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〔論文〕 MMPIの臨床場面における実践的活用 札幌学院大学人文学部井手正吾 南平岸内科クリニック荒川和歌子 要約 MMPIをフィードバック面接を含めて治療的に活用した2つの症例を報告した。症例1ではMMPIの活 用が,治療的な方向性の変更を治療者とクライエントで共に決定していく過程で大きく役だった。症例2 では表面的には変化の乏しい青年期クライエントに定期的に施行されたMMPIが,治療者一クライエン ト関係において治療的な変化を確認するために役立ち,さらにクライエントの内省作業を促した。この2 つの症例をもとに,日本におけるMMPIの現状,実施・結果処理・解釈という基本的作業を含めたMMPI についての基本的認識,等を含めたMMPIの臨床的活用について検討をおこなった。また,MMPIに限 らずロールシャッハを含めた臨床における心理検査についてのフィードバックについても検討を加えた。 Iはじめに 臨床における検査の使用は何らかのかたちでク ライエントや患者(以下,クライエントで両者を 表記する)の治療に結びついたものである。ある 治療の適否の判断のための使用から,治療終結や 終結後のケアを考えるために実施することもあ る。心理臨床における心理検査の使用も,その例 外となるはずはない。そして,施行された検査の 結果は何らかのかたちで,クライエントに伝えら れ,治療者一クライエント関係で検討され共有さ れるものである。これは,あえて,医療における 「インフオームド・コンセント」「情報公開」,ま た心理臨床において「フィードバックセッション」 (中村・中村,1992)「治療的アセスメント」(Finn, 1996)というような用語で強調しなくても,臨床 的には極めて当たり前,当然のことである。 心理臨床において,様々な種類のそして無数と も言えるようなの検査が考案され使用されてき た。勿論,心理検査といってもクライエントに何 らかの負担をかける訳であり,テストバッテリー といって安易に多数の検査を行ったり,治療者側 の興味や関心のみで検査を施行してはならない。 クライエントの臨床的な状況や経過によって,施 行される検査は適切に選択されなければならない だろう。治療的に,さらに治療者一クライエント 関係のために,必要な検査を選択し臨床的に用い なければならない。できれば,必要最低限の検査 を施行すべきと筆者らは考えるが,その選択につ いては議論があるところであろう。 治療的に適切な検査というものは,治療者側の 要因やクライエント側の要因,相互的な要因に よって,さまざまであろうが,群を抜いて多く取 り上げられるものとして,ロールシャッハ・テス トがある。もはや古くさい表現ながら“心のレン トゲン”といわれるだけあり,非常に幅広く実際 的な心理的側面を分析できる臨床的に有用な心理 検査とされている。世界的にみても,そして日本 においても,膨大な研究が積み重ねられている。 そして,最近は臨床における治療的活用により焦 点をあてた報告も少なくない(Finn,1996;中村・ 中村,1999;等々)。このロールシヤツハ・テス トと同じように,臨床的に有用性が高いとされる 検査にMMPIがあり,世界的にみるとその研究 や使用量はロールシャッハに勝るとも劣らない し,治療的活用に焦点をあてた研究も多い(Finn, 1996;Lewak,Marks&Nelson,1990;等)。だが, 日本においては,MMPIの研究や使用量は非常 に少ないというのが現状である。

MMPIの臨床場面における実践的活用jinbunweb.sgu.ac.jp/rinshoshinri/repogitory/kiyo2007/...鋤拘釦馳釦釦麺 札幌学院大学心理臨床センター紀要第7号2007年

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〔論文〕

MMPIの臨床場面における実践的活用

札幌学院大学人文学部井手正吾

南平岸内科クリニック荒川和歌子

要約

MMPIをフィードバック面接を含めて治療的に活用した2つの症例を報告した。症例1ではMMPIの活

用が,治療的な方向性の変更を治療者とクライエントで共に決定していく過程で大きく役だった。症例2

では表面的には変化の乏しい青年期クライエントに定期的に施行されたMMPIが,治療者一クライエン

ト関係において治療的な変化を確認するために役立ち,さらにクライエントの内省作業を促した。この2

つの症例をもとに,日本におけるMMPIの現状,実施・結果処理・解釈という基本的作業を含めたMMPI

についての基本的認識,等を含めたMMPIの臨床的活用について検討をおこなった。また,MMPIに限

らずロールシャッハを含めた臨床における心理検査についてのフィードバックについても検討を加えた。

Iはじめに

臨床における検査の使用は何らかのかたちでク

ライエントや患者(以下,クライエントで両者を

表記する)の治療に結びついたものである。ある

治療の適否の判断のための使用から,治療終結や

終結後のケアを考えるために実施することもあ

る。心理臨床における心理検査の使用も,その例

外となるはずはない。そして,施行された検査の

結果は何らかのかたちで,クライエントに伝えら

れ,治療者一クライエント関係で検討され共有さ

れるものである。これは,あえて,医療における

「インフオームド・コンセント」「情報公開」,ま

た心理臨床において「フィードバックセッション」

(中村・中村,1992)「治療的アセスメント」(Finn,

1996)というような用語で強調しなくても,臨床

的には極めて当たり前,当然のことである。

心理臨床において,様々な種類のそして無数と

も言えるようなの検査が考案され使用されてき

た。勿論,心理検査といってもクライエントに何

らかの負担をかける訳であり,テストバッテリー

といって安易に多数の検査を行ったり,治療者側

の興味や関心のみで検査を施行してはならない。

クライエントの臨床的な状況や経過によって,施

行される検査は適切に選択されなければならない

だろう。治療的に,さらに治療者一クライエント

関係のために,必要な検査を選択し臨床的に用い

なければならない。できれば,必要最低限の検査

を施行すべきと筆者らは考えるが,その選択につ

いては議論があるところであろう。

治療的に適切な検査というものは,治療者側の

要因やクライエント側の要因,相互的な要因に

よって,さまざまであろうが,群を抜いて多く取

り上げられるものとして,ロールシャッハ・テス

トがある。もはや古くさい表現ながら“心のレン

トゲン”といわれるだけあり,非常に幅広く実際

的な心理的側面を分析できる臨床的に有用な心理

検査とされている。世界的にみても,そして日本

においても,膨大な研究が積み重ねられている。

そして,最近は臨床における治療的活用により焦

点をあてた報告も少なくない(Finn,1996;中村・

中村,1999;等々)。このロールシヤツハ・テス

トと同じように,臨床的に有用性が高いとされる

検査にMMPIがあり,世界的にみるとその研究

や使用量はロールシャッハに勝るとも劣らない

し,治療的活用に焦点をあてた研究も多い(Finn,

1996;Lewak,Marks&Nelson,1990;等)。だが,

日本においては,MMPIの研究や使用量は非常

に少ないというのが現状である。

snow
タイプライタ
札幌学院大学心理臨床センター紀要 第7号 (2007年)
Page 2: MMPIの臨床場面における実践的活用jinbunweb.sgu.ac.jp/rinshoshinri/repogitory/kiyo2007/...鋤拘釦馳釦釦麺 札幌学院大学心理臨床センター紀要第7号2007年

”鋤拘釦馳釦釦麺

札幌学院大学心理臨床センター紀要第7号2007年

筆者らは臨床実践において,ロールシャッハと

MMPIを同じような頻度で使用してきているが,

さすがに臨床心理検査の双壁ともいえる両検査の

臨床的有用性といったものを,そして,両検査の

共通性や相違性も実感するところである。そこで

本論文では,日本での臨床的使用が少ないMMPI

を治療過程で施行した2つの症例を取り上げ,

フィードバック面接を中心に報告し,MMPIの

臨床的活用について総合的に検討していく。

められないのも苦しい,評価されるのも苦しい」,

「人とのつながりを求めてるのに拒否してる」と

いうClには,内的な空虚感,孤独感が常に付き

まとっており,ブレーキをかけず日常業務に没頭

することでそれらを回避しているのではないかと

思われた。また,極端に低い自己評価は,生育歴

や過去に体験した出来事と関連があるのかもしれ

ないということが話し合われ,Clはこれまで怖

くて避けてきた“自分自身(過去を含めて)に目

を向ける,,という作業に取りかかることを決意し

たようであった。Thから「心理検査をして,そ

の結果をもとに考えてみることは,今のClにとっ

て必ず役に立つはず」とMMPIの実施を提案し,

Clもそれに同意した。

検査状況:

カード式で施行。時折吹き出したりしながら,

楽しんでいるような雰囲気でどんどんカードを分

けていった。所要時間は30分と速い。終了後,「疲

れたけど面白かった」「人と話すより楽だった。

言語化は苦手だから」と感想を述べた。

症例1のMMPIの基礎尺度(4つの妥当性尺

度と10の臨床尺度)のプロフィールをFigurel

に示す。

解釈にあたっては,基礎尺度を中心に,追加尺

度,下位尺度,追加尺度,諸指標,危機項目など

を総合的に検討しおこなった(Appendixl-1から

Appendixl-4まで参照)。

妥当性尺度はF尺度のT得点が80を超える上昇

をみせる極端な逆V字パターンであり,臨床尺度

が全体的に高度に上昇している。当然ながら臨床

尺度を「縮めて見る」(Freedmanetal,1989)な

Ⅱ 症例

以下,MMPIを臨床的に活用した2つの症例

を報告する。MMPIとしては,正式な公刊版で

ある新日本版を用いている。結果の処理は,研究

版であるが100以上の結果処理の出来るMMPI処

理PCソフトウェアであるMiW(井手・田形,

2001)の検査時点における最新版を用いている。

症例としては,MMPI活用になるまでの経過,

MMPIの実施とその結果のフィードバック面接,

ならびにその後の経過を中心としたまとめという

順で記載している。以下の症例報告では,治療者

をThと略しその言葉はく>に,クライエント

はClと略しその言葉は「」に示した。

症例1

30代女性。某心療内科へ通院中。仕事は公的施

設の長を務める。

主翫:

職場の人間関係の問題をきっかけとして,抑う

つ感,対人緊張,不眠などの症状が出現し受診。

経過:

受診直後よりThによる面接開始。その後すぐ

に,異動できっかけとなった職場から離れること

となり,抑うつ感は軽減したものの,強い疲労感

は持続し,今度は様々な身体症状が前面に出るよ

うになった。その原因としてClは「オーバーワー

ク」を挙げるが,「自分でも分かっているがどう

しても止まれない,休息をとるのが怖い」と訴え

た。仕事量や活動量にブレーキがかけられないま

ま約一年が過ぎ,面接では“ブレーキをかけない

こと'’は,c'にとってどのようなメリットがあ

るのか,について話し合われるようになった。「認

MwP1Pm側●

?LFK1234567890

FigurelMMPIProfileofCasel

8 1

ハ・〆、一M ?

ハ VV一J

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MMPIの臨床場面における実践的活用(井手.荒川)

どを考慮して解釈している。また,2尺度,6尺

度,8尺度のT得点が84であり,2点コードは26

コード,68コード,28コードの3パターンを参照

している。

フィードバック面接:

フィードバック面接の主な内容を以下に記す

が,解釈の元となった主な結果をまず()内に

記している。

.(妥当性尺度:F尺度高,K尺度低より)

〈自信がない。自分をかなり悪くみているみた

い。悪いほうに歪めてみている可能性もあるかも

しれない>に対し,「自分に対するネガティブな

評価はそのまま,いや,それ以上に受けとめる。

反対にポジティブな評価は絶対に受けつけない,

というところがある。だから,(自分と似たもの

を感じる)“ダメな人”はすぐに感知できるし,

親近感を覚えて寄り添ってしまう。かわいそうに

なってついつい,いろいろやってあげてしまう。

でも私自身が“ダメな人”であることを感知でき

る人はいない」と話す。

.(臨床尺度:28コード,26コードより)

〈対人場面では疎外感を強く感じているみたい。

人とうまく関われない感じがして,距離を置いて

いるところがあるよう。ただ,『どうしてもうま

くやれない』というよりは『どうせ分かってもら

えない』と他人に対してあきらめてしまっている

ようなところがあって,それが疎外感や人との距

離につながっているみたい。相手からの批判に敏

感なところがあるようだけど,そのことも関係あ

るかもしれない〉に対し,「他人からの批判とか

拒絶に敏感なところはある。それが怖いから最初

から人に近付かない。それに細心の注意を払って

いる。私は,自分に正直じゃないと思う」と話す。

「自分は相手に対して何も表現しない,“プリーズ”

している感じ。常に相手にバトンを渡して,それ

でやっと会話がつながっていく感じ」。

.(68コードより)

〈自分の中でどんどん悪い方に考えて,そのま

ま結論を出してしまったりすることはある?〉に

対しては,「周りの人からよく妄想癖があると言

われる。ネガティブなことには限らないけれど,

想像で物事を大きくしてしまうことが多いみた

ぃ。あと,一度相手に嫌われているのではと思う

と,それを前提として,まるで将棋みたいに相手

の出方をシュミレーションしてしまう」と話す。

.(5尺度低,受動一攻撃性のVより)

〈基本的には受身的な性格。でも,今の仕事では

リーダーシップを求められ,みんなを引っ張って

いくことが要求されている。そこにズレがあるた

めに葛藤が大きくなりやすく,無理がかかってし

まうのかもしれない。現実場面だけでなく,自分

自身の中でも葛藤が大きいことが予想される。「自

分が引っ張っていかなくちゃ」,「自分が一人でや

らなくちゃ」と思っているところがあるのでは?>

に対し,「周りから求められている,“頼れる人”

という理想に自分をグイグイ当てはめようとして

いるけど,無理があり苦しい」と話す。また,

Thの<意識的には,「自分は男性的」もしくは「女

を捨てなければいけない」と思ってるところがあ

るみたいだけど,基本的には女性的な人。そこに

かなりの葛藤があることが予想される。自分の女

性らしさをポジティブに受け入れていけるといい

のだけど>に対しては,「女性でいることが嫌。"女

の人"は憧れるものではあるけれど,自分が向かっ

ていくものではない。なりたいもの,ではないし,

女性として見られたくない」と話す。Clの中に

ある母親像,また過去の体験が,自らの女性性を

受容することの困難さに影響しているのではない

かとThには思われた。

症例1を通して:

この症例1では,MMPIを自分自身に目を向

ける作業の手始めとして実施した。この後の面接

で,これまで語られなかった過去の出来事や抱え

てきた想いが語られ始めることとなったが,そこ

ではフィードバック時に話し合われたことが非常

に役に立っているように思う。Clが自らの想い

を語る際,「この前の結果にもあったように…」

と前置きをしたり,ある出来事を取り上げた際,

Thが<それはこの前の…という結果に関連して

いるように感じます〉と伝えたりということが多

くある。Clが客観的な基準で査定され,かつそ

こから分かったことをClとThが共有している

ことによって,なかなか言葉にされにくいClの

内的な姿がより明らかになったように思われる。

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”加釦釦側鋤m

O9

札幌学院大学心理臨床センター紀要第7号2007年

他者に対して距離をとる傾向の強いClとの面接

において,検査結果はCl-Th関係を媒介する

役割を果たしているのであろう。

フィードバックを通して,これまでとってきた

防衛策が現在の不適応感につながっていることを

ClとThの共通認識として,新たな“守り,,(よ

り適切な防衛機制)を確立していくことを目指し

て面接が継続されている。

検査状況:

第1回目と第2回目は冊子式を持ち帰って,自

宅で実施してもらった。Clが来談した際できる

だけ面接の時間を多くするため,検査をホーム

ワークにする形になっていた。検査形式の差異を

考慮し,またClの検査態度を確認したいとの考

えもあり,3回目はカード式で実施した。第1回

目,第2回目は割合時間がかかったと報告されて

いたが,第3回目は所要時間40分とやや速かった。

3回のMMPIの結果として基礎尺度のプロ

フィールをFigure2に示す。解釈は症例1と同

様の手続きで進めている。毎回,約1ヶ月後に

フィードバックを中心とした面接をおこなった。

ここでは,3回目のフィードバック面接をとりあ

げた。

フィードバック面接:

これまで2回の結果も合わせた形で面接を進め

ていった。

.(妥当性尺度の布置が八型からV型に変化した

ことについて)

〈自分や周りに対して否定的だったのが,いく

らか肯定的にとらえられるようになってきたよ

う。物事に対処する力も以前より強くなったみた

い>「何事もなく過ごしていたように感じていた

けど,(自分自身が)案外変わっているんだな-

と思いました」。〈どのへんが?〉「しんどさは変

わっていないように感じていたけど,言われてみ

ると昔よりは楽になったな-と」,「(以前は)全

部が面倒だったように思う。家事とか,任される

症例2

10代男性。某心理相談機関へ通う。高校中退の

後,高等学校卒業程度認定試験に合格。障害を持っ

た弟がいる。

主訴:

不登校をきっかけに母親が相談機関を訪れ,後

にCl本人も通うようになった。

経過:

高校1年の夏に初めて来談し,「今の学校には

戻りたくないが,高校卒業の資格は欲しい」と話

す。面接では,なぜ学校に行かなくなったのか,

や,これからの進路についてなどが話し合われた。

だが,Clはあまり自分の意思や感情を表現せず,

日常場面でも面接場面でも受身的な様子が目立っ

た。「今の学校には戻りたくない」というのが唯

一の自己主張のようにさえ感じられた。

徐々に,進路のことだけでなく,Cl自身のこと,

家族のことなども積極的に話題にするようにな

り,1年後には遠方の祖父母の家へ一人旅をする

など,少しずつではあるが自発的な行動が増えて

いった。それに伴って面接では,以前はあまり聞

かれなかったような,自らを表現する発言が多く

なった。2年後には自ら高等学校卒業程度認定試

験を受けることを決め,合格した。

面接は継続中であるが,これまでにMMPIを

3回実施している。第1回目は初回面接から約

3カ月後(Cl,17歳時)に実施し,その後の2回

は1年ごと(18歳時,19歳時)に実施した。いず

れも,〈今の自分自身を見つめてみることは,こ

れからのことを考えるのにも必ず役に立つ。また

別の角度から自分を考えるきっかけになるかもし

れない>といったThからの提案を受け,Clが

同意して行われた。

..◆・・1sK17y)一p-2nd(18y)-3「。(19y)

MMP1PTc側●

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Figure2MMPIProfilesofCase2

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MMPIの臨床場面における実践的活用(井手・荒川)

こと全部が」と話す。

面接の初期の頃,Clは家事をして過ごす時間

が多いと,それは苦痛ではなく結構楽しいのだと

話しており,Thはそれに対して少し違和感を感

じていた。それについて<当時はそう言ってなかっ

たよ?楽しいって言ってたよ>と聞いてみると,

「平気だと話していたと思う。見栄っ張りなとこ

ろあったから」と苦笑いをする。当時を振り返る

中で,Clは構えが強く,自己表現を抑えてしま

いがちであること,また,それが場合によっては

相手方に拒否や抵抗と受け取られ,誤解を招いて

しまう可能性があることを話し合うことができ

た。

.(L尺度,2尺度が高くなったことについて)

〈以前よりも社会に目を向け始めたことで,『こ

うあるべきだ』という考え方や,たてまえという

ことを意識するところが強くなったよう。それと

関連して,現実の悩みを意識する度合いも高いの

かもしれない。自覚しているしんどさは強いと思

うけれど,2年前のしんどさとは様子が違うみた

い。前に進んでいるゆえの苦しさなのだと思うよ〉

と伝えた。

Clが以前よりも社会的な規範やルールにこだ

わる場面が多くなっていることは,母親面接の中

でも話題に出ており,日常場面での変化が結果に

反映されていることが確認できた。

.(3,4尺度が低下したことについて)

〈面接の中で自分を表現してくれることは多く

なったと思うのに,主張性や表現の程度はむしろ

2年前よりも低くなったみたい。少し不思議な気

もしたんだけど,また自分を出せなくなった感じ

があるのかな>に対し,弟が「我が強く」なって

きており,わがままを言って周りの言うことを聞

かないことが増えてきていることを話す。母親は

それをClに愚痴るのだと。母親は深刻な言い方

をする訳ではないようだが,Clは「(そういう中

で)俺までわがまま言ったら,母さんがつぶれて

しまう。だから自分の主張は抑えている」と話し,

かなり重く受け止めている様子がうかがわれた。

弟の様子,それに伴う母親の様子が,Clと母親

との関係やCl自身のスタンスに大きく影響する

ことが分かった。

.(基本的に7尺度が高いことについて)

〈Clの基本的な特徴として“きちんとやりたい”

ところが強いよう。それは真面目さや凡帳面さで

もあるけれど,場合によっては頑固さや融通のき

かなさにつながるかもしれないね>「何かルール

があれば,とりあえずそれに従っとこう」という

感じがあるのだと話す。〈どうして?楽だか

ら?〉「楽だからなのかなあ…」〈じゃあ自由にや

るのは苦手?>「美術とかでも,何を描いてもい

いと言われるとそれを決めるのにすごく時間がか

かっていた」〈それは苦しい?>「だんだん面倒に

なる」。Thはく今は,将来について「自由に描

きなさい』って言われてるようなものなのかもし

れないね。Clはちょっと苦しそうだし,面倒に

なることもあるかもしれないし。Clは,描くも

のが決まってしまえばどんどん描ける人なのだろ

うけど〉と伝えた。絵を描くことに例えることに

よって,双方が現在の状況を新たな視点から見つ

めることができたように感じた。

症例2を通して:

このケースでは経過の中で,Clが現在の自分

を見つめ,考えるためのツールとしてMMPIを

用いた。「自分自身に対して興味がない」,「自分

についてあまり考えてこなかった」と話すClに

とって,現在の自分や過去の自分について考え,

それを未来の自分のイメージにつなげていくこと

が,面接の重要な目標であると考える。また一方

で,自らの想いや考えをなかなか言葉にできない

Clにとって,Thとの言葉のやりとりだけでは,

自らの変化・成長をなかなか実感できていないの

ではないかという懸念もあった。そこで定期的な

MMPIの実施,フィードバックが活かされること

となった。

彼は「自分自身が案外変化していてびっくりし

た」ことを,心理検査の結果を聞いた感想として

母親に対しても語ったようであり,Clにとって

自らの成長は驚きをもって自覚されたようであ

る。フィードバックを通して,現在の自分自身が

よりはっきりと自覚され,成長が自信へとつな

がったのではないかと考える。

新しい何かに取り組むことに対して,「何かし

なきやと思うけど自信が全くない」と話すことが

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札幌学院大学心理臨床センター紀要第7号2007年

多かったClであるが,最近では,Thの<この

先のことを自分自身で決断していくことは出来そ

うか〉といった問いかけに対し,「今はまだ具体

的に決まっていないけど,大丈夫だと思います」

と答えるなど,主体的に人生を選び取っていこう

とする様子が見られるようになってきている。ま

た,母親に対しても「もう少し待って欲しい」と

はっきり伝え,母親にとって“本音が見えない,,

存在であったClからは,これまで聞かれなかっ

た自己主張である。現在までの成長をより具体的

な動きにつなげることを目指して,面接が継続さ

れている。

2症例を通して:MMPl実施について

MMPIの実施形式として,症例1はカード式で,

症例2では2回を冊子式で3回目はカード式で

行っている。MMPIの実施として,病院臨床の

現場などでは,カード式で実施するのが望ましい

ように思われる。患者の負担を考えカード式が作

成されたようだが,可能な限りカード式を用いて

いる臨床経験から,他にも好ましいところが多々

感じられる。カード式を用いることの利点として

はまず,冊子式よりも楽しんで受検できるようで

あることが挙げられる。ここに記した症例1を始

めとして他の患者のケースでも,「面白かった」,

「楽しかった」といった感想が少なくない。これ

は,通常の“紙に何かを書かされる”といった検

査と違って,手を動かして“作業”をした,一つ

の"仕事”をやり遂げた,といった感覚が生まれ,

また,それをThが引き継いで結果をまとめるこ

とにより,机の上でのペーパーのやり取りよりも,

Thとの共同作業を行った感覚が生まれやすいよ

うである。カードの枚数の多さが懸念されるとこ

ろであったが,この点については「初めは大変だ

と思ったけど,やってみると意外にどんどん減っ

ていった」など,始めてしまえばそれほど苦にな

らなかったという声が多かったように思う。

また,Clの検査への取り組み方が,より明確

にとらえやすいこともカード式の利点ではないか

と思われる。Clの質問の回数や内容,それが検

査時間の中でいつなされたのか,小休憩をとるか

否か,実施中の姿勢・様子,箱の中のカードを揃

えるか否かなど,そのClの特徴や問題に合わせ

て,検査中に起こったことが大事な情報となる場

合も多い。

Ⅲ考察

日本語版MMPIの現状

10年以上も前になるが,井手(1995)は,日本に

おけるMMPIの研究と使用量の低さについて,

MMPIに対する適切な認識が不足していることを

指摘した。当時と比べるとMMPIについての日

本における状況や認識は変わってきている。それ

以前は唯一の公刊されていたMMPIの日本版は

いろいろと問題あるもので,かえって金沢大学版

や同志社大学版といった研究版のほうが臨床的に

活用されていた。版権上問題があると感じられる

ところもあるが,1992年にMMPI-1(村上・

村上,1992)が刊行された。そして,1993年に日

本版の改訂版として金沢大学版を下地にした新日

本版が公刊された。また,著名なFriedman,

Webb&Lewek(1989)のテキストが翻訳された

(MMPI新日本版研究会訳1999)。また,臨床

心理士の指定校制度のおかげで以前と比べると明

らかに心理アセスメントのカリキュラムが充実し

きた。そのようなことが関連し,MMPIの研究

や使用量は幾分増えてきているようではある。

しかし,研究や使用量はロールシヤッハと比べ

ると雲泥の差があり,様々な問題も残されたまま

である。新日本版は,日本版でも意外に問題の大

きいところであった短縮版的使用を前提とした項

目番号を,やむえず継承している。また,採点用

具は手作業の採点版であり,追加尺度もかなり限

られたものしか用意きれておらず,時代的な要請

も大きいパーソナルコンピュータによる処理ソフ

トは公刊されてない。村上・村上のMMPI-1

は,逆に多量の結果を算出できるコンピュータ処

理や自動解釈を強調した,あまりに偏った用具構

成である。それは,ロールシャッハと同じように

施行から解釈まで柔軟性に富んだ幅のある検査で

あるはずのMMPIをかなり限定的なものとして

しまっている。かえって,MMPIに対する誤解

や偏見を助長しているような印象を受けるところ

もある。1955年あたりと比べると,かなり変わっ

8-

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MMPIの臨床場面における実践的活用(井手・荒川)

てきているところもあるが,大きく見るとMMPI

の現状はあまり変わりないと言えるのかもしれな

い。

MMPIは1943年に公刊され,世界的にも最も研

究され使用される人格検査となったが,アメリカ

においては1989年にMMPI-2に改訂されてい

る。問題といえば問題であったMMPI冊子版の

重複項目をなくし,時代的な要因であわなくなっ

た項目が変更されたりしている。日本においても,

北里大学などにおいてMMPI-2の研究版が作

られ使用されている(小口,2001)。アメリカに

おいては,MMPI-2公刊後も,しばらくは

MMPIが使われていたようであるが,現在は

MMPIの用具は新たに入手できなくなっている。

しかしながら,MMPI-2はMMPIと連続性を

持たせ,基本的な構成はほぼ同じものとしている。

ある意味,互換性は高いといってよい。さすがに,

MMPIの膨大な臨床的蓄積を分断した過去の遺物

とはしなかった。主要な追加尺度や危機項目も多

少の修正がなされて継続して利用されている。日

本においてもMMP1.-2の公刊が待たれるとこ

ろもあろうが,MMPIであっても,まだまだ臨

床的に使用できる。たとえ,MMPI-2が公刊

されたとしても,臨床的な蓄積さえあれば,商業

的な要因で使えなくなるということがない限り,

使い続けても臨床的には問題ないかもしれない。

実施・結果処理・解釈

臨床的な検査の実施,結果処理,そして解釈と

いうものは密接に結びついている。このことは

ロールシヤッハの場合,スコアリング・コーディ

ングを理解し,かつその解釈まで熟知していない

と適切な実施,特に質疑,が出来ないこともあり,

より実感できるが,他の検査も同様である。それ

でなければ,臨床的に検査を活用できないともい

えよう。MMPIの実施,結果処理,解釈という

ものには,先に述べたように的確な認識がなされ

てないところもあり,臨床的に使う上でのその適

切なあり方を確認しておきたい。

(実施)

MMPIの実施とは,550の項目文章に対して“当

てはまる”Trueか“当てはまらない”Falseの

反応を得ることである。項目数はかなり多いし,

項目文章はかなり刺激的な内容も少なくなく,ク

ライエントにかなり負担をかける。しかし,それ

だからこそ,ロールシヤッハと同じように幅広い

総合的な側面をとらえられる検査となっている。

基礎尺度だけの結果を出すためには383項目だけ

の実施でよく,確かにアメリカ原盤にも短縮版は

ある。新日本版は日本版の項目番号を継承してい

るが,この項目番号は383番目まで施行してしま

えば短縮版として成立するようにしている。新日

本版にあるI型回答用紙は,383番までしか回答

できない短縮版用である。確かに,MMPIで最

も重要な結果は基礎尺度であるが,MMPI短縮

版とは,MMPIの極めて特殊な施行法であり,

MMPIを施行したとはいえない。後に述べる追加

尺度や他の結果を利用できなくなる。新日本版の

マニュアルに明記してあるため,短縮版的な実施

は日本版の頃より少なくなってきているが,あま

り考えずに383番までしか回答を求めなかったり,

I型回答用紙を使用している臨床家がまだまだ多

いようである。また,情的な配慮から,クライエ

ントの労力をできるだけ少なくするために,短縮

版使用をする臨床家がいる。しかし,383項目と

いうのは十分に労力を使い負担を強いる。550項

目との労力差はどれほどのものであろうか?それ

に比べて短縮版としての使用でMMPIの正式実

施にならずに,追加尺度をはじめとした無数とも

いえる結果の処理ができなくなる。「得るもの少

なく,失うものが膨大である」,これは臨床家に

とってもだが,なによりもクライエントにとって

大きく言えることである。

また実施形式に関しては,コンピュータ式など

もあるが,カード式と冊子式が基本である。回答

にともなう負担を考えると,カード式が最もクラ

イエントにとって好ましい。カードに書いてある

項目文章を読んで,それを仕分けするだけでよい。

カード式はその他にも症例のところで記したよう

な臨床的な利点が多い。冊子式であると,冊子に

ある項目文章を項目番号順に間違えずに読んで,

項目番号を間違えぬように回答用紙の回答欄を探

し,そこに筆記用具で記入していく。この作業は

様々な精神的機能を使わなければならず,かなり

の労力を要する。冊子式でも,新日本版になって

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札幌学院大学心理臨床センター紀要第7号2007年

新たに用意されたタイプA質問票は,冊子の項目

文章の横にある回答欄に直接回答していくもの

で,負担料が少なくなる。それに対して,MMPI

-1のマークシート式の回答用紙は,小さな回答

欄の羅列に筆記具で記入欄に気をつけて塗りつぶ

していくのは神経を使うし,より大きな労力を強

いることになる。

MMPIに限らず検査を施行する臨床家にとって

の負担がなるべく少なくなるような用具が作ら

れ,それを使用する臨床家が増えているような印

象が強い。新日本版のI型回答用紙は,短縮版用

の回答用紙であると同時にYG性格検査のように

カーボンで複写され基礎尺度の採点が行いやすく

なっている。新日本版(Ⅲ型回答用紙),にも村上・

村上版にも用意されたマークシート式の回答用紙

もリーダーを使ってコンピュータに結果を取り込

め,多量のデータを迅速に処理できるようになっ

ている。その点,クライエントにとって負担が最

も少ないカード式は,検査の実施後,回答用紙に

転記し結果を処理しなければならず臨床家にとっ

て最も負担が多くなる。そのためか,カード式の

使用は敬遠されている印象がある。検査を行うこ

とだけで,クライエントには様々な精神的負担が

生じるものと考えられるが,それ以上の負担をク

ライエントに強いたり,臨床家の負担を減らすこ

とばかりを優先したりするのは,臨床としていか

がなものであろうか。MMPIの実施は,様々な

治療状況が関連するするだろうが,その状況にお

いて,なるべくクライエントに余分な負担を与え

ない形式で実施すべきものであろう。MMPIの

実施方法は様々の形式があるだけに,逆に,実施

のしかただけを取りあげても,臨床家としての基

本的な姿勢や態度がみてとれるように思う。

(結果処理)

結果の処理として,基礎尺度の結果算出は当然

であり,これが,MMPIの核となる結果である。

しかし,この結果だけを解釈の材料にしていくの

は,個人の心理面について総合的で様々な情報が

得られるMMPIを殆ど活用してないと言える。

そして苦労してクライエントがおこなった検査結

果の臨床的活用としては不十分で,臨床家として

の責任を果たしてないとすら言ってもよいかもし

れない。

MMPIの基礎尺度は,YGなどと異なり大半が

経験的手法で作成された尺度群で,本人は自覚,

意識できている側面をあらわしている場合もあれ

ば,そうでない場合もある。そのあたりを調べる

ためにも,論理的手法で作成された尺度群との比

較は重要である。そういうこともあり,MMPI

-2では標準尺度として論理的手法で作成された

内容尺度群が標準的に処理する結果として用意さ

れている。MMPIにおいても,有名な内容尺度

群としてWigginsContentScalesがあり,Fried・

manetal.(1989),Greene(1980),Graham(1987)

などのテキストでもルーティンの結果処理として

扱われている。他にも,IndianaRationalScales

(Levitt&Gotts,1995)といった一式になった

内容尺度があるが,最低,WigginsContent

Scalesの結果処理は必要であろう。

日本版の時から用意されていた,ES(自我強

度)尺度,MAC(アルコール依存)尺度,Dy(依

存性)尺度,DC(支配性)尺度,などの古くか

ら活用されている著名な追加尺度の結果を出して

おくことも,当然,大事なことである。また,基

礎尺度の解釈をより詳しく進めるために,

Harris&LingoesやSerkownekの下位尺度も結果

として算出することが好ましい。そして,

Koss&ButcherやLacher&Wrobelなどの危機項目

のチェックリストを作成することも解釈を進める

上で役立つ結果処理である(危機項目に関しては

井手(2007a)も参照されたい)。さらに,田中(1990)

があげているようなGoldberg指標やAIやIR等

のプロフィール指標も算出できる。最低,これぐ

らいの結果を解釈のための素材として用意するの

がMMPIの臨床的活用の前提と言えるだろう。

筆者らは,Appendixにあげたような,100を超

える様々な結果を基に解釈を進めている。

この結果の処理に関しては,村上・村上版はコ

ンピュータ処理を前提にしているだけに優れてい

るようにみえる。しかし,新日本版でも,これら

の結果を出すための資料は用意されており(新日

本版研究会,1997;井手,2007b;等),手作業

でも結果の処理は可能である。パーソナルコン

ピュータの性能は上がり,かなり一般的になった

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MMPIの臨床場面における実践的活用(井手・荒川)

現在であれば,エクセルなどの表計算ソフトなど

を用いて簡単な処理プログラムを作ることはそれ

ほど難しいものではない。

正確で安定性の高いプログラムソフトを作るこ

とは難しいところも事実である。PCのプログラ

ムをおこなったことのある者は分かるであろう

が,人間が行うことには思わぬ間違いがあり,そ

れはわかりにくいものも少なくない。そして,気

づきにくい誤った結果を出したり,時に誤動作を

おこしコンピュータ自体に大きな影響を与えたり

もする。そのようなこともあり,新日本版でも,

臨床的な活用を促すためにも,パーソナルコン

ピュータを利用した結果処理ソフトの公刊が望ま

れるところである(あるいは,正確性や安定性が

確認された研究版ソフトの公開・公的利用を認可

が望まれる)。

(解釈)

村上・村上(2004)は,臨床的(clinical)解釈を

臨床家の個人的経験に基づく解釈法とし,統計記

録的(actuarial)解釈を経験的で実証的な規則を直

接適応する解釈とした。そして,臨床的解釈は古

くさく現代では通用しないもので,統計記録的解

釈が科学的で適切な解釈であると結論し,コン

ピュータによる自動診断の正当性を主張している。

その際,臨床的解釈を主張したものとして田中

(1990)を取り上げ,批判している。この村上・

村上の主張と批判はかなり偏ったものといえる。

田中は,統計記録的解釈の実証性を評価しており,

さらにそれに密接に結びつく自動解釈の発展に高

い期待をかけている。だが,まだ実証的データが

少ないこと,当時の自動解釈がblindanalysisで

しかないこと,さらには,コンピュータによる商

業的サービスへの倫理的懸念などを含めて統計記

録的解釈の問題を指摘している。統計記録的解釈

と臨床的解釈の統合も含蓄している。臨床家とし

ての検査の取り扱い,クライエントヘの責任まで

も含んみながら実証性を重視した主張と思われる。

当時と比べて,確かにMMPIに関する実証的

データはより蓄積されてきている。この点につい

て,村上・村上版の自動解釈は,コンピュータの

性能やプログラム言語の発展は飛躍的になってい

るにもかかわらず,基本的にblindanalysisのま

まである。また,MMPIに関する膨大な実証的

データは取り入れられているようだが,その実証

的データは日本におけるデータは殆ど含まれてな

い。ロールシャッハにおいて,アメリカ,あるい

は世界的に共通して通用する解釈もあれば,そう

でない解釈もある(例えば,W反応やLなど)。

日本におけるMMPIの基礎研究は,まだまだ不

足したままである。そういった実証的データもな

いままの自動解釈は危険であるし,MMPIが誤

解される畏れもある。

華者らは,心理臨床における検査の解釈,すな

わち検査結果の心理学的意味づけは,臨床的解釈

が当然と考える。専門家として,今までの蓄積さ

れた専門的データ(多くは実証的なデータ)を参

照に,臨床的に関わっているクライエントの様々

な臨床情報をあわせて,専門家として可能な限り

客観的に,しかし,客観的にできないところも大

事にして,検査の結果を意味づけ統合し,クライ

エントの理解を進めていく,これが臨床的解釈で

あると考える。心理臨床家として臨床的にクライ

エントとの関わりを,どうとらえ関与していくか

というような基本的だが大きな問題が,解釈自体

のとらえ方に関連しているように思われる。

より具体的なMMPIの解釈としては,既に何

度も述べたが,基礎尺度の解釈が基本であり,核

となる。L,F,Kの妥当性尺度の布置から,検

査態度をまずとらえると言われることが多いし,

確かに重要である。妥当性尺度の布置は,検査態

度だけでなく,MMPIの検査刺激である「言語・

ことば」が重視されるような社会場面に対するク

ライエントの基本的な態度としても解釈できるか

もしれない。また,この妥当性尺度の布置のあり

方によって,臨床尺度パターンの高低や振幅(高

低の差)の度合いを修正してとらえていかなけれ

ばならない。極端なv字パターンであれば,臨床

尺度パターンは高くそして振幅を拡げてとらえた

方がよいし,逆に極端な逆v字パターンであれば,

臨床尺度のプロフィールパターンを低く振幅を狭

めてとらえた方が適切な場合が多い。臨床尺度の

プロフィールは,まず2点コードを参照にしなが

ら,高点の尺度や低点の尺度などを意味づけてい

く。さらには,下位尺度の結果も加えて,臨床尺

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札幌学院大学心理臨床センター紀要第7号2007年

度を総合的に分析していかなければならない。ま

た,この際,内容尺度との関連もとらえていくこ

とがクライエントの理解を深めていくだろう。例

えば,第2尺度とWigginsContentScalesのDEP

が一致しているか,矛盾しているか等。他の追加

尺度では,臨床尺度の解釈を補足や修正に用いた

り,あるいは臨床尺度でとらえられなかった側面

をとらえたりして解釈を進めていく。危機項目に

よる特異な回答や?回答のチェックも解釈に役立

つだろう。この具体的な回答は,フィードバック

や面接の話題として取り上げることが出来る場合

も少なくない。

このようにMMPIはクライエントについての

様々な情報を含んだ豊富な結果をもっており,そ

れを丁寧に,安易な断定などを避け,「分からない」

ところなども大事にしながら,治療で今まで得ら

れたクライエントの情報と統合して,適切な解釈

としてまとめていかねばならない。

フィードバック

フィードバックは,クライエントとの治療を共

に進めていくために,臨床家が理解できた臨床的

な情報をクライエントに伝え共有することであ

る。インフォームド・コンセントにおいても,よ

く言われるところであるが,クライエントが本当

に知りたいと望んでいる,必要としている情報に

ついて,臨床家側が理解していることを,クライ

エントが理解できることばで伝えることが,臨床

における情報交換,情報共有の好ましいあり方で

あろう。心理検査のフィードバックでも同じであ

り,そうすることで,臨床家とクライエントが協

同して治療を進めていくという臨床の本来の姿と

なりえる。そういう場を作っていくことは臨床家

側の寅任である。これは,臨床家がクライエント

のことをすべて把握し操作していくというような

上下関係ではなく,臨床家は,分からないところ

を含めてクライエントが理解を進めていける場を

作っていく責任があるという役割関係の違いから

の責任をいっている。

ここでいう心理検査のフィードバックとは,検

査の結果から得られたクライエントについての専

門的な仮説,すなわち解釈をクライエントに報告

することである。勿論,一方的な伝達ではなく,

その内容について臨床家とクライエントが話し合

い,何らかのかたちで臨床的な理解を深め治療に

役立てていくのある。フィードバックする内容=

解釈は,あくまで,専門的な知見から得られた仮

説であり,絶対的事実ではない。であるから,謙

虚で適切な解釈というものが,フィードバックの

ための大きな前提となる。そして当然ながら一方

的な解釈の押し付けというのは臨床的ではない。

先に述べたように,臨床場面における検査は,ク

ライエントのために行われるわけであるから,何

らかのかたちでクライエントにその結果は返され

なければならない。臨床といっても様々な状況・

場面があり,日本の心理臨床の現状としては,主

治医などを通して報告されたり,簡単な書面で伝

えられるというような,検査者からすると間接的

なかたちで行われることも少なくない。この場合,

クライエントからの反応も間接的なものとなる。

クライエント側の要因や臨床家・治療者側の要因

はいろいろとあり,このようなあり方の善し悪し

は簡単にはいえない。このような臨床的な要因も

考慮した上で,臨床家・治療者側がクライエント

の治療に対して責任を持ってフィードバックを行

うことが臨床的には大切であろう。

状況によっては検査を施行した者が,より治療

的に活用できるかたちでクライエントに対して直

接的にフィードバックを行うことができる。

「フィードバックセッション」(中村・中村,1999)

や「治療的アセスメント」(Finn,1996,1997,2003

;橋本,2005)などで近年話題になっているとこ

ろである。クライエントに解釈を伝え,それを元

に治療が好ましい方向に進展していくことは非常

に臨床的に意義深いものである。ただこのような

治療的活用といっても,検査を施行した者=検査

者と心理治療の担当者=治療者が別の場合と,治

療者自身が検査者ともなり治療過程で検査を施行

している場合がある。Finnの「治療的アセスメ

ント」の場合は前者であり,明らかにクライエン

トの直接的な治療過程とは別過程で行うような状

況が基本になっており,本来の治療者がいて検査

を依頼された検査者が,そのクライエントの本来

の治療につながるようなかたちで,検査者自身が

フィードバックを行っている。これは心理検査が

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MMPIの臨床場面における実践的活用(井手・荒川)

別個に独立した仕事としても認められているよう

な社会的背景を基盤にしており,日本と米国の心

理臨床自体の実情の違いを認識しておかなければ

ならない。

本報告での「フィードバック面接」とは,治療

者がクライエントとの治療過程において検査を施

行し,治療面接においてそのクライエントの治療

の流れの中で検査結果を伝え話し合うことであ

る。より直接的に治療にむすびついたフィード

バックであり,心理検査のより直接的な治療的活

用である。直接的な治療的活用といっても大きく

分けて2つの用い方がある。まずは,治療初期や

治療的な転機でクライエントのその時点での問題

を明確にし,それから後の治療についてその方向

性や内容などを検討し決定していくために用いる

場合である。症例’はその例であり,現実志向の

支持的な関わりから内省的な関与への転機を考え

ていた治療者がMMPIを施行しフィードバック

面接を行うことでクライエントと共に治療の方向

性を確認し転換していった。クライエントの問題

を全体的にとらえ,その上で心理治療自体につい

て考えていく,いわゆる治療の基盤となる診断の

ために活用するものである。もう一つは,治療を

うまく進めていく一つの素材として治療経過をふ

りかえったりまとめたり,現在の問題を確認した

りするために心理検査を用いる場合である。症例

2は,内面的なことをなかなか言語的に表現しに

くいクライエントとの分かりにくい治療展開を共

に確認するために定期的にMMPIを用いている。

症例2の場合,変化が乏しく内面的な問題を言語

化しにくいクライエントであったため,治療者と

して焦りや不安を感じること少なくなかった。

MMPIを行い結果を解釈することで改めて客観的

にクライエントを理解したり,フィードバック面

接でクライエントと遅々としながら確実な治療的

な展開について話し合ったことは,治療者の焦り

や不安を鎮め,安定した治療関係の継続のために

も役立ったところもある。3回目のフィードバッ

ク面接では,今までにない話題や気づきが言語化

され面接の拡がりや深まりが実感された。治療面

接の展開を進めていくためのひとつの素材,ひと

つの話題,ひとつの契機としての心理検査の活用

であるが,まさに治療的な用い方かもしれない。

フィードバックに焦点を当てたFinn(1996)

や中村・中村(1999)の具体的な手順や方法は,

心理検査の治療的活用として興味深い。いくつか

の具体的な方法を列挙してみる。検査前に検査に

ついての面接をおこない,1)検査から知りたい

ことを明らかにする。同時に,2)施行する検査

の決定にもクライエントを参加させる。フィード

バックの面接の際には,3)構造一覧表などの結

果の数値やデータなどを提示して丁寧に説明しな

がら総合的に解釈を伝えていく。これらのやり方

は,クライエントの検査自体や治療への動機づけ

を高めたり,自分の問題やそれに対する治療につ

いての理解を深めたりするために有意義に働くこ

とも多いだろう。だが,フィードバックに限らず,

臨床的な手法はすべてそういえるかもしれない

が,形骸的に行うと治療的にはならないし,逆効

果に働くことも少なくないだろう。

施行検査の選択にクライエントの意見を取り入

れたり,解釈を伝える際にクライエントとのやり

取りをまじえれば,相互的で治療的なフィード

バックといえるのかもしれない。臨床家が興味や

関心のあるところを全体的にとらえるために十分

な検査群をバッテリーとして施行し,それから得

られた豊富な数値などの結果データを提示し体系

だった,ある意味では型にはまった,総合的な解

釈を伝えていけば,より専門的な仕事を行ってい

るという充実感をもてるだろう。確かに,総合的

で多面的な解釈を豊富なデータを示しながら伝え

れば,クライエントにとってもより意味ある科学

的な理解が進むのかもしれない。最低,臨床家と

してはクライエントとの相互的で治療的なフィー

ドバックとして満足できるかもしれない。しかし,

相互的といいながら,クライエントにとっては,

実はあまり望んでもいない,結栂心理的負担や疲

労も大きい,ありがた迷惑な一方的な治療者の働

きかけで,それに無理して応じている場合もある

かもしれない。勿論,多くのクライエントは,そ

う思ってもなかなか口にはできないであろう。

フィードバックに関して最後に,筆者らが臨床

的に実践している,心理的治療関係にある状況で

の心理検査の治療的活用の具体的方法について簡

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札幌学院大学心理臨床センター紀要第7号2007年

単にまとめておく。施行する検査としては,

MMPIあるいはロールシャッハだけでの場合が大

半である。報告した症例においても,MMPIだ

けしか施行してない。クライエントの治療のため

に必要な情報を可能な限り広く,かつクライエン

トヘの負担は必要最低限にすることを考えるとそ

うなってしまっている。また,面接の中で明らか

にできたり,確認出来るところはそこで行うべき

である。臨床家の満足や安心のためだけに検査を

クライエントに無駄に押しつけることは,既に治

療的でも臨床的でもないだろう。

フィードバックする具体的な解釈内容について

は,クライエントにとって今必要なもの,治療的

に伝える必要があるものを判断して,なるべくク

ライエントに理解できる平易な日常的な文章とし

て7つほどの項目にまとめて,用意しておく。こ

のフィードバックの文章は,あくまで話し合いの

素材として用意するものである。MMPIの場合,

基礎尺度のプロフィールは提示しながらフィード

バックを進める。プロフィールのような図表はク

ライエントが結果を直感的に理解しやすいためで

ある。標準尺度をはじめとして,追加尺度や各種

指標などの細かな数値やデータなどは特に提示は

しない。結果データを示すことは,中途半端に余

分な情報を与え,かえってクライエントに混乱や

誤解を与え,治療的に逆効果となる懸念がもたれ

る。決してクライエントは,心理臨床の勉強に面

接に来ているわけではない。もちろん,クライエ

ント自身が数値データなどについての質問や提示

の要求をすればそれには応える。そのような場合

にそなえて,結果のデータの説明や提示の準備は

十分にしておく。あらためて,検査の適切な施行・

結果処理・解釈がフィードバックのためにも重要

で大前提になることを認識したい。

このような手続きでフィードバック面接を行っ

ても1回の面接時間を費やすことが多い。場合に

よっては2回の面接にわたることもあるし,逆に,

20~30分で終わってしまう場合もある。そのよう

な場合はそれで構わない。無理に,検査結果につ

いての対話を引き延ばす必要も縮める必要もな

い。症例にあげたように,フィードバック面接で

の内容が後の治療面接で取り上げられるようなこ

とも多いし,殆ど忘れ去られたかのような場合も

ある。どちらが好ましいのかわからないが,要は,

フィードバックも含めた心理検査が,ひとつの臨

床的作業として何らかのかたちでクライエントに

治療的に役立てばよいのである。

Ⅳ さ い ご に

MMPIを治療的に活用した2つの症例を報告

し,MMPIを中心にしながらも心理検査の臨床

的活用について施行からフィードバックに至るま

で考察を加えてきた。本論でも度々取り上げてき

たが,錐者らは,ロールシャッハもMMPIと同

様に臨床的に活用してきている。ロールシャッハ

とMMPIは,クライエントの総合的な心理的側

面を幅広くとらえることの出来る検査である。い

ずれも,クライエント自身が意識したり自覚でき

ている面も,ほとんど意識していない側面,ある

いは意識したくなくようなところもとらえること

ができる。しかし,当然,異なるところもあり,

それぞれの長所,短所といったところもある。こ

こで冗長とは思われるが,ロールシャッハとの比

較からみたMMPIの利点について2つほどまと

めておく。

MMPIの方が,検査施行によるクライエントヘ

与える負担や侵襲性といったものはかなり低いと

思われる。550という項目の数は確かに量的に負

担があり,刺激的な文章も少なくない。だが,

MMPIの検査刺激はことば・言語であり,クライ

エントにとっても,その意味は容易にとらえ理解

できる。それ故,適度に防衛したりごまかしたり

することも可能である。また,クライエントにど

のように感じられ,どのような動揺を受けるかを,

臨床家としてもある程度理解できる。それに比べ

て,ロールシャッハのインクプロットという知覚

刺激は,クライエントにとって,どのように受け

取られ,どのような感情や内的な体験を喚起する

のか,これは個人差が大きく容易には理解できな

い。非常に楽しめるクライエントもいるが,大き

く動揺を示すクライエントも少なからずいる。表

面的には動揺しないが,後まで影響を受けている

ようなクライエントもいる。それがどのような影

響を与えているか,非常に推測し難いし,それを

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MMPIの臨床場面における実践的活用(井手・荒川)

言語化できるクライエントもいれば,言語化でき

ない者もいる。ロールシャッハ施行の適否は,ク

ライエントの病態や現在の状態などを考えて非常

に慎重になってしまうところであるし,そうすべ

きとも考えられる。それに比べるとMMPIは,

当然クライエントの病態や状態などをある程度考

慮しなければならないが,施行可能な場合が多い。

意外にMMPIの方が,臨床的な適応範囲は広い。

両検査を臨床的に活用しての実感である。

MMPIのもうひとつの利点は,再検査のやりや

すさであろう。ロールシャッハは質疑段階がある

ため,かなり対人的なやりとりが大きく,対人的

な関係性が関連する検査である。それだけに,対

人関係的な面をより詳しくとらえることが出来る

長所もある。治療者として関わっていく場合,初

期あたりは施行できようが,治療関係が進んでい

くと,なかなか,その過程で治療者自身が再検査

を行うことは難しく感じる。治療者一クライエン

ト関係が結果に影響するし,検査施行がその関係

に影響を与えるところが大きいと感じられるから

である。ロールシャッハのとらえ方や治療のあり

方も関連するのだろうが,筆者らは,スタッフに

恵まれ治療者と異なる検査者が可能である場合,

あるいは終結に近い時期である場合,その2つの

場合以外はロールシャッハの再検査を原則的に

行っていない。そうでないと,適切な結果も得ら

れないし,治療関係や経過に影響を与えるように

思われる。それに比べるとMMPIは,治療者一

クライエント関係からの影響やその関係への影響

は殆どないようである。症例2でも行っているよ

うに,カード式であれ,冊子式であれ,比較的簡

単に再施行が可能である。そして,治療経過など

を振り返ったり,現在の問題を考えていくという,

より治療に結びついたかたちで使うことが可能で

ある。これはロールシャッハと比べてのMMPI

の大きな利点と思われ,もっとこのようなかたち

での活用が望まれる。

臨床的な心理検査は,さまざまな臨床状況でい

ろいろなクライエントに対して,必要に応じて行

われる。いずれにせよ,臨床での心理検査はクラ

イエントの治療に何らかのかたちで結びついてい

るものであり,よりよくクライエントのために役

立てなければならない。どのような検査にせよ,

より適切な臨床的活用の実践とその検討が今後と

も必要とされよう。日本においてはまだまだ臨床

的利用度が低いMMPIは,本論でも報告したよ

うに臨床的活用性は高く,クライエントと臨床家

に役立つところは大きく,今後さらなる臨床的な

利用や研究のひろがりが望まれところである。

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lDE,Seigo

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WepresentedtwoclinicalcasesusingtheMMPIthatcontributedimprovingpsychotherapeuticprocess・

Inonecase,theMMPIcontributeddecidingnextstepoftreatmentforbothclientandthetherapist、Inthe

othercase,regularlyusingtheMMPIhelpedunderstandingwhathappenedinpsychotherapeuticprocess

forbothclientandtherapist,andadvancingclient'sinsightofinnerprocess,Thenwediscussedafactorof

stillfewusesandstudiesofMMPIinJapaneseclinicalsettingConsideredmainlyfactorswerepoorrecog‐

nitionsoftheMMPI,involvingadministration,scoringandinterpretationthatistheMMPI'sfoundational

assessmentwork・Andthefeedbackofclinicalpersonalitytest.includingtheMMPIandtheRorschach・also

discussed.

KeywordS:theMMPI,afeedbackoftest,personalitytest(orassessment)

-16-

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-17-

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本*申Respon8eList**申:NJap/NJap/FOO1FFFTTTFFTTFTTTTFFFTTTFFTF1FFTTFFTTTFTFTTFFFFTFFFFFO50

051FTFFFFFFFTTTFFTTTFFFTTFFTTTFFTFFFFFTTFFFFFFTTTFFFT100

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ScaIeCode2681034795FL?KT- S c o r e 、 8 4 8 4 8 4 8 0 7 4 727169362681464438

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CLS=4(64)Carelessnes8ScaIe

di8F-K=5(71)Di88muIationIndeX(Gough)++AI=79.7(65)AnxietyIndex(WeI8h〉IR=1 .30(69)InternaIizedRatio

Gl=73(65)GoIdbergInd e xTPer=0.39(49)TruePercent(TrueResponseRatio)UeanC10=68.0(82)MeanTscoreOfCIinicaI10Scales++

iieanCO8=72.5(84)MeanTscoreOfCIinical8Scales++

Abv70C10=7(119)NuInbersofT>=70onCIinicallOScaIes++

Abv70CO8=6(119)NumbersofT>=70onCIinicaI8ScaIe8++

UnC9wo0(HE)=67.3(79)MeanTscrCIinic9(except/withoutO)++MnC9官o5=72.7(87)Ue8nTscrCIinic9(except/without5)++

Appendixl-1VariousResuItsofMMPl(Casel)

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一一一一『一

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MMPIの臨床場面における実践的活用(井手・荒川)

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札幌学院大学心理臨床センター紀要第7号2007年

Appendix1-2VariousResultsofMMPI(Casel)

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S CI:ARHASE8LbCaT:73+◆6478+十 23-6474++

S CI:DyDoRe PrStCn

T: 7 0 + 十 3 9 4 3 4821--.68

S C I:HtMAC(49)MAC(51)O-HA8SOC(wig)T :75++5049503984++

SCI:DEP(wig)FEN(wig)MOR(wig〉REL(wig)AUT(盲ig)PSY(wig)T:85+◆4558494679十十

SCI:ORG(wig〉FAH(wig)HOS(wi8〉PHO(wig)HYP(wig)HEA(wig)T:74++5947575093++

SCI:I(tsc)8(tsc)S(tsc)、(t8c)R(tsc)A(tsC)T:80+◆90++5480++5573++

ScI:T(t8c)?(pure)LFKHs+0.5KT :64434681十十3880++

ScI:DHyPd+0.4KMf(fomaIc)PaPt+1.0KT: 8 4 + + 7 2 + + 7 1 + +26-84++69

ScI:Sc+1.0KHa+0.2KSiH sRawPdRaw PtRaw

T:84++3674++86++76+十 71++

ScI:ScRaw M a R a w D - 0D-SD1SDD2PR

T:85++4086十十4883++77++

SCI:D3PMD4UDD5BrHy-OHy-SAdT:88+十75++77+◆80十十4980++

SCI:0n HylDSHy2NAH y3LilHy4SCHy5IAT:46355483+十6848

SCl:Pd-OPd-・SPdlFDP d2APPd3SIPd4aSoT:77+◆60625727一一70++

SCI:Pd4bSePd4(W33)Pd4A(、)HflNHMf2F1Hf3DMT: 7 7 + ◆ 7 5 + + 7 7++644953

SCI :Mf4HDMf5ICMf6SRPa-0Pa-SPalP1T:486075++7 8++6868

ScI:Pa2Po Pa3SclaSASc1bEAScl-OLSc2aLCgT: 7 4 + + 6 1 8 8 + 十 84+十93++61

ScI:Sc2bLCnSc2cLDISc2(W)lASc2(n〉IASc38SMa-OT:77++5770++74十十86++50

SCI : M a - S M a l A m l i a 2 P AMa3ImMa4E1SilInT:32395825..-.4368

S CI:Si2DOSi3StSi4HSSi5DtSi6PC1-.DOT:74++66555390+十 53

ScI : l - D o I - D S I - O C I - SC(f)I-RDI-SP(f〉T:35545473++6967

SCI:AStvn[f]5CE/Cy(f)HoPe S+

T:4260545391++72十十

SCI:WAHST(pd)HST-N(pd)NAR(pd)NAR-N(pd)BDL(pd)T: 5 6 2 3 . . - . 2 3 - 22..-22-53

ScI:BDL-N(pd)ANT(pd)ANT一N(pd)DEP(pd)DEP一N(pd)CPS(pd)T:605658615759

SCI:CPS-N(pd)PAG(pd)PAG-N(pd)PAR(pd)PAR-M(pd)STY(pd)T:634545656883++

SCI:STY-N(pd)AVD(pd)AVD-N(pd)SZD(pd)SZD-N(Pd)POST: 69 82 ++ 79 ++ 80+十81++64

SC I:NOSMOSNDs-rDs R-S

T:76++83十十6571++78十十74++

SOI:MAD-fT8PK(W49)PK(、46)Fble

T:6884++86+◆87++80++34

ScI:TpT:30一

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MMPIの臨床場面における実践的活用(井手・荒川)

Appendixl-3VariousResuItsofMMPI(Casel)

*車*************車車車*車**申***申***申**車****本本***本本車車車***車**車申**木本****車*申*****本*車**卓

***車ItemListDateFiIebyHI(06/O8Revi8ed)車卓申車*車車*車*車**車本車*車***車*串本***本*****車車本車車車車車車本な本本宰牢*車車車車*車**車中***申**車*車車*車車串本**車本*

CannotSayItemLi8tUP(05/03-)一一‐一一-一一一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ■

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CriticaIltenLi8t(jp(07/O1modify)

SynthesizedCriticaIItem8(07/O1New

1十十sylPC81(29)P8ychophy8icaICompIain(Anx,SoInat、TonBe)++Psychophy8ioaICoInpIain(Anx‘so国at・Tense)(29/50)

〈〈TrueIteIn>>(13/29)++13(13)T仕事をする時は、ひどく緊謡[キンチョウ]する++29(2 9) T週 に何 度も 胸や けが して 困る

++62(62)T体【カラダ・]の一部がカツとほてったり、上リヒリまたはムズムズしたり.しびれたように感じることがよくある++72(72)T『みぞおち』のあたり(胸の中央下部)の不快感[フカイカン]に佃【ナヤ]まされる

◆+125(125)Tひどい同の痢気にかかっている

++189(189)Tいつも体[カラダ・]全体が衰岡[スイジャク]しているように感じる++236(236)T私は、同じことを何度もくよくよと考え込【.]んでしまう++337(337)Tいつも何かに不安を感じている++352(352)T危ないはずはないとわかっていても、人や物を怖[コワ]がる++359(359)T何でもない考えが四から瞳[ハナ]れずに、何日もそれが気になることがある++469(555)T時どき、自分がバラバラになってしまいそうな気がする+◆506(506)Tひどく神経を饗りつめるたちだ

++544(544)Tたいてい、いつも疲【ツ刈れている感じだくくFaIseItem>>(16/21)

◆◆2(2)F食欲はある

+ 十 3 (3)F朝、目がさめた時は、たいていよく休まったという感じがする++36(36)F髄康について、あまりくよくよ心配しない++68(68)F首筋【クビスジ]が痛くなることはあまりない++119(119)Fふだんと同じ餌子で鯖ができる(速[ハヤ]すぎたり遅[オソ]すぎたり、かすれたり、不明瞭[フメイリョウ]になったりしない)++153(153)Fここ二、三年はだいたいのところ健康である++154(154)Fひきつけやけいれんを起こしたことはない。+174(174)F気を失ったことは一度もない◆◆175(175)F目まいがすることはあまりない十十190(190)Fめったに頭痛はしない。+230(230)F心麗がドキドキしたり息切[イキギ]れして困ることはない++242(242)F人よりも特に神経質[シンケイシツ]ではないと思う++243(243)Fこれといった痛みはない++281(281)F耳喝[ミミナ]りはあまりしない++287(287)F友逮[トモダチ]に比べて、ずっと恐[オソ]ろしがらないほうだ◆+330(330)F筋肉が麻揮[マヒ】したり、異常に弱まるということはない一一一一一‐‐一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-一‐一一一

2++sy2DS82(17)Dopre88iveSucid0(Worry,Distress)++DepressiveSucide(Worry.、i8tre88》(17/23)

〈〈Trueltem>>(13/19)

++76(76)Tいつも憂【ユウ]うつである++86(86)T私は全[マツダ]〈自侭がない++104(104)T自分がどうなってもかまわないような気がする++106(106)T悪いことをしてしまったと、いつも思っている++142(142)T時どき、自分は何の役にも立たない人間鎧と思う++202(202)T私は本当に耶深[ツミフ・力]い人間だ++209(209)T私の卵【ツミ]は許されない+◆259(259)T私は何をするにも始めがうまくいかない++301(301)T私にとって人生はいつも宣荷【オモニ]だ++339(339)T死んでしまいたいと、いつも思っている++381(397)T時どき、困離[コンナン】なことが積み重なってきて、それを乗り切れないと感じる

++418(418)T時どき、私は全[マツダ】〈役に立たない人間麓と思う++526(526)T将来[ショウライ〕には希望が持てないく<FaI8eItem>>(4/4)

++8(8)F毎日の生活は充実(シ・ユウシ・ツ)しているほうだ◆+88(88)F生きることは価伍[カチ]があると感じている十十107(107)Fたいてい気分は良い十十400(379)Fたびたび憂[ユウ]うつな気分になることはない一一一-一一一一一一-一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

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札幌学院大学心理臨床センター紀要第7号2007年

Appendixl-4VariousResultsofMMPl(Casel)

3++sy3PE84(7)PeticuIarExperience〈Confu80,Pycho・Unusual)++PeticuIarExperienoe(CDnfuse・Pyoho,Unu8ual)(7/20)

〈〈TruolteIn>>〈7/19)

◆+33(33)T非常に奇妙[キミョウ]な体験【タイケン]をしたことがある++66(66)T他人には見えない物や動物や人が、私のまわりに見える◆+134(134)T考えが先に進んで、君藁がついていかないことがある◆+168(168)T私の頭はどうもおかしい

◆+182(182)T気が狂[クル]うのではないかと恐【オソ]れている++251(251)Tまわりで何がおこっているか全【マツダ]くわからなくなり、何もできなくなった時期がある++350(350)Tひとりでいると、妙[ミョウ]な音や声が聞こえてくるくくFal8eItenI>>(0/1)

-= -- -- -------------------=一一一一一一一一一---‐一一一一一一一一一一一一一ー一一ーーーーーーーーーーーーーーーーー

4+8y4RI68(5)RefereI1ceIdeas(Pesecutory)+Roferenceld6a8(P0Bocutory〉(5/19)

〈〈Trueltem>>(4/18)

+◆110(110)T私に恨【ウラ〕みを持っている人がいる++136(136)T人が親切にしてくれると、何か訳【ワケ]があるのではないかと思う+◆265(265)Tだれも侭用しないほうが安全麓

十十278(278)T知らない人から、じろじろ見られているように思うことがある

くくFaI8eItem>>(1/1)

++347(347)F私を偽【キス]つけようと思っている敵はいない

5+sy5DA55(6)DeviantAttitUde(Fami、AUth、As8auIt・AIcoh)+DeviantAttitudo(F”i,Auth、Assault,AIcoh)(6/27)

〈〈Trueltem>>(3/21)

++21 (21)T時どき、たまらなく家をとび出したくなる

+◆39《39)T時どき、物をぶちこわしたくなる+◆146(146)T秘には放浪癖[*ウロウヘキ]があり、ぶらぶら歩き回ったり旅行したりしていないと気が扇れない

くくFaIseIteIn>>(3/6)

+◆137(137)F家庭生活は世間並[セケンナ〕みにうまくいっている十十237(237)F身内【ミウチ]の者は、たいてい私のことを理解してくれる++294(294)F隆律上のことで問題を起こし た こ と は な い

7+sy6SP(f)67(4)SexuaIProbIeIn(f)+SexualProbIem(f〉(4/11)

〈〈Tru0ltem>>(1/6)

++519(519)T性粉に具合肋・アイ]の悪いところがあるく<FaIseltem>>(3/5)

+◆ 74(74)Fあなたが男の場合・・・・女だっ た ら 良 か っ た の に と 思 う こ と が 時 ど き あ る

あなたが女の塙合・・・・自分が女であることを 残念だと思ったことはない十十90(20)F性生活に別に問題はない++430(430)F異性にひかれる

車*車*EndofltemLi8tOate*本*車車*車車**申***車本本本本本本車車申申車本本車車本本車本本本本車車申車申車阜車申申申**本**率*本*車*車*本*車車***本*本本**車車車車車申**

-20-