10
サクション履歴・間隙比・温度の影響を考慮した水分特性曲線モデル Comprehensive modeling of the water retention curve considering the influences of suction histories, void ratio and temperature 菊本統* ・京川裕之** ・中井照夫*** Mamoru Kikumoto, Hiroyuki Kyokawa and Teruo Nakai * 工博 名古屋工業大学助教, 大学院工学研究科社会工学専攻(〒466-8555 名古屋市昭和区御器所町) ** 工修 名古屋工業大学博士後期過程二年, 大学院工学研究科社会工学専攻(〒466-8555 名古屋市昭和区御器所町) *** 工博 名古屋工業大学教授, 大学院工学研究科社会工学専攻(〒466-8555 名古屋市昭和区御器所町) Several models have been proposed to describe the relationship between suction and degree of saturation, i.e., the water retention characteristics of unsaturated soils. Although classical models such as one proposed by van Genuchten is certainly simple and widely used, they cannot consider typical phenomena observed in actual unsaturated soils that soil water retention curves trace hysteretic paths depending on the suction histories. Models considering the hysteretic behaviour of water retention curve have also been proposed. They are, however, incapable of considering the effect of other factors such as temperature or void ratio as they merely interpolate coordinates or slopes of the main wetting and drying curves. In the present paper, a simple method to take into account of the influences of suction history, temperature and void ratio is proposed. Key Words: Unsaturated soils, water retention curve, suction, temperature キーワード:不飽和土,水分特性曲線,飽和度,サクション,温度 1 .背景と目的 間隙が水で満たされていない不飽和土の力学応答や浸 透挙動は複雑で,飽和した同じ土のそれとは大きく異なっ ている.しかし,土が不飽和であることは実地盤では特別 なことではないので,その応力ひずみ特性や水理学特性は 適切に記述されねばならない.不飽和土の力学特性および 浸透現象のモデル化には水分特性曲線,すなわちサクショ s (毛管圧)や他の影響因子(温度 T ,間隙比 e など) と飽和度 S r の関係が不可欠である.例えば,不飽和土の応 力ひずみ関係を ( ) ij net ij ij w a ij a ij ij s u u u δ χ σ δ χ δ σ σ + = + = (1) で規定される Bishop 1) の有効応力σ '' に基づいて記述す るには,飽和度 S r の関数としてχ (飽和土ではχ = 1 ,乾燥 土ではχ = 0 )を規定する必要がある 2), 3), 4) .一方,不飽和 地盤の浸透現象の予測には透水係数 k w や透気係数 k a が必 要となるが,それぞれ飽和透水係数 k wu および乾燥透気係 k ad に対する比(比透水係数 k wr ,比透気係数 k wa )を飽 和度 S r に応じて与えることで算出している 5), 6), 7) 地盤材料の水分特性曲線は既に多くのモデルにより記 述されていて,例えば Brooks and Corey 8) van Genuchten 9) の式は簡便であるため広く用いられている.しかし,飽和 S r とサクションs の間に一義的な関係を仮定するこれら の古典的な水分特性曲線モデル(上記以外に例えば, Gardner 10) , Fredlund and Xing 11) )では,図-1 に示すような 排水・吸水(サクション増減)繰返し時のヒステリシス関 12), 13) を表現できない.不飽和土の水分保持特性のヒステ リシス現象を考慮できるモデルも幾つか提案されている Poulovassilis 14) , Mualem 15) , Scott et al. 16) , Kool and Parker 17) , 0 2 4 6 8 0 20 40 60 80 100 Suction s [kPa] Degree of saturation S r [%] 図-1 吸水・排水繰返し経路における水分特性曲線のヒ ステリシスの一例 13) - 343 - 応用力学論文集 Vol.12, pp.343-352 2009 8 月) 土木学会

サクション履歴・間隙比・温度の影響を考慮した水 …library.jsce.or.jp/jsce/open/00561/2009/12-0343.pdf論文集体裁和文見本 応用力学論文集Vol.12

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論文集体裁和文見本

応用力学論文集Vol.12 (2009年8月) 土木学会

サクション履歴・間隙比・温度の影響を考慮した水分特性曲線モデル

Comprehensive modeling of the water retention curve considering the influences of suction histories, void ratio and temperature

菊本統*・京川裕之**・中井照夫*** Mamoru Kikumoto, Hiroyuki Kyokawa and Teruo Nakai

*工博 名古屋工業大学助教, 大学院工学研究科社会工学専攻(〒466-8555名古屋市昭和区御器所町)

**工修 名古屋工業大学博士後期過程二年, 大学院工学研究科社会工学専攻(〒466-8555名古屋市昭和区御器所町) ***工博 名古屋工業大学教授, 大学院工学研究科社会工学専攻(〒466-8555名古屋市昭和区御器所町)

Several models have been proposed to describe the relationship between suction and degree of saturation, i.e., the water retention characteristics of unsaturated soils. Although classical models such as one proposed by van Genuchten is certainly simple and widely used, they cannot consider typical phenomena observed in actual unsaturated soils that soil water retention curves trace hysteretic paths depending on the suction histories. Models considering the hysteretic behaviour of water retention curve have also been proposed. They are, however, incapable of considering the effect of other factors such as temperature or void ratio as they merely interpolate coordinates or slopes of the main wetting and drying curves. In the present paper, a simple method to take into account of the influences of suction history, temperature and void ratio is proposed. Key Words: Unsaturated soils, water retention curve, suction, temperature キーワード:不飽和土,水分特性曲線,飽和度,サクション,温度

1.背景と目的

間隙が水で満たされていない不飽和土の力学応答や浸

透挙動は複雑で,飽和した同じ土のそれとは大きく異なっ

ている.しかし,土が不飽和であることは実地盤では特別

なことではないので,その応力ひずみ特性や水理学特性は

適切に記述されねばならない.不飽和土の力学特性および

浸透現象のモデル化には水分特性曲線,すなわちサクショ

ン s(毛管圧)や他の影響因子(温度 T,間隙比 e など)

と飽和度Srの関係が不可欠である.例えば,不飽和土の応

力ひずみ関係を

( )

ijnetij

ijwaijaijij

s

uuu

δχσ

δχδσσ

+=

−+−=′′ (1)

で規定される Bishop ら 1)の有効応力σ ''に基づいて記述す

るには,飽和度Srの関数としてχ(飽和土ではχ = 1,乾燥

土ではχ = 0)を規定する必要がある 2), 3), 4).一方,不飽和

地盤の浸透現象の予測には透水係数 kwや透気係数 kaが必

要となるが,それぞれ飽和透水係数 kwuおよび乾燥透気係

数 kadに対する比(比透水係数 kwr,比透気係数 kwa)を飽

和度Srに応じて与えることで算出している 5), 6), 7). 地盤材料の水分特性曲線は既に多くのモデルにより記

述されていて,例えばBrooks and Corey8)やvan Genuchten9)

の式は簡便であるため広く用いられている.しかし,飽和

度Srとサクションsの間に一義的な関係を仮定するこれら

の古典的な水分特性曲線モデル(上記以外に例えば,

Gardner10), Fredlund and Xing11))では,図-1に示すような

排水・吸水(サクション増減)繰返し時のヒステリシス関

係 12), 13)を表現できない.不飽和土の水分保持特性のヒステ

リシス現象を考慮できるモデルも幾つか提案されている

(Poulovassilis14), Mualem15), Scott et al.16), Kool and Parker17),

0

2

4

6

8

0 20 40 60 80 100

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

図-1 吸水・排水繰返し経路における水分特性曲線のヒ

ステリシスの一例 13)

- 342 - - 343 -

応用力学論文集 Vol.12, pp.343-352  (2009 年 8 月) 土木学会

論文集体裁和文見本

100

60

80

1.8 2.0 2.21.6Specific volume v

s = 100 kPas = 200 kPa

s = 300 kPaisotropic comp.fitting curves

s = 100 kPas = 200 kPas = 300 kPa

critical states

Speswhite kaolin

図-2 サクション s一定条件での等方圧縮・せん断試験:

体積変化に伴う飽和度Srの変化 23)

Suct

ion

s[kP

a]

Void ratio e2.00.5 1.0 2.0

300

100

200

0 1.5

air entry valuewater entry value

No. 5 clay

図-3 初期間隙比を変化させた粘土の保水性試験:空気

侵入値・水侵入値に及ぼす間隙比の影響 25) Li18), Huang et al.19), Liu and Muraleetharan20), Wei and Dewoolkar21), Kohgo22)など)が,乾湿両極の主曲線の位置

や傾きを補間して走査曲線(吸水過程と排水過程の曲線間

の移動経路)を求める必要があるなど煩雑であり,間隙比

や温度などサクション以外に地盤材料の水分保持特性に

影響を及ぼすと予想される他の要因も考慮した水分特性

曲線は決められない. 土の水分保持特性には,サクション履歴だけでなく間隙

比eや温度Tが影響することが指摘されている.間隙比の

影響に関する過去の実験的検討からは,サクション一定の

条件下でも土が体積圧縮して間隙比が減少すると飽和度

Srが増加することが示されている 23), 24)(図-2).また,

河井ら 25)は室内試験データをもとに,空気侵入値や水侵入

値は間隙比によって異なることを明らかにしている(図-

3).このような間隙比の影響に対して,飽和度 Srをサク

ションsだけでなく間隙比eにも従属である関数とするこ

とで考慮する方法も提案されている 24),26), 27).一方,温度が

不飽和土の水分保持特性に及ぼす影響についても幾つか

室内試験による検討が行われている.温度変化を考慮した

Vol

umet

ric w

ater

con

tent

Suction [cm]104 106

0.3

0.1

0.2

0.0105

25 °C60 °C

Bentonite Kunigel V1TM

図-4 排気・非排水条件での保水性試験:水分特性曲線

の温度依存性 28)

Suct

ion

[Mpa

]

図-5 含水比の異なる試料の温度変化を伴う保水性試

験:温度増加に伴うサクションの低下 30)

排気・排水条件での保水性試験 28), 29)では,温度増加に伴っ

て水分特性曲線が移動し,土の保水性が低下すると指摘さ

れている(図―4).含水比一定条件で温度を変化させた

保水性試験 30)でも定性的に同様の結果が得られていて,温

度上昇に伴うサクションの減少を確認できる(図-5).

このような温度変化の影響を考慮した水分特性曲線モデ

ル 31), 32)も提案されているものの,ヒステリシス現象を含め

た包括的なモデル化には至っていない. 以上のような状況に対して,本研究ではサクション履歴

(ヒステリシス特性)や間隙比,温度など種々の要因の影

響を簡単かつ統一的に考慮した水分特性曲線モデルを提

案する.提案手法は,サクションと飽和度の一義的関係を

与える古典的な水分特性曲線モデル 8)~11)の拡張であり,初

期値・境界値問題の数値計算にも簡単に導入することがで

きる.なお,本論文ではvan Genuchten9)のモデルの拡張を

中心として提案手法を説明するが,他のモデルを拡張する

場合でも手順は同様である(拡張したFredlund and Xing11)

のモデルによる計算結果も併せて示す).

- 344 - - 345 -

論文集体裁和文見本

2.ヒステリシスを考慮していない古典的な水分特性曲線

モデルによる主排水曲線および吸水曲線の表現

サクションと飽和度の一義的な関係を与える古典的な

水分特性曲線モデル 8)~11)を用いて,最大飽和度Smaxからサ

クションを作用させて得られる主排水曲線と最小(残留)

飽和度Sminからサクションを減じて得られる主吸水曲線を

表現する.提案手法は用いるモデルを問わないが,ここで

はとりあえず,van Genuchten9)のモデルを採用する.排水

側および吸水側の両極に位置する2つの主曲線 fd = 0およ

び fw = 0は次のように表される.

( ) ( ) ( ){ }( ) 0

1, minmaxmin

=−=−+−+=

rd

rmn

rd

SsFSsSSSsSf α (2)

( ) ( ) ( ){ }( ) 0

1, minmaxmin

=−=−+−+=

rw

rmn

rw

SsFSsSSSsSf β (3)

ここに,n, mは主曲線の形状を決める無次元のパラメータ

である.α, β はサクションの逆数の次元をもつパラメータ

であり,α < β とすることで,同じサクションに対応する

飽和度 Sr は主吸水曲線より主排水曲線上で常に大きくな

り,主排水・吸水曲線が交差しないことが保障される. 図-6はUniform glass beadsの保水性試験 13)より得られ

た主排水曲線とvan Genuchtenのモデルによる計算値の比

較である.材料パラメータは表-1に示す値を用いた.図

のように単調なサクション変化に伴う主曲線は,古典的な

水分特性曲線モデルでも適切に表現することができる.

0

2

4

6

8

0 20 40 60 80 100

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

図-6 サクション単調増加時の硅砂の排水曲線と van Genuchtenの式による主吸水・吸水曲線のモデル化 表-1 主排水曲線および主吸水曲線(van Genuchtenの式)

の構成パラメータ(Uniform glass beads)

3.ヒステリシス特性(サクション履歴の影響)を考慮し

た水分特性曲線モデルへの拡張

水分特性曲線は吸水過程と排水過程では異なる経路を

辿ってヒステリシス曲線を描くため,あるサクションに対

して飽和度が一義的には定まらない非定常な関係となる.

ただし,サクション履歴の影響を受けた土の水分保持状態

(Sr, s)は,常に主排水曲線と主吸水曲で囲まれた領域内を移

動するので,吸水・排水の履歴(ヒステリシス特性)を反

映する状態変数として,図-7に示す水分履歴パラメータ

Iwを定義できる.

rwrd

rwrw SS

SSI−−

= (4)

Srは現在の飽和度,Srd, Srwは現在のサクション下での主排

水曲線および吸水曲線上の飽和度であり,式(2), (3)により

求まる.Iwは主吸水曲線上では 0,主排水曲線上では 1 と

なる変数であり,0 ≤ Iw ≤ 1を満たす.この水分履歴パラメ

ータ Iwと式(2), (3)を用いれば,(サクション履歴の影響を

受けた走査曲線も含めて)任意条件下にある水分保持特性

は,一つの関数f (Sr, s, Iw) = 0で統一的に表すことができる.

( ) ( ) ( ) ( )

( ) ( ) ( ) 01,1,,,

=−−+=−+=

rwwdw

rwwrdwwr

SsFIsFIsSfIsSfIIsSf

(5)

この関数がサクション-飽和度の平面で描く面を Current retention surface(CRS)と呼ぶ.図-7に示すように,任意

の水分特性(Sr, s)は,常にCRS上に位置する. ところで,図-1に示した実験結果 13)では,吸水(経路

AB, AC, AD, AE)後の排水過程(経路BF, CF, DF, EF)に

おいて土の水分保持特性は走査曲線に沿って移動し,やが

て排水主曲線に収束する.これを模式的に示したのが図-

8(a)である.図のように,排水過程(dSr ≤ 0)では走査曲

線が排水主曲線側に移動するのに伴い,水分履歴パラメー

タ Iwは単調増加して1に収束する.一方,吸水過程(dSr > 0)では図-8(b)に示すように,走査曲線が吸水主曲線側に

移動するため,Iwは単調減少して0に収束する.このよう

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

図-7 吸水・排水の履歴を反映する水分履歴パラメータ

Iwと現在の水分特性を通る水分特性曲面 f = 0

- 344 - - 345 -

論文集体裁和文見本

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

(s, Sr, Iw)

(s+ds, Sr+dSr, Iw+dIw)

Drying : dSr < 0 & dIw > 0

drying scanning curve

Iw = 0

Iw = 1

(a) 排水時の走査曲線(dSr < 0 & dIw > 0)

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

(s, Sr, Iw)

(s+ds, Sr+dSr, Iw+dIw)

Wetting : dSr > 0 & dIw < 0

wetting scanning curve

Iw = 0

Iw = 1

(b) 吸水時の走査曲線(dSr > 0 & dIw < 0) 図-8 吸水・排水時の走査曲線と飽和度,水分履歴パラ

メータおよび水分特性曲面の変化 な関係を満足する水分履歴パラメータ Iw の発展則は幾つ

か考えられるが,その一つとして式(6)に示す関係を用いる.

( ) ( )⎪⎩

⎪⎨⎧

>−≤−−

==0

013

3

rrw

rrwrww dSwhendSI

dSwhendSIdSIhdIξ

ξ (6)

h(Iw) (= dIw / dSr)はh(0) = h(1) = 0かつ0 < Iw < 1のときh(Iw) < 0 を満足する関数である.吸水・排水過程での Iwと h(Iw)の関係を図-9に表す.ξ (> 0)はヒステリシス特性(サク

ション履歴の影響)を考慮するために唯一追加する材料パ

ラメータであり,吸水・排水繰返し時の主排水・吸水曲線

間の走査曲線より決定する.なお,Iwの発展則は以上の関

係を満足する別の表現に置き換えることも可能である. 地盤材料の水分保持状態(Sr, s)は,サクション-飽和度平

面で常に current retention surface上に位置し,f = 0を満足す

るので,式(7)が適応条件として課せられる.

0=∂∂

+∂∂

+∂∂

= ww

rr

dIIfds

sfdS

Sfdf (7)

これに式(2), (3), (5), (6)を代入すれば,飽和度Srの変化は次

式で与えられる.

-1.0

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0Iw

dIw

/ dS

r

k

k

k

k

k

図-9 吸水・排水時の水分履歴パラメータ Iwの発展則 表-2 ヒステリシス特性(サクション履歴の影響)を考

慮した提案モデルの構成パラメータ(Uniform glass beads, Aggregated glass beads, White silica sand)

Smin

mn

Smax

parameters for van Genuchten

model

influence of suction histories

[1/kPa][1/kPa]

White silica sand

0.200.10.30.74.7

1.00

70.0

Aggregated glass beads

0.100.270.430.219.0

0.89

70.0

0.020.250.420.222.0

0.85

Uniform glass beads

35.0

( )w

w

r

IhIf

dssf

dS

∂∂

+

∂∂

=1

(8)

式(8)により,如何なる条件下でも Sr の変化に応じて排水

過程あるいは吸水過程での Iwの発展則を適用すれば,飽和

度の変化を算出できる.したがって,既往の水分特性曲線

モデルとは違い吸水・排水の転換時の走査曲線やその傾き

の推定が不要である. ここまでに説明したサクション履歴の影響を考慮した

拡張van Genuchtenモデルを用いて,排水・吸水過程の繰

返しを伴う 3 種類の試料の保水性試験のシミュレーショ

ンを行い,実測データとの比較により提案モデルの検証を

行う.3 種類の試料のパラメータを表-2 に示す.7 つの

パラメータのうち 6 つは主曲線の形状を決定する van Genuchten のモデルのパラメータである.サクション履歴

の影響を考慮するために必要なパラメータはξのみである. 図-10はTopp and Miller13)が実施したUniform glass beads

の保水性試験の結果と解析値の比較である.Uniform glass beads は 180 μm の均一な粒径の球形ガラスビーズの集合

体である.(a)は吸水-再排水経路,(b)は排水-再吸水経路

での水分特性曲線を示す.図中のプロットは実験値,ライ

ンは解析値を表す.図より,van Genuchten の式を排水・

吸水主曲線とする提案モデルは,吸水・排水の転換を伴う

サクション履歴下での水分特性曲線を概ね記述できる.

- 346 - - 347 -

論文集体裁和文見本

0

2

4

6

8

0 20 40 60 80 100

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

0

2

4

6

8

0 20 40 60 80 100

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

(a)吸水-再排水経路(ABF, ACF, ADF, AEF) (b)排水-再吸水経路(GHM, GIM, GJM, GKM, GLM) 図-10 吸水・排水過程を伴うUniform glass beadsの水分特性曲線のヒステリシス 13)と計算値の比較

0

2

4

6

8

0 20 40 60 80 100

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

0

2

4

6

8

0 20 40 60 80 100

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

(a)吸水-再排水経路(ABH, ACH, ADH, AEH, AFH, AGH) (b)排水-再吸水経路(IJP, IKP, ILP, IMP, INP, IOP) 図-11 吸水・排水過程を伴うAggregated glass beadsの水分特性曲線のヒステリシス 13)と計算値の比較

0

5

10

15

20

25

0 20 40 60 80 100

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

0

5

10

15

20

25

0 20 40 60 80 100

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

(a) 排水-吸水-排水-吸水経路ABCDA (b) 吸水-排水-吸水-排水経路EFGHE 図-12 サイクリックな吸水・排水過程を伴うWhite silica sandの水分特性曲線のヒステリシス 19)と計算値の比較

- 346 - - 347 -

表-3 ヒステリシス特性(サクション履歴の影響)を考

慮できるように拡張したFredlund and Xingのモデルの構成

パラメータ(White silica sand)

吸水主曲線とする提案モデルは,吸水・排水の転換を伴う

サクション履歴下での水分特性曲線を概ね記述できる. 図-11はAggregated glass beadsの保水性試験13)の結果と

対応する解析結果の比較である.Aggregated glass beadsは200 μm 程度の径になるように焼結させたガラスビーズ粉

末の集合体であり,先に示したUniform glass beadsとは異

なる間隙構造を有している.(a)は吸水-再排水経路,(b)は排水-再吸水経路での走査曲線を示す.図-10 と同様

に,van Genuchten の式を拡張した提案モデルは,サクシ

ョン履歴の影響に関するパラメータを一つ追加するだけ

で,再吸水時および再排水時の走査曲線を統一的にモデル

化しているといえる. 次に,吸水・排水過程の複数回の繰返しを伴う複雑なサ

クション履歴下で行われた保水性試験のシミュレーショ

ンを行う.図-12はサクションの増減を繰り返したWhite silica sand の保水性試験 19)の結果と計算値の比較である.

White silica sandは0.074 ~0.297 mmの径の硅砂であり,実

験では間隙比 e = 0.56程度となるようにバイブレータで締

固めた供試体を用いている.同図の(a)は排水-吸水-排水

-吸水経路,(b)は吸水-排水-吸水-排水経路での水分特

性曲線のヒステリシスループを示している.図より,提案

モデルは,吸水・排水過程の複数回の移行を繰り返す条件

下においても統一的な材料パラメータで水分特性曲線を

精度よくシミュレートできることがわかる. ここまでvan Genuchtenを例として,古典的水分特性曲

線モデルをヒステリシス現象も記述できるように拡張す

る方法について説明してきた.しかしながら,提案手法は

サクションと飽和度を一義的に関係付ける水分特性曲線

モデルであれば,基盤とするモデルを問わない.例えば,

Fredlund and Xingのモデル 11)を用いる場合,式(2), (3)の代

わりに次の関数を排水・吸水主曲線として用いる.

( )

( ) 0

elnminmaxmin

=−=

−⎥⎥⎦

⎢⎢⎣

⎡⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛+−+=

rd

r

op

d

SsF

SsSSSfγ (9)

( )

( ) 0

elnminmaxmin

=−=

−⎪⎭

⎪⎬⎫

⎪⎩

⎪⎨⎧

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛+−+=

rw

r

op

w

SsF

SsSSSfη (10)

ここに,o, pは主曲線の形状,γ, η は排水・吸水時の主曲

0

5

10

15

20

25

0 20 40 60 80 100

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

B

C

D

A B C D A

plot: experimentline: simulation

A

(a) 排水-吸水-排水-吸水経路ABCDA

0

5

10

15

20

25

0 20 40 60 80 100

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

(b) 吸水-排水-吸水-排水経路EFGHE 図-13 ヒステリシス特性を考慮できるように拡張した

Fredlund and Xingのモデルによる計算結果の一例:White silica sandの保水性試験の結果と計算値の比較 線の位置を決めるパラメータである.これ以降の手順は

van Genuchten のモデルを用いた場合と全く同じである.

まず,不飽和土の任意の水分保持状態(Sr, s)を水分履歴パラ

メータ Iwを介してCurrent retention surface(f (Sr, s, Iw)= 0)で統一的に表し,式(6)で Iw の発展則を仮定する.ここで

適応条件df = 0を考えれば,サクション履歴を考慮した水

分特性曲線モデルが得られる. ヒステリシス現象を記述できるように拡張したFredlund

and Xingのモデルによる解析結果の一例を図-13に示す.

同図には,図-12に示したWhite silica sandの保水性試験

の結果を再掲した.表-3に解析に用いた材料パラメータ

を示す.図に示すように,提案手法はサクションの増減に

よる吸水・排水過程の移行を繰返す際のヒステリシス応答

を的確に表現している.つまり,ベースとする古典的水分

特性曲線モデルによらず,排水・吸水主曲線を適切にモデ

ル化できれば,提案手法はヒステリシス現象を考慮できる

ように古典的モデルを拡張することが可能である.

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論文集体裁和文見本

4.修正サクション s* による間隙比や温度など種々の影響

因子を考慮した水分特性曲線モデルへの拡張

不飽和土の水分保持特性は,サクションおよびその履歴

以外の様々な因子にも影響を受ける.ここでは,前節で提

案したヒステリシスを記述できる水分特性曲線モデルを,

間隙比eや温度Tの影響も考慮できるように拡張する. 間隙比が水分保持特性に及ぼす影響について,過去に行

われた実験的検討では,サクション一定でも土が体積圧縮

して間隙比が減少するほど飽和度 Srが増加すること 23), 24)

(図-2)や,間隙比が小さくなるほど空気侵入値(飽和

土に空気が入り始めるサクションの最小値)および水侵入

値(乾燥土に水が入り始める最大のサクションの最大値)

が増加すること 25)(図-3)が示されている.すなわち,

同じ土でも密であるほど同一サクション下でも飽和度は

高く,同一飽和度に対してはサクションが大きくなる.こ

のような間隙比eの影響を考慮するために,次式のように

拡張したvan Genuchtenの式が提案されている 24), 27).

( ) ψααα ewheresSmn

r =⎥⎦⎤

⎢⎣⎡ +=

−**1 (11)

ここでは最大・最小飽和度を用いていないが,本質的には

式(2), (3)と同じである.α およびψ は材料パラメータであ

る.式(11)では,従来のvan Genuchtenのモデルで定数とし

ていたαを,間隙比に依存した変数α∗とすることで密度の

影響を考慮している.しかし,この方法は van Genuchtenのモデルに限定して密度の影響を考慮できるよう拡張す

るものであるため,他の水分特性曲線モデルを拡張する場

合にはそれぞれの関数や材料パラメータを修正する必要

があるため汎用性に乏しい. これに対して本研究では,飽和度Srとサクション sの関

係を与える一般的な水分特性曲線モデルに簡単に適用可

能な修正サクション s* による方法を提案する.式(11)を別

の解釈から等価な式(12)に変形すれば,間隙比 e の影響を

考慮して変換した修正サクション s* により密度の影響を

考えることができる.

( ) seswheresSmn

rψα =⎥⎦

⎤⎢⎣⎡ +=

−**1 (12)

すなわち,一般的な水分特性曲線モデルは通常のサクショ

ンsを間隙比など種々の要因の影響も考慮した修正サクシ

ョン s* に置き換えるだけで,様々な要因の影響を考慮した

発展型モデルへと簡単に拡張できる. 温度が水分保持特性に及ぼす影響については,先に示し

た図-4より,同じ土であっても高温条件下であるほど同

一サクション下での飽和度は小さくなり,空気侵入値も減

少する傾向を見て取れる.このような温度の影響も本質的

には間隙比のそれと同様であるため,温度変化の影響を考

慮した修正サクション s*を用いて水分特性曲線を定式化

することで簡単にモデル化できる.本論文では,間隙比と

温度の影響を考慮した修正サクション s*として次式用い

る.

( )[ ]20* 1 TT

eess TNC

e

−+⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛= ξ

ξ

(13)

ξe, ξTは間隙比および温度の影響を表すパラメータである.

eNC, T20は基準状態の間隙比と温度を示す定数であり,基準

状態(e = eNCとT = 20 °C)では,式(11)の修正サクション

s* は通常のサクション sに一致する.なお,修正サクショ

ン s* の定義は,図-3, 5に示す間隙比や温度によるサクシ

ョンの変化を追従できるような関係とすることが望まし

いが,現状は試行錯誤の段階にあるため,簡潔さを優先し

て線形関係としている. 本論文では,修正サクション s*を前節で提案したヒステ

リシス特性(サクション履歴の影響)を考慮した水分特性

曲線モデルに導入して,間隙比と温度の変化を考慮した保

水性試験のシミュレーションを行う.まず,式(5)のサクシ

ョンsを修正サクションs*に置き換えると次式が得られる.

( ) ( ) ( ) ( )

( ) ( ) ( ) 01

,1,,,**

***

=−−+=

−+=

rwwdw

rwwrdwwr

SsFIsFI

sSfIsSfIIsSf (14)

基準状態(e = eNCとT = 20 °C)では s* = sとなるので,式

(14)を用いて定式化したモデルの応答は前節で提案したモ

デルのそれと一致する.水分履歴パラメータ Iwの発展則は

式(6)を用いる.現在の水分保持状態(Sr, s*)は f = 0で規定さ

れるCurrent retention surface上に常に位置するので,制約

条件として式(7)と同様の適応条件式(15)が課せられる.

0** =

∂∂

+∂∂

+∂∂

= ww

rr

dIIfds

sfdS

Sfdf (15)

修正サクション s* はサクション sと間隙比eおよび温度Tに従属な変数であるため,その増分は次式により算出する.

dTTsde

esds

ssds

∂∂

+∂∂

+∂∂

=***

* (16)

式(15)に式(6), (14), (16)を代入すれば,サクション履歴,間

隙比および温度の影響を考慮した飽和度の変化が求まる.

( )

( )ww

ww

r

IhIf

dTTsde

esds

ss

sf

IhIf

dssf

dS

∂∂

+

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

∂∂

+∂∂

+∂∂

∂∂

=

∂∂

+

∂∂

=

1

1

***

*

**

(17)

本提案手法で重要なのは,通常のサクション sを修正サク

ション s* に置き換えるだけで,温度や間隙の変化など

種々の要因の影響も考慮できるように既往のモデルを簡

単に拡張できる点である.なお,s* による水分特性曲線の

記述は,間隙比や温度も考慮した多次元の水分特性曲面モ

デルに拡張していることに他ならない. ここまでに説明した間隙比と温度の影響を考慮した水

分特性曲線モデルを用いて,2種類の地盤材料を想定した

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論文集体裁和文見本

表-4 サクション履歴・間隙比・温度の影響を考慮した

提案モデルの材料パラメータ

0

5

10

15

20

25

0 20 40 60 80 100

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

図-14 間隙比が異なる土の排水・吸水過程における水分

特性曲線のシミュレーション 密度変化や温度変化を伴う保水性試験の解析により,数値

パラメトリックスタディを行う.材料パラメータを表-4に示す.計9つのパラメータのうち6つは排水・吸水主曲

線の形状を決定するパラメータであり,ξ,ξe およびξT は

それぞれサクション履歴・間隙比・温度の影響を考慮する

パラメータである.なお,ξeとξTは初期間隙比や温度を変

化させた保水性試験の結果から定めることができる。材料

パラメータはWhite silica sandと藤ノ森粘土の実測データ19),33)をもとに決定したが,ξeとξTには仮想の値を設定して

いる. 図-14は間隙比が異なるWhite silica sandの保水性試験

のシミュレーションで得られた排水・吸水過程での水分特

性曲線である.図に示すように,過去の実験的研究でも指

摘されている間隙の異なる土の水分特性曲線の違いを,提

案モデルは一組の構成パラメータで統一的に記述してい

ることがわかる. 図-15 に示した解析結果は,飽和した藤ノ森粘土に 4

種類のサクション(B: 49 kPa, C: 98 kPa, D: 196 kPa, E: 392 kPa)を載荷して排水させた後,体積圧縮させたシミュレ

ーションの結果である.図より,不飽和土が体積圧縮して

間隙比が減少するのに応じて飽和度が増加し,最終的には

飽和に至る様子を確認することができる.すなわち,図-

2に例示された体積変化に伴う実際の土の飽和度の変化を,

0

50

100

150

200

250

300

50 60 70 80 90 100

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

(a) 飽和度とサクションの関係

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

50 60 70 80 90 100

Voi

d ra

tio e

Degree of saturation Sr [%]

(b) 飽和度と間隙比の関係 図-15 サクション増加による排水過程(AB, AC, AD, AE)と体積圧縮に伴う吸水過程(BF, CG, DH, EI)のシミ

ュレーション 提案モデルは再現しうることを示している.一方,このよ

うな体積変化を伴う不飽和土の水分保持特性を既往のほ

とんどの水分特性曲線モデルは考慮できていない.なお,

この図に示した解析に限り,本論文で提案する水分特性曲

線モデルを組み込んだ不飽和土の弾塑性モデル 34)による

解析値を示しているが,サクション増加時の体積変化やそ

れに伴う水分特性曲線の変化が現れていることがわかる. 図―16は相異なる温度一定条件下でのWhite silica sand

の保水性試験のシミュレーション結果である.図より,提

案モデルは過去の実験事実 28)(図-4)で示されているよ

うな温度条件による水分保持特性の違いをシミュレート

できることがわかる. 図-17 には 2 種類のシミュレーション結果を示してい

る.一つは破線で示した温度一定条件(20 °C)での排水・

吸水過程の解析値である(経路 ABDA,).もう一つは排

水経路の途中で温度増加を与えて50 °Cとし(経路BC),

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論文集体裁和文見本

0 20 40 60 80 1000

5

10

15

20

25

Degree of saturation Sr [%]

Suct

ion

s [kP

a]

図-16 異なる温度条件下での土の排水・吸水過程におけ

る水分特性曲線のシミュレーション

0

5

10

15

20

25

0 20 40 60 80 100

Suct

ion

s [kP

a]

Degree of saturation Sr [%]

(a) 飽和度とサクションの関係

10

20

30

40

50

60

0 20 40 60 80 100

Tem

pera

ture

T [℃

]

Degree of saturation Sr [%]

(b) 飽和度と間隙比の関係 図-17 サクション増減に伴う排水・吸水(AB, BD, DA, CE, EF)と温度増加による排水(BC)

50 °Cのままでサクションの増減(経路CEF)を与える解

析の結果である.図-17 より,提案モデルは温度上昇に

伴う飽和度の減少(排水の促進)やその後の排水・吸水過

程での水分特性曲線の違いを適切に考慮した解析結果を

与えているということができる. 5. 結論

van Genuchten のモデルをはじめとするサクション-飽

和度の一義的関係を仮定する古典的な水分特性曲線モデ

ルは頻繁に用いられているが,排水過程と吸水過程の転換

時のヒステリシス特性や間隙・温度の変化の影響を考慮す

ることはできない. 本研究では,このような古典的水分特性曲線モデルを,

サクション履歴,間隙比および温度の影響を簡単かつ統一

的に考慮できるように拡張する方法を提案した.まず,水

分履歴パラメータ Iwとその発展則を導入し,ヒステリシス

特性(サクション履歴の影響)のモデル化を行った.つづ

いて,修正サクション s* を用いて既往の水分特性曲線モ

デルを,密度や温度など諸々の要因の影響を簡単に考慮で

きるように拡張する方法を提案した.提案モデルでは,水

分履歴パラメータと修正サクションを導入して拡張した

Current retention surface(f (Sr, s*, Iw) = 0)を,適応条件式を

満足するように機械的に解くだけで水分特性曲線が自動

的に得られるため,初期値・境界値問題の数値計算にも容

易に導入できる.また,古典的な水分特性曲線モデルで排

水・吸水主曲線を記述することができれば,新たに設定す

る必要がある材料パラメータは,サクション履歴・間隙

比・温度の影響を考慮するξ, ξe, ξT の3つのみである.サ

クション履歴の影響を考慮するξ は乾湿繰返しを伴う保

水性試験の結果から容易に決定することができ,間隙比お

よび温度の影響に関するパラメータξe, ξT は異なる間隙比

や温度で保水性試験などにより求めることができる. 提案手法の妥当性を計算結果および実測データとの比

較に基づいて議論した結果,提案手法により拡張した水分

特性曲線モデルは実測データに見られるヒステリシス現

象や間隙比および温度の影響を適切に記述できることが

わかった.なお,別報 34)では,ここで提案した方法でヒ

ステリシス特性と間隙変化の影響を考慮した水分特性曲

線モデルと,地盤材料の諸特性の簡単且つ統一的なモデリ

ング方法 35)に基づく不飽和土の構成モデルについて説明

している. 参考文献 1) Bishop, A.W., Alpan, I., Blight, G.E. and Donald, I.B.:

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ション・飽和度・密度を統一的に考慮できる不飽和土

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地盤材料の諸特性の簡単且つ統一的なモデリング -密度, ボンディング, 時間効果特性を例として-, 応用

力学論文集 12, 2009(投稿中). (2009年4月9日 受付)

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