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日本膵臓学会会員各位 厚生労働省難治性膵疾患調査研究班は平成 20 年度および平成 21 年度研究事業 としまして、「膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン」の作成を行って参りまし た。作成には藤田保健衛生大学第二病院の乾和郎教授を中心にワーキンググル ープを立ち上げ、多くの討論を重ねて作成作業を進め、このたび最終案を提案 することになりました。本ガイドラインは日本膵臓学会との共同事業として機 関誌「膵臓」への掲載が予定されています。つきましては、会員の皆様には最 終案にお目通しいただき、本ガイドラインに関しまして忌憚のない御意見をお 寄せ頂きたく、お願い申し上げます。 宛先: 「厚生労働科学研究補助金 難治性疾患克服研究事業 難治性膵疾患に関する調査研究班」事務局 [email protected] 期日: 平成 21 年 7 月 6 日 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班 研究代表者: 東北大学大学院消化器病態学分野 下瀬川徹

日本膵臓学会会員各位suizou.org/200906guideline.pdf日本膵臓学会会員各位 厚生労働省難治性膵疾患調査研究班は平成20年度および平成21年度研究事業

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日本膵臓学会会員各位

厚生労働省難治性膵疾患調査研究班は平成 20 年度および平成 21 年度研究事業

としまして、「膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン」の作成を行って参りまし

た。作成には藤田保健衛生大学第二病院の乾和郎教授を中心にワーキンググル

ープを立ち上げ、多くの討論を重ねて作成作業を進め、このたび最終案を提案

することになりました。本ガイドラインは日本膵臓学会との共同事業として機

関誌「膵臓」への掲載が予定されています。つきましては、会員の皆様には最

終案にお目通しいただき、本ガイドラインに関しまして忌憚のない御意見をお

寄せ頂きたく、お願い申し上げます。

宛先:

「厚生労働科学研究補助金 難治性疾患克服研究事業

難治性膵疾患に関する調査研究班」事務局

[email protected]

期日:

平成 21 年 7 月 6 日

厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班

研究代表者:

東北大学大学院消化器病態学分野

下瀬川徹

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

-1-

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 1

2

作成委員 3

乾 和郎、入澤篤志、大原弘隆、廣岡芳樹、藤田直孝、宮川宏之、佐田尚宏 4

研究統括 5

下瀬川 徹 6

7

Ⅰ.疾患概念と病態 8

1.膵仮性嚢胞とは? (乾 和郎) 9

2.臨床症状は? (乾 和郎) 10

3.どんな合併症があるか? (入澤篤志) 11

4.自然治癒はあるか? (入澤篤志) 12

Ⅱ.診断 13

1.血液検査は有用か? (入澤篤志) 14

2.超音波検査は有用か? (入澤篤志) 15

3.CT 検査は有用か? (入澤篤志) 16

4.MRI・MRCP は有用か? (宮川宏之) 17

5.ERCP は有用か (宮川宏之) 18

6.EUS は有用か? (宮川宏之) 19

Ⅲ.治療 20

1.どのような症例を治療するか? (藤田直孝) 21

2.治療法にはどのような方法があるか?その選択は? (藤田直孝) 22

3.内視鏡的治療 23

A-1.経消化管的治療の適応は? (藤田直孝) 24

A-2.経消化管的治療の手技は? (廣岡芳樹) 25

A-3.経消化管的治療の成績は? (廣岡芳樹) 26

A-4.経消化管的治療の偶発症は? (廣岡芳樹) 27

A-5.経消化管的治療の予後は? (廣岡芳樹) 28

B-1.経乳頭的治療の適応は? (藤田直孝) 29

B-2.経乳頭的治療の手技は? (大原弘隆) 30

B-3.経乳頭的治療の成績は? (大原弘隆) 31

B-4.経乳頭的治療の偶発症は? (大原弘隆) 32

B-5.経乳頭的治療の予後は? (大原弘隆) 33

4.外科的治療 34

4-1.外科的治療の適応は? (藤田直孝・佐田尚宏) 35

4-2.外科的治療の手技は? (佐田尚宏) 36

4-3.外科的治療の成績は? (佐田尚宏) 37

4-4.外科的治療の偶発症は? (佐田尚宏) 38

4-5.外科的治療の予後は? (佐田尚宏) 39

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

-2-

Ⅰ.疾患概念と病態 1

1.膵仮性嚢胞とは? 2

3

膵嚢胞とは、膵内あるいは膵周囲に形成された中空の構造で、壁に囲まれた4

内腔に、膵液、粘液、血液などの内容物を容れたものをさすが、嚢胞壁内腔面5

に上皮細胞を認めないものを仮性嚢胞と呼ぶ。 6

7

解説 8

一般に、嚢胞壁内腔面の上皮細胞の存在の有無で真性嚢胞と仮性嚢胞に分類9

される。一方、病理組織学的には腫瘍性嚢胞と非腫瘍性嚢胞に分類される。腫10

瘍性嚢胞には漿液性嚢胞腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍、膵管内乳頭状粘液性腫瘍、な11

どが含まれ、非腫瘍性嚢胞には仮性嚢胞、先天性嚢胞、貯留嚢胞が含まれる。 12

仮性嚢胞は膵炎や外傷により膵管が破綻し、膵液や壊死物質が貯留して形成13

される。なお、膵液の貯留した仮性嚢胞と膵壊死が液状化した膵膿瘍とは臨床14

経過や治療への反応性が異なるという意見があるが、両者の区別が困難なこと15

もあり、ここでは広い意味で壊死物質を含むものも仮性嚢胞として取り扱うこ16

ととする。嚢胞壁は周囲組織から成り、厚さはさまざまで、単房または多房性17

を呈する。慢性膵炎に伴うものでは、びまん性主膵管拡張、分枝膵管拡張、膵18

石症などの所見を認めることが多い。 19

臨床的には自然史や治療方針が異なる、急性仮性嚢胞と慢性仮性嚢胞に分け20

られる 1)―3)。すなわち、急性仮性嚢胞(acute pseudocyst)は、急性膵炎に続発21

した仮性嚢胞で、急性膵炎の発症から 4 週以上を経過して形成されるものをい22

う。慢性仮性嚢胞(chronic pseudocyst)は、慢性膵炎に合併し、確実な壁をも23

ち、先行する急性膵炎発作を認めないものとされる。なお、慢性膵炎の急性増24

悪に続発する仮性嚢胞は、急性仮性嚢胞に含められることが多い 4)。 25

急性膵炎後に滲出液が貯留する頻度は約 40%で、最終的には約 10%で嚢胞が形26

成されるとの報告がある 5)。慢性膵炎における膵仮性嚢胞の頻度は 30%程度と報27

告されている 6),7)。慢性膵炎の成因別にみると、アルコール性慢性膵炎では非ア28

ルコール性慢性膵炎と比べて仮性嚢胞の合併率が有意に高いとされている 8)。 29

30

31

2.臨床症状は? 32

33

膵仮性嚢胞の症状としては、腹痛、悪心・嘔吐、腹部腫瘤、黄疸、体重減少、34

消化管出血などがあげられる。 35

36

解説 37

画像診断が今ほど普及していなかった頃には、腹痛などの症状がきっかけで38

膵仮性嚢胞と診断されることが多かった。しかしながら、現在では無症状で偶39

然に発見されることも多くなっている。 40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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仮性嚢胞の患者の 70-90%に腹痛がみられるとされている 9),10)。97 例の検討で1

は、腹痛 72%、悪心・嘔吐 38%、発熱 7%、腫瘤 6%、腹水 5%、黄疸 3%、体重減少2

3%、出血1%、偶然の発見 4%であったとの報告がある 11)。嚢胞が巨大であると、3

嚢胞による圧迫症状として、嘔吐(十二指腸)、黄疸(胆管)、急性膵炎(膵管)、4

イレウス(大腸)12)などがみられる。それ以外に、感染、破裂、門脈あるいは脾5

静脈の閉塞による門脈圧亢進症などの重篤な合併症 5)による症状がある。6

Hemosuccus pancreaticus は嚢胞内への出血により、主膵管を介して消化管出7

血を認める現象である。その症状としては、腹部腫瘤の急激な増大、腫瘤の血8

管雑音聴取、消化管出血、ヘマトクリット値の急激な低下、などが知られてい9

る 13)。 10

11

12

3.どんな合併症があるか? 13

14

膵仮性嚢胞の合併症には、感染、閉塞、破裂・穿通、出血がある。慢性膵炎15

急性増悪に合併する急性仮性嚢胞のほうが合併症をきたしやすく、大きさが 6cm16

を超える場合はその発生頻度が高くなる。 17

18

解説 19

慢性膵炎に伴う膵仮性嚢胞には、慢性膵炎急性増悪に続発して壊死組織や血20

液・滲出液などが線維性被膜で被包化されて形成されるものと、膵管狭窄や膵21

石などによる膵液うっ滞が嚢胞を形成するものがある 2),4)。この病態の違いによ22

り、合併症の発生頻度には差がみられ、慢性膵炎後急性増悪での仮性嚢胞は壁23

の脆弱性や周囲の炎症性変化により合併症を来しやすい 4)。 24

合併症の発生頻度は、慢性膵炎に限った数値は明らかではないが、経過観察25

例の 30-50%で重大な合併症が発生したとの報告がある 14),15)。また、その発生率26

は仮性嚢胞形成からの期間にも依存するとされる。特に急性仮性嚢胞において27

は、発生後 6 週間を超えた嚢胞では自然消退は期待できず合併症発生率も高い28

ことが報告 14)されている。一方、合併症発生は嚢胞の診断がついてから 5 週間29

以内であったという報告 16)もあり、合併症発生時期を一概には言えない。また、30

嚢胞形成期間とは特に関係なく嚢胞径が 6cm を超える場合には自然消退の可能31

性は低くなり合併症の発生が増えるとの報告 17)もある。 32

膵仮性嚢胞の合併症は大きく 4 つ、すなわち、感染、閉塞、破裂・穿通、出33

血に分類される。 34

1)感染:嚢胞内感染をきたすことがある。一般には慢性膵炎急性増悪後の35

仮性嚢胞に起こることが多い 17)。膵管狭窄などにより形成された慢性仮性嚢胞36

では感染をきたすことはまれである。 37

2)閉塞:嚢胞により消化管や胆道の閉塞を起こすことがある 18)。消化管閉38

塞としては一般的には胃・十二指腸が多いが、まれに下部消化管閉塞も起こす39

こともある 19)。胆道閉塞では黄疸を来す 20)。また、まれではあるが下大静脈の40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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狭窄を来し下腿浮腫の原因となる場合もある 21)。 1

3)破裂・穿通:腹腔内への破裂、消化管や周囲臓器(肝臓や脾臓)への穿2

通が報告されている 22),23)。嚢胞内の膵酵素により消化管壁の脆弱化を招き消化3

管に穿通する症例はまれではない。この場合は消化管に内瘻化されたこととな4

り結果的に治癒した症例も報告されている 24)。また、腹腔内や胸腔内への破裂5

により、膵性胸腹水をきたすことがある 25)。門脈への穿破 26)も報告されている。 6

4)出血:嚢胞内出血に関しては、嚢胞壁の血管破綻によるもの、または周7

囲への炎症波及による周囲動脈の破綻や嚢胞周囲に仮性動脈瘤が形成され嚢胞8

内へ穿破することで嚢胞出血をきたすものなどがあげられる 27)-29)。この仮性動9

脈瘤は、膵管や胆管、まれには腹腔内に出血をきたすこともある。また、嚢胞10

そのものが脾静脈を圧排閉塞させ左側門脈圧亢進症を来し消化管静脈瘤の原因11

となることがある 30)。 12

13

14

4.自然治癒はあるか? 15

16

慢性膵炎急性増悪に続発して形成される仮性嚢胞では嚢胞径が 6cm 以下であ17

れば自然治癒が期待できる。しかし、膵管狭窄や膵石などによる膵液うっ滞に18

よる仮性嚢胞では自然治癒はほぼ期待できない。 19

20

解説 21

一般的な膵仮性嚢胞の自然消退率は 4-60%と報告によって大きな幅がある22 14),17),31)32)。慢性膵炎に伴う膵仮性嚢胞には、慢性膵炎急性増悪に続発して形成23

されるものと、膵管狭窄や膵石などによる膵液うっ滞が嚢胞を形成するものが24

あるが、これまでの自然消退に関する報告は前者に対するものが多く、嚢胞形25

成からの期間および嚢胞の大きさから検討されている。 26

嚢胞発生から 6週間以内では 40%に自然消退が認められ合併症発生率も 20%程27

であったが、12 週を超えたものでは消退例はなく合併症発生率も 67%であった28

との報告 14)がある。長期間では嚢胞壁が成熟することが自然消退率の低下に関29

連しているとも考えられている 31),33)。一方、偶発症発生がなく長期間経過を見30

ることができた非手術症例での自然消退は 60%程度に見られたとの報告がある31 17),32)。これらの報告では嚢胞の径と合併症に関連した手術施行率を検討し、径32

6cm 以下の嚢胞であれば自然消退を期待して合併症発生に十分注意しながら経33

過観察が可能としている。他には、4cm 以下の嚢胞であれば診断後 24 週以内に34

は自然消退がみられたとの報告 34)もある。また、自然消退についての言及はな35

いが、急性・慢性膵仮性嚢胞は問わず対象症例の約 40%では保存的に経過観察が36

可能であったとの報告があるが、慢性膵炎に関連した仮性嚢胞では、合併症な37

どにより何らかの治療を必要とした期間は平均 13 週で、平均嚢胞径は 7cm とし38

ている 35)。なお、膵管狭窄や膵石などによる膵液うっ滞が成因の嚢胞において39

は、自然消退はほとんど期待できないと考えられている 36)。 40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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慢性膵炎に合併した膵仮性嚢胞の自然消退に関しては一定の見解は得られて1

いないが、これまでの報告を総合的に考慮すると、膵仮性嚢胞の自然消退は嚢2

胞径が 6cm 以下であれば出現してから長期間経過してもその可能性はあるもの3

の、偶発症発生の観点からは嚢胞発生から 6 週間以上経過した 6cm を超える膵4

仮性嚢胞、および膵管狭窄や膵石などによる膵液うっ滞が成因の嚢胞に対して5

は、自然消退を期待せず何らかの治療を行う必要性が伺える。 6

本来の意味からの自然治癒ではないが、合併症として起こった消化管への穿7

通が嚢胞内容の自然ドレナージ効果をもたらし、自然消退がみられる場合もあ8

る 15),24)。 9

10

11

Ⅱ.診断 12

1.血液検査は有用か? 13

14

膵仮性嚢胞に特徴的な血液検査所見はない。 15

16

解説 17

膵仮性嚢胞症例では血清アミラーゼ値が上昇していることが多い 37),38)が、嚢18

胞存在の有無による血清アミラーゼ値に差はみられない 31),39)。慢性膵炎急性増19

悪に続発する仮性嚢胞では、膵炎の結果として血清膵酵素(アミラーゼやリパ20

ーゼなど)が上昇するが、この上昇が仮性嚢胞の存在診断や質的診断には直接21

的に結び付かない。また、膵管狭窄や膵石などによる膵液うっ滞による仮性嚢22

胞では、慢性膵炎の状態が安定していれば必ずしも膵酵素上昇はみられない。23

慢性膵炎非代償期では膵酵素はむしろ低値を示すこともある。 24

膵仮性嚢胞に伴う合併症診断においては、前述した感染、閉塞、破裂・穿通、25

出血といった病態に関連する血液検査は有用である 31)。また、膵仮性嚢胞の治26

療適応を考えた際には、その嚢胞が腫瘍性嚢胞か否かの診断は重要となる。こ27

の際には腫瘍マーカー(CA19-9、CEA など)の検査は画像診断の一助となる 40)。 28

29

30

2.超音波検査は有用か? 31

32

膵仮性嚢胞の存在診断としては有用であり、急性仮性嚢胞においては経時的33

変化を追うことが質的診断にも役立つ場合がある。また、感染や出血などの合34

併症の治療適応を判断する一助となる。 35

36

解説 37

超音波検査は膵仮性嚢胞の存在診断として簡便で有用である 31),34),41)。この際、38

膵仮性嚢胞の成因により超音波所見に差がみられる。慢性膵炎急性増悪に続発39

する仮性嚢胞では多彩な像を呈する。隔壁構造や嚢胞内部には壊死物質や血液40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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などの存在を反映した内部エコーが観察されることが多い。また、脂肪壊死に1

より産生された脂肪酸とカルシウムの結合による鹸化物質が析出し結石様のエ2

コーを呈することもある 42)。このような所見を念頭に超音波検査で経時的変化3

をみることは質的診断に役立つ場合もある。 4

一方、膵管狭窄や膵石などによる膵液うっ滞による仮性嚢胞は、多くは単房5

であり感染を伴わない限り内部はほぼ無エコーに観察される。この際に嚢胞壁6

近傍の膵石の存在を確認することは診断の一助となる。また、出血や感染など7

が合併した場合は嚢胞内部エコーの変化や嚢胞径増大が見られるため合併症に8

対する治療適応を判断する一助となる 43)。 9

膵仮性嚢胞の質的診断においては、腫瘍性嚢胞との鑑別が重要 44)となるが、10

スポンジ様の漿液性嚢胞腺腫やブドウ房状の典型的な分枝型 IPMN などを除き、11

通常の超音波検査だけでの鑑別は困難である 45)。また、膵癌による膵液うっ滞12

が原因となる嚢胞も存在するため、比較的単房性の無エコーを呈する嚢胞を見13

た際には、その乳頭側の詳細な観察が必要である。 14

15

16

3.CT 検査は有用か? 17

18

膵仮性嚢胞の存在診断・質的診断において有用性が高い。また、各種合併症19

の治療適応を判断するために重要な検査である。 20

21

解説 22

CT 検査は超音波検査に比してより客観的に嚢胞を観察でき、造影 CT による血23

行動態も評価できるため、存在診断のみならず質的診断にも有用性が高い 46)-48)。24

大きさや局在、壁肥厚程度などについても経時的な観察が可能である 17),34),49)。25

超音波所見と同様に、膵仮性嚢胞の成因により CT 画像に差がみられる。慢性膵26

炎急性増悪に続発する仮性嚢胞では急性膵炎後の仮性嚢胞同様に膵周囲にはび27

こる様に存在することも多く、多房性を呈することもある(図1)。嚢胞内部に28

は壊死物質や血液などの存在を反映し様々な吸収濃度で観察されるが実際に壊29

死物質なのか血液なのかの質的診断までは困難である。したがって、造影 CT で30

も仮性嚢胞か壊死物質を含んだ膵膿瘍(膵壊死性病変)かの鑑別診断は困難であ31

る。また、嚢胞形成初期では嚢胞周囲の脂肪織濃度上昇もみられることがある。32

経時的に膵周囲の fluid collection が被包化され膵仮性嚢胞が形成される過程33

が超音波検査に比してより客観的に観察される 16),50)。 34

一方、膵管狭窄や膵石などによる膵液うっ滞による仮性嚢胞は、多くは単房35

で被膜と境界明瞭に隔されており、感染を伴わない限りはほぼ均一な低吸収域36

に観察される(図2)。この際に嚢胞壁近傍の膵石の存在を確認することは診断37

の一助となる。また、いずれの成因においても、造影 CT では嚢胞壁は均一に造38

影され嚢胞内容物とのコントラストがより明瞭化する。 39

CT 検査は合併症診断においても有用である。特に出血に関する合併症診断(嚢40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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胞内出血や仮性動脈瘤、脾静脈閉塞による左側門脈圧亢進症など)において造1

影 CT の有用性は高い。 2

膵仮性嚢胞の質的診断において腫瘍性嚢胞との鑑別が重要となるが、超音波3

検査に比して CT では腫瘍性嚢胞との鑑別診断能が高い 84)。しかし、超音波検査4

同様に通常の CT 画像のみでの鑑別は困難な場合も多い 45),51)。近年は MDCT が発5

達してきており膵癌に伴う嚢胞や嚢胞性膵腫瘍との鑑別に有用である。 6

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図1.膵体尾部仮性嚢胞の造影 CT 像。 図2.膵頭部仮性嚢胞の造影 18

内部は不均一で隔壁様構造も認める。 CT 像。壁の一部に石灰化を認める。 19

20

21

4.MRI・MRCP は有用か? 22

23

MRI・MRCP は、膵管と嚢胞の情報が同時に得られ膵仮性嚢胞の診断に有用であ24

る。 25

26

解説 27

MRI・MRCP は低侵襲であり、嚢胞と膵管像の描出が同時に可能なことから CT28

と ERCP の両者を行うのとほぼ同等の情報が得られる。MRCP による正常な主膵管29

の画像評価は、感度 98 %、特異度 94 %とされている 52)。さらに、MRCP では主膵30

管と拡張した分枝が描出され、同時に仮性嚢胞の描出能は高い 53)。 31

MRI では嚢胞内の信号により内容物の性状が推定できる。すなわち、漿液性で32

は T1 強調像で低信号、T2 強調像で著明な高信号を呈する。粘液では粘稠度と蛋33

白濃度が上昇するほど T1 強調像での信号強度が高く、T2 強調像での信号強度が34

低下する傾向にある 54)。出血を伴う場合、急性期では T1 強調像で低信号、T235

強調像で高信号を呈するが、亜急性期から慢性期では T1 強調像で高信号、T2 強36

調像で著明な高信号を示すようになり、陳旧期には T1、T2 強調像ともに低信号37

を呈する。内容物に sludge が含まれる場合には T1,T2 強調像でともに低信号を38

呈し、液体との境界に niveau を呈する 55)。さらに、MRI では縦隔内に進展した39

膵仮性嚢胞の診断もでき、瘻孔が描出できる場合もある 56)。 40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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図3.膵頭部仮性嚢胞の MRCP 像。胆管を取り巻く 4

ように増大し、下部胆管が狭窄している。 5

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5.ERCP は有用か? 8

9

ERCP は膵管と交通のある嚢胞を直接造影でき、嚢胞内の腫瘤や粘液が透亮像10

として描出できる。症例によっては診断と同時に治療を行うことができる。 11

12

解説 13

ERCP は膵管と交通のある嚢胞を直接造影でき、嚢胞内の腫瘤や粘液が透亮像14

として描出できる。また、嚢胞内容物が膵管内や十二指腸への流出を確認でき15

ることもある。ただし、膵管内乳頭状粘液性腫瘍のように嚢胞内容物が粘稠な16

場合には描出できないことがある。ERCP による膵仮性嚢胞の描出率は 50-70%と17

されている 57)。交通がない場合でも大きな嚢胞では膵管の圧排や閉塞所見から、18

膵管との位置関係が推測できる。また、ERCP では背景にある膵病変の確認がで19

き,慢性膵炎に合併する場合には、主膵管狭窄や膵石症の診断が容易にできる20

ため有用である 58),59)。ERCP の手技を用いると管腔内超音波検査(IDUS)や膵管鏡21

検査さらに生検や膵液細胞診が可能であり,膵嚢胞性病変の鑑別診断に有用で22

ある 60)。 23

膵仮性嚢胞と診断された時に、最も重要なのは処置が必要であるかの判断で24

ある。ERCP は膵仮性嚢胞の手術が必要な例において重要な情報をもたらす 61)。25

内視鏡的ドレナージが必要な例では、ERCP に引き続き処置が行われる。 26

以上のように、ERCP は膵仮性嚢胞の診断に有用である。慢性膵炎急性増悪に27

伴う急性仮性嚢胞の場合は他の画像診断を優先させた方がよい。一方、慢性仮28

性嚢胞は結石などによる貯留嚢胞のことが多く ERCP が最優先される。 29

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膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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図4.膵体部仮性嚢胞の ERCP 像。膵管造影にて 4

主膵管と交通する仮性嚢胞を認める。 5

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6.EUS は有用か? 8

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EUS は嚢胞壁の肥厚の程度、隔壁の有無や嚢胞内容物の性状や隆起の描出に優10

れ、消化管との距離を明確にでき、また介在する構造物の有無を確認できるこ11

とから膵仮性嚢胞の診断に有用である。 12

13

解説 14

EUS は消化管ガスや皮下脂肪の影響が少なく、腹部 US では困難な膵鈎部や15

尾部の描出も可能であり、膵実質や膵管の観察が詳細にできるという利点があ16

る。EUS による膵嚢胞の描出率は 98.8%とされる 62)。 17

EUS は解像力が優れており、US では描出できない慢性膵炎の軽度の変化まで18

描出が可能であり、仮性嚢胞では実質の石灰化や慢性膵炎の膵管の不整拡張な19

どが描出される 63)。また、嚢胞壁の肥厚の程度、隔壁の有無や嚢胞内容物の性20

状や隆起の描出に優れている 64),66)。また、慢性仮性嚢胞の場合はその原因とな21

る結石等の描出にも有用である。 22

EUS では細径の針による吸引細胞診、すなわち、FNA(fine needle aspiration)23

が可能で、本邦ではあまり行われないが、欧米では嚢胞液の採取による診断に24

応用されている 63),64)。 25

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2 3

図5.膵尾部仮性嚢胞の EUS 像。大きな 4

仮性嚢胞の内部に debris が認められる。 5

6

7

Ⅲ.治療 8

1.どのような症例を治療するか? 9

10

原則として腹痛、感染などの有症状例を治療対象とする。増大例、仮性動脈11

瘤破裂などの危険が予想される場合も適応が検討される。腫瘍性病変に合併し12

た仮性嚢胞も治療の対象である。 13

14

解説 15

仮性嚢胞はかなりの頻度で自然消退することが知られている(CQI-4 参照)。16

無症候性の膵仮性嚢胞についても,75 例の検討17)において、36 例(48%)で経17

過観察を行い、平均 1年の観察期間の間に 36 例中 21 例(60%)で自然消失が得ら18

れ、14 例で不変もしくは縮小が観察されたとされている。経過観察中、重篤な19

合併症の発生も低率であることが知られるようになった 32),67)。このような自然20

史が明らかになるにつれ、以前は大きさ(直径 6cm 以上)も適応の決定に用い21

られていたが、大きさをもって適応を決定するという意見は減少している 68),69)。22

文献上は 6 週間を経過してなお消失せず、腹痛、敗血症を含む感染、gastric 23

outlet syndrome、閉塞性黄疸などの症状を呈する例を治療対象とすると論じた24

論文が多くを占める。感染を合併する場合には、より早い段階で介入が行われ25

る。増大例、仮性動脈瘤破裂などの危険が予想される場合も治療的介入が考慮26

される。 27

当然のことながら,まず,他の嚢胞性膵疾患と鑑別することが重要である。 28

29

30

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

-11-

2.治療法にはどのような方法があるか?その選択は? 1

2

薬物療法、IVR(US/CT ガイド下経皮的ドレナージ)、内視鏡的治療、外科手術3

がある。選択に関して確立されたコンセンサスはない。 4

5

解説 6

膵仮性嚢胞の薬物療法としてソマトスタチン誘導体である octreotide 7

acetate を用いた報告 70), 71)がある。ごく少数例での報告で、さらなる検討が必8

要である。 9

各治療法の比較試験の成績について報告がなく、エビデンスに基づいた治療10

法の選択は困難な状況である。経皮的ドレナージは奏効率、偶発症、再発率か11

らみて不十分な点がある 72)ことから現在、第一選択とはしない傾向にある。感12

染性嚢胞で、患者の状態が外科手術など他の方法に耐えられないような場合に13

よい適応と考えられている。 14

内視鏡的治療と外科手術は手技的成功率、偶発症発生率、再発率からみて同15

等の成績が報告されている 73)-75)。経乳頭的ステンティング 30 例の検討 76)では、16

平均 15 ヶ月の経過観察期間で 26 例(87%)において嚢胞が消失し、残る 4例と再17

発した 3 例で外科的治療を要したとされている。侵襲性を考慮してまず内視鏡18

的治療を行い、効果が不十分な場合に外科手術をすることが、ある程度受け入19

れられているようである。両者を比較した RCT はなく、今後の検討が待たれる。20

なお、急性壊死性膵炎後に合併する感染性膵仮性嚢胞や膵膿瘍には、感染性膵21

壊死を伴うものがあり,壊死部はドレナージカテーテル留置のみでは除去され22

ずに壊死物質除去手術を考慮することになるため、注意が必要である。 23

24

25

3.内視鏡的治療 26

A-1.経消化管的治療の適応は? 27

28

消化管壁との癒着が完成し、嚢胞壁が安定化した仮性嚢胞がよい適応である。 29

30

解説 31

消化管壁と仮性嚢胞が癒着している場合に、経胃もしくは経十二指腸的に内32

視鏡的に仮性嚢胞をドレナージすることが可能である 73),77)。特に、慢性膵炎急33

性増悪後の急性仮性嚢胞であれば網嚢が嚢胞腔となることが多くこの場合は胃34

壁が嚢胞壁を形成するため経胃的ドレナージの良い適応である 4)。消化管から密35

着した部位を選択できない場合には、穿孔の危険があるので選択すべきでない。36

次項の経乳頭的ドレナージの適応であっても、選択的膵管挿管ができない、仮37

性嚢胞よりも頭部側の主膵管狭窄をガイドワイヤー、ドレナージカテーテルが38

通過できない場合には経消化管的治療の適応となる。以前は消化管に明らかな39

膨隆を形成していることが挙げられていたが、EUS の登場により、膨隆がなくと40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

-12-

も穿刺ドレナージが可能となっている。嚢胞内容に壊死物質の存在が疑われる1

場合は奏功率が低下し、偶発症発生率が上昇するとして、外科手術の適応とさ2

れてきた。近年このような例に対しても内視鏡的治療が試みられ 78)、嚢胞腔ま3

で内視鏡を挿入し、内視鏡的に debridement を行うとする報告がみられている4 79)。ただし、これらの報告例は熟練した内視鏡医による成績であり、普遍化には5

慎重であるべきで、外科、時には放射線科のバックアップのもとに行う必要が6

ある 80)。 7

8

9

A-2.経消化管的治療の手技は? 10

11

経消化管的内視鏡的ドレナージの方法には、内視鏡直視下ドレナージ EUS ガ12

イド下嚢胞ドレナージがある。内視鏡直視下ドレナージでは術前に EUS にて嚢13

胞を観察した後に行う方法もある。 14

15

解説 16

17

近年、EUS の普及に伴い EUS ガイド下嚢胞ドレナージの報告が多くなっている18 81),82)。一般的に、カラードプラ機能を有する電子コンベックス走査型超音波内19

視鏡が使用されている。消化管壁と嚢胞壁の間の可動性や穿刺経路の脈管の有20

無を確認した後、超音波内視鏡のプローブ部と嚢胞内腔の距離が最短となる部21

位で穿刺を行う 83)。なお、EUS を用いない場合は CT にて仮性嚢胞周囲の脈管の22

確認を行う。穿刺経路は嚢胞の存在部位により決定されるが、経胃的穿刺が選23

択されるとの報告がある 84)。 24

穿刺針は通電針または非通電針が用いられる 85),86)。非通電針を使用する場合25

は、穿刺を行った後に拡張を行う必要があり、拡張用カテーテルを用いる方法26

と拡張用バルーンを用いる方法がある。通電針を使用すると非通電針に比して27

最初の瘻孔径を大きく確保する事が可能となり、その後の拡張やステント挿入28

を容易に行えるメリットがある 85),87)。ただし、出血の危険性が非通電針に比べ29

ると高い。 30

症例により経鼻的ドレナージとして外瘻とするか、内瘻とするかを検討する。31

嚢胞感染を来たしている症例や嚢胞内出血が認められる症例に対しては、嚢胞32

内洗浄の観点から外瘻が選択される。造影にて嚢胞と膵管との交通が認められ、33

排液が持続する場合には外瘻から内瘻に変更するが、一期的に内瘻と外瘻を同34

時に行う場合もある。感染所見に乏しい症例や太い径のドレナージカテーテル35

が挿入可能な症例は一期的な内瘻ドレナージを行う 85)。 36

37

38

39

40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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1

2

3 図 6a 4

5

6

図 6b 7

8

9

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

-14-

図 6c 1

2

3 図 6d 4

5

図6.経消化管的嚢胞ドレナージ(外瘻)。 6

6a.造影 CT にて膵体部に嚢胞を認める。 7

6b.EUS ガイド下に嚢胞を穿刺したところの EUS 像。 8

6c.ガイドワイヤーに沿ってドレナージカテーテル 9

を嚢胞内に挿入しところの X線造影像。 10

6d.ドレナージカテーテルを体外に誘導して外瘻とした。 11

12

13

14

図 7a 15

16

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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1 図 7b 2

3

4

図7.経消化管的嚢胞ドレナージ(内瘻)。 5

7a.造影 CT にて膵尾部に嚢胞を認める。 6

7b.EUS ガイド下に嚢胞を穿刺し、ガイド 7

ワイヤーに沿って両ピッグテールステントを 8

嚢胞内に挿入した後の X線像。 9

10

11

A-3.経消化管的治療の成績は? 12

13

経消化管的嚢胞ドレナージの成績は 65~85%と比較的良好な結果が報告され14

ている。 15

16

解説 17

膵仮性嚢胞の内視鏡治療の成績については、内視鏡直視下ドレナージ、EUS ガ18

イド下ドレナージ、経乳頭的アプローチを一括して報告されているものがほと19

んどであるが、その成功率は 65~89%であった 73),76),88)-94)。これら 3 つの手技に20

ついて比較検討した報告によると、成功率に差がないとするものが多い 95)-99)。 21

内視鏡治療の成績については、嚢胞の成因を考慮していないものが多いが、22

慢性仮性嚢胞が慢性膵炎急性増悪を含む急性仮性嚢胞に比して治療成績は良好23

であったとの報告がある 77)。 24

25

26

A-4.経消化管的治療の偶発症は? 27

28

膵仮性嚢胞の内視鏡治療の偶発症として、出血、嚢胞感染、穿孔、ステント29

迷入逸脱が主に挙げられる。頻度は低いが他臓器の誤穿刺の報告も認める。偶30

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

-16-

発症全体の発生頻度は 0~21.9%と幅がある。 1

2

解説 3

経乳頭的治療を含む膵仮性嚢胞に対する内視鏡治療の prospective study82)4

では、各手技間の偶発症の発生頻度に有意差を認めていない。ドレナージにつ5

いて EUS の併用の有無による比較試験 98),99)が存在する。それによると、成功率6

には差は認めず、偶発症は EUS を使用しない内視鏡直下ドレナージで出血を 17

例(1/30)で認めるのみであったとする報告 98)と、出血を 3例(3/99)、嚢胞感8

染を 8 例、ステント迷入を 3 例であったとする報告 99)がある。また、e-mail に9

よる多数例のアンケートによるレビュー87)が存在する。そのアンケートによる10

集計では出血 11.4%、穿孔 2.2%、感染 12.7%に認めた。それらは術者の経験数、11

entry technique、EUS 使用の有無に関して有意差は認めず、死亡例の報告は認12

めなかったとのことであった。文献的にみた経消化管的治療の偶発症の発生頻13

度 は 、 出 血 (3.3 ~ 18.2%)80),82),87),89),91),98)-100) 、 嚢 胞 感 染 (0 ~14

17.9%)80),82),87),89),91),98)-100)、穿孔(0~5.8%)80),82),87),89),91),98)-100)、ステント迷入・逸15

脱(3~5.8%)89),100)と報告されている。 16

通常の内視鏡を用いた経胃的穿刺によるドレナージ法では、基本的には嚢胞17

に対してはブラインドでの穿刺となるため、15%を超える高い偶発症発生率が18

報告されている 101)。また、出血により手術治療を要したものが施行例中5%で19

あったとの報告もある 75)。一方、EUS 画像をガイドとする穿刺ドレナージでは20

11%程度の偶発症発生率が報告されている 102)が、内視鏡的にコントロールができ21

なかった出血は 1%以下としている。 22

経消化管的治療における穿刺方法(通電針を用いるか、非通電針を用いるか)23

によっても偶発症発生には差がみられている。すなわち、双方の治療成功率に24

は差が見られなかったものの、通電針の場合の出血率は 15.7%であった一方で、25

非通電針では 4.6%の出血率であったとの報告 103)がある。 26

27

28

A-5.経消化管的治療の予後は? 29

30

経消化管的治療全体の初回治療成功例における再発は稀であり、予後は良好31

である。なお、内視鏡直視下ドレナージと EUS 下ドレナージで長期成績に有意32

な差を認めていない。 33

経十二指腸的治療は経胃的治療よりも長期成績は良好である。 34

35

解説 36

膵仮性嚢胞に対する経消化管的治療全体での長期成功率は62%から 92%と報告37 82),91),104),105)されているが、慢性膵炎に伴う仮性嚢胞の初回治療成功例では平均 638

か月から 48 か月間の経過観察で再発は極めて稀とされている 82),91),104),105)。 39

内視鏡直下ドレナージと EUS ガイド下ドレナージを比較した報告では、成功40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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率はそれぞれ 90-91%、89-95%であり、長期成績に有意な差を認めなかった。 1

経胃的治療と経十二指腸的治療との比較では長期成功率はそれぞれ 36-62%、2

73-83%との報告があり、経十二指腸的治療は経胃的治療よりも長期成績が良好3

であった 73),88)。 4

5

6

B.経乳頭的治療の適応は? 7

B-1.経乳頭的治療の適応は? 8

9

仮性嚢胞と主膵管の間に交通がある場合、仮性嚢胞の乳頭側主膵管に狭窄が10

存在する場合が経乳頭的治療の適応と考えられている。 11

12

解説 13

経乳頭的ドレナージは仮性嚢胞と主膵管の交通が明らかな場合に考慮される。14

仮性嚢胞の遠位(乳頭側)主膵管に狭窄がある場合には、これを越えてドレナ15

ージカテーテルやステントを留置する必要がある 73),95),106)。特に、結石等による16

慢性仮性嚢胞は良い適応である。技術的には膵管への挿管に加え、嚢胞内や主17

膵管狭窄部を越えてガイドワイヤーおよびドレナージカテーテルを誘導できる18

ことが必要である。経乳頭的ステンティング 30 例の検討では、平均 15 ヶ月の19

経過観察期間で 26 例(87%)において嚢胞が消失し、残る 4 例と再発した 3 例で20

外科的治療を要したとされている 76)。経乳頭的ドレナージの利点は膵液瘻を形21

成することがないこと、出血の危険がないことである。ステントの長期間の留22

置により留置部膵管への影響が起こりうることが指摘されている。 23

24

25

B-2.経乳頭的治療の手技は? 26

27

嚢胞内または膵管狭窄や嚢胞との交通部を越えた上流膵管内にドレナージカ28

テーテルを留置する。 29

嚢胞に感染を伴う場合には経鼻膵管ドレナージカテーテルによる外瘻法を選30

択し、炎症消退後に内瘻法へ変更することが望ましい。 31

32

解説 33

膵仮性嚢胞に対する経乳頭的ドレナージは、CT および MRCP の情報を参考にし34

て、ERCP の手技に準じて行う 76),93),107)~113)。まず、膵管造影を行い、仮性嚢胞と35

膵管の交通を確認するとともに、下流膵管の狭窄と膵石の有無・部位・程度を36

把握する。次に、膵管内に深部挿管した造影用カテーテルを通してガイドワイ37

ヤーを膵管内に挿入し、嚢胞との交通部を探る。この際使用するガイドワイヤ38

ーは、親水性コーティングが施されたものが多く用いられている。 39

嚢胞内にガイドワイヤーが挿入された場合には、これを介して 5~8.5Fr.の経40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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鼻膵管ドレナージカテーテル(外瘻法)、あるいは 5~10Fr.の膵管ステント(内1

瘻法)を留置する。嚢胞内にガイドワイヤーが挿入できない場合には、膵管狭2

窄や嚢胞との交通部を越えた上流膵管内に経鼻膵管ドレナージカテーテル、ま3

たは 5~10Fr.のストレート型膵管ステントを留置する。慢性膵炎では、膵管や4

嚢胞と膵管の交通部には狭窄や膵石が存在することが多いため、必要に応じて5

ダイレーターや拡張用バルーンカテーテルを用いてステント挿入経路を確保す6

る。ドレナージカテーテルを留置する位置については、治療成績から可能な限7

り嚢胞内に留置すべきであると報告されている 76)。一方、嚢胞との交通部より8

下流の主膵管に狭窄がある場合には狭窄を越えた上流の主膵管内に留置し、狭9

窄がない症例では嚢胞内に留置すべきであるとする報告もある 93)。 10

一般に、ドレナージ効果を判定するため最初は外瘻法を選択し、その後内瘻11

法に交換することが多い 111),113)。特に、嚢胞に感染や debris を伴う場合には、12

まず嚢胞内を洗浄することも可能である外瘻法を選択し、炎症消退後に内瘻法13

へ変更することが望まれる 76)。 14

ドレナージ期間については、嚢胞内にドレナージカテーテルが留置できた場15

合には、嚢胞が消失する 1 週間前後でカテーテル抜去可能であるが、膵管狭窄16

が残る症例では膵管ステント留置を追加する必要がある 110)。一方、長期間のス17

テント留置は、膵管の形態的変化や膵実質に炎症性変化を起こすことが報告さ18

れているため、嚢胞や膵管狭窄が改善されていれば、可能な限り早期にステン19

トを抜去すべきである 94)。 20

21

22

23

24

25

26

27

図 8a 28

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

-19-

1

図 8b 2

3

図 8c 4

5

6

図 8.経乳頭的嚢胞ドレナージ。8a.造影 CT にて膵尾部に多発する嚢胞を認め7

る。8b.ERCP にて体部主膵管の圧排像と膵尾部に嚢胞が造影される。8c,ドレ8

ナージカテーテルが経乳頭的に主膵管から嚢胞内に挿入されている。 9

10

11

B-3.経乳頭的治療の成績は? 12

13

経乳頭的ドレナージの手技上の成功率は 69~100%、有効率は 58~88%と比較14

的良好である。ただし、膵尾部の嚢胞では、膵頭・体部の仮性嚢胞と比較して15

有効性が低い。 16

17

解説 18

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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慢性膵炎の膵仮性嚢胞に対する経乳頭的ドレナージの手技上の成功率は 69~1

100%と比較的良好な成績が報告されている 76),92)-96),111),114)~116)。不成功となる原2

因として、膵管内の多数の膵石、慢性膵炎による膵管の強い狭窄や屈曲などが3

挙げられている 115)。嚢胞内腔へのドレナージカテーテル留置成功率については、4

30 例中 12 例(40%)で可能であったと報告されている 76)。 5

比較的多数例での経乳頭的ドレナージの嚢胞の消失・縮小や症状の改善など6

の有効性に関する報告は、経消化管的治療例を含む全体の成績として報告され7

ているものが多い。その中で経乳頭的ドレナージの有効率は 58~88%と報告され8

ている 76),92)-96),111),114)~116)。経乳頭的治療が有効となる要因として、膵頭・体部9

の嚢胞では有効な症例が多いが、膵尾部ではドレナージ効果が乏しいことが多10

いとされている 111)。また、ドレナージカテーテルを膵管内に留置した 18 例では11

有効例は 12 例(67%)のみであったが、嚢胞内に留置した 12 例では 11 例(92%)12

に有効であり、ドレナージカテーテルは可能な限り嚢胞内に留置すべきである13

と報告されている 76)。一方、8例の多発性の仮性嚢胞症例において、嚢胞と膵管14

の交通部より上流の主膵管内にドレナージカテーテルを留置した結果、7 例15

(88%)に有効であったとの報告がある 116)。 16

慢性膵炎の仮性嚢胞に対する経乳頭的治療の報告の多くは少数例での検討で17

ある。今後さらに多数例の検討により、経乳頭的ドレナージの有効性がより明18

らかにされることが望まれる。 19

20

21

B-4.経乳頭的治療の偶発症は? 22

23

経乳頭的ドレナージの偶発症は 0~15%と報告され、死亡例の報告はみられず、24

比較的安全な手技である。 25

26

解説 27

膵仮性嚢胞に対する経乳頭的ドレナージの偶発症は 0~15%と報告されている28 76),92)-96),111),116),117)。死亡例の報告はみられず、比較的安全に施行できるものと考29

えられる。 30

早期の偶発症としては、急性膵炎 76),92),93)、前処置として施行した膵管口切開31

による出血 94)、仮性嚢胞胆管瘻 76)、嚢胞内感染 96), 118)などが報告されている。32

急性膵炎は比較的軽症のものが多く、保存的治療により軽快し、膵管口切開に33

よる出血は止血術、仮性嚢胞胆管瘻は内視鏡的胆道ドレナージにより改善して34

いる。嚢胞内感染は内瘻化した症例や不成功例にみられ、外瘻法への変更や経35

皮的または経消化管的ドレナージ、手術療法など他の治療法が追加されている36

ことが多い。 37

後期偶発症としては、ステント閉塞による膿瘍形成 92)、ステント留置部の膵38

管閉塞 76)、ステントの迷入 94), 95)などが報告されている。ステント閉塞を予防す39

るためには定期的なステント交換が必要である 107)。また、ステントによる膵管40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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や膵実質の器質的変化を避けるために、ステント留置は必要最小限の期間とす1

る 119)。ステントの迷入には、ピッグテイル型やフラップ付きなどステントの形2

状に注意する必要がある 105),120)。 3

4

5

B-5.経乳頭的治療の予後は? 6

7

膵仮性嚢胞の再発率は 0~12%と報告されており、主膵管狭窄や膵石に対する8

適切な治療が嚢胞の再発予防に有効である。 9

10

解説 11

経乳頭的治療後における膵仮性嚢胞の再発率は 0~12%と報告されている12 76),93)-96),107),111)115),116)。 13

経乳頭的ドレナージにより改善した膵仮性嚢胞(26 例)の平均観察期間 15 ヶ14

月での再発率は 12%で、経消化管的治療例の再発率(18%)より低率であったと15

報告されているが 76)、その要因として主膵管のドレナージが良好になったこと16

が挙げられている。また、主膵管の狭窄や膵石に対する適切な治療が嚢胞の再17

発予防に有効であるとの報告もある 107)。 18

平均観察期間 37 ヶ月において経乳頭的治療が有効となる要因の検討では、主19

膵管狭窄の存在、嚢胞が膵頭部に存在すること、嚢胞径が 6cm 以上であること、20

および発生後 6 ヶ月以内であることが良好な予後と関連すると報告されている21 93)。一方、経消化管的治療例を含めて平均観察期間 32 ヶ月での予後を、飲酒の22

有無、嚢胞の数と大きさ、主膵管との交通の有無、主膵管狭窄の有無での比較23

検討 94)では、非飲酒例、単発の嚢胞例、主膵管狭窄例でやや良好な傾向がみら24

れたが、症例数が十分ではなく統計学的に有意な差は認めなかったと報告され25

ている。 26

慢性膵炎は大小の膵炎発作を繰り返し、しだいに膵線維化が進行して内外分27

泌が低下する非可逆性の難治性炎症性疾患である。膵仮性嚢胞はその合併症の28

一つであるため、禁酒をはじめ基本的な治療を行うと同時に、長期にわたる注29

意深い経過観察が必要である。 30

31

32

4.外科的治療 33

4-1.外科的治療の適応は? 34

35

保存的治療および内視鏡的治療の非奏功例、内視鏡的治療の不適格例が外科36

的治療の適応である。内視鏡的治療の不適格例とは、出血・感染などを合併し37

た症例、解剖学的に内視鏡的治療が困難な有症状例、静脈瘤が存在する有症状38

例、悪性疾患が考慮される症例などである。 39

内瘻術は嚢胞壁が消化管壁との吻合に耐えることができ、嚢胞内容が感染し40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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ていない場合に,外瘻術は嚢胞壁が未成熟な場合、感染嚢胞、一般状態不良な1

患者に対して行われる。 2

切除術は悪性腫瘍の合併が考えられる場合、局在などから内瘻術・外瘻術が3

不可能な場合に行われる。 4

5

解説 6

膵仮性嚢胞の治療に関して、保存的治療、内視鏡的治療、外科的治療を比較7

した無作為試験、前向き試験は存在しない。そのため膵仮性嚢胞の治療は、成8

因、大きさ、症状、随伴所見などにより、個別に検討する必要がある。 9

無症状症例は治療の対象にならないが、有症状で自然消退が期待できない例10

には、まず侵襲の少ない内視鏡的治療を考慮する(自然消退についてはⅠ―411

を参照のこと)。積極的治療の対象になるのは「large(大きな)」「persistent12

(持続する)」「complicated(合併症のある)」症例である。内視鏡的嚢胞ドレ13

ナージ治療の不適格例は、出血・感染などを合併した症例、胃・十二指腸と嚢14

胞の距離がある症例、静脈瘤が存在する症例、悪性疾患が考慮される症例など15

で、これらの症例が外科的治療の適応になる 121-123)。 16

切除術の適応となる仮性嚢胞は、尾部病変で他の方法でのアプローチが困難17

かつ(体)尾部切除が容易な場合、出血例などが挙げられる。通常、切除術は周18

辺臓器との癒着が高度で困難なことが多い。 19

外瘻術は嚢胞壁が未成熟で吻合に適さない場合、感染嚢胞、一般状態不良で20

長時間の手術に耐術困難な患者に対して適応される 124)。これに対し,内瘻術は21

嚢胞壁が安定し,消化管壁との吻合に耐えられるような感染のない仮性嚢胞が22

適応とされる。腹腔鏡的ドレナージ、内視鏡的ドレナージに関する報告を各々23

19、25 文献を集めて成績を集計した報告 75)では、両者ともに安全な治療法であ24

ると結論付けているが、長期的な成績に関するデータが不足していることも指25

摘している。 26

近年では内視鏡的ドレナージでも壊死物質を含む嚢胞や感染性嚢胞に対して27

アプローチする報告も見られており 79),今後、適応が変化する可能性がある。 28

29

30

4-2.外科的治療の手技は? 31

32

原則的に内瘻術が行われるが、外瘻術・切除術が適応になる症例もある。 33

低侵襲を考慮した腹腔鏡下手術も治療の選択肢となる。 34

慢性膵炎由来の膵仮性嚢胞では、膵管減圧術のみ行うこともある。 35

36

解説 37

膵仮性嚢胞の治療は従来外科的治療のみが選択しうる唯一の手段であったが、38

内視鏡的治療の進歩、腹腔鏡下手術の出現で大きく変貌した。しかし外科的治39

療の果たす役割はいまだ大きく、その gold standard は内瘻術(嚢胞胃吻合術、40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

-23-

嚢胞十二指腸吻合術、嚢胞空腸吻合術)である 121)。 嚢胞胃吻合術と嚢胞空腸吻1

合術の優劣に関してはいまだ議論があり、確定した見解は得られていない。嚢2

胞胃吻合術は、手技が単純であり、手術時間が短く、術後感染の頻度が低いと3

する報告がある一方、嚢胞空腸吻合術に比べ術後出血の頻度が高いとする報告4

もある 121)。 5

外瘻術は主に感染合併症例、嚢胞壁の菲薄な症例に行われ、多くは急性膵炎6

由来の膵仮性嚢胞が適応となる 11),121),125),126)。しかし外瘻術が行われる症例は、7

感染性膵壊死症例や膵膿瘍症例であり、いわゆる膵仮性嚢胞ではないことが多8

い点は注意すべきである.切除術(膵体尾部切除術、幽門輪温存膵頭十二指腸9

切除術、十二指腸温存膵頭切除術など)は、仮性動脈瘤合併例、出血例、胆道10

狭窄(閉塞)例、十二指腸狭窄例、多発小嚢胞例、悪性疾患合併例など限られ11

た症例に行われる 11),121),123),125)-128)。 12

近年膵領域でも適応されるようになった腹腔鏡下手術で、膵仮性嚢胞に対す13

る内瘻術(嚢胞胃吻合術、嚢胞空腸吻合術)、外瘻術が行われることがあり、通14

常の開腹術と同等の治療成績とされている 125),75),129),130).また鏡視下に胃内から15

吻合を作成する胃内手術も報告されている 129)。 16

17

18

4-3.外科的治療の成績は? 19

20

開腹術では嚢胞空腸吻合術が行われる頻度が高く、合併症率 13.6-18.9%、死21

亡率 0-2.5%とされている。 22

腹腔鏡下手術では嚢胞胃吻合術が施行される頻度が高く、合併症率 4.8-8.3%、23

死亡率 0%とされている。 24

25

解説 26

開腹術に関するレビュー121)では、手術方法は嚢胞胃吻合術 107 件、嚢胞十二27

指腸吻合術 28 件、嚢胞空腸吻合術 186 件で、奏効率がそれぞれ 90%、100%、92%、28

全体の合併症率 16%、死亡率 2.5%であった。同時期の内視鏡的治療成績は、1729

件(466 例)のケースシリーズのレビューで合併症率 13.3%、外科治療を要した30

症例 15.4%、死亡率 0.2%と報告されている。ただし、症例の背景が異なるため、31

これらを単純に比較することはできない。急性膵炎後の膵仮性嚢胞 72 例のケー32

スシリーズでは、12 例が保存的に軽快、15 例に内視鏡的治療、10 例に経皮ドレ33

ナージ、37 例に外科的治療(内瘻術 35 例、切除術 2 例)が行われた 128)。外科34

的治療の成績は合併症率 18.9%、死亡率 0%で、成因により治療成績が異なる可35

能性を示唆している 128)。また、膵仮性嚢胞 253 例のケースシリーズでは、慢性36

膵炎による膵仮性嚢胞 103 例に対して 56 例に膵管空腸吻合術+嚢胞ドレナージ37

(内瘻術)を、47 例に膵管空腸吻合術のみを行い、合併症率 13.6%、再手術率38

0%、死亡率 0%と良好な手術成績から、膵仮性嚢胞に対する治療としては膵管減39

圧術のみで十分であるとしている 122)。 40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

-24-

腹腔鏡下手術に関するケースシリーズのレビュー75)では、10 件 104 例(嚢胞1

胃吻合術 78 例、嚢胞空腸吻合術 11 例、嚢胞十二指腸吻合術 1例、外瘻術 13 例)2

のを行い、合併症率 4.8%、再発率 1.9%、死亡率 0%と報告されている。最近の報3

告 125)では、膵仮性嚢胞手術 108 例(腹腔鏡下嚢胞胃吻合術 90 例、腹腔鏡下嚢胞4

空腸吻合術 8 例、腹腔鏡下外瘻術 8 例、開腹嚢胞胃吻合術 2 例)で、合併症率5

は全体で 8.3%(腹腔鏡下嚢胞空腸吻合術 2.2%、腹腔鏡下嚢胞空腸吻合術 1.3%、6

腹腔鏡下外瘻術 75%)、再発率 0.9%、死亡率 0%とされている。ただし、症例の背7

景が異なるため、これらの成績も単純に比較することはできない。 8

9

10

4-4.外科的治療の偶発症は? 11

12

術式にかかわらず最も注意すべき偶発症・合併症は出血である。 13

術後合併症としては、出血、腹腔内感染、腹腔内膿瘍、膵瘻の頻度が高く、14

外瘻術では膵外瘻(膵液排出遷延)の頻度が高い。 15

16

解説 17

外科的治療の偶発症・合併症で最も重要なのは出血である。膵仮性嚢胞症例18

では炎症による門脈狭窄(閉塞)、脾静脈狭窄(閉塞)で側副血行路の発達した19

症例、仮性動脈瘤を合併する症例がみられ、術中操作に術中超音波検査を用い20

るなど十分な注意が必要である。術後出血は、吻合部出血、潰瘍形成、仮性動21

脈瘤形成などにより起こり、その頻度は開腹手術で 4.5-10.8%と報告され、慢性22

膵炎由来のものより急性膵炎由来の膵仮性嚢胞で多い傾向にある 11),121),126)-128)。23

膵管空腸吻合術 103 例のシリーズ 122)では術後出血はなく、腹腔鏡下手術では24

1.8-1.9%の術後出血率が報告されている 75),125)。 25

その他の術後合併症としては、腹腔内感染、腹腔内膿瘍、膵瘻の頻度が高く、26

腸閉塞、消化管瘻形成、肺合併症などが報告されている 11)),75),121),122),125)-128)。腹27

腔鏡下外瘻術において膵外瘻(膵液排出遷延)、感染の頻度が高いという報告が28

ある 125)。 29

30

31

4-5.外科的治療の予後は? 32

33

外科的治療後の膵仮性嚢胞再発率は開腹術で 2.6-18.8%、腹腔鏡下手術で34

0.9-1.9%と報告されている。 35

外科的治療後 4.8-11 年の経過観察で 10.7-38%の症例が死亡している。 36

37

解説 38

開腹術に関するレビュー121)によると、手術別にみた膵仮性嚢胞再発率は全体39

で 8.6%(嚢胞胃吻合術 12.2%、嚢胞十二指腸吻合術 0%、嚢胞空腸吻合術 8.3%)40

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

-25-

であった。なお、再発率に関しては、急性膵炎由来と慢性膵炎由来で大きな差1

はなく、2.6-18.8%と報告されている 11),121),126)-128)。膵管空腸吻合術 103 例のシ2

リーズ 122)では再発症例はなく、腹腔鏡下手術では 0.9-1.9%の再発率が報告され3

ている 75),125)。 4

外科的治療を受けた 112 例を平均 4.8 年追跡したケースシリーズ 127)では 125

例(10.7%)が死亡しており、55 例を平均 11 年間追跡したケースシリーズ 131)6

では、21 例(38%)が死亡したとされている。慢性膵炎症例の平均余命は健常者7

より短いことが知られている。厚生労働省難治性疾患克服研究事業で 1994 年行8

われた慢性膵炎全国調査では、2006 年予後調査を行い追跡可能であった 703 例9

中 265 例(36.4%)が死亡しており 132)、外科的治療の影響というよりは慢性膵炎10

の病態を反映していると考えられる。 11

膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 最終案 平成 21 年 6 月

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