17
特集 2 1.はじめに 近年,与ットシステットシステ協調型群各ロボット礎的な課題制御)につ隊列制御トシステム・ロボ・無人・複数・無人本研究で自動車の群ある手法に2.研究方法 2.1 リーダ本研究でォロア)軌道を追従法は著者のな隊列制御2.2 他の隊他の制御・リーダがアの追従・追従目標道追従と拡張性をしかし、 て実用性が効性を他のの問題と解3.問題と解問題1 2)。 解決手法 リーダ2 リーられた課題 とは異なり に関心がボットシ移動する存在する。 て考える。 各ロボッけでなくト群を用の編人工衛星車両による将来的に動問題の目しリー従型隊列誘り扱うリ当な時間遅ることで属してい手法は現在制御手法と手法と比較害物と衝可能な速度軌道や速度追従でつ。 ーダ追従い手法で列制御手決法につい手法 ロアの初期道の延長追従型隊に対して複,一つの機まっている。 テムには作機能を持つ場本研究ではを自律的に以下のようなた未知環境配置 列走を行調型群ロボ題である他 追従型隊列の概要 ダ追従型隊たリーダロ 型隊列を形大学の研究ところ存在違い てリーダ追しない安全移動するとをリーダのけた設計が隊列誘った。そのと同等以上次章にて述刻付その軌道を誘導を用 の機能を持に特化・簡の協調の,ロボット 移動問列を組ん用が可能探索 高度道路トシステのロボット誘導[1]につとは, ボット(以下 ,移動をで独自にていない。 型隊列誘軌道を通,フォロ期位置から 能。これに 実機への適 め,本研究高めること る。 標軌道と速たに設計6 いたロボた一台の化させための制御を群を目的地焦点を当て, 移動を行なあり,様々通システム( の構築が望の接触をて研究を行 各フォロアリーダ)と同 う手法であ案された手は以下に示,かつそのも安全に移の移動距離より同じ軌用を考えたでは問題をが研究の目が定まらた目標速度ト群の隊ボットで解複数のロボッ う行うか(どのようにこの解決方せる制御分野で研ITS) れるレスぎ目的地まう。 ボット(じ動きでリ(図 1)。であり,利点を持道上をフ可能。 用いて独立 を異なる速に生ずる問解決する手法 である。こい(初期移移動する 移動に鈴木 学 することトが協力し調制御問動させるとして隊手法である。 が行われてューロボッの安全でーダ 本手 同様 表現し直で移動でがいくつ提案し,リ まで 問題, 1 図 2 フ する研究 (生産シス目的とした解決を行う)という根(群移動問(フォ途として協調 る。 や,高速道つ短時間のているため,制御器のあり,他のーダ追従型1 リーダ追ォロア ォロアの初ム工学科) 機能型ロ調型的な課題と, )というメーショ調型群ロボッ 上での無動が可能制御系を易化や高手法と比較列誘型隊列誘導 リーダ 移動問題

リーダ追従型隊列誘導を用いたロボット群の隊列移 …...・無人飛 ・複数の ・無人車 本研究では 自動車の群移 ある手法に着 2.研究方法

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Page 1: リーダ追従型隊列誘導を用いたロボット群の隊列移 …...・無人飛 ・複数の ・無人車 本研究では 自動車の群移 ある手法に着 2.研究方法

特集 2

1.はじめに 近年,与え

ットシステム

ットシステム

協調型群ロ

各ロボットが

礎的な課題が

制御)につい

隊列制御は

トシステムだ

・ロボッ

・無人飛

・複数の

・無人車

本研究では

自動車の群移

ある手法に着

2.研究方法 2.1 リーダ追

本研究で取

ォロア)が適

軌道を追従す

法は著者の所

な隊列制御手

2.2 他の隊列

他の制御手

・リーダが障

アの追従可

・追従目標の

道追従と速

拡張性を持

しかし、リ

て実用性が低

効性を他の隊

の問題と解決

3.問題と解決

問題1 フォ

図2)。 解決手法 リーダ軌

2

リーダ

えられた課題

ムとは異なり

ムに関心が集

ロボットシス

が移動する機

が存在する。

いて考える。

は各ロボット

だけでなく以

ット群を用い

飛行機の編隊

の人工衛星の

車両による隊

は将来的に協

移動問題の課

着目しリーダ

追従型隊列誘導

取り扱うリー

適当な時間遅れ

することで列

所属していた

手法は現在の

列制御手法との

手法と比較し

障害物と衝突

可能な速度で

の軌道や速度

速度追従で分

持つ。 リーダ追従型

低い手法であ

隊列制御手法

決法について

決手法 ォロアの初期時

軌道の延長と

ダ追従型隊列

に対して複数

,一つの機能

集まっている。

ステムには作業

機能を持つ場合

本研究では群

トを自律的に隊

以下のような応

いた未知環境の

隊飛行 の配置 隊列走行を行う

協調型群ロボッ

課題である他

ダ追従型隊列誘

導の概要 ーダ追従型隊列

れたリーダロ

列型隊列を形成

た大学の研究室

のところ存在し

の違い してリーダ追従

突しない安全な

で移動するとき

度をリーダの初

分けた設計が可

型隊列誘導には

あった。そのた

法と同等以上に

て次章にて述べ

時刻付近で目

とその軌道を新

列誘導を用

数の機能を持っ

能に特化・簡略

業の協調のた

合,ロボット

群移動問題に

隊列を組んで

応用が可能で

の探索

う高度道路交

ットシステム

のロボットと

誘導[1]につい

列誘導とは,

ボット(以下

成,移動を行

室で独自に考

していない。

従型隊列誘導

な軌道を通り

き,フォロア

初期位置から

可能。これに

は実機への適

ため,本研究で

に高めること

べる。

標軌道と速度

新たに設計し

6

いたロボッ

った一台のロ

略化させた複

ための制御をど

群を目的地へ

に焦点を当て,

で移動を行なわ

であり,様々な

交通システム(ムの構築が望ま

との接触を防

いて研究を行

各フォロアロ

リーダ)と同

行う手法である

考案された手法

導は以下に示す

り,かつその軌

アも安全に移動

の移動距離を

より同じ軌道

用を考えた際

では問題を解

が研究の目的

度が定まらな

した目標速度で

ット群の隊列

ロボットで解決

複数のロボッ

どう行うか(協

へどのように移

この解決方法

わせる制御手

な分野で研究

ITS) まれるレスキ

ぎ目的地まで

う。

ロボット(以下

じ動きでリー

る(図 1)。本

法であり,同

す利点を持つ

軌道上をフォ

動可能。 を用いて独立

道を異なる速度

際に生ずる問題

解決する手法

的である。これ

ない(初期移動

で移動する

列移動に関

鈴木 学

決することを

トが協力して

協調制御問題

移動させるか

法として隊列

手法である。用

究が行われてい

ューロボット

での安全でか

下フ

ーダ

本手

同様

。 ォロ

に表現し直し

度で移動でき

題がいくつか

を提案し,リ

れまで

動問題,

図1

図2 フ

関する研究

(生産システ

を目的とした多

て解決を行う協

題)という根本

か(群移動問題

列制御(フォー

用途として協調

いる。

トや,高速道路

かつ短時間の移

しているため,

き,制御器の簡

かあり,他の手

ーダ追従型隊

1 リーダ追従

フォロア

フォロアの初期

テム工学科)

多機能型ロボ

協調型群ロボ

本的な課題と,

題)という基

ーメーション

調型群ロボッ

路上での無人

移動が可能で

,制御系を軌

簡易化や高い

手法と比較し

隊列誘導の有

従型隊列誘導

リーダ

期移動問題

Page 2: リーダ追従型隊列誘導を用いたロボット群の隊列移 …...・無人飛 ・複数の ・無人車 本研究では 自動車の群移 ある手法に着 2.研究方法

フォロアの

ある地点で

問題2 各ロ

解決手法 隊列間隔

るだけ抑制

隔を維持

問題3 本手

いているが

しまう。 解決手法

リーダ追

報を用い

情報の取得

LRFのサン

難しいた

問題4 一列

解決手法 リーダの

ーダが通

を可能に

この提案

学的な隊

4.おわりに 本研究では

導について考

同時に適用す

隊列誘導の有

各問題を全て

参考文献

[1] Online LVerification: M

の目標点を与

でリーダの速

ロボットの間隔

隔の維持とリ

制する目標点

した場合の制

手法では追従

が(図4),リ

追従型隊列誘

ることで誤差

得にはレーサ

ンプリング周

め,マルチレ

列の列型隊列以

の隣を並んで

通過した軌道と

にした。 案手法と上記

隊列を形成でき

は群ロボット

考え,その有

することが可

有効性はシミ

て解決してい

Leader-FollowM. Suzuki, K.

与えることで解

速度に滑らかに

隔が一定に保

リーダ追従型隊

点の調整則を設

制御性能への影

目標の軌道や

リーダの移動距

誘導に必要な情

差累積を防ぎ解

サレンジファ

周期とロボッ

レートサンプ

以外の隊列を

で常に移動する

と速度を目標

記で示した隊列

きる。

トの隊列移動た

有効性を向上さ

可能である。な

ミュレーション

いることを示し

wing Formatio Sakurama and

解決した。提案

に接続し,オ

保たれない(隊

隊列誘導の評

設計すること

影響を示した

や速度をリーダ

距離情報が長

情報をリーダ

解決した。こ

インダ(LRF)トの制御周期

リング制御を

を形成できない

る仮想的なリ

標にすることで

列間隔維持を

ための手法と

させる手法を

なお提案手法

ンと実機実験

した。

on Navigatid K. Nakano, S

7

提案する目標速

オンラインで設

隊列間隔維持

評価関数を定義

とで解決した。

た。

ダの初期位置

長距離移動の際

ダの現在からの

この提案手法で

)を用いること

期が大きく異な

を用いて解決し

い。

ーダを考え

で,二列以上

を組み合わせる

してリーダ追

を提案した。各

法を適用したリ

験(図6)による検

ion with InitSICE JCMSI,

速度はリーダ

設計が可能で

持の欠如,図3

義し,その和

。また前方の

置からの移動距

際に誤差が累

の相対座標と

で使用する相

とを想定して

なり実現する

した。

(図5),仮想リ

上での隊列移動

ることで幾何

追従型隊列誘

各提案手法は

リーダ追従型

検証を行い,

tial MovemenVol.5, No.5, p

と同様に立ち

である。

)。

和をでき

のみの間

距離を用

累積して

相対情

相対位置

いたが,

ことが

nts of Followpp.304-310, Se

図5

仮想

図6

ち上がり,リー

wers and Its ep. 2012.

図3 隊列間

図 4 リーダの

5 仮想リーダ

想リーダ

実機検証用ロ

ーダ軌道上の

Experimental

隔の維持

の移動距離

ダの移動

リーダ

ロボット

l

Page 3: リーダ追従型隊列誘導を用いたロボット群の隊列移 …...・無人飛 ・複数の ・無人車 本研究では 自動車の群移 ある手法に着 2.研究方法

特集 2

1.はじめに 地球温暖化

世界中で太陽

統へ連系され

効率のヒー

入が行われて

分布,短絡容

ている。その

負荷機器な

双方向情報通

ステム,「ス

本研究では

インセンティ

2.電気自動車

EV は常に

はしているが

用できれば,

利用するメ

EV は

EV は

分散さ

となる

EV に蓄え

とが可能であ

2

電気自動車

化などの地球

陽光発電や風

れるようにな

トポンプ給湯

ており,将来

容量,単独運

のため,この

どを,大容量

通信ネットワ

スマートグリッ

は,EV に蓄え

ィブを計算す

車の配電系統

に負荷として

が待機状態で

,系統にかか

リットは高い

は需要家が車を

は,今後も技術

された EV を

る えられた有効電

あるため,例

車を配電系統

球環境問題の解

風力発電,バイ

なっている。ま

湯器やプラグイ

来は大量に導入

運転,余剰電力

のような将来の

量蓄電池やパワ

ワークを利用

ッド」が提案

えられた電力

することを目的

統への利用可能

て充電電力を消

でいる場合もあ

かる設備コス

いと考えられる

を所有する目

術革新により

有効活用する

電力を系統の

例えば図 2 に示

統へ利用す

解決,省エネ

イオマス発電

また,需要家

インハイブリ

入されるもの

力による需給

の系統に対し

ワーエレクト

して総合的に

案されている。

力を配電系統の

的とする。

能性 消費している

ある。このよ

トを削減でき

る。 目的で,自然に

出力,蓄電容

ることで,系統

のために利用す

示すように,

図 1 スマ

8

する場合のイ

ネルギー,コス

電,コージェネ

家サイドでは,

ッドカー,電

のと期待されて

給バランス,系

して,出力が天

トロニクス応用

に制御を行うこ

。図 1 に,こ

の運用に利用

るわけではなく

ような EV を,

きる可能性もあ

に普及量が増

容量ともに増

統運用者は大

する方法の一

軽負荷時に

マートグリッ

インセンテ

スト削減,供

ネレーション

省エネ,CO電気自動車(

ている。この

系統安定度な

天候に依存す

用 FACTS 機

ことによって

このスマートグ

用する状況を想

く,充電終了

仮に系統側

ある。また,

増加していく可

増加が見込まれ

大規模電源や流

一例を示す。EEV を充電し

ドの共通概念

ティブについ

三栗 祐己

供給信頼度の維

ンなどの分散型

O2 排出量削減

(Electric Vehicのような電力系

などの問題が発

する風力発電,

機器,制御可能

て,この系統問

グリッドの共

想定し,その際

了後,次回の走

側が配電系統の

以下の点か

可能性が高い

れる 流通設備への

EV は一種の蓄

し,重負荷時に

いての一考

(生産システ

維持などへの

型電源が,大

減を促進する

cle; EV)など

系統では,配

発生すること

,太陽光発電

能な分散型電

問題を解決す

共通概念を示す

際に EV 所有

走行までは,

の制御機器と

らも,EV を

の投資を抑える

蓄電池として

に EV を放電

考察

テム工学科)

の期待から,

大量に電力系

るために,高

どの開発,導

配電線の電圧

とが懸念され

電,需要家の

電源とともに

する新電力シ

す。 有者に支払う

系統と接続

として有効利

を系統運用に

ることが可能

て機能するこ

電することで

Page 4: リーダ追従型隊列誘導を用いたロボット群の隊列移 …...・無人飛 ・複数の ・無人車 本研究では 自動車の群移 ある手法に着 2.研究方法

いわゆるピー

中の”sq”は電

EV の有効

を負うため,

ンセンティブ

3.電気自動車

ここでは,

出発して走行

自宅へ向けて

が完了した後

義し,この状

は,以下のよ

系統運

EV は

系統運

遊休 EEV に蓄え

損失を被る。

EV を使って

はその日一

バッテリー

に途中にコン

が増加するほ

残量の関数

詳細な計算

ターンを,図

がゼロである

図 4 は,遊

エネルギーの

るほど利用可

ークシフト機

電線の断面積

効電力を系統側

,系統側は相

ブがどの程度

車の有効電力

,需要家の E行に使われる

ての走行に使

後は,翌日以

状態に限り,

ような状況が

運用者と遊休

はインバータを

運用者は遊休

EV は指令に

えられた有効電

。この利便性の

ての通勤や買い

日 EV を使え

ー残量がαよ

ンビニに立ち

ほど,そのよ

となる。 算方法は割愛

図 3 に示すよ

るものも含ん

遊休 EV を含

の関係をシミ

可能なエネル

機能が実現でき

積 mm2を表す)

側が利用しよ

相応のインセン

度必要となるか

利用に必要な

EV の使い方の

る。その後目的

使い,自宅に到

以降の出発を待

系統からの貢

が実現可能なイ

休 EV は相互に

を利用して配

休 EV に対して

従った際には

電力を系統に

の損失をコス

い物など,日

えないことにな

よりもわずかに

ち寄る,などの

ような損失は減

愛するが,利便

ように 10 通り

んでいる。

含めた全ての運

ミュレーション

ルギーは増加す

き,電線の細

)。 ようとする場合

ンティブを Eかを定量的に

なインセンテ

の一日の流れ

的地に到着す

到着後,自宅

待つ待機状態

貢献要請に従

インフラや法

に通信可能 配電系統と車載

て有効・無効

は経済的イン

に使われた場合

スト換算するこ

日常的な使用が

なる。したが

に多い場合に

の行為が制限

減少していく

便性の損失は

想定している

運転パターン

ンした結果を

することがわ

9

細線化(あるい

合には,EV 所

EV 所有者に支

に検討する。

ティブのシミュ

を次のように

するが,目的地

宅の電源から普

態となる。本研

従うものと仮定

法的な整備が必

載電池との間

効電力の出力指

センティブが

合,EV 所有者

ことを考える

ができないこ

がって,利便性

には,かろう

限されることに

ものと考え

は金額に換算す

る。これらの

ンを考慮した

を示すグラフで

わかる。とこ

2 ピークシ

いは太線化の繰

所有者は走行

支払う必要が

ュレーション

に想定する。ま

地では充電は

普通充電によ

研究では,こ

定する。遊休

必要となる。

間で充放電が可

指令を出す が得られる 者は走行でき

る。バッテリー

ことを意味する

性の損失は非

じて走行はで

による利便性

られる。この

することがで

パターンは,

ときの,イン

である。これ

ろで,EV の

フトの例

繰り延べ)の

行できる距離が

があるだろう。

ン まず,EV は目

はしないものと

より満充電にな

の待機状態の

休 EV を系統運

可能

きる距離が短く

ー残量が一定量

る。すなわち

非常に大きく見

できるものの,

性の損失が存在

のように,需要

できる。なお

パターン J の

ンセンティブ料

れより,インセ

のバッテリー容

可能性が期待

が短くなると

。次項以降で

目的地へ向け

とする。また

なるまで充電

の EV を「遊休

運用に貢献さ

くなるという

量α以下とい

ちこの場合は,

見積もられる

,例えば気が

在する。バッ

要家の利便性

ここでは,Eのように翌日

料金と系統が

センティブ料

容量は,技術

待できる(図

というリスク

では,そのイ

けて自宅から

た目的地から

電する。充電

休 EV」と定

させるために

う,利便性の

いう状況は,

EV 所有者

。 が向いたとき

ッテリー残量

性は,抜釘―

V の使用パ

日の走行距離

が利用可能な

料金が増加す

術革新により

Page 5: リーダ追従型隊列誘導を用いたロボット群の隊列移 …...・無人飛 ・複数の ・無人車 本研究では 自動車の群移 ある手法に着 2.研究方法

10

増えることが予想される。したがって,EV のバッテリー容量が 1.5 倍になったときの結果も同図には示してい

る。この図から,利用可能なエネルギーは EV のバッテリー容量の増加とともに増えることがわかる。なぜな

らば,バッテリー容量が増加するほど少ないインセンティブ料金で利用できるエネルギーが増えるためである。 以上の結果をまとめると,EV の持つ全エネルギーの半分程度(約 7000kWh を系統が使いたいときに支払う

べきインセンティブ料金は,約 80 円/kWh 程度である。これは,通常の電気料金を 20 円/kWh と考えれば 4 倍

程度であり,全エネルギーを使おうとした場合には最高で 9000 円/kWh という莫大な料金を支払わなければな

らない。これは,いったん需要家の EV に蓄えられたエネルギーは,「翌日の移動」という大きな付加価値を持

つため,実質的には利用がかなり困難であることを示す。しかしながら,将来的にはバッテリー容量の増加と

ともに,同一インセンティブ料金で利用できるエネルギーは増加すると考えられる。 以上より,EV の有効電力は将来的に利用可能であるが,現時点の技術レベルでは利用が困難と結論づけら

れる。したがって,EV の系統への利用を考慮した時には,直接的に EV 所有者の利便性に影響を及ぼさない,

EV の無効電力制御についても検討する必要があるだろう。 4.まとめ 本研究では、スマートグリッドの概要を述べ,EV の利用可能性として,EV に蓄えられた有効電力を系統利

用する場合に必要となる経済的インセンティブを,EV 所有者の利便性の損失を考慮して定量的に評価した。

その結果,現状の技術では蓄電可能なエネルギー量が限られているため,EV に蓄えられたエネルギーを系統

が利用することは EV 所有者の著しい利便性の損失につながり,必要な経済的インセンティブは非常に大きく,

実質的には利用が非常に難しい。しかしながら技術の進歩に伴い EV に搭載される蓄電池容量が大きくなるほ

ど翌日の走行に対して蓄えられるエネルギーに余力が生まれ,系統利用がしやすくなるとの知見が得られた。

図 4 インセンティブ料金と利用可能なエネルギー

0

5,000

10,000

15,000

20,000

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000

Available  ene

rgy [kWh]

Incentive rate [yen/kWh]

Full battery level 24kWh Full battery level 36kWh

Available energy with same incentive increases.

図 3 系統への放電による利便性の損失

:not for use :charging :driving

Driving

Distance

[km/day]

A 29 6%B 29 12%C 29 10%D 29 6%E 143 4%F 129 4%G 143 2%H 156 2%I 89 2%J 0 52%

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 (time)

Group Driving PatternExistence

Probability

Page 6: リーダ追従型隊列誘導を用いたロボット群の隊列移 …...・無人飛 ・複数の ・無人車 本研究では 自動車の群移 ある手法に着 2.研究方法

11

算数文章題を対象とした作問学習支援システムの開発とその実践利用

倉山 めぐみ(生産システム工学科)

1. はじめに 知識は獲得しただけでは不十分であり,それを

使いこなせるようになるための活動が不可欠であ

る。学習者がすでに獲得している知識を用いて

種々の問題を解いていく問題解決学習は,この知

識を使いこなせるようになるための活動であり,

教育現場でもよく用いられている方法である。一

方で,問題を作らせることもその知識を使いこな

せるようになるために有用であることが知られて

いる 1)。前者の問題解決学習において問題に対す

る正解は概ね一意に決まるため,その正解を説明

することが問題解決の支援として十分に役立つと

いえ,多くの学習者を対象とした問題解決学習を

一人の教師が指導するといったことが可能である。

しかし後者の作問学習では,学習者が作成しうる

正しい問題が多様であり,学習者の作問に対して

フィードバックを与えるためには,各々の学習者

が作成した個々の問題を吟味する必要があり,通

常の授業において実施することは必ずしも簡単で

はなかった。 各々の学習者が作成した個々の問題の吟味が

抱える問題に対して,計算機による自動診断

(Agent-Assessment)を取り入れている。この方法

は,即時的な問題の診断・フィードバックを実

現する有用な方法とされており,既にいくつか

の試みが行われている。Agent-Assessment を実現

した作問学習支援システムはいくつか存在し 2)3),

その一つに加減で解くことができる算数文章題

を対象とした単文統合型の解法ベースの学習支

援システム「モンサクン」がある 4)。ここで,解

法ベースとは与えられた解法で解決可能な問題

を作成するという課題を与えることであり,こ

の解法の定着を指向した作問を行わせる。また

単文統合型とは,提供された単文集合の中から

単文を取捨選択し,適当な順序に並べることに

よる作問のことを表している。 加減で解ける算数の文章題は,その問題中に

表されている事象の演算構造と,答えを求める

ための計算の構造が一致する場合と一致しない

場合がある。前者が順思考型であり,後者が逆

思考型と呼ばれる。順思考型の問題では,問題

文さえ適切に把握できれば問題が解けるのに対

して,逆思考問題では数量構造の変形を必要と

するため,順思考型の問題を解けることは,必

ずしも逆思考型の問題を解けることを意味して

おらず,算数の能力形成においてきわめて重要

な課題といえる。 モンサクンでは,順思考型のみの問題を扱っ

ていたことから,本研究では逆思考型の問題の

作成に対応するようシステムの拡張を行った。

さらに,小学 4 年生を対象として 7 時限の運用

を算数の授業の一環として実践した 5)。この実践

では,児童がシステムを利用していくことを中

心に授業が展開されていたため,教師による一

斉授業はほとんど行われなかった。そこで,教

師による一斉授業を中心とした小学 2 年生を対

象とした 6 時限分の実践についても行った 6)。 2. 作問学習支援システム「モンサクンⅡ」 2.1 モンサクンⅡでの問題作り 作問学習支援システム「モンサクンⅡ」のシ

ステム画面を図 1 に示す。モンサクンⅡで行う

作問の手順として,まず,学習者に式と単文カ

ード群が与えられる。与えられた式で解くこと

ができる問題を,単文カード群の中から取捨選

択し,並べることで問題を作成する。作成され

る問題は,2 つの具体的な数字が入った単文と,

1 つの“?”が入った単文,「?はいくつでしょ

う」という固定された単文で構成される。学習

者は問題の作成を終えると,左側の「答え合わ

せ」ボタンを押すことでシステムが診断を行い,

学習者にフィードバックを与える。 2.2 単文統合としての作問タスクのモデル化 逆思考問題を含めた 1 回の和差で解ける算数

の文章題を作るうえで行うべきことは,(1)計算

式の決定,(2)関係式の決定,(3)物語構造の決定,

図 1 モンサクンⅡのインタフェース 図 2 単文統合としての作問タスクのモデル

特集 2

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12

(4)問題文の決定の 4 つのタスクに整理すること

ができる。これらを図式化したものが図 2 であ

る。ただし,実際の問題作りにおいては,必ず

しもこの順序で進行するものではなく,作問課

題の設定によってはあらかじめ決定されている

部分もある。 本研究において,算数文章題が保持している

何らかの数量関係を含んだ事象のことを物語と

呼び,扱っている物語は,「あわせる」「くら

べる」「ふえる」「のこる」の 4 つである。ま

た,問題を表す数量関係を関係式,未知数を求

める計算の方法を計算式と呼んでいる。例えば,

「りんごが 3 個あります。りんごを?個もらい

ました。りんごが 7 個あります。」といった場

合,物語構造は「ふえるといくつ」であり,計

算式が「7-3」,関係式が「3+?=7」と

なる。 2.3 作問課題の設定 単文統合としての作問タスクのモデルをもと

に,作問課題の設定を行っている。それぞれの

課題レベルにおいて学習者に与えられる情報

(単文カード群,式,物語構造)とそこで作成

する問題が決められている。それらを表 1 にま

とめる。 特に,課題レベル 3 では,計算式と物語構造を

与え,その計算式で解くことができ,かつ,その

物語構造に属する問題を 1 つ作成することになる。

作成できる問題が逆思考問題の場合には,学習者

自身が計算式から逆思考の関係式を見つけてそれ

に沿った問題を作ることが求められる為,難度の

高い課題となる。 2.4 診断とフィードバック 学習者に提供される単文カードには,メタデ

ータとして,(1)単文の種類,(2)取り扱っている

対象物,(3)数量を保持している。単文の並び方

から物語構造を判定し,その物語構造に沿って

対象物と数値の関係から関係式を導くことがで

きる。この関係式から計算式を導き,与えられ

ている作問課題との比較を行っている。比較の

結果,合致している場合は正解となる。合致し

ていない場合,本システムでは,課題から導く

ことができる正しい問題と比較し,その差が 1箇所の場合はその部分を指摘し,2 箇所以上の誤

りがある場合は誤りを含む単文を指摘し,再検

討するようにフィードバックを返している。 3. 小学 4 年生を対象とした実践利用 3.1 実践概要 モンサクンⅡを用いた算数の文章題作りの授業

を小学 4 年生 1 クラスを対象として 7 時限分(1 時

限 45 分,13 週間)にわたり実施した。 教諭は初回の授業の冒頭で,モンサクンⅡを使

った問題の作り方を 10 分程度使って解説した。

また,それ以降においても,教諭が個々の学習者

の作問活動を観察した結果に基づいて,教諭の判

断で各時限の終わりにつまずきやすい個所の指摘

や,まとめとしての説明などを数分間行った。 本実践に当たっては,システム利用開始前にプ

レテストを,システム利用終了後にポストテスト

とアンケートを行っており,テストでは作問を行

わせている。 今回のシステム利用では児童一人当たりが作成

した問題作成数(「こたえあわせボタン」を押し

た回数)の平均は,268.82 問(標準偏差=63.34),

そのうちのシステムが正しいと診断した問題数の

平均は 192.05 問(標準偏差=23.93)であった。 3.2 学習効果 システム利用前後におこなわれたプレ・ポスト

テストでは,システムを利用することにより問題

を作れるようになったか,さらに,逆思考問題が

作れるようになったかについて調査を行った。 プレ・ポストテストでは,紙面上において 17個の単文を用いて 4 つの問題を 15 分間で作成さ

せた。クラス全体の結果から,プレテストの段階

での成績により学習効果が異なる見通しがついた

ため,学習者群をプレテストの問題成立数の平均

以上と平均未満で上位群( n=21),下位群

(n=15)に分けてデータを処理したうえで,学習

者群(上位群/下位群)×時期(プレテスト/ポ

ストテスト)×項目(問題作成数/問題成立数/

順思考問題成立数/逆思考問題成立数)の 3 要因

混合計画の分散分析を ANOVA4 を用いて行った。

図 3 は上位群・下位群に分けたデータをグラフに

したものである。 分散分析の結果,学習者の主効果(F(1, 34)=48.4, p<0.001),時期の主効果(F(1, 34)=33.2, p<0.001),項目の主効果(F(3, 102)=140.4, p<0.001)がすべて有

意であった。また,2 次の交互作用が有意であっ

た(F(3, 102)=3.0, p<0.05)。 単純・単純主効果の検定から,下位群では,す

べての項目で,ポストテストにおいて作成/成立

数が有意に向上していた(問題作成数:F(1, 136)=32.5, p<0.001,問題成立数:F(1, 136)= 55.3, p<0.001,順思考問題成立数:F(1, 136)=8.9, p<0.01,逆思考問題成立数:F(1, 136)=19.9, p<0.001)。こ

れに対して,上位群については,問題作成数,逆

思考問題成立数ではポストテストにおいてその数

が上昇しているが,有意差はみられなかった。ま

た,問題成立数および順思考問題成立数ではその

数が下降しており,順思考問題成立数では,その

下降は有意であった(F(1, 136)=8.0, p<0.01)。 これらのことから,本システムを利用した作問

表 1 課題レベルと課題条件

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13

活動による学習効果が,上位群と下位群において

異なっていることが示唆された。さらに,順思考

問題成立数と逆思考問題成立数に関して分析する

と(Ryan 法),下位群においてはプレテストに

おいてもポストテストにおいてもそれらの問題の

成立数に有意差はみられなかったが,上位群にお

いてはプレテストにおいて有意差がなかったのに

対して,有意差がポストテストでは現れた

(p<0.001)。このことから,上位群については

有意な成績向上がみられたとは言えなかったもの

の,簡単な順思考問題ではなく,難しい逆思考問

題を作成しようという傾向が表れた可能性が示さ

れた。 4. 小学 2 年生を対象とした実践利用 4.1 実践概要 モンサクンⅡを用いた算数の文章題作りの授業

を小学 2 年生 1 クラスを対象として 6 時限分(1 時

限 45 分,5 週間)にわたり実施した。 本実践では,モンサクンⅡの作問方法に基づい

た教諭による問題つくりの一斉授業とモンサクン

Ⅱのシステム利用が行われた。 本実践に当たっては,システム利用開始前にプ

レテストを,システム利用終了後にポストテスト

を行っており,テストでは作問を行わせている。 今回のシステム利用では児童一人当たりが作成

した問題作成数(「こたえあわせボタン」を押し

た回数)の平均は,156.93 問,そのうちのシステ

ムが正しいと診断した問題数の平均は 90.4 問であ

った。 4.2 モンサクンⅡを利用した授業の分析 本実践利用では,教諭による一斉授業が行われ

る場面と児童がモンサクンⅡを利用している場面

に大きく分けることができ,2 つの場面を行き来

することで進められた。そこで,教諭による一斉

授業が行われた際の内容について詳しく分析を行

った。 一斉授業では,教諭がモンサクンⅡと同様の作

問方法をホワイトボード上で紙のカードを使って

解説した。このときの基本的な作問方法は ① 教諭が作るべき問題の式と物語構造の提示 ② 使うカードを 1 枚ずつ児童が復唱しながら

提示

③ それらのカードのうち問題を作成するのに

不要なカードの検索 ④ 不要なカードの理由づけ ⑤ 残ったカードから 3 枚の選択と配列 ⑥ 出来上がった問題についての判断

であった。 この方法は,最初から行われていたのではなく,

授業が進むにつれ確立されていった方法であった。 5. まとめ

本稿では,算数文章題を対象とした作問学習支

援システムモンサクンⅡについてとシステムを利

用した 2 つの実践利用について述べた。モンサク

ンⅡを設計するに当たり,作問タスクのモデル化

を行い,モデルに基づいた作問の課題設定を行っ

た。実践利用では,1 つ目として,2 項の和差算

で解くことができる算数文章題を既に学習し終わ

った小学 4 年生に対して学習効果について行った

調査の結果,問題を作れるようになっていたこと

と順思考問題に比べて難しい逆思考問題を作成し

ようとしていた傾向が示された。2 つ目として,

教諭による一斉授業とシステム利用を組み合わせ

た小学 2 年生の実践利用では,教諭による一斉授

業時の作問方法が分析の結果分かった。 現時点では,作問学習支援システムが算数の授

業の一環として利用できることが分かったが,教

諭にかかる負担が大きい。そのため,教諭の負担

を軽減するためにも授業における作問学習支援シ

ステムの利用方法について調査,分析していく必

要がある。 参考文献 1) Silver, E.A., CAI, J. : An Analysis of Arithmetic

Problem Posing by Middle School Students, Journal for Research in Mathematics Education, Vol.27, No.5, pp.521-539(1996).

2) Hirashima, T., Nakano, A., Takeuchi, A.:A Diagnosis Function of Arithmetical Word Problems for Learning by Problem Posing, Proc. of PRICAI2000, pp.745-755(2000).

3) Kojima, K., Miwa, K., : A System that Facilitates Diverse Thinking in Problem Posing, IJAIED - International Journal of Artificial Intelligence in Education, Vol.18 No.3, pp.209 - 236(2008).

4) 横山 琢郎,平嶋 宗,岡本 真彦,竹内 章:

単文統合としての作問を対象とした学習支援

システムの設計・開発",教育システム情報

学会誌,Vol.23,No.4,pp.166-175(2006). 5) 倉山めぐみ,平嶋宗 (2012) 逆思考型を対象

とした算数文章題の作問学習支援システム設

計開発と実践的利用,人工知能学会論文誌,

Vol.27,No.2, pp.82-91 6) M. Kurayama, M. Murakami, T. Hirashima:

Analysis of Lesson using Interactive Environment for Learning by Problem-Posing in Elementary School Arithmetic, Proc. of E-LEARN2012, pp.1511-1517, (2012).

図 3 上位群・下位群におけるテスト結果

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海洋生物由来の機能性分子とその可能性

松永 智子(物質環境工学科)

はじめに

海綿は,動物でありながら器官や発達した組織を持た

ず,移動能力もない多細胞生物である。しかしそれらが

生きていく上で作り出す様々な化合物は多岐に渡り,

我々人間に有用な成分も数多く見出されている。私が行

っているのは,「極微量で生物の生理機能に作用する化

合物」,すなわち生理活性物質を単離しその構造や機能

を調査して,生物の生きる仕組みを解明しようとする研

究である。今回は,海綿 Axinyssa aculeata から得られ

た新規ペプチド毒であるアーキュレイン(Aculeine;

ACU)の化学構造と,その過程で取り組むことになった,

長鎖ポリアミン(Long-chain polyamine, LCPA)による

バイオミネラリゼーションについて紹介したい。

海綿由来ペプチド毒 Aculeine

新規ペプチドで,膜に作用し細胞を破壊することで毒性を示す。その構造は,アミノ酸配列からジ

スルフィド結合 3 個から成る Knottin モチーフの存在が示唆されるだけでなく,ペプチドの N 末端が

未知構造を介して長鎖ポリアミン(LCPA)に修飾された,これまでに例のないユニークなものである。

同海綿には,ACU の部分構造となる LCPA 誘導体が,遊離物として含まれることも分かっている。

長鎖ポリアミン

海綿は珪藻と並び溶存ケイ酸を沈着させ

ることでガラス質の骨格,すなわちバイオ

シリカを形成する。海綿におけるバイオシ

リカ,すなわち骨片の形成は,シリカテイ

ンとよばれるタンパク質が触媒となりケイ

酸の重合反応を促進することで起こる可能

性が提唱されている。一方,珪藻では長鎖

ポリアミン(Long chain polyamines,

LCPAs)および LCPA で修飾されたタンパク

質であるシラフィンがケイ酸重合の鋳型と

して重要な役割を果たすと考えられている。

このように,海綿と珪藻では,同じガラス

質骨格を有する生物でありながら,その生成には全く異なる分子機構が提唱されてきた。本研究では,

A. aculeata にガラス質の骨片が多量に含まれていることに注目し,本海綿から得られた新規 LCPA

も骨片形成,すなわち海綿のバイオミネラリゼーションに関与するのではないかと考えた。そこで骨

片中 LCPA の定性分析,および本海綿由来 LCPA のケイ酸沈着能を検討しその可能性を示した。

今後の研究

今後は「種々の化合物に LCPA を付与することで,全く新しい機能を持った分子を創製することは

出来ないか」という考えの下,研究を進めて行きたいと考えている。生合成遺伝子工学でこれを達成

できれば,将来の化合物創製分野において LCPA を機能付与ブロックとして利用することが可能とな

り,創製する新規機能性分子の幅を大きく広げることが期待できる。そのためにまず,LCPA の生合

成機構を明らかにし,生合成酵素による LCPA 産生を達成することを目標に研究を始めている。

図1 海綿 Axinyssa aculeata の水中写真

図2 珪藻(上)および海綿(下)由来の LCPA ペプチド

特集 2

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魚類の育種にむけた染色体操作技術の応用と発生工学的研究 藤本 寿々(物質環境工学科) 1.はじめに 近年,漁獲量の減少や人口増加に対する水産資源の供給不足に対し,効率的な生物生産を目指した育

種技術の開発が求められている。染色体の数と組み合わせを人為的に統御する染色体操作技術を基盤とす

る倍数体(染色体セットを整数倍もつ生物のこと)も,育種上非常に有効な方法であると考えられている。

すなわち,染色体操作技術を用いることにより,配偶子形成を行わせない「不妊個体の誘導」,全雌や全

雄の養殖集団を作出する「性統御」,成長・耐病等の経済形質において「優良な系統や品種の作出」とそ

れらを遺伝的に固定する「クローン化」等が可能となり,水産分野ではこれまでに養殖対象種を中心に,

養殖の効率化を目指した技術改良が行われてきた 1)。 染色体操作で得られる倍数体(図 1 参照)のうち,受精後,第二極体放出阻止により比較的容易に得

られる三倍体は多くの場合「不妊」となるため,成熟期に成長が停滞しない,肉質が低下しない等,産業

上,重要な性質を持つことが知られている。実際に,雑種交配と染色体操作を組み合わせた三倍体魚が水

産試験場発のブランド魚「信州サーモン」「絹姫サーモン」等として商品化されている。ところが,三倍

体を得るためには受精後の高水圧処理が必須であり,誘起率も 100%ではない。そこで,別の手段として,

第一卵割阻止により得られる四倍体と二倍体を交配し,受精後の処理なしで三倍体を得る方法が考えられ

るが,四倍体の生残率は低く,親魚まで成育した例が極めて少ない。しかし,もし四倍体親魚が作出でき

れば,不妊三倍体のほか,異種間での交雑で複二倍体

(異質四倍体)から新種の合成,雌性発生による全雌

集団など,有用な形質を備えた個体を受精後の染色体

の倍加処理なしで得られることから,二倍性配偶子を

産出する四倍体親魚の作出は育種の幅を飛躍的に拡大

するツールになると期待されている。しかし,前述の

ように四倍体の生残率は極めて低いため実用化には程

遠く,四倍体の死亡要因の解明や二倍性配偶子獲得の

ための新たな手法の開発は急務である。 そこで本研究では,サクラマス Oncorhynchus

masou を材料として用い,第一卵割阻止で誘起された

四倍体の死亡要因の解明と,生殖系列キメラを介して

四倍性始原生殖細胞(PGCs)由来の二倍性配偶子を誘導

する発生工学的方法(図 2)の確立を目的とした。

2.研究方法 <第一卵割阻止で誘起された四倍体の死亡要因の解明>

第一卵割阻止により得られる四倍体が低生残率を示す原因が,高水圧処理の副作用によるものか倍数

性の高次化によるものかを明らかにするために,雌雄 1 対 1 交配による受精卵から,四倍体(4N)と雌性発

生二倍体(G2N)の両群を同一処理条件(700kg/cm2, 7 分間)で誘起し,生残率,発生学的観察,形態学的観察,

組織学的観察から両群の発生能力・生存能力の比較を行った。

図 1 魚類における倍数体作出の原理 図 2 生殖系列キメラを介した仮腹生産の原理

特集 2

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<四倍性始原生殖細胞の特性と生殖系列キメラを介した二倍性配偶子の誘導> 第一卵割阻止により得られる四倍体は,個体としての生存性は低いが,細胞としての生存性や機能性

を有している可能性があるため,組織学的観察,Whole mount in situ hybridization 法による生殖細胞に特異

的な vas mRNA の検出,トリプシンで解離した生殖隆起細胞の生体観察により,将来,生殖細胞(卵や精

子)に分化する始原生殖細胞(PGCs)の存否を調べた。また,PGCs を含む生殖隆起細胞(ドナー)を細

いガラス針で吸引した後,生存性の別の個体(宿主)の腹腔内へ移植し,宿主が成熟するまで飼育した。 3.結果および考察 <第一卵割阻止で誘起された四倍体の死亡要因の解明>

両群(4N, G2N)共に,最適時期での処理群では

孵化直前まで高い生残率を維持した(4N 群:PS6h,G2N 群:PS6.5h)。最適時間における細胞学的時期

は,第一卵割の前中期であり,その前後では生残率や

胚体形成率の低下が認められた。孵化直前の四倍体胚

の殆どは,小眼,小頭,体軸の湾曲等の重度の奇形胚

であり,正常な外部形態を示す個体でも血管系の発達

が著しく悪く,孵化期直前に急激に死亡し生残個体は

得られなかった。一方,G2N 群では正常な孵化稚魚

が実験期間終了(受精後 50 日)以降も生残した。 また,低率ながら受精後 2 ヶ月まで生残した四倍

体稚魚では 91.8%で浮腫が認められた。また,組織学

的には,鰓弁や腹大動脈の血管壁,腸管の粘膜層の発

達が不十分であり,浸透圧調節に関わる器官あるいは

細胞に生理学的な変化が生じた可能性が考えられた。このことから,四倍体の死亡要因は,第一卵割阻止

処理の副作用よりむしろ,四倍体への倍数性の上昇に起因する遺伝学的あるいは生理学的要因にあると考

えられた。2) <四倍性始原生殖細胞の特性と生殖系列キメラを介した二倍性配偶子の誘導>

受精後約 30 日目の第一卵割阻止胚を用いて,組

織学的観察,Whole mount in situ hybridization 法によ

る生殖細胞に特異的な vas mRNA の検出,トリプシ

ンで解離した生殖隆起細胞の生体観察を行った結果,

四倍体胚においても運動能を有する PGCs の存在が

確認され,生殖系列キメラ作出への応用が可能であ

ると考えられた。また,奇形胚においても,数は減

少するが PGCs が確認された。四倍性 PGCs を移植し

た二倍体宿主のうち 3 個体の雌および 11 個体の雄が

成熟した。雌 3 個体のうち 1 個体で,二倍体雄と交

配した子孫の中に三倍体と四倍体の出現が確認され

た。また,雄 11 個体中 2 個体の精子から二倍体が検

出された。このうち 1 個体から通常の精子より大型

の頭部を持つ精子が観察され,これが二倍体に相当

する可能性が考えられた。3)

以上のことから,効率的な育種を目指す上で重要なツールとなる四倍体は,受精卵に第一卵割阻止と

いう染色体操作を加えることで誘導することが可能であるが,この方法で誘起された四倍体は,倍数性自

体が持つ何らかの要因で生理学的な異常が引き起こされ,死亡することが明らかとなった。また,この致

死性の四倍体には機能的な PGCs が存在することが明らかとなったことから,生殖系列キメラを介した借

腹生産により二倍性配偶子が誘導できる可能性が示唆され,今後,染色体操作法と胚操作法を融合させた

新たな生命工学技術に寄与するものと期待される。 参考文献 1) Pandian T.J., Koteeswaran R. (1998) Ploidy induction and sex control in fish. Hydrobiologia 384: 167-243. 2) Sakao S, Fujimoto T, Kimura S, Yamaha E, Arai K. (2006) Drastic mortality in tetraploid induction results from

the elevation of ploidy in masu salmon Oncorhynchus masou. Aquaculture 252: 147-160. 3) Sakao S, Fujimoto T, Kobayashi T, Yoshizaki G, Yamaha E, Arai K. (2009) Artificially induced tetraploid masu

salmon have the ability to form primordial germ cells. Fisheries Science 75: 993-1000.

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カーネル密度推定法による非線形判別の可能性

山本 けい子(一般科目理数系)

1.はじめに 近年,大量データを有効に利活用するための機

械学習やパターン認識などが盛んに研究されてい

る。パターン認識の基本的な問題として,データ

を属するクラスに分類する判別問題があるが,単

純な線形判別モデルで対応できる事例は少なく,

非線形な判別手法を用いることが多い。非線形判

別問題においては,サポートベクターマシン(SVM)

[1]の出現により,大きな進展をとげているが,本

稿では,データそのものを用いて容易に判別可能

なカーネル密度推定法[2]による非線形判別手法を

紹介する。カーネル密度推定法は,データの分布

を仮定しないノンパラメトリックな手法であり,

複雑な現象を確率的かつ柔軟にとらえて表現でき

ることから大規模データ解析などへの応用が期待

される。

2.カーネル密度推定法を用いた非線形判別器 2.1 多変量カーネル密度推定法 カーネル密度推定法は,(1)式で定義されるよう

に,データ点にカーネル関数と呼ばれる基底関数

を配置し,それらを領域内で足し合わせることに

よって滑らかな推定量を得るものである。

(1) ただし, はデータベクトル,

はバンド幅行列 H をもつカーネル関数である。 多次元(多変量)データに対する推定量は,構

築の困難さや推定精度の問題から直接的な適用は

難しい。そこで,1変量カーネル密度推定の積で

表現するプロダクト(積型)カーネル密度推定法に

よって近似する。たとえば,2 変量プロダクトカー

ネル密度推定量は(2)式で定義される。

(2)

2.2 非線形判別器の構築 非線形判別手法の中でも,優れた判別性能が得

られる SVM は,データ空間を非線形変換した上で

線形分離することによって2クラス分類を実現す

る。しかし,多クラス分類への拡張やデータの増

加に伴って膨大になる計算量などの問題がある。 そこで,2.1 に示したような確率分布の推定を利

用してクラス判別を行う新しい非線形判別手法を

提案する。以下に非線形判別の流れを示す。 1) クラス別正解確率分布の作成 学習用データに対し,クラスごとにカーネル密度

推定法を適用し,クラス別確率分布の推定を行う。 2) 評価確率分布の作成 判別対象の評価用データに対し,カーネル密度推

定法を適用し,確率分布の推定を行う。 3) 正解分布と評価分布間での類似量の算出 判別対象データと各クラスの正解分布間の類似量

を平均積分二乗誤差によって算出する。 4) クラスの判別 評価分布と最も類似する正解分布のクラスへ判別

する。 クラス別正解分布を作成しておくことで,実際

の判別時には,判別対象データの分布推定と類似

量の算出のみでクラス判別を行うことができ,効

率的かつ汎用的な手法である。

3.手書き数字判別問題 ここでは,手書き数字判別問題に対して,カー

ネル密度推定法による非線形判別器(数字判別器)

を構築し,その判別性能を SVM と比較し,評価す

る。実装には,オープンソースの統計解析システ

ム R[3]を用いた。 3.1 実験用データ U.S. Postal Service(USPS)ZIP code datasets の手

書き数字を対象とした。USPS データは 1 つの数

字を 16×16 ピクセルのグレースケール値(-1 から

1 の範囲の値)によって表す正規化されたデータ

である。データ数を表 1 に記載する。 表1 U.S.P.S.データセット

0 1 2 3 4 Train 1194 1005 731 658 652Test 359 264 198 166 200 5 6 7 8 9 Train 556 664 645 542 644Test 160 170 147 166 177

Train は学習用データ,Test は評価用データである。

また,グレースケール値は,0 から 1 の間の値に

変換し確率値として使用した。 3.2 ビン化カーネル密度推定法 通常のカーネル密度推定法は,個々のデータ点

に対して基底となるカーネル関数を用いるが,得

られるデータがカウント(頻度)データの場合は,

特集 2

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カウント値

用いたビ

USPS デー

ール値の高

ネル密度推

ン化カーネ

ただし,

それぞれ ビン中点で

3.3 正解確

表 1 に示

で平均し,

点を加えた

規カーネル

た。グレー

論的な議論

推定した各

3.4 評価用

3.3 で作

と評価用デ

度を(4)式を用いて算

MISE の最

評価デー

4.結果 手書き数字

表 2 に示す。

表 2 に示す

数字判別器

て,判別率

であった。一

別率 0.9 以上

あった。

値に比例する

ン化カーネル

ータの性質か

高さを持つデ

推定法を適用

ネル密度推定

ビンに

である。 確率分布の作

示した学習用

,密度推定を

た 33×33 点,

ル,バンド幅

ースケール値

論なしに設定

各数字の正解

図1 推定

用データを用

作成した”0”かデータで作成

式で与えられる

算出する。

最も小さかっ

タのクラスと

字判別問題に

。 すように,カ

は,判別する

にばらつきが

一方,SVM は

上,平均して

る重みつきの

ル密度推定法

から,16×16 ビ

データとみな

用した。数字

定法は(3)式で

であり

おけるグレー

作成 用データを数

を行う。推定

カーネル関

幅は,各次元

値が標本数で

定した。 解確率分布を

定した正解確率

用いた数字判別

から”9”までの

成した評価確

る平均積分二

った(最も類似

として分類す

に対する各数

カーネル密度

る評価用デー

があるものの

はすべての数

て 0.94 という

のカーネル関数

法が使用される

ビンにグレース

なし,ビン化カ

字判別における

で定義される。

ースケール値

数字ごとに各ビ

定点は各ビンの

関数は,2 変量

元とも 1 に設定

ではないため,

を図1に示す。

率分布

別 の正解確率分

確率分布との類

二乗誤差(MIS

似した)クラス

する。

数字の判別性能

度推定法を用い

ータの数字によ

の,平均して

数字において

高性能な結果

18

数を

る。

スケ

カー

るビ

(3)

は,

値と

ビン

の中

量正

定し

,理

分布

類似

SE)

(4)

能を

いた

よっ

0.82,判

果で

追加

よる

性を

付加

に関

イズ

価す

うち

規乱

0.5)セル

2 に

低下

の性

ネル

健で

5.

つい

カー

別性

って

によ

ると

SVMみら

化に

参考[1] Spri[2] Mon S(199[3] RenviStathttp

加実験: カーネル密度

る非線形判別

を調べるため

加した手書き

関する実験を

手書き数字デ

ズを加え,判別

する。16×16ち,ノイズの

乱数(平均 0,)で与え,付加

ルの割合を増

に示す。

図 2 ノ

図 2 より,SV下するが,カ

性能の低下は

ル密度推定法

であると言え

考察 カーネル密度

いて,手書き数

ーネル密度推

性能よりも劣

て性能にばら

よるばらつき

と考えられる

M よりも性能

られた。以上

に向け,改良

考文献 V.Vapnik, "Th

inger, (1995). M. P. Wand, M.Statistics and Ap95) . R Developmentironment for staistical Computi://www.R-proje

0.1 0.

ノイズ

ノイズ

度推定法に

別器の頑健

め,ノイズを

数字判別

を行った。 データにノ

別性能を評

ピクセルの

大きさを正

標準偏差

加するピク

増やしたときの

イズを含むデ

VM の判別性能

ーネル密度推

は少ないことが

法による数字判

える。

度推定法を用い

数字判別の例

推定法による数

劣る結果となっ

つきが見られ

(各数字デー

。ノイズのあ

能低下の影響

上のことから,

良の余地がある

he Nature of S

C. Jones "Kernpplied Probabil

t Core Team “Ratistical computing, Vienna, Auect.org/.

3 0.5 0.

を含むピクセル

を含むデータ

の判別性能の

データの判別

能はノイズの

推定法による

がわかる。よ

判別器は SV

いたパターン

例を取り上げ

数字判別器は

った。判別す

れるが,これ

ータの分散)が

あるデータに

響は受けにく

,判別性能の

ると考えられ

Statistical Lear

nel Smoothing"lity, Chapman &

R: A language anting”, R Founda

ustria. URL

判別率 カー

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

.7 0.9

ルの割合

タの判別性能

表 2 評価用デ

のグラフを図

別性能 の量とともに

る数字判別器

よって,カー

M よりも頑

ン認識手法に

て検討した。

は,SVM の判

する数字によ

れは,書き手

が影響してい

に対しては,

く,頑健性が

の向上と実用

れる。

rning Theory",

", Monographs & Hall,

nd ation for

ーネル SVM0.87 0.98

0.96 0.96

0.75 0.91

0.81 0.91

0.77 0.93

0.77 0.92

0.82 0.95

0.82 0.93

0.76 0.9

0.8 0.97

0.82 0.94

データの判別率

,

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19

19th century Frenetic Literature TAQUET David (General Education)

1. Abstract Literatures have always been reflections of a period, of a society. Born shortly before the revolution that set France afire and free, many of the Romantic authors witnessed countless death and rampant violence. Haunted by the macabre scenes of the French Reign of terror, a group of Romantics turned to literary darkness and violence to find sensations that lyricism could not offer anymore; how was it possible for them to praise beauty, love or innocence after witnessing this irrational fury for gruesome justice? 図 1 The Nightmare (1781) from Anglo-Swiss painter Henry Fuseli illustrates the interest of the early Romantics for dreams, violence and the unconscious.

2. Research Process Investigating the origins of this literary genre, I made correlations with fairy tales, middle-age mysticism and the Gothic literature. Indeed, architectural representation in both The Monk by Matthew Lewis and the many works of Sade left a visual trace in the frénétique genre. In my intent to define this genre; I studied the symbiosis between dream and violence, and the many antithetic themes, the numerous paradoxes: death-life, hate-love, and horror-beauty. Furthermore, France in the first half of 19th century struggled to find its marks and recover from the Revolution and the Terror that followed it. As the romantics are still widely criticized by the literary intelligentsia, a renewed interest for the mystical and the relationship between dreams and the psyche is born both within the circles of natural philosophers and writers. 図 2 Theophile Gautier and Charles Nodier, Romantic thinkers whose short stories often borders on the fantastic and frenetic.

特集 2

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3. Findings In many ways akin to the Roman Noir and British gothic, the frenetic dream is first and foremost a reaction to the increasing materialism and rise of a new social hierarchy. Paradoxical but interdependent, the recurring themes include: dream and nightmare, life and death, love and hate, vampires and clergymen. Finding new narrative sources to explore, Nodier and Gautier still remained first and foremost romantics through the exaltation and contradiction of the self. The frenetic visions they dreamt of may have offered hints of answers to this disabused generation born from an uprising for justice that brought more chaos and inconsistency. Two different romantic oneiric visions filled with regrets and violence, just as Swedenborg and Mesmer's journeys into the human psyche and its extraneous sources of influence were attempting to reconcile social philosophy and spirituality. Dreamers born from a society in shamble, looking to go back to a violently primitive world whose path was laid down by the philosophers under the traits of the willful dreamer, these pioneers were consumed by an acute feeling of imperfection, of the distance between ideal and reality. While Nodier gathers the aspirations and defaults of the mysticism, Gautier warns in the same fashion all the followers of fantasies. Frenetic romantics and mystical philosophers turning towards the human psyches seeking for escapism, these mystics and writers paved the way respectively for the surrealists and psychoanalysts who shared the same passion for the interconnections between empirical experiences and the subconscious. 4.Additional comments I chose not to focus on some subjects, which leaves many open questions, many possibilities for further comparative research: the impact of wars and revolutions on French and English 18-19th century authors, the representations of madness in 18-19th century French-English-Japanese literary works, or even the influence of traditional tales and legends on modern society. 5. Bibliography

• Gautier, Théophile. “Arria Marcella.” Goimard and Stragliati 1: 531-558. Print. ---. “La Morte Amoureuse.” Goimard and Stragliati 3: 158-173. Print.

• Gautier, Théophile, and Adolphe Boschot. Souvenirs Romantiques: Hugo, Nerval, Balzac, Lamartine, Heine, Madame De Girardin, Les Cénacles 1830, Baudelaire. Paris: Garnier, 1929. Print.

• Juden, Brian. Traditions Orphiques Et Tendances Mystiques Dans Le Romantisme Français (1800-1855). Genève: Slatkine Reprints, 1984. Print.

• Met, Philippe. “Voix et voies de la femme-vampire: de Gautier à Le Fanu.” Bulletin de la société Théophile Gautier 21 (1999): 267-77. Print.

• Nelson, Hilda. Charles Nodier. New York: Twayne Publishers, 1972. Print. • Nodier, Charles. Contes du pays des rêves. Comp. Pierre Faucheux. Postf. Pierre-Georges Castex. Saverne:

Club des libraires de France, 1957. Print. ---. “Le Petit Pierre” Annales de la littérature et des arts 16 (1822): 77-83. Microform ---. Smarra, ou les Démons de la nuit. La Flèche: Maxi-Poche, 1998. Print.

• Rieben, Pierre-André. Délires Romantiques: Musset – Nodier – Gautier- Hugo. Paris: Librairie José Corti, 1989. Print.

• Todorov, Tzvetan. Introduction à la littérature fantastique. Paris: Seuil, 1970. Print. • Wilkinson, Lynn Rosellen. The Dream of an Absolute Language: Emanuel Swedenborg and French Literary

Culture. Albany: State University of New York, 1996. Print.

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テトラキス(光学活性β-ジケトナト)ユウロピウム(III) 錯体を用いた

アルカリ金属イオン検知の研究 城谷 大(一般科目 理数系) 1. 研究背景 希土類(レアアース)は水に流せるなど地球環境に優しい金属元素として知られ,その多くが蛍光特性を

持つことが知られている。特に希土類の中でも3価のユウロピウムイオン(EuIII)は,優良な赤色蛍光体として

液晶ディスプレイの蛍光素子など幅広く用いられている1)。一方,以前行った研究において,アルカリ金属

イオン(MI)と光学活性なβ-ジケトナト配位子を用いたEuIII錯体 MI[EuIII((+)-hfbc)4](M-Eu錯体: M=Na,K, Rb,Cs) を新規合成し,それらが優れた発光・キラル分光特性を示すことを見出した2),3)。そこで本研究では,

アルカリ金属イオンの代わりにアンモニウムイオン (NH4+)およびベンジルアンモニウムイオン(BA+)をカ

チオンとする Ct+ [EuIII((+)-hfbc)4](Ct+ = NH4+ or BA+)錯体を合成し,これらの錯体がEtOH 溶液中でカチオン

交換する性質を利用したアルカリ金属イオン検知試薬としての可能性を検討した4)。図1にEuIII錯体の構造お

よび,センサーEuIII錯体によるアルカリ金属イオン検知の概要図を示す。 2. 実験 センサーEuIII錯体(NH4

+or BA+) [EuIII((+)-hfbc)4](以下,NH4-Eu or BA-Eu 錯体)の合成は,以前報告した

方法2),3)で行い,元素分析,紫外可視・赤外吸収等で同定を行った。溶液調製はNH4-Eu or BA-Eu 錯体20uM のEtOH 溶液 10mlに0.2 M の塩化アルカリ金属塩水溶液0.02 ml を滴下することで,含有濃度[MI] = 400 uMとした。蛍光スペクトル測定は,励起スペクトルから同定した最適励起波長311 nmでおこなった。 3. 結果 図2 は400 uMのアルカリ金属イオンを含むNH4-Eu 錯体のEtOH 溶液

における613 nm での蛍光の相対強度を示したものである。特にRb+,

Cs+添加の場合,顕著な蛍光増幅が見られ,Cs+の場合は,15 倍以上の

発光増幅が確認された。一方で,Li+,Na+添加の場合では蛍光強度の減

少がみられた。BA-Eu錯体でもほぼ同様の結果であったことから,NH4-Eu 錯体or BA-Eu錯体は,主にRb+,Cs+といった重アルカリ金属イオン

の検知に有効であると考えられる。 4. 考察 上記の蛍光強度の違いは,NH4 or BA-Eu錯体がEtOH溶液内において下に示す様なカチオン交換を起こす

ことで,蛍光化学種であるM-Eu錯体を生成しているためであると考えられる。

図2: NH4-Eu 錯体のアルカリ金属イオン 添加による蛍光強度の相対比較

図1: EuIII錯体の構造およびアルカリ金属検知のメカニズム

[Eu((+)-hfbc)4]- complex

((+)-hfbc- =3-heptafluorobutyryl-(+)-camphorate)

特集2

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(NH4

+or BA+) [EuIII((+)-hfbc)4] + MI → MI[EuIII((+)-hfbc)4] + NH4+or BA+

実際,今回得られた蛍光強度は,以前に報告したCHCl3溶液でのM-Eu錯体における蛍光強度の傾向(M = Na < K < Rb < Cs )に一致している3)。またNH4 or BA-Eu錯体20 uM のEtOH溶液の紫外吸収スペクトル測定の結

果から,センサー錯体のカチオン自身がEtOHと溶媒和することにより,解離平衡が確認されている。以上

の事実から,上記のイオン交換反応が確かに生じていると考えられる。 5. 今後の課題と研究目標 現状の課題として挙げられるのは,含有アルカリ金属イオンの検出可能濃度の向上であり,その為にはま

ず,センサー錯体Ct+ [EuIII((+)-hfbc)4]自体の蛍光特性自体の改良が必要不可欠となる。現在,より光増感性

の高いカチオンを用いた新規センサーEuIII錯体の合成や,消光性の少ない溶媒とEtOHの混合溶媒による検討

を進めている。そして今まで得られた結果を踏まえ,特にセシウムイオン(Cs+)を選択的に検出できる様にす

るための蛍光センサー試薬の開発をめざす。当面の目標としては,含有濃度[Cs+] = 0.1 uMの検出を目指し,

将来的には,実際の放射線汚染水や道内の河川水などでの実地テストを進めていきたいと考えている。 参考文献 1) 長谷川靖哉・柳田祥三 著 「光る分子の底力」化学同人 2) D. Shirotani, T.Suzuki, and S. Kaizaki, Inorg. Chem. 2006, 45, 6111-6113. 3) J. L. Lunkley, D. Shirotani, K. Yamanari, S. Kaizaki, and G. Muller, J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 13814-13815. 4) 城谷 大・海崎純男, 第62回錯体化学討論会(2012 年) 要旨集(錯体化学会)1PF-01