12
IEA HP 実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター 国内版第 12 号(平成 19 年 1 月発行) NEWS 1. 第 9 回 IEA ヒートポンプ国際会議の開催― 論文・出展・スポンサー募集 ― IEA ヒートポンプ国際会議は、IEA ヒートポンプ実施協定の活動の1つとして、ヒートポンプ に関する技術、市場、政策、エネルギーと環境問題などの広範囲な課題について討議される国際 会議として、1984 年の第 1 回会議(オーストリア)以来 3 年毎に世界各地(1990 年に日本)で 開催されてまいりました。 次回の第 9 回会議(9th IEA Heat Pump Conference 2008)は、2008 年 5 月にスイスのチュー リッヒにて開催されることになりました。下記の通り、会議への論文の募集と、出展・スポンサ ーの募集をご案内いたしますので多数の応募をお待ちいたします。 (注 1) 添付 1st Announcement/Call for Papers をご参照ください。 (注 2) 詳細は会議のホームページ(http://www.hpc2008.org )を参照下さい。 (1) 会議の名称:第 9 回 IEA ヒートポンプ国際会議 (9th IEA Heat Pump Conference 2008) (2) 開催期間 :2008 年 5 月 20 日~22 日 (3) 開催場所 :チューリッヒ(スイス)、ホテルSwissotel (4) 会議の目的: この会議は、ヒートポンプ技術の開発と普及の促進を図るべく、ヒートポンプ分野に携わる技 術者、研究者、政策担当者などが一堂に会し、関連する最新の技術と市場の情報を交換するとと もに、環境保全と省エネルギーの観点よりヒートポンプの普及に向けての方策を討論することで あります。 (5) 会議の内容とトピックス: 会議は、プレナリーセッション(全体会議)、ヒートポンプの技術、応用、市場などに関する トピックスごとの個別セッション、テクニカルサイトビジット、アネックス(共同研究)ワーク ショップ(併催)などによって構成され、個別セッションでは口頭発表とポスター発表の併用によ る方式が採用されます。 今回の会議のトピックスは下記の通りです。 ① 技術(機器設計と開発の進展) ② システム(最新の電動及び熱駆動システム、地中熱源システム) ③ 応用(エネルギー効率及び環境メリットの実証) ④ 研究・開発(ヒートポンプ技術の新技術開発) 1

IEA HP実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

  • Upload
    others

  • View
    11

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: IEA HP実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

IEA HP 実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

国内版第 12 号(平成 19 年 1 月発行)

NEWS 1. 第 9 回 IEA ヒートポンプ国際会議の開催― 論文・出展・スポンサー募集 ―

IEA ヒートポンプ国際会議は、IEA ヒートポンプ実施協定の活動の1つとして、ヒートポンプ

に関する技術、市場、政策、エネルギーと環境問題などの広範囲な課題について討議される国際

会議として、1984 年の第 1 回会議(オーストリア)以来 3 年毎に世界各地(1990 年に日本)で

開催されてまいりました。

次回の第 9 回会議(9th IEA Heat Pump Conference 2008)は、2008 年 5 月にスイスのチュー

リッヒにて開催されることになりました。下記の通り、会議への論文の募集と、出展・スポンサ

ーの募集をご案内いたしますので多数の応募をお待ちいたします。

(注 1) 添付 1st Announcement/Call for Papers をご参照ください。

(注 2) 詳細は会議のホームページ(http://www.hpc2008.org)を参照下さい。

(1) 会議の名称:第 9 回 IEA ヒートポンプ国際会議 (9th IEA Heat Pump Conference 2008)

(2) 開催期間 :2008 年 5 月 20 日~22 日

(3) 開催場所 :チューリッヒ(スイス)、ホテル Swissotel

(4) 会議の目的:

この会議は、ヒートポンプ技術の開発と普及の促進を図るべく、ヒートポンプ分野に携わる技

術者、研究者、政策担当者などが一堂に会し、関連する最新の技術と市場の情報を交換するとと

もに、環境保全と省エネルギーの観点よりヒートポンプの普及に向けての方策を討論することで

あります。

(5) 会議の内容とトピックス:

会議は、プレナリーセッション(全体会議)、ヒートポンプの技術、応用、市場などに関する

トピックスごとの個別セッション、テクニカルサイトビジット、アネックス(共同研究)ワーク

ショップ(併催)などによって構成され、個別セッションでは口頭発表とポスター発表の併用によ

る方式が採用されます。

今回の会議のトピックスは下記の通りです。

① 技術(機器設計と開発の進展)

② システム(最新の電動及び熱駆動システム、地中熱源システム)

③ 応用(エネルギー効率及び環境メリットの実証)

④ 研究・開発(ヒートポンプ技術の新技術開発)

1

Page 2: IEA HP実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

⑤ 政策、標準、及び市場戦略(政府、エネルギー関連企業、専門家・学会・協会の活動など)

⑥ 市場(市場の現状、動向及び将来展望)

⑦ 国際活動(気候変動問題に対する対応の討議)

(6) 論文の募集:

この分野にご関心のある皆様からの多数の論文の提出を頂きたく御案内致します。

なお、口頭発表とポスター発表と合わせての公開募集となります(口頭発表とポスター発表の

区分は、IEA ヒートポンプ国際会議組織委員会にて選考の上決定されます。)

募集・選考・提出の日程は下記の通りです。

論文概要(アブストラクト)の提出期限 2007 年 4 月 30 日

論文採否の通知 2007 年 6 月 30 日

本論文(フルペーパー)の提出期限 2008 年 1 月 31 日

アブストラクトは、英文(200~300 words in English、フォーマットを事務局で準備してお

りますのでお問い合わせください)で作成の上、2007 年 4 月 30 日までに下記アジア・オセアニ

ア地域事務局までお送り下さい。

(7) 展示出展とスポンサーの募集:

IEA ヒートポンプ国際会議に併せて展示会(企業、関連団体などによる)が開催されますので、

この機会に、多数の企業、関連団体からの積極的なご出展をお願いいたします。

また、企業からのスポンサーも募集いたします。詳細については下記事務局までお問い合わせ

ください。

2.IEA ヒートポンプワークショップ・見学会の報告

2006 年秋のヒートポンプ協定の執行委員会は、11 月にドイツのハノーバーで開催されま

したが、これに併せて、ワークショップとテクニカルサイト見学が開催されました。以下に

その概要を報告いたします。

(1)ワークショップ

下記の通り、IEA ヒートポンプ実施協定関係者からのヒートポンプ実施協定活動について紹会

と、ドイツにおけるヒートポンプ研究開発、技術と市場の動向、アネックスの活動などについ

て合計 7 件のプレゼンテーションがあった。

- The IEA Heat Pump Programme (Sophie Hosatte/Chair IEA Heat Pump Programme、Monica

Axell/Head IEA Heat Pump Centre)

- The New Energy Research Programme of Germany (Dr.Christiane Fricke, German Federal

Ministry of Economics and Technology)

- Specific Requirements of Heat Pump Developments in Germany (Dr.Bernd Hafner,

Viessmann-Werke)

- Annex 30: Retrofit of Heat Pumps for Existing Buildings (Prof.Dr.Laue, IZW e.V.)

- Annex 32: Low Energy Houses HP-Fieldtest (Dr.Buhring, Franhofer-Institut Freiburg)

- The German Heat Pump Market Development (Dr.Jakobs, IZW e.V.)

- Development of CO2 Heat Pumps (Prof.Dr.Kruse, IZW e.V.)

(プレゼンテーションの内容詳細については、パワーポイントコピーを事務局にて保管して

2

Page 3: IEA HP実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

います。)

(2)サイト見学

ハノーバー市の施設であるアイスアリーナの冷凍設備の見学と、ハノーバー大学名誉教授の

Prof.H.Kruse が中心になって運営されているドイツヒートポンプ情報センター(IZW/

Informationszentrum Waermepumpen und Kaeltetechnik)を訪問した。ここでは IZW の情報セ

ンターの機能に併せて、冷凍・ヒートポンプ研究所(FKW/Forschungszentrum fur Kaeltetechnik

und Waermepumpen)として各種ヒートポンプ技術の研究を行っていて、最近は CO2 ヒートポン

プ技術の研究を活発に行っている。また、IZW が産業界と政府の間にあって IEA ヒートポンプ

プログラムのドイツにおけるナショナルチームの取りまとめを行っている。もともと、日本の

ヒートポンプ・蓄熱センター(旧ヒートポンプ技術開発センター)をモデルとして設立された

ようである。

(注:当初は、カールスルーエ大学の Prof.H.L.Laue によって FIZ/Fachinformationszentrum

として運営されていたが、その後ハノーバーのProf.H.Kruseの IZWに移管された経緯がある。

ちなみに、初期の IEA ヒートポンプセンターは、1980 年代に上記カールスルーエ大学の FIZ

に設置されていた。)

写真 1 IZW における Prof. DR.

Kruse (右奥ワイシャツ姿)を

囲んでの懇談の様子

(3)全体の感想など

ドイツでは、オイルショック後にヒートポンプに関心が高まり、1980 年頃をピークに住宅の

給湯用と暖房用空気熱源ヒートポンプが活発に開発・導入されたが、性能と信頼性の問題から、

1985 年以降は市場が急速に縮小したという苦い経験をもっている。しばらく市場は低迷しまし

たが、1995 年以降になって地中熱源ヒートポンプを中心に普及が拡大していて、再度空気熱源

ヒートポンプも見直される傾向にあり、さらに冷房需要も増大している。また、EU 指令”EPBD”

(Energy Performance of Buildings Directive)の導入が追い風となって、この 1-2 年に市場

の急拡大が進んでいる。

こうした状況をうけて、ヒートポンプの研究開発は活発化しており、数多くのプロジェクト

が推進されていて、遅まきながらようやく技術立国ドイツらしい状況になってきた。とくに、

CO2 ヒートポンプ(給湯・暖房用)の開発がメーカーと大学・研究機関などとのの協力で活発

3

Page 4: IEA HP実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

に進められている。

最近の高気密・高断熱住宅では、大幅な暖房負荷の低減が進み、コンパクトヒートポンプと

称される換気熱源の小容量ヒートポンプの導入が進んでいる。

このような、ヒートポンプの復活の背景には、以前は、電力は原子力と結びついて悪いイメ

ージが持たれていたが、最近は、ヒートポンプの性能・信頼性の向上もあって、一般ユーザー

の認識が変わりつつあり、ヒートポンプを再生可能エネルギーとして位置づける動きがある。

電力会社も積極的なサポートを行うようになっている。

NEW PUBLICATIONS

1.IEA HPC NEWSLETTER 2006/4(December)号の発行

本号は、“建物へのヒートポンプのレトロフィット”

(Retrofit Heat Pumps for Buildings)特集として、下

記のように合計5件の特集記事と、3件の一般記事が掲載さ

れています。

(IEA HPC NEWSLETTER の全文ファイルを添付いたします)

(トピック記事)

(1) フォートポークでの導入事例は地中熱源ヒートポンプのレトロフィットの可能性を実証(

Jeff Hammond/アメリカ)

米国のルイジアナ州のフォートポークで 4003 軒の住宅にレトロフィットされた地中熱源ヒ

ートポンプの追跡調査の結果から、地中熱源ヒートポンプがエネルギー・電力消費の大幅な削

減に有効であることが実証された。

(2) 北欧の各種条件下での空気―空気ヒートポンプの評価(Fredrik Karlsson 他/スウエーデン)

北欧のノルウエーやスウエーデンにおいて空気―空気ヒートポンプ(注:日本型のスプリッ

トエアコン)の普及が進んでいるが、その冷暖房性能、デフロスト性能などについて、1991

年、2001 年、2005 年の製品についてテストし比較した結果について報告している。

(3) 建物へのヒートポンプのレトロフィットーIEA HPPアネックス 30(H.J.Laue/ドイツ)

ヨーロッパの国の多くでは、従来の暖房システムのヒートポンプによるレトロフィットが課

題となっている。アネックス 30 ではこの問題について調査・検討が加えられているが、その

状況について報告している。

(4) フランスのレトロフィット市場での高温ヒートポンプ(Sami Barbouchi 他/フランス)

4

Page 5: IEA HP実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

フランスでは、既設の戸建住宅の温水ボイラーからのレトロフィットとして、高温出力の空

気熱源ヒートポンプ(空気―水)導入の可能性が高いことを、実機のフィールドテストとシミ

ュレーションの結果から報告している。

(5) ノルウエーにおける空気―空気ヒートポンプ(Bard Baardsen/ノルウエー)

最近の 5 年間に、ノルウエーでは、空気―空気ヒートポンプ(注:日本型のスプリットエア

コン)が、エネルギーコストの安価な暖房システムとして急速に普及が進んでいる。この市

場の背景と要因を分析して紹介している。

(非トピック記事)

(6) 地球温暖化ガス排出削減のためのヒートポンプ(Rune Aarlien/ノルウエー)

ノルウエーの地球温暖化ガス排出削減対策委員会は、2050 年までに温暖化ガスの 50~80%

削減する目標を掲げている背景と、これを実現するための有望な技術の一つとしてヒートポ

ンプを取り上げている。

(7) ノルウエーにおける未処理下水を熱源とした 18MWのヒートポンプ(Svein E.Pedersen/ノル

ウエー)

オスロの地域暖房プラントに新しく導入され、2006 年 1 月に運転を開始した未処理下水を

熱源とした大容量(18MW)のターボヒートポンプについて紹介している。

(8) ヒートポンプによる衣類乾燥機(Rainer Jakobs/ドイツ)

ドイツなどのヒートポンプ衣類乾燥機について紹介している。ヒートポンプは低温乾燥技

術として以前より木材乾燥などに使用されてきたが、同じ理由により衣類の乾燥にも適して

いて 50%の省エネルギーが可能である。

ON GOING ANNEXES 1.ANNEX 29「土壌(地中)熱源ヒートポンプ-市場と技術の障壁の克服」(Ground Source Heat

Pumps / Overcoming Market and Technical Barriers) (OA:オーストリア、分科会主査:北

大、長野教授)

2004 年 9 月にスタート、地中熱源ヒートポンプシステムの普及の阻害の要因となっている市

場と技術の各種問題点と解決策について検討を加えるものです。

当財団の「地下熱利用とヒートポンプシステム研究会」の中に「IEA ANNEX 29 分科会」を設

置して活動しています。Task-1 に関するカントリーレポートを取りまとめました。第2回専門

家会議及びワークショップは 5 月に、リンツ(オーストリア)にて開催されました。第3回専

門家会議及びワークショップは 2007 年 1 月に札幌・登別(日本)にて開催されました。

2. ANNEX 30「建築物へのヒートポンプのレトロフィット」(Retrofit Heat Pumps for

Buildings)(OA:ドイツ、日本は参加していません)

2006 年 4 月にスタート、欧州の市場で注目されている既築住宅へのヒートポンプのレトロフ

ィットを中心テーマとしたものです。

3. ANNEX 31「スーパーマーケットシステムにおけるエネルギー消費のモデリングと解析ツール」

(Advanced Modeling and Tools for Analysis of Energy Use in Supermarket Systems)

5

Page 6: IEA HP実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

(OA:スウェーデン、日本は参加していません)

2006 年 1 月にスタート、スーパーマーケット全体の冷凍・空調システムのシミュレーショ

ンによるエネルギー性能解析ツールと最適運転制御方式の開発及びエネルギー効率指標の開発

について検討するものです。

4. ANNEX 32「ローエネルギー住宅の経済的な冷暖房システム」(Economical Heating and Cooling

Systems for Low Energy Houses)(OA:スイス、分科会主査:北大、長野教授)

2006 年 1 月にスタート、ローエネルギー住宅に適した、冷・暖房、給湯、換気、除湿などが

可能な多機能・複合ヒートポンプシステム形態の調査及びエネルギー消費やコストなどのシス

テム評価を実施して、最適なシステム構成の検討と設計手法(ガイドライン)の確立を行うも

のです。

第1回専門家会議(キックオフミーティグ)は 2006 年の 4 月にムーテンツ(スイス)で、第

2 回の専門家会議は 2006 年 11 月にアルクマール(オランダ)にて開催されました。国内体制と

して IEA Annex 32 分科会を設置して活動しています。

5. ANNEX 33「ヒートポンプ用コンパクト熱交換器」( Compact Heat Exchangers in Heat Pumping

Equipment)(正 OA:イギリス、副 OA:スウェーデン、分科会主査:九州大学、小山教授(予

定))

ヒートポンプで使用される各種の熱交換器(蒸発器、凝縮器など)について、マイクロチャ

ンネル熱交換器などの高性能化・コンパクト化の可能性の検討を行うものです。

2006 年 7 月にロンドン(イギリス)で立ち上げのための準備会合が開催され、イギリスの

Brunel 大学が OA(幹事国)、スウエーデンの王立工科大学が副 OA に決まりました。執行委員

会の承認手続きを終了し、3 年間の活動として 2006 年 11 月にスタートしました。第 1 回の専門

家会議・ワークショップは 2007 年 5 月に開催の予定です。国内体制として IEA Annex 33 分科

会を設置準備中です。本アネックス参加にご関心のある方は事務局までお問い合せ下さい。

NEW ANNEXES

1.提案・検討中のアネックステーマ

現在下記の 16 件のアネックステーマ(アイデア)が各国から提案され検討されています。参

加したいテーマなどのご意見をお待ちしています。詳細については事務局までお問い合わせ下

さい。その他、新しいテーマのご提案など事務局までご連絡下さい。

(1) Ejectors(エジェクター)

(2) Easier and more efficient use of heat pumps in buildings/ AC systems in large commercial buildings (建築物におけるヒートポンプの簡単かつ効率的な使用/大規模商業ビルにおける

空調システム)

(3) Standardization development, seasonal EE of heat pumps(ヒートポンプの期間エネルギ

ー効率規格の開発)

(4) Heat pumping technologies and the industrial sector(ヒートポンプ技術と産業分野)

(5) Commissioning tools (コミッショニングツール)

(6) The role for air conditioning in demand-side management (possibly in cooperation with

6

Page 7: IEA HP実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

DSM)(DSM のための空調の役割)

(7) Environmental impact of refrigerants(冷媒の環境インパクト)

(8) Gas-driven heat pumps(ガス駆動ヒートポンプ)

(9) Heat pipes and heat pumps(ヒートパイプとヒートポンプ)

(10) Process improvements in transcritical CO2 heat pumping systems(遷移臨界CO2 ヒート

ポンプシステムのプロセス改善)

(11) Seasonal performance(期間性能)

(12) Heat pumps and IT(ヒートポンプと IT)

(13) Hot water domestic heat pumps (住宅用給湯ヒートポンプ)

(14) Heat activated heat pumps(熱駆動ヒートポンプ)

(15) Policy paper:“Refrigeration” (proposal)(政策提言:冷媒)

(16) The role of heat pumping energy systems for a sustainable society /The competitive

strength of heat pump in the building sector(持続型社会のためのヒートポンプエネル

ギーシステムの役割/建築分野におけるヒートポンプの競争力)

IEA HPC NEWSLETTER 1. 原稿募集

2007 年中に発刊予定の IEA HPC ニューズレター記事(Article)およびニュース(News)(随時)

の寄稿を募集しています。下記のトピックス(特集)記事以外の記事(Article)も歓迎いたし

ます。投稿のお問い合わせは事務局までお願いします。

(1) March/2007: Industrial Heat Pumps (産業用ヒートポンプ)(募集中)

(2) June/2007: Mobile Air Conditioning (車両用空調) (募集中)

(3) September/2007: Development Trends for Heat Pump Components and Control(ヒートポ

ンプの要素技術の開発動向

(4) December/2007: Combining Heat Pumps and other Renewable Technologies(ヒートポ

ンプと他の再生可能エネルギーとの結合)

7

Page 8: IEA HP実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

SPECIAL REPORT:CO2 の冷媒としての使用に関する最近の進展

IEA ヒートポンプニューズレター(2006 年、No.3)には、ヒートポンプ給湯機を中心とした開

発状況について、北米のトップメーカー(UTC/Carrier)の研究者により報告されています(”The

latest developments on the use of CO2 as refrigerant”/ Tobias Sienel,USA)。

“海外(北米)から見た CO2 ヒートポンプの世界の現状”として、我々にも参考になる思われ

ますので、以下にその要訳を紹介いたします(注:日本についての記載の中には、著者が誤解し

ていると思われる部分も若干含まれていますがそのまま記載しました)。

(はじめに)

ヒートポンプによる給湯加熱システムは、“逆ランキン蒸気圧縮サイクル”の使用が始まった

初期段階から知られている。ガスや電気ヒーター方式と比べたときのメリットは、主に効率と運

転コストである。挑戦のポイントは、初期コストと信頼性であり、加えて多くのシステムでは高

温(60℃以上)を製造することが出来なかった。一方、CO2 冷媒は地球温暖化への影響がほとん

どゼロの冷媒として、CO2 システムはこうした課題のいくつかを解決することが可能であるが、

多くの課題を抱えている。

(CO2 の歴史と開発)

最近の 15 年間に、CO2 冷媒が蒸気圧縮システムの冷媒として再登場してきた。初期の冷媒の 1

つとして、1930 年代までは船舶の冷凍システムの 80%で採用されていた。作動圧力が高く、臨

界圧力が低いために使用上の制約があった。1930 年代には、CFC 冷媒が開発されその特性が CO2

に比べて優れていたので瞬く間に取って代わられた。1970 年代の後半になると、CFC などのフロ

ン冷媒は地球環境への影響が指摘されるようになった。1980 年代にノルウエーの NTNU 大学

/SINTEF 研究所の Gustav Lorentzen 教授が CO2 の再登場の可能性を示すいくつかのプロトタイ

プシステムを開発した。

表 1 に一般に使用されている冷媒と CO2 の特性を比較して示している。従来の逆ランキン蒸気

圧縮サイクルでは、比較的に低圧の条件下での圧縮、凝縮、膨張、蒸発といったサイクルで構成

される。一方、CO2 冷媒では、高圧で臨界点以上の条件下で作動し、臨界点以上では、液とガス

の区別のつかない状態になり、放熱時に一定圧力が保たれない。このサイクルでは、圧力は温度

のみでなく密度の関数にもなってくる。このことで、高圧条件の選定の自由度が加わる。この高

圧がシステム性能への大きな影響を及ぼすことになり、システム効率を最高にする高圧条件が存

在する。

表 1 各種冷媒の特性比較

8

Page 9: IEA HP実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

超臨界圧力下で運転することが、放熱器(ガスクーラー)での冷却過程での温度スベリ

(temperature glide)によって、ヒートポンプ給湯機として大変有利に働くことになる。この温

度スベリは、加熱される媒体を対向流(カウンターフロー)熱交換で加熱するのに適していて、

高効率なサイクルが実現する。

この特性は図 1 のように示される。加えて、システム内の圧力は高い(100 気圧以上になる)が、

圧縮比は従来の冷媒と比べて小さい。設計がよければ圧縮機の効率が高くなる。最後に、CO2 は

粘性が低いので、伝熱性能が高くなり熱交換ロスを低減出来るためシステム効率が高くなる。

図 1 遷移臨界サイクルの温

度スベリ効果

(日本でのヒートポンプ給湯機の開発)

本格的なヒートポンプ給湯機の開発は、日本で 1990 年代の中頃にデンソーによって始め

られた。この開発は住宅用システムに焦点があてられ一部電力会社(TEPCO など)のサポー

トを受けていた。このシステムは、全ての CO2 システム(熱交換器、圧縮機、膨張弁ばど)

が組み込まれたダクトレススプリットエアコンのコンデンシングユニットを使用している。

このコンデンシングユニットに、比較的に高温(90℃までの)のお湯を、使用する時まで貯

湯する貯湯タンクを組み合わせている。このシステムは夜間の安価な電気を使用して稼動す

るように設計されている。日中に、タンクから取り出して安全な温度にまで混合して使用さ

れる。スペースコストが高い日本では、こうしたシステムの多くがアパートのべランダに設

置されるので、高温で貯湯することがタンク容量を小型化する上で有効である。給湯温度が

50℃の場合、90℃で貯湯することでタンクのサイズは 50℃で貯湯する場合の 40%に縮小で

きる。2001 年にデンソーが最初に製品を市場に出し、2002 年にサンヨーとダイキンが、2003

年に三菱が続いた。現在 17 社以上でこのシステムを販売している。

システム効率は、最初は COP が 3.2~3.7(システムの熱生産量を入力で割った値)であっ

たが、その後、市場での激しい競争の結果効率は急速に向上した。これらのシステムは、現

在 COP が 4.0 以上になっている。最近、三菱電機は高効率ロータリー圧縮機の採用で COP が

4.9 の製品を開発したと報じられている。貯湯タンクの内面にコーテイングすることで貯湯

9

Page 10: IEA HP実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

による熱ロスを減少しシステム全体の効率を高める効果がある。効率の改善に加えて、この

大変敏感な市場で騒音も著しく改善されてきた。当初の製品は騒音値が 45dB 以上もあった

が現在は 38dB にまで低下している。当初のシステムは給湯のみであったが、最近のものは

暖房も可能になっている。

これらの住宅用システムは容量が 6kW 以下であるが、十分な容量の貯湯タンクと組み合わ

せることで夜間のみの運転が可能である。最近、日立は、図 2 のようなセミ瞬間式の容量が

23kW、COP が 4.6 の住宅用ヒートポンプ給湯機を開発した。システム容量を大きくすること

で貯湯タンクの容量を大幅に小型化して、コンデンシングユニット内に組み込むことが可能

になり一体型で余分な接続配管を不要にした。日立はこのユニットのために、横置きタイプ

のスクロール圧縮機を開発し、ファンコイル部に横置きすることで、従来の圧縮機のスペー

スに貯湯タンクを設置することを可能にした。日立はこのユニットによって、通常運転時の

湯切れの問題が解消されたとしている。

図 2 日立製23kW瞬間型CO2ヒ

ートポンプ給湯機

業務用サイズの CO2 ヒートポンプ給湯器も西淀空調によって開発され、現在はイトミックが

販売している。このユニットも 2 モジュールのセパレートタイプであり、一方にヒートポンプと

制御システムが、他方に 500 リッターから 3000 リッターの貯湯タンクが入っている。貯湯タン

クがモジュールタイプとなっていて、タンク内の高温部と低温部の混合による熱ロスを抑える効

果がある。このユニットでは 26kW までのシステム容量を持っていて COP は 3.8 である。日立も

容量の大きな、COP が 4.1 の 15kW モジュールの組み合わせによるエコキュートを業務用の市場

で販売し始めた。

日本における CO2 ヒートポンプ給湯機の市場への浸透の成功は、既存の給湯器のコストが高い

こと、エネルギー価格が高いこと、さらにユーザーへのリベートプログラムが導入されているこ

とに起因している。300 リットルの貯湯槽を備えている住宅用ヒートポンプ給湯機の価格はおよ

そ 6,000 ドルであり、同容量の電気ヒーター給湯機の価格 4,000 ドルとの価格差の半分はリベー

トプログラムでカバーされている。2005 年には 200,000 台以上の CO2 ヒートポンプ給湯機が日本

で設置された。日本政府は、2010 年までに 500 万台以上が設置されると推定している。

日本での、CO2 ヒートポンプ給湯機の開発は進展しており、中でもデンソーによるエジェクタ

ーシステムの応用と、他の CO2 ヒートポンプ給湯機メーカーによる膨張機の開発が挙げられる。

10

Page 11: IEA HP実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

これらの技術は膨張動力を回収することにより全体のシステム効率を向上することが出来る。

(ヨーロッパでのヒートポンプ給湯機の開発)

1990 年代の中頃より 2002 年にかけて、EU が、COEHPS という名前の給湯と暖房用途の CO2 ヒー

トポンプを開発し実証する一連のプロジェクトのスポンサーとなってきた。これらのプロジェク

トはプロト機の開発にまで進んだが商品化までには至らなかった。COEHPS プロジェクト以後、他

の SHERHPA というプロジェクトが商品化に焦点をあてて推進された。この中では、CO2 を含む自

然冷媒による次世代ヒートポンプの開発に注力された。この結果、3kW の小容量プロト機の開発

に成功した。実に多くの大学と研究所が CO2 ヒートポンプのプロト機を開発したにも拘らず、い

ずれもプロト機の先にまで進まなかったのである。

2002 年以降、フランスのキャリア社は、業務用の 60kW CO2 ヒートポンプ給湯機を開発し広範

なフィールドテストを実施したが、今日まで市場に投入していない。同様に、ステイーベルエル

トロン社は Awtec 社と共同で、家庭用の CO2 ヒートポンプを開発し、ハノーバーメッセに出展し

た。このシステムはダンフォス社の小型圧縮機を搭載していて、2kW 以下の小容量となっている。

このシステムもいまだ商品化されていない。

今日現在、ヨーロッパの市場にある CO2 ヒートポンプはサンヨーの 4.5kW のもので、スウエー

デンの Ahlsell 社を通じて輸入販売されている。

(北米でのヒートポンプ給湯機の開発)

ヨーロッパと同様に数多くのCO2ヒートポンプのプロト機が大学や研究所で開発されてきたが、

いずれも商品化されていない。

キャリア社はエネルギー省(DOE)と共同で、キャリアフランス社の 60kW CO2 ヒートポンプを

米国向けに改造(UL 基準に合わせ、60Hz 仕様に変更)した。8 台のフィールドテスト機が表 2

に示すようなホスピタルやホテルなどの用途に設置され相当な時間運転された。図 3 はこれらの

機械のうちレストランの屋上に設置されたものである。

表 2. フィールドテストの状況(2006 年 6 月まで)

11

Page 12: IEA HP実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター

図 3 オレゴン州のレストランの

屋上に設置されたキャリア社

60kW CO2 ヒートポンプ

(まとめ)

CO2 ヒートポンプ給湯機に関する 10 年以上の研究にも拘らず、商業的に入手可能なシステムは、

今までにこの高圧 CO2 システムの設計、製造、運転、サービスにおいて多くの経験を積んでいる

日本のメーカーによって製造されたもののみである。この日本のシステムの大部分は、日本国内

以外の市場では、従来の給湯システムとの比較でコストが高すぎて、用途を見出していない。

商業的に購入可能なシステムのメーカーは、業務用システムの販売をしているイトミック以外

のすべてが社内で開発した圧縮機を仕様していることである。しかし、こうしたシステムに対し

ては日本以外の国で引き続き関心が高いようである。今日まで、主要な圧縮機メーカーの全てが

CO2 圧縮機の評価又は開発に努力している。こうしたキーコンポーネント技術の開発努力が、や

がて経済的で信頼性が高く効率の高い CO2 ヒートポンプシステムの開発に繋がるであろう。こう

した全体の動向としては、これらのシステムの近い将来の開発と商品化に向かっていることは明

らかである。市場はこうした商品を待ち望んでいるのである。

(参考文献)

省略。

OTHERS このニューズレターの効果的な活用のために、今後、改善を図っていきたいと考えていますの

で、忌憚のないご意見、ご要望など下記事務局までお寄せ下さい。

(事務局連絡先)(財)ヒートポンプ・蓄熱センター 技術研究部

IEA ヒートポンプ実施協定(IEA HPP Net Japan)事務局

(TEL: 03-5643-2404/ FAX: 03-5641-4501/ e-mail: [email protected])

12