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2015 / 4 学研・進学情報 -10- -11- 2015 / 4 学研・進学情報 24 90 17 大学でのゼミというと、3・4年次の専門演習が一般的であ る。しかし今、新入生に対してゼミを行う大学が増えている。 少人数のゼミ形式の授業において、ディスカッションやプレゼ ンテーションなど、能動的な学びを展開する。なぜ、初年次か らゼミなのか? 大阪府立大学の取り組みから探った。 初年次ゼミナールという取り組み 特集 受動的学習から 能動的学習へ! 学びの転換を促す 90 23 24 28 13 15 20 90 90 20 90 ●特集 初年次ゼミナールという取り組み  大阪府立大学 高等教育推進機構副機構長 高橋哲也 教授 光の科学・技術と私たちの暮らし 葛藤を乗り越えて知識創造しよう どのようにつくる?これからのエネルギー 「外国人」とは誰か?   グローバル視点で国籍、 市民権を考える 理想の大学を構想しよう 堺から世界へ ? 国際交流を考える 海外旅行の多目的評価に基づく自分だけの理想の旅 行日程の作成 イノベーションって何だ?-新規性を考える(産業、 素材、科学) 「大阪府立大学」と「堺」と「世界」のつながり 時事問題で学ぶ法律の考え方~ルール作りには何が 必要か~ 身近な植物ホルモン、その基礎と応用 工学によって切り拓かれる新しい医療への期待と問 題を考える 「公園」をプロデュースしてみよう 宇宙開発について考えてみよう 地域における福祉問題を「現場」から考える 生命の起源、化学進化を探るー人工生命は可能か? 看護・医療場面におけるナラティヴ・アプローチ入門 医学史への招待:脳科学を中心に なぜアレルギー患者は増えたのだろう? コミュニケーションから得る情報とその整理 夏目漱石の〈夢の話〉を読んでみよう 図表1 大阪府立大 初年次ゼミナール 授業科目の例

めた。そして、平成年次ゼミナール」の検討をはじ転換を目 …る。しかし今、新入生に対してゼミを行う大学が増えている。 少人数のゼミ形式の授業において、ディスカッションやプレゼ

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Page 1: めた。そして、平成年次ゼミナール」の検討をはじ転換を目 …る。しかし今、新入生に対してゼミを行う大学が増えている。 少人数のゼミ形式の授業において、ディスカッションやプレゼ

2015 / 4 学研・進学情報 -10--11- 2015 / 4 学研・進学情報

専門の枠を超えたゼミ

 

大阪府立大学では、平成24年

度から「初年次ゼミナール」を

導入している。

 

その特色の一つは、全学必修

で、どの学生も1年次前期の初

年次ゼミナールに登録し、少人

数のクラスで学習することだ。

もう一つの特色は、ゼミのクラ

ス編成において、学域・学類の

枠を取り払っていることだ。初

年次ゼミナールには、文系・理

系を問わない90以上のテーマが

用意されているが、各学生は自

分の専門に関わらず興味のある

テーマを選択して学ぶ。

 

なぜこのような形の初年次ゼ

ミナールを導入するに至ったの

か? 

初年次ゼミナールの設計

に尽力された、大阪府立大学

高等教育推進機構副機構長の高

橋哲也教授にお聞きした。

学びの転換ができない

 

平成17年、大阪府立大学は、

旧大阪府立大学、大阪女子大学、

大阪府立看護大学の3大学を統

合して新たなスタートを切っ

た。その時期にGPA(成績評価

値)を導入し、数年後、数値を検

証した。その結果、3年次後期

のGPAと1年次前期のGPA

に非常に高い相関があることが

わかった。これは何を意味する

のか? 

高橋教授は説明する。

 「1年次前期は教養科目や外

国語科目が多く、専門科目はほ

とんどありません。それなのに

専門科目を受けてきた3年次後

期の成績とほとんど変わらない

というのは、教員たちにとって

驚きでした。

 

一番大きな理由として考えら

れるのは、大学での学び方です。

つまり、初年次の時点で大学の

学びのスタイルに転換できた学

生は、その後もうまく学習をつ

づけていけますが、学びの転換

がうまくいかないと、そのまま

ずっとうまくいかないのではな

いかということです。

 

高校と大学では、学びのスタ

イルが違います。高校までは、

基本的に先生が指示した内容に

ついて勉強します。しかし大学

では、時間割から自分で作りま

すし、先生は勉強する内容を細

 大学でのゼミというと、3・4年次の専門演習が一般的である。しかし今、新入生に対してゼミを行う大学が増えている。少人数のゼミ形式の授業において、ディスカッションやプレゼンテーションなど、能動的な学びを展開する。なぜ、初年次からゼミなのか? 大阪府立大学の取り組みから探った。

初年次ゼミナールという取り組み特集

受動的学習から能動的学習へ!学びの転換を促す

かに指示してくれません。高校

までの比較的受動的な学習から

大学における能動的な学習へ、

学びのスタイルの転換がうまく

いくかどうかの問題が大きいと

考えられるのです」

 

大学での成績と入試の点数と

の相関はまったくなかったとい

う。つまり、大学での学びのス

タイルにスムーズに転換できた

かどうかという一点が、大学の

成績に大きな影響を及ぼしてい

るという現実が見えてきたので

ある。

90人以上の教員が必要

 

同大では、学びのスタイルの

転換を目指す科目として、「初

年次ゼミナール」の検討をはじ

めた。そして、平成23年度前期

に合計9クラスのパイロット授

業を実施した。平成24年、7学

部・28学科から4学域13学類へ、

学域制への改変が行われたが、

同年、全学必修の初年次ゼミ

ナールがスタートした。

 

初年次ゼミナールは、「ある

学域・学類の学生だけが集まる

のではなく、いろいろなバック

ボーンを持ち、思考も態度も違

う学生が交流できる学習環境を

提供する」(高橋教授)という

意図から、学域・学類横断型の

全学必修科目となった。これは

領域や分野を超えて互いに刺激

し合う知的活動の場を提供する

という、学域・学類制度を導入

した目的とも通じる。

 

初年次前期というタイミング

も重要である。「鉄は熱いうち

に打て、ではないですが、入学

直後のやる気のあるときに実施

することで効果が上がる」と高

橋教授は話す。

 

初年次ゼミナールを実施する

にあたって大きな課題となった

のが、教員である。1400人

規模の学生に対し、15~20人の

少人数クラスを作るとなると、

90以上のクラスが必要になる。

つまり、90人以上の教員が、従

来の講義形式の授業ではなく、

学生が能動的に活動する授業を

展開しなければいけない。そう

した教育力を持つ教員を十分に

確保できるのか?

 「教員からは、初年次ゼミナー

ルそのものについて反対はなか

ったのですが、授業をどうやれ

ばいいのかわからないという声

が聞かれました。専門科目しか

受け持ったことのない教員など

は、初年次の学生に教えたこと

はないし、他学域の学生にどう

接していいかわからないと心配

していました」と、高橋教授は

振り返る。

 

そこで、教員の教育能力を磨

くための取り組みとして、平成

20年から教員向けのFDワーク

ショップを開催してきた。また、

パイロット授業の報告会をやり

ながら、教員向けの研修を開く

ほか、マニュアルも作って対応

した。その結果、実際に授業が

はじまってからは、教員からの

不安や不満の声は聞かれなく

なったという。

 「教員の方々は、いろいろな

学生に会えること、そして専門

の学生とは発想の違う意見が聞

けることが楽しいと言っていま

す」(高橋教授)

活動するのは学生

 

初年次ゼミナールには、90以

上のテーマが用意されている

●特集 初年次ゼミナールという取り組み 

大阪府立大学高等教育推進機構副機構長高橋哲也 教授

光の科学・技術と私たちの暮らし葛藤を乗り越えて知識創造しようどのようにつくる?これからのエネルギー「外国人」とは誰か?  グローバル視点で国籍、市民権を考える理想の大学を構想しよう堺から世界へ ?国際交流を考える海外旅行の多目的評価に基づく自分だけの理想の旅行日程の作成イノベーションって何だ?-新規性を考える(産業、素材、科学)「大阪府立大学」と「堺」と「世界」のつながり時事問題で学ぶ法律の考え方~ルール作りには何が必要か~身近な植物ホルモン、その基礎と応用工学によって切り拓かれる新しい医療への期待と問題を考える「公園」をプロデュースしてみよう宇宙開発について考えてみよう地域における福祉問題を「現場」から考える生命の起源、化学進化を探るー人工生命は可能か?看護・医療場面におけるナラティヴ・アプローチ入門医学史への招待:脳科学を中心になぜアレルギー患者は増えたのだろう?コミュニケーションから得る情報とその整理夏目漱石の〈夢の話〉を読んでみよう

図表1 大阪府立大初年次ゼミナール 授業科目の例

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2015 / 4 学研・進学情報 -12--13- 2015 / 4 学研・進学情報

 

菊田さんは、「アカデミック

に興味があったというのもあり

ますし、あまり専門を意識せず

に選んだ」と話す。

 

授業は、各クラスのテーマに

沿ってさまざまな形で展開され

る。グループディスカッション、

レポート、プレゼンテーション、

フィールドワークなどを通し

て、複数の学域の学生と教員に

よる多様な意見の交換が行われ

る。学生のプレゼンに対し、学

生自身が評価することもある。

 

ここでの教員の役割は、教え

ることではない。

 「教員はついつい教えたがり

ますが、この授業の目的は、学

生が能動的な学びの姿勢を身に

つけていくこと。あくまで活動

するのは学生です。先生はファ

シリテーターとしての役割を担

う」と高橋教授は強調する。

 

調べものをしたり、プレゼン

の資料をまとめたり、学生のア

クティブ・ラーニングを支援す

る機能として、図書館の重要性

は増している。そこで図書館を

紹介する図書館ツアーを実施す

るクラスもある。

 

また、初年次ゼミナールが行

われる中百舌鳥キャンパスに

は、個人学習やグループワーク

を支えるスペースとしてラーニ

ングコモンズが2ヶ所設置され

た(1ヶ所は図書館に併設)。

ここでは、天井吊りプロジェク

ターの設備があり、貸出パソコ

ン等を接続して、プレゼンテー

ションの練習などもできる。

やってみると楽しい

 

阪下さんと菊田さんが選択し

た「大学教員という仕事」の授

業では、毎回グループを組み替

えながら、与えられた課題につ

いて話し合い、発表するという

形式を繰り返したという。学生

が主体となるこうした授業に戸

惑いはなかったのだろうか。

 

菊田さんは、「最初は他の学

生とディスカッションすること

はあまり得意ではないだろうな

と自分では思っていたんです

が、一度やってみると、それほ

ど苦手ではなく、楽しいと感じ

ました。パワーポイントを使っ

たり、スライドを作る練習にも

なりました。このときの経験が

あって、2年次以降も、専門科

目や自由選択科目でゼミ形式の

科目を選択してみたり、選択の

幅が広がったと思います」

 

阪下さんは、「高校でもプレ

ゼンをする機会はありました

が、2クラス60人ほどの前で5

人で発表するものでした。でも

ここでは少人数で雰囲気も違い

ますし、自由に説明ができるの

で、プレゼンにおける柔軟性が

増したと思います」

 

他学域の学生とのディスカッ

ションも新鮮だったようだ。

 

阪下さんは、「部活で他の学

域の友達とふれあう機会はあっ

たんですが、一つのテーマに集

中して話をするということはな

かったので、それは新鮮でした。

ずっと理系でやってきました

が、文系の方の話を聞くと、な

るほどな、と思うことがあって

(図表1)。専門的なテーマもあ

るが、新入生の既有知識で対応

可能な授業となっている。

 

学生は興味のあるテーマを第

一希望群として4クラス、第二

希望群として6クラスを選び、

抽選によってクラスが決まる。

過去3年間は、全員が第一希望

群のクラスを受講できている。

 

実際、学生たちはどのような

考えでテーマを選択しているの

だろうか。生命環境科学域自然

科学類3年の阪下七海さんと、

現代システム科学域環境システ

ム学類3年の菊田美月さんに話

を聞いた。二人は、初年次ゼミナ

ールでともに「大学教員という

仕事」というテーマを選択した。

 

阪下さんは、「将来は研究者

になりたかったので、大学教員

という道もあるかもしれないと

思って選んだ」と話す。

大阪府立大学 生命環境科学域自然科学類3年阪下七海さん

大阪府立大学 現代システム科学域環境システム学類3年菊田美月さん

●特集 初年次ゼミナールという取り組み

を見てついていくタイプの学生

がいます。最初は人前で発言で

きないのですが、やっていくう

ちに発言できるようになり、自

分はディスカッションできるこ

とに気づくことがあります」

 

一方で、どうしても最後まで

周囲と交われない学生もいる。

最終的に単位を取れない学生は

全体で1%ほど。このような学

生に対しては、再履修クラスを

組んで対応しているという。

課題は初年次ゼミ以降

 

今後の課題は、初年次ゼミ

ナールで身につけた学習スタイ

ルを、いかにその後の学習につ

なげていくかにある。

 

現状では、学生が意識的に

ディスカッションやプレゼンの

ある科目を選択していかない

と、3年次のゼミまでそのよう

な学習ができない。

 

高橋教授は、「教員が、初年

次ゼミナールで行っている教育

手法を専門教育にも取り入れた

り、講義形式の授業でもディス

カッションの機会を設けるなど

の工夫は必要だと思います。F

Dとして時間をかけてやってい

かないといけない」と話す。

 

初年次ゼミナールにつながる

科目としては、平成27年度から

正式に副専攻カリキュラムとな

る「地域実践演習」がある。こ

れは平成25年度文部科学省「地

(知)の拠点整備事業(大学C

OC事業)」で「大阪の再生・

腑活と安全・安心の創生をめざ

す地域志向の教育の実践」とし

て採択されたもので、地域の課

題を解決するような思考をもつ

学生を育てることが目的となっ

ている。カリキュラムは、1年

次後期の「地域実践演習」で

フィールドワークを行い地域の

課題を認識し、2年次・3年次

の「アゴラセミナー」で、地域

の課題に対する解決案を提示す

るというもの。PBL(課題解

決型学習)教育となっている。

 

また、平成26年度文部科学省

「大学教育再生加速プログラム

(AP)」に採択された事業では、

アクティブ・ラーニング科目を

専門教育において体系的に位置

づける試みを進めている。現代

システム学域知識情報システム

面白かったです」

 

高橋教授は、これまで違う

テーマで2つのクラスを担当し

てきているが、大きな手応えを

感じている。

 「学生が授業にのってこない

ことも心配していたんですが、

本学の学生はわりとすっと素直

に入ってきてくれます」

 

もちろん、全員がはじめから

積極的に発言するわけではない

が、授業を通して学生の様子は

変わっていくようだ。

 「このような授業では、フリー

ライダーといって、周りの様子

学類・環境システム学類におい

て、アクティブ・ラーニング科

目を先行導入しているところだ

という。

 「これからの大学教育は、ティ

ーチングからラーニングへと重

心を移行させなければいけませ

ん。教員は教えることよりも、

学生の学び自体をいかにサポー

トするかが大事な仕事になる」

と高橋教授は話す。

専門からはみ出る勇気

 

初年次ゼミナールで身につけ

る能動的な学びの姿勢は、大学

だけの問題ではなく、社会から

の要請にも応える意味がある。

高橋教授は、今回の取り組みを

はじめた背景には、社会の変化

があると説明する。

 「社会が大学生に求めるもの

は、以前とは変わりました。80

年代までは、大学生は専門の知

識や技能を身につけていれば、

社会人基礎力は社会に出てから

つければいいと考えられていま

した。ところが90年代以降、知

識基盤社会といわれるようにな

り、専門知識の陳腐化が早まり、

高橋哲也教授の初年次ゼミナール「理想の大学を構想しよう」、学外で開催された講義。講義の様子はYou Tubeの動画でもチェックできる。http://www.osakafu-u.ac.jp/affiliate/support/seminar/movie.html

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2015 / 4 学研・進学情報 -14--15- 2015 / 4 学研・進学情報

専門知識自体を大学が独占でき

なくなりました。今やネットを

見ればほとんどの知識は手に入

りますし、企業のなかでも知識

の更新のサイクルが早くなって

います。ですから、大学で深く

専門を学んだとしても、それが

そのまま社会で通用しない時代

になっているのです。

 

そんな時代ですから、いま大

学で身につけるべきことは、専

門をしっかり勉強しながら、そ

の方法論を他にも適用できる能

力です。企業のトップの方々が

言うには、理系の博士課程に進

んだ人は、自分の専門は詳しい

けれど、そこからはみ出る勇気

がないといいます。新しいこと

にチャレンジできる勇気がない

と、これからの社会では通用し

ません。社会が求めているもの

が変わり、社会の仕組み自体が

変わってきています。大学はこ

の変化に対応していかなければ

いけません」

 

一方、高橋教授は、学生の変

化も認識している。大学全入時

代といわれるように、大学進学

が当たり前になったことで、学

生の意欲が多様化している。

 「70年代までを考えると、大

学に進学することは特殊なこと

でした。とくに国公立大に入る

学生は、学びに対するモチベー

ションがとても高いものがあり

ました。しかし、誰もが大学に

進学するようになった現在で

は、学びたいことがあって大学

に行く学生もいますが、そうで

はなく、みんなが大学に行くか

ら自分も行くという学生がとて

も増えています。結果的に、学

力というよりも、意欲の多様化

が進んでいるのです。

 

大学に入っても、いったい何

をしたいのかわからない。極端

な場合は、3年生で就活のエン

トリーシートを書くときになっ

てはじめて、何をしたいか考え

るという学生がかなりいます。

 

そのような意味でも、ゼミ

ナール形式の科目を1年次の最

初に入れるのは意味があると思

います」

 

ゼミ形式の授業で能動的に活

動する姿勢が身につけば、自ら

興味・関心のある分野を見つけ、

課題解決する学習を進めていく

ことができる。その過程で、自

ずと自分が何をしたいのかが見

えてくるはずである。

広まる初年次ゼミ

 

大阪府立大学の初年次ゼミ

ナールは、学域・学類の枠を超

えた全学的な科目として実現し

た点で画期的といえる。

 

今後の課題でもあり期待され

るところは、初年次ゼミナール

をきっかけとした全学的な学び

の転換である。毎年、90人以上

の教員がファシリテーターとし

て学生の学びをサポートしてい

る。教員の間で日々蓄積される

教育法のノウハウは、同大に

とって大きな財産であり、他の

授業への波及効果が期待される

のである。

 

初年次にゼミナールを行う取

り組みは、他大学でも広まって

いる(図表2)。能動的に学ぶ

スタイルを初年次で会得できれ

ば、大学での4年間を自信を

もってより充実して過ごすこと

ができるに違いない。

(取材・文/沢辺有司)

図表2 全学的な初年次ゼミのプログラム事例

東北大学「基礎ゼミ」

学生の学びを詰め込み型の「受験学習」から自発的な「大学での学び」へ転換させることを目的としたプログラム。全学生に受講を強く推奨(一部学部は選択科目)し、新入生のほとんどが初年次の第1セメスターに履修する。約 150のテーマが提供され、学部横断型の少人数クラスを編成する。

横浜市立大学「教養ゼミ」

「教養ゼミA」で、問題関心の設定、資料の探索、発表、討論、レポートなどの技法を身につけ、「教養ゼミB」で、問題解決の技法に磨きをかけ、学生自身が問題をいっそう深く、広く受け止めることを目指す。クラスは学部・学系の領域を越えて編成する。

名古屋大学「基礎セミ

ナー」

「初年次教育」「文理融合」「少人数のセミナー形式」が特色。全学参加体制による多彩な学問分野と人材を背景に、コモン・ベーシックとしての読み・書き・話すを中心とした多面的な知的トレーニングを行う。知の探求のプロセスと学問の面白さを学び、自立的学習能力の育成を目指す。

広島大学「教養ゼミ」

自主的な学習によって支えられる大学教育へのオリエンテーション機能を果たすため、入学後の早い段階で知的活動への動機付けを高め、論理的・批判的な思考法と適切な自己表現能力を育てることを目標としている。学生と教員、学生相互のコミュニケーションを促進。全学必修科目。

九州大学「課題協学

科目」

グループ作業や個人演習を通して、幅広い視野をもって問題を発見する姿勢、問題の解決を目指して学びつづける態度と技能、専門を異にする他者と恊働できる能力を養う。初年次前期・後期、全学必須科目。文系・理系学部の混成、講義+演習形式。

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