2
ENN 2015.3.25 46 このシステムを基盤として、海外案 件の経験をリファインして、ソフトに 反映させています。こうしてお客様と プラクティスを作って、ユーザに提供 していることが、高評価をいただいて いる理由です。 ENN:世界では、どのようなプラ ントで稼働しているのですか。 大坂:全世界で異なる約10の産業分 野、約500サイトで稼働していますが、 主にオイル&ガスと、発電プラント向 けに多くの納入実績があります。地域 的に導入業種が異なりますが、北米で はオイル&ガスと電力の両方、豪州 では電力に使われた実績が多くありま す。最近では、プラントの新設が多い 中東のオイル&ガスのプラント向けが 増加しています。 プラントの新設、改造・増強のいず れにも対応でき、この点も導入実績が 増加して一因です。 全世界で約500サイトで稼働 ENN:「j5」を日本に導入しよ うと考えた理由は何ですか。 大坂:私自身、石油会社、エンジ ニアリング企業、ソフトのプログラ マーを経験してきました。つまり、 プラントのエンドユーザ、コントラク ター、ソフトウェアベンダーとして 勤務した経験があります。その経験を 持った目で、「j5」のパッケージを 見た時に、ピンときました。当時、日 本には、この種のオペレーション管理 ソフトは、個別の小さなパッケージが ある程度で、インテグレートされたも のは無かった。そこで、手応えを感じ ました。 手応えを感じたので、南アフリカの ケープタウンにある「j5」のオフィ スを訪ねたのですが、小さな会社です が、エンジニアは高学歴で技術オリエ ENN:海外で開発された、パッ ケージソフトウェアが日本で売れた例 はあまりありませんが、「j5」は順調 にユーザ数を増やしています。「j5」 はどのようなソフトウェアなのでしょ うか。 大坂:海外のパッケージですから、た しかに日本企業が導入することに難し さはあります。しかし、当社の開発者 はプラントの運転管理については、30 年近い経験があり、この豊富な経験を ベースにして開発されたのが、「j5」 です。最初にリリースされたのが1985 年ですから、商品としては、すでに成 熟しています。主に、プロセス産業の 運転管理に使われています。 技術的な特徴は、拡張可能な「j5」 のフレームワーク上に様々な運転管理 とHSEのアプリケーションを統合で きることです。このため、シンプルで 使い勝手が良い点が受け入れられてき たと思います。 My Opinion マン島に本社を持ち、開発拠点を南アフリカのケープタウンに持 つ「j5」。同社が開発したプラント運転管理システム「j5」が急 成長している。この5年間の平均売上増加率は35%、この2年間では 60%という高率で売上高が伸びている。昨年には、日本にも日本法人 j5Japanが設立され、その後に開催されたワークショップには、120名 が参加した。わが国でもすでに、オイル&ガス会社が導入しており、 今後も市場を拡大する気配だ。j5Japanの取締役社長である大坂宏氏 に、好調の要因について語ってもらった。 プラント運転管理ソフト「j5」が急成長 全世界 500 サイトで導入、今年第2四半期にはメジャーバージョンアップ j5Japan 取締役社長 大坂 宏氏に聞く

プラント運転管理ソフト「j5」が急成長...HSEとしては、事故管理、ヒヤリ ハット管理、変更管理、コンプライア ンス管理などが対象となります。

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: プラント運転管理ソフト「j5」が急成長...HSEとしては、事故管理、ヒヤリ ハット管理、変更管理、コンプライア ンス管理などが対象となります。

ENN 2015.3.2546

 このシステムを基盤として、海外案

件の経験をリファインして、ソフトに

反映させています。こうしてお客様と

プラクティスを作って、ユーザに提供

していることが、高評価をいただいて

いる理由です。

 ENN:世界では、どのようなプラ

ントで稼働しているのですか。

 大坂:全世界で異なる約10の産業分

野、約500サイトで稼働していますが、

主にオイル&ガスと、発電プラント向

けに多くの納入実績があります。地域

的に導入業種が異なりますが、北米で

はオイル&ガスと電力の両方、豪州

では電力に使われた実績が多くありま

す。最近では、プラントの新設が多い

中東のオイル&ガスのプラント向けが

増加しています。

 プラントの新設、改造・増強のいず

れにも対応でき、この点も導入実績が

増加して一因です。

全世界で約500サイトで稼働

 ENN:「j5」を日本に導入しよ

うと考えた理由は何ですか。

 大坂:私自身、石油会社、エンジ

ニアリング企業、ソフトのプログラ

マーを経験してきました。つまり、

プラントのエンドユーザ、コントラク

ター、ソフトウェアベンダーとして

勤務した経験があります。その経験を

持った目で、「j5」のパッケージを

見た時に、ピンときました。当時、日

本には、この種のオペレーション管理

ソフトは、個別の小さなパッケージが

ある程度で、インテグレートされたも

のは無かった。そこで、手応えを感じ

ました。

 手応えを感じたので、南アフリカの

ケープタウンにある「j5」のオフィ

スを訪ねたのですが、小さな会社です

が、エンジニアは高学歴で技術オリエ

 ENN:海外で開発された、パッ

ケージソフトウェアが日本で売れた例

はあまりありませんが、「j5」は順調

にユーザ数を増やしています。「j5」

はどのようなソフトウェアなのでしょ

うか。

 大坂:海外のパッケージですから、た

しかに日本企業が導入することに難し

さはあります。しかし、当社の開発者

はプラントの運転管理については、30

年近い経験があり、この豊富な経験を

ベースにして開発されたのが、「j5」

です。最初にリリースされたのが1985

年ですから、商品としては、すでに成

熟しています。主に、プロセス産業の

運転管理に使われています。

 技術的な特徴は、拡張可能な「j5」

のフレームワーク上に様々な運転管理

とHSEのアプリケーションを統合で

きることです。このため、シンプルで

使い勝手が良い点が受け入れられてき

たと思います。

 My Opinion

 マン島に本社を持ち、開発拠点を南アフリカのケープタウンに持

つ「j5」。同社が開発したプラント運転管理システム「j5」が急

成長している。この5年間の平均売上増加率は35%、この2年間では

60%という高率で売上高が伸びている。昨年には、日本にも日本法人

j5Japanが設立され、その後に開催されたワークショップには、120名

が参加した。わが国でもすでに、オイル&ガス会社が導入しており、

今後も市場を拡大する気配だ。j5Japanの取締役社長である大坂宏氏

に、好調の要因について語ってもらった。

プラント運転管理ソフト「j5」が急成長

全世界500サイトで導入、今年第2四半期にはメジャーバージョンアップ

j5Japan 取締役社長 大坂 宏氏に聞く

Page 2: プラント運転管理ソフト「j5」が急成長...HSEとしては、事故管理、ヒヤリ ハット管理、変更管理、コンプライア ンス管理などが対象となります。

47

htpeD nI

2015.3.25 ENN

ンテッドな会社という印象を持ちまし

た。そこで会社を視察させていただい

て、「商品コンセプトは日本市場に合

う」という印象を持ちました。

 ENN:グローバルな販売ネットワー

クは、どのようになっていますか。

 大坂:この2年間で、「j5イン

ターナショナル」「j5ノースアメ

リカ」「j5オーストラリア」「j5

シンガポール」「j5EMEA(ヨー

ロッパ・ミドルイースト・アフリカ)」

「j5Japan」の6拠点を設立し、グロー

バルに対応しています。

 ENN:急成長されていますね。

 大坂:過去5年間の平均で年率

35%、2年間では年率60%売上が増加

しています。

 ENN:日本国内での実績はいかが

ですか。

 大坂:2010年からの5年間で、天然

ガス、石油精製を中心に約50サイトで

導入されました。約5,000人の方が生産

現場で使用されています。

 ENN:導入のポイントは、どのよ

うなところにありますか。

 大坂:ユーザの業務フローが適正化さ

れていないと、導入しても意味があり

ませんから、業務フロー改善をユーザ

の方々にお願いします。そのうえで、

お客様に、作業指示、運転ログ、申し

送り帳といった運転管理のアプリケー

ションの導入をお奨めしています。

 最近では、モバイルを使った巡回点

検やHSEソリューションの導入実績

も増えています。

 ENN:j5Japanは昨年、設立されて

いますが、これまでの活動実績はいか

がですか。

 大坂:昨年9月に第一回目のワーク

ショップを開催し、120名が参加され、

「j5」の関心は相当に高いという印

象を持ちました。

 ENN:日本での販売体制はどのよ

うになっていますか。

 大坂:現在、ダイセック、千代田シ

ステムテクノロジーズ、日揮情報シス

テム、三菱化学エンジニアリングの4

社にシステムインテグレーターをお願

いしていますが、システムインテグ

レーターは今後も増やしていきたいと

考えています。

第2四半期に

「j5 2015」をリリース

 ENN:今後の事業展開について

は、いかがですか。

 大坂:グローバルでは、これまでに

対応ができていない、中国、ヨーロッ

パやアジア・大洋州諸国へのアプロー

チを強化します。このために、グロー

バル・パートナーである、シュナイ

ダーエレクトリック、IBM、アクセ

ンチュアなどとの関係を強化し、プラ

ントの新設および改造・増強の双方に

対応します。

 ENN:製品のバージョンアップに

ついては、いかがですか。

 大坂:今年、第2四半期には、メ

ジャーバージョンアップを行う「j5

2015」をリリースします。

 バージョンアップにより、エンド

ユーザが容易に組み込み可能なソフト

ウェア構成が可能になり、ユーザイン

タフェースの大幅な改良により使いや

すくなります。同時に、運転・保全・

HSEに関する新たなパッケージを製

品として投入します。

 また、グローバルスタンダードに準

拠した製品開発にも引き続き、取り組

みます。

 ENN:日本国内での事業展開につ

いてはいかがですか。

 大坂:国内では引き続き、グローバ

ル・パートナーや複数のシステムイン

テグレーターと市場の掘り起こしを行

います。

 これまでオイル&ガスを中心に実績

を上げてきましたが、今後は下流の石

油化学・化学分野やディスクリート系

にも市場を拡大し、従来の運転管理中

心から、保全、HSE分野にも展開し

ます。

 j5Japanとしては、日本を取り巻くア

ジア諸国にアプローチします。

 ENN:ソリューションの面ではい

かがですか。

 大坂:基本的には、業務プロセス、

ワークフロー、業務の可視化、目標管

理といったマネジメントシステムのシ

ステム化を進めます。

 運転管理では、モバイル環境での巡

回点検やSOP(標準運転要領)の分野

に注力します。

 保全分野では、CMMS(コンピュー

タを活用したメンテナンス管理システ

ム)との連携、作業許可などの拡充を図

ります。

 HSEとしては、事故管理、ヒヤリ

ハット管理、変更管理、コンプライア

ンス管理などが対象となります。

 ENN:昨年、j5Japanを設立し、滑

り出し好調ですが、当面の事業目標は

いかがですか。

 大坂:目標は、サイト数の増加とと

もに、アプリケーション数の増加で、

お客様にバリューを提供し、売上高の

50%増です。

 ENN:ありがとうございました。

 My Opinion j5Japan 取締役社長 大坂 宏氏に聞く

大坂 宏(おおさか ひろし)氏

 1956年、秋田県生まれ。1979年新潟大学

工学部化学工学科を卒業。石油精製エンジ

ンニア、産業用リアルタイムシステム構築

システムエンジニアを経て、1992年にプロ

セスエンジニアリングとシステムエンジニ

アリングを融合させたエンジニアリング・

サービスを提供する大坂システム計画を創

業。2014年には、j5の日本代理店j5Japan

を設立。