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よりエネルギーを賢く利用する「スマートハウス(図 2)」の普及が期待されている。 今後について スマートハウスの中核技術であるHEMSと家庭内機 器とのインターフェースの標準化は,「スマートハウ ス標準化検討会」で検討され,2012年2月にエコーネッ トコンソーシアムが管理する「ECHONET Lite」の 推奨が決定された。 また, 経済産業省では2012年4月から2014年3月ま での間,設置費用の一部を補助する「HEMS導入事業」 を開始し,その普及を推進している。 将来的に,HEMSはスマートメータを介して電力 網とつながることで,エネルギーの利用改善がさらに 進められ,2011年3月11日の東日本大震災以降に大 きな課題となっている電力網全体で使用する最大電力 (ピーク電力)のカットにも貢献していくと期待され ている。 図1 最終エネルギー消費の推移 (出典:経済産業省エネルギー白書2011) 3 HEMSとは HEMS」とは「Home Energy Management System(家庭用エネルギー管理システム)」の頭文字 をとったもので,「ヘムス」と発音し,エネルギー管 理システム(EMS)の一種である。 これは,住宅内で使用される照明やエアコン,調理 機器等の家電製品と,太陽光発電システムや燃料電池 などを利用してエネルギーを創出する創エネ機器と, 蓄電池や電気自動車(EV)などを利用してエネルギー を蓄積する蓄エネ機器をネットワーク化し,居住者の 快適を維持しつつエネルギー使用量を削減することを 目的としたシステムである。 HEMSの必要性 これまで我が国では,2度の石油危機を契機として 1979年に制定された省エネ法により,エネルギー消 費効率の向上に努めてきた。その結果,過去30年間 で約3割強のエネルギー効率の改善を達成している。 しかしながら,エネルギー消費量については,1973 年から2009年までに産業部門が0. 85倍のところ,家 庭部門においては2. 1倍に増加しており(図1参照), エネルギー消費量の抑制が課題となっている。 これに対応する家庭部門の設備として,HEMSの適 用が広がっている。HEMSにより, PCやスマートフォ ン,タブレット端末などでエネルギー使用量を表示す る「見える化」やエネルギー使用量を調整する制御が 可能となり,さらには「創エネ・蓄エネ・省エネ」に 1 2 用語解説 HEMS (Home Energy Management System) エネルギア総合研究所 電気高度利用技術担当 内藤 正記 図2 スマートハウスイメージ図 (出典:経済産業省スマートハウス標準化検討会資料) Page 11 エネルギア総研レビュー No.30

HEMS (Home Energy Management System)...HEMS (Home Energy Management System) エネルギア総合研究所 電気高度利用技術担当 内藤 正記 図2 スマートハウスイメージ図

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Page 1: HEMS (Home Energy Management System)...HEMS (Home Energy Management System) エネルギア総合研究所 電気高度利用技術担当 内藤 正記 図2 スマートハウスイメージ図

よりエネルギーを賢く利用する「スマートハウス(図2)」の普及が期待されている。

今後について

 スマートハウスの中核技術であるHEMSと家庭内機器とのインターフェースの標準化は,「スマートハウス標準化検討会」で検討され,2012年2月にエコーネットコンソーシアムが管理する「ECHONET Lite」の推奨が決定された。 また, 経済産業省では2012年4月から2014年3月までの間,設置費用の一部を補助する「HEMS導入事業」を開始し,その普及を推進している。 将来的に,HEMSはスマートメータを介して電力網とつながることで,エネルギーの利用改善がさらに進められ,2011年3月11日の東日本大震災以降に大きな課題となっている電力網全体で使用する最大電力(ピーク電力)のカットにも貢献していくと期待されている。

図1 最終エネルギー消費の推移(出典:経済産業省エネルギー白書2011)

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HEMSとは

 「HEMS」とは「Home Energy Management System(家庭用エネルギー管理システム)」の頭文字をとったもので,「ヘムス」と発音し,エネルギー管理システム(EMS)の一種である。 これは,住宅内で使用される照明やエアコン,調理機器等の家電製品と,太陽光発電システムや燃料電池などを利用してエネルギーを創出する創エネ機器と,蓄電池や電気自動車(EV)などを利用してエネルギーを蓄積する蓄エネ機器をネットワーク化し,居住者の快適を維持しつつエネルギー使用量を削減することを目的としたシステムである。

HEMSの必要性

 これまで我が国では,2度の石油危機を契機として1979年に制定された省エネ法により,エネルギー消費効率の向上に努めてきた。その結果,過去30年間で約3割強のエネルギー効率の改善を達成している。しかしながら,エネルギー消費量については,1973年から2009年までに産業部門が0.85倍のところ,家庭部門においては2.1倍に増加しており(図1参照),エネルギー消費量の抑制が課題となっている。 これに対応する家庭部門の設備として,HEMSの適用が広がっている。HEMSにより,PCやスマートフォン,タブレット端末などでエネルギー使用量を表示する「見える化」やエネルギー使用量を調整する制御が可能となり,さらには「創エネ・蓄エネ・省エネ」に

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用語解説

HEMS (Home Energy Management System)エネルギア総合研究所 電気高度利用技術担当 内藤 正記

図2 スマートハウスイメージ図(出典:経済産業省スマートハウス標準化検討会資料)

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