Institutional Conflicts of Interestのマネジメント（ …Institutional Conflicts(ICs) －Policies and Procedures － Number of Grantee Institutions Percentage of Respondents

Institutional Conflicts of Interestのマネジメント（米国の状況）

2014年９月17日（株）富士通総研経済研究所西尾好司

[email protected]

Copyright Fujitsu Research Institute 2014

本日のご報告

米国では組織レベルの利益相反（I-COI）の重要性は以前から認識されていましたが、現在まで、現場レベル（団体や大学の規則）でマネジメントされています。

米国のI-COIのマネジメントの状況について、数年前に調査した結果について、大学関連団体での検討、2011年のDHHS/OIGのレポート、I-COIに関連する事例を中心にお話しします。

ここ１・２年でも、新しいI-COIのポリシーを発表している大学がいくつもあります。

＜自己紹介：COIマネジメントとの関連から＞

文部科学省「利益相反ワーキング・グループ報告書」や臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」に参加。

現在、大学や公的研究機関のCOI委員会、日本癌治療学会倫理委員会等に参加。


Institutional-COIとは？

• 基本的に組織レベルの決定を下す際に、その決定に関連する（Financial） Interestが対象

• 組織上のFinancial Interest（FCOI）と、決定に関与する

人物の個人的なFinancial Interestも対象

• 組織：大学本部だけでなく部局等も対象

• 対象のInterest：組織が受け入れる研究関連費や寄付、エ

クイティ、幹部の収入、エクイティの状況などを開示

• 大学（と関連病院）が臨床研究・治験を積極的に実施している中で、様々な事象が発生

• I-COIは連邦規則がない中で、大学・団体が独自にマネジメ

ントポリシーを策定・実施してきた。


大学関係団体のレポート


Association of American Universities （2001年10月）Task force on research accountability：“Report on Individual and Institutional Financial Conflict of Interest”

I-COIの状況

大学、役員や理事、学科や学部、他の学内組織、または関係機関等が、大学の研究プロジェクトに金銭的な利害関係を持つ企業と契約関係や金銭的な利害関係を有する

役員や理事が、大学と取引の多い機関の役員に就任

FCOIに関する主要対象

大学による株式保有/ロイヤリティに関する取り決めと、大学の研究プログラムの間の潜在的な利益相反

大学全体に影響を及ぼす決定を行う大学関係者が関与する潜在的利益相反

マネジメント方針の提案

明確な方針の策定と公表、管理手続きの確立、I-COIに関する審査機関の設置

審査機関に対する潜在的な利益相反の開示、審査、およびリスクと利益の比較

I-COIに関する措置の実行

ヒトを被験者として扱う場合のI-COIの厳格な審査

流動性のない、流動性の低い株式に関する厳格な審査Copyright Fujitsu Research Institute 20144

Association of American Medical Colleges（ 2002年10月）-1Task Force on Financial Conflicts of Interest in Clinical Research：

”Protecting Subjects, Preserving Trust, Promoting Progress II: Principles and Recommendations for Oversight of an Institution's Financial Interests in Human Subjects Research”

I-COIHSRにおいて、組織や幹部がFCOIを有し、組織や幹部による組織の権限が、HSRの組織としての実施、レビュー、監督のプロセスに影響を与えるかもしれない、あるいは合理的にみて影響を与えるように見える時

マネジメントの原則

原則として、組織は、投資のマネジメントと技術ライセンシングに関連する者から、HSRにおける機能と管理の責任は分離


AAMC（ 2002年10月）-2

レビューが必要な場合

研究の対象となる製品の販売からロイヤルティを受けとる権利がある場合

ライセンスや投資により未公開企業のエクイティを取得する場合

公開企業の10万ドルを超える価値のエクイティに対する権利や所有利益がある場合

特に重大な場合

未公開企業である場合、エクイティに関する利益、または受ける権利を保有する場合

公開企業である場合には、最低金額（AAMC 2001）を超えて株式を所有すること、または受ける権利を保有する場合。

最低金額を超える、コンサルティング料や謝礼、ギフト、その他寄附、現物収入

オフィサーやディレクター、ボードメンバーに就任すること

<AAMC 2001>

公開取引されている分散型投資信託の所有（金額は問わない）

株式公開企業の株式で、（現在価値）PHS財務内容開示規制に定める最小限基準（現在は、単一組織で金額にして10,000ドルまたは持ち分にして5％を超えない）を満たす。

株式公開企業のストックオプションで、（一般的に容認された方法で評価したときに）PHS財務内容開示規制に定める最小限基準（現在は、単一組織で金額にして10,000ドルまたは持ち分にして5％を超えないこと）を満たしているもの。


AAMC/AAU(2008)”Protecting Patients, Preserving Integrity, Advancing Health: Accelerating the Implementation of COI Policies in Human Subjects Research” 臨床研究を実施する組織やその幹部のFCOIやI-COIポリシーを策定すべき

I-COIの報告、評価、マネジメントの手続きを進め、信用されるI-COIのレビュープロセス(内部委員会、または外部レビュー組織を含む)を構築すべき。

組織上の責任権限の分離

研究と金銭的な意思決定のプロセスや組織(agent)は分離すべき。

I-COIが継続的に組織を通じて記載されることをポリシーと実践において確認

組織のFCOIポリシーの対象項目、特に組織の幹部や組織自身が、報告、開示そしてFCOIのマネジメントに従い、組織的な価値や意思決定、臨床研究のIntegrityや被験者をプロテクトしなければならない。


DHHS/OIG“INSTITUTIONAL CONFLICTS OF INTEREST AT NIH GRANTEES”


Institutional Financial Interests(IFI)－Policies and Procedures －

Number of GranteeInstitutions

Percentage of Respondents in Stratum With Written Policies and Procedures

<Stratum 1>Grantee Institutions that submitted a researcher financial conflict-of-interest report to NIH in FY 2008(n=52)

37 71%

<Stratum 2>Grantee Institutions that did not submit a researcher financial conflict-of-interest report to NIH in FY 2008 (n=104)

33 32%

70 45%


Various Definitions of IFS

Stratum 1 Stratum 2 Total

Institutional officials’ individual financial interests

30 20 50

Equity in publicly held companies

29 19 48

Equity in nopublicly held companies

28 19 47

Royalties resulting from federally funded research

19 18 37

Royalties resulting from monfederally funded research

20 16 36

Gifts from research sponsors 17 19 36Payment from research sponsors for reaching designated milestones in a course of a study

12 18 30

Other(e.g. intellectual property) 5 7 12Copyright Fujitsu Research Institute 201410

Institutional Conflicts(ICs)－Policies and Procedures －


Percentage of Respondents

Grantee Institutions that submitted a researcher financial conflict-of-interest report to NIH in FY 2008(n=52)

37 71%

Grantee Institutions that did not submit a researcher financial conflict-of-interest report to NIH in FY 2008 (n=104)

32 31%

69 44%


Reported Identifying ICs


Number of These Grantee InstitutionsWith Written Policies and Procedures

Grantee Institutions that submitted a researcher financial conflict-of-interest report to NIH in FY 2008(n=52)

14 13

Grantee Institutions that did not submit a researcher financial conflict-of-interest report to NIH in FY 2008 (n=104)

４２

18 15


Reported ICs -Oct.1,07～Sep.30,08-

Type of IC Stratum 1 Stratum 2 Total

Equity in nonpublicly held companies

9 2 11

Royalties resulting from federally funded research

8 2 10

Institutional Officials’ individual financial interests 4 1 5

Royalties resulting from nonfederally funded research 3 0 3

Equity in publicly held companies

2 0 2

Unspecific royalties 1 0 1

Non Specified/other 1 1 2

• 18 Institutions identified 38 Institutional Conflicts


I-COIの対処方法の事例

PublicationやPresentationによる研究の公表を保障する

Informed consentの中で被験者にI-COIの状況を開示する

当該プロジェクトに対する権限とConflictを有するOfficialsは正式に忌避し、上司または同僚に不適格であることを伝える

I-COIをIRBに報告する

適切な研究のPeer reviewを実施することを保障する

I-COIを公表する

Conflictがない幹部に変更

施設の使用のモニタリングや企業のInterestを助長するような使用を禁止

技術や知財が企業と不適切にシェアしないことを保障する

研究を部外者がモニタリングするCopyright Fujitsu Research Institute 201414

米国のI-COIに関係する事例


ゲルシンガー事件（1998)

臨床研究の責任医師である教授や所属部門の長及び大学等が、遺伝子治療技術（ベクター）を提供したGenovo社の株式を保有

同社は教授設立企業で教授は株式の30％を保有

センター長と同僚の技術をライセンス

センターの2割の資金を同社が提供。成果の排他的実施権。

臨床試験開始段階で、大学ではConflict of Interest Standing Committeeにおいて、教授のFCOIをレビュー

F-COIの状況を解消してから研究の開始を指示したが、教授（と大学）は利益を保持し続けた。

大学がFCOIの状態にある中（I-COI）での個人のCOIの管理を適切に実施できるのか？

最終的には同社は売却されて、教員と大学は利益を獲得。


UCB=ノバルティス(1998)

植物及び農業（特に遺伝子組換え作物）を対象とする、 5年間で総額25M$の契約

学科（Collegeの中のDepartment）全体を対象とし、最終的に不参加教員は、教員31名（ファカルティ25名、客員教授６名）の内2名。参加した教員は、年間６万～20万ドルの研究費を獲得（提案者は全員獲得）。

大学が権利を取得できるものの内、契約上の制限があるものを除き、大学の研究費に占める本共同研究契約の資金の占める割合分の特許を優先的に同社にライセンスできる。

組織の研究費に占める本契約の割合の高さと大学の研究の自由の阻害に対する学内や学生からの批判

批判教員のテニュア獲得問題


U.Toronto＝Apotex（1998)

GE薬大手企業から、標準薬との有効性比較のランダム試験

研究者は、試験終了後1年間は企業が発表の権利を持つことにサイン（大学のポリシーで可能な行為であるが、許可はなし）

大学と企業はセンターの設立の寄付（1998年に55M$（大学20M、センター10M））。GE薬産業に不利になる規制の撤廃の陳情が条件。

学長は、政府要人にロビー活動を実施。

二度目の臨床試験を実施（この時はサインなしで実施）し、効能の減少/有害事例を確認し、ボランティアの被験者に通知を検討したが、企業が発表を禁止（最初の契約に違反）と通告、試験中止

Research Ethics Boardはひどい副作用がある場合の中止条項を計画書に入れることを求めていなかったが、委員長はIC内で患者に通知を許可。

研究者は研究報告を行い、病院は研究者を更迭・箝口令。

最終的に大学は企業と係争し、寄付は白紙

大学の委員会により、研究者の行動が認められ復職


その他の事例

UCSFスポンサー企業（Boots社）の医薬品が安価な競合薬と比較して効果がないことを発見した研究者が成果を発表するのを企業が妨害

大学は発表することを認め、論文は採択されたが、企業から裁判を仄めかされ研究者に取り下げを求め、研究者も認めた

新聞記事の後にFDAが企業に発表を認めさせ、患者団体からの裁判の結果、企業は179M$で和解した。

U.Toronto研究プログラムのトップに招聘する予定の研究者（精神科医）が、医薬品と自殺行動との関連を学内での講演会で発表後に、招聘の話を中止するとの連絡

センターの研究費の半分が企業からのもので、当該医薬の製造企業が1.5M$の寄付を受けた

研究者は大学を言論の自由の阻害と学問の自由の侵害訴え、9.4M$で和解


参考となるURL

AAMC

Protecting Subjects, Preserving Trust, Promoting Progress II," https://www.aamc.org/newsroom/newsreleases/2002/82660/020923.html

Protecting Patients, Preserving Integrity, Advancing Health : Accelerating the Implementation of COI policies in Human Subjects Researchhttp://www.aau.edu/WorkArea/DownloadAsset.aspx?id=6136

Institute of Medicine

Conflict of Interest in Medical Research, Education, and Practicehttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK22942/

Center for Science in the Public Interesthttps://www.cspinet.org/integrity/nonprofits/

http://www.cspinet.org/integrity/corp_funding.html

「アカデミアの戦略的ガバナンス研究」http://prosgma.org/


https://www.aamc.org/newsroom/newsreleases/2002/82660/020923.html

http://www.aau.edu/WorkArea/DownloadAsset.aspx?id=6136

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK22942/

https://www.cspinet.org/integrity/nonprofits/

http://www.cspinet.org/integrity/corp_funding.html

http://prosgma.org/

NIHによるTargeted Site Review

2006年度に、グラント獲得機関18に対して、1日現地を訪問して、FCOIのマネジメント(体制、ポリシー、仕組みなど)について議論し、結果を指摘

結果

Investigatorの定義：一部では肩書きや資格など狭く捉えていた

組織への報告についての課題

•新しいFCOIの特定や後から参加する研究者からの開示

•再契約先のモニタリング

•研究者からFCOIの情報を集める前にグラント申請

明確な金銭的な利益や手続きを作成すべき

用語の定義や遵守しない場合のエンフォースメントの実施

教員やスタッフ、報告・情報収集やレビュー、記録保管などの遵守に関する行動、再契約先の監督など役割や責任を明記

記録保管要求、質問の問い合わせ先を明確にすること

教員やスタッフの役割や報告の責任の理解を深める行動（教育機会や教材提供）

金銭的な開示フォームを明確に分かりやすく


NIHに対する監査結果

DHHSのOffice of Inspector Generalが、グラント提供権限を持つNIH傘下24研究所を対象に、報告されたグラント獲得機関によるFCOIをNIHがどの程度監督したかを監査（2008）

結果

NIHに提出された報告書の件数を把握していなかった

FCOIの種類を認識していない

•NIHは、FCOIの詳細の報告を要求していない。OIGが独自に調査した結果、99件は主任研究者に、51件がその他の研究者にFCOIが存在。

•マネジメントの内容の記載は50件のみ。内15件が詳細を記載。

•OIGがレビューした内の5件はグラント獲得機関から提出されたレポートが詳細であることをNIH側から指摘され、簡略版を提出

ある研究所の内部文書

•COIがプロジェクトを害することは大変稀な状況であり、相反の状況についての追加の詳細、あるいはどのように管理されているかを追及すべきではない


FDAの監査結果 2007年に販売申請された118件（全数）を対象に、報告された臨床研究者のFCOIをFDAがどの程度監督しているか監査（2009）

結果

FCOI報告の臨床研究者は１％、42％の販売申請にFCOI情報開示。

開示された金額の中間値は4.7万ドル、19％がエクイティを保有。

販売申請の23％に必要な書類が付けられておらず、28％がdue diligence exemptionを使用し金銭的な情報の漏れがあった。

金銭的な利益を有する販売申請の20％で、FDAあるいはスポンサーが、金銭的な利益に対する対処をしていなかった。

FDAは、金銭的な利益を有する販売申請の12％に対して行動を起こしただけで、その他の申請には対処せず、一貫性がない。

提言

FDAはスポンサーから臨床研究者の完全な金銭的な情報が提出されたかどうか確認

レビュアーは、金銭的な情報レビュー用のテンプレートを活用して一貫性を持って開示された情報に対処すべき。FDAは、レビュアーのための追加ガイダンスを作成し研修の機会

FDAは、申請準備段階に金銭的な情報を提出するようにスポンサーに要求すべき


米国のSunshine law

“Patient Protection Affordable Care Act（PUBLIC LAW 111–148）“（2010年3月23日）の “Physician Payment Sunshine Provision”

C.Grassley(R)とH.Kohl(D)が提案し、議会を通過し、2010年3月23日オバマ大統領が署名し成立

2013年3月末より製薬企業等は医師等に対する10ドル以上のすべての支払い、合計100ドル以上のケースを公開（Public DB上）

Sec.6002に報告内容を提示（Social Security Actの改正）。

ギフトや食事、ライセンス料、コンサル料のような個人的な支払だけでなく、grantやeducation、researchに関連するものも対象

米国の企業と医師の関係に大きな影響を与えるだけでなく、米国を大きな市場としている日本企業にも影響（⇒日本製薬工業協会「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」（2011年1月））


開示不十分の事例（Science誌 2009年7月3日号）

所属大学開示収入合計額現状

Cincinnati 10万ドル/2年ｱｽﾄﾗｾﾞﾈｶ：23.8万＄ﾓﾆﾀﾘﾝｸﾞ強化

Harvard/MGH 20万ドル/7年 160万ドル活動のﾚﾋﾞｭｰ中。活動の延長合意。大学はCOIﾎﾟﾘｼｰのﾚﾋﾞｭｰ開始。

Harvard/MGH 20万ドル/7年 100万ドルﾚﾋﾞｭｰ中

Harvard/MGH 20万ドル/7年 160万ドルﾚﾋﾞｭｰ中

Stanford 10万ドル以上 600万ドル（株式）把握済。医学部教員の企業との連携活動を公開する計画

Emory 120万ドル/7年 240万ドル以上NIHは大学への900万＄ｸﾞﾗﾝﾄ提供を延期。NIHがﾚﾋﾞｭｰを実施し、研究不参加と学部長退職。

Emory N.A GSK：25.3万ドル企業との関係を中止

Texas, Austin 10万ドル/7年 23.6万ドルﾚﾋﾞｭｰ中

Texas,

Southwestern60万ドル/7年 60万ドル以上ｼﾝｶﾞﾎﾟｰﾙへ移ったため調査中断



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