9
931 蛋 白 質 核 酸 酵 素Vol.50No.8(2005) Review ミトコンドリアの融合と分裂を支配する 分子たち 石原直忠 ・三原勝芳 ミ トコン ドリアは,細 胞応答や細胞分化によりその形態を大きく変化させる動的なオルガネラ で あ る,ミ トコ ン ドリ アの 形 態 は融 合 と分 裂 の バ ラ ン ス に よ り調 節 され て お り,そ れ らの 過 程 には 局 在 の 異 な る3つ のGTPaseが関与 して い る.失 活 した ミ トコ ン ドリア は 融 合 に よ って 機 能が相補 され,ま た,ア ポ トー シス進行時にはミ トコン ドリアの分 裂が誘導 される.こ のよ う に,ミ トコ ン ドリア の 動 的 な 形 態 変 化 は細 胞 機 能 制 御 に密 接 に 関 与 して い る と考 え られ る.本 稿では,ミ トコン ドリアのダイナミクスを制御する分子について概説する. ミ トコン ドリア オルガネラダイナミクス 膜融合 オル ガネラ分裂 ダイナ ミン様GTPase は じめ に ミ トコ ン ドリア は 酸 化 的 リ ン酸 化 に よ りエ ネル ギ ー の ほとんどをつ くり出す細胞の発電所である.細 菌の共生 を起源とする二重膜 オルガネラであ り,細菌に近縁の転 写翻訳系や酸化還元酵素群 をもっている.生細胞 を観察 す る と,ミ トコ ン ドリアは分裂 と融 合 を頻繁 に く り返 し な が ら動 き続 け て お り,細 胞 内 で ミ トコ ン ドリア が 「生 きて い る」 よ うす を見 る こ とが で き る.し か し,ミ トコ ン ドリア 蛋 白質 の遺 伝 子 の 多 くは核 ゲ ノ ム に 存在 して お り,酵 母 や 高 等 動 物 細 胞 の ミ トコ ン ドリ ア は細 菌 型 の 分 裂装置 を失い共生後 に独 自の分裂機構 を獲得 した1), 細胞分化 ・細胞応答によって ミトコン ドリアの形は大 き く変化する2),繊維芽細胞では頻繁に融合が観察 さ れ,ネ ッ トワー ク構 造 が 発 達 し た細 長 い ミ トコ ン ドリ ア が 形 成 され る.一 方,肝 細 胞 で は ミ トコ ン ドリア は細 か く分散 して存在 してお り融合 活性 も低 い.ミ トコ ン ドリ ア の形 態 は 融 合 と分 裂 の バ ラ ン ス に よ っ て維 持 さ れ て お り,融 合 の 活性 化 に よ りネ ッ トワ ー クが 形 成 され,分 裂 の活 性化 によ り断片 化 した ミ トコ ン ドリアが 形成 され る3)(図1)。 細 長 い 構 造 を もつ ミ トコ ン ドリ アが 細 胞 内 の 酸 素 濃 度 の 高 い 領 域(細胞 膜 直 下 な ど)からエ ネ ル ギ ー 消 費 の 多 い 領 域(筋繊 維 な ど)にわ た っ て 分 布 して い る場 合,前 者で生産された酸化的エネルギーは膜電位として 後 者 に 伝 え ら れ,ATP合 成 を可 能 に す る.こ の こ と か ら,ミ トコン ドリアは発電所 と送電線を兼ねたオルガネ ラで あ る とい う こ と も で きる.ま た,ミ トコ ン ドリ ア は エネルギー産生のみならず,ア ポ トーシスの進行や細胞 内Ca2+ 濃 度 の 制 御 な ど,細 胞 内 シ グ ナ リ ン グ に お い て も重 要 な働 き を もっ て お り,ミ トコ ン ドリア の 細 胞 内 に お け る分 布 様 式 が これ らに 影響 を与 え て い る. 生細胞の観察により,ミ トコン ドリアの融合過程が詳 細 に とらえ られ る よ うにな った(図2).2つの ミ トコ ン ド リア を そ れ ぞ れ異 な る蛍 光 蛋 白質 で標 識 し生 細 胞 観 察 を行 な う と,ミ トコ ン ドリア の 融 合 に伴 い2つ の 蛍 光 が 一 致 した 分 布 を示 す よ うに な る こ とか ら ,融 合 に よ っ て 細 胞 内 で ミ トコ ン ドリ ア の 内 容 物 が 均 質 化 され る こ と, 言 い 換 え る と,細 胞 内 の ミ トコ ン ドリア は 動 的 な意 味 で ひ とつ につ なが って い るこ とが示 され た4).この ことは 細 胞 の 機 能 維 持 に とっ て重 要 な 意 味 を もっ て い る.ミ ト コ ン ドリアDNAは 細 胞 内 に多 コ ピ ー存 在 して お り,変 異 ミ トコ ン ドリ アDNAの 蓄 積 に よ る呼 吸 低 下 が 老 化 の 一 因 と な る と考 え られ て い る .し か し,変 異 ミ トコ ン ド Naotada Ishihara, Katsuyoshi Mihara, 九州大学大学院医学研 究院 分子生命科学 E-mail : [email protected] http: // www.med.kyushu-u.ac.jp/cell/ Mitochondrial dynamics regulated by fusion and fission

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931蛋白質 核 酸 酵素Vol.50No.8(2005)

Review

ミトコンドリアの融合と分裂を支配する

分子たち

石原直忠 ・三原勝芳

ミ トコン ドリアは,細 胞応答や細胞分化によりその形態を大きく変化させる動的なオルガネラ

である,ミ トコン ドリアの形態は融合と分裂のバランスにより調節されており,そ れらの過程

には局在の異なる3つ のGTPaseが 関与している.失 活 したミ トコン ドリアは融合によって機

能が相補され,ま た,ア ポ トーシス進行時にはミ トコン ドリアの分裂が誘導される.こ のよう

に,ミ トコン ドリアの動的な形態変化は細胞機能制御に密接に関与していると考えられる.本

稿では,ミ トコン ドリアのダイナミクスを制御する分子について概説する.

ミトコンドリア オルガネラダイナミクス 膜融合 オルガネラ分裂

ダイナミン様GTPase

はじめに

ミトコンドリアは酸化的リン酸化 によりエネルギーの

ほとんどをつ くり出す細胞の発電所である.細 菌の共生

を起源とする二重膜 オルガネラであ り,細 菌に近縁の転

写翻訳系や酸化還元酵素群 をもっている.生 細胞 を観察

すると,ミ トコンドリアは分裂 と融合を頻繁にくり返し

ながら動き続けてお り,細 胞内でミトコンドリアが 「生

きている」ようす を見ることができる.し かし,ミ トコ

ンドリア蛋白質の遺伝子の多 くは核ゲノムに存在 してお

り,酵 母や高等動物細胞の ミトコンドリアは細菌型の分

裂装置 を失い共生後 に独自の分裂機構 を獲得 した1),

細胞分化 ・細胞応答によって ミトコン ドリアの形は大

き く変化する2),繊 維芽細胞では頻繁に融合が観察 さ

れ,ネ ットワーク構造が発達 した細長い ミトコンドリア

が形成 される.一 方,肝 細胞ではミトコンドリアは細か

く分散 して存在 してお り融合活性 も低い.ミ トコンドリ

アの形態は融合 と分裂のバランスによって維持されてお

り,融 合の活性化によりネットワークが形成 され,分 裂

の活性化 によ り断片化 した ミトコン ドリアが形成 され

る3)(図1)。 細長い構造を もつ ミ トコン ドリアが細胞内

の酸素濃度の高い領域(細 胞膜直下など)か らエネルギー

消費の多い領域(筋 繊維など)にわたって分布 している場

合,前 者で生産された酸化的エネルギーは膜電位として

後者に伝えられ,ATP合 成 を可能にする.こ のことか

ら,ミ トコン ドリアは発電所 と送電線を兼ねたオルガネ

ラであるということもできる.ま た,ミ トコン ドリアは

エネルギー産生のみならず,ア ポ トーシスの進行や細胞

内Ca2+ 濃度の制御 など,細 胞内シグナリングにおいて

も重要な働 きをもってお り,ミ トコンドリアの細胞内に

おける分布様式がこれ らに影響 を与えている.

生細胞の観察により,ミ トコン ドリアの融合過程が詳

細にとらえられるようになった(図2).2つ の ミトコン

ドリアをそれぞれ異なる蛍光蛋白質で標識し生細胞観察

を行なうと,ミ トコン ドリアの融合に伴い2つ の蛍光が

一致 した分布を示す ようになることから,融 合によって

細胞内で ミトコンドリアの内容物が均質化されること,

言い換えると,細 胞内のミトコン ドリアは動的な意味で

ひとつにつながっていることが示 された4).こ のことは

細胞の機能維持にとって重要な意味をもっている.ミ ト

コン ドリアDNAは 細胞内に多コピー存在 してお り,変

異 ミトコンドリアDNAの 蓄積による呼吸低下が老化の

一因となると考えられている.し か し,変 異 ミトコンド

Naotada Ishihara, Katsuyoshi Mihara, 九州大学大学院医学研究院 分子生命科学 E-mail : [email protected]

http: // www.med.kyushu-u.ac.jp/cell/ Mitochondrial dynamics regulated by fusion and fission

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932 蛋白質 核酸 酵素Vol.50No.8(2005)

Column

ミ トコン ドリア形態調節に機能する因子

酵 母 の遺 伝 学 的 解 析 か ら,ミ トコ ン ドリアの 形 態 調

節 に 関与 す る多 くの 遺 伝 子 が 同定 され て い るが,そ の

多 くは 哺 乳 動 物 で は知 られ て い な い(表).Mmm1,

Mdm10,Mdm12は ミ トコ ン ドリア の外 膜 で 複 合体 を

形 成 す るが,こ れ らの 変異 株 で は娘細 胞 へ の ミ トコ ン

ドリ ア の 分 配 が 不 全 と な る.Mmm1は,C末 端 を細

胞 質 に,N末 端 をマ トリ ック ス に露 出 し,ミ トコ ン ド

リア の核 様体 と一 致 した分 布 を示 す.Mdm10は,外

膜 βバ レル 蛋 白質 の ア セ ンブ リに機 能す るSAM複 合

体 に含 まれ,そ の ほ か のSAM因 子 の 変 異 株 で も ミ ト

コ ン ドリア の 形 態 形 成 不 全 が 観 察 され る.Mdm31と

Mdm32は 類 似 し た構 造 を もつ 内 膜 蛋 白 質 で あ り,

Mmm1,Mmm2,Mdm10,Mdm12と 合 成 致 死 と な

る.Miro/Gem1はGTPaseド メ イ ンとCa2+ 結 合 ドメ

イ ンで あ るEFハ ン ドを2つ ず つ もつ ミ トコ ン ド リア

外 膜 蛋 白 質 で あ り,哺 乳 動 物 細 胞 で の過剰 発現 や酵 母

で の 欠損 に よ り ミ トコ ン ドリア の形 態 が 大 き く変化 す

る.Mitofilinは 心 筋 ミ トコ ン ドリア内 膜 の主 要 蛋 白質

の ひ とつ で あ り,発 現 抑 制 に よっ て きわ め て発 達 した

内 膜 構 造 が 形 成 され る.MTP18の 発 現 抑 制 に よ り ミ

トコ ン ドリア ネ ッ トワー ク構 造 の 活性 化 が み られ る こ

とか ら,ミ トコ ン ドリアの 分 裂 に 関与 して い る可 能 性

が 考 え られ る.DAP3はGTP結 合 ドメ イ ン を もつ ミ

トコ ン ドリア蛋 白質 で,過 剰 発 現 に よ りア ポ トー シス

と ミ トコ ン ドリ ア断 片化 が 誘 導 され る.

こ れ以 外 に,細 胞 骨 格 関 連 因 子 が ミ トコ ン ド リアの

形 態 ・分 布 に関 与す る.哺 乳 動物 で はお も に微 小 管 系

が 機 能 して お り,キ ネ シ ン フ ァ ミ リーKif1Bや キ ネ シ

ン フ ァ ミ リーKif5B,ダ イ ニ ン モ ー タ ー 系 が 関 与 す

る.分 裂 酵 母 に お い て も微 小 管依 存 的輸 送 が 知 られ て

お り,種 を こ え て保 存 され た 因 子Mmd1が そ の 過 程

に機 能 す る.出 芽酵 母 で はお もに ア クチ ン系 に依 存 し

て お り,Mdm20,Tpm1,Nat3な どの 関 与 が 報 告 さ

れ て い る.出 芽 酵 母 で は,Mmr1とRabフ ァ ミ リー

蛋 白 質Ypt11がTypeVミ オ シ ン(Myo2)に 依 存 した

娘 細 胞 へ の ミ トコ ン ドリア 分 配 に機 能 す る.ま た,中

間 系 フ ィ ラ メ ン トDesminが 筋 細 胞 の ミ トコ ン ドリア

分 布 に機 能 し,酵 母 で は 中 間 系 フ ィ ラ メ ン ト様 因 子

.Mdm1や ユ ビキ チ ン リガー ゼRsp5が この 過 程 に 関 与

す る.

ミトコン ドリア形態調節に関与する因子

酵母には存在 するが哺乳動物では知られていない因子 は下線を付 した.MTS:ミ トコン ドリア局在化配列,TM:膜 貫通領域.

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933蛋 白質 核 酸 酵素Vol.50No.8(2005)

リアDNAを もつ ミ トコ ン ドリ ア と活 性 を もつ ミ トコ ン

ドリア が 融 合 す る こ とに よ り呼 吸 活 性 が 相 補 され,細 胞

と して の 呼 吸 活性 は維 持 され る こ とが 実 験 的 に も示 さ れ

て い る5).

ミ トコ ン ドリ アの 形 態 を制 御 す る3つ のGTPaseが 単

離 さ れ た こ とを き っか け と して,そ の 分 子 メ カニ ズム が

明 らか に な りつ つ あ る(コ ラ ム).本 稿 で は,ミ トコ ン ド

リ ア の ダ イナ ミ クス研 究 に お け る近 年 の 進展 を紹 介 す る.

Ⅰ.ミ トコン ドリア融 合反応 に関与 するGTPase,

Mfn/Fzo

1.Mln/Fzoの 構造 と機 能

Fzoは,1997年 に シ ョ ウ ジ ョウ バ エ の 雄 性 不 稔 変 異

株 の 原 因遺 伝 子 産 物 と して 同 定 さ れ6),そ の 機 能 欠 損 に

図1ミ トコン ドリアのダイナミ クス

ミ トコン ドリアの形態は動的に調節 され

てお り,融 合の活性化によって細長 いネ

ッ トワーク状のミ トコン ドリアが,分 裂

の活性化によ って短い独立 したミ トコン

ドリアが形成 される.HeLa細 胞のミ ト

コン ドリア(右 上)の 分裂 を活性 化 する

と,ミ トコン ドリアの断片化が誘導 され

る(左上),ミ トコン ドリアの融合 はミ ト

コン ドリアDNAや 呼吸活性の維持に必

要であ り,分 裂はアポ トーシスの進行に

関与 している,ま た,細 長いミ トコン ド

リアはミ トコ ン ドリア膜電位を介 して細

胞内で酸化的工ネルギーを伝達する こと

もできる,さ らに,ミ トコン ドリアの分

裂によって機能分化 したミ トコン ドリア

が形成 され,こ れ がCa2+の 細胞内勾配

形成に関与すると考え られる.

図2ミ トコンドリア融合反 応の可視化

(a)異 なる蛍光蛋白質でラベル した ミ ト

コン ドリアを もつHeLa細 胞 を,セ ン

ダイウイルス を用いて細胞融合させ た,

9時 間後にはほ とん どの蛍光が一致 した

分布 を示 した ことか ら,ミ トコン ドリア

の内容物が均質化 したことがわかる,

(b)細 胞融合ののち2時 間培養 して 、ミ

トコン ドリアの生細胞観察を行なった.

2色 のミ トコン ドリアが融合する過程が

観察できる,

[文献4を 改変,許 可を得て転載]

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934 蛋 白質 核 酸 酵 素Vol.50No.8(2005)

よ り昆 虫 の精 子 形 成 時 に特 異 的 に み られ る融 合 ミ トコ ン

ド リア(切 片 観 察 で 輪 切 りタマ ネ ギ 状 構 造 と して 観 察 さ

れ る)が 正 し く形 成 され な い こ とか ら,fuzzyonion(Fzo)

と名 づ け られ た.精 子 の 分化 時 に特 異 的 に発 現 し,ミ ト

コ ン ド リ ア に 局 在 化 す る,分 子 量 の 比 較 的 大 き い

GTPaseで あ る.こ のGTPaseは 種 を こ え て保 存 され て

お り,酵 母 で はFzo1,哺 乳 動 物 で はmitofusin(Mfn)と

よ ば れ て い る7,8).

Mfn/Fzoは,N末 端 にGTPaseド メ イ ン が,C末 端

付 近 に疎 水 性 領 域 が 存 在 して お り,疎 水 性 領 域 で ミ トコ

ン ドリア 外 膜 に結 合 し,コ イ ル ドコ イ ル領 域 を含 む 両 端

を 細 胞 質 に 露 出 し て い る(図3a,b).さ ら に 酵 母Fzo1

で は,2つ の 膜 貫 通 領 域 の あ い だ の ル ー プ で 内 膜 と結 合

し て お り,こ の ル ー プ領 域 に イ ンサ ー トを 導 入 す る と機

能 不 全 と な る こ とか ら,酵 母Fzo1は 外 膜 と内 膜 の 協 調

的 な融 合 に 機 能 す る 可 能 性 が 示 唆 され て い る9).

酵 母Fzo1は ミ トコ ン ドリ ア の 融 合 に 必 須 の 因 子 で あ

り,そ の機 能 欠 損 に よ り細 胞 内 の ミ トコ ン ドリア は 断 片

化 し,ま た,接 合 時 の ミ トコ ン ドリ ア の 融 合 が み られ な

く な る7),哺 乳 動 物 細 胞 の 多 くの 組 織 で は2つ のMfnア

イ ソ フ ォー ム(Mfn1,Mfn2)が 発 現 して い る が,組 織 に

よ って 発 現 のバ ラ ン ス は大 き く異 な っ て お り,分 化 細 胞

に お け る ミ トコ ン ドリ ア の 形 態 変 化 に 関 与 す る と考 え ら

れ る8・10・11).それ ぞ れ の ア イ ソ フ ォー ム の 特 異 的 発 現 抑

制 を行 な う と,異 な る形 態 変 化 が 誘 導 され る こ と も上 記

の 可 能 性 を支 持 して い る.さ ら に,そ れ ぞ れ の ア イ ソ フ

ォー ム の 抑 制 に よ り ミ トコ ン ド リア の 融 合 活 性 が 強 く抑

制 さ れ る こ とか ら,哺 乳 動 物 で は2つ のMfnは 機 能 を

分 担 して お り,両 方 が 融 合 に 必 須 で あ る こ とが 明 らか と

な っ た(図3c).

2.Mfn/Fzoに よるミトコン ドリアの結合

分泌経路 における膜融合反応 で は,小 胞膜上のv-

SNAREと 標的膜上のt-SNAREが 重要な機能をもって

図3ミ トコ ン ドリア の 融 合 に か か

わ る因 子 の分 子構 造 と局 在

(a)分 子 構造,cc:コ イル ドコイル領

域,MTS:ミ トコン ドリア局在化配列,

H:疎 水性領域,TM:膜 貫通領域.

(b)局 在.ミ トコン ドリアの融合 には外

膜 のGTPaseで あ るMfn/Fzoが 機 能

する.ま た,OPA1/Mgm1は 膜 間スペ

ース領域 で膜 に結合 して存在するダイナ

ミン様GTPaseで あ り,こ れも融合に

関与する.Ugo1は 酵母において 同定さ

れた融合 に必須な外膜蛋白質であるが 、

哺乳動物で は知 られていない.Ugo1は

細胞 質 ドメインでFzo1と 結合 し,膜 間

スペー スでMgm1と 結合 する.ま た,

Mgm1はN末 端 をマ トリックスに挿入

し,内 膜の ロ ンボイ ド様 プロテアー ゼ

Pcp1に よ り切断される ことによ って機

能 が調節されている,

(c)ミ トコ ン ドリア融 合 にお けるMfn

の 要求 性.RNAiに よ りMfnア イ ソフ

ォームを特異的に抑制 したあと,図2と

同様の方法でミ トコン ドリアの融合活性

を観察 した.対 照(左)で は融合により2

つの 蛍光 が一致 す るが,Mfn発 現を抑

制 した細胞(右の3つ)で はミ トコン ドリ

アの融合が強く阻害 されていることがわ

かる.

[文献11を 改変,許 可を得て転載]

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935蛋白質 核酸 酵素Vol.50No.8(2005)

い る.SNAREの 特 異 的 結 合 に よ り2つ の 膜 が 選 択 的 に

結 合 し,SNARE複 合体 の 構 造 変 化 に伴 っ て膜 融 合 が 進

行 す る.ミ トコ ン ドリ アの 膜 融 合 反 応 の 詳 細 につ い て は

ま だ わ か っ て い な い が,Mfn/Fzoが ミ トコ ン ド リ ア の

融 合 に先 立 って 起 こ る ミ トコ ン ドリア の 結 合 に関 与 す る

こ とが 明 らか に な っ て きた.

野 生 型 あ る い は さ ま ざ ま な 変 異 型Mfn蛋 白質 の 発 現

に よ って ミ トコ ン ドリア の 結 合 が 活 性 化 され る こ とが 知

られ て い た が(図4a),Mfn1のC末 端 の コ イ ル ド コ イ

ル 領域 は逆 平 行 の2量 体 を形 成 す る こ とが構 造 解 析 か ら

示 さ れ た12).さ ら に,単 離 した ミ トコ ン ドリ ア をGTP

と 反応 させ る と ミ トコ ン ド リア はMfn1に 依 存 して 結 合

し(図4b),そ の と きMfn1は2つ の ミ トコ ン ド リア 間

で 複 合 体 を形 成 す る こ と か ら,Mfn1のGTPase活 性 は

そ の 複 合 体 を 調 節 す る こ とに よ り ミ トコ ン ド リア ど う し

の 結 合 を活 性 化 す る こ とが わ か った13).こ れ らの 結 果 か

ら,Mfn1はGTP加 水 分 解 に依 存 し て ミ トコ ン ドリ ア

問 をつ な ぐtethering(繋 留)複 合 体 を 形 成 す る こ とが 明

らか に な っ た(図4c).一 方,

Mfn2はGTPaseと も ミ トコ ン

ド リア結 合 と も弱 い活 性 しか 示

さ な い こ と か ら,Mfn1と は 異

な る機 能 を もっ て い る と考 え ら

れ る.近 年,酵 母 の単 離 ミ トコ

ン ド リア を用 い た 融 合 反応 が 報

告 され14),外 膜 と 内 膜 の 融 合 が

独 立 して 起 こ りう る こ と,外 膜

の み な らず 内膜 の融 合 に もFzo1

が 関与 す る こ とが示 され て お り,

今 後 の 詳 細 な解 析 が 待 た れ る.

3,Mfn/Fzoの 活性 制御

酵 母Mdm30(Flm1)は ユ ビキ

チ ン リ ガ ー ゼ に よ くみ られ るF-

boxモ チ ー フ を も っ て お り,そ

の 欠損 株 で は ミ トコ ン ドリア の

融 合 が 阻 害 さ れ る15).Mdm30

過 剰 発 現 株 で はFzo1が 減 少

し,逆 にmdm30欠 損 株 で は

Fzo1が 蓄 積 す る こ と か ら,

Mdm30は ユ ビ キ チ ン/プ ロ テ

ア ソー ム 系 を 介 し たFzo1の 分

解 に関与する因子であると考えられる.ま た,Mfn2は

高血圧モデルラットの血管平滑筋細胞で発現抑制される

遺伝子産物 としても同定されてお り,細 胞分化や増殖シ

グナルにより調節 を受けている可能性があ る16).し か

し,こ れまでにMfn/FzoのGTPase活 性 を調節する因

子 は同定 されていない.Mfn/Fzoの 発現 と活性調節に

よる ミトコンドリア形態制御機構 は興味深い問題として

残 されている.

Ⅱ.ミ トコン ドリア膜 間スペースのGTPase,

0PA1/Mgm1

1.OPA1/Mgm1の 構造と機能

2つ の膜をもつ ミトコン ドリアが融合 しその内容物を

交換するには,外 膜が融合 したあとに内膜が融合する必

要が ある.膜 間スペースに局在す るGTPase,OPA1/

Mgm1が ミ トコン ドリア融合 に関与す ることが明 らか

図4Mfnに よる ミ トコ ン ドリア結 合の活 性化

(a)Mfn2のGTPase変 異体を発現するHeLa細 胞 を免疫電子顕微鏡法 にて観察 した.ミ トコ

ン ドリアが結合 しMfn蛋 白質がその接触面に濃縮されている ことがわかる.ス ケールバー:0,2

μm,[文 献11よ り許可を得て転載]

(b)Mfn1発 現細胞か らミ トコン ドリアを単離 し,GTP存 在下で反応させ た.ミ トコン ドリア

の結合はGTP加 水分解に依存 して起 こる.GFP(緑)とDsRed(赤)で ラベル したミ トコン

ドリアが結合 している2つ の視野を示す.[文 献13よ り許可 を得て転載]

(c)ミ トコン ドリア融合週程のモ デル.Mfn1のGTP加 水分解 に依 存 したMfn1のC末 端コイ

ル ドコイル 領域 の結合 を介 して ミ トコン ドリアが結合する.そ の後,外 膜と内膜が融合する こ

とによりミ トコ ン ドリア融合が完了する,Mfn/FzoとOPA1/Mgm1が 協調的に働 くことで 内

膜融合が進行すると考え られるが,そ の週程の詳細 はよくわか っていない.

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936 蛋 白質 核酸 酵素Vol.50No.8(2005)

に な りつ つ あ る(図3a,b).OPA1は,視 神 経 形 成 異 常

と な る神 経 変性 疾 患autosomal dominant optic atrophy

(DOA)の 原 因 遺 伝 子 産 物 と し て2000年 に 報 告 さ れ

た17).ダ イ ナ ミ ン 様GTPaseで あ り,ミ トコ ン ド リ ア

DNAの 維 持 に 関 与 す る 因 子 と し て 同 定 さ れ た 酵 母

Mgm1の ホ モ ロ グ で あ っ た18).酵 母Mgm1の 変 異 株 や

OPA1の 変 異 した単 球 細 胞 で は,ミ トコ ン ド リア の 形 態

不 全 が 観 察 さ れ る.

OPA1/Mgm1の 局 在 に つ い て は さ ま ざ ま な 報 告 が さ

れ た が,分 子 の 多 くの 領 域 が 膜 間 スペ ー ス に露 出 して 存

在 す る と の 考 え 方 が 定 着 し て き た19・20).OPA1/Mgm1

に は ス プ ラ イ シ ング や切 断 に よる 複 数 の バ リア ン トが 存

在 し,そ れ らが 膜 間 ス ペ ー ス 内 で 異 な る 挙 動 を示 す こ と

が 混 乱 の 原 因 に な っ た と思 わ れ る.OPA1/Mgm1は,

N末 端 に ミ トコ ン ドリ ア局 在 化 配 列(MTS)と 複 数 の 疎

水 性 領 域 を含 む ド メ イ ン を もつ.Mgm1のGTPase変

異 体 は機 能 を失 い,ま た,OPA1のGTPaseド メ イ ン は

DOAに お け る 変 異 の ホ ッ トス ポ ッ トで あ る こ とか ら,

GTPaseが 機 能 に 必 須 で あ る こ と が わ か っ た17・18).さ ら

に,酵 母Mgm1変 異 株 で は ミ トコ ン ド リ ア の 融 合 が 起

こ ら な い こ と,ま た,OPA1を マ ウ ス 胚 繊 維 芽 細 胞 に 発

現 させ る とMfn1に 依 存 した ミ トコ ン ド リア 融 合 が 活 性

化 さ れ る こ とか ら,OPA1/Mgm1は ミ トコ ン ド リア 融

合 を 活 性 化 す る 因 子 で あ る と 考 え ら れ る19,21).ま た,

OPA1/Mgm1の 機 能 抑 制 に よ っ て ミ トコ ン ドリ ア 内 膜

の構 造 変 化 が 誘 導 され る こ と も報 告 され て い る19,20).

酵 母Mgm1は,Fzo1と 複 合 体 を形 成 し ミ トコ ン ドリ

ア融 合 に協 調 的 に 機 能 す る19).ミ トコ ン ドリ ア外 膜 の 膜

貫 通 蛋 白質Ugo1は,ミ トコ ン ドリ ア の 融 合 に必 須 な 因

子 と して 同 定 さ れ た22)(図3a,b).Ugo1の 欠 損 に よ り

Fzo1とMgm1が 結 合 で き な く な る こ と,Ugo1は 細 胞

質 ドメ イ ンでFzo1と,膜 間 ス ペ ー ス ドメ イ ンでMgm1

と結 合 す る こ と か ら,Mgm1とFzolの 複 合 体 形 成 に 関

与 す る こ と が 示 さ れ て い る.し か し,哺 乳 動 物 で は

Ugo1と 同 様 の 機 能 を もつ 因 子 は ま だ 知 られ て お らず,

また,MfnとOPA1の 結 合 も明 らか に な っ て い な い.

2.Mgm1の 切断による機能調節

Mgm1は 特 異 的 な 切 断 に よ っ て2つ の フ ォ ー ム と し

て 存 在 し て い る(図3b).酵 母 ミ トコ ン ド リ ア の ロ ン ボ

イ ド様 プ ロ テ ア ー ゼ で あ るPcp1(Rbd1,Mdm37)が

Mgm1の 膜 結 合 ドメ イ ン を切 断 す る こ とが2003年 に 報

告 さ れ た23).Pcplに よる 切 断 がMgm1の 機 能 発 現 に 必

須 で あ り,Pcp1変 異 株 やMgm1のPcp1切 断 部 位 変 異

株 で は ミ トコ ン ドリ ア の 断 片 化 が 観 察 さ れ る.酵 母 の 対

数増 殖 期 に はPcplの 発 現 が 誘 導 され,Mgm1の 切 断 は

活 性 化 され る.こ れ ら の結 果 か ら,Pcp1はMgm1の 切

断 を 介 して ミ トコ ン ドリア の 形 態 を 制 御 して い る と考 え

られ る.ま た,ミ トコ ン ド リ ア の 内 膜 で 起 こ るMgm1

の 切 断 は,ミ トコ ン ドリア マ ト リ ッ クス に存 在 す る前 駆

体 移 入 モ ー タ ー蛋 白 質 に よ っ て も制 御 され る24).モ ー タ

ー蛋 白質 に よ っ てN末 端 に 近 い 疎 水 性 ドメ イ ンが 内 膜

か らマ トリ ック ス に ひ き込 まれ る と,切 断 点 を含 む2番

目 の疎 水 性 ドメ イ ンが 内膜 に 挿 入 さ れ,Pcp1に よ り切

断 され る.マ トリ ッ ク ス のATP濃 度 が 低 い と き は,マ

トリ ッ ク ス へ の ひ き込 み の 活 性 が 弱 くMgm1の 切 断 が

抑 制 さ れ る こ と か ら,ミ トコ ン ドリ ア の 活 性 に 応 じ て

Mgm1の 切 断 が 制 御 さ れ,ミ トコ ン ド リ ア の 形 態 が 調

節 され て い る と考 え られ る.哺 乳 動 物 の ミ トコ ン ド リア

に も ロ ンボ イ ド様 プ ロ テ ア ー ゼPARL(Presenilin-asso-

ciated rhomboid-like)が 存 在 し,OPA1は 複 数 の 分 子 サ

イズ と して観 察 さ れ る が,そ の切 断 反 応 は解 析 され て い

な い.OPA1/Mgm1の 作 用 機 序 に は ま だ 疑 問 が 多 く残

され て お り,複 雑 な構 造 を もつ 内 膜 構 造 形 成 の 分 子 メ カ

ニ ズ ム の 解 明 が 期 待 され る.

Ⅲ.ミ トコン ドリア分裂反応に関与するダイナミン

様GTPase,Drp1/Dnm1

細胞増殖にあわせてミトコンドリアを構成する因子の

合成も活性化す るが,ミ トコン ドリアの増殖は必ずしも

ミトコンドリアの分裂 と共役 していない.細 胞増殖の停

止 した細胞で もミ トコンドリアは分裂し,ま た,酵 母の

ミトコンドリア分裂変異株においても細胞は増殖 して ミ

トコンドリアは娘細胞に分配される.細 胞内で頻繁にみ

られる ミトコンドリアの分裂は,お もにミトコンドリア

の形態 ・分布の制御 に関与 していると考えられる.

1.Drp1/Dnm1の 構 造 と機 能

ダ イ ナ ミン はエ ン ドサ イ トー シ ス に機 能 す るGTPase

で あ り,GTPase変 異 体 を過 剰 発 現 させ る とエ ン ドサ イ

トー シ ス が 阻 害 され る.ダ イ ナ ミ ンは,出 芽 した ク ラ ス

リ ン小 胞 が 最 後 に膜 か ら ち ぎ り取 ら れ る 過 程 に働 くと考

え ら れ て い る.Drp1(Dynamin-relatedprotein,Dlp1

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937蛋白質 核酸 酵素Vol.50No.8(2005)

と も よ ば れ る)は ダ イナ ミン と同 様 に,N末 端 にGTPase

ドメ イ ンが,C末 端 にGTPase effector domain(GED)が

存 在 す る が,ダ イナ ミ ンのC末 端 に あ る プ ロ リ ン残 基

に 富 ん だ 領 域 は 欠 失 して い る(図5a).Drp1のGTPase

変 異 体 の 過 剰 発 現 細 胞 で は 分 泌 や エ ン ドサ イ トー シス に

影 響 は み られ な い が,き わ め て 長 い,発 達 した ミ トコ ン

ドリ アが 観 察 され る こ とか ら,Drp1は ミ トコ ン ド リ ア

の 分 裂 に 機 能 す る こ とが 示 さ れ た25).ま た,Drp1の 酵

母 ホ モ ロ グで あ るDnm1の 欠 損 株 に お い て も ミ トコ ン

ドリ ア の 分 裂 が 阻 害 さ れ る3).GEDは,Drp1/Dnm1の

分 子 間 あ る い は分 子 内 の 結 合 を 介 してGTPaseを 活 性 化

す る と考 え ら れ る.Drp1/Dnm1は お もに 細 胞 質 に存 在

して い る が,生 細 胞 観 察 で は ミ トコ ン ドリ アの 分 裂 点 に

ドッ ト状 の 分 布 が 頻 繁 に 観 察 さ れ る3・25)(図6a,b).あ

る種 の 原 始 的 な藻 類 で は,哺 乳 動 物 と は 異 な り細 胞 分 裂

と 同調 して ミ トコ ン ドリアの 分 裂 が 進 行 す る が,そ の 際,

細 胞 に1つ しか な い ミ トコ ン ドリ ア の 赤 道 面 にDrp1の

リ ング構 造 が 形 成 され,そ の リ ン グの 収 縮 に伴 っ て ミ ト

コ ン ドリ ア が 分 裂 す る像 が 観 察 さ れ て い る26).近 年,

Drp1は ミ トコ ン ドリ ア の ほ か に ペ ル オ キ シ ソー ム や 葉

緑 体 の 分 裂 に も関 与 す る こ と が 示 され て い る127).シ ロ

イ ヌ ナ ズ ナ で は複 数 の ダイ ナ ミ ン様 蛋 白 質 が 存 在 して お

り,葉 緑 体 は細 菌 型 細 胞 分 裂 装 置FtsZと ダ イナ ミ ン様

蛋 白質 の両 方 に依 存 して 分 裂 す る と考 え られ て い る.前

述 の 藻 類 の ミ トコ ン ドリ ア の 分 裂 に もFtsZと ダ イ ナ ミ

ン様 蛋 白 質 の 両 方 が 関与 す る26).

2.Drp1/Dnm1の ミトコンドリア局在化と外膜蛋白質Fis1

Drp1/Dnm1の ミ トコ ン ド リア へ の 局 在 化 は,ミ トコ

ン ドリ ア の 分 裂 制 御 や 分 裂 点 の 決 定 に お い て 重 要 な過 程

で あ る と考 え られ る(図5b).Drp1と ダ イ ナ ミ ンの キ メ

ラ 蛋 白 質 の 発 現 実 験 か ら,Drp1のGEDを 含 むC末 端

が ミ トコ ン ドリ アへ の 局 在 に 機 能 す る こ と が 示 され て い

る28).ま た,Drp1はSumo(small ubiquitin-like modi-

fier)結 合 酵 素Ubc9と 結 合 しSumo化 さ れ る こ と,

Sumo1の 過 剰 発 現 に よ り ミ トコ ン ド リ ア の 断 片 化 が 誘

導 され る こ とか ら,Sumoに よ る修 飾 がDrp1に よ る ミ

トコ ン ド リア の 分 裂 を制 御 して い る 可 能 性 が 示 唆 され て

い る29).Sumo1自 身 が ミ トコ ン ド リ ア に 局 在 す る こ と

も示 さ れ て お り,Sumo化 修 飾 がDrp1の 局 在 化 を 制 御

す る可 能 性 も考 え られ る.

ミ トコ ン ド リア 外 膜 蛋 白 質Fis1(Mdv2)は,種 を こ え

て 保 存 さ れ た 分 子 量 約17Kの 蛋 白 質 で あ り,そ のC末

端 の 疎 水 性 ドメ イ ンで ミ トコ ン ドリ ア の外 膜 に結 合 す る

(図6c).Fis1のN末 端 は細 胞 質 に 露 出 して お り,TPR

(tetratrico-peptide repeat)類 似 構 造 を形 成 す る30).Fis1

は ミ トコ ン ドリ ア の 分 裂 に 機 能 し て お り,Fislの 発 現

抑 制 に よ って 長 く発 達 した ネ ッ トワ ー ク状 の ミ トコ ン ド

リア が 形 成 さ れ,過 剰 発 現 に よ っ て ミ トコ ン ドリアの 分

裂 が 活 性 化 さ れ る31).酵 母!~51変 異 株 で はDnm1の 分

布 に影 響 が み られ る こ とか ら,Fis1は ミ トコ ン ド リ ア

に お け るDnm1の 受 容 体 で あ る と 考 え られ て い る32)(図

5b).酵 母 で は,Dnm1,Fis1と 結 合 す るWD40蛋 白 質,

Mdv1(Fis2/Gag3/Net2)が ミ トコ ン ド リア 分 裂 に必 須 で

あ り,こ れ らはDnm1の 活 性 化 と ミ ト コ ン ド リア へ の

局 在 化 に 関 与 す る と 考 え られ て い る33).哺 乳 動 物 で は

Mdv1と 同様 の 機 能 を もつ 因 子 は み つ か っ て お らず,酵

母 と動 物 で は異 な る 機 構 が あ るの か も しれ ない.

図5ミ トコ ン ドリア の 分 裂 に か か わ る 因 子 の 分 子 構 造 と局 在

(a)分 子 構造,GED:G〒Pase effector domain,TPR:tetra-

trico-peptide repeat,H:疎 水 性 領 域,cc:コ イル ドコイル 領

域,WD:WDモ チー フ.

(b)局 在,ミ トコ ン ドリア分 裂 には,お も に細 胞 質 に存 在す るDrp1/

Dnm1と 外 膜 のFis1が 機 能 す る,Mdv1はDnm1,Fls1の 両 者

と結 合 しDnm1の 外 膜 への 局 在 化 や 活 性 化 に 機能 す る と 考 え られ

てい る が,哺 乳動 物 で は知 られ て い な い.

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938 蛋 白質 核 酸 酵 素Vol.50No.8(2005)

3,そ の他の分裂因子

EndophilinIは ダ イ ナ ミン と と もに エ ン ドサ イ ドー シ

ス に機 能 す る 因 子 で あ る.EndophilinIは,小 胞 の 形 成

過 程 にお い て 膜 を構 成 す る リ ン脂 質 を修 飾 し,膜 の 屈 曲

を変 化 させ る こ と に よ り小 胞 の 形 成 に働 くと考 え られ て

い る.Endophilinフ ァ ミ リー 蛋 白 質 の ひ とつEndophilin

B1の 発 現 抑 制 に よ り外 膜 の み が 伸 長 し た構 造 が み られ

る こ とか ら,外 膜 の 構 造 形 成 や外 膜 分 裂 に 関 与 す る と考

え られ る34).ま た,酵 母 の ミ トコ ン ドリア 内 膜 蛋 白 質 で

あ るMdm33の 過 剰 発 現 や 変 異 に よ り,内 膜 ク リ ス テ 構

造 に 影 響 が み られ る.Mdm33は 内 膜 構 造 形 成,と く に

内膜 の 分 裂 に機 能 す る可 能性 が 考 え ら れ て い る35).

Ⅳ.ア ポ トーシスにおけるミ トコン ドリアの分裂

ミ トコ ン ドリ ア は アポ トー シ ス の 進 行 に重 要 な機 能 を

担 っ て い る.さ ま ざ ま な ア ポ トー シス シ グ ナ ル を 介 して

シ トク ロ ムcが ミ トコ ン ド リ ア か ら細 胞 質 に 放 出 さ

れ,細 胞死 が 進 行 す る.近 年 の

研 究 か ら,ア ポ トー シス の 進 行

に伴 い ミ トコ ン ド リア の 分 裂 が

活 性 化 され る こ と,ミ トコ ン ド

リ ア の分 裂 が ア ポ トー シ ス を促

進 す る こ とが 明 ら か に な っ た

(図6c).

Drp1の 機 能 阻 害 に よ っ て ミ

トコ ン ドリ ア の 分 裂 が 抑 制 され

る と,ア ポ トー シス の 進 行 が 阻

害 され る36,37).ア ポ トー シ ス 誘

導 時 に は,ミ トコ ン ドリ ア上 の

Drplの 分 布 も増 加 す る.ま た,

Fis1の 発 現 抑 制 に よ っ て も ア

ポ トー シス は 阻害 され,過 剰 発

現 に よ りア ポ トー シス は 活 性 化

され る.さ らに,ミ トコ ン ドリ

ア の 融 合 阻 害 に よ っ て ミ トコ ン

ドリア の 断 片 化 が 誘 導 され る と

ア ポ トー シ スが 活 性 化 され る.

酵 母 に お い て も ミ トコ ン ドリ ア

の分 裂 に よ りア ポ トー シス 様 細

胞 死 が 活 性 化 さ れ る38).し か

し,ミ トコ ン ド リア 分 裂 の 阻 害 条 件 にお い て,ア ポ トー

シ ス の 進 行 は 遅 延 す る が 細 胞 死 は 停 止 し な い.ア ポ トー

シ ス に お け る ミ トコ ン ドリア 分 裂 の 意 義 とそ の分 子 メ カ

ニ ズ ム に は まだ 不 明 な 点 が 多 い.ア ポ トー シ ス の 進 行 に

伴 っ てBaxは 細 胞 質 か ら ミ トコ ン ド リア に 輸 送 さ れ る

が,BaxとDrplが ミ トコ ン ドリ アの 分 裂 点 に 共 存 す る

こ とが 示 さ れ て い る39).Baxは ミ トコ ン ドリア の 外 膜 に

お い て チ ャ ネ ル 構 造 を 形 成 し,シ トク ロ ムc放 出 を 活

性 化 す る と考 え られ て お り,ミ トコ ン ドリ アの 分 裂 に よ

り シ トク ロ ムcの 放 出 が 活 性 化 さ れ る 可 能 性 が 考 え ら

れ る.

おわりに

ミ トコ ン ドリ アの 動 的 な形 態 変 化 は,ア ポ トー シス に

関 与 す る の み な らず,さ ま ざ ま な細 胞 応 答 ・分 化 に 関 与

す る こ とが 示 され つ つ あ る.ま た,ミ トコ ン ドリア は 細

胞 内 の 主 要 なCa2+ス トア で も あ り,ミ トコ ン ドリ ア の

形 態 変 化 に よ っ て細 胞 刺 激 時 のCa2+ シ グ ナ リ ン グが 制

御 さ れ る40).神 経 細 胞 の 分 化 時 に ミ トコ ン ドリア の 分 裂

図6ア ポ トー シ ス におけ る ミ トコン ドリア分裂

(a)HeLa細 胞のDrp1の 分布(緑)を ミ トコン ドリアの分布(赤)と 比較 した.

(b)高 倍率画像.ミ トコン ドリア上 に特徴的なDrp1の 分布が観察される(矢印).

(c)ミ トコン ドリアの分裂 モデル.細 胞質 に存在するDrp1/Dnm1は,ミ トコン ドリア外膜の

Fis1の 機能を介 してミ トコン ドリァの分裂点に局在化する.Drp1/Dnm1は オ リゴマーを形成

し,ミ トコン ドリアの分裂が進行する,EndophilinB1は ミ トコン ドリア外膜の分裂 に関与す

ると考え られる.ま た,ア ポ トー シス時 には細胞質か らDrp1とBaxが ミ トコン ドリア分裂点

に局在化する.ミ トコン ドリアの分裂によってシ トクロムcの 放出が活性化され,ア ポ トーシ

スの進行を促進する,

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939蛋白質 核酸 酵素Vol.50No.8(2005)

を 抑 制 す る と シ ナ プ ス の 形 成 が 阻 害 さ れ る こ と41),

Mfn2やOPA1の 変 異 に よ り神 経 変 性 疾 患 と な る こ と,

Mfnの そ れ ぞ れ の ア イ ソ フ ォー ム 欠 損 マ ウ ス は 胎 生 致

死 と な る こ とか ら も,ミ トコ ン ドリア の 形 態 制 御 が 発 生

・分 化 に 重 要 な 過 程 で あ る こ と が 示 唆 さ れ て い

る10・17・42).しか し,細 長 く,2つ の 膜 を も ち,ま た 複 雑

な 内 膜 ク リス テ構 造 を もつ ミ トコ ン ドリ ア の融 合 ・分 裂

・膜 構 造 形 成 の 分 子 メ カ ニ ズ ム の 核 心 は ま だ謎 に包 まれ

て い る.と くに,細 胞 に よる 膜 構 造 変 化 の 調 節 メ カニ ズ

ム は ほ と ん ど明 らか に な っ て い な い.今 後 の詳 細 な 解析

の た め に は,さ ら な る 因子 の 同 定 と解 析 実 験 系 の構 築 が

必 要 で あ る と考 えて い る.

本稿 は,九 州大学大学 院医学研究院 三原研究室 の江 浦由佳 さん,

城福章裕君,藤 田 優君,田 口奈緒子さんとの共同研究の もとに作

成 され ました.ま た,岡 敏彦博士,前 田真希 さんに貴重なア ドバ

イスをいただ きました.こ れ らの方々に深 く感謝 します.

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石原 直忠

略歴:1998年 九州大学大学院 医学研 究科博 士課程 修了,博

士(理 学),基 礎生物 学研究所 非 常 勤研 究員 を経て,2000年

よ り九州 大学大 学 院医学 研究 院 助 手.研 究 テー マ:オ ル

ガネ ラの生合成,と くに膜輸送 と膜 構造形成の分子メカニズ

ム,関 心事:組 織分 化・ 個体発 生 における ミ トコン ドリア

形態変化 とその生 理的意義.

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