体を減少させる可能性があるが、PAE-KDR 細胞及びヒト初代培養内皮細胞

(大動脈内皮細胞及び皮膚微小血管内皮細胞)を用いた試験において、ラムシルマブは

細胞膜に発現した VEGFR-2 を減少させることが示されている(評価資料 IMC02)。最

初の検討では、VEGFR-2 を高発現する PAE-KDR 細胞が用いられた。PAE-KDR 細胞に

ラムシルマブを 24 時間処理したところ、細胞膜受容体の減少が見られた(図 2.6.2-10)。

高濃度での作用は中間濃度(25~400 nM)よりも弱い傾向が見られたが、これは受容体

と架橋結合(抗体が 2 個の受容体に結合)を形成する際に受容体標的抗体はより効率的

に受容体を内在化するためと推察される。ヒト初代培養内皮細胞を用いた検討でも、ラ

ムシルマブ処理により、細胞膜に発現した VEGFR-2 の減少が見られたが、PAE-KDR 細

胞での検討と同じく、高濃度で作用の減弱が見られた。以上のデータから、ラムシルマ

ブは VEGF リガンドを介した VEGFR-2 シグナル伝達阻害に加えて、細胞膜受容体の内

在化により VEGFR-2 の機能を阻害する可能性があることが示唆される。

略号:PAE-KDR cell ヒト VEGFR-2 を遺伝子導入したブタ大動脈内皮細胞

縦軸は抗 keyhole limpet hemocyanin(KLH)抗体の反応を 100%とする蛍光強度を示す。PAE-KDR 細胞を培養したプ

レートにラムシルマブ(IMC-1121B)を規定濃度で添加し、24 時間インキュベートした。細胞を回収し、洗浄後、

染色用培地に再懸濁した。細胞膜に発現した VEGFR-2 の検出にはラムシルマブを用いた。すなわち、ラムシルマブ

又はヒト抗 KLH 抗体で細胞を 2 時間処理し、洗浄後、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗ヒト IgG

抗体で染色し、ハイスループットフローサイトメーターで VEGFR-2 を検出した。評価資料 IMC02の図 1 を転載。

図 2.6.2-10 PAE-KDR 細胞におけるラムシルマブによる VEGFR-2 の内在化

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

15

2.6.2.2.1.1.5 ラムシルマブのエフェクター活性

評価資料:3.2.S.3

IgG1 あるいは IgG3 サブクラスに属する抗体は、その Fc 領域が Fc 受容体[FcRIIIa

(CD16a)、FcRII(CD32)及び FcRI(CD64)]又は他の Fc 結合タンパク質[血清補

体依存性細胞障害(CDC)複合体など]と結合することにより、エフェクター活性を示

すことが知られている。そこで、ラムシルマブが補体成分 C1q 又は Fc受容体(CD64、

CD32b 及び CD16a)への作用を介してエフェクター活性を示す可能性を in vitro結合アッ

セイ及び細胞を用いた抗体依存性細胞障害活性(ADCC)アッセイにより評価した。

CD64 及び C1q への結合能は、それぞれ Horseradish Peroxidase(HRP)を結合させた

F(ab)’2 特異的抗 IgG 抗体及び抗ヒト C1q抗体を用いた ELISAで評価した。CD32、CD16

及び FcRn 受容体への結合能は Biacore で評価した。その結果、ラムシルマブは C1q 及び

Fc受容体への結合能を示したが(図 2.6.2-11 及び図 2.6.2-12)、これは IgG1 抗体に予測

される結果であった。

o ラムシルマブ標準物質; □ プロセス C0 原薬; Δ プロセス C1 原薬

図 2.6.2-11 ラムシルマブの C1q に対する結合能

Ab Concentration (nM)

0.1 1 10 100 1000

0

0.5

1

1.5

2

C1q Binding

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

16

o ラムシルマブ標準物質; □ プロセス C0 原薬; Δ プロセス C1原薬

図 2.6.2-12 ラムシルマブの CD64 に対する結合能

エフェクター細胞として Jurkat-NFATレポーター細胞、標的細胞として HT-144 細胞及

び P/K/G 細胞を用いた、ADCC レポーター遺伝子アッセイによりラムシルマブの ADCC

活性を評価した。その結果、ラムシルマブは評価した最大濃度においても明らかな

ADCC 活性を示さなかった(図 2.6.2-13)。一方、HCC-827 細胞を用いた類似の試験条

件下で、抗 EGFR抗体(陽性対照)は顕著な ADCC活性を示した。

ラムシルマブの活性は HT-144 細胞又は P/K/G 細胞(VEGFR-2 を遺伝子導入したブタ内皮細胞)で、抗 EGFR 抗体

の活性は HCC-827細胞でそれぞれ評価。

図 2.6.2-13 ラムシルマブ及び抗 EGFR 抗体の ADCC 活性

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

17

ラムシルマブには Fc 結合タンパク質に対する親和性を抑制するようなアミノ酸配列の

改変は施されていないため、他の IgG1 抗体と同様に、ラムシルマブは in vitro 結合アッ

セイにおいて Fc受容体及び C1q に対する結合能を示した。しかしながら、細胞を用い

たアッセイでは明らかな ADCC 活性を示さなかったことから、ラムシルマブがエフェク

ター活性を示す可能性は低いと結論づけた。なお、ラムシルマブは C1q に結合すること

から、VEGFR-2 発現細胞(HUVEC 細胞、HT-144 細胞又は VEGFR-2 を遺伝子導入した

ブタ内皮細胞)を用いて CDC 活性を評価したが、細胞表面での C1q-ラムシルマブ-

VEGFR-2 複合体の形成は認められなかった。

2.6.2.2.1.1.6 ラムシルマブのエピトープ

評価資料:3.2.S.3

ラムシルマブの Fab フラグメントと VEGFR-2 のドメイン 3を共結晶化し、ラムシルマ

ブのエピトープを評価した。Fab フラグメントと VEGFR-2 のドメイン 3 の接触アミノ酸

残基を図 2.6.2-14 に示す。

略号:CDR = 相補性決定領域、KDR ヒト VEGFR-2、1121B ラムシルマブ

直線、点線及び赤-青色線は、それぞれ疎水性相互作用、水素結合及び電荷間相互作用を示す。

図 2.6.2-14 ラムシルマブ(Fab フラグメント)と VEGFR-2(ドメイン 3)間での

接触アミノ酸残基

Page 25: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

18

2.6.2.2.1.2 DC101 を用いた In Vitro 薬効薬理試験

ラムシルマブのマウス VEGFR-2 に対する結合能は低いことから、マウスを用いた in

vivo 試験には DC101 をサロゲート抗体として用いる必要があった。DC101 はマウス

VEGFR-2 の細胞外ドメインに結合し、VEGF-A 及び VEGF-C の VEGFR-2 への結合に強

く拮抗する。DC101を用いた in vitro薬効薬理試験の一覧を表 2.6.2-4 に示す。

表 2.6.2-4 DC101 の In Vitro 薬効薬理試験の一覧

試験目的 評価項目 評価系 資料

結合/阻害

能の評価

マウス VEGFR-2への結合能 Biacore 評価資料 1001-

ELISA 評価資料 1001-

Flk-1遺伝子導入 NIH 3T3細

参考資料 Rockwell 1995

マウス VEGFR-1への結合能 ELISA 参考資料 Luttun 2002

VEGF-C のマウス VEGFR-3

への結合に対する阻害能

ELISA 参考資料 Pytowski 2005

細胞機能の

評価

VEGF の VEGFR-2リン酸化

に対する阻害能

Flk-1遺伝子導入 NIH 3T3細

参考資料 Rockwell 1995

VEGF-D の VEGFR-2 活性化

に対する阻害能

マウスリンパ管内皮細胞 参考資料 Karnezis 2012

略号:Biacore 表面プラズモン共鳴分析法、ELISA 酵素免疫測定法、Flk-1 Fetal liver kinase 1(マウス VEGFR-2)

2.6.2.2.1.2.1 DC101 の In Vitro 結合試験

評価資料:1001- (4.2.1.1.3)

参考資料:Rockwell 1995(4.2.1.1.14)、Luttun 2002(4.2.1.1.15)、Pytowski 2005(4.2.1.1.16)

ELISA 又は Biacore を用いた in vitro 試験により DC101 のマウス及びヒトの VEGFR-2

に対する結合能を評価した(評価資料 1001- )。ELISA を用いた評価においてラムシ

ルマブはヒト VEGFR-2(KDR)に結合したが(EC50:0.16 nM)、DC101 は明らかな結

合を示さなかった(図 2.6.2-15の左図)。一方、DC101 はマウス VEGFR-2(Flk-1 Fetal

liver kinase 1)に結合したが(EC50: 0.28 nM)、ラムシルマブは明らかな結合を示さなか

った(図 2.6.2-15 の右図)。Biacore を用いた検討での DC101 のマウス VEGFR-2 への Kd

は 0.11 nM であった(表 2.6.2-5)。

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

19

略号:KDR Kinase insert domain-containing receptor(ヒト VEGFR-2)、Flk-1 Fetal liver kinase 1(マウス VEGFR-2)

縦軸は 450 nmでの吸光度を示す。評価資料 1001- の図 1 及び 2 を転載。

図 2.6.2-15 DC101及びラムシルマブ(IMC-1121)のヒト及びマウス VEGFR-2 に対

する結合能(ELISA での評価)

表 2.6.2-5 DC101の Flk-1 に対する結合親和性(Biacoreを用いた検討)

抗体 標的*kon

(104 M-1S-1)

*koff

(10-4 S-1)

*Rmax

(RU)

*†Kd

(nM)

DC101 Flk-1(マウス VEGFR-2) 11.0 0.12 45 0.11

略号:Flk-1 Fetal liver kinase 1(マウス VEGFR-2)、Kd 解離定数、kon 結合速度定数、koff 解離速度定数、

Rmax 最大結合量、RU レゾナンスユニット

* データは 1 回の測定の値を示す。

† koffを konで除した値を算出し、Kdとした。

評価資料 1001- の表 1 を転載。

また、DC101は Flk-1 遺伝子を導入した NIH 3T3 細胞(C411)に結合するが、抗 Fetal

liver kinase 2(Flk-2)抗体(23H7)は明らかな結合を示さなかったことが報告されてい

る(参考資料 Rockwell 1995; 図 2.6.2-16)。

略号:Flk-1 Fetal liver kinase 1(マウス VEGFR-2)、Flk-2 Fetal liver kinase 2

縦軸は細胞数を横軸は蛍光強度をそれぞれ示す。Flk-1/Fms 遺伝子を導入した NIH 3T3 細胞(C411)と DC101 又は

23H7(抗 Flk-2 抗体)を氷上で 60 分間インキュベートした。細胞を洗浄した後に FITC 結合ヤギ抗マウス IgG とイ

ンキュベートし、洗浄後、フローサイトメトリーにて抗体結合を分析した。参考資料 Rockwell 1995の図 1 を転載。

図 2.6.2-16 Flk-1 遺伝子導入 NIH 3T3細胞に対する DC101の結合能

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

20

DC101 のマウス VEGFR-2 に対する選択性も示されている。すなわち、DC101 はマウ

ス VEGFR-1 には結合せず(参考資料 Luttun 2002)、マウス VEGFR-2に対する VEGF-A

及び VEGF-C の結合を阻害するが、マウス VEGFR-3 に対する VEGF-C の結合は阻害し

ないこと(参考資料 Pytowski 2005)が示されている。なお、マウス VEGF-D はマウス

VEGFR-3 にのみ結合するため、VEGF-D の VEGFR-2 への結合に対する DC101 の拮抗作

用は検討していない。

2.6.2.2.1.2.2 DC101の細胞機能に対する作用

参考資料:Rockwell 1995(4.2.1.1.14)、Karnezis 2012(4.2.1.1.17)

Flk-1 遺伝子を導入した NIH 3T3 細胞(C411)を用いた試験(参考資料 Rockwell 1995)

において、DC101 は VEGF 刺激によるマウス VEGFR-2 の自己リン酸化を阻害した(図

2.6.2-17)。

1 2 3 4 5 6 7 8 9

DC101 の存在下(レーン 1~4)又は非存在下(レーン 5~8)で、Flk-1/Fms遺伝子を導入した NIH 3T3細胞(C411)

を VEGF で刺激した。DC101 のみを作用させた群を陰性対照とした(レーン 9)。参考資料 Rockwell 1995 の図 5A

を転載。

図 2.6.2-17 Flk-1 遺伝子導入 NIH 3T3細胞における VEGF 刺激性 VEGFR-2 自己リン

酸化に対する DC101の阻害能

リンパ管内皮細胞は VEGFR-2 と VEGFR-3 を共に発現することが知られている。担癌

マウスの集合リンパ管内皮細胞(cLEC)を用いた in vitro試験において、cLECを VEGF-

D で刺激すると VEGFR-2 のリン酸化が見られたが、DC101 の前処理により、このリン

酸化は阻害された(参考資料 Karnezis 2012)。なお、抗 VEGFR-3 抗体(mF4-31C1)の

前処理でも同様の阻害が認められたことから、cLEC では VEGF-D は主に VEGFR-2 と

VEGFR-3 のヘテロ二量体を形成することが示唆される。

以上、DC101 は VEGF のマウス VEGFR-2 への結合を効果的に阻害するが、ヒト

VEGFR-2 への結合は阻害しないことが示された。DC101 は、VEGFR-2 を標的とするラ

ムシルマブの薬効をヒト腫瘍移植マウスモデルで評価するのに適したサロゲート抗体で

ある。

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

21

2.6.2.2.2 In Vivo 薬効薬理試験

2.6.2.2.2.1 作用機序に関する試験

評価資料:IMC03(4.2.1.1.31)

参考資料:Bruns 2000(4.2.1.1.18)、Sweeney 2002(4.2.1.1.19)、Krix 2003(4.2.1.1.20)、Franco

2006(4.2.1.1.21)、Cheung 2007(4.2.1.1.22)、Jugold 2008(4.2.1.1.23)、Stantz 2011

(4.2.1.1.24)、Kiessling 2004(4.2.1.1.25)、Hansen-Algenstaedt 2000(4.2.1.1.26)、Pàez-Ribes

2009(4.2.1.1.27)、Tonra 2009(4.2.1.1.28)、Shaked 2008(4.2.1.1.29)、Casanovas 2005

(4.2.1.1.30)

VEGF-A(一般的に VEGF と呼称される)は VEGFR-1 及び VEGFR-2 に結合するが、

シグナルは主に VEGFR-2 を介して伝達される。増殖能の高い腫瘍で活発に発芽してい

る未熟な新生血管の内皮細胞の生存に VEGF は重要な役割を果たしている(Ferrara

1995)。抗 VEGFR-2 抗体は内皮細胞に作用し発芽の抑制やアポトーシスを誘導し、血

管密度を減少させることが予想される。血管密度の減少により腫瘍血管の血流量が減少

し低酸素状態が誘発されることにより、腫瘍細胞の増殖速度の低下及びアポトーシスが

生じ、その結果、腫瘍の増殖が抑制される。以上の仮説はマウス腫瘍モデルで DC101 の

作用を評価した以下の公表論文で支持される。

マウス転移性腫瘍異種移植モデルに DC101 を投与すると血管内皮細胞にアポトーシス

が誘導され、その約 1 週間後に腫瘍細胞にもアポトーシスが誘導された(参考資料

Bruns 2000; 参考資料 Sweeney 2002)。また、担癌マウスに DC101 を投与すると腫瘍の

微小血管密度が減少した後に腫瘍増殖が抑制され、この作用は血流減少に相関すること

が複数の試験で示されている。これらの試験では、超音波ドップラー法(参考資料 Krix

2003; 参考資料 Franco 2006; 参考資料 Cheung 2007; 参考資料 Jugold 2008)、ダイナミッ

ク造影断層撮影法(参考資料 Cheung 2007; 参考資料 Stantz 2011)あるいはダイナミック

造影磁気共鳴画像法(参考資料 Kiessling 2004)が用いられた。図 2.6.2-18 に DC101 を投

与した際に見られた腫瘍血流減少の一例を示す(参考資料 Franco 2006)。

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サイラムザ点滴静注液

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MDA-MB-231 細胞(ヒト乳癌)を、重症複合免疫不全の雌 CB-17 マウスの乳腺脂肪体に同所性に移植した(N10)。

試験 27 日目から、DC101(800 g/マウス)を 3 週間投与(週 2 回)した。投与期間中に週 1 回、高周波数超音波生

体顕微鏡を用いて画像分析した。A は代表的な超音波画像を示す(赤画素:検出された血流領域)。B は検出され

た血流領域の腫瘍領域に対する比率を示す(オープンカラム:対照群、クローズドカラム:DC101 投与群)。いず

れの測定時点でも対照群との有意な差が見られた(*p0.05; Student の t検定)。参考資料 Franco 2006 の図 3 を転載。

図 2.6.2-18 DC101 投与による腫瘍血流の減少(高周波数超音波法での検出)

皮下移植チャンバー内で増殖させた腫瘍の酸素レベルを非侵襲性に評価した試験にお

いて、DC101 は腫瘍の酸素レベルを低下させ、腫瘍血管を退縮させた(参考資料

Hansen-Algenstaedt 2000 )。担癌マウスを用いた試験でも、低酸素プローブ

(pimonidazole)を用いた検討(低酸素状態にある組織に結合した pimonidazole を免疫組

織化学的に検出)により、DC101 が腫瘍を低酸素状態にすることが示されている(参考

資料 Franco 2006; 参考資料 Pàez-Ribes 2009)。さらに、低酸素状態で安定化される転写

因子、Hypoxia-inducible factor 1(HIF-1)の発現レベルで腫瘍の低酸素状態を評価し

た試験において、DC101 はマウス腫瘍モデルにおける HIF-1レベルを増加させたこと

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

23

が報告されている(参考資料 Franco 2006; 参考資料 Tonra 2009)。図 2.6.2-19 に腫瘍の酸

素状態及び HIF-1の発現に対する DC101 の作用の一例を示す(参考資料 Franco 2006)。

MDA-MB-231 細胞(ヒト乳癌)を、重症複合免疫不全の雌 CB-17 マウスの乳腺脂肪体に同所性に移植した(N)。

試験 27 日目から、DC101(800 g/マウス)を 3 週間投与(週 2 回)した。A は低酸素領域を pimonidazole で検出し

た対照群(左)及び DC101 投与群(右)の代表的な染色像を示す(矢印で示した褐色領域が低酸素領域)。ヘマト

キシリンで対比染色した(100 倍)。乳腺脂肪体に特徴的な脂肪細胞の存在が確認される。グラフは低酸素領域の

範囲を定量化した結果を示す(*** p0.0005; Student の t 検定)。B は PBS(左)又は DC101(右)を投与した個体

の腫瘍から調製した核タンパク質抽出物の HIF-1に対するウェスタンブロッティング像を示す(各レーンは各個体

のデータを示す)。対照には HIF-1及び-アクチンを用いた。DC101 を投与した個体の腫瘍で HIF-1レベルが増加

した。C は対照群(左)及び DC101 投与群(右)の代表的な HIF-1の免疫染色像を示す(褐色部分は HIF-1陽性

細胞)。ヘマトキシリンで対比染色した(200 倍)。参考資料 Franco 2006 の図 4 を転載。

図 2.6.2-19 腫瘍の酸素状態及び HIF-1α 発現に対する DC101 の作用

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

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腫瘍血管は既存の血管から新たに血管分岐が伸長すると考えられてきたが、最近、骨

髄由来の循環血管内皮前駆細胞(CEP)が腫瘍に取り込まれ血管内皮細胞に分化して血

管新生に関与する別の機序が提唱されている。パクリタキセルなど特定の化学療法剤を

マウスに投与すると骨髄から血中に CEP が急速に動員されるが、これを DC101 は有意

に減少させたことが報告されている(参考資料 Shaked 2008)。CEP は VEGFR-2 を発現

しているため、抗 VEGFR-2 抗体は CEP の作用を抑制することにより抗腫瘍効果を示す

可能性が示唆される。

ラムシルマブはげっ歯類の VEGFR-2 には結合せず、標準的なモデルではその血管新

生抑制作用を評価できないため、ヒト細胞を用いた in vivo 試験を実施した(評価資料

IMC03)。Matrigel 中でヒト血管内皮前駆細胞(Endothelial Colony Forming Cells:ECFC)

をヒト脂肪由来幹細胞(Adipose Derived Stem Cells:ADSC)と混合し、この混合物をマ

ウスの皮下に移植した。ECFC と ADSC は Matrigel マトリクス中で内皮細胞束を形成す

る。Matrigel マトリクス中には赤血球の潅流が見られ、マウスの皮膚血管系と結合した

毛細血管ネットワークの形成が確認された。Matrigel 混合物を皮下移植する 5 時間前に

ラムシルマブを 10 mg/kg の用量で腹腔内投与したところ、毛細血管ネットワークの形成

が阻害された(図 2.6.2-20)。

縦軸はヘモグロビン濃度を示す(平均値±標準誤差、N10)。ラムシルマブ(IMC1121b)はヘモグロビン濃度を

有意に低下させた(p0.000021)。ヒト血管内皮前駆細胞及びヒト脂肪由来幹細胞を用いて脈管形成の in vivo モデ

ルを作製した。Matrigel中で細胞を混合し雌胸腺欠損ヌードマウスに皮下投与した。投与の 5 時間前にラムシルマブ

(IMC1121b)又は対照抗体(hIgG4)を 10 mg/kg の用量でマウスに投与した。6 日後に Matrigel プラグを採取し、

ヘモグロビン量を QuantiChromヘモグロビンアッセイキットで測定した。評価資料 IMC03の図 1 を転載。

図 2.6.2-20 ヒト血管内皮前駆細胞とヒト脂肪由来幹細胞を用いたマウス血管新生モデ

ルにおけるラムシルマブ(IMC1121b)の作用

以上、抗 VEGFR-2 抗体であるラムシルマブは血管新生阻害作用により腫瘍増殖を抑

制することが示唆された。

血管新生阻害薬は腫瘍に虚血を誘導するが、特定の条件下で、腫瘍の悪性度を増悪さ

せる可能性が担癌マウスを用いた試験から示唆されている。これらには DC101 を用いた

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

25

公表論文での試験が含まれる。例えば、膵神経内分泌腫瘍のモデルマウスに DC101 を投

与すると腫瘍の虚血と転移の増加が認められた(参考資料 Pàez-Ribes 2009)。別の試験

では、膵島細胞腫瘍のモデルマウスに DC101 を投与すると VEGFR-2 阻害による抗腫瘍

効果に対する抵抗性や低酸素で誘導される増殖因子(VEGF-A、アンジオポイエチン及

びエフリンなど)の発現が増強されることが示されている(参考資料 Casanovas 2005)。

これらの公表論文は血管新生阻害薬による虚血により癌の悪性度が増強される可能性を

示唆するが、ラムシルマブの臨床での作用を予測する上での意義は明らかではなく、ラ

ムシルマブのいずれの第 III 相臨床試験でも関連所見は報告されていない。

2.6.2.2.2.2 ヒト癌のマウス異種移植モデルにおける DC101 の抗腫瘍効果

2.6.2.2.2.2.1 試験方法及びデザインの概要

ラムシルマブの臨床開発の妥当性を支持する目的で、様々なヒト癌細胞のマウス移植

モデルを用いて DC101 の抗腫瘍効果を評価した。これらの試験は、以下の試験方法に従

い 社で実施された( 社で実施した胃癌移植モデル試験で用い

た方法は第 2.6.2.2.2.2.3.1 項を参照)。

癌細胞の懸濁液を Matrigel と 1:1 で混合し、雌の免疫不全(胸腺欠損)マウスの左側

腹部皮下に移植した(第 2.6.2.2.2.2.3.2 項に示す胃癌移植モデル試験では Matrigel を使用

せず)。あらかじめ、細胞株ごとに増殖曲線を求め腫瘍接種に関する標準手順書を作成

した。腫瘍体積が特定の大きさ(通常 300~400 mm3)に達したときに担癌マウスを腫瘍

体積で無作為化し、各投与群に割り付けた。開発初期に実施した用量反応試験等の結果

に基づき、40 mg/kg の週 3 回腹腔内投与を標準的な投与法とした。事前に規定した時点

(病理組織学的評価に供するため、など)あるいは評価項目が満たされた時点(腫瘍増

殖が統計学的有意に阻害された、など)まで投与を継続した。試験計画書に規定した頻

度(通常週 2 回)で腫瘍体積を測径器で測定し体重を記録した。対照群(C)に対する

被験薬群(T)の腫瘍体積の比(T/C%)を求め抗腫瘍効果を評価した。腫瘍増殖及び体

重変化の群間比較(2 群又はそれ以上)には反復測定分散分析(Repeated Measures

ANOVA)を用いた。なお、被験薬投与前の腫瘍体積は差し引かなかったため抗腫瘍効

果は過小評価されている。

2.6.2.2.2.2.2 ヒト膵臓癌マウス異種移植モデルを用いた Proof-of-Concept 試験

評価資料:2212- (4.2.1.1.32)

ラムシルマブの臨床試験に先立ち、Proof-of-Concept 試験として、ヌードマウスを用い

たヒト膵臓癌異種移植モデルにおける DC101 の有効性及び薬物動態を評価した(評価資

料 2212- )。

雌ヌードマウスに BxPC-3(ヒト膵臓癌細胞)を皮下移植した。腫瘍体積が約 300 mm3

に達したときに担癌マウスを各投与群に腫瘍体積で無作為化した。各群に溶媒(生理食

塩液)又は DC101(4、15 又は 40 mg/kg)を週 3 回、計 17 回腹腔内投与した。試験最終

日まで腫瘍体積を測定し、最終投与の 0、3、6、24、48 及び 168 時間後に血液を採取し

血漿中 DC101 濃度を測定した。

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

26

溶媒対照群との比較で、DC101 は検討したすべての用量で腫瘍増殖を有意に阻害した

(いずれも p0.0005、図 2.6.2-21)。4 mg/kg 群の腫瘍体積は 15 及び 40 mg/kg 群と比較

し有意に大きかった(p0.003)。最終測定時点(試験 36 日目)での腫瘍体積の T/C%は、

4、15 及び 40 mg/kg群でそれぞれ 51%、42%及び 35%であった。

縦軸は腫瘍体積を示す(平均値±標準誤差、N12)。* p0.0005(溶媒対照群との比較)。

# p0.003(15 及び 40 mg/kg投与群との比較)。評価資料 2212- の図 1 を転載。

図 2.6.2-21 BxPC-3 膵臓癌に対する DC101の抗腫瘍効果

血漿中 DC101 濃度を表 2.6.2-6 に示す。4 mg/kg 群の定常状態における血漿中濃度

[AUC(0-48hr)/48]は 22 g/mL であった。最終投与前及び最終投与 48 時間後のトラフ濃

度はそれぞれ 4 及び 18 g/mLであった。DC101の抗腫瘍効果を考慮すると、本モデルに

おいて DC101 が 50%以上の腫瘍増殖阻害を示すには血漿中濃度がおよそ 18 g/mL 以上

に維持される必要があることが示唆された。

表 2.6.2-6 BxPC-3 膵臓癌異種移植マウスにおける血漿中 DC101濃度

最終投与後の時間

(時間)

血漿中 DC101濃度(g/mL)

4 mg/kg 15 mg/kg 40 mg/kg

0 4 120, BLQ 620, 1780

3 10, 34 375, 460 750, 850

6 12, 62 360, 420 950, 850

24 14, 22 380, 380 550, 850

48 4, 32 80, 800 BLQ, 800

168 BLQ, BLQ 10, 80 34, 76

略号:BLQ 定量限界未満

データは各個体(各群 1 又は 2 匹)の測定値。評価資料 2212- の表 1 を転載。

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LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

27

以上、本試験はサロゲート抗体(DC101)を用いた評価ではあるものの、固形癌異種

移植モデルに抗 VEGFR-2抗体を投与すると腫瘍増殖が減少することが示唆される。

2.6.2.2.2.2.3 ヒト胃癌のマウス異種移植モデルにおける DC101 の抗腫瘍効果

2.6.2.2.2.2.3.1 DC101 の単独投与試験

評価資料:5538- (4.2.1.1.33)

胃癌患者由来腫瘍組織片を用いたマウス異種移植モデル( モデル)における

ラムシルマブ単独投与時の抗腫瘍効果を 社にて評価した(評価資料 5538- )。

直径 2~4 mmの腫瘍組織片を雌 BALB/c ヌードマウス(6~8 週齢、体重 18~22 g)の右

脇腹に皮下移植した。腫瘍体積が約 150 mm3(132~193 mm3)に達したとき、担癌マウ

スを腫瘍体積で各投与群に無作為化した(各群 7~8 匹)。担癌マウスに陰性対照(ヒト

IgG)又は DC101(40 mg/kg)を試験 21 日目まで週 3 回腹腔内投与した。体重及び腫瘍

体積を週 2 回、測定した。最終投与の 24 時間後に腫瘍重量を測定した。以下の式で腫瘍

体積(主要評価項目)及び腫瘍重量(副次的評価項目)の T/C%を算出し、抗腫瘍効果

の指標とした。

T/C % 100 × ΔT/ΔC

ΔT 試験最終日での平均値 − 投与開始日での平均値(DC101 投与群)

ΔC 試験最終日での平均値 − 投与開始日での平均値(陰性対照群)

DC101 単独投与時の抗腫瘍効果を表 2.6.2-7に示す。DC101 は移植した腫瘍組織片ごと

に異なる抗腫瘍効果を示し、T/C%が 50%以下かつ p 値が 0.05 未満であった腫瘍組織片

は 17 種のうちの 7 種であった(腫瘍体積)。体重への明らかな影響は認められず、

DC101 の忍容性は良好であった。

従来の樹立細胞株を用いた異種移植モデルと比べ、 モデルはがん患者の病変

の組織学的特徴や遺伝子発現プロファイルをより正確に反映する可能性がある。一方で、

個々の患者から採取した腫瘍組織片を用いるモデルは遺伝的に不均質であり、抗癌剤に

対し異なる反応性を示すことがしばしば認められる。本試験でも明確な抗腫瘍効果がす

べての移植モデルで認められはしなかったが、本成績は胃癌を対象とする臨床試験でラ

ムシルマブの有効性を検証する妥当性を支持するものであった。

Page 35: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

28

表 2.6.2-7 胃癌患者由来腫瘍組織片を用いたマウス異種移植モデルにおける DC101 の

抗腫瘍効果

報告書番号 腫瘍組織片投与開始時

の腫瘍体積(mm3)

匹腫瘍体積 腫瘍重量

T/C% Pa T/C% pa

LLI-FTE-C011620 .S2.3 GAM098 150 8 68 0.033* 70 0.11

LLI-FTE-C011620 .S2.5 GAM037 180 7 58 0.037* 55 0.03*

LLI-FTE-C011620 .S2.6 GAM019 150 8 43 0.001* 42 0.005*

LLI-FTE-C011620 .S2.7 GAM016 186 8 68 0.508 59 0.53

LLI-FTE-C011620 .S2.8 GAF087 167 8 17 <0.001* 14 0.004*

LLI-FTE-C011620 .S2.9 GAM044 158 8 77 0.29 66 0.09

LLI-FTE-C011620 .S2.10 GAM046 167 8 55 0.004* 48 0.001*

LLI-FTE-C011620 .S2.12 GAF055 147 8 37 0.026* 35 0.012*

LLI-FTE-C011620 .S2.13 GAM110 150 8 47 0.003* 40 0.002*

LLI-FTE-C011620 .S2.14 GAM060 155 8 50 0.114 53 0.39

LLI-FTE-C011620 .S2.15 GAM119 154 8 52 0.072 59 0.140

LLI-FTE-C011620 .S2.16 GAF023 155 8 94 0.99 91 0.046*

LLI-FTE-C011620 .S2.17 GAF114 150 8 34 0.016* 30 <0.001*

LLI-FTE-C011620 .S2.18 GAM022 152 8 25 0.029* 21 <0.001*

LLI-FTE-C011620 .S2.19 GAM025 153 8 71 0.122 81 0.51

LLI-FTE-C011620 .S2.21 GAM139 193 8 49 0.005* 44 0.023*

LLI-FTE-C011620 .S2.23 GAM093 132 8 57 0.067 47 0.013*

略号:T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比a 統計学的有意水準は p<0.05(ANOVA後の Dunnett 検定)

これらの報告書は評価資料 5538- に添付されている。

2.6.2.2.2.2.3.2 DC101 とパクリタキセルの併用投与試験

評価資料:5569- (4.2.1.1.34)、5634- (4.2.1.1.35)

参考資料:Sweeney 2002(4.2.1.1.19)、Shaked 2008(4.2.1.1.29)、Inoue 2000(4.2.1.1.36)

ヒト胃癌細胞株(MKN-45)を用いたマウス異種移植モデルを用いて、DC101 をパク

リタキセルと併用投与した際の抗腫瘍効果を検討した(評価資料 5569- ; 評価資料

5634- )。20 mg/kgの用量で DC101(週 2 回)又はパクリタキセル(週 1回)を単独投

与すると顕著な腫瘍増殖阻害が見られ、同用量の併用投与では明らかな相加作用は認め

られなかった(評価資料 5569- ; 図 2.6.2-22)。両薬剤の用量を 10 mg/kg に減量したと

ころ、単独投与時の抗腫瘍効果はいずれも減弱した(評価資料 5634- ; 図 2.6.2-22)。

同用量の併用投与による相加作用が示唆されたが、単独投与時との比較で統計学的有意

差は認められなかった(DC101 及びパクリタキセル単独投与時との比較でそれぞれ

p0.076 及び 0.066)。

Page 36: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

29

評価資料 5569- :DC101(20 mg/kg、週 2 回)又はパクリタキセル(20 mg/kg、週 1 回)の単独投与により MKN-

45 の増殖が有意に阻害された(* p0.001)。併用投与時にも有意な増殖抑制が見られた(* p0.001)が、単独投与

時との統計学的有意差は認められなかった。

評価資料 5634- :DC101及びパクリタキセルの用量を 10 mg/kg(それぞれ週 2 回及び週 1 回)に半減させたところ、

パクリタキセルは MKN-45 の増殖を有意に阻害した(# p0.05)が、DC101は有意な作用を示さなかった

(p0.507)。同用量で両剤を併用投与したところ、有意な増殖抑制が見られ(## p0.016)、相加作用も示唆され

たが、単独投与時との比較で統計学的有意差は認められなかった(DC101及びパクリタキセル単独投与時との比較

でそれぞれ p0.076及び 0.066)。

図 2.6.2-22 MKN-45 胃癌異種移植マウスモデルにおける DC101単独又はパクリタキセ

ル併用投与時の抗腫瘍効果

評価資料 5569-

評価資料 5634-

Page 37: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

30

膀胱癌、前立腺癌又は肺癌モデルを用いた公表論文において、パクリタキセルとの併

用で DC101 の抗腫瘍効果が増強することが示されている。例えば、ヌードマウスの膀胱

壁内に膀胱癌細胞株(253J B-V)を移植した、転移性ヒト移行上皮癌の同所移植マウス

モデルにおいて、パクリタキセルは DC101 の抗腫瘍作用を増強させた(参考資料 Inoue

2000)。両薬剤の併用投与により、単独投与時と比較し、膀胱癌細胞のアポトーシスが

増加し、マウスの生存率が改善した。また、前立腺癌細胞(PC-3M-MM2 又は LNCaP-

LN3)を用いた同所性前立腺癌モデル、並びに前立腺癌骨転移モデル(PC-3M-MM2 を

用いた検討)において、パクリタキセルと併用投与すると DC101 の抗腫瘍効果が増強さ

れた(参考資料 Sweeney 2002)。さらに、パクリタキセルなど特定の化学療法剤をマウ

スに投与すると腫瘍血管形成に寄与する CEP が動員されるが、DC101 は Lewis 肺癌モデ

ルにおける CEP 動員を阻害し、DC101 の抗腫瘍効果はパクリタキセルとの併用で増強さ

れた(参考資料 Shaked 2008)。

2.6.2.2.2.2.4 胃癌以外のマウス異種移植モデルにおける DC101 の抗腫瘍効果

胃癌以外の癌を対象とした担癌モデルにおける DC101 の抗腫瘍効果が評価されている

(試験一覧を Appendix A に示す)。これらの試験において、現在実施中の第 III 相臨床

試験の対象癌種(肝臓癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌)に対するラムシルマブの有効性

が示唆されている。

2.6.2.3 副次的薬理試験

副次的薬理試験は実施していない。

2.6.2.4 安全性薬理試験

評価資料:1163-110(4.2.3.2.2)

ラムシルマブの独立した安全性薬理試験は実施していないが、カニクイザルにラムシ

ルマブを 50 mg/kg までの用量で週 1 回静脈内持続投与した 39 週間反復投与毒性試験

(評価資料 1163-110)の一環として、安全性薬理パラメータ(一般状態、体温、血圧及

び心電図)を評価した。本試験において、ラムシルマブ投与に関連する影響は認められ

なかった。呼吸系及び中枢神経系機能に関しては、別途、試験を実施しなかったが、一

般状態の観察においてこれらに対する影響は見られなかった。

2.6.2.5 薬力学的薬物相互作用

DC101 の抗腫瘍効果に及ぼすパクリタキセルの影響を評価した試験成績を第

2.6.2.2.2.2.3.2 項に示した。

2.6.2.6 考察及び結論

VEGF/VEGFR-2 経路を阻害し血管新生阻害作用により抗腫瘍効果を示す抗癌剤には、

低分子のチロシンキナーゼ阻害薬や血管新生促進作用を有するサイトカイン(主に

VEGF-A)を中和する高分子製剤がある。チロシンキナーゼ阻害薬(ソラフェニブ、ス

Page 38: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

31

ニチニブ及びアキシチニブ)は VEGFR-2 の内因性チロシンキナーゼ活性を阻害する作

用を有しており、これらの薬剤は肝臓癌、腎臓癌や消化管間質腫瘍の治療に寄与してい

る。

ラムシルマブは VEGF リガンドではなく VEGFR-2 を標的する血管新生阻害薬である。

ラムシルマブは VEGFR-2 に結合する 3 つの VEGF リガンドの作用をいずれも阻害する

ことから、VEGF/VEGFR-2 経路をより強く阻害する可能性がある。また、ラムシルマブ

は VEGFR-2 の内在化を引き起こすことにより VEGFR-2 経路を介したシグナル伝達を減

弱させる可能性もある。抗体製剤であるラムシルマブは VEGFR-2 に対する高い特異性

を有しており、VEGF 受容体チロシンキナーゼ阻害薬で見られるようなオフターゲット

毒性を誘発する可能性は低い。また、標準的な化学療法薬と併用した場合の相加作用も

期待される。

一連の in vitro 試験において、ラムシルマブは VEGFR-2 に対する高い親和性を示し、

VEGF の結合を阻害した。ラムシルマブは、腫瘍血管新生に重要な VEGF による

VEGFR-2 の活性化、シグナル伝達及び血管内皮細胞の応答(遊走、増殖及び生存)を阻

害したことから、腫瘍血管新生阻害作用を示すことが示唆された。

血管新生阻害薬は宿主の血管系や腫瘍間質への作用を介して抗腫瘍効果を示すが、ラ

ムシルマブのマウス VEGFR-2 に対する結合能は低いため、ヒト癌のマウス異種移植モ

デルを用いた試験にはマウスの VEGFR-2 に作用する DC101 を用いる必要があった。In

vitro試験で DC101 は VEGF のマウス VEGFR-2 への結合や活性化を阻害し、VEGFR-2 阻

害薬に予想される腫瘍微小血管密度を減少させる作用なども報告されている。このよう

な薬理学的特性から、DC101 は VEGFR-2 を標的とするラムシルマブの薬効を評価する

のに適したサロゲート抗体と考えられる。

DC101 を用いて、抗 VEGFR-2 抗体(ラムシルマブ)の抗腫瘍効果をヒト膵臓癌マウ

ス異種移植モデルで評価した。本試験の目的は抗腫瘍効果と有効血中濃度の関係を明ら

かにし、臨床有効用量の推定を行うことであった。18 g/mL 以上の平均血清中濃度をも

たらす用量で有意な抗腫瘍効果が認められたことから、臨床試験ではこの濃度を維持す

ると推測される用量を選択することとした。なお、DC101 のマウス VEGFR-2 への親和

性はラムシルマブのヒト VEGFR-2 への親和性の 1/10(評価資料 1001- )から 1/2(参

考資料 Lu 2003)であるため、ヒトでのラムシルマブの有効血中濃度は 18 g/mL よりも

低くなる可能性がある。続いて、胃癌患者由来腫瘍組織片を用いたマウス異種移植モデ

ル、並びにヒト胃癌細胞株を用いたマウス異種移植モデルでの検討から、DC101 の胃癌

に対する抗腫瘍効果を確認した。さらに、現在実施中の第 III 相臨床試験の対象癌種(肝

臓癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌)に対する DC101 の有効性もマウス異種移植モデルで

示唆されている。これらの試験では、通常、DC101 は 40 mg/kg で週 3 回、腹腔内投与し

た(20 年半ば以降に実施した試験では 20 mg/kg を週 2 回腹腔内投与)。DC101 を単独

投与した試験における腫瘍増殖阻害率の平均は 59%(55 試験)であり、その範囲は

27% ~78%であった。また、ヒト胃癌細胞株を用いたマウス異種移植モデルでの検討に

おいて、DC101 はパクリタキセルの抗腫瘍効果を増強させる可能性が示唆された。これ

Page 39: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

32

らの成績から、抗 VEGFR-2 抗体(ラムシルマブ)は胃癌に対する有効な治療薬と成り

得ることが示唆される。

サルを用いた反復毒性試験の一環として、評価した安全性薬理パラメータについて、

特記すべき所見は認められなかった。

以上、ラムシルマブはヒト VEGFR-2 に特異的かつ高い親和性で結合し、VEGF による

VEGFR-2 の活性化、シグナル伝達及び血管内皮細胞の応答を阻害することが示された。

担癌マウスを用いた検討では、DC101 の投与による血管新生阻害作用及び抗腫瘍効果が

認められた。これらの成績は胃癌患者へのラムシルマブ投与の妥当性を支持するもので

あった。

2.6.2.7 図表

図表は本文中の適切な箇所に記載した。

2.6.2.8 参考文献

de Haard HJ, van Neer N, Reurs A, Hufton SE, Roovers RC, Henderikx P, et al. A large non-

immunized human Fab fragment phage library that permits rapid isolation and kinetic analysis of

high affinity antibodies. J Biol Chem. 1999;274:18218-18230.

Ferrara N. The role of vascular endothelial growth factor in pathological angiogenesis. Breast

Cancer Res Treat. 1995;36:127-137.

Lu D, Jimenez X, Zhang H, Bohlen P, Witte L, Zhu Z. Selection of high affinity human

neutralizing antibodies to VEGFR2 from a large antibody phage display library for

antiangiogenesis therapy. Int J Cancer. 2002;97:393-399.

Page 40: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

33

Appendix A:本承認申請で提出しなかった薬効薬理試験報告書一覧(参考)

(続く)

Page 41: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

34

Appendix A:本承認申請で提出しなかった薬効薬理試験報告書一覧(参考)(続き)

(続く)

Page 42: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.2 薬理試験の概要文

サイラムザ点滴静注液

35

Appendix A:本承認申請で提出しなかった薬効薬理試験報告書一覧(参考)(続き)

Page 43: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.3 薬理試験概要表 サイラムザ点滴静注液

サイラムザ点滴静注液 100 mg

サイラムザ点滴静注液 500 mg

2.6.3 薬理試験概要表

日本イーライリリー株式会社

Page 44: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.3 薬理試験概要表 サイラムザ点滴静注液

目次 2.6.3 薬理試験概要表 ......................................................................................................... 1

2.6.3.1 薬理試験:一覧表 ............................................................................................. 1 2.6.3.2 効力を裏付ける試験 ......................................................................................... 8 2.6.3.3 副次的薬理試験(該当せず) ......................................................................... 8 2.6.3.4 安全性薬理試験 ................................................................................................. 8 2.6.3.5 薬力学的薬物相互作用試験 ............................................................................. 8

Page 45: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.3 薬理試験概要表

サイラムザ点滴静注液

1

2.6.3 薬理試験概要表

2.6.3.1 薬理試験:一覧表

*は評価資料を示す

Type of Study Test System/Animal/Cell Line Route Testing Facility Document ID Location in CTD

Primary Pharmacodynamics

In Vitro

Binding/Blocking

Binding to human VEGFR-2 Biacore N/A

N/A

N/A

ImClone Systems

ImClone Systems

Lu 2003

Zhu 2003

1001- *

4.2.1.1.1

4.2.1.1.2

4.2.1.1.3

ELISA N/A 1001- * 4.2.1.1.3

Blocking VEGF binding to human VEGFR-2 ELISA N/A

N/A

ImClone Systems

ImClone Systems

Lu 2003

Zhu 2003

4.2.1.1.1

4.2.1.1.2

Blocking of binding of 125I-VEGF to VEGFR-

2 () cells

HUVEC N/A ImClone Systems Zhu 2003 4.2.1.1.2

VEGFR-2 Specificity

Binding to a panel of growth factor RTKs

(Pan-Target Assay)

ELISA N/A PT-1202* 4.2.1.1.4

Binding to VEGFR-1, VEGFR-2, VEGFR-3 ELISA N/A IMC01* 4.2.1.1.5

Binding to human, monkey, rabbit, and dog

VEGFR-2

Biacore N/A Eli Lilly and Company bTDR275* 4.2.1.1.6

Structure Analysis

Structure of ramucirumab Fab fragment bound

to VEGFR-2 Ig domain 3

Co-crystallization and structure

determination

N/A ImClone Systems Franklin 2011 4.2.1.1.7

(続く)

Page 46: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.3 薬理試験概要表

サイラムザ点滴静注液

2

2.6.3.1 薬理試験:一覧表(続き)

Type of Study Test System/Animal/Cell Line Route Testing Facility Document ID Location in CTD

Primary Pharmacodynamics (Continued)

In Vitro (Continued)

VEGFR-2/VEGF-ligand interactions

Inhibition of VEGF-A, -C and -D binding to

VEGFR-2

ELISA N/A IMC04* 4.2.1.1.8

VEGF-C-induced endothelial cell

proliferation

Human lymphatic endothelial cells N/A École Polytechnique

Fédérale de Lausanne

Goldman 2007 4.2.1.1.9

VEGF-C-induced endothelial cell sprouting Human dermal microvascular

endothelial cells

N/A Haartman Institute and

Helsinki University

Central Hospital

Tvorogov 2010 4.2.1.1.10

Blocking VEGF-C-induced

heterodimerization of VEGFR-2 and VEGFR-

3

In situ PLA assay with intact

HSaVECs

N/A Uppsala University Nilsson 2010 4.2.1.1.11

Functional Assays

Inhibition of VEGF-stimulated VEGFR-2

phosphorylation

HUVEC

PAE-KDR cells

N/A ImClone Systems Lu 2003 4.2.1.1.1

Inhibition of VEGF-induced calcium

mobilization

PAE-KDR cells N/A ImClone Systems Miao 2006 4.2.1.1.12

Inhibition of VEGF-induced endothelial cell

mitogenesis

HUVEC N/A ImClone Systems Zhu 2003 4.2.1.1.2

Inhibition of VEGF-induced migration of

leukemia cells

HL60 and HEL cells N/A ImClone Systems Zhu 2003 4.2.1.1.2

VEGFR-2 Internalization

Down-modulation of surface VEGFR-2 PAE-KDR cells, primary human

aortic endothelial cells and dermal

microvascular endothelial cells

N/A IMC02* 4.2.1.1.13

(続く)

Page 47: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.3 薬理試験概要表

サイラムザ点滴静注液

3

2.6.3.1 薬理試験:一覧表(続き)

Type of Study Test System/Animal/Cell Line Route Testing Facility Document ID Location in CTD

Primary Pharmacodynamics (Continued)

In Vitro (Continued)

Effector Function Assay

Binding to Fc binding proteins ELISA N/A N/A 3.2.S.3

Biacore N/A N/A 3.2.S.3

Induction of ADCC activity Cell-based ADCC assay N/A N/A 3.2.S.3

Epitope Analysis

Contact residues between ramucirumab Fab

and domain 3 of VEGFR-2

Co-crystallization N/A N/A 3.2.S.3

Binding/Blocking (DC101)

Binding of DC101 to mouse VEGFR-2 Biacore N/A 1001- * 4.2.1.1.3

ELISA N/A 1001- * 4.2.1.1.3

Flk-1 transfected NIH 3T3 cells N/A ImClone Systems Rockwell 1995 4.2.1.1.14

Absence of binding of DC101 to mouse

VEGFR-1

ELISA N/A Flanders

Interuniversity Institute

for Biotechnology

Luttun 2002 4.2.1.1.15

Inhibition of binding of VEGF-C to mouse

VEGFR-3

ELISA N/A ImClone Systems Pytowski 2005 4.2.1.1.16

Functional Assays (DC101)

Inhibition of VEGF-stimulated VEGFR-2

phosphorylation

Flk-1 transfected NIH 3T3 cells N/A ImClone Systems Rockwell 1995 4.2.1.1.14

Inhibition of VEGF-D-stimulated VEGFR-2

phosphorylation

Western blot of phosphorylated

VEGFR-2 in mouse lymphatic cells

N/A Peter MacCallum

Cancer Centre

Karnezis 2012 4.2.1.1.17

(続く)

Page 48: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.3 薬理試験概要表

サイラムザ点滴静注液

4

2.6.3.1 薬理試験:一覧表(続き)

Type of Study Test System/Animal/Cell Line Route Testing Facility Document ID Location in CTD

Primary Pharmacodynamics (Continued)

In Vivo

Mechanism of Action Studies (DC101)

Induction of apoptosis of endothelial cells and

tumor cells

Colorectal carcinoma liver

metastases model in athymic nude

mice

IP University of

Texas M. D. Anderson

Cancer Center

Bruns 2000 4.2.1.1.18

Orthotopic prostate carcinoma

models in athymic nude mice

IP The University of

Texas M. D. Anderson

Cancer Center

Sweeney 2002 4.2.1.1.19

Anti-angiogenic mechanism of action

demonstrated by:

a. Reduction in tumor microvascular

density

b. Reduction in tumor vascular

perfusion

c. Induction of tumor hypoxia

or a combination of above methods

Harvey ras-transformed human

keratinocyte subcutaneous tumor

model in athymic nude mice

IP German Cancer

Research Center

Krix 2003 4.2.1.1.20

Orthotopic breast carcinoma model

in SCID mice

IP Sunnybrook and

Women’s College

Health Sciences Centre

Franco 2006 4.2.1.1.21

Intradermal human melanoma

xenograft model in athymic nude

mice

IP Sunnybrook and

Women’s College

Health Sciences Centre

Cheung 2007 4.2.1.1.22

Harvey ras-transformed human

keratinocyte subcutaneous tumor

model in athymic nude mice

IP German Cancer

Research Center

Jugold 2008 4.2.1.1.23

Subcutaneous human breast cancer

xenograft model in athymic nude

mice. VEGF-over-expressing cell

line.

IV Purdue University Stantz 2011 4.2.1.1.24

(続く)

Page 49: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.3 薬理試験概要表

サイラムザ点滴静注液

5

2.6.3.1 薬理試験:一覧表(続き)

Type of Study Test System/Animal/Cell Line Route Testing Facility Document ID Location in CTD

Primary Pharmacodynamics (Continued)

In Vivo (Continued)

Mechanism of Action Studies (DC101) (Continued)

Anti-angiogenic mechanism of action

demonstrated by:

a. Reduction in tumor microvascular

density

b. Reduction in tumor vascular

perfusion

c. Induction of tumor hypoxia

or a combination of above methods

(Continued)

Harvey ras-transformed human

keratinocyte subcutaneous tumor

model in athymic nude mice

SC German Cancer

Research Center

Kiessling 2004 4.2.1.1.25

Androgen-dependent male mouse

mammary carcinoma

(Shionogi) in a dorsal skin window

of SCID mice

IP Massachusetts General

Hospital and Harvard

Medical School

Hansen-

Algenstaedt

2000

4.2.1.1.26

RIP1-Tag2 transgenic model of

pancreatic islet tumor.

Demonstration of tumor hypoxia

and increased local metastasis after

anti-angiogenic therapy.

IP Catalan Institute of

Oncology

Pàez-Ribes

2009

4.2.1.1.27

Models of human pancreatic, head

and neck, or colorectal tumors in

athymic nude mice

IP ImClone Systems Tonra 2009 4.2.1.1.28

RIP1-Tag2 transgenic model of

pancreatic islet tumor on

immunodefficient (Rag1 null)

background. Demonstration of

drug resistance due to expression of

alternate angiogenic factors.

IP University of

California

Casanovas 2005 4.2.1.1.30

Effect of DC101 on homing of circulating

endothelial progenitor cells (CEP) into tumor

vasculature

Lewis lung carcinoma (LLC) model

in immunocompetent mice

IP University of Toronto Shaked 2008 4.2.1.1.29

(続く)

Page 50: サイラムザ点滴静注液 100 mg...Repeated Measures ANOVA 反復測定分散分析 Rmax 最大結合量 SD 標準偏差 T/C% 対照群(C)に対する被験薬群(T)の腫瘍体積又は重量の比

LY3009806 2.6.3 薬理試験概要表

サイラムザ点滴静注液

6

2.6.3.1 薬理試験:一覧表(続き)

Type of Study Test System/Animal/Cell Line Route Testing Facility Document ID Location in CTD

Primary Pharmacodynamics (Continued)

In Vivo (Continued)

Mechanism of Action Studies (Ramucirumab)

Anti-angiogenic effect Athymic nude mouse co-implanted

with human endothelial progenitor

cells and adipose-derived stem cells

under the skin

IP Eli Lilly and Company IMC03* 4.2.1.1.31

Studies in Murine Xenograft Models of Human Cancers (DC101)

Determination of DC101 pharmacokinetic

parameters associated with anti-tumor efficacy

(PK/PD)

Subcutaneous human pancreatic tumor

xenograft model in athymic nude mice

IP 2212- * 4.2.1.1.32

Gastric cancer monotherapy study Patient-derived xenograft (PDX)

models of human gastric cancer in

athymic BALB/c nude mice

IP 5538- * 4.2.1.1.33

Efficacy of DC101 in combination with

paclitaxel

Subcutaneous human gastric tumor

xenograft model in athymic nude mice

IP 5569- * 4.2.1.1.34

Subcutaneous human gastric tumor

xenograft model in athymic nude mice

IP 5634- * 4.2.1.1.35

Efficacy of DC101 in combination with

paclitaxel

Subcutaneous model of human bladder

cancer in athymic BALB/c nude mice

IP The University of

Texas M. D. Anderson

Cancer Center

Inoue 2000 4.2.1.1.36

Efficacy of DC101 in combination with

paclitaxel

Orthotopic and bone metastasis

prostate carcinoma models in athymic

nude mice

IP University of Texas M.

D. Anderson Cancer

Center

Sweeney 2002 4.2.1.1.19

Efficacy of DC101 in combination with

paclitaxel or gemcitabine

Lewis lung carcinoma (LLC) model in

immunocompetent mice

IP University of Toronto Shaked 2008 4.2.1.1.29

(続く)

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LY3009806 2.6.3 薬理試験概要表

サイラムザ点滴静注液

7

2.6.3.1 薬理試験:一覧表(続き)

Type of Study Test System/Animal/Cell Line Route Testing Facility Document ID Location in CTD

Secondary Pharmacodynamics – Not Applicable

Safety PharmacologyCardiovascular assessment Cynomolgus; Monkey IV

(infusion) a

1163-110* 4.2.3.2.2

Pharmacodynamic Drug Interactions – Not Applicable

Abbreviations: ADCC Antibody-dependent cell cytotoxicity, HSaVEC Human saphenous vein endothelial cells, HUVEC Human umbilical vein endothelial cells, In situ

PLA assay In situ proximity ligation assay, IP intraperitoneal, IV intravenous, N/A not applicable, PAE- KDR cells Porcine aortic endothelial cells transfected with

human VEGFR-2, RTK Receptor tyrosine kinases, SC subcutaneously.a The study was performed under a name of . The name of the testing facility changed, due to the merger.

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LY3009806 2.6.3 薬理試験概要表

サイラムザ点滴静注液

8

2.6.3.2 効力を裏付ける試験

第 2.6.2 項「薬理試験の概要文」参照。

2.6.3.3 副次的薬理試験(該当せず)

2.6.3.4 安全性薬理試験

Organ Systems

Evaluated

Species / Strain Route Doses

(mg/kg)

Gender and No. Per Group Noteworthy Findings GLP Document ID Location in CTD

Cardiovasculara Cynomolgus,

Monkey

IV

(infusion)

0, 5, 16, 50

Once per week for

12b- or 39-weeks

Male: 3 per dose group

Female: 6 per dose groupb

No compound

related-abnormal

findings (physical

examination,

blood pressure,

electrocardiogram,

and rectal body

temperature)

Yes 1163-110 4.2.3.2.2

a The evaluation was conducted as a part of the 39-week repeated dose toxicity study (Study 1163-110). The electrocardiogram was measured on Study Day 268

(approximately 24 hours after dosing on Study Day 267). The blood pressure was measured on Pre-initial dose, 1 hour after dosing on Study Day 1 and 29, prior to 12-week

termination (Study Day 84) for all animals, and 24 hours after the last dose (Study Day 268) for the 39-week animals. b Three female animals in each dose group were sacrificed for the interim evaluation after Week 12.

2.6.3.5 薬力学的薬物相互作用試験

第 2.6.2 項「薬理試験の概要文」参照。