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セメント①

セメント①目次 2.セメント① ①概要 ②セメントの基本 ③比表面積・粉末度 ④化学成分・組成化合物 ⑤セメントの基本のおさらい ⑥種類と規格

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セメント①

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目次

2.セメント① ①概要 ②セメントの基本 ③比表面積・粉末度 ④化学成分・組成化合物 ⑤セメントの基本のおさらい ⑥種類と規格 ⑦製造 ⑧化学成分 ⑨物理的性質および試験 ⑩水和反応

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セメント ~概要~

☆セメントの種類

セメントの種類を大きく分けると以下の4つに分類

分類 特徴

ポルトランドセメント

普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩の6種類+それぞれの低アルカリ形

混合セメント 高炉、フライアッシュ、シリカの3種類×混合材の割合に応じてA〜C種

エコセメント 普通ポルトランドセメントと同様。ただし、塩化物量は若干高い。

特殊なセメント 白色セメントなど、特殊なセメント

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セメント ~概要~

まずはポルトランドセメント

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ポルトランドセメント ~概要~

☆概要

前ページの表にあるように、ポルトランドセメントは6種類+それぞれの低アルカリ形が6種類、計12種類ある。

例えば普通ポルトランドセメントといっても通常形、低アルカリ形の2種類がある。

それぞれに特徴がある。覚え方は簡単。ほとんどが読んで字のごとくだから。

例えば早強ポルトランドセメントは早く強くなるセメント。

低熱ポルトランドセメントは熱を低く出来るセメント。

説明は次ページ。

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☆概要

 

ポルトランドセメント ~概要~

普通 一般的な普通のセメント

早強 早く強度を出したい工事に用いられる。短工期、寒中コンクリート等

超早強 超早く強度を出したい工事に用いられる。緊急工事等。現在は製造されていない。

中庸熱 水和熱を押さえたい工事に用いられる。ダムなどのマスコンクリート。原子力も。

低熱 水和熱を低く押さえたい工事に用いられる。ダムなどのマスコンクリート。高強度、高流動コンクリート。

耐硫酸塩硫酸塩に耐性を持たせたい工事に用いられる。下水道、防波堤、硫酸塩を含む土壌など。日本ではあまり使われない。

上表の6種類に加え低アルカリ形の計12種類が規定。

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☆セメントの基本

詳しい説明へ入る前にセメントの基本をお勉強

・比表面積、粉末度について

・組成化合物について

というよりも、ここがセメントで一番大切な項目

ポルトランドセメント ~セメントの基本~

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ポルトランドセメント ~セメントの基本~

☆セメントの基本ポルトランドセメントの強度発現や水和熱等は大きく分けて2つのメカニズムに分かれる。

①比表面積・粉末度によるもの→次ページで詳しく説明

②組成化合物の割合によるもの

→組成化合物の項目で説明

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ポルトランドセメント ~セメントの基本~

☆セメントの基本①比表面積・粉末度によるもの。早強や超早強ポルトランドセメントのように、粒子が細かいセメント(比表面積が大きい)は水と接する面積が大きいため、早期に強度を発現する。早強、超早強ポルトランドセメントはこの影響が強い。

つまり、比表面積が大きい=強度発現は早い。

ただし、その逆の比表面積が小さい=強度発現は遅いにはならない。例えば、低熱ポルトランドセメントは、比表面積が極端に小さいわけではない。ここは注意したい。

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ポルトランドセメント ~セメントの基本~

まずは比表面積・粉末度の説明

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積、粉末度について

 セメントの表面積。比表面積が大きいと、セメント粒子が小さいことを意味する。逆に比表面積が小さいとセメント粒子が大きい。

Q.右図のAとBのセメント粒子

どちらの表面積が大きいか。

A.当たり前だけどどちらも同じ。

セメント粒子のモデル図

※理解しやすいよう、あえて正方形にしてます。当たり前だけど本来は粒形。

A B

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積、粉末度について

Q.下の大きい四角Aと、小さい四角8個分Bのセメント粒子、どちらの表面積が大きいか。

A.こちらはBの方が表面積が大きい。理由は次ページ。

セメント粒子のモデル図

A B

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積、粉末度について

セメント粒子のモデル図

A B

上図では見えない部分にも表面がある。

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積、粉末度について

セメント粒子のモデル図を展開すると

圧倒的にBの方が表面積が大きい

��

��

��

��

��

��

��

����

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積、粉末度についてQ.A、Bの表面をペンキで色を塗るとしたらどちらのほうがペンキの量が多くいる?

A.もちろんBの方。ではペンキではなく水を塗ったら??Bの方が水の量、つまり水量は多く必要になる。

セメント粒子のモデル展開図

BA A B

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積、粉末度について

Q.早強性はAとBのセメント、どちらが大きい?

A.Bの方が、セメントと水の接する面積が多い。つまり、一気に水と接するため、早期に水和反応が活発化する。Aは表面積が小さいので、水と接する面積が少ない。そのため、Bに比べると、ゆっくりと水和する。

セメント粒子のモデル展開図

BA A B

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積、粉末度について

Q.右の大きいセメント粒子Aと

小さいセメント粒子の塊B

どちらの表面積が大きいか。

A.もう分かりますね。Bの方が表面積が大きい。

そして、比表面積が大きい程(粒子が小さいほど)表面を覆うだけの水量は多く必要、つまり単位水量は多くなる。さらに、比表面積が大きい程、早期に強度を発現する。

セメント粒子のモデル図

B BB

BB

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積、粉末度について

粉末度とは、文字通り

粉末の細かさの度合い

を示す。

上図でいうと、AよりもBの方が粉末度が大きい(細かい)。粉末度=比表面積 と覚えておく。

ブレーン空気透過装置を用いて測定する。

→説明は後で。

セメント粒子のモデル図

B BB

BB

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積とその他の関係

まとめると、下表のようになる。

粒径(サイズ)

比表面積

粉末度(細かさ)

強度発現

単位水量

乾燥収縮

大きい 小さい 小さい(粗い)

遅い 少ない 小さい

小さい 大きい 大きい(細かい)

早い 多い 大きい

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積とその他の関係

おさらい。

Q.比表面積が大きいセメントと小さいセメントではどちらが水と接触する面積が多い?

A.もちろん比表面積が大きいセメント!表面積が大きい=水と接触する面積が多い

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積とその他の関係

Q.比表面積が大きいセメントと、小さいセメント、どちらが初期に活発に水和反応する?

A.水和は水とセメントが接触して初めて起こる。そのため接触する面積が多いと、水和する面積が多くなり、強度発現は早くなる。

水和反応が早い=強度発現が早い

粒径(サイズ)

比表面積

粉末度(細かさ)

強度発現

単位水量

乾燥収縮

大きい 小さい 小さい(粗い)

遅い 少ない 小さい

小さい 大きい 大きい(細かい)

早い 多い 大きい

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積とその他の関係

Q.初期にたくさん水和するセメントと、あまり水和しないセメント、どちらがたくさん熱を出す?

A.反応が活発なほど、熱を発生する。

強度発現が早い=水和反応が活発→水和熱が大きい。

粒径(サイズ)

比表面積

粉末度(細かさ)

強度発現

単位水量

乾燥収縮

大きい 小さい 小さい(粗い)

遅い 少ない 小さい

小さい 大きい 大きい(細かい)

早い 多い 大きい

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積とその他の関係

Q.表面積の大きいセメントと、小さいセメント、どちらが乾燥する水の量が多い?

A.もちろん表面積の大きいセメント

 水を使う量が多い=乾燥収縮は大

粒径(サイズ)

比表面積

粉末度(細かさ)

強度発現

単位水量

乾燥収縮

大きい 小さい 小さい(粗い)

遅い 少ない 小さい

小さい 大きい 大きい(細かい)

早い 多い 大きい

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ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

☆比表面積とその他の関係

Q.普通、早強、超早強の比表面積はどうなってる?

A.次ページで確認してみて。

粒径(サイズ)

比表面積

粉末度(細かさ)

強度発現

単位水量

乾燥収縮

大きい 小さい 小さい(粗い)

遅い 少ない 小さい

小さい 大きい 大きい(細かい)

早い 多い 大きい

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☆比表面積とその他の関係

普通、早強、超早強の比表面積はどうなってる?

項目 普通 早強 超早強 中庸熱 低熱 耐硫酸塩

比表面積(cm2/g) ≧2500 ≧3300 ≧4000 ≧2500 ≧2500 ≧2500

凝結始発(min) ≧60 ≧45 ≧45 ≧60 ≧60 ≧60

終結(h) ≦10

圧縮強さ

(N/mm2)

1日 - ≧10.0 ≧20.0 - - -

3日 ≧12.5 ≧20.0 ≧30.0 ≧7.5 - ≧10.0

7日 ≧22.5 ≧32.5 ≧40.0 ≧15.0 ≧7.5 ≧20.0

28日 ≧42.5 ≧47.5 ≧50.0 ≧32.5 ≧22.5 ≧40.0

91日 - - - - ≧42.5 -

水和熱(J/g)

7日28日

- - -≦290≦340

≦250≦290

全アルカリ(%) 0.75(低アルカリ形は0.6)

塩化物イオン(%) 0.035 0.02

少量混合成分(%) 0以上5以下 0

ポルトランドセメント ~比表面積・粉末度~

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ポルトランドセメント ~化学成分・組成化合物~

続いて、4つの組成化合物

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ポルトランドセメント ~化学成分・組成化合物~

C3S

C2S

C3A

C4AF

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ポルトランドセメント ~化学成分・組成化合物~

☆組成化合物についてセメントを理解する上で、以下の4つの組成化合物は絶対に覚えておく。

C3S  ケイ酸三カルシウム

C2S  ケイ酸二カルシウム

C3A  アルミン酸三カルシウム

C4AF 鉄アルミン酸四カルシウム

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ポルトランドセメント ~セメントの基本~

☆組成化合物について

組成化合物の割合で早く強くなるorゆっくり強くなるをコントロール可能。C3Sの量が多いと、早強性がある。C2Sの量が多いと、低熱セメントのようにゆっくり強くなる。C3Sをエーライト、C2Sをビーライトと呼ぶこともある。比表面積で早強性を確保できるが、ゆっくり強くすることは出来ない。低熱、中庸熱、耐硫酸塩などはこちらの要素が強い。ただし、早強、超早強も影響される。つまり、早強、超早強に関しては、比表面積が大きい&C3S量が多いことで早強性を確保しているが、低熱、中庸熱等はC3S量を少なくしてC2S量を多くして低熱性を確保している。

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ポルトランドセメント ~化学成分・組成化合物~

☆組成化合物

覚え方

 C3S 珪素=シリカ(Silica)

 C2S

 C3A アルミン=アルミ(Aluminium)

 C4AF 鉄=磁石(Ferrite)

     カルシウム(Calcium)

 4つの組成化合物は全てカルシウムが入っている。  

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ポルトランドセメント ~化学成分・組成化合物~

☆組成化合物

覚え方

・けい酸 三 カルシウム =C3S

・けい酸 二 カルシウム =C2S

 

珪素=シリカ(Silica)

三=3

カルシウム(Calcium)

珪素=シリカ(Silica)

二=2

カルシウム(Calcium)

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ポルトランドセメント ~化学成分・組成化合物~

☆組成化合物

覚え方

・アルミン酸 三 カルシウム =C3A

・鉄 アルミン酸 四 カルシウム =C4AF

 

アルミン=アルミ(Aluminium)

三=3

カルシウム(Calcium)

アルミン=アルミ(Aluminium)

四=4

カルシウム(Calcium)

鉄=磁石(Ferrite)

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C2S

ポルトランドセメント ~化学成分・組成化合物~

組成化合物の反応の順序

☆組成化合物

C3SC3A

C4AFは分単位で急激に反応し収束

1日以内にC3Aが収束

28日以内にC3Sが反応

その後C2Sが反応

ポルトランドセメントの模式的な水和過程

C4AF

C3S,C2Sの反応によって強度増進が進む

注水直後のC3Aと石こうの反応によりエトリンガイトを生成してしばらく停滞

C-S-H=ケイ酸カルシウムCa(OH)2=水酸化カルシウムの急激な生成

石こうの効き目が無くなったエトリンガイトとC3Aが反応しモノサルフェートを生成

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ポルトランドセメント ~化学成分・組成化合物~

☆組成化合物

同じ100mでも、人が全力疾走すると体温は急激に上がるが、歩くとそこまで体温は上がらない。組成化合物も同様に、急速に反応するC3Aは水和熱は高くなるが、ゆっくり反応するC2Sは水和熱は低い。企業でも急激に成長すると、足下が追いつかず、崩壊は早い。老舗企業のように、じっくり成長すると、大器晩成型で強い。組成化合物も同様に、急速に反応するC3Aは化学抵抗性が小さく(劣化につながる収縮も大きい)、ゆっくり反応するC2Sは化学抵抗性が大きい(収縮は小さい)。

名称 略号 水和反応速度

強度への寄与 水和熱 収縮 化学

抵抗性

けい酸三カルシウム C3S 比較的早い 28日以内の早期 中 中 中

けい酸ニカルシウム C2S 遅い 28日以後の長期 小 小 大

アルミン酸三カルシウム C3A 非常に早い 1日以内の早期 大 大 小

鉄アルミン酸四カルシウム C4AF かなり早い 寄与しない 小 小 中

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ポルトランドセメント ~化学成分・組成化合物~

☆水和生成物主任技士に関しては水和生成物についても覚えておくこと。

名称 記号 水和生成物 特徴

けい酸三カルシウム(エーライト)

C3S 水酸化カルシウム(Ca(OH)2)ケイ酸カルシウム(C-S-H)

粒形普通普通・早強

けい酸二カルシウム(ビーライト)

C2S 水酸化カルシウム(Ca(OH)2)ケイ酸カルシウム(C-S-H)

粒形良い低熱・中庸熱

アルミン酸三カルシウム(アルミネート)

C3A エトリンガイト(AFt)モノサルフェート(AFm)

C3Aと石こうの反応でAFtを生成。石こうが消費され次第AftとC3Aが反応してAFmを生成

鉄アルミン酸四カルシウム(フェライト)

C4AF 特になし。 強度に寄与しない。

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ポルトランドセメント ~セメントの基本のおさらい~

☆もう一度最初のおさらい

強度発現や水和熱等のメカニズムは大きく分けて①比表面積②組成化合物に分かれる。

つまりセメントの種類 C3Aの量 C3Sの量 C2Sの量 比表面積 水和熱

普通 普通 普通 普通 普通 普通

早強 多い 多い 少ない 大きい 高い

超早強 超多い 超多い 超少ない 超大きい 超高い

中庸熱 少ない 少ない 多い 普通 低い

低熱 超少ない 超少ない 超多い 普通 超低い

耐硫酸塩 超超少ない 普通 普通 普通 普通

早強、超早強は比表面積以外に組成化合物も早強性のあるC3AやC3Sが多いのに対して、低熱や中庸熱は比表面積は普通だけど、組成化合物のC2Sが多いため強度発現は緩やか。※赤字はJISR5210において上下限値の規定あり。その他は規定なし。

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ポルトランドセメント ~種類と規格~

ではいよいよ、難関へ。

比表面積、組成化合物は

理解しましたか?

まだなら先にそちらを理解して下さい。

それが理解出来ればこの項目は楽勝。

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ポルトランドセメント ~種類と規格~

☆ポルトランドセメントの規格

次ページにポルトランドセメントのJIS規格を載せる。数字がたくさん並んでいるけど、大丈夫。

覚え方にはコツがある。

覚えなくていいものは覚えなくていい。一部を除いて数字は覚えなくていい。

なぜその規定があるのか理解すること。

それでは、次のページで詳しく説明します。特に赤字を重点的に覚えて。

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項目 普通 早強 超早強 中庸熱 低熱 耐硫酸塩

比表面積(cm2/g) ≧2500 ≧3300 ≧4000 ≧2500 ≧2500 ≧2500

凝結始発(min) ≧60 ≧45 ≧45 ≧60 ≧60 ≧60

終結(h) ≦10

圧縮強さ

(N/mm2)

1日 - ≧10.0 ≧20.0 - - -

3日 ≧12.5 ≧20.0 ≧30.0 ≧7.5 - ≧10.0

7日 ≧22.5 ≧32.5 ≧40.0 ≧15.0 ≧7.5 ≧20.0

28日 ≧42.5 ≧47.5 ≧50.0 ≧32.5 ≧22.5 ≧40.0

91日 - - - - ≧42.5 -

水和熱(J/g)

7日28日

- - -≦290≦340

≦250≦290

全アルカリ(%) 0.75以下(低アルカリ形は0.6以下)

塩化物イオン(%) 0.035以下 0.02以下

少量混合成分(%) 0以上5以下 0

ポルトランドセメント ~種類と規格~

熱を抑えたいセメントのみ→

↓比表面積を大きくして、水和反応速度を速くしている。

早強性のあるセメントのみ。↑ ←終結時間は全て同じ。早く硬化しないと脱型できない。

←早強性のあるセメントのみ。

最も水和熱を低く抑えられる低熱のみ→

アルカリ量が多すぎるとアルカリ骨材反応の原因になるため、上限値が規定→

↑普通、早強、超早強のみ、少量混合成分として高炉スラグ、フライアッシュ等の混入が認められている。

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ポルトランドセメント ~種類と規格~

☆ポルトランドセメント

では質問。

Q.比表面積で他と違う規格になっているセメントは何?その理由は?

A.早強、及び超早強ポルトランドセメント 水和反応速度を早くし、早強性を持たせたいから。

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ポルトランドセメント ~種類と規格~

☆ポルトランドセメント

Q.圧縮強さの下限値で1日の規定があるのは?  91日の規定があるのは?その理由は?

A.早強および超早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント 早強は早期に強度を出す必要があるから、1日強度の規定がある。他は早強ほど早期強度は必要ない。 低熱はゆっくり強くなるセメントなので、強度発現も遅い。そのため、91日強度の規定がある。

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ポルトランドセメント ~種類と規格~

☆ポルトランドセメント

Q.なぜ、中庸熱と低熱ポルトランドセメントのみ水和熱の上限値が規定されているの?

A.そもそも中庸熱、低熱は水和熱を低く抑えたいセメントだから。

Q.なぜ、普通ポルトランドセメントのみ塩化物量の上限値が大きいの?

A.普通ポルトランドセメントのみ、廃棄物などの混合材を5%含んで良いことになっている。塩化ビニルなどが含まれるため。 

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ポルトランドセメント ~種類と規格~

☆ポルトランドセメント

C2Sが多いと熱を低くできる。低熱はC2S量の下限値を定めているのに対し、下図のように中庸熱はC3Sの上限値を定めることで、C2Sの量を多くしている。

中庸熱も低熱も、結局はC2Sの量を増やして、ゆっくり水和が進むようにしている。

セメント名 C3S C2S C3A

中庸熱ポルトランドセメント ≦50% - ≦8%

低熱ポルトランドセメント - ≧40% ≦6%

耐硫酸塩ポルトランドセメント - - ≦4%

C3S C2S C4AFC3A中庸熱

C3Sを50%以下にすることでC2Sの量を増やしている。

C3S C2S C4AFC3A低熱

C2Sを40%以上にすることでC3Sの量を減らしている。

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ポルトランドセメント ~種類と規格~

☆ポルトランドセメント

なぜ耐硫酸塩はC3Aの上限値が規定されているのか。

耐硫酸塩はC3Aの量以外は普通セメントとほぼ同様。硫酸塩とC3Aが反応するとエトリンガイトを生成。エトリンガイトは膨張性の物質で、コンクリートを膨張させる。コンクリートが体積変化するとひび割れを生じる。

C3S C2S C4AFC3A耐硫酸塩

化学抵抗性が一番低い、C3Aの量を極限まで少なくして、硫酸塩への抵抗性を向上させている。

セメント名 C3S C2S C3A

中庸熱ポルトランドセメント ≦50% - ≦8%

低熱ポルトランドセメント - ≧40% ≦6%

耐硫酸塩ポルトランドセメント - - ≦4%

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ポルトランドセメント ~製造~

セメントの製造について

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ポルトランドセメント ~製造~

☆主原料

 普通ポルトランドセメント1t製造に必要な材料

主原料は石灰石。せっこうは量こそ少ないが、上図のように水和速度調整に重要な役割を果たす。これらを乾燥、粉砕し、均一に調合・混合する。

石灰石 1200kg

粘土 200kg

けい石 80kg

鉄 30kg

せっこう 40kg

セメント

せっこうがないと、水と接触すれば急結してしまう。

セメント

せっこうが、セメントにバリアを張り、急結しないようにしてくれる。 時間がくればせっこうはなくなり、正常に水和する。

せっこう バリア

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ポルトランドセメント ~製造~

☆焼成・仕上工程

 粉砕・調合・混合した原材料をプレヒーターにて余熱し、一定温度まで上昇させた後、キルンに投入。

 キルンでは1450℃前後で焼成し、急冷し、セメントクリンカーとする。その後C3Aの水和による急結を防止するため石こうを加えた後、粉砕し、ポルトランドセメントとする。

出典:太平洋セメント㈱HP セメントキルン

焼成温度の豆知識C3Sは1200℃程度C2Sは1000℃程度で生成されると言われています。

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ポルトランドセメント ~製造~

☆工程 一度太平洋セメントのホームページを見て下さい。

☆強熱減量 新鮮度の目安。湿気を吸って風化したセメントは、約1000℃(950±25℃)の強い熱で炙ると、水分が蒸発し、質量が減る。フライアッシュは未燃カーボンの影響により強熱減量が増す可能性がある。

 

セメントセメント

風化していないセメント は炙っても量は減らない

風化したセメントは炙ると 湿気が飛ぶ。質量減少。

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ポルトランドセメント ~化学成分~

☆主要な化学成分

 ①酸化カルシウム(石灰)(CaO)

 ②二酸化けい素(SiO2)

 ③酸化アルミニウム(Al2O3)

 ④酸化第二鉄(Fe2O3)

 互いに結合し、クリンカーの組成化合物を構成。

 例えば CaOとSio2でC2SやC3S

     CaOとでAl2O3でC3A

 なお、化学式を覚える必要はまったくない。

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ポルトランドセメント ~化学成分~

☆主要な化学成分の規格

①酸化マグネシウム(MgO)

 多すぎると異常膨張し、安定性を阻害。

 →JISでは上限規定がある。

②三酸化硫黄(SO3)

 主としてせっこうから供給される。

 過小→異常凝結、過大→膨張 セメント毎に適量が存在。

 →JISでは上限規定がある。 下限規定はないので注意。詳細は次ページ

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ポルトランドセメント ~化学成分~

☆主要な化学成分の規格項目 普通 早強 超早強 中庸熱 低熱 耐硫酸塩

酸化マグネシウム(%)

≦5.0

三酸化硫黄(%)

≦3.5 ≦3.5 ≦4.5 ≦3.0 ≦3.5 ≦3.0

強熱減量(%)

≦5.0 ≦5.0 ≦5.0 ≦3.0 ≦3.0 ≦3.0

全アルカリ(%)

≦0.75(低アルカリ形は0.6)

塩化物イオン(%)

≦0.035 ≦0.02

けい酸三カルシウム(%)

- - - ≦50 - -

けい酸二カルシウム(%)

- - - - ≧40 -

アルミン酸三カルシウム(%)

- - - ≦8.0 ≦6.0 ≦4.0

←エーライト系は一律高い。

←エーライト系は一律高い。

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ポルトランドセメント ~物理的性質および試験~

☆密度

①密度

 シリカ(二酸化けい素)分が多いほど、密度が大きい。

 分量は以下の順に多くなる。

 早強<普通<中庸熱<低熱

 →つまり、以下のような関係になる。

 シリカ分が多い=密度が大きい=強度発現が遅い

 さらに、鉄分が多くなると密度が大きくなる。

 →鉄なので当たり前。

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☆密度

②風化

普通ポルトランドセメントの密度は通常3.15g/cm3

程度。水の密度は1.0g/cm3。風化したセメントは表面に湿気(水分)を含むため、その分密度は小さくなる。

セメント

ポルトランドセメント ~物理的性質および試験~

風化していないセメント は密度に変化はない。

風化したセメントは 水分を含んでおり、 その分、密度は小さくなる。 水分は密度1。

セメント

この分は水なので、 軽くなる。

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ポルトランドセメント ~物理的性質および試験~

ルシャテリエフラスコ 出典:大和建工㈱HP

質量(g)

密度(g/cm3)

容積(ℓ)

×÷ ÷

☆密度

③密度の試験

 ルシャテリエフラスコと完全に脱水した鉱油(灯油や軽油)を使用。

 →骨材の場合は水を使用。セメントで水を使うと硬化するのでNG。

 密度試験の原理は簡単。

 質量/容積=密度

 容積は、鉱油で置き換えられた量。 人がお風呂につかると水かさが増える。 これが人の容積。セメントも同じ原理。

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☆粉末度

①比表面積

 概念や性質については説明した通り。

②粉末度の試験

 ブレーン空気透過装置を使用。

 セメントの隙間を通る空気の抵抗を

 マノメータ液の降下時間によって測定。

 抵抗があるほど、比表面積が大きいということ。

ポルトランドセメント ~物理的性質および試験~

ブレーン空気透過装置 出典:㈱マルイHP

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ポルトランドセメント ~物理的性質および試験~

☆凝結

①凝結と硬化の違いセメントは加水直後から水和が開始。次第に流動性を失い硬化する。凝結が終了後、硬化となる。凝結の段階は強度ゼロ。硬化が始まってから強度が増進する。

JISA0203コンクリート用語では以下のように定義している。

凝結:コンクリートを練り混ぜてから、時間の経過に伴って流動性を失い、次第に固くなる現象。

硬化:セメントが凝結した後、時間の経過に伴って硬さ及び強さが増進する現象。

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☆凝結

②凝結の試験

ビカー針装置を用いて標準軟度のペースト

で試験を行う。

ポルトランドセメント ~物理的性質および試験~

ペーストに刺さった針が所定の貫入量に達した時間が始発、終結。

貫入抵抗値ではなく、貫入深さであることに注意。

始発:始発用標準針が1mmの深さに達した時

終結:終結用標準針が僅かに跡が残るけど、先端の環の跡は残らない時

自動凝結試験装置

ビガー針装置

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ポルトランドセメント ~物理的性質および試験~

☆安定性

①意味

未反応の石灰(酸化カルシウム:CaO)、酸化マグネシウム(MgO)が過剰に含まれると、硬化の途中で異常膨張する。その有無を確認する方法を安定性という。

②安定性の試験

以下の2通りがある。国内産セメントで、安定性が問題になることはほぼ皆無。

a)パッド法

b)ルシャテリエ法

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ポルトランドセメント ~物理的性質および試験~

☆強さ

①強さの試験

セメントと標準砂との質量比を1:3W/C50%のモルタルを試料とする。

 つまり、質量比率が 水、セメント、標準砂=0.5:1:3 ということ。

 4×4×16cmのモルタルバーを3本作成し、次ページのように、曲げ試験を行った後、その折片を用いて、圧縮試験を行う。なお2015年度のJIS改正により、曲げ試験については実施してもしなくても良いとされた。

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☆強さ

ポルトランドセメント ~物理的性質および試験~

①モルタルバーを3本作成

②曲げ破壊で半分に折る。 ③折片を用いて計6本圧縮。

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ポルトランドセメント ~水和反応~

☆代表的な水和生成物

水和生成物 記号 特徴

水酸化カルシウム(水×C3S,C2S)

Ca(OH)2 コンクリートをPH12〜13程度の強アルカリにする。高炉スラグ微粉末の刺激剤や、ポゾラン物質と反応。

けい酸カルシウム(水×C3S,C2S)

C-S-H セメント硬化体を密実にする。Calcium Silicate Hydrate(カルシウム シリケート ハイドレート(水和物)の略)。

エトリンガイト(水×石こう×C3A)

AFt 石こうとC3Aの反応によって生成。膨張性の物質、初期の強度発現に重要。生成量過多の場合、異常膨張。

モノサルフェート(水×AFt×C3A)

AFm 石こうの反応終了後、AFtとC3Aが反応し生成。粘着力に寄与(カードハウス構造)。

アルミン酸カルシウム(水×C3A×Ca(OH)2)

C-A-H 黄鉄鉱と反応し、エトリンガイトを生成。Calcium Aluminate Hydrate(カルシウム アルミネート ハイドレートの略)。

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ポルトランドセメント ~水和反応~

☆代表的な水和生成物

ここに Ca(OH)2=水酸化カルシウム C-S-H=ケイ酸カルシウム水和物        AFt=エトリンガイト AFm=モノサルフェート    C-A-H=アルミン酸カルシウム水和物

第 1章 序論

このようなクリンカー鉱物で構成されているポルトランドセメントを水と練り混ぜると,クリンカー鉱物は水と反応し,自由水空間に溶解度の低い水和生成物を生成する.一般のポルトランドセメントの水和反応に関する概念図を図 1.2に示す 1.18).C3Sおよび C2Sの水和反応は化学量論的には類似しているが,反応速度は大きな相違があるとされている.一方,C3Aおよび C4AF の間隙質の水和反応についても時間的な相違があるが,同様な水和反応過程の区分と分類がなされている.一般に,各クリンカー鉱物の反応速度は C3A>C3S>C4AF>C2Sである.しかし,セメントは様々な原料からなるため,セメントのクリンカー鉱物は純粋な鉱物と多少異なる.そのため,セメントの水和反応と組織形成のモデルに関しては,反応速度の定義以外に各種のクリンカー鉱物の組成とその化学反応を正確に定式化することが必要である.

クリンカー鉱物 水和生成物 水

H

C3S(エーライト)

C2S(ビーライト)

CnSHm(珪酸カルシウム水和物) + 通常 n=1.7,m=4.0

CH(水酸化カルシウム)

H

C3A

(アルミネート相)

C4AF

(フェライト相)

CSH2 (セッコウ)

C6AS3H32

(エトリンガイド)

C4ASH12

(モノサルフェート水和物)

C4AH13

(アルミン酸カルシウム水和物)

+ +

C6AS3H32 (エトリンガイド)+ +

CH (水酸化カルシウム)

+ +

注意: C:CaO,S:SiO2,H:H2O,A:Al2O3,F:Fe2O3,S:SO3

図 1.2 ポルトランドセメントの水和反応の概念図 1.18) 図 1.2 をみると,C3S および C2S は,水と反応して結晶性の低い珪酸カルシウム水和物(nCaO・SiO2・mH2O,n=1.2~2.0(通常 1.7~2.0),m=4.0,以下に CSHと記す)を生成させ,同時に水酸化カルシウム(Ca(OH)2,以下に CHと記す)も副生させる.CSHの組成および形態は,材齢,水セメント比,養生温度などの養生条件により変化する.間隙質である C3Aおよび C4AFはセッコウがとも存する場合,エトリンガイド(AFt)(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O,以下に C6AS3H32と記す)を生成させ,セッコウが消失すると未水和の間隙質とエトリンガイ

5

C3S C2S

C3A

C4AF

Ca(OH)2 C-S-H

せっこう

エトリン ガイト

Ca(OH)2

H

H

組成化合物 水和生成物 水

+

+

+

+

+

+

+

AFt

AFm

C-A-H

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ポルトランドセメント ~水和反応~

☆エトリンガイト(AFt)

注水直後からC3Aとせっこうの反応で生成される。エトリンガイト=膨張性の物質で、可能な限り少ない方が良い。

ただし、エトリンガイトは、一次と二次に分かれ、一次エトリンガイトに関しては、C3Aとの反応によって、初期強度に大きく寄与する。

二次エトリンガイトは耐久性に影響を及ぼす。そのため、耐硫酸塩ポルトランドセメントはC3Aの量が極端に少ない。 

C3Aと、せっこうの反応で針状のエトリンガイトが生成。

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☆毛細管空隙

セメントの水和の進行とともに、毛細管空隙は形成され、毛細管空隙は水和物で満たされる。空隙が満たされることにより密実になる。乾燥収縮は毛細管空隙に含まれる水がなくなることで、毛細管張力が働き収縮する。

モルタル

骨材

骨材

骨材

骨材

骨材

骨材

毛細管空隙のモデル図

酸素

塩 ガス

ポルトランドセメント ~水和反応~

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ポルトランドセメント ~水和反応~

セメント量

セメントと結合する水

25%

ゲルに吸着される

水15%

㈱日本セメント防水研究所HPより

☆完全水和に必要な水量 セメント量の約40%→W/C40%

硬化にはゲルも重要。セメント硬化体や骨材の隙間を充填する働きをする。

ゲル水はこのゲルに取り込まれる水のこと。

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ポルトランドセメント ~番外編~

☆セメントのエコ

 近年はポルトランドセメント1tにつき廃棄物や副産物を400kg以上使用している。(石炭灰、汚泥・スラッジ、廃タイヤ、廃油、廃プラスチック等)

 →乾燥ベースで廃棄物を500kg/t以上使用するというエコセメントの定義に近づきつつある。(ただしエコセメントは原材料として500kg/t以上で、通常のポルトランドセメントは燃料等も含めて400kg/t以上。)

 また廃棄物や副産物も1450℃で焼成することにより、無害化され、ダイオキシン等の有害化合物は発生しない。セメント産業全体でわが国の全産業廃棄物の約7%をリサイクルしている。