16
バーチャル・コンパクトシティ 工学系研究科・都市工学専攻 サステイナビリティ学連携研究機構兼任 花木 啓祐 2017313花木啓祐 研究テーマ群のマッピング 2 バイオマス利用 新エネルギー 都市のエネルギー 消費削減 コンパクトシティ 亜酸化窒素管理 環境教育 環境配慮行動 都市とくらし LCA 環境政策 廃棄物資源 マネジメント ヒートアイランド 気候変動影響 島のサステイナビリティ 衛生管理 リスクコミュニケーション 排水処理 親水空間・水辺 環境の価値 大気環境 温室効果ガス削減 安全・安心社会づくり 生活の質の改善 循環型社会づくり 持続可能な社会づくり 流域マネジメント 花木啓祐 本日のアウトライン 1.現代の趨勢 2.コンパクトシティの理念 3.コンパクトシティの実現 4.バーチャル・コンパクトシティの提案 5.まとめと方向性 3 これまでの研究テーマの概要紹介 バーチャル・コンパクトシティ 花木啓祐 Sustainable Development Goals (SDGs) 2015年に国連で決議、2030年が目標年 5 1.貧困 10. 公平性 2.飢餓 11. 人間居住 3.健康 12. 生産消費 4.教育 13. 気候変動 5.ジェンダー 14. 海洋資源 6.水と衛生 15. 陸域生態系 7.エネルギー 16. 平和と公正 8.経済と雇用 17. パートナーシップ 9.産業基盤 17のゴールと 169のターゲット 誰も取り残さない No one left behind1.現代の趨勢 MDGの後継 2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [1]

温室効果ガス削減 循環型社会づくり バーチャル・コンパクトシ … · 化石燃料依存都市→低炭素都市 →再生可能エネ都市→社会全体の資源消費抑制

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バーチャル・コンパクトシティ

工学系研究科・都市工学専攻

サステイナビリティ学連携研究機構兼任

花木 啓祐

2017年3月13日

花木啓祐

研究テーマ群のマッピング

2

バイオマス利用新エネルギー

都市のエネルギー消費削減

コンパクトシティ

亜酸化窒素管理

環境教育

環境配慮行動

都市とくらしのLCA 環境政策

廃棄物資源マネジメント

ヒートアイランド

気候変動影響島のサステイナビリティ

衛生管理

リスクコミュニケーション

排水処理

親水空間・水辺環境の価値

大気環境

温室効果ガス削減

安全・安心社会づくり生活の質の改善

循環型社会づくり

持続可能な社会づくり

これまでの研究テーマ

流域マネジメント

花木啓祐

本日のアウトライン

1.現代の趨勢

2.コンパクトシティの理念

3.コンパクトシティの実現

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

5.まとめと方向性

3

これまでの研究テーマの概要紹介

バーチャル・コンパクトシティ

花木啓祐

Sustainable Development Goals (SDGs)

2015年に国連で決議、2030年が目標年

5

1.貧困 10.公平性2.飢餓 11.人間居住3.健康 12.生産消費4.教育 13.気候変動5.ジェンダー 14.海洋資源6.水と衛生 15.陸域生態系7.エネルギー 16.平和と公正8.経済と雇用 17.パートナーシップ9.産業基盤

17のゴールと169のターゲット

誰も取り残さない(No one leftbehind)

1.現代の趨勢

MDGの後継

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [1]

花木啓祐 6

SDGs実施指針(日本政府、2016年12月)

1.現代の趨勢

花木啓祐

21世紀前半の日本(先進国)の課題

高齢社会の新しい姿の創造

地域の活力(地方都市)の維持

生活の質の維持と向上

時間に余裕のある生活vs.出番の喪失

くらしと文化の多様性

包摂的な社会(inclusive society)低環境負荷

7

1.現代の趨勢

花木啓祐

将来の日本の人口減少の予測

総人口

1億2800万人(2010年)→ 9700万人(2050年)=24%減

人口増減率(2010→2050年)別の地点別割合(1 km四方のメッシュ数)

3大都市圏以外の人口30万人以上の都市圏の数:61(2010年)→ 43(2050年)

8

国土交通省2014年7月「国土のグランドデザイン2050」

1.現代の趨勢

人口ゼロ(非居住地化) 19%50~100%減少 44%0~50%減少 35%増加 2%

花木啓祐

2010年から2050年の間の人口変化

注)1 kmメッシュごと人口変化を推計し、増減割合に基づきメッシュ数を分類した結果を示したものである

1.現代の趨勢

9国土交通省2014年7月「国土のグランドデザイン2050」

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [2]

花木啓祐

東京圏の人口減少予測

10

1.現代の趨勢

国土交通省2014年7月「国土のグランドデザイン2050」

花木啓祐

人口減少を生かす道

生活の質の面

本来プラス面もあるはずだが、マイナス面が現れている(例:病院の混雑が減ると思ったら閉院になった)

環境の面

高密度が原因となる環境問題は改善

エネルギーや土地利用は一人あたりの環境負荷が増える懸念

まちと家の作り方で解決できるか?

情報通信技術(ICT)の役割11

1.現代の趨勢

花木啓祐

持続可能な新しい都市の姿

環境、社会、経済面のバランス

持続可能な都市の実現

抑制的な持続可能性→縮小・ジリ貧→衰退

積極的な持続可能性の実現→新たな都市のかたち

化石燃料依存都市→低炭素都市→再生可能エネ都市→社会全体の資源消費抑制

社会・経済面の活性化

付加価値の創出

都市内外の雇用創出

都市の再生

コンパクトシティ、スマートシティ

12

1.現代の趨勢

花木啓祐

気候変動パリ協定と日本の目標

産業革命前に比べた気温上昇が2℃を十分に下回る

2030年日本の温室効果ガス排出目標

2030年度に2013年度比△26.0%(2005年度比△25.4%)

2050年日本の温室効果ガス排出目標

2050年に△80% 2100年には世界でゼロ排出必要

13

1.現代の趨勢

単なる省エネを超えた脱炭素社会

2050年=わずか33年後

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [3]

花木啓祐

都市活動各部門がもたらすCO2排出の現状

家庭オフィス・店舗

人の移動 物の輸送 製造業

東京都CO22013年度

32% 40% 18% 8%

宇都宮市CO22012年度

18% 24% 24% 29%

誘発負荷

建物と活動に使用する製品

海外も含め、多岐にわたる

建物とオフィス用品

輸送機器の製造・廃棄由来

環境管理の一環として把握

14

1.現代の趨勢

農業

工業

都市

製品・資材

食料

人間社会

地球環境

誘発負荷誘発負荷

誘発負荷

ライフサイクルアセスメントによる誘発負荷の推定

花木啓祐

脱炭素都市のメニュー

家庭オフィス・店舗

人の移動 物の輸送

人間行動ライフスタイル変更

勤務・店舗形態変更

交通需要減と手段選択

賢いネットショッピング

ハード単体高エネルギー効率・長寿命建築物、省エネ機器太陽光発電

駆動系と燃料多様化・自動運転

低炭素型輸送手段・効率向上

ハードシステム再生可能エネルギー利用システム・スマートグリッド都市構造

交通システム改善

物流システム改善

社会システム脱炭素社会のための制度とまちづくり居住・勤務・サービスの仕組み

通勤・買物交通・義務的移動の削減

モノからサービスへの移行

15

1.現代の趨勢

製造業部門除く

花木啓祐

高齢社会の進行と広がり

自動車による移動困難

高齢者の交通事故の増加

自動運転の実現への期待

鉄道移動の高齢者への身体的負担

ユニバーサルデザインの徹底・高機能化

都市の活力の低下、福祉負担大

成熟した知恵を持つ社会

16

1.現代の趨勢

02000400060008000

100001200014000

2010年2050年

75歳以上

65~74歳

64歳以下

平成28年度高齢化白書より作成

花木啓祐

子育て支援社会のニーズ

17

男女共同参画白書 平成27年版

待機児童問題

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [4]

花木啓祐

高齢・子育て支援社会の傾向

家庭オフィス・店舗

人の移動 物の輸送

人間行動在宅時間の増加

多様な勤務形態

自動車運転に制約

宅配サービス増加

ハード単体ユニバーサルデザイン

ユニバーサルデザイン

自動運転の必要性

宅配用輸送手段改善

ハードシステムサービス付住宅

託児所付オフィスの増加

送迎サービスシステム

宅配ネットワーク

社会システム介護・子育てへの支援

地域密着型オフィス

通勤は減少 宅配の増加

18

1.現代の趨勢

花木啓祐

ICTの急速な進展と都市への影響(1)モノからサービスへの移行

紙媒体から電子媒体情報へ

物理的移動の必要性減少

人の移動を必要とするフィジカルなオフィスからバーチャルオフィスへ

店舗のバーチャル化

立地による優劣の解消→地方都市に有利

現金決済から電子マネーへ

暮らしとビジネス、就労形態の変化

物理的距離に起因する制約・環境負荷が減少

19

1.現代の趨勢

花木啓祐

ICTの急速な進展と都市への影響(2)モノの機能・サービス水準の向上

IoT (Internet of Things)の拡大

モノの多様性の増大とカスタマイズ

モノのシェアリングの容易化

リアルタイム情報活用の拡大

交通情報

降雨レーダー

20

1.現代の趨勢

花木啓祐

ICTによる都市活動の変化

家庭オフィス・店舗

人の移動 物の輸送

人間行動 生活支援在宅勤務・仮想店舗の増大

雑用目的の移動の減少

サービス提供に代替

ハード単体 エネルギー管理の高度化自動運転と経路選択

適輸送・自動配送

ハードシステムスマートシティ

情報・熱・エネルギー融通システム

オンデマンド交通ライドシェア

自動配送システム

社会システム安全安心確保社会

ICT統合型ビジネス

テレワークの増加

情報代替によるモノの減少

21

1.現代の趨勢

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [5]

花木啓祐

台頭するシェアリングエコノミー

民泊サービス・ホームシェアリング→空き家減少

自動車・自転車シェアリング

カーシェアリング→自動車台数減少

ライドシェア→交通量の減少

衣服のシェアリング→廃棄衣服の減少

スペースシェアリング→ビル稼働率向上

ICT(スマートフォン)の助けにより迅速化、組織化、ビジネス化、信頼性向上。

22

1.現代の趨勢

花木啓祐 25

交通エコロジー・モビリティ財団(2016年4月25日記事)

わが国のカーシェアリング車両台数と会員数の推移

http://www.ecomo.or.jp/environment/carshare/carshare_graph2016.3.html

花木啓祐

人口減少の中でのコンパクトシティ形成

人口減少コンパクトな都市

環境負荷大生活の質低

環境負荷小生活の質高

発展前

急速な成長

29

2.コンパクトシティの理念

花木啓祐

計画的なコンパクトシティの形成

30

スプロール

単核型コンパクトシティ

無計画成長

TOD (Transit-Oriented-Development)

計画的成長

多核型コンパクトシティ

2.コンパクトシティの理念

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [6]

花木啓祐

OECD (2012) 「コンパクトシティ政策―世界5都市のケーススタディと国別比較」(原文英語)

コンパクトシティの特徴

31

高密度で近接した開発パターン

・市街地は高度利用されている

・都市集積は連続または隣接している

・都市的土地利用と農村的土地利用の境界が明確

・公共空間が確保されている

公共交通機関でつながった市街地

・市街地が効果的に利用されている

・公共交通機関によって市街地でのモビリティが高い

地域のサービスや職場までの到達しやすさ

・混合土地利用

・ほとんどの住民は徒歩または公共交通機関を使って地域サービスを利用できる

コンパクトシティの主要な特徴(OECD)

2.コンパクトシティの理念

花木啓祐

コンパクトシティの効果 コンパクトシティは低環境負荷につながるか?

交通はYES 建物は居住形態次第

大西隆(2010)「低炭素社会に向けたまちづくり」in『低炭素都市-これからのまちづくり』学芸出版社

32

2.コンパクトシティの理念

人口密度

一人あたり交通CO2

日本の都市の例

花木啓祐 33

Jonathan Norman; Heather L. MacLean, and Christopher A. Kennedy (2006) Comparing High and Low Residential Density: Life-Cycle Analysis of Energy Use and Greenhouse Gas Emissions, JOURNAL OF URBAN PLANNING AND DEVELOPMENT, Volume 132, Issue 1, pp. 10-21

N.B. Case study at City of Toronto

33

2.コンパクトシティの理念

コンパクトシティと建物エネルギー消費

建物運用建物運用

交通交通

一人あたり 床面積あたり

エネルギー消費量

低 密 低 密高 密 高 密

花木啓祐

富山市の例(串と団子)

34

富山市(2008)「富山市都市マスタープラン」

富山市(2012)「富山市都市整備事業の概要」

2.コンパクトシティの理念

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [7]

花木啓祐

コンパクトシティのメリット

生活の利便性

施設維持管理費用

35

富山市での市街地人口密度と都市施設維持費用の関係(富山市都市マスタープランによる)

注)都市施設の維持管理費=除雪、道路清掃、街区公園管理、下水道管渠管理費用

2.コンパクトシティの理念

花木啓祐

プロアクティブなコンパクトシティ形成

リアクティブな軌道修正の限界

人間活動→環境問題・社会問題の発生→問題の解決(軌道修正)

建物と都市構造の変化の遅さ

数百年以上?

現状

望ましい姿

現在

プロアクティブな都市づくり

37

3.コンパクトシティの実現

花木啓祐

政策支援-エコまち法

38国土交通省HPより

都市の低炭素化の促進に関する法律(2012)

3.コンパクトシティの実現

花木啓祐

政策支援-立地適正化計画

39

居住誘導区域

都市機能誘導区域市街化区域都市計画区域

2014年8月 都市再生特別措置法に基づき制度化

3.コンパクトシティの実現

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [8]

花木啓祐

政策支援-地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の改正

40

国土交通省(2014年2月)「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案の概要

3.コンパクトシティの実現

花木啓祐

箕面市立地適正化計画

412016年2月策定

3.コンパクトシティの実現

花木啓祐

コンパクトシティ施策の進行管理 KPI (Key Performance Indicator)

2020年までに150市町村が立地適正化計画作成

都市機能誘導区域内に立地する当該施設数の占める割合が増加している市町村数 100 (2020)

居住誘導区域内に居住している人口の占める割合が増加している市町村数 100 (2020)

公共交通の利便性の高いエリアに居住している人口の割合 (2014-2020年度)

三大都市圏90.5%→90.8%地方中枢都市圏78.7%→81.7%地方都市圏38.6%→41.6%

42

国土交通省(2016)「コンパクトシティ形成支援チームの今後の進め方」

3.コンパクトシティの実現

花木啓祐

コンパクトシティ実現に当たっての困難

居住地変更(移転)のインセンティブ

郊外に住み続けることにディスインセンティブ(不便を強いる、安全安心の低下)を与えるのは本来の姿ではない

インセンティブを与えるためには、都心居住の方が魅力的・安価でなければならない

都心の集合住宅の生活の質を郊外の戸建てより高くできるか?

ディベロッパーのビジネスが可能か?

移転のきっかけ=結婚、就職

43

3.コンパクトシティの実現

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [9]

花木啓祐

実現の速度感

建物寿命 約50年長寿命建築が環境負荷の面から目指される

持ち家=移転に消極的

持ち家比率(全国平均)61.7%家族の世代交代 30-40年新築時の移転確率は低い

44

3.コンパクトシティの実現

2050年に間に合わない

花木啓祐

バーチャル・コンパクトシティの理念

実質的に(virtual)コンパクトシティの機能と効果を得ることをめざす

物理的なコンパクトシティと整合的

物理的にコンパクトシティが実現困難な小都市・町村にも適用可能

地価に起因する移転制約なし

集落消滅の懸念地域の住民も生活レベルを維持できる(「誰も取り残さない」SDGsの精神)

一旦拡大してしまった都市に適している

46

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

達成が速い

花木啓祐

バーチャル・コンパクトシティ(VCC)の基本理念

物理的居住場所は不変

物理的コンパクトシティと同等/上回る機能

高い生活の質

低い環境負荷

社会・経済的魅力大

発展・拡大するICTを活用

47

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

花木啓祐

達成すべき目標

高い生活の質(良い暮らしぶり)

低い環境負荷

48

生活の質

環境

負荷

暮らしぶり

環境へのやさしさ

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [10]

花木啓祐

都市の生活の質 (QOL, Quality of Life)安心・安全性

医療、災害、事故、治安、福祉

行動の自由 モビリティ、サービスの選択

経済活動機会所得、就業、事業、投資

生活サービス機会教育、買い物、文化、移動、娯楽、観光、交流

快適性住宅、景観、緑地、歩道、大気、水質、騒音

49

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

花木啓祐

環境負荷の評価

誘発負荷を考慮したライフサイクル思考(Life Cycle Thinking)

LCTの本質

目の前にないもの(物・者)に対して思いを馳せる

物質流の川上へ、川下へ

過去へ、将来へ→持続可能性の本質

LCTでとらえた消費活動

環境面:製造のアウトソーシングは負荷のつけ回し 開発途上国の汚染、森林破壊、生態系への影響

先進国、消費都市→他地域で誘発環境負荷発生

社会面:雇用の促進、不当労働による雇用(途上国) 経済面:製造業の振興による経済発展

50

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

花木啓祐

建物運用(冷暖房・照明など) 廃棄建築 短寿命で建て替え

寿命一杯使う

高性能建物

ライフサイクルCO2排出量(1年あたり)

51

高機能化と長寿命化の効果(建物の例)

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

(排出量の大きさはイメージ)

花木啓祐

ライフサイクルCO2排出量(輸送人・kmあたり)

52

稼働率の効果(自動車の例)

(排出量の大きさはイメージ)

走行製造高稼働率(営業車)

廃棄

自家用車

低稼働車

低CO2車ハイブリッド車

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

シェアリングエコノミーの意義

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [11]

花木啓祐

VCCの基本戦略

物理的入手・距離が制約になるモノから情報サービスへの転換

ライフサイクル環境負荷が低いモノの選択

人(高齢者)への負担が小さいモノの移動

デリバリーシステム

シェアリングエコノミーの活用

53

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

花木啓祐

利便性(職場へのアクセス)の向上

移動の必要性を減らす

テレワーク

多様なライフスタイルへの対応、女性のキャリア継続、介護離職防止の意味でも有効

週1日以上終日在宅で就業するテレワーカー数の目標:2020年には、全労働者の10%以上(平成27年6月30日閣議決定)

一人が行う複数の「しごと」のタイムシェアリング

54

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

必要性・実現性の高まり

移動距離を短くする

サテライトオフィス

花木啓祐

利便性(商業・サービスへのアクセス)向上

移動の必要性を減らす

モノからサービスへの移行(例:定期通院)

出かけて得るサービスから、デリバリーサービスへ(高齢者・子育て対応)

物理的コンパクトシティでは徒歩圏・公共交通機関を重視

徒歩が困難な高齢者もサービスが受けられる

55

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

花木啓祐

自動車による人の移動

必要な移動に対してはカーシェアリング、ライドシェアで環境負荷削減

ライドシェアは地方部の高齢者対応で効果大(京丹後市の「ささえ合い交通」実験)

自動運転(自動走行)

レベル4(完全自動走行):目標年2020 レベル5(無人走行) :目標年2025

自動運転はシェアリングを容易にする

安全性への信頼

むだと間違いのない走行(交通状況に応じた経路選択)

無人走行で、「いつでも、どこでも、誰でも」利用可能

56

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [12]

花木啓祐

ライフサイクルCO2排出量(輸送人・kmあたり)

57

カーシェアリング・ライドシェアの環境評価

(排出量の大きさはイメージ)

走行

カーシェアリング(稼働率上昇)

ライドシェア(乗車人員増)

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

製造 廃棄

LCA的には自明だが従来は実現が困難だった自動車の汎用品化(コモディティ化)・ICT発展により現実化

自家用車

花木啓祐

生活物資(食料品)

モノとして必要

消費期限、重量の面で購入者の負担が大

配達で利便性、高齢社会対応を解決

定期配達から即時配達まで

環境負荷は?

混載配達の場合、自家用車による買い物よりも低負荷

店舗側の冷蔵、照明、空調の軽減

ドローン配送の可能性

60

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

花木啓祐

配達と自動車による買い物のCO2

長距離輸送を除いた配達部分のCO2排出

宅配便1個あたりに配分したトラックの走行距離0.58km、積載量1トンで走行するとして、営業用小型車のCO2原単位は808g/km従って、1個の配達あたり470g

国土交通省(2015年9月)「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会報告書」における計算の一部を利用

自家用車で買い物

往復4km=ガソリン0.5リットル=1,280g CO2

自転車・徒歩の場合は微小~ゼロ

61

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

花木啓祐

日常の買い物目的の交通由来CO2

62

デリバリーは、徒歩で買い物に行けない地域の環境負荷を低減させる

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

デリバリー

外出買物

サービス施設の面的密度

自転車・徒歩

CO

2排出

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [13]

花木啓祐

「いただきもの」文化の拡大

伝統的習慣(非都市部)

伝統的な「いただきもの」、「おすそ分け」=無償

ムダの発生(多すぎる、タイミングの問題)

63

生きた地域情報として活用し、経済的魅力付加

スマホアプリ・決済による支援

生活物資のシェアリング

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

花木啓祐

VCC-環境へのさまざまな影響

CO2 モノからサービスへの転換によるCO2減

デリバリーによるCO2<自家用車外出CO2

資源消費・循環

モノからサービスへの転換による消費削減

稼働率向上による資源節減

生態系へのインパクト・緑地保全

身近な小規模緑地確保

再生可能エネルギー

分散型、小型ソーラー導入機会大65

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

花木啓祐

VCCと住まい

物理的コンパクトシティにおけるCO2削減は床面積減によるもの

生活の質を高めつつエネルギーマネジメントシステム(HEMS)の活用

集合住宅では省エネ、戸建住宅では太陽光発電

エネルギー消費ゼロの建物:ZEB/ZEHスマートグリッドによる電力と熱のシェアリング

シェアハウスの更なる拡大

空き家とその土地の活用

66

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

花木啓祐

インフラ面でのVCCカバーする面積は減少しない

インフラのIoT化でスマート化

水道・下水道

現状の都市のものを賢く、長く利用

センサーによる劣化診断と予防的対応

道路

自家用車による移動がデリバリー・シェアリングで代替され交通量減少が期待

自動運転による効率的な道路の利用

67

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [14]

花木啓祐

従来のコンパクトシティ政策との整合性

エコまち法

低環境負荷のまちをめざすため、バーチャル・コンパクトシティの基盤となる

立地適正化計画などの法律

むしろこの制度と面的、時間的に相補的

68

居住誘導区域

都市機能誘導区域市街化区域都市計画区域

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

VCCの効果大

花木啓祐

VCCの適地と特徴

低密度、中小都市で効果大

コンパクトになりきれない大都市外縁部に適

導入に必要な時間が短く(10年程度)、進化を続ける

これに対し、物理的なコンパクトシティ形成は100年以上必要?

69

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

花木啓祐

VCCの課題

経済的に魅力的か?

格差を拡大しないか?

インセンティブを与えられるか?

次世代に渡す遺産として望ましいか?(逆行していないか?)

先を見越したプロアクティブな形態になっているか?

急速な普及のため制御困難

さまざまな法的制約との関係

70

4.バーチャル・コンパクトシティの提案

花木啓祐

まとめと方向性

バーチャル・コンパクトシティ(VCC)は「実質的な」コンパクトシティとして期待できる

望ましい成熟社会、脱炭素社会は可能

問題点を上げ否定するより、可能性を追求

更に柔軟な都市工学、サステイナビリティ学が必要

72

5.まとめと方向性

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [15]

花木啓祐:これまでの研究テーマ

松尾友矩先生、荒巻俊也氏、栗栖聖氏、一ノ瀬俊明氏、浦野明氏、中谷隼氏と共同

廃水処理

窒素除去(硝化・脱窒)

嫌気性処理(メタン生成)

難分解性物質

(PC

E/T

CE

)分解

生物活性炭

水中臭気物質管理

排水処理システムの制御

亜酸

化窒

管理

亜酸化窒素:温室効果ガス

排水処理からの発生抑制

廃棄物埋立地からの排出抑制

農地からの発生抑制

イオウ脱窒による生成防止

都市

のエ

ルギ

ー消

削減

都市間エネルギー消費比較

建物エネルギー消費削減

交通改善と

CD

M

コジェネ・地域冷暖房

ライ

フス

タイ

ルに

基づ

く家

の対策

スマートグリッド

新エ

ネル

下水熱利用システム

清掃工場排熱利用

再生可能エネルギー

ポテンシャル

太陽光発電(農地含む)

気候

変動

水害と被害予測

湖沼の水質影響

水資源への影響

都市

とく

しの

LC

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A:ラ

イフ

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クル

アセ

スメ

ント

都市廃棄物

LC

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都市開発・建築

LC

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食と水道水の

LC

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電子書籍の

LC

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飲料自販機

Eco

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イオ

マス

利用

バイオ燃料の環境影響評価

地域単位のバイオマス利用

森林資源活用

途上国バイオマス利用

厨芥の利用

廃棄物資源

マネ

ジメ

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廃棄物発生抑制

循環利用の

LC

A

古紙のリサイクル

廃棄

物処

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ステ

ムの

統合

費用便益分析

国際再生資源循環

廃棄物管理

CD

M

衛生管理

途上国衛生システム

衛生向上の

LC

A

バイオトイレ

デング熱と衛生環境

大気環境

植物

によ

る大

気汚

染モ

ニタ

ング

植物による大気浄化

ヒー

トア

ランド

街区

規模

シミ

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ーシ

ョン

実測

都市規模シミュレーション

人工排熱管理

暑熱対策の多面的効用

人体への影響

環境の価値

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水環境改善の価値評価

流域

マネ

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流域水システム最適化

窒素の流域管理

東京湾汚染物質排出権取引

ステークホルダー間の調整

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水辺

水辺の価値と管理

親水空間の住民選好と管理

都市内城濠のマネジメント

環境政策

都市の将来シナリオ

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サステイナブルキャンパス

地球

温暖

化関

連主

体の

相互

係 開発途上国の環境政策

リス

クコ

ュニ

ケー

ョン

飲用水選択と情報提供の効果

食品のリスク認知

環境教育

教育ツール・ゲーム

家庭科教育

文京

区N

PO

によ

る実

践と

果 自主的環境活動

島の

サス

イナ

ビリ

八丈島の物質フロー解析

島の物々交換慣習

八丈島観光スマホアプリ実験

小笠原の自然生態系

コン

パク

シティ

コンパクトシティ指標

コンパクトシティの環境負荷

と生活の質

都市構造最適化

コン

パク

トシ

ティ

実現

のた

の居住地選択

2017年3月13日 花木啓祐最終講義 [16]