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6-1
「燃料電池」 メンバー:百々葉子/大久保沙樹/奥原真由/中西美幸 担当教諭:久保田宏 Ⅰ研究の動機 私たちは先輩方の昨年の研究発表によって燃料電池というテーマに興味を惹かれたため、燃料電池を
今回の研究題材に選んだ。近年化石燃料の過利用による環境問題をはじめ、様々な環境問題が発覚して
いる。そのために、現代の人々は化石燃料に変わる代替エネルギーを求めている。そんな中、バイオマ
スエネルギーなどの新型エネルギーの中でも、注目されている燃料電池については深く理解しておくべ
きであると思った。 また、研究の中で、科学的思考(疑問に対して知識を増やし、その知識・事実・データを基に筋道を
立てて考え結論を導くこと)を身につけ今後に生かしていきたいと思う。 Ⅱ研究内容 (1)代表的な電池 ①ダニエル電池 ・基本となる化学反応
「亜鉛版と希硫酸」………Zn+2H+ → H2+Zn2+
Zn は H2よりもイオンになりやすい
「銅と希硫酸」………Cu+2H+→銅イオンにならない ∴イオン化傾向:Zn>H2>Cu Cu は H2よりもイオンになりにくい
これらの性質を組み合わせた電池 電極での反応:(負極)Zn → Zn2+ + 2e-
(正極)Cu2+ +2e- → Cu (全体) Zn + Cu2+ → Cu + Zn2+
電池の式:(-)Zn | H2SO4 aq | Cu(+)
∴電池は、2種の異なるイオン化傾向を持つ金属を用いたときに機能する。 (イオン化傾向の差を利用しているため) ②備長炭電池(空気電池)
6-2
電池の式:(-)Al | NaCl aq | O2(+) 電極での反応:(負極)Al→Al3++3e- (正極) 1/2O2 + H2O + 2e- → 2OH- 本質は 1/2O2 + 2e- → O2- → 2OH-
O2- は周りにあるH2Oと反応してしまう
電流が流れるとアルミ箔に小さな穴が沢山空いた。
[右の写真参照] これは、アルミ箔を構成していた原子が、イオン
になってしまったためである。
(2)燃料電池
① 燃料電池の仕組み 燃料電池とは、「水素」と「酸素」を化学反応させて、直接「電気」を発電する装置である。燃
料電池は、「水の電気分解」と逆の原理で発電する。 ・水の電気分解
水の電気分解といっても、純水は非常に電気を通しにくい為、実験では通常、水に水酸化ナトリ
ウムなどを加えて行う。この電気を通すために水に加えるものを電解質と言う。 水の電気分解で電流が流れるということは、電池のマイナス側から電子が流れ出しているという
ことだが、この電子が水に浸した電極(陰極)で水と反応して水素が発生する。〔下式参照〕
2H2O + 2e- → H2 + 2OH-
もう一方の電極(陽極)では下式のような反応がおき、水と酸素と電子が発生し、発生した電子
は陽極に渡され、電線を通って電池のプラス極へ流れる。
6-3
2OH- → H2O + 1/2O2 + 2e-
これら2つの反応式を足し合わせたものが水の電気分解を表す反応式で、左右の辺の同じものが
消えて、下式のように水から水素と酸素ができる。 H2O → H2 + 1/2O2 ・燃料電池の仕組み 燃料電池の負極では、たまっている水素と水酸化物イオンが次のように反応し、電子が発生し
電線中を流れ、豆電球を点灯させる。
H2 + 2OH- → 2H2O + 2e-
正極では、水と酸素が電子をもらって反応し水酸化物イオンができる。
H2O + 1/2O2 + 2e- → 2OH-
つまり、正極で発生した水酸化物イオン(OH-)が電解質中を移動し、負極で水素と反応して電
子を発生させている。この電子が電線、豆電球を通って正極に流れ、豆電球を点けることができ
るのだ。これらの化学式が先ほどの水の電気分解の化学式の矢印を逆にしたものになっているの
で「燃料電池は水の電気分解の逆」と表現される。 ここで紹介したのはアルカリ型といわれる燃料電池の発電原理である。近年、家庭用・自動車
用と実用化が進み注目を浴びている固体分子型と呼ばれる燃料電池では、このアルカリ型での水
酸化物イオンの代わりに水素イオンが電極間を移動する。
2H2 → 4H++4e- ……負極 4H+ +O2+4e- → 2H2O ……正極 2H2 + O2 → 2H2O
いずれにせよ発生するものは、水と熱だけである。
電池にはそもそも「化学的な反応などによって電流を発生させる装置」という意味があり、燃料
電池も乾電池や蓄電池(バッテリー)と同様に電池内部の化学反応により電流を発生させている。で
6-4
は、一般に考えられる電池と燃料電池は何が違うのかと言うと、一般の電池は内部にある物質が化
学反応を起こす仕組みになっているのに対し、燃料電池は化学反応を起こす物質を外から供給でき
る仕組みになっている。つまり燃料電池は燃料になる物質を供給し続けさえすれば継続して電流を
得られるので「電池」と言うよりは、むしろ一種の発電装置と言える。 ② 燃料電池の利点 ・硫黄酸化物や窒素酸化物などの有害物質の発生が非常に低くクリーンである。 ・従来の発電方式(ガスエンジン)に比べ、発電効率が非常に高い。 ・各施設に設置可能であるため、電力会社からの送電ロスがほとんどない。 ・電気を発生する時にでる熱も利用(コ・ジェネレーション)できるので総合効率が非常に高い(総合
効率が 80%程度) ※蓄電池…充電を行うことにより電気を蓄えて電池として使用できるようになり、繰り返し使用す
ることが出来る化学電池のこと。 ※硫黄酸化物…硫黄の酸化物の総称。 ※窒素酸化物…窒素の酸化物の総称。 ※コ・ジェネレーション…電気を発生するときの排熱を利用して動力・温熱・冷熱を
取り出し、総合エネルギーを高める。
(3)燃料電池の種類と特徴
ひとくちに燃料電池といっても、機種によって用途や特徴は様々あり、現在は5種の機種が開発さ
れている。
アルカリ型
AFC
リン酸型
PAFC
固体高分子型
PEFC(PEM)
溶融炭酸塩型
MCFC
固体電解質型
SOFC
電解質 水酸化カリウム リン酸 高分子膜 溶融炭酸塩 安定化ジルコニア
作動温度 100℃以下 約 200℃ 100℃以下 約 650℃ 約 1,000℃
燃料 高純度水素 水素 水素 水素 水素
発電効率 60% 35~45%以下 40%以下 45~55% 50%以上
用途 宇宙、深海 コージェネ発
電(バス)
分散電源
自動車
コージェネ発電
(大規模)
コージェネ発電(中
規模)
(4)昨年の研究 ・研究内容
燃料電池の実験キットを利用して実験を行った。電気分解により生じた H2と O2を利用する方法
と市販の H2と O2を外部から供給する方法で実験を行った。その中でいくつか実験条件を変えて起
電力やプロペラの回転時間の差を測定し、性能の良い燃料電池の条件を探求した。
・結果 〔市販のH2とO2を使用した実験結果〕
・注入する気体の量を変えても起電力に差はなかった。気体の量は反応に関係ない。
6-5
〔電気分解によって得られたH2とO2を使用した実験結果〕
・一度電極に水素を吸着してしまえば、電極の周りを覆っている水素はプロペラの回転時間にあま
り関係ない。 ・ 濃度が大きくなるにつれて水素と酸素の発生する速さ、プロペラの回転時間、回転速度が大き
くなる。 ・電極が電解質に接する面積がより大きくなると、プロペラの回転時間は長い。 ・電極、電解液、気体の3つが互いに接することが燃料電池を作る上で重要である。 〔市販、電気分解双方のH2とO2を利用した実験結果〕
・電極にパラジウムメッキをすることで、起電力は一定値まであがり、プロペラもメッキをしない
時より長時間回る。 ・電極のパラジウムが触媒作用の他に水素を蓄える働きがあるため、電気分解後に蓄えられた電極
内の水素も反応している。
(5)今回の研究 昨年の研究を受け、私達は主に外部から気体を注入した電池を用いて何が電池の性能に関係する
のかに興味を持ち、以下のような様々な実験を行った。
①製作した燃料電池の起電力の測定 ②溶液の濃度と起電力の関係 ③溶液の種類と起電力の関係 ④電気分解によって得られたH2 とO2 を用いる場合の起電力
⑤気体量とモーターの回転時間の関係 ⑥電極のメッキ時間および金網の粗さと起電力の関係 ⑦溶液中に溶けている気体のみを用いた場合の起電力 ⑧溶液に接している電極の面積と起電力の関係
Ⅲ実験内容 ①製作した燃料電池の起電力の測定
A 実験方法 製作した電池が、正常に作動するか知るため、その性能
を調べた。
上記の電池によって生じた電池の電圧を測定した後プロ
ペラ(モーター)を回転させその時間を計測した。 ・実験のベースとなった電池の詳細 気体の量 H2:O2= 2:1
電極(金網) ステンレス金網(40 メッシュ)1巻き 電解溶液 濃度:1mol/ℓの NaOH aq
6-6
※気体の量を 2:1 にしたのは、水の電気分解から得られ る気体量の比に等しくしたからである。 ・実験装置
B 結果
・起電力の 0.96V は文献値に等しく、この電池が正しく機能していることが分かる。 ・一回目の計測では常に電圧が安定するまでにかかる時間が二回目以降に比べて長かった。 ・電圧が安定した後、モーター(プロペラ)を回転させてみたが、回転時間は接触不良のためか
法則性がなかった。 C 考察
・ 一回目に、二回目以降よりも電圧が安定するまでの時間が長くかかったのは H2 と O2 が溶液中
1回目 2回目 3回目 4回目 起電力(V) 0.96 0.96 0.96 0.96 安定(秒) 600 150 210 240
回転時間(秒) 21″09 19″75 19″95 22″05
時間に伴う電圧の変化
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
0300
600
900
1200
時間(秒)
電圧(V)
1回目
2回目
3回目
4回目
6-7
に溶けるまでの時間ではないかということが考えられる。
②溶液の濃度と起電力の関係 A 実験方法 溶液の濃度は起電力や電流に影響しているのかを調べるために、濃度が 0.5mol/l、1.0mol/l、
1.5mol/l、2.0mol/l の異なる NaOHaq を用いて電圧、電流を計測した。 B 結果
NaOH の濃度 0.5mol/l 1.0mol/l 1.5mol/l 2.0mol/l 起電力 0.90V 0.95V 0.95V 0.96V 電流の 低値 ――― 13.5mA ――― 14.5mA
また、それぞれ濃度の溶液を用いての時間に伴う電圧の推移をグラフ化、比較してみた。
C 考察
NaOHの濃度の違いによる起電力の差
0.7
0.75
0.8
0.85
0.9
0.95
1
0 60 120180
時間(秒)
電圧(V) 0.5mol/l
1.0mol/l
1.5mol/l
2.0mol/l
・ 濃度を変えても電池の起電力はほとんど変化しなかったが、濃度の変化の仕方に違いがあっ
た。濃度が大きいほど電圧が安定するまでの時間が短い。これはOH-が変化しやすくなるた
めだと思われる。
③溶液の種類と起電力の関係 A 実験方法 溶液の種類は起電力に関係しているのかを調べる為、1mol/ℓの濃度の NaOH と KOH で電圧の
測定を行った。 B 結果
NaOHaqとKOHaqの時間に伴う電圧の変化の比較
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0150300450600750900
時間(秒)
電圧(V)
NaOHaq
KOHaq
6-8
・KOH を用いた電池の起電力:0.98V ・KOH に変えても起電力はあまり上がらなかった。 ・上のグラフからは読み取ることが難しいが、電圧が安定するまでの時間が、NaOH にくらべて
かなり短かった。 C 考察 ・NaOHでもKOHでも起電力が変わらないことから、起電力の変化にはNa+やK+ではなくてOH-
が関わっていることがわかる。
④水の電気分解によって得られたH2 とO2 を用いる場合の起電力
A 実験方法 市販の H2 と O2 を用いた場合と、電気分解によって得られた H2 と O2 を用いた場合とではど
の様な違いが見られるか調べる為、以下の実験を行った。 5V の電圧で3分間電気分解を行う。溶液には 1mol/ℓの NaOH を用い、両極を溶液で満たした
まま行うと、負極には H2 が、正極には O2 が、2:1 の割合で生じる。
生じたそれぞれの気体をそのまま用いて得られる起電力を計測。次に、モーターが止まったらふた
たび電圧が安定するのを待って、起電力を測定し、モーターを回転させる。以上の操作を繰り返
す。 B 結果 回数 1回目 2回目 3回目 4回目
モーターの回転時間 9 分28秒 1分19秒 54秒 50秒 起電力(V) 1.4 0.9 0.9 0.9
・起電力は 1.4V と高かったが、二回目以降の実験では下がってしまった。 ・電圧の回復時間は 1 分30秒と一定であった。 ・電気分解によって生じた H2 と O2 では、モーターの回転時間が長かった。特に電気分解の直後
に行った測定では著しい。 C 考察 ・電気分解の後は気体が溶液中に沢山溶けていてそれが起電力や回転時間に関与しているのでは
ないかと思った。 ・メッキしたパラジウムが吸着する水素の量は、外部から気体を供給する場合に比べて電気分解
の直後は多量であるためにモーターの回転時間が長いのではないかと考えられる。
⑤気体の量とモーターの回転時間の関係 A 実験方法 気体の量が電池の性能とどのような関係があるのかを調べるために気体の量を変化させて起電
力を測定した。 H2と O2の比率は1:1で、気体の量を、2倍、3倍に変えて電圧と電流の変化を見る。
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B 結果 気体の量 20 ml 40 ml 60 ml 起電力(V) 0.91 0.94 0.96 大電流(mA) 16 17 16 小電流(mA) 11 16 12
回転時間(秒) 8 8 5
・起電力は少ししか上がらなかった。 ・溶液に接している面積が多いほど、モーターの回転時間が長い傾向がある。 C 考察 ・予想したとおり、気体の量はではなく、電極が溶液に接している部分の面積が起電力に影響し
ている。
⑥電極のメッキ時間と金網の粗さと起電力 A 実験方法 電極の状態は電池の性能に関与しているのか、また、しているとすればそれは電極の何が関与
しているのかを調べる為、メッキ時間、ステンレス金網の粗さを変えたものをそれぞれつくり、
それらを電極として用いた時の起電力の変化をみる。 B 結果
状態 メッキした メッキしない
金網の粗さ 細 粗 細 粗 起電力 0.95v 0.78v 0.02v 0.01v
※ステンレス金網の粗さは、細かいものに40メッシュ、粗いものに20メッシュを用いた。 (メッシュ……網の密度の単位。1インチ(2.54cm)の間にある網目の数) ・酸化還元触媒であるパラジウムがないと電圧が低い。 ・メッキ時間を 3 分と 15 分に変えてやってみたが起電力は変わらなかった。 C 考察 ・パラジウムでメッキすることで、起電力は大幅に変化するが、メッキ時間は起電力に影響しな
いことがわかった。 ・ステンレス金網が粗くなるにつれて電極の面積が狭くなり、それとともにパラジウムメッキし
た部分の面積も少なくなるので粗い方が起電力が落ちる。
⑦溶液中に溶けている気体のみを用いた場合の起電力 A 実験方法 これまでの実験から、燃料電池では溶液中に溶けている気体が反応しているのではないかとい
う仮説が立てられた。もしそうだとすれば、溶液中に気体が溶けている状態ならば見えている気
体がなくても装置は燃料電池として機能し続けるはずである。そのため NaOH に H2 と O2 をそ
れぞれ注入し、時間の経過における電圧の変化について計測した実験の後、気体として存在して
いた H2 と O2 を全て抜いてみた。
6-10
B 結果
・気体を抜いても電圧は維持され、モーターを 59.89 秒間回転させた。しかし、これを繰り返し
ていくと起電力の値が低下していった。また、回復にかかる時間も極端に長くなった。 C 考察 ・溶液中に溶けている H2 と O2 が化学変化していることがわかった。 ・より多くの H2 と O2 が溶液中に溶けていることが、電圧の回復時間の短縮につながるのではな
いか。 ・回転時間が長くなったのは、電極の金網に接している気体を抜いたために電極が溶液に接して
いる面積が大きくなったためではないかと考えられる。
⑧溶液に接している電極の面積と起電力の関係 A 実験方法 純粋に溶液に接している電極の面積のみによる変化を比較するためには、気体に接している電
極の面積を一定にして、溶液に接している電極の面積だけを変える必要があると考えた。その為
に、以下の二つの装置を用いて実験を行った。 装置1:電極の金網は1巻きで、気体量は H2 と O2 を1:1の割合で入れて電圧を計測し、電圧
が安定したら放電し、電流計を用いて電流の時間に伴う変化を計測する。 装置2:電極の金網は3巻きで、気体量は H2 と O2 を1:1の割合で且つ装置1の気体量の 1/
3倍で同様の操作を行う。 これら二つの結果を比較する。
気体を抜く前 抜いた後1回目 抜いた後2回目 起電力(V) 0.98 0.95 0.95
回転時間(秒) 60″ 59″89 40″
溶液に溶けている気体のみを用いた時の電流
15
16
17
18
19
20
21
0 10 20 30 40 50 60
時間(秒)
電流(mA)
一回目
二回目
溶液に溶けている気体のみを用いたときの電圧
0.1
1
0 10 20 30 40 50 60
時間(秒)
電圧
(V)
一回目
二回目
6-11
B 結果 モーターが止まるまでの電圧の変化
00.10.20.30.40.50.60.70.80.91
0 10 30 50 70 90 110
時間(秒)
電圧
(V)
1巻き
3巻き
モーターが止まるまでの電流の変化
10
12
14
16
18
20
0 10 30 50 70 90 110
時間(秒)
電流
(mA)
1巻き 3巻き
巻き数(巻) 1 3 回転時間(秒) 5 120
・1巻きに比べて3巻きでは起電力は変わらないものの、電圧・電流の値の低下がゆっくりであ
った。 ・別日に同様の実験を行ってみると巻き数や濃度に関して同条件であったにも関わらずモーター
は 55 分(=3300 秒)も回転を続けた。 C 考察 ・溶液に接している面積が大きいと、化学変化によって生じる電子が、消費される電子を補うこ
とができると考えられる。 ・別日に行った実験との間に生じた回転時間の差は、両日間の気温差が大きかったため、温度に
よる変化ではないかと考えられた。
Ⅳ結論 ・様々な条件の下で起電力は上がらなかったため、これはこの装置によって生じさせることの出来
る起電力の限界であったと考えられる。 ・化学変化は、溶液中に溶けた気体によって起こっている。よって、溶液中に溶けている気体の量
が多いほど、放電後の電圧回復時間を短縮できる。〔実験④⑦より〕 ・パラジウムは気体中でも溶液中でも H2 を吸着することができるが、負極での変化は反応式から
考えて溶液中でないと起こらない。化学変化で消費された H2 を随時吸着することが出来れば、よ
6-12
り長い時間モーターを回転させることができると考えられる。そのため電極が溶液に接している
面積が多いことがモーターの回転時間を長くすることに有効であると思われる。
Ⅴ感想と今後の課題
・電気分解で生じた気体を使うと起電力は上がったのはなぜか。 ・温度を変えると、燃料電池の性能はどう変化するか。 ・モーターの回転時間を長くすることに有効なのが“溶液に触れている金網の面積”なのか、“気体
と溶液、金網の三つが接している部分”なのかが分からなかった。〔実験⑤⑦より〕 ・NaOH に比べて KOH の方が反応が著しいため、実験には KOH の方が適していると感じた。今
回の研究では、初めから NaOH を使用していて、データが NaOH の方が多くあったので途中で溶
液を変更することはしなかったが、もっと早い段階で KOH に溶液を変更すれば良かった。 ・自作の燃料電池を用いた為か銅線の接触が悪く、モーターの回転時間を測定する際に不正確にな
ることがあった。 ・実験を終えてから、ここはこうすれば良かった、などの反省が多く出てきてしまったが、それを
次の実験からに生かしていけたのは良かったと思う。
Ⅵ参考文献 http://www.tokyo-gas.co.jp/company.html http://homepage2.nifty.com/KurokawaRika/index.htm#menu 鹿児島県総合教育センター 指導資料 理科 第 229 号 燃料電池(日本化学社/丸善) 燃料電池がわかる本(石井弘毅/オーム社) 燃料電池の電極触媒(荒又明子/北海道大学)