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1 ISO9001:2008 医薬品品質システム 厚労省課長通知 平成 22 2 19 序文 0.1 一般 この規格は,2008 年に第 4 版として発行された ISO9001 を基に,技術的内容 及び対応国際規格の構成を変更することなく作成した日本工業規格である。 この規格は,2000 年に第 1 版として発行された JISQ9001 を規格本体の要点 を明確にするため,及び JISQ14001:2004 との両立性を高めるために改正した ものである。 なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格にはない事 項である。 注記と記載されている情報は,関連する要求事項の内容を理解するための, 又は明確にするための手引である。 この規格の対応国際規格の第 3 版(ISO9001:2000)から第 4 版(ISO9001:2008への変更のうち,この規格における変更の詳細を,附属書 B に示す。 品質マネジメントシステムの採用は,組織の戦略上の決定によることが望ま しい。組織における品質マネジメントシステムの設計及び実施は,次の事項 によって影響を受ける。 a)組織環境,組織環境の変化,及び組織環境に関連するリスク b)多様なニーズ c)固有の目標 d)提供する製品 e)用いるプロセス f)規模及び組織構造 この規格は,品質マネジメントシステムの構造の画一化又は文書化の画一化 を意図していない。 この規格で規定する品質マネジメントシステムについての要求事項は,製品 に対する要求事項を補完するものである。 この規格は,製品に適用される顧客要求事項及び法令・規制要求事項並びに 組織固有の要求事項を満たす組織の能力を,組織自身が内部で評価するため にも,認証機関を含む外部機関が評価するためにも使用することができる。 この規格は,JISQ9000 及び JISQ9004 に記載されている品質マネジメントの 原則を考慮に入れて作成した。 近年、優れた医薬品の国際的な研究開発の促進及び患者への迅速な提供を図 るため、承認審査資料の国際的なハーモナイゼーション推進の必要性が指摘 されています。このような要請に応えるため、日米EU医薬品規制調和国際 会議(ICH)が組織され、品質、安全性及び有効性の3分野でハーモナイ ゼーションの促進を図るための活動が行われているところです。 今般、ICHの合意に基づき、別紙のとおり「医薬品品質システムに関する ガイドライン」(以下「本ガイドライン」という。)がとりまとめられました ので、下記について御了知の上、貴管下関係業者等に対して周知方御配慮願 います。 本ガイドラインの要点 本ガイドラインは、医薬品品質システムと称される、製薬企業のための実効 的な品質マネジメントシステムのモデルを記載したものである。 留意事項 (1)本ガイドラインは、バイオテクノロジー技術応用医薬品及び生物起源 由来製品を含む医薬品の原薬及び製剤の開発及び製造を支持するシステムに ついて、製品のライフサイクル全期間を通じて適用されること。 (2)本ガイドラインは、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質 管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第136号。以下「GQ P省令」という。)及び医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準 に関する省令(平成16年厚生労働省令第179号。以下「GMP省令」と いう。)を包含し、平成18年9月1日付け薬食審査発第0901001号厚 生労働省医薬食品局審査管理課長通知「製剤開発に関するガイドライン」及 び平成18年9月1日付け薬食審査発第0901004号、薬食監麻発第0 901005号厚生労働省医薬食品局審査管理課長、監視指導・麻薬対策課 長通知「品質リスクマネジメントに関するガイドライン」を補完する、実効 的な医薬品品質システムに対する一つの包括的なモデルであること。 (3)本ガイドラインのうち、現行の規制要件に対し付加的な部分の実施は 任意であること。 (4)本ガイドラインにおいて、「GMP要件」とあるのは「GMP省令及び 医薬品に係るGQP省令に規定する要件」と、「査察」とあるのは「GMP又 はGQPに関する調査」と読み替えて適用すること。 0.2 プロセスアプロ ーチ この規格は,顧客要求事項を満たすことによって顧客満足を向上させるため に,品質マネジメントシステムを構築し,実施し,その品質マネジメントシ ステムの有効性を改善する際に,プロセスアプローチを採用することを奨励 している。 組織が効果的に機能するためには,数多くの関連し合う活動を明確にし,運 営管理する必要がある。インプットをアウトプットに変換することを可能に するために資源を使って運営管理される一つの活動又は一連の活動は,プロ セスとみなすことができる。一つのプロセスのアウトプットは,多くの場合, 次のプロセスへの直接のインプットとなる。 組織内において,望まれる成果を生み出すために,プロセスを明確にし,そ の相互関係を把握し,運営管理することと併せて,一連のプロセスをシステ ムとして適用することを,プロセスアプローチと呼ぶ。

ISO9001:2008 医薬品品質システム 厚労省課長通知 平成 22 ......1 ISO9001:2008 医薬品品質システム 厚労省課長通知 平成22 年2 月19 日 序文 0.1 一般

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ISO9001:2008 医薬品品質システム 厚労省課長通知 平成 22 年 2 月 19 日 序文 0.1 一般 この規格は,2008 年に第 4 版として発行された ISO9001 を基に,技術的内容

及び対応国際規格の構成を変更することなく作成した日本工業規格である。

この規格は,2000 年に第 1 版として発行された JISQ9001 を規格本体の要点

を明確にするため,及び JISQ14001:2004 との両立性を高めるために改正した

ものである。 なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格にはない事

項である。 “注記”と記載されている情報は,関連する要求事項の内容を理解するための,

又は明確にするための手引である。 この規格の対応国際規格の第 3 版(ISO9001:2000)から第 4 版(ISO9001:2008)への変更のうち,この規格における変更の詳細を,附属書 B に示す。 品質マネジメントシステムの採用は,組織の戦略上の決定によることが望ま

しい。組織における品質マネジメントシステムの設計及び実施は,次の事項

によって影響を受ける。 a)組織環境,組織環境の変化,及び組織環境に関連するリスク b)多様なニーズ c)固有の目標 d)提供する製品 e)用いるプロセス f)規模及び組織構造 この規格は,品質マネジメントシステムの構造の画一化又は文書化の画一化

を意図していない。 この規格で規定する品質マネジメントシステムについての要求事項は,製品

に対する要求事項を補完するものである。 この規格は,製品に適用される顧客要求事項及び法令・規制要求事項並びに

組織固有の要求事項を満たす組織の能力を,組織自身が内部で評価するため

にも,認証機関を含む外部機関が評価するためにも使用することができる。

この規格は,JISQ9000 及び JISQ9004 に記載されている品質マネジメントの

原則を考慮に入れて作成した。

近年、優れた医薬品の国際的な研究開発の促進及び患者への迅速な提供を図

るため、承認審査資料の国際的なハーモナイゼーション推進の必要性が指摘

されています。このような要請に応えるため、日米EU医薬品規制調和国際

会議(ICH)が組織され、品質、安全性及び有効性の3分野でハーモナイ

ゼーションの促進を図るための活動が行われているところです。 今般、ICHの合意に基づき、別紙のとおり「医薬品品質システムに関する

ガイドライン」(以下「本ガイドライン」という。)がとりまとめられました

ので、下記について御了知の上、貴管下関係業者等に対して周知方御配慮願

います。 1 本ガイドラインの要点 本ガイドラインは、医薬品品質システムと称される、製薬企業のための実効

的な品質マネジメントシステムのモデルを記載したものである。 2 留意事項 (1)本ガイドラインは、バイオテクノロジー技術応用医薬品及び生物起源

由来製品を含む医薬品の原薬及び製剤の開発及び製造を支持するシステムに

ついて、製品のライフサイクル全期間を通じて適用されること。 (2)本ガイドラインは、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質

管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第136号。以下「GQ

P省令」という。)及び医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準

に関する省令(平成16年厚生労働省令第179号。以下「GMP省令」と

いう。)を包含し、平成18年9月1日付け薬食審査発第0901001号厚

生労働省医薬食品局審査管理課長通知「製剤開発に関するガイドライン」及

び平成18年9月1日付け薬食審査発第0901004号、薬食監麻発第0

901005号厚生労働省医薬食品局審査管理課長、監視指導・麻薬対策課

長通知「品質リスクマネジメントに関するガイドライン」を補完する、実効

的な医薬品品質システムに対する一つの包括的なモデルであること。 (3)本ガイドラインのうち、現行の規制要件に対し付加的な部分の実施は

任意であること。 (4)本ガイドラインにおいて、「GMP要件」とあるのは「GMP省令及び

医薬品に係るGQP省令に規定する要件」と、「査察」とあるのは「GMP又

はGQPに関する調査」と読み替えて適用すること。 0.2 プロセスアプロ

ーチ この規格は,顧客要求事項を満たすことによって顧客満足を向上させるため

に,品質マネジメントシステムを構築し,実施し,その品質マネジメントシ

ステムの有効性を改善する際に,プロセスアプローチを採用することを奨励

している。 組織が効果的に機能するためには,数多くの関連し合う活動を明確にし,運

営管理する必要がある。インプットをアウトプットに変換することを可能に

するために資源を使って運営管理される一つの活動又は一連の活動は,プロ

セスとみなすことができる。一つのプロセスのアウトプットは,多くの場合,

次のプロセスへの直接のインプットとなる。 組織内において,望まれる成果を生み出すために,プロセスを明確にし,そ

の相互関係を把握し,運営管理することと併せて,一連のプロセスをシステ

ムとして適用することを,“プロセスアプローチ”と呼ぶ。

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プロセスアプローチの利点の一つは,プロセスの組合せ及びそれらの相互関

係とともに,システムにおける個別のプロセス間のつながりについても,シ

ステムとして運用している間に管理できることである。 品質マネジメントシステムで,このアプローチを使用すると,次の事項の重

要性が強調される。 a)要求事項を理解し,満たす。 b)付加価値の点でプロセスを考慮する必要性 c)プロセスの実施状況及び有効性の成果を得る。 d)客観的な測定結果に基づくプロセスの継続的改善 図 1 に示すプロセスを基礎とした品質マネジメントシステムのモデルは,箇

条 4∼8 に記述したプロセスのつながりを表したものである。この図は,イン

プットとしての要求事項を決定するうえで顧客が重要な役割を担っているこ

とを示している。顧客満足の監視においては,組織が顧客要求事項を満たし

ているか否かに関する顧客の受けとめ方についての情報を評価することが必

要となる。図 1 に示すモデルは,この規格のすべての要求事項を網羅してい

るが,詳細なレベルでのプロセスを示すものではない。 0.3 JISQ9004 との関

係 (省略) 1.3 ICHQ10 と各極の

GMP 要件、ISO 規格

及び ICHQ7 との関連

各極の GMP の要件、ICHQ7 ガイドライン「原薬 GMP のガイドライン」及び

ISO 品質マネジメントシステムガイドラインは ICHQ10 の基礎である。下記

第 1.5 章の目的に適合するため、ICHQ10 は特定の品質システムの要素及び経

営陣の責任を記述することにより、GMP を補強する。ICHQ10 は製品のライ

フサイクル全期間にわたる医薬品品質システムの調和されたモデルを提供

し、各極 GMP 要件と共に用いられることを意図している。 各極 GMP は製品ライフサイクルの全段階(例えば、開発)を明確に取り上げ

ていない。本ガイドラインで記述された品質システムの要素及び経営陣の責

任は、各ライフサイクルの段階における科学及びリスクに基づく取り組みの

使用を奨励するものであり、それにより製品ライフサイクルの全期間にわた

り継続的改善を促進する。 1.4 ICHQ10 と薬事上

のアプローチとの関

特定の製品又は製造施設に対する薬事上のアプローチは、製品及び製造工程

の理解レベル、品質リスクマネジメントの結果及び医薬品品質システムの有

効性に相応しているべきである。医薬品品質システムが実施された場合には、

通常、その有効性は製造所における当局査察の際に評価され得る。科学及び

リスクに基づく薬事上のアプローチを向上させる今後見込まれる機会は、付

属書 1 に特定されている。薬事的プロセスは、各極で決定される。 0.4他のマネジメント

システムとの両立性

(省略)

1 適用範囲 1 医薬品品質システ

1.1 一般 この規格は,次の二つの事項に該当する組織に対して,品質マネジメントシ

ステムに関する要求事項について規定する。 a)顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品を一貫し

て提供する能力をもつことを実証する必要がある場合 b)品質マネジメントシステムの継続的改善のプロセスを含むシステムの効果

的な適用,並びに顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項への適合

の保証を通して,顧客満足の向上を目指す場合

1.1 はじめに

本文書は、医薬品品質システムと称される、製薬企業のための実効的な品質

マネジメントシステムのモデルを記述した新しい ICH の 3 極のガイドライン

を規定するものである。本ガイドライン全体を通して、「医薬品品質システム」

という用語は ICHQ10 のモデルを指す。 ICHQ10 は国際標準化機構(ISO)の品質概念に基づき、適用される製造管理及

び品質管理に関する基準(GMP)を包含し、ICHQ8「製剤開発」及び ICHQ9「品

質リスクマネジメント」を補完する、実効的な医薬品品質システムに対する

一つの包括的なモデルを記述する。ICHQ10 は、製品ライフサイクルの異なる

段階にわたり実施し得る医薬品品質システムの一つのモデルである。製造サ

イトに適用される ICHQ10 の内容の多くは、現在、各極の GMP 要件として規

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定されている。ICHQ10 は、現行の規制要件を越えた新たな要件を創出するこ

とを意図していない。したがって、ICHQ10 の内容の内、現行の各極の GMP要件に対して付加的な部分の実施は任意である。 ICHQ10 は、公衆衛生のために世界中で医薬品の品質及び安定供給を向上させ

る実効的な医薬品品質システムを企業及び規制当局が支持することを示すも

のである。製品ライフサイクルの全期間にわたり ICHQ10 を実施することは、

イノベーションと継続的改善を促進し、医薬品開発と製造活動の連携を強化

するものでなければならない。 1.5 ICHQ10 の目的

Q10 モデルの実施は結果として、各極 GMP 要件を補完し、又は向上させる、

3 つの主要目的の達成とならなければならない。 1.5.1. 製品実現の達成 患者、医療従事者、規制当局(承認された申請内容の遵守を含む。)並びに他

の内部及び外部顧客のニーズに適合する、適切な品質特性を有する製品を供

給するためのシステムを確立し、実施し、及び維持すること。 1.5.2. 管理できた状態の確立及び維持 製造プロセスの稼働性能及び製品品質に対する実効的なモニタリング及び管

理システムを開発し、及び運用し、それにより継続する適切性及び製造プロ

セスの能力の保証を提供すること。品質リスクマネジメントはモニタリング

システム及び管理システムを特定することに役立ち得る。 1.5.3. 継続的改善の促進 適切な製品品質の改善、製造プロセスの改善、変動の低減、イノベーション

及び医薬品品質システムの増強を特定し、及び実施し、それにより品質ニー

ズを恒常的に満たす能力を増強すること。品質リスクマネジメントは継続的

改善のための分野を特定し、優先順位付けするために役立ち得る。 1.6 達成のための手

法:知識管理及び品

質リスクマネジメン

知識管理及び品質リスクマネジメントの使用は、企業が ICHQ10 を実効的か

つ成功裏に実施することを可能とする。これらの達成のための手法は、製品

品質に関連した科学及びリスクに基づく決定をするための手段を提供するこ

とにより、第 1.5 章に上述した目的の達成を促進する。 1.6.1. 知識管理 製品及び製造プロセスの知識は、開発から製品の終結までを含む製品の商業

的寿命の期間を通して管理されなければならない。例えば、科学的な取り組

みを用いる開発活動は製品及び製造工程の理解に関する知識を提供する。知

識管理は、製品、製造プロセス及び構成資材に関連する情報を獲得し、分析

し、保管し、及び伝播する体系的な取り組みである。知識の入手源は、既存

の知識(公有財産又は内部文書)、医薬品開発研究、技術移転活動、製品ライ

フサイクルにわたるプロセスバリデーションの検討、製造経験、イノベーシ

ョン、継続的改善及び変更マネジメント活動を含むが、これらに限定されな

い。 1.6.2 品質リスクマネジメント 品質リスクマネジメントは実効的な医薬品品質システムに不可欠である。品

質リスクマネジメントは、品質に対する潜在リスクの特定、科学的な評価及

びコントロールに対して、主体的な取り組みを提供し得る。それは製品ライ

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フサイクル全期間にわたり製造プロセスの稼働性能及び製品品質の継続的改

善を促進する。ICHQ9 は、医薬品品質の様々な側面に適用可能な品質リスク

マネジメントのための原則及び手法の例を提供している。 1.2 適用 この規格の要求事項は,はん(汎)用性があり,業種及び形態,規模,並び

に提供する製品を問わず,あらゆる組織に適用できることを意図している。

組織及びその製品の性質によって,この規格の要求事項のいずれかが適用不

可能な場合には,その要求事項の除外を考慮することができる。 このような除外を行う場合には,除外できる要求事項は箇条 7 に規定する要

求事項に限定される。除外を行うことが,顧客要求事項及び適用される法令・

規制要求事項を満たす製品を提供するという組織の能力又は責任に何らかの

影響を及ぼすものであるならば,この規格への適合の宣言は受け入れられな

い。

1.2 適用範囲

本ガイドラインは、バイオテクノロジー応用医薬品及び生物起源由来製品を

含む医薬品の原薬(すなわち API)及び製剤の開発及び製造を支持するシス

テムについて、製品のライフサイクル全期間にわたり適用する。 ICHQ10 の要素は、製品ライフサイクルの各段階間の相違及び各段階における

各々の目標を認識しながら、各段階に適切かつ釣り合ったレベルで適用され

なければならない(第 3 章参照)。 本ガイドラインの目的として、製品ライフサイクルは新規製品及び既存製品

に関する以下の技術的活動を含む。 医薬品開発

原薬の開発; 処方開発(容器/施栓系を含む。); 治験薬の製造; 薬物送達系の開発(関連する場合); 製造プロセスの開発及びスケールアップ; 分析法の開発。

技術移転 開発から製造への期間における新規製品の技術移転; 市販品についての、製造所内及び試験室内又は製造所間及び試験室間の技

術移転。 商業生産 原材料等の調達及び管理; 施設、ユーティリティ及び装置の提供; 生産(包装及び表示を含む。); 品質管理及び品質保証; 合格判定; 保管; 出荷配送(卸の活動を除く。)。

製品の終結

文書記録の保管; サンプル保管; 製品の継続的な評価及び報告。

2 引用規格 (省略) 3 用語及び定義 (省略) 5 用語 (省略) 4 品質マネジメント

システム 1 医薬品品質システ

4.1 一般要求事項 組織は,この規格の要求事項に従って,品質マネジメントシステムを確立し,

文書化し,実施し,維持しなければならない。また,その品質マネジメント

システムの有効性を継続的に改善しなければならない。 組織は,次の事項を実施しなければならない。

1.7 設計及び内容に

関する考慮点 (a)医薬品品質システムの設計、組織及び文書は、共通の理解と一貫した適用

を促進するために、十分に構築され、明快でなければならない。 (b)ICHQ10 の要素は、製品ライフサイクルの各段階における異なる目標及び

利用可能な知識を認識しながら、各段階に適切かつ釣り合ったレベルで適用

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a)品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの組織への適用を

明確にする(1.2 参照)。 b)これらのプロセスの順序及び相互関係を明確にする。 c)これらのプロセスの運用及び管理のいずれもが効果的であることを確実に

するために必要な判断基準及び方法を明確にする。 d)これらのプロセスの運用及び監視を支援するために必要な資源及び情報を

利用できることを確実にする。 e)これらのプロセスを監視し,適用可能な場合には測定し,分析する。 f)これらのプロセスについて,計画どおりの結果を得るため,かつ,継続的改

善を達成するために必要な処置をとる。 組織は,これらのプロセスを,この規格の要求事項に従って運営管理しなけ

ればならない。 要求事項に対する製品の適合性に影響を与えるプロセスをアウトソースする

ことを組織が決めた場合には,組織はアウトソースしたプロセスに関して管

理を確実にしなければならない。これらのアウトソースしたプロセスに適用

される管理の方式及び程度は,組織の品質マネジメントシステムの中で定め

なければならない。

されなければならない。 (c)新規の医薬品品質システムを開発し、又は既存のシステムを変更する場合

は、当該企業の活動の規模及び複雑さが考慮に入れられなければならない。

医薬品品質システムの設計は、適切なリスクマネジメントの原則を取り入れ

なければならない。医薬品品質システムのある側面は全社的であり、また、

他の側面は製造サイトに特異的であるものの、医薬品品質システムが実効的

であることは、通常は製造サイトレベルで実証されるものである。 (d)医薬品品質システムは、第 2.7 章に記述されているとおり、外部委託作業

及び購入原材料の質の保証を提供するために、適切なプロセス、資源及び責

任を含まなければならない。 (e)経営陣の責任は、第 2 章に記述されているとおり、医薬品品質システムの

中で特定されなければならない。 (f)医薬品品質システムは第 3 章に記述されているとおり、以下の要素を含ま

なければならない:製造プロセスの稼働性能及び製品品質のモニタリング、

是正措置及び予防措置、変更マネジメント及びマネジメントレビュー。 (g)医薬品品質システムの中でのプロセスの有効性をモニターするために、第

4 章に記述されているとおり業績評価指標を特定し使用しなければならない。 4.2 文書化に関する

要求事項

4.2.1 一般 品質マネジメントシステムの文書には,次の事項を含めなければならない。

a)文書化した,品質方針及び品質目標の表明 b)品質マニュアル c)この規格が要求する“文書化された手順”及び記録 d)組織内のプロセスの効果的な計画,運用及び管理を確実に実施するために,

組織が必要と決定した記録を含む文書

4.2.2 品質マニュア

ル 組織は,次の事項を含む品質マニュアルを作成し,維持しなければならない。

a)品質マネジメントシステムの適用範囲。除外がある場合には,除外の詳細,

及び除外を正当とする理由(1.2 参照) b)品質マネジメントシステムについて確立された“文書化された手順”又はそ

れらを参照できる情報 c)品質マネジメントシステムのプロセス間の相互関係に関する記述

1.8 品質マニュアル 品質マニュアル又は同等の文書化された取り組みが確立され、その中には医

薬品品質システムの記述を含まなければならない。それらの記述には以下の

ことを含まなければならない: (a)品質方針(第 2 章参照); (b)医薬品品質システムの適用範囲; (c)医薬品品質システムのプロセス並びにそれらの順序、関連性及び相互依存

性の特定。プロセスマップ及びフローチャートは、医薬品品質システムのプ

ロセスの視覚的な説明を容易にする有効なツールとなり得る; (d)医薬品品質システムの中での経営陣の責任。(第 2 章参照)

4.2.3 文書管理 品質マネジメントシステムで必要とされる文書は,管理しなければならない。

ただし,記録は文書の一種ではあるが,4.2.4 に規定する要求事項に従って管

理しなければならない。 次の活動に必要な管理を規定するために,“文書化された手順”を確立しなけ

ればならない。 a)発行前に,適切かどうかの観点から文書を承認する。 b)文書をレビューする。また,必要に応じて更新し,再承認する。 c)文書の変更の識別及び現在有効な版の識別を確実にする。 d)該当する文書の適切な版が,必要なときに,必要なところで使用可能な状

態にあることを確実にする。 e)文書は,読みやすくかつ容易に識別可能な状態であることを確実にする。

f)品質マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した

外部からの文書を明確にし,その配付が管理されていることを確実にする。

(1.8 品質マニュア

ル)

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g)廃止文書が誤って使用されないようにする。また,これらを何らかの目的

で保持する場合には,適切な識別をする。 4.2.4 記録の管理 要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの効果的運用の証拠を示す

ために作成された記録を,管理しなければならない。 組織は,記録の識別,保管,保護,検索,保管期間及び廃棄に関して必要な

管理を規定するために,“文書化された手順”を確立しなければならない。 記録は,読みやすく,容易に識別可能かつ検索可能でなければならない。

5 経営者の責任 2 経営陣の責任

リーダーシップは、品質に対する全社的なコミットメントを確立し、及び維

持するために、また、医薬品品質システムの実効性のために、必要不可欠で

ある。 5.1 経営者のコミッ

トメント トップマネジメントは,品質マネジメントシステムの構築及び実施,並びに

その有効性を継続的に改善することに対するコミットメントの証拠を,次の

事項によって示さなければならない。 a)法令・規制要求事項を満たすことは当然のこととして,顧客要求事項を満

たすことの重要性を組織内に周知する。 b)品質方針を設定する。 c)品質目標が設定されることを確実にする。 d)マネジメントレビューを実施する。 e)資源が使用できることを確実にする。

2.1 経営陣のコミッ

トメント

(a)上級経営陣は、品質目標を達成するために、医薬品品質システムが有効に

機能していること、また、役割、責任及び権限が規定されており、会社全体

にわたり伝達され実施されていることを確実にする 終責任を有する。 (b)経営陣は以下のことを行わなければならない: (1)実効性のある医薬品品質システムの設計、実施、モニタリング及び維持に

参画すること; (2)医薬品品質システムに対する、強力で目に見える形の支持を明確に示し、

組織全体における実施を確実にすること; (3)品質に関する問題を適切な役職の経営陣に上げるために、適時で有効な情

報伝達及び上申プロセスを、確実に存在させること; (4)医薬品品質システムに関連する全ての組織ユニットの個々人及び組織全体

の役割、責任、権限及び相互関係を規定すること。これらの相互のやりとり

が組織の全階層に確実に伝達され、理解されるようにすること。医薬品品質

システムのある種の責務を満たす権限を有している独立した品質ユニット/

部門は、各極の規制により要件化されている。 (5)製造プロセスの稼働性能及び製品品質並びに医薬品品質システムに対する

マネジメントレビューを実行すること; (6)継続的改善を推奨すること; (7)適切な資源をコミットすること。

5.2 顧客重視 顧客満足の向上を目指して,トップマネジメントは,顧客要求事項が決定さ

れ,満たされていることを確実にしなければならない(7.2.1 及び 8.2.1 参照)。

5.3 品質方針 トップマネジメントは,品質方針について,次の事項を確実にしなければな

らない。 a)組織の目的に対して適切である。 b)要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善

に対するコミットメントを含む。 c)品質目標の設定及びレビューのための枠組みを与える。 d)組織全体に伝達され,理解される。 e)適切性の持続のためにレビューされる。

2.2 品質方針

(a)上級経営陣は、企業の品質に関する全体的な意図及び方向を記述する品質

方針を確立しなければならない。 (b)品質方針は、適用される規制要件に適合することを求め、また、医薬品品

質システムの継続的改善を促進しなければならない。 (c)品質方針は、企業の全ての階層の人員に伝達され、理解されなければなら

ない。 (d)品質方針は、継続的な有効性について定期的にレビューされなければなら

ない。 5.4 計画 5.4.1 品質目標 トップマネジメントは,組織内のしかるべき部門及び階層で,製品要求事項

を満たすために必要なものを含む品質目標[7.1a)参照]が設定されているこ

とを確実にしなければならない。品質目標は,その達成度が判定可能で,品

質方針との整合がとれていなければならない。

2.3 品質計画

(a)上級経営陣は品質方針を実施するため必要とされる品質目標が規定され、

及び伝達されることを確実にしなければならない。 (b)品質目標は企業の関与する全ての階層から支持されなければならない。 (c)品質目標は企業の戦略に合致し、品質方針と整合していなければならない。 (d)経営陣は品質目標を達成するため、適切な資源及び訓練を提供しなければ

ならない。

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(e)品質目標に対する進捗度を測る業績評価指標が確立され、モニターされ、

定期的に伝達され、及び必要に応じて本文書の第 4.1 章に記述されているよ

うに、対応が行われなければならない。 5.4.2 品質マネジメ

ントシステムの計画

トップマネジメントは,次の事項を確実にしなければならない。 a)品質目標に加えて 4.1 に規定する要求事項を満たすために,品質マネジメン

トシステムの計画を策定する。 b)品質マネジメントシステムの変更を計画し,実施する場合には,品質マネ

ジメントシステムを“完全に整っている状態”(integrity)に維持する。

5.5 責任,権限及びコ

ミュニケーション

5.5.1 責任及び権限 トップマネジメントは,責任及び権限が定められ,組織全体に周知されてい

ることを確実にしなければならない。 (2.1 経営陣のコミッ

トメント)

5.5.2 管理責任者 トップマネジメントは,組織の管理層の中から管理責任者を任命しなければ

ならない。管理責任者は,与えられている他の責任とかかわりなく,次に示

す責任及び権限をもたなければならない。 a)品質マネジメントシステムに必要なプロセスの確立,実施及び維持を確実

にする。 b)品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況及び改善の必要性の有無

について,トップマネジメントに報告する。 c)組織全体にわたって,顧客要求事項に対する認識を高めることを確実にす

る。

5.5.3 内部コミュニ

ケーション トップマネジメントは,組織内にコミュニケーションのための適切なプロセ

スが確立されることを確実にしなければならない。また,品質マネジメント

システムの有効性に関しての情報交換が行われることを確実にしなければな

らない。

2.5 内部の情報伝達

(a)経営陣は組織内において、適切な情報伝達プロセスが確立され実施される

ことを確実にしなければならない。 (b)情報伝達プロセスは、企業の全階層間での適切な情報の流れを確保しなけ

ればならない。 (c)情報伝達プロセスは、製品品質及び医薬品品質システムのある種の問題が、

適切かつ適時に上申されることを確実にしなければならない。

5.6 マネジメントレ

ビュー

5.6.1 一般 トップマネジメントは,組織の品質マネジメントシステムが,引き続き,適

切,妥当かつ有効であることを確実にするために,あらかじめ定められた間

隔で品質マネジメントシステムをレビューしなければならない。このレビュ

ーでは,品質マネジメントシステムの改善の機会の評価,並びに品質方針及

び品質目標を含む品質マネジメントシステムの変更の必要性の評価も行わな

ければならない。 マネジメントレビューの結果の記録は,維持しなければならない(4.2.4 参照)。

2.6 マネジメントレ

ビュー (a)上級経営陣は、医薬品品質システムの継続する適切性及び実効性を確実に

するためマネジメントレビューを通じ、医薬品品質システムの統括管理に対

して責任を有しなければならない。 (b)経営陣は、第 3 章及び第 4 章に記述されているとおり、製造プロセスの稼

働性能及び製品品質並びに医薬品品質システムの定期的なレビュー結果を評

価しなければならない。

4 医薬品品質システ

ムの継続的改善 本章では、医薬品品質システムを管理し継続的に改善するために実施されな

ければならない活動を記述している。 5.6.2 マネジメント

レビューへのインプ

ット

マネジメントレビューへのインプットには,次の情報を含めなければならな

い。 a)監査の結果 b)顧客からのフィードバック c)プロセスの成果を含む実施状況及び製品の適合性 d)予防処置及び是正処置の状況 e)前回までのマネジメントレビューの結果に対するフォローアップ f)品質マネジメントシステムに影響を及ぼす可能性のある変更

4.1 医薬品品質シス

テムのマネジメント

レビュー

経営陣は、医薬品品質システムを定期的にレビューするための正式なプロセ

スを持たなければならない。 レビューは以下のことを含むべきである: (a)医薬品品質システムの目的の達成に関する評価; (b)医薬品品質システム内におけるプロセスの有効性をモニターするために用

いられる、以下のような業績評価指標の評価: (1)苦情、逸脱、CAPA 及び変更マネジメントプロセス; (2)外部委託作業のフィードバック;

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g)改善のための提案 (3)リスクアセスメント、トレンド解析及び監査を含む自己評価プロセス; (4)当局の査察及び指摘事項並びに顧客監査などの外部の評価。

4.2 医薬品品質シス

テムに影響を与える

内的及び外的要因の

モニタリング

経営陣がモニターする要因には以下が含まれ得る: (a)医薬品品質システムに影響を与え得る規制、ガイダンス及び品質問題の出

現; (b)医薬品品質システムを増強するイノベーション (c)ビジネスの環境及び目的の変更; (d)製品所有権の変更。

3.2.4 製造プロセス

の稼働性能及び製品

品質のマネジメント

レビュー

マネジメントレビューは、製造プロセスの稼働性能及び製品品質がライフサ

イクルにわたり管理されていることを保証しなければならない。企業の規模

及び複雑さに応じて、マネジメントレビューは、種々の役職の経営陣による

一連のレビューであることが可能で、適切な品質問題をレビューのために上

級経営陣へ上げる、適時で有効な情報伝達及び上申プロセスを含まなければ

ならない。 (a)マネジメントレビューシステムは以下のことを含まなければならない: (1)当局の査察及び指摘事項、監査並びに他の評価の結果並びに規制当局に対

して行われたコミットメント; (2)以下のことを含む定期的な品質レビュー: (i)製品品質に関する苦情及び回収のような顧客満足度の計測; (ii)製造プロセスの稼働性能及び製品品質のモニタリングの結論; (iii)是正措置及び予防措置から生じる変更を含む、製造プロセス及び製品の変

更の有効性。 (3)前回のマネジメントレビューからのあらゆるフォローアップ措置。 (b)マネジメントレビューシステムは、以下のような適切な措置を特定しなけ

ればならない: (1)製造プロセス及び製品への改善; (2)資源の提供、訓練及び/又は再配置; (3)知識の獲得及び伝播。

5.6.3 マネジメント

レビューからのアウ

トプット

マネジメントレビューからのアウトプットには,次の事項に関する決定及び

処置すべてを含めなければならない。 a)品質マネジメントシステム及びそのプロセスの有効性の改善 b)顧客要求事項にかかわる,製品の改善 c)資源の必要性

4.3 マネジメントレ

ビュー及びモニタリ

ングの成果

医薬品品質システム並びに内的及び外的要因のモニタリングについてのマネ

ジメントレビューの成果には以下が含まれ得る: (a)医薬品品質システム及び関連するプロセスへの改善; (b)資源の配分若しくは再配置及び/又は人員の訓練; (c)品質方針及び品質目標の改訂;

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(d)適切な問題を上級経営陣へ上申することを含む、マネジメントレビューの

結果及び措置に関する文書記録並びに適時で実効的な情報伝達。 6 資源の運用管理 6.1 資源の提供 組織は,次の事項に必要な資源を明確にし,提供しなければならない。

a)品質マネジメントシステムを実施し,維持する。また,その有効性を継続

的に改善する。 b)顧客満足を,顧客要求事項を満たすことによって向上する。

2.4 資源管理

(a)経営陣は、医薬品品質システムを実施し、維持し、及びその有効性を継続

的に改善するために、十分でかつ適切な資源(人的、財政的、物的、装置及

び設備上のもの)を決定し提供しなければならない。 (b)経営陣は資源が特定の製品、プロセス又は製造サイトに対し、適切に適用

されることを確実にしなければならない。 6.2 人的資源 6.2.1 一般 製品要求事項への適合に影響がある仕事に従事する要員は,適切な教育,訓

練,技能及び経験を判断の根拠として力量がなければならない。 (2.4 資源管理)

6.2.2 力量,教育・訓

練及び認識 組織は,次の事項を実施しなければならない。 a)製品要求事項への適合に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明

確にする。 b)該当する場合には(必要な力量が不足している場合には),その必要な力

量に到達することができるように教育・訓練を行うか,又は他の処置をとる。

c)教育・訓練又は他の処置の有効性を評価する。 d)組織の要員が,自らの活動のもつ意味及び重要性を認識し,品質目標の達

成に向けて自らがどのように貢献できるかを認識することを確実にする。 e)教育,訓練,技能及び経験について該当する記録を維持する(4.2.4 参照)。

(2.4 資源管理)

6.3 インフラストラ

クチャー 組織は,製品要求事項への適合を達成するうえで必要とされるインフラスト

ラクチャーを明確にし,提供し,維持しなければならない。インフラストラ

クチャーとしては,次のようなものが該当する場合がある。 a)建物,作業場所及び関連するユーティリティー(例えば,電気,ガス又は

水) b)設備(ハードウェア及びソフトウェア) c)支援体制(例えば,輸送,通信又は情報システム)

(2.4 資源管理)

6.4 作業環境 組織は,製品要求事項への適合を達成するために必要な作業環境を明確にし,

運営管理しなければならない。 (2.4 資源管理)

7 製品実現 3 製造プロセスの稼

働性能及び製品品質

の継続的改善

本章は、第 1.5 章に定義されている ICHQ10 の目的を達成するために、各極の

要件を補強する、ライフサイクルの各段階の目標及び 4 つの特定の医薬品品

質システム要素について記述する。下記(に記述する製造プロセスの稼働性

能及び製品品質の継続的改善)は各極の GMP 要件すべてを書き直すものでは

ない。 3.1 ライフサイクル

の各段階の目標

製品ライフサイクルの各段階の目標を以下に記述する。 3.1.1. 医薬品開発 医薬品開発活動の目標は、製品及び意図した稼働性能を一貫して供給するた

めの製造工程を設計すること並びに患者及び医療従事者のニーズ並びに規制

当局及び内部顧客の要求事項を満たすことである。製剤開発への取り組みは

ICHQ8 に記述されている。探索及び臨床開発研究の結果は、本ガイダンスの

適用範囲外であるが、医薬品開発のインプット因子である。 3.1.2. 技術移転 技術移転活動の目標は、製品実現を達成するために、開発部門と生産部門の

間及び製造サイト内又はサイト間で製品及び製造プロセスの知識を移管する

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ことである。この知識は、製造プロセス、管理戦略、プロセスバリデーショ

ンの取り組み及び続行していく継続的改善の基礎を形成する。 3.1.3. 商業生産 製造活動の目標には製品実現の達成、管理できた状態の確立及び維持並びに

継続的改善の促進が含まれる。医薬品品質システムは、望まれる製品品質が

恒常的に満たされ、適切な製造プロセスの稼働性能が達成され、一連の管理

が適切であり、改善の機会が特定及び評価され、並びに知識の蓄積が継続し

て拡大されることを保証しなければならない。 3.1.4. 製品の終結(使用終了まで) 製品の終結における活動の目標は、製品のライフサイクルの終末期を実効的

に管理することである。製品の終結については、規制要件に従った文書記録

及びサンプルの保管、並びに継続的な製品の評価(例えば、苦情処理及び安

定性試験)及び報告のような活動を管理するために、あらかじめ規定された

取り組みがなされなければならない。

3.2 医薬品品質シス

テムの要素

以下に記述された要素は、一部、各極 GMP 規則の下で要件化されているかも

しれない;しかしながら、Q10 モデルの意図するところは、製品品質に対す

るライフサイクルアプローチを促進するためにこれらの要素を増進すること

である。これらの 4 つの要素は下記のとおり: 製造プロセスの稼働性能及び製品品質のモニタリングシステム; 是正措置及び予防措置(CAPA)システム; 変更マネジメントシステム; 製造プロセスの稼働性能及び製品品質のマネジメントレビュー。 これらの要素は、製品ライフサイクルの各段階間の相違及び各段階における

異なる目標を認識しながら、各段階に適切かつ釣り合ったレベルで適用され

なければならない。企業は製品ライフサイクルの全期間にわたり、製品品質

を改善する革新的な取り組みへの機会について評価することが奨励される。 医薬品のライフサイクルの各段階に対する要素の適用事例の表が、各要素に

ついて後に添付されている。 7.1 製品実現の計画 組織は,製品実現のために必要なプロセスを計画し,構築しなければならな

い。製品実現の計画は,品質マネジメントシステムのその他のプロセスの要

求事項と整合がとれていなければならない(4.1 参照)。 組織は,製品実現の計画に当たって,次の各事項について適切に明確化しな

ければならない。 a)製品に対する品質目標及び要求事項 b)製品に特有な,プロセス及び文書の確立の必要性,並びに資源の提供の必

要性 c)その製品のための検証,妥当性確認,監視,測定,検査及び試験活動,並

びに製品合否判定基準 d)製品実現のプロセス及びその結果としての製品が,要求事項を満たしてい

ることを実証するために必要な記録(4.2.4 参照) この計画のアウトプットは,組織の運営方法に適した形式でなければならな

い。

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7.2 顧客関連のプロ

セス

7.2.1 製品に関連す

る要求事項の明確化

組織は,次の事項を明確にしなければならない。 a)顧客が規定した要求事項。これには引渡し及び引渡し後の活動に関する要

求事項を含む。 b)顧客が明示してはいないが,指定された用途又は意図された用途が既知で

ある場合,それらの用途に応じた要求事項 c)製品に適用される法令・規制要求事項 d)組織が必要と判断する追加要求事項すべて

7.2.2 製品に関連す

る要求事項のレビュ

組織は,製品に関連する要求事項をレビューしなければならない。このレビ

ューは,組織が顧客に製品を提供することに対するコミットメント(例提案

書の提出,契約又は注文の受諾,契約又は注文への変更の受諾)をする前に

実施しなければならない。レビューでは,次の事項を確実にしなければなら

ない。 a)製品要求事項が定められている。 b)契約又は注文の要求事項が以前に提示されたものと異なる場合には,それ

について解決されている。 c)組織が,定められた要求事項を満たす能力をもっている。 このレビューの結果の記録,及びそのレビューを受けてとられた処置の記録

を維持しなければならない(4.2.4 参照)。 顧客がその要求事項を書面で示さない場合には,組織は顧客要求事項を受諾

する前に確認しなければならない。 製品要求事項が変更された場合には,組織は,関連する文書を修正しなけれ

ばならない。また,変更後の要求事項が,関連する要員に理解されているこ

とを確実にしなければならない。

7.2.3 顧客とのコミ

ュニケーション 組織は,次の事項に関して顧客とのコミュニケーションを図るための効果的

な方法を明確にし,実施しなければならない。 a)製品情報 b)引合い,契約若しくは注文,又はそれらの変更 c)苦情を含む顧客からのフィードバック

7.3 設計・開発 7.3.1 設計・開発の計

画 組織は,製品の設計・開発の計画を策定し,管理しなければならない。設計・

開発の計画において,組織は,次の事項を明確にしなければならない。 a)設計・開発の段階 b)設計・開発の各段階に適したレビュー,検証及び妥当性確認 c)設計・開発に関する責任及び権限組織は,効果的なコミュニケーション及

び責任の明確な割当てを確実にするために,設計・開発に関与するグループ

間のインタフェースを運営管理しなければならない。設計・開発の進行に応

じて,策定した計画を適切に更新しなければならない。

7.3.2 設計・開発への

インプット 製品要求事項に関連するインプットを明確にし,記録を維持しなければなら

ない(4.2.4 参照)。インプットには,次の事項を含めなければならない。 a)機能及び性能に関する要求事項 b)適用される法令・規制要求事項 c)適用可能な場合には,以前の類似した設計から得られた情報 d)設計・開発に不可欠なその他の要求事項製品要求事項に関連するインプッ

トについては,その適切性をレビューしなければならない。要求事項は,漏

れがなく,あいまい(曖昧)でなく,相反することがあってはならない。

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7.3.3 設計・開発から

のアウトプット 設計・開発からのアウトプットは,設計・開発へのインプットと対比した検

証を行うのに適した形式でなければならない。また,リリースの前に,承認

を受けなければならない。設計・開発からのアウトプットは,次の状態でな

ければならない。 a)設計・開発へのインプットで与えられた要求事項を満たす。 b)購買,製造及びサービス提供に対して適切な情報を提供する。 c)製品の合否判定基準を含むか,又はそれを参照している。 d)安全な使用及び適正な使用に不可欠な製品の特性を明確にする。

7.3.4 設計・開発のレ

ビュー 設計・開発の適切な段階において,次の事項を目的として,計画されたとお

りに(7.3.1 参照)体系的なレビューを行わなければならない。 a)設計・開発の結果が,要求事項を満たせるかどうかを評価する。 b)問題を明確にし,必要な処置を提案する。レビューへの参加者には,レビ

ューの対象となっている設計・開発段階に関連する部門を代表する者が含ま

れていなければならない。このレビューの結果の記録,及び必要な処置があ

ればその記録を維持しなければならない(4.2.4 参照)。

7.3.5 設計・開発の検

証 設計・開発からのアウトプットが,設計・開発へのインプットで与えられて

いる要求事項を満たしていることを確実にするために,計画されたとおりに

(7.3.1 参照)検証を実施しなければならない。この検証の結果の記録,及び

必要な処置があればその記録を維持しなければならない(4.2.4 参照)。

3.2.1 製造プロセス

の稼働性能及び製品

品質のモニタリング

システム

製薬企業は、管理できた状態が維持されていることを確実にするために、製

造プロセスの稼働性能及び製品品質をモニタリングするシステムを計画し、

及び実行しなければならない。有効なモニタリングシステムは、望まれる品

質の製品を製造するため及び継続的改善につながる分野を特定するための、

製造プロセスの能力及び管理が継続していることについて保証を与える。製

造プロセスの稼働性能及び製品品質のモニタリングシステムは: (a)管理戦略を確立するため、品質リスクマネジメントを用いなければならな

い。この管理戦略は、原薬及び製剤の原材料及び構成資材に関連するパラメ

ータ及び特性、設備及び装置の運転条件、工程管理、 終製品の規格並びに

関連するモニタリング及び管理の方法及び頻度を含めることができる。管理

戦略は適時のフィードバック/フィードフォワード並びに適切な是正措置及

び予防措置を促進しなければならない; (b)管理戦略の中で特定されたパラメータ及び特性を測定し、及び分析するた

めのツール(例:データ管理及び統計ツール)を提供しなければならない; (c)管理できた状態の下で運転が継続していることを検証するため、管理戦略

の中で特定されたパラメータ及び特性を分析しなければならない; (d)変動を低減し、又は管理し得る継続的改善活動のために、製造プロセスの

稼働性能及び製品品質に影響を与える変動原因を特定しなければならない; (e)製品品質に関する内部及び外部両方の情報源からのフィードバック、例え

ば苦情、製品不合格、非適合、回収、逸脱、監査並びに当局の査察及び指摘

事項など、を含まなければならない; (f)製造工程の理解を増強し、デザインスペースを充実し(確立されている場

合)、また、プロセスバリデーションへの革新的な取り組みを可能にする知識

を提供しなければならない。

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7.3.6 設計・開発の妥

当性確認 結果として得られる製品が,指定された用途又は意図された用途に応じた要

求事項を満たし得ることを確実にするために,計画した方法(7.3.1 参照)に

従って,設計・開発の妥当性確認を実施しなければならない。実行可能な場

合にはいつでも,製品の引渡し又は提供の前に,妥当性確認を完了しなけれ

ばならない。妥当性確認の結果の記録,及び必要な処置があればその記録を

維持しなければならない(4.2.4 参照)。

7.3.7 設計・開発の変

更管理 設計・開発の変更を明確にし,記録を維持しなければならない。変更に対し

て,レビュー,検証及び妥当性確認を適切に行い,その変更を実施する前に

承認しなければならない。設計・開発の変更のレビューには,その変更が,

製品を構成する要素及び既に引き渡されている製品に及ぼす影響の評価を含

めなければならない。変更のレビューの結果の記録,及び必要な処置があれ

ばその記録を維持しなければならない(4.2.4 参照)。

3.2.3 変更マネジメ

ントシステム

イノベーション、継続的改善、製造プロセスの稼働性能及び製品品質のモニ

タリングのアウトプット及び CAPA は変更を推進する。これらの変更を適切

に評価し、承認し、及び実施するために、企業は実効的な変更マネジメント

システムを有さなければならない。一般的に、 初の薬事申請以前と、薬事

申請への変更が各極の要件下で求められることがある薬事申請後とでは、変

更マネジメントプロセスの正式さに相違がある。 変更マネジメントシステムは、継続的改善が適時、有効に行われることを確

実にする。それは、変更により意図しない結果にならないことを高度に保証

しなければならない。 変更マネジメントシステムは、必要に応じライフサイクルの各段階について

以下のことを含まなければならない: (a)品質リスクマネジメントが提案された変更を評価するために利用されなけ

ればならない。評価の労力及び正式さのレベルはリスクのレベルと相応しな

ければならない; (b)提案された変更は、確立されている場合はデザインスペース並びに/又は

新の製品及び製造工程の理解を含め、承認事項との関連において評価され

なければならない。薬事申請への変更が各極の要件下で求められているかを

決定するための評価を行わなければならない。ICHQ8 で記述されているよう

に、デザインスペース内での作業は(薬事申請内容の観点からは)変更とは

みなされない。しかしながら、医薬品品質システムの見地からは、すべての

変更は企業の変更マネジメントシステムにより評価されなければならない; (c)提案された変更は、変更が技術的に正当化されることを保証するために、

関連する分野(例:医薬品開発、製造、品質、薬事及び医事)から、適切な

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専門技術及び知識で貢献する専門家チームにより評価されなければならな

い。提案された変更に対する予測的評価基準が定められなければならない; (d)変更が実施された後に、変更目的が達成されたこと及び製品品質へ悪影響

のないことを確認するため、変更の評価が実施されなければならない。

7.4 購買 7.4.1 購買プロセス 組織は,規定された購買要求事項に,購買製品が適合することを確実にしな

ければならない。供給者及び購買した製品に対する管理の方式及び程度は,

購買製品が,その後の製品実現のプロセス又は 終製品に及ぼす影響に応じ

て定めなければならない。組織は,供給者が組織の要求事項に従って製品を

供給する能力を判断の根拠として,供給者を評価し,選定しなければならな

い。選定,評価及び再評価の基準を定めなければならない。評価の結果の記

録,及び評価によって必要とされた処置があればその記録を維持しなければ

ならない(4.2.4 参照)。

2.7 外部委託作業及

び購入原材料の管理

医薬品品質システムは、本章で記述されている経営陣の責任も含め、あらゆ

る外部委託作業並びに購入原材料の質の監督及びレビューにまで及ぶもので

ある。製薬企業は、外部委託作業及び購入原材料の質の監督を保証するため

のプロセスが実施されていることを確実とする 終的な責任を負う。これら

のプロセスは品質リスクマネジメントを取り入れ、以下のことを含まなけれ

ばならない: (a)外部委託の運用又は原材料供給者の決定に先立ち、相手方の業務を遂行す

る適性及び能力又は規定されたサプライチェーンを用いて原材料を供給する

適性及び能力についても審査すること(例えば、監査、原材料の評価及び適

格性確認); (b)関与する当事者の品質関連活動に対する責任及び情報伝達プロセスを規定

すること。外部委託作業については、このことは委託者と受託者間の契約書

に含まれること; (c)受託者の業務遂行能力又は供給者からの原材料の品質をモニタリングし、

及びレビューすること、また、あらゆる必要とされる改善を特定し、及び実

施すること; (d)入荷した成分及び原材料について、それらが合意されたサプライチェーン

を用い、承認された供給源からのものであることを確実とするためにモニタ

リングを実施すること。 7.4.2 購買情報 購買情報では購買製品に関する情報を明確にし,次の事項のうち該当するも

のを含めなければならない。 a)製品,手順,プロセス及び設備の承認に関する要求事項 b)要員の適格性確認に関する要求事項 c)品質マネジメントシステムに関する要求事項 組織は,供給者に伝達する前に,規定した購買要求事項が妥当であることを

確実にしなければならない。

(2.7 外部委託作業及

び購入原材料の管理)

7.4.3 購買製品の検

証 組織は,購買製品が,規定した購買要求事項を満たしていることを確実にす

るために,必要な検査又はその他の活動を定めて,実施しなければならない。

(2.7 外部委託作業及

び購入原材料の管理)

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組織又はその顧客が,供給者先で検証を実施することにした場合には,組織

は,その検証の要領及び購買製品のリリースの方法を購買情報の中で明確に

しなければならない。 7.5 製造及びサービ

ス提供

7.5.1 製造及びサー

ビス提供の管理 組織は,製造及びサービス提供を計画し,管理された状態で実行しなければ

ならない。管理された状態には,次の事項のうち該当するものを含めなけれ

ばならない。 a)製品の特性を述べた情報が利用できる。 b)必要に応じて,作業手順が利用できる。 c)適切な設備を使用している。 d)監視機器及び測定機器が利用でき,使用している。 e)監視及び測定が実施されている。 f)製品のリリース,顧客への引渡し及び引渡し後の活動が実施されている。

7.5.2 製造及びサー

ビス提供に関するプ

ロセスの妥当性確認

製造及びサービス提供の過程で結果として生じるアウトプットが,それ以降

の監視又は測定で検証することが不可能で,その結果,製品が使用され,又

はサービスが提供された後でしか不具合が顕在化しない場合には,組織は,

その製造及びサービス提供の該当するプロセスの妥当性確認を行わなければ

ならない。 妥当性確認によって,これらのプロセスが計画どおりの結果を出せることを

実証しなければならない。 組織は,これらのプロセスについて,次の事項のうち該当するものを含んだ

手続きを確立しなければならない。 a)プロセスのレビュー及び承認のための明確な基準 b)設備の承認及び要員の適格性確認 c)所定の方法及び手順の適用 d)記録に関する要求事項(4.2.4 参照) e)妥当性の再確認

7.5.3 識別及びトレ

ーサビリティ 必要な場合には,組織は,製品実現の全過程において適切な手段で製品を識

別しなければならない。 組織は,製品実現の全過程において,監視及び測定の要求事項に関連して,

製品の状態を識別しなければならない。 トレーサビリティが要求事項となっている場合には,組織は,製品について

一意の識別を管理し,記録を維持しなければならない(4.2.4 参照)。

7.5.4 顧客の所有物 組織は,顧客の所有物について,それが組織の管理下にある間,又は組織が

それを使用している間は,注意を払わなければならない。組織は,使用する

ため又は製品に組み込むために提供された顧客の所有物の識別,検証及び保

護・防護を実施しなければならない。顧客の所有物を紛失若しくは損傷した

場合又は使用には適さないとわかった場合には,組織は,顧客に報告し,記

録を維持しなければならない(4.2.4 参照)。

7.5.5 製品の保存 組織は,内部処理から指定納入先への引渡しまでの間,要求事項への適合を

維持するように製品を保存しなければならない。この保存には,該当する場

合,識別,取扱い,包装,保管及び保護を含めなければならない。保存は,

製品を構成する要素にも適用しなければならない。

2.8 製品所有権にお

ける変更の管理

製品所有権を変更する(例えば、買収を通じて)場合、経営陣はこの複雑性

を考慮し、以下のことを確実なものとしなければならない: (a)関与する各企業に関して継続する責任が規定されていること;

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(b)必要な情報が移管されていること。 7.6 監視機器及び測

定機器の管理 定められた要求事項に対する製品の適合性を実証するために,組織は,実施

すべき監視及び測定を明確にしなければならない。また,そのために必要な

監視機器及び測定機器を明確にしなければならない。 組織は,監視及び測定の要求事項との整合性を確保できる方法で監視及び測

定が実施できることを確実にするプロセスを確立しなければならない。 測定値の正当性が保証されなければならない場合には,測定機器に関し,次

の事項を満たさなければならない。 a)定められた間隔又は使用前に,国際又は国家計量標準にトレーサブルな計

量標準に照らして校正若しくは検証,又はその両方を行う。そのような標準

が存在しない場合には,校正又は検証に用いた基準を記録する(4.2.4 参照)。

b)機器の調整をする,又は必要に応じて再調整する。 c)校正の状態を明確にするために識別を行う。 d)測定した結果が無効になるような操作ができないようにする。 e)取扱い,保守及び保管において,損傷及び劣化しないように保護する。 さらに,測定機器が要求事項に適合していないことが判明した場合には,組

織は,その測定機器でそれまでに測定した結果の妥当性を評価し,記録しな

ければならない。組織は,その機器,及び影響を受けた製品すべてに対して,

適切な処置をとらなければならない。 校正及び検証の結果の記録を維持しなければならない(4.2.4 参照)。 規定要求事項にかかわる監視及び測定にコンピュータソフトウェアを使う場

合には,そのコンピュータソフトウェアによって意図した監視及び測定がで

きることを確認しなければならない。この確認は, 初に使用するのに先立

って実施しなければならない。また,必要に応じて再確認しなければならな

い。

8 測定,分析及び改善 8.1 一般 組織は,次の事項のために必要となる監視,測定,分析及び改善のプロセス

を計画し,実施しなければならない。 a)製品要求事項への適合を実証する。 b)品質マネジメントシステムの適合性を確実にする。 c)品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する。 これには,統計的手法を含め,適用可能な方法,及びその使用の程度を決定

することを含めなければならない。

8.2 監視及び測定 8.2.1 顧客満足 組織は,品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の測定の一つとし

て,顧客要求事項を満たしているかどうかに関して顧客がどのように受けと

めているかについての情報を監視しなければならない。この情報の入手及び

使用の方法を定めなければならない。

8.2.2 内部監査 組織は,品質マネジメントシステムの次の事項が満たされているか否かを明

確にするために,あらかじめ定められた間隔で内部監査を実施しなければな

らない。 a)品質マネジメントシステムが,個別製品の実現の計画(7.1 参照)に適合し

ているか,この規格の要求事項に適合しているか,及び組織が決めた品質マ

ネジメントシステム要求事項に適合しているか。 b)品質マネジメントシステムが効果的に実施され,維持されているか。 組織は,監査の対象となるプロセス及び領域の状態及び重要性,並びにこれ

(4.1 医薬品品質シス

テムのマネジメント

レビュー)

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までの監査結果を考慮して,監査プログラムを策定しなければならない。監

査の基準,範囲,頻度及び方法を規定しなければならない。監査員の選定及

び監査の実施においては,監査プロセスの客観性及び公平性を確保しなけれ

ばならない。監査員は,自らの仕事を監査してはならない。 監査の計画及び実施,記録の作成及び結果の報告に関する責任,並びに要求

事項を規定するために,“文書化された手順”を確立しなければならない。 監査及びその結果の記録は,維持しなければならない(4.2.4 参照)。 監査された領域に責任をもつ管理者は,検出された不適合及びその原因を除

去するために遅滞なく,必要な修正及び是正処置すべてがとられることを確

実にしなければならない。フォローアップには,とられた処置の検証及び検

証結果の報告を含めなければならない(8.5.2 参照)。 8.2.3 プロセスの監

視及び測定 組織は,品質マネジメントシステムのプロセスの監視,及び適用可能な場合

に行う測定には,適切な方法を適用しなければならない。これらの方法は,

プロセスが計画どおりの結果を達成する能力があることを実証するものでな

ければならない。計画どおりの結果が達成できない場合には,適切に,修正

及び是正処置をとらなければならない。

8.2.4 製品の監視及

び測定 組織は,製品要求事項が満たされていることを検証するために,製品の特性

を監視し,測定しなければならない。監視及び測定は,個別製品の実現の計

画(7.1 参照)に従って,製品実現の適切な段階で実施しなければならない。

合否判定基準への適合の証拠を維持しなければならない。 顧客への引渡しのための製品のリリースを正式に許可した人を,記録してお

かなければならない(4.2.4 参照)。 個別製品の実現の計画(7.1 参照)で決めたことが問題なく完了するまでは,

顧客への製品のリリース及びサービスの提供は行ってはならない。ただし,

当該の権限をもつ者が承認したとき,及び該当する場合に顧客が承認したと

きは,この限りではない。

8.3 不適合製品の管

理 8.3 不適合製品の管理組織は,製品要求事項に適合しない製品が誤って使用さ

れたり,又は引き渡されることを防ぐために,それらを識別し,管理するこ

とを確実にしなければならない。不適合製品の処理に関する管理及びそれに

関連する責任及び権限を規定するために,“文書化された手順”を確立しなけ

ればならない。 該当する場合には,組織は,次の一つ又はそれ以上の方法で,不適合製品を

処理しなければならない。 a)検出された不適合を除去するための処置をとる。 b)当該の権限をもつ者,及び該当する場合に顧客が,特別採用によって,そ

の使用,リリース,又は合格と判定することを正式に許可する。 c)本来の意図された使用又は適用ができないような処置をとる。 d)引渡し後又は使用開始後に不適合製品が検出された場合には,その不適合

による影響又は起こり得る影響に対して適切な処置をとる。 不適合製品に修正を施した場合には,要求事項への適合を実証するための再

検証を行わなければならない。 不適合の性質の記録,及び不適合に対してとられた特別採用を含む処置の記

録を維持しなければならない(4.2.4 参照)。

8.4 データの分析 組織は,品質マネジメントシステムの適切性及び有効性を実証するため,ま

た,品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善の可能性を評価する

ために適切なデータを明確にし,それらのデータを収集し,分析しなければ

ならない。この中には,監視及び測定の結果から得られたデータ並びにそれ

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以外の該当する情報源からのデータを含めなければならない。 データの分析によって,次の事項に関連する情報を提供しなければならない。

a)顧客満足(8.2.1 参照) b)製品要求事項への適合(8.2.4 参照) c)予防処置の機会を得ることを含む,プロセス及び製品の,特性及び傾向

(8.2.3 及び 8.2.4 参照) d)供給者(7.4 参照)

8.5 改善 8.5.1 継続的改善 組織は,品質方針,品質目標,監査結果,データの分析,是正処置,予防処

置及びマネジメントレビューを通じて,品質マネジメントシステムの有効性

を継続的に改善しなければならない。

(4 医薬品品質システ

ムの継続的改善)

8.5.2 是正処置 組織は,再発防止のため,不適合の原因を除去する処置をとらなければなら

ない。是正処置は,検出された不適合のもつ影響に応じたものでなければな

らない。次の事項に関する要求事項を規定するために,“文書化された手順”を確立しなければならない。 a)不適合(顧客からの苦情を含む。)の内容確認 b)不適合の原因の特定 c)不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の評価 d)必要な処置の決定及び実施 e)とった処置の結果の記録(4.2.4 参照) f)とった是正処置の有効性のレビュー

3.2.2 是正措置及び

予防措置(CAPA)シス

テム

製薬企業は、苦情、製品不合格、非適合、回収、逸脱、監査、当局の査察及

び指摘事項についての調査並びに製造プロセスの稼働性能及び製品品質のモ

ニタリングからの傾向に起因する、是正措置及び予防措置を実施するための

システムを有さなければならない。また、根本的原因を決定する目的で、調

査プロセスに対する構造化された取り組みが用いられなければならない。

ICHQ9 に述べられているように、調査の労力、正式さ及び文書記録のレベル

は、リスクレベルと相応しなければならない。CAPA の方法論は、製品及び

製造プロセスの改善並びに製品及び製造工程のより深い理解に結びつかなけ

ればならない。

8.5.3 予防処置 組織は,起こり得る不適合が発生することを防止するために,その原因を除

去する処置を決めなければならない。予防処置は,起こり得る問題の影響に

応じたものでなければならない。次の事項に関する要求事項を規定するため

に,“文書化された手順”を確立しなければならない。 a)起こり得る不適合及びその原因の特定 b)不適合の発生を予防するための処置の必要性の評価 c)必要な処置の決定及び実施 d)とった処置の結果の記録(4.2.4 参照) e)とった予防処置の有効性のレビュー

(3.2.2 是正措置及び

予防措置(CAPA)シス

テム)