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ウシ未成熟卵子のBrilliant cresyl blu(BCB)染色性による高 品質卵子の選別技術 誌名 誌名 福井県畜産試験場研究報告 ISSN ISSN 03893537 著者 著者 谷村, 英俊 田中, 健 笹木, 教隆 巻/号 巻/号 21号 掲載ページ 掲載ページ p. 11-15 発行年月 発行年月 2008年3月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

ウシ未成熟卵子のBrilliant cresyl blu(BCB)染色性による高 ...ウシ未成熟卵子のBrilliant cresyl blue (BCB) 染色伎による高品質卵子の選別技術 ンクA461個、

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  • ウシ未成熟卵子のBrilliant cresyl blu(BCB)染色性による高品質卵子の選別技術

    誌名誌名 福井県畜産試験場研究報告

    ISSNISSN 03893537

    著者著者谷村, 英俊田中, 健笹木, 教隆

    巻/号巻/号 21号

    掲載ページ掲載ページ p. 11-15

    発行年月発行年月 2008年3月

    農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

  • 福井県畜産試験場研究報告第 21号(2008)

    ウシ未成熟卵子の Brilliantcresyl blu(BCB)染色性による

    高品質卵子の選別技術

    谷村英俊・田中健・笹木教隆

    Selection ofHigh quality Oocytes by Brilliant Cresyl Blue (BCB) Staining

    before in viか'0Maturation

    Hidetoshi TANIMURA, Ken TANAK.A and Kiyotaka SASAKI

    要約

    品質の良い体外受精匹を得る手法を確立するために、未成熟卵子を形態的に A........Oに

    ランク分けし、 Brilliantcresyl blue (以下 rBCBJ と略す)で染色した。その後、染色性

    により 3段階 (BCB++、+、ー)に選別し、成熟培養後に体外受精を行い、任発生率

    を調査した。その結果、未成熟卵子の形態別 BCB染色率は、形態ランク Aでは BCB(+

    +)が最も高く、ランクが低下するとともに BCB(ー)が増加し、形態ランクA、Bで

    あっても、 BCB(一)の未成熟卵子が約 10%存在した。BCBランクと脹発生率の関係

    は、 BCB(++) : 40.5%、(+): 34.3%、(ー): 0%であった。染色ランクと未成熟卵

    子の形態ランク別の匪発生率は、 BCB(++)でA : 45.3%、B: 36.3%であった。し

    かし、 BCB(一)は、形態ランク A、Bであっても発生しなかった。

    以上のことから、未成熟卵子を形態ランクで区別する場合、 BCB染色を併用すること

    により、効率的に体外受精脹を作出できることが明らかになった。

    I 緒 ドヰ

    品質の良い体外受精匪を作出するためには、

    活力ある精子と優良な卵子が必要である。一般

    的に、体外受精匪の作出方法については、未成

    熟卵子を形態学的に判断・区別して、成熟培養

    後に体外受精を行う場合が多い。しかし、形態

    学的な判定による卵子の選別だけでは、高い発

    生率を得られていない。

    そこで、形態ランク以外に、卵子のグルコー

    ス6リン酸脱水素酵素を指標に染色される

    Brilliant cresyl blue (BCB)を用いて未成熟卵子

    を染色し、成熟培養後に体外受精を実施し、脹

    発生率向上の可能性について調査をおこなった。

    -11 -

    E 材料および方法

    1.供試卵および未成熟卵子の形態別区分

    食肉センター由来の卵巣から吸引した未成熟

    卵子を用い、家畜改良センター技術マニュアル

    1 )に準じて、卵正細胞が 3層以上または透明帯

    周囲全体に付着しているものをAランク、卵E

    細胞が 2層以上または透明帯周囲に 1β 以上付

    着しているものをBランク、完全な裸化卵子を

    Cランク、卵丘細胞が膨化しているか蜘昧の巣

    状に変性しているものをDランクに区別し、ラ

  • ウシ未成熟卵子の Brilliantcresyl blue (BCB)染色伎による高品質卵子の選別技術

    ンク A461個、 B369個、 C127個、 D97個の計

    1,054個を供試した。 5.統計学的分析

    未成熟卵子の形態別 BCB染色率、 BCB染色

    別の発生率および形態ランクと染色性別の発生

    率の有意差の検定はが検定で行った。

    1.未成熟卵子の形態別 BCB染色率

    形態ランク別の BCB(+ +)の未成熟卵子の

    割合は、 Aランク:60.3%、 Bランク:57.5%、

    Cランク:9.4%およびDランク :4.l%であり、

    BCB染色率は、形態ランクが低い未成熟卵子に

    比べ、ランクの高い未成熟卵子のほうが高かっ

    た。(P

  • 未成熟卵子の形態ランクが良いほど発生率が高

    く、染色ランクおよび形態ランクが低くなるに

    したがい発生率も低下した。さらに、形態ラン

    クが良くても染色されなかった未成熟卵子は、

    全く発生しなかった。

    未成熟卵子の BCB染色と匹発生率の関係に

    ついては、卵子および匪におけるグルコース代

    謝に大きく影響されていることが推察される。

    初期怪のグルコースの代謝は、ベントースリン

    酸経路 (PP P)が主である。染色の指標とな

    るG・6・PDHは、このPPPの重要な位置を

    占める酵素であり、 G・6・PDH活性の低下は

    PPP活性の増加を、逆に増加は、 PPP活性

    の低下を意味している。牛・豚の成熟した卵母

    細胞と初期匹については、 G・6-PDHの活性

    を組織化学的に検出した報告もありに 8)、これ

    らによると、 G-6・PDH活性は、成熟した卵

    母細胞と媒精後の受精卵で強く 8細胞期まで持

    続され、牛では桑実匹、豚では拡張匪盤胞で完

    全に消失するとされている。

    これらのことから、今回、未成熟卵子の形態

    が良好であっても染色されなかった原因として、

    PPPが活性化していたためではなし、かと考え

    られる。そのため、 BCB染色を実施し、形態ラ

    ンクが良好であるにもかかわらず、染色ランク

    が低かった未成熟卵子は、このPPP活性が低

    下するまで成熟時間を延長することにより、さ

    らに数多くの高品質な卵子および発生匪を得る

    ことができる可能性も示唆される。

    今後は、 BCB染色性が左右される要因・メカ

    ニズムを卵子および脹の細胞数、呼吸活性等か

    ら究明するとともに、発生脹を移植し受胎性等

    の検討も必要であると思われる。

    福井県奇麗試験場研究報告第 21号。008)

    3.染色ランクと形態ランク別の発生率

    形態ランク Aにおける未成熟卵子の発生率

    は、 BCB(+ +) : 45.3%、 BCB(+) : 40.4%、

    形態ランク Bにおける未成熟卵子の発生率は、

    BCB (++) : 36.3%、BCB(+) : 32.5 %、形

    態ランク Cにおける未成熟卵子の発生率は、

    BCB (++) : 16.7%、BCB(+) : 7.1%、形

    態ランク Dでは BCBで染色されず、発生もし

    なかった。また、 BCBで染色されていても形

    態ランクが悪いものは発生率が低く、さらに

    染色されない未成熟卵子は形態ランクに関わ

    りなく全て発生しなかった。

    (%) 表3 染色性と形態ランクjJlJの発生率

    染色ランク

    1 )小林修司.ウシ生体卵子吸引・体外受精技術

    マニュアル.家畜改良センター技術マニュア

    ノレ 19: 8. 2007

    2 ) Marc Pujol. et al. Developmenta1 competence of

    heifer oocytes selected using the brilliant cresyl

    blue (BCB)test. Theriogenology,61 :735........744.

    2004

    参考文献

    -13 -

    o (01101)

    (0/86)

    o (0/47)

    o (0/34)

    今回、未成熟卵子の選別に用いた BCB染色技

    術は、体細胞クローン技術の中でレシピエント

    卵子を選抜する方法のひとつである 4)。 この染

    色は、卵子のグルコース 6リン酸脱水素酵素(G

    ・6-P DH) を指標に染色される BCB2、5、 6)

    を用いて行なう方法であり、今回は形態学的に

    区別した未成熟卵子に対して染色を行い、体外

    受精匪の発生率を比較検討した。

    その結果、成熟培養前の BCB(+ +)の染色率は卵子ランク A-Bがそれぞれ 60.3%、 57.5%

    とC・Dランクの 9.4%、 4.1%に比べ高く、 BCB

    (+ )の染色率も同様な傾向であった。しかし、ランク A ・Bであっても、BCB(一)の未成熟

    卵子が 10%程度存在した。また、この傾向は発

    生率においても同様であり、染色ランクが高く、

    。事発生率(発生数/形態ランク毎の染色数)

    40.4 (55/136)

    32.5 (40/123)

    (1114)

    (017)

    +

    7.1

    O

    36.3 (77/212)

    (2/12)

    (0/4)

    ++

    ( 126/278)

    N

    45.3-

    16.7

    A

    B

    C

    D

    卵子ランク

  • ウシ未成熟卵子の Brilliantαesylblue (BCB)染色性による高品質卵子の選別技術

    3)塩谷康生体外受精(媒精)家畜人工授精

    講習会テキスト(家畜体外受精卵移植編),3

    版:96・107.2001

    4)常川久三.Brilliantcresyl blueによるウシ未成

    熟卵子の染色性の違いが核移植脹の発生に及

    ぼす影響.石川県畜産総合センター研究報告

    39 : 16........18. 2006

    5) B.M.Manjunatha. et al.Sel回 tionof Develop

    -mentally competent buffalo oocytes by brilliant

    cresyl blue staining before IVM. Theriogeno・

    logy,68: 1299........1304.2007

    6) Pimprapar Wongsrikeao.et al.Effect of single

    -14-

    and double exposure to brilliant cresyl blue on

    the selection of porcine oocytes for in vitro

    production of embryos.Theriogenology,66:366 ........

    372.2006

    7)新村末雄ブ、タの卵母細胞と初期匹における

    グルコース-6ーリン酸脱水素酵素の組織科

    学的研究新潟大学農学部研究報告 58:39........43.

    2005

    8) Iwasaki S.et al.Developmental change and sex

    difference in glucose-6・phospatedehydrogenase

    activity of bovine oocytes and embryos fertilized

    in vitro.Jpn.J.Anim.Reprod,35:198........203.1989

  • 福井県畜産試験場研究報告第 21号(2008)

    Selection ofHigh quality Oocytes by Brilliant Cresyl Blue (BCB) Staining

    before in vifl・'0Maturation

    Hidetoshi TANIMURA , Ken TANAKA and Kiyotaka SASAK.I

    Summrary

    We deleted bovine oocytes for a rank in A -D morphologically to get an in vi位o fertilization(IVF) embryo of

    good quality and dyed it in Brilliant cresyl blue(BCB). We sorted it to t胎関 phase(BCB++,+,一)by stainability

    and performed IVF after maturity c叫加reand investigated an embryo incidence afterwards. As a result, BCB (++)

    was the highest in the BCB dyeing rate ac∞rding to the form of the 00句制 inform rank A. In ad似 00,a form rank deteriorated,組dBCB(一)increased. Furthermore, there were about 10% ooc向 sofBCB (一)閃nifaform

    rank was A,B The re凶 onof BCB rank and the embryo incidence are BCB (++):40.5%, (+):34.3%, (一):itwas

    0%. The embryo incideoce accordiog加 adyeiog rank and血eform rank of the∞cy陶 isA in BCB (++):45.3%, B:it was 36.3%. However, it did oot∞:cur eveo if BCB(一)was form rank A,B. Based upoo the foregoiog, it developed白紙 itcut an IVF embryo in a ∞m加 ctiooin組 overhangiogstyle effectively by usiog BCB dyeing together wheo distioguished 0∞ytes with a form rank.

    -15 -