第 26 章 地域編②：バンテン州

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地域編②：バンテン州

地域概要

概要

①インドネシアにおける経済的地位

バンテン州は、ジャワ西端に位置し、ジャワ海とインド洋に面している（図表 26-1）。面積は

9,160km2（四国の半分程度）で国土の 4.8％。人口は 1,269 万人で、インドネシア全体の 4.8％を占

める。

2018 年の名目 GDP は 615 兆ルピアで全国の 4.1％を占める。産業別の割合をみると、製造業が

最大で全体の 31.2％を占めている。その他、全国平均を上回り、構成比が高いのは運輸・倉庫業

（11.1％）、不動産業（7.6％）、化学・医薬品（6.7％）などである。

図表 26-1 バンテン州（地図）

（出所）白地図専門店（三角形）より作成

バンテン州

タンゲランチレゴン

ジャカルタ

インドネシアの投資環境

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図表 26-2 ジャワ島主要州とリアウ群島の名目 GDP 産業別構成比

（注）構成比が「全国」を 2％上回る産業を黄色、2％下回る産業を青色で示した （出所）CEIC より作成

②工業団地・日系企業進出動向

2018 年のバンテン州の FDI 受入総額（実行ベース）は 28.3 億ドルで、全国の 9.6％を占め、西

ジャワ州（55.7 億ドル）、ジャカルタ首都特別州（48.6 億ドル）に次ぐ国内 3 番目の投資先であっ

た。

バンテン州の北西に位置するチレゴンは鉄鋼産業の集積地として知られ、2017 年 7 月には新日

鐵住金（現、日本製鉄）の自動車用鋼板製造・販売を担う合弁会社である「PT Krakatau Nippon Steel

全国 ジャカルタ バンテン 西ジャワ 中部ジャワ 東ジャワ リアウ群島

名目GDP（兆ルピア、2018年） 14,986 2,599 615 1,962 1,269 2,190 249 全国比 100.0% 17.3% 4.1% 13.1% 8.5% 14.6% 1.7%

全体 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 第１次産業 12.5% 0.1% 5.8% 8.7% 14.0% 11.9% 3.2% 第２次産業 42.0% 25.9% 44.7% 52.6% 48.0% 44.1% 70.9%

鉱業 7.8% 0.3% 0.7% 1.4% 2.6% 4.3% 14.1% 製造業 23.1% 13.1% 31.2% 42.2% 34.5% 29.7% 36.9%

石炭、原油、ガス精製 0.9% 0.0% 0.1% 1.4% 3.9% 0.1% 0.0% 食品・飲料 6.8% 1.0% 3.3% 4.7% 12.6% 9.8% 0.7% タバコ 1.9% 0.0% 0.0% 0.2% 7.7% 8.0% 0.2% 繊維、衣料 1.5% 0.8% 3.6% 6.6% 2.8% 0.4% 0.8% 革製品、履物 0.3% 0.0% 2.6% 0.6% 0.4% 0.4% 0.1% 木材・木製品 0.6% 0.0% 0.1% 0.3% 2.1% 1.5% 0.4% 紙・印刷 0.8% 0.5% 3.0% 1.0% 0.3% 1.4% 0.3% 化学・医薬品 1.5% 1.5% 6.7% 2.3% 2.1% 2.2% 0.3% ゴム・プラスチック 0.7% 0.2% 0.8% 1.2% 0.4% 1.0% 1.5% 非鉄金属 0.7% 0.1% 1.0% 0.7% 0.7% 1.2% 0.1% 鉄鋼、同製品 0.8% 0.3% 2.7% 1.2% 0.3% 1.2% 4.1% 金属製品、電気、光学製造 2.1% 0.9% 5.3% 8.9% 0.4% 1.1% 20.9% 一般機械 0.7% 0.0% 0.3% 4.3% 0.1% 0.1% 2.3% 輸送機械 2.5% 7.4% 1.0% 8.1% 0.2% 0.3% 2.3% 家具 0.3% 0.2% 0.1% 0.2% 0.4% 0.8% 1.0% その他製造業 0.2% 0.2% 0.4% 0.4% 0.1% 0.2% 1.9%

公益業 0.4% 0.4% 2.2% 0.6% 0.2% 0.4% 1.2% 建設業 10.7% 12.1% 10.6% 8.4% 10.7% 9.7% 18.7%

第３次産業 45.5% 74.0% 49.5% 38.7% 38.0% 44.0% 25.8% 卸売・小売業 14.2% 16.9% 12.5% 14.9% 13.5% 18.2% 8.9% 運輸・倉庫業 4.6% 3.6% 11.1% 5.7% 3.1% 3.4% 3.1% ホテル・飲食業 3.4% 4.8% 2.4% 2.8% 3.1% 5.8% 2.3% 情報・通信業 4.1% 7.9% 3.5% 2.9% 3.5% 4.5% 2.0% 金融業 4.0% 10.3% 3.1% 2.8% 3.0% 2.7% 2.7% 不動産業 3.0% 6.1% 7.6% 1.1% 1.7% 1.6% 1.4% 専門サービス業 1.9% 8.3% 1.1% 0.4% 0.4% 0.8% 0.0% 公共サービス業 4.0% 5.5% 2.0% 2.4% 2.8% 2.3% 2.6% 教育サービス業 3.5% 5.1% 3.4% 3.0% 4.5% 2.6% 1.5% 医療・社会福祉活動 1.1% 1.7% 1.2% 0.8% 0.9% 0.6% 0.9% その他サービス業 1.8% 3.9% 1.6% 2.1% 1.6% 1.4% 0.5%

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Sumikin」（KNSS）が営業運転を開始（設立は 2012 年 12 月）する等、日系大手鉄鋼メーカーの進

出もみられる。

ジャカルタにも近い立地から、近年は日系小売業や外食産業も進出している。2015 年 4 月には

唐揚げ専門店「金のとりから」がスーパーモールカラワチ内にオープンし、同年 5 月には南タン

ゲラン市にイオンモール BSD CITY 店が開業した。タンゲランはジャカルタのベッドタウンとし

ての開発が進められており、ジャカルタへのアクセスの良い高速道路や鉄道の駅もあるため、

ジャカルタから移り住む人が多く、ポテンシャルの高い商圏として注目されている。

尚、観光を主要産業とする経済特区（SEZ）であるタンジュン・レスン SEZ がバンテン州内に

立地している。

バンデン州のインフラ・物流、労働事情、生活環境については以下の通りである。

③インフラ・物流

【道路】

ジャカルタの郊外に位置するバンテン州でも、人口の増加に比して交通インフラの整備が立ち

遅れているため交通渋滞が発生している。このような中、2014 年 12 月には日本高速道路インタ

ーナショナル（NEXCO 東日本、NEXCO 中日本、NEXCO 西日本、首都高速、阪神高速の 5 社の

出資により設立）が日本の高速道路会社として初めて現地企業との合弁で道路事業に参入するな

ど、日系企業の協力の下、道路インフラ整備が進められている。

【空港・港湾】

バンテン州には、国内最大の国際空港であるスカルノ・ハッタ国際空港（詳細は「第 20 章 物流・インフラ」参照）や、年間 960 万トンの貨物取扱能力を持つチワンダン港があり、主要イン

フラへのアクセスが良い。インドネシア最大のタンジュンプリオク港は、タンゲランから約 30kmの距離にある。

【電力】

電力供給は安定してきてはいるが、他の地域と同様、時により電力不足が起こることがある。

2019 年 8 月には、バンテン州を含め、ジャカルタ特別州、西ジャワ州など広範囲にわたる大規模

な停電が発生した。主要発電所の設備の故障に他施設でのトラブルが重なって発生したとされ、1日で復旧したが、一部日系企業に影響が出た模様である。

2015 年 9 月、住友商事は、米国のエンジニアリング企業（Black & Veatch International Company）と地場の土木企業（PT. Satyamitra Surya Perkasa）とコンソーシアムを組成し、インドネシア電力

公社より同州でのロンタール拡張超臨界石炭火力発電所の土木据付込み一括請負工事契約を受注

し、建設が進められている。

インドネシアの投資環境

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④労働事情

【人材】

バンテン州の人口は 1,269 万人（国全体の約 5％）で、うち労働力人口は 928 万人である。失業

率は 8.5％（2018 年）で、34 州で最も高い水準にあり、人材不足の問題はそれほどないと考えら

れる。

【賃金】

バンテン州の 2019 年の最低賃金は 227 万ルピア（約 17,600 円）と、近接するジャカルタ特別

州の 394 万ルピア（約 30,500 円）の 6 割弱の水準であり、全般的にみれば、大都市からの距離の

割に人件費は低い。しかし、ジャカルタの西約 20km に立地するタンゲラン県の最低賃金は 384万ルピア（約 29,700 円）と、ジャカルタ特別州との差が殆どないほど高い水準となっている。

⑤生活環境

【一般】

バンテン州の最大都市であり、インドネシアの都市圏を構成するタンゲラン市には基本的な交

通インフラや商業施設が揃っている。鉄道（ジャカルタコタ路線）によって、タンゲラン駅とジ

ャカルタコタ駅が結ばれており、ジャカルタに乗り換えなしで通勤・通学が可能となっている。

また、インドネシア 1 号店となるイオンモールが南タンゲラン市のブミ・スルボン・ダマイ（BSD）

シティ内に開業している。欧州の大手パーソナルケア・メーカーのユニリーバは、イオンモール

BSD CITY近くの敷地にインドネシア拠点の本社ビルを構え、オフィス賃貸業に新規参入する等、

ジャカルタ中心部から郊外へのオフィス移転の動きも進んでいる。この他、海外の小売企業では、

スウェーデンの家具チェーン「IKEA」がタンゲランに 1 号店を 2014 年にオープンしている。

オフィスや商業施設だけでなく、マンションや戸建て等の不動産の供給も増えている。2017 年

7 月、東急不動産は三菱商事との分譲マンション事業「BRANZ BSD」を上棟し、2018 年に第 1期事業「藍」（1,256 戸）が完成した。

また、2019 年 11 月、阪急阪神不動産がバンテン州タンゲラン県チサウ郡でタウンハウス約 1,120戸、ショップハウス約 80 戸のタウンハウス分譲事業プロジェクトを開始すると発表した。当該プ

ロジェクトは、地場の不動デベロッパーであるヌアンサ・ヒジャウ・レスタリ（PT. Nuansa Hijau Lestari）と共同で行い、販売価格が 6 億ルピア（約 500 万円）以下の住戸を中心に、ボリューム

ゾーンである実需層をターゲットとしている。プロジェクトは 2021 年 12 月以降、順次竣工する

予定である。

第 26 章 地域編②：バンテン州

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【食事】

南タンゲラン市のイオンモール内には約 140 店舗が入居するフードコートがあり、ラーメンや

寿司、焼き鳥など、和食を提供する店舗も存在する。2019 年 11 月時点の同店ウェブサイトに拠

ると、肉料理では「牛角」、「ペッパーランチ」、「しゃぶしゃぶ温野菜」、「すき家」、「吉野家」、和

食の「海宝丸」、「うちの食堂」、ラーメンの「麺屋桜」、「火山ラーメン」、パスタの「ポポラマー

マ」等が入居している。また、日本酒や焼酎も販売されており、試飲も可能となっている。

イオンモールの外観 フードコート内のラーメン専門店

【教育】

インドネシア最大の日本人学校である「ジャカルタ日本人学校」は、ジャカルタではなく南タ

ンゲラン市内にある。1969 年開校で、幼稚部・小学部・中学部を合わせ 38 クラス、1,052 人の生

徒が在籍している。同校はスクールバスでの送迎サービスを提供している。

【治安】

分離独立運動の活発なパプア等と比べ、バンデン州の政情不安リスクは比較的小さいが、注意

は必要である。2016 年 12 月には、南タンゲラン市の住宅でイスラム過激派組織に所属する男性 3人が自爆テロを計画したとして、警官隊に射殺される事件が起こっている。

外務省の「インドネシアの危険情報」では、2019 年 11 月 8 日時点、バンテン州に対する個別

の危険情報は発出されていない。ただし、インドネシアの各地で大小様々なデモが行われており、

場合により暴動に発展することがあることから「危険度レベル１：十分注意してください」が継

続的に発出されている。

インドネシアの投資環境

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主要工業団地

バンテン州に立地する主要工業団地を以下の表にまとめた。

No. 工業団地名 Address（県/市）総開発面積

（ha）

1 Adhibalaraja Ktr Pemasaran, Jl Raya Serang Km 27 70 RT003/03, Balaraja, Tangerang 15610 Banten 300

2 Benua Permai Lestari Tangerang 130

3 Berlian Sarana Utama Serang 100

4 Buana Eka Ganda Serang 250

5 Bumi Cahaya Mandiri Serang 100

6 Cahaya Bajatama Indonesia Jl Raya Serang Km 70, Serang, Banten 250

7 CCM Balaraja Industrial Estate Tangerang 300

8 Cidurian Sarananiaga Permai Tangerang 105

9 Cipta Perintis Mandiri Serang 200

10 Eterindo Wahanatama Serang 25

11 Grahapermai Raharja Tangerang 76

12 Intibangun Adi Pratama Serang 250

13 Intisarana Pertiwi Putra Serang 200

14 Jababeka Industrial Estate Cilegon Menara Batavia Lt.25 Jl. K. H. mas MansyurKav. 126, Jakarta 10220 (Developer) 1,000

15 Kartawi Adyaland Serang 150

第 26 章 地域編②：バンテン州

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No. 工業団地名 Address（県/市）総開発面積

（ha）

16 Kawasan Industri & PergudanganCikupamas

Jl. Cikupamas Raya No. 8 Kawasan Industri &Pergudangan Cikupamas Cikupa, Tangerang15710

250

17 Kawasan Industri Terpadu MGM Cikande Jl. Pinangsia Timur No.4H - Jakarta 11110 662

18 Krakatau Bandar Samudra Serang 25

19 Krakatau Industrial Estate Cilegon(Karakatau Industrial Estate)

Wisma Krakatau Jl. KH Yasin Beji No.6 -Cilegon 42435 705

20 Langgeng Sahabat Industrial Estate Jl Raya Serang Km 65, Cikande, Serang42186 Banten 500

21 Margasari Kalimas Serang 200

22 Millennium Industrial Estate Kawasan Millennium Industrial Estate, Jalanraya Pemda Tigaraksa Tangerang 274

23 Mitra Indotextile Tangerang 150

24 Modern Industrial Estate(ModernCikande Industrial Estate)

Jl. Raya Jakarta-Serang Km. 68 Cikande,Serang 42186 Banten 2,175

25 Nikomas Gemilang Industrial Estate Jl Raya Serang Km 7, Kibin, Serang 42185Banten 165

26 Pancapuri Indoperkasa Serang 500

27 Pancatama Gotong Royong Serang 100

28 Pentabinangun Sejahtera Tangerang 150

29 Purati Kencana Alam Tangerang 70

30 Putra Daya Perkasa (Pasar KemisIndustrial Estate) Tangerang 74

31 Samada Perdana Serang 150

32 Sinar Serpong Subur Tangerang 150

33 Soewarna Integrated Business Park Soewarna Business Park, Soekarno HattaInternational Airport, Jakarta 19110 102

インドネシアの投資環境

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No. 工業団地名 Address（県/市）総開発面積

（ha）

34 Sri Agung Utama Raya Serang 250

35 Surya Karya Luhur & Elang Mas Tangerang 250

36 Taman Tekno BSD City Jl. Raya Serpong - Tangerang 15322 200

37 Tejopratama Mandiri Gemilang Tangerang 170