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1 新化学技術推進協会 御中 原料転換に関わる最新の触媒反応技術動向調査報告書 March 20, 2014 アイシーラボ

新化学技術推進協会 御中 - JACIZSM-5 で脱ハロゲン化するとプロピレンやC 4, C 5 炭化水素を合成することができるが, HBr が副生するのでBr

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新化学技術推進協会 御中

原料転換に関わる最新の触媒反応技術動向調査報告書

March 20, 2014

アイシーラボ

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目次

調査の背景と目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 調査内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 調査報告(概要) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

1. はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2. シェールガス関連・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 3. バイオマス利用触媒反応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 4. 新たな触媒プロセス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 5. バイオマス、シェールガス、石油、取り巻く環境がどの技術にいきるか ・13

調査報告書

1. 調査目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 2. メタンを原料とした触媒反応技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 3. エタン, プロパン,ブタンを原料とした触媒反応技術 ・・・・・・・・・・46 4. シェールガスの各成分利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72 ―シェールガスを原料とした場合将来的に不足すると予測される

ブタジエンと芳香族製造の課題― 5. バイオマス利用触媒反応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 6. 新たな誘導体群を開発できる触媒技術とその工業的な可能性

についての調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・215 7. 新規触媒・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・234 8. バイオマス, シェールガス, 石油, 取り巻く環境がどう変化すれば

どの技術が生きるか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・255

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背景と目的

近年、化石資源である石油を原料とした化学産業は、資源枯渇や環境破壊、およびエネル

ギーセキュリティ等の問題を抱えており転換期を迎えている。その代替原料としては、近年

注目を集めている非在来型天然ガスであるシェールガスやバイオマス等が挙げられる。特に

前者はエネルギー源として非常に期待されている。しかしこれらの資源は化学構造の違いか

ら、従来のナフサを原料とすることを前提として構築されてきた石油化学のプロセス技術を

そのまま適用することが出来ない上に、誘導しやすい製品群も異なる。そこでこれらの代替

資源を様々な物質に変換する以下のような反応技術が必要と考えられる。 ①すでに工業的に確立されている技術 ②技術的に可能ではあるが、工業化のための検討がさらに必要な技術 ③難度が高く今後の基礎研究が必要とされる技術

に分けられる。さらに、 ④新たな誘導体群を構築し新しい製品体系を作ることが可能な技術 特に、③、④の技術確立を世界に先駆けて行うことが出来れば、石油のみに依存する体質

から脱却し原料の多様化を行えることは、日本の国際競争力強化にも繋がると考えられる。 そこで、今後重要性が増すと考えられるシェールガス、およびバイオマスを原料として工業

的に有用な物質に転換できる触媒反応の技術動向を把握し、どのような分野に技術展開をし

ていくことが適切かを考えていくために、最新の技術開発動向、及び今後の可能性について

委託調査を行った。

調査内容 調査内容は下記のとおりである。 1. メタンを原料とした触媒反応技術 2. エタン, プロパン,ブタンを原料とした触媒反応技術 3. シェールガスの各成分利用 ―シェールガスを原料とした場合将来的に不足すると予測されるブタジエンと芳香族

製造の課題― 4. バイオマス利用触媒反応 5. 新たな誘導体群を開発できる触媒技術とその工業的な可能性についての調査 6. 新規触媒 7. バイオマス, シェールガス, 石油, 取り巻く環境がどう変化すればどの技術が生きるか

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調査報告 1. はじめに 日本の石油化学は1960年代アジアで先駆けて中東の安価な石油を原料としてスタートし

た。その後, 二度のオイルショックを体験したが為替レートの大幅な円高への変化や国内の

高度成長と続いて東アジアの経済成長に助けられて幸運にも順調に発展を遂げてきた。21世紀に入ると中東の石油随伴ガスを用いたエチレンプラントや中国などの新興国でのエチ

レンの建設がラッシュとなり,さらに石油価格は$100/bbl を超える高値となってきた。その

ため日本の石油化学は競争力を失い始め輸出の減少と輸入増加が始まってきた。そこに来て

米国でシェールガス革命が勃発した。シェールガスにはエタンが数%含有している。この安

価なエタンを用いたエタンクラッカーの収益率が高いために米国では多くの石油化学会社

が2014~2017年にかけて100万トン/年クラスのエタンクラッカーの建設を次々と始めた。

2018 年には北米で新増設によるエチレンの生産規模は約 1,500 万トンとなる。米国のエチ

レン誘導体の内需を約 1,500 万トン/年,とみて稼働率も入れると 2018 年以降約 1,600 万ト

ン/年のエチレン誘導体が輸出されると予想される。エタンクラッカーからはエチレンだけ

が製造されるため相対的にプロピレン, ブタジエン, 芳香族の世界的不足が予想される。さ

らに米国から安価なエチレン誘導体が日本に輸出されることになると国内のエチレン誘導

体の競争力が無くなり国内のナフサクラッカーそのものを停止せざるを得ない現象が生じ

る恐れもある。さらに欧米やブラジルでは地球温暖化問題に端を発したバイオマスの利用が

具体的に進み始め,バイオエタノールやバイオディーゼルは燃料として巨大な市場になって

いる。バイオマスを用いた化学品も工業的に生産が始まっている。バイオマス原料は従来の

可食資源から非可食資源に移ってきた。このような世界情勢の変化の中で石油化学の原料の

転換が求められている。合成ガスを経由する反応を除いた新たな原料を用いた化学品の合成

に関わる最新の触媒技術の調査結果を報告する。 2. シェールガス関連 2.1 メタンを原料とした触媒反応技術 2.1.1 メタンからメタノール, 酢酸等の合成 メタン酸素によるメタノールの合成では生成したメタノールがメタンより酸化しやすい

ために選択性を上げることは困難である。今のところ Ga2O3/MoO3 を物理混合した触媒が

ベストの性能を示しているが 455℃でメタン転化率 3.0%, メタノール選択率 22%と選択率

は低い。米国の Catalytica 社は酸化剤に発煙硫酸を用いた Pt-トリアジン触媒が転化率

88.9%で選択率は 80%と発表しているが, 発煙硫酸を用いることとメタノールを得るため

中間体の CH3OSO3H を加水分解すると希硫酸が生成してしまう。他に過酸化水素を酸化剤

として Fe-Cu/ZSM-5 が転化率 10%で選択率 90%という報告がある。N2O による酸化では

選択率は高い。メタンを酸化して得られるホルマリンから ZrO2を用いてギ酸メチルとして

CuCrOx で水素化分解してメタノールを合成する方法は, メタノールからホルマリンの高

選択性触媒が見つかれば工業化の可能性はあるが, 現状の合成ガスからのメタノール合成

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の製造規模と製造コストと競合するのは容易ではない。他にメタンと CO2 から酢酸を得る

報告もあるが平衡が高温低圧で Pd または Pt で反応が進むことのみ報告されている。他に

メタンとプロパンのクロスカップリングやアセトニトリルからアクリロニトリルの合成が

報告されている。 2.1.2 メタンからオレフィンの新たな製造方法 メタンの酸化二量化によるエチレンの合成は従来 LiO-MgO などの塩基触媒が研究され

てきたが転化率は 30%以下で C2の選択率は 20~30%である。ドイツの Fritz-Haber 研究

所の Dr. U. Zavyalova は Yb-Ce-Sr-Ox が 31.6%の収率で C2が得られることを報告してい

る。JOGMEC はイラン石油研究所の開発した Mn-Na-W-Nb/SiO2を用いても流動層による

身にパイロット試験を行ったが工業化に至っていない。オーストラリアの Broken Hill の開

発した BHP プロセスは Na-SrO3/ベントナイトを用い流動層で酸化カップリングと熱分解

を同一の反応器で行い, オリゴメリゼーションを組み合わせた炭化水素を合成するが, 収率は低く工業化されていない。2014 年 1 月米国の Siluria 社はブラジルの Braskem と共同

で米国TexasのBraskemの工場にメタンの二量化のパイロットプラントを建設することを

発表した。触媒はナノワイヤー触媒と言われるバクテリアの形状を利用して MgO を形成さ

せて Li を添加した触媒である。メタンの転化率は 20%で C2の選択率は 60%であるが反応

器をシリーズにつなぎ各反応器から PSA により C2 を分離し冷却し次の反応器に酸素を添

加することにより多段で C2の収率を上げるプロセスである。反応熱を他のプロセスで利用

するところに経済性があると言われている。メタンをハロゲン化し CH3Br としてから

ZSM-5 で脱ハロゲン化するとプロピレンや C4, C5 炭化水素を合成することができるが, HBr が副生するので Br2 のリサイクルが課題である。メタンから脱水素環化によるベンゼ

ンの合成では Mo2C/ZSM-5 が見つけられているが転化率は約 10%でベンゼンの選択率は約

80%である。触媒寿命はカーボンの生成によりきわめて短い。産総研の張戦国らは 700℃, 水素で再生できることを見つけ流動層用の触媒を開発し流動層装置を組み立てている。メタ

ンの利用はメタンの価格次第である。$10/MMBtu の価格ではメタンを原料とした化学品の

競争力はほとんどないと思われる。 2.2 エタン, プロパン,ブタンを原料とした触媒反応技術 エタンクラッカーによるエチレンの合成は吸熱反応であるため加熱炉が必要でエネルギ

ーロスも大きい。そのため酸化脱水素触媒として Ga-Zn/MOR や MoVOx 系複合酸化物が

研究されている。Eni や Dow は Pt ハニカム触媒を用いた Short Time reaction (高空間速

度)でエタンと酸素からエチレンの合成プロセスを開発している。しかし, 未だエタンクラ

ッカーを凌ぐ収率は得られていない。エタンの酸化による酢酸は MoVOx 系の複合酸化物を

用いて唯一サウジアラビアの SABIC 社において工業化されている。セラニーズはエタン酸

化による酢酸プロセスが開発できればメタノールのカルボニレーションによる酢酸よりも

安価だと言っている。他にエタンから K/SBA-15 や Rb-Fe/SiO2によりアクロレインが合成

できることが開示されている。Dow はエタンをエチルベンゼンの脱水素反応器に導入する

ことによってスチレンとエチレンに脱水素し生成したエチレンをベンゼンの原料のアルキ

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レーシヨンに用いることによりエタンとベンゼンからスチレンが合成できることを発表し

た。エタンの脱水素による芳香族では Shell は低濃度の Pt-Fe/ZSM-5 を見つけている。三

菱化学は CO2を用いたプロパンの酸化脱水素に Cr/ZSM-5 を水蒸気処理した触媒が転化率

は低いが劣化が少ないことを見つけている。プロパン法アクリロニトリルは旭化成ケミカル

ズによって工業化されているが NH3の消費量の低減が求められている。プロパン法アクリ

ル酸はプロピレン法を未だ凌ぐことができず工業化されていない。ブタン酸化による無水マ

レイン酸では 60%以上の収率は得られていない。新たにリンモリブデン酸をピリジンで修

飾した触媒から酢酸とアクリル酸と無水マレイン酸が合成できることが見つけられている。

プロパン, ブタンからの芳香族では Shell が低濃度 Pt-Ga/ZSM-5 を開発している。 2.3 シェールガスの各成分利用 ―シェールガスを原料とした場合将来的に不足すると予測されるブタジエンと芳香族製 造の課題―

2.3.1 エチレンとエチレン誘導体 シェールガスの掘削が本格化しエタン価格が安価となり米国ではナフサとの価格差が広

がり米国ではエチレン原料はナフサからエタンにシフトしている。さらに大規模なエタンク

ラッカーの建設がラッシュとなっていて 2018 年までには北米では新たに 1,500 万トン/年のエチレンの生産設備が増加する。米国ではエチレン誘導体の内需は約 1,500 万トン/年で

あるので稼働率も入れて約 1,600 万トン/年のエチレン誘導体が海外に輸出されることにな

る。米国からは量的にエタンが輸出されることはないが, 仮に輸出されて日本国内にエタン

クラッカーを新設してエチレンを製造し, ポリエチレンを製造しても米国の輸入品のポリ

エチレンは, はるかに安価である。日本でメタンを輸入して MTO プロセスでエチレンを合

成しても現状のナフサ由来のポリエチレンと価格的に大差ない。米国の輸出の主なものは塩

化ビニル, ポリエチレン, ポリスチレンである。今後, 世界的に需要の増加するポリオレフ

ィン需要に対しては米国のエタンクラッカーの新増設と中東のエタンクラッカーにより賄

うことができるが, 相対的にプロピレン, ブタジエン, 芳香族が不足することが予想されて

いる。さらに米国のエチレン誘導体の輸出によりナフサクラッカーの稼働率が下がるとプロ

ピレン, ブタジエン, 芳香族不足はさらに深刻となる恐れがある。 2.3.2 プロピレン 米国はシェールガスに含有するプロパンの脱水素によりプロピレンを合成する計画であ

る。UOPのOleflex, LummusのCatofin, UdeのSTARプロセスが既に工業化されている。

韓国, 中国では Catofin プロセスの導入が発表されている。米国ではプロパンは暖房などの

燃料やアルキレーションガソリンとして用いられているためエタンほど安価ではない。シェ

ールガス含有プロパンの脱水素で得られるプロピレンは$700/ton と推定されている。 中国ではメタノールからの MTP プロセスや MTO(DMTO-Ⅱ, S-MTO)プロセスが稼働を始

めた。

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2.3.3 ブタジエン 米国ではシェールガス含有ブタンの酸化脱水素の計画がある。FCC 副生ブテンの酸化脱

水素技術が開発されている。中国では 2 基稼働し始めた。 2.3.4 芳香族 リフォーマーのシビアリティーを上げた低圧運転により芳香族の生成量は増加するので

抽出装置の増設で芳香族を得ることができる。FCC などで副生する軽質オレフィンから

ZSM-5 により芳香族を製造する技術が旭化成から開発されている。LPG から芳香族の製造

では Ga/シリケートを用いた BP-UOP の Cyclar がサウジアラビアで稼働している。 3. バイオマス利用触媒反応 3.1 バイオエタノール 欧米では可食資源を用いたバイオエタノールやバイオディーゼル(FAME)は巨大な産業

となった。米国では可食資源の供給がほぼ飽和し, 原料は非可食資源にシフトし始めた。 水熱, 加水分解法とセルラーゼによる加水分解法が採用されている。ガス化してバクテリア

によるエタノール合成法も実証化プラントが稼働し始めた。 3.2 バイオディーゼル油 欧米では 200 以上が均一系触媒で油脂をメタノール交換した FAME(Fatty Acid Methlyester)が製造され用いられている。グリセロールは精製困難である。そのため固定層

や連続懸濁層プロセスが開発されている。パーム油を水素化するとオレフィンや酸素を含ま

ないディーゼル油が製造できる。フィンランドの Neste Oil はパーム油の水素化によるディ

ーゼル油の製造を工業化しているが, 水素化油をさらに水素化分解したバイオナフサも市

販しはじめた。米国の Elevance 社によりインドネシアでパーム油と石油化学原料のブテン

-1 を用いたメタセシス反応による航空燃料製造プラントが稼働を始めた。 3.3 バイオマス原料 米国では廃材や麦わら, コーン茎葉の微粉末と触媒を流動層で接触熱分解し燃料油や芳

香族を製造するプロセス CFP(Catalytic Fast Pyrolysis)の研究が盛んに行われている。

ZSM-5 では芳香族の収率が高い。藻類を用いたバイオ燃料や酵素遺伝子を持たせた藻によ

るエタノール合成のパイロットプラントが稼働し始めた。光を必要としない糖を原料とした

シアノバクテリアによる発酵法で油脂を製造する実証プラントも稼働始めた。 ブラジルでは変性酵素と微生物によるフアルネセンの合成が行われるようになった。 3.4 バイオ化学品 バイオエタノール, バイオメタノール, バイオエチレン, EG, バイオブタノール, フルフ

ラール, PG, 1,3-PDO, エピクロルヒドリンなどが工業化されている。今後, バイオメタノ

ール, メタセシスオイル, セルロースからの糖, コハク酸などの生産量が大幅に増加すると

予測されている。バイオプラスチックスでは PET, ポリオレフィン, PBS などが成長する。 3.5 セルロースの利用 非可食資源であるセルロースの加水分解に固体酸触媒, セルロースの水素化分解による

ソルビットの合成ではヘテロポリ酸や Ru/C が研究されているが, 触媒の使用量が多く, 発

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酵法に及ばない。セルロースから誘導されるグルコースを原料とした EG, イソソルビド, 5-HMF の直接合成が研究されている。 3.6 グリセロールの利用 グリセロールの脱水によるアクロレインの合成では H3PO4/Al2O3などの固体酸の他に CsSiW12O40/Al2O3や SBA-SO3H が高活性を示す。アクロレインはアクリル酸や 1,3-プロパ

ンジオールに誘導できる。グリセロールから 3-HPA (3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド)の合成では Cargill/Novozymes は遺伝子組み換えバクテリアによる発酵法を工業化した。

Dow-OPX BIO は工業化プラントの建設を予定している。 グリセロールを Ru で水素化するとメタノールが得られる。FAME の原料として使用可能

である。 3.7 グルコースの利用 グルコースを原料とした金属酸化物を用いた PG は既に工業化されている。エチレングリ

コールも併産する。フラクトースの脱水による 5-HMF は HPA により収率良く製造できる

がグルコースから 5-HMF は高収率で得られる触媒は未だ見つかっていない。 5-HMFからはジオール, ジカルボン, ジアミン, p-キシレンなどの高分子原料が誘導できる

重要なポリマー原料である。今後これらの周辺触媒技術の開発が進む。 3.8 バイオブタノール 中国では 20 世紀に行われていた ABE 醗酵が未だ広く行われている。ABE 醗酵は原料に

糖を用いられアセトン, エタノール,水素が副生する。最近, 新たに非可食バイオマスからブ

タノールだけが短時間で生成できる発酵菌が見つかり実証プラントが稼働を始めた。 3.9 バイオブタジエン ブラジルではバイオエタノールからバイオブタジエンの合成が検討されている。バイオ

ブタノールが安価に製造できるようになるとバイオブタノールの脱水, 酸化脱水素による

バイオブタジエンの工業化の可能性もある。 3.10 バイオコハク酸 PBS(ポリブチレンサクシネート)や 1,4-BG の原料となる発酵法によるバイオコハク酸の

工業化が始まった。数年以内に欧米で多くのプラントが稼働を始める。日本にも輸入品が入

ってくると予想される。 3.11 バイオマスその他の反応 過酸化水素を用いたエポキシ化では Ti-MCM-41 が高性能を示す。リグニンの水素化では

Ni 錯体を用いるとフェノール誘導体が製造できるが均一系以外では活性の高い触媒は見つ

かっていない。 4. 新たな触媒プロセス 4.1 新たな誘導体群を開発できる触媒技術とその工業的な可能性についての調査 今後開発または展開の可能性のある新しい触媒プロセスを示す。 4.1.1 シェールガス関連 1) メタン酸化によるホルムアルデヒド経由メタノール合成

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メタンの酸化によるホルムアルデヒドの収率の高い触媒が見つかれば, ギ酸メチルの水

素化分解によるメタノール合成の可能性はある。 2) メタンの酸化二量化 Siluria 社が Braskem 社と米国でパイロットの建設を決定した。C2の合計収率は 30%前

後と思われる。反応器は多段に設計され収率を上げている。合計収率が低くても発生熱や未

反応メタンの利用などを含めると経済性があるとしてパイロットに踏み切っている。 3) メタンからベンゼンの製造 Mo2C/ZSM-5 によるプロセスの開発が産総研によって行われている。流動層, 連続水素素

再生を組み合わせている。副生する水素がどれだけ有効に利用できるか問題。プロセスの開

発と安定した運転技術の開発が望まれるが, 原料として用いられるメタン価格次第である。 4) エタンの酸化脱水素によるエチレンの合成 ハニカム触媒を用いた Short Time Reaction によるエチレンの収率はかなり高いところ

まで来ている。加熱炉を必要としないので小規模のエチレンの製造プロセスと成り得る。

Dow が研究を進めている。 5) エタン酸化による酢酸 複合酸化物により既に SABIC で工業化されているが,さらに選択性は約 50%である。も

う少し収率を上げたい。エチレンが副生すれば, 酢酸とエタンの並産の可能性もある。エタ

ン酸化で酢酸が製造できれば最も安価な酢酸の製造プロセスになり得る。シェールガスの安

価なエタンを用いて工業化される可能性がある。 6) エタンとベンゼンからスチレンの製造 スチレンプラントの改造でエタンがエチレンに代替できれば工業化の可能性がある。 触媒だけでなくプロセス全体の開発が必要である。スチレンプラントのライセンサーで開発

が進むと予想される。 7) Advanced Catalytic Olefins (ACO) process 韓国のSK EnergyはKRICTと共同でプロピレン収率の高い流動層によるZSM-5を用い

たナフサ接触分解プロセスを開発した。ナフサを原料として軽質オレフィン特にプロピレン

収率が高い。原油価格が安価になれば重要な技術である。このプロセスからブタジエンは製

造されない。 8) SaaBre Process BP は合成ガスからメタノールを合成し気相カルボニル化により酢酸を合成し, 酢酸とメ

タノールから酢酸メチルを合成し酢酸メチルを Cu 触媒で水素化分解しエタノールとメタ

ノールとするプロセスを開発している。メタノールはリサイクルされる。合成ガスからエタ

ノールが合成できるプロセスであるのでエタノールの燃料としての需要が増加すればシェ

ールガスから燃料合成のプロセスになりえる技術である。 9) 合成ガスから直接エタノールの合成 合成ガスから直接エタノールの合成プロセスが積水化学によって開発されている。反応器

を二段として, 二段目では Cu 系の触媒を用いて副生するカルボニルを水素化している。触

媒寿命が長くエタノール収率 70%以上で得られれば, 工業的エタノール合成法になり得る。

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10) 気相カルボニル化によるエタノールの合成 DME を気相でカルボニル化すると酢酸メチルが合成できる。酢酸メチルの水素化分解に

よりエタノールが合成できる。カルボニレーションは従来, 均一系触媒により液相で行われ

ていた。ゼオライトでカルボニレーションができれば他の反応に応用可能である。メタノー

ルを安価に輸入しエタノールを合成するプロセスとして用いることも可能である。 11) 酢酸の還元によるエタノールの合成 シェールガス由来の安価なメタノールをカルボニル化して得られる酢酸の還元によるエ

タノール合成プロセスがセラニーズにより開発され工業化された。酢酸が安価に製造できれ

ば今後発展する可能性がある。 12) LanzaTech 製鉄所のCO,CO2排ガスからのバクテリアによるエタノール合成はパイロットを終了し, 工業化プラントの建設が開始されている。但し, このプロセスには水素が必要である。バイ

オマスの合成ガスからエタノールの合成が可能である。プラントからの CO2排ガスを削減

できる技術でもある。水素をいかに安価に製造できるかにかかっている。 13) プロパンの CO2による酸化脱水素 プロパンが安価に入手できれば, CO2を酸化剤としプロピレンが製造できるとともにCO2

が削減でき, 副生する CO は化学品原料や燃料として使用可能である。プロパンの価格次第

で工業化の可能性は高い技術である。 14) ブテンの酸化脱水素によるブタジエンの製造 ブタジエン不足が予測されているためFCC 副生ブテンの酸化脱水素によるブタジエンの

合成は具体化しつつある。三菱学は多管反応器(BTB プロセス), 旭化成は流動層(BB-Flex)でのプラントをパイロットで実証し工業化プラントの建設を計画している。 15) HS-FCC

JX 日鉱日石はプロピレン, ブテンの収率の高い HS-FCC プロセスを開発している。石油

化学品原料の製造プロセスとして期待できる。石油化学品原料の製造プロセスとして極めて

重要な技術である。今後, プロピレン, ブタジエン, 芳香族製造原料の供給プロセスとなる。

FCC で生成する LCO(軽質軽油)には多環芳香族が含有する。ZSM-5 による水素化分解によ

る芳香族製造プロセスが開発されている。UOP は固定層プロセス(LCO-XTM), JX 日鉱日石

エネルギーは流動層の FCA プロセス(Fluid Catalytic Aromaforming)。これらの技術は工

業化される可能性が大きい。 16) E-FLEX 旭化成ケミカルズはエタンの熱分解による粗エチレンをプロピレンに転換する ZSM-5 を

用いた流動層プロセスを開発している。旭化成の開発している B-B Flex や α-プロセスをイ

ンテグレーションするとエタンからエチレンとプロピレンやブタジエン, 芳香族が任意に

製造可能なプロセスとなる。米国で工業化の可能性がある。 17) エチレンからプロピレンの合成 SAPO を用いた ETP プロセスが開発されている。従来のナフサクラッカーの途中に導入

すると任意にエチレン/プロピレンの生産の割合を変えることができる。

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18) TDI の合成 ジアミノトルエンのカルバモイル化に Au/CeO2が高活性を示す。Au 触媒は芳香族ニトロ

化合物の水素化に特異的な活性を示すのでジニトロトルエンから TDI の前駆体のジカルバ

モイルがワンポットで合成可能である。 19) シクロヘキサノンオキシムの新製法

ナノスケールの Au が芳香族ニトロ化合物の水素化に特異的に活性を示すことが知られ

ているが, Au/TiO2により 1-ニトロ-1-シクロヘキセンはシクロヘキサノンオキシムに水素

化することができる。 20) カプロラクタム合成触媒 CoⅡMnⅢ/AlPO-36 により無溶媒空気酸化によるアンモキシディーションでカプロラクタ

ムが合成可能である。 4.1.2 バイオマス関連 1) バイオリファイナリー イタリアのM&G社の開発したスチームメカノケミカル法(PROESTA)がリグのセルロー

スの前処理として工業化されている。糖化発酵を同時に行う (SSF: Simultaneous saccharification and fermentation) 酵素, 微生物によるエタノール製造では 70%以上の収

率でエタノールが得られている。今後この方式のプロセスの導入が進む。非可食資源を用い

たバイオエタノール経由のエチレンやエチレングリコールの製法としても今後, 市場に出

てくることが予想される。 2) Humming bird プロセス BP はバイオエタノールの脱水触媒として C4生成量が少ないエチレンの製造触媒として

ヘテロポリ酸/SiO2を開発した。Humming bird プロセスと名付けられた。今後, バイオエ

タノールの脱水によるエチレンプラント建設が進めば採用される可能性が高い。 3) エタノールからブタジエンの合成 エタノールが安価に製造できれば, エタノールからブタジエンの製造の可能性があり得

る。現状の酸塩基触媒では収率は 70%前後であり寿命も短いのでさらに収率と寿命の向上

が必要である。 4) バイオブタノール 従来のABE 醗酵は糖が原料であるが, 新しい菌を用いた非可食資源から n-ブタノールや

イソブタノールの合成プロセスが開発されている。n-ブタノールはブタジエン原料と成り得

る。今後のブタジエンの価格次第で工業化される可能性は大きい。 5) メタセシスによる航空燃料 米国Elevance Renewable Science社はインドネシアでパーム油とブテン-1からメタセシ

ス反応によるジェット燃料製造の工業化に成功した。日本の企業も同様の製造を東南アジア

で行えない理由はない。

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12

6) バイオコハク酸 この数年内にバイオコハク酸プラントが次々と建設される。C4誘導体の一つの供給源と

して THF, BGL, 1,4-ブタンジオール, ポリプチレンサクシネートの原料として用いられる。

コハク酸の誘導体の開発に必要な触媒の開発が進む。 7) グリセロール グリセロールが安価に供給されればグルコースから 3-HPA やアクロレイン経由での アクリル酸, 1,3-プロパンジオールの合成が可能である。プロピレンの価格次第である。 いつでも工業化できるところまで開発は進んでいると思われる。 8) グルコースから 5-HMF 澱粉からグルコースは容易に得られるが,非可食資源を用いたグルコースの製造技術はま

だ確立されたと言えない。セルロースからグルコースは発酵法が優れている。グルコースか

ら誘導できる 5-HMF は極めて重要な中間体であるがグルコースから直接 5-HMF に転換で

きる触媒は未だ見つかっていない。開発が望まれる。 4.2 新規触媒 工業触媒として開発されている新規触媒を示す。 1) メタセシス触媒,アルカリ-WO3/ハイドロタルサイト又は WO3-CaO/Al2O3 2) エチレンの気相二量化触媒, 低濃度高シリカ Ni/SiO2-Al2O3 3) 炭化水素をプールする SAPO-34 (CHA)型ゼオライト 4) メタンの活性化触媒, Ag クラスター/Y-ゼオライト 5) Mo3VOx 結晶構造による転化率の異なる触媒 6) 固体アルキレーション触媒 (Pt-HY) HF 又は硫酸代替 7) ゼオライトの配位機能利用 メタノール共存下での反応 8) Nanowire Catalyst バクテリアの表面構造を利用した高活性触媒 9) エタノール脱水 HPA/SiO2触媒 10) NxCat 技術 (Headwaters) 高選択性過酸化水素触媒 11) AuNiOx ナノ粒子触媒, 酸化エステル化触媒 12) SMSI 触媒, Pt/Nb2O5高選択性 H2酸化触媒, 13) OMX 製法による FT 合成 Co 触媒 14) Sc3/InO3触媒によるエタノールからプロピレンの合成触媒 15) 構造体触媒, CDTECH 触媒蒸留 16) 構造体触媒, ハニカム超深度脱硫触媒 17) ナフテンの脱水素触媒, 千代田化工 Pt/SO42-/Al2O3 18) Velocys 社マイクロチャンネル触媒 小型 FT 合成 19) CompactGTL 社の波板フォイル触媒 小型 FT 合成 20) MOF(Metal Organic Framework)

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5. バイオマス, シェールガス, 石油, 取り巻く環境がどう変化すればどの技術が生きるか 下表にまとめた。 影響 現象 対策 必要技術

シ ェ ー

ルガス 米国の安価なエチレン誘

導体の東南アジアや日本

市場への参入により日本

はエチレン誘導品市場を

失う。

米国でのプラント建

設 メタン, エタン, プロパ

ンの直接利用技術 米国から安価な原料

の輸入 (エチレン誘導体, メタノール(DME) )

高付加価値化学品の製造

技術 Ex. 電材 , 機能化学品 , 医薬品

プロピレン, ブタジエン, ベンゼンが世界的に不足

する。

FCC の石油化学の利

用 FCCからC3,C4の分離技

術 ブテンの酸化脱水素技術 LCO からの芳香族の製

造技術 海外の安価な石油化学製

品の流入 最安価な原料の利用

(含石炭の利用) C1 を用いた含酸素化合

物の製造技術 バ イ オ

マス 世界的にバイオマスの利

用が広がる。 非可食資源の利用が広ま

る。

バイオマス原料の東

南アジア/南米での製

セルロースから糖の製造

技術(含む発酵法)

バイオマス原料から

化学品の製造 グリセロール→アクロレ

イン, PG, 1,3-PG 糖→5-HMF, イソソル

ビドの製造技術 5-HMF の誘導体の製造

技術 リグニン→フェノール

発酵法によるバイオブタ

ノール, バイオコハク酸の

製造が本格化する。

バイオエタノールの

輸入 ブタノール , コハク

酸の輸入

バイオエタノール→ブタ

ジエン, 酢酸エチル, 酢酸ビニル,EG, バイオブタノール→ブテ

ン, ブタジエン バイオコハク酸

→1,4-BG, THF

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ICLabo

『原料転換に関わる最新の触媒反応技術動向』調査

2014年 3月 6日(木 )

アイシーラボ

1

調査報告書

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ICLabo

2

調査の目的

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日本のエネルギーと石油化学の変遷

1960 年代 エチレンコンビナート建設

1979年第二次オイルショック $ 8 /bbl → $ 39 /bbl

1973年第一次オイルショック $ 3 /bbl → $ 12 /bbl

石油価格の高騰化

国内高度成長

新興国の高度成長

プラザ合意により円高

2010年 新興国需要増 原油 > $ 100 /bbl 円高

50 年

シェールガス革命

中国エチレンプラント新・増設ラッシュ 中東諸国エチレンクラッカー新・増設

バイオマス 地球温暖化

第 4次中東戦争勃発

イラン革命

失われた20年

京葉エチレン 1994年(最後のエチレンプラント)

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石油化学を取り巻く世界的環境の変化

4

石油価格の推移と予測 ICLabo

eia

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5

国名 企業名 生産能力 万トン/年 稼働 イラン #8, 11, 12, 13 540 2015以降 カタール

QAPCO 18 2013 シェル 130 2016以降

サウジアラビア

シェブロン・フィリップス 130 2012 ダウ・アラムコ 130 2016以降

UAE ブールージェ 150 2014 合計 1,098

中東エチレン生産量推移と予測 ICLabo

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中国エチレンプラント能力推移と予測 ICLabo

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中国DMTO プロセスの導入

DMTO-Ⅱ実証プラント (メタノール50 ton/day) 7

ICLabo

会 社 場 所 万トン/年 備 考 久泰能源集団公司 河北省唐山市 100 2015 中国石化南京化工公司 山西蘭花煤炭実業公司

山西省晋城市 60

山西陽煤集団公司 山西省孟県 60 山西焦煤集団公司 山西省臨汾市 60 香港中溢集団投資公司 オルドス市 60 中煤黒龍江煤炭化工集団公司 内モンゴル自治区ホロンバイル市 60 華能呼倫貝爾能源公司 内モンゴル自治区満州里市 60 錦化化工集団公司 遼寧省 30 李長栄化工(台湾) 調兵山市 鉄法煤業集団

遼寧省

山東魯能発展集団公司 黒龍江省宝清県 60 聯想控股公司 山東省棗庄市 100 2013 中国国家開発投資公司 鄭州市

河南省 >60

湖北三寧化工公司 湖北省 30 2013 正大グループ 陝西省楡林市 100 進捗不明 陝西延長石油 延安市

陝西省富県 60 建設

蒲城清潔能源化工公司 陝西省 70 建設中 GaiL India 華山化学工業集団公司

陝西省

寧夏宝豊能源集団公司 寧夏回族自治区 60 2013 国家開発投資公司新疆伊犁電化公司 新疆ウイグル自治区ニルカ県 60

中煤能源伊犁煤電化公司 新疆ウイグル自治区チャプチャル・シボ自治県 60

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世界のエチレン生産量と日本のエチレン生産量推移 ICLabo

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シェールガス革命

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世界の可採エネルギー資源

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世界の天然ガス価格指標 $/MMBtu

アメリカ・ ルイジアナ州にあるヘンリーハブ(パイプラインが交差するガス集積地)のスポット価格 輸送 欧州(パイプライン) 日本(特殊タンカー) 液化温度 -160℃ 価格 石油 USD 80 bbl = USD 13.79 / MMBtu $3/MMBtu = $17.4 / bbl

$3/MMBtu

NBP: National Balancing Point ロンドンのHeren Energy 発表欧州価格指標

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価格 石油 天然ガス 石炭 天然ガス シェールガス

$/bbl 100 $/MMBtu 17 10 3 5 $/ton 100 $/bbl 石油発熱量換算 100 105 62 19 32 22

熱量換算エネルギーコスト

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日本の 石油化学

中東のエチレン 生産増

中国のエチレン生産増

シェールガス革命

自然エネルギー バイオマス

石油化学を取り巻く 世界的環境の大きな変化

老朽化

石油価格高騰

再生可能 エネルギー

地球温暖化

世界のエネルギー 需要増加

CO2の増加

資源国の台頭 開発途上国の

台頭

可食資源から非可食資源への移行

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原料転換に関わる最新の触媒反応技術動向調査

1. メタンを原料とした触媒反応技術 2. エタン, プロパン,ブタンを原料とした触媒反応技術 3. シェールガスの各成分利用 シェールガスを原料とした場合将来的に不足すると予測される ブタジエンと芳香族製造の課題 4. バイオマス利用触媒反応 5. 新たな誘導体群を開発できる触媒技術とその工業的な可能性についての調査 6. 新規触媒 7. バイオマス, シェールガス, 石油, 取り巻く環境がどう変化すればどの技術が生きるか

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ICLabo

メタンを原料とした触媒反応技術

15

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ICLabo

CH4

HCN

HCHO

CH3OH

CH3COOH

CH2=CH2

CH3X

C4, C5

Bz

C3H6

C3H6 + CH2=CH2

メタン誘導品 メタンから直接誘導できる化学品を示す。HCNだけがPt-Rh網を用いて工業化されているが他は工業化されていない。

16

CH2=CHCN + CH3CN/O2

+ HX

+ HX

+ NH3/O2

+ O2

+ O2

+ O2

+ O2

- H2

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ICLabo メタンからメタノールの合成 メタンからメタノール合成法をまとめる。均一系によるSO3酸化とFe-Cu/ZSM-5を用いたH2O2酸化は収率が高いがいずれも 酸化剤が必要である。SiO2を触媒に用いた酸素酸化によるホルムアルデヒドを経由したメタノール合成は収率は低いが触 媒プロセスとして開発の可能性はあると思われる。しかし, 現行法の合成ガスからの大規模メタノール合成プロセスと競合す ることは容易ではない。

17

CH4

N2O

Fe/ZSM-5

O2

Ga2O3/MoO3

SO3

Pt/Triazine

H2O2

Fe-Cu/ZSM-5

ナノパルスプラズマ法, 超臨界, 酵素法

H2SO4

PdSO4

O2

SiO2

HCOOCH3

HCOOH

HCHO

CH3OH

CH3OH

CH3OH

CH3OH

CH3OH

CH3OH

CH3OH

CH3OH

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ICLabo

触媒 温度 ℃ CH4 転化率% MeOH選択率% 調製法 Cu/MoO3, WO3 450 <1 <20 含浸 Co/MoO3, WO3 450 <1 <14 含浸 Fe/MoO3, WO3 450 <1 <14 含浸 V/MoO3, WO3 450 <1 <16 含浸 Ga/MoO3, WO3 450 <1.3 <11 含浸 Ga2O3/MoO3 455 3.0 22 物理混合

最近の固体触媒によるメタンの直接酸化によるメタノールの合成触媒

メタンの直接酸化によるメタノールの合成

Single Step Oxidation of Methane to Methanol Towards Better Understanding P.Khirsariya,R.K.Mewada, Procedia Engineering 51(2013)409-415

メタンの直接酸化によるメタノールの合成は生成したメタノールがメタンよりも酸化しやすいために選択性は上がらない。 しかし,自然界ではメタン資源化細菌体内のメタンモノオキシゲナーゼが温和な条件でメタンをメタノールに転換している。 コロンビア大学はアンモニア酸化バクテリア(AOB)が従来より高い収率でメタンからメタノールが得られることを報告している。 (the ACS journal Environmental Science & Technology) 発酵法によりメタンからメタノールが合成可能であることからメタンからメタノールの触媒による直接法が可能であると考えられている。 固体触媒では担体にMoO3またはWO3を用いたCo, Fe, V, Gaが僅かな活性を示す。 Ga2O3をMoO3に物理混合した触媒が比較的高い活性を示すが, それでもCH4転化率3.0%でメタノールの選択率は22%と低い。 固体触媒における最近のメタン転化率を示す。

18

CH4 + 1/2 O2 → CH3OH

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ICLabo

N

N

N

N

[2,2’]bipyrimidinyl Pt

メタンからのSO3酸化によるメタノールの合成 Catalytica社はメタンを発煙硫酸で[2,2’]bipyrimidinyl Ptを用いてスルフォン化し, 加水分解することによりメタノールを高収 率で得る方法を見つけている。Hg(Ⅱ)錯体ではCH3OSO3H(Methylbisulfate)の収率は43%であったが, Pt錯体では転化率90%, 選択率81%,収率72%と高い。 均一系では触媒の分離が困難であったが, Ptをトリアジン構造体に取り込んだ(Pt-covalent triazine-based framework) 固定化触媒では 繰り返し使用が可能となり, 最初の活性は低いが2回目以降安定した活性を数回以上示す。 反応に発煙硫酸を使用しなければならないことと, CH3OSO3Hの加水分解により希硫酸が生成してしまうことが問題である。 さらに還元されたSO2をSO3に酸化する必要があり工業化は難しい。

Conv. 88.9%, Sel.80.0% 200℃, 500psig(3.5 MPa), 4hrs

R. Palkovits, et al. Angewandt Int. Ed. 2009, 48, 6909-6912 19

CH4 + H2SO4 + SO3 → CH3OSO3H + H2O + SO2 CH3OSO3H + H2O → CH3OH + H2SO4 SO2 + 1/2 O2 → SO3 CH4 + 1/2 O2 → CH3OH

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ICLabo 過酸化水素酸化によるメタノールの合成 メタンからFe-Cu/ZSM-5を用いると過酸化水素により選択性良くメタノールを合成することができる。

メタン転化率は10%と低いがメタノールは90%の選択率で得られる。 FeはC-H結合の酸化を促進し, Cuはメタノールのホルムアルデヒドへの酸化を抑制している。 選択性は90%と高いが酸化剤に過酸化水素を使うため酸化反応に過酸化水素を製造するための水素が必要となる。 DowのサポートでCardiff大学が研究を行っている。 CH4 + H2O2 → CH3OH + H2O

Fe-Cu/ZSM-5

Conv. 10% Selectivity: 90%

C.Hammond et al. Angewandte Int. 51, 21, 5129-5133 (2012) 20

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ICLabo

メタンのN2O酸化によるメタノールの合成 メタンをN2Oで気相酸化すると高収率でメタノールを得ることができる。

Fe/ZSM-5, を用い, CH4/N2O=1:1 , 160℃の条件で反応させると転化率60~80mol%, 選択率80~95 %である。 DMEが副生するため分離が必要となる。 酸化剤として必要なのN2Oはアジピン酸製造プラントでは副生するが, N2Oを製造するにはNH3を原料とする新たな設備が必 要である。 CH4 + N2O → CH3OH + N2 N2OはNH3からMnBiOxにより製造可能。 NH3/N2/O2(9/82/9) MnBiOx Conv. 99.4%, Sel. 88.6%

21 E. V.Starokon et al. J. Catal.300(2013)47-54

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ICLabo

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メタンの酸化によるホルムアルデヒド経由メタノール合成 CH4/O2/N2=20/10/70 (mol %)を650℃でSiO2触媒に通すとメタンの転化率は約30%で約17%のホルムアルデヒドが生成する。 SiO2以外の他の金属酸化物や混合金属酸化物でもメタンの転化率は20~50%で10~20%のホルムアルデヒドが得られる。 未反応のメタンはリサイクルされる。生成されたホルムアルデヒドは分離せずにZrO2触媒用いれば190℃で転化率85%, 選択 率99%でギ酸メチルが得られる。あるいはCaOやMgOなどの塩基触媒を用いれば100~180℃でメタノールとギ酸が得られる。 カニツァロ反応での転化率と選択率は90%以上である。メタノールとギ酸を反応させギ酸メチルとし水素化分解すればメタ ノールが得られる。水素化分解は100~230℃, CuCrOx触媒により行われギ酸メチルの転化率は85~90%, メタノール選択率 は90%以上である。得られたギ酸とホルムアルデヒドから190℃でWO3/Al2O3触媒により40%の収率で2:1のメタノールとギ酸メ チルを得ることもできる。ギ酸の転化率は70%である。

USP 7,846,978 University of Southern California George A. Olah

CH4 + O2 → HCHO + H2O 2 HCHO → HCOOCH3

2 HCHO + H2O → CH3OH + HCOOH CH3OH + HCOOH → HCOOCH3 + H2O

HCOOCH3 + 2 H2 → 2 CH3OH

CH4

HCOOCH3

HCHO CH3OH

HCOOH

CH3OH O2

ZrO2

H2O

CaO, MgO

H2

CuCrOx

WO3/Al2O3

SiO2

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ICLabo

23

メタン酸化によるホルムアルデヒド Fe, Mo, Ni, Mg, Bi, /SiO2混合酸化物が高選択性でホルムアルデヒドを与える。 転化率8.9%で選択率が86.5%という報告がある。(越後谷) 5%FePO4/SBA-15(メソポーラスシリカシリカ)を用いるとメタン転化率10%以下で高選択率でホルマリンが得られている。(王)

越後谷ら et al. 第15回石油化学討論会講演予稿集, 2E, 01

10%Fe2O310%MoO310%NiO10%MgO10%Bi2O3/SiO2

CH4/O2=3/5 600~650℃ CH4 Conv. 8.9% HCHO Sel. 86.5%

王 野, 大塚潔, 触媒, Vol.46, No.7, 595 (2004)

FePO, FePO4/SBA-15

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ICLabo 他のメタン酸化によるメタノール合成技術 触媒以外の方法ではプラズマ法, 酵素, 超臨界水での反応が研究されている。 ナノパルスプラズマ法 東工大の野崎はナノパルスプラズマ法で常温常圧下メタノール収率17~30%を達成している。(東工大、野崎) 量産化技術は不明 超臨界水中での酸化 超臨界水中でのメタンのメタノールへの直接酸化、メタン転化率1~3%,メタノール選択率35% (Joo H.Lee) CH4転化率(O2/CH4=5/95) CH3OH選択率 410℃, (O2/CH4=5/95,3/97)

Direct partial oxidation of Methane to Methanol in supercritical water, J.H.Lee et al,J.Supercritical Fluids, 1996,9,99

いずれの 技術も工業化が可能な技術レベルには達していない(全て研究段階)。

24

ナノパルスプラズマ法 超臨界水中での酸化

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ICLabo メタンから酢酸の合成 メタンの酸化による酢酸の合成では酸化剤にK2S2O8(過硫酸カリウム)を用いたVO(acac)2による方法が九州大学の谷口らに よって研究されたが酸素酸化では反応は進行しない。硫酸酸化では微量メタノールと酢酸が得られている。 メタンとCO2から酢酸が合成できることが確認されている。

25

CH4

K2S2O8

H2SO4

Pd++

VO(acac)2

+ CO2

+ CO

K2S2O8

+ CO2

Pd/SiO2

VO(acac)2 CF3COOH

CF3COOCH3

CH3COOH

CH3COOH

CH3COOH

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ICLabo メタンとCOから酢酸の合成 九州大学の谷口らはメタンとCOから酸化剤にK2S2O8(過硫酸カリウム)を用いVO(acac)2により高収率で酢酸が得られること

を見つけている。触媒にVO(acac)2を用い K2S2O8を酸化剤とし溶媒にCF3COOHを用いると酢酸がメタンベース97% の収率で得られている。

酸化剤にK2S2O8を用いないとほとんど反応は進行しない。酸素酸化では触媒は見つかっていない。

K2S2O8 → 2KHSO4

CH3 + CO → CH3COOH CH4 0.5MPa, CO 2.0.Mpa, 80℃, 20h VO(acac)2 K2S2O8/CF3COOH AcOH yield 97% / CH4

谷口裕樹, 北村二雄. 藤原祐三, 40th石油学会年講演要旨 , 80, (1997) Kurioka, M., Nakata, K., Jintoku, T. taniguchi, Y. Takaki, K, Fujiwara, Y, Chem. Lett., 1995, 244 26

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ICLabo

27 Jiongliang Yuan, lu Liu, Lanlan Wang, Cungjiang Hao, Catal Lett (2013) 143, 126-129

メタン酸化による酢酸の合成 K2PdCl4と H5PMo10V2O40を触媒としてメタンの酸素酸化により酢酸が合成できることが北京大学のJiongliangらに よって発表された。生成量は僅かである。 CH4 + O2 + CF3COOH → CF3COOCH3

K2PdCl4/H5PMo10V2O40 CH4 + O2 + CF3COOH → CH3COOH + CF3COOCH3

H3PV2Mo10O40

CF3COOH: 10 ml, Cl-/ =50 (mol), 80℃, K2PdCl4: 0.05 mM, H5PMo10V2O40: 0.050 mM, CH4: 3.0 Mpa, O2: 0.5 MPa

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ICLabo メタンの硫酸酸化による酢酸の合成 メタンのPdSO4などのPd++による直接酸化が報告されている。反応率は低いが, メタノールと酢酸の選択率は高い。

2 CH4 + 4 H2SO4 → CH3COOH + 4 SO2 + 6 H2O 4 SO2 + 6 H2O + 2 O2 → 4 H2SO4

2 CH4 + 2 O2 → CH3COOH + 2 H2O

Pd(Ⅱ)

Department of Chemical Engineering, University of California, Berkeley, USA

Pd2+/Cu2+/O2 CH4 → CH3COOH

H2SO4 180℃

28 USP 7,368,598B2 University of South California

Mark Zerella, Sudip Mukhopadhyay, Alexis.T.Bell, Chem. Commun, 2004,1948-1949 DOI: 10.1039/B405549G

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ICLabo メタンとCO2から酢酸の合成 メタンとCO2から酢酸の直接合成は, 平衡値が極端に高温, 低圧であるため反応は進みがたい。実験もしがたい。

CH4 + CO2 → CH3COOH 米国ノースカロライナ大学のWilcoxらはPd/カーボン粉末で反応が進行することをDiffuse reflectance infrared Fourier transform spectroscopy (DRIFTS)で確認した。反応はSyngas経由では進行していない。 E.M. Wilcox, M.R.Gogate, J.J. Spivey, G.W.Roberts (NC State University) Studies in Surface Science and Catalysis, 259 (2001)

TPRにより反応の可能性を調べ 5%Pt/Al2O3がPd/カーボンよりも優れていることを発表している。 Esther M. Wilcox, George W. Roberts, James J. Spivey, Catalysts Today, 88 (2003) 83-90 中国北京鉱山大学のDingらはメタンとCO2から酢酸の直接合成はCH4はPd表面で解離吸着しCHxが生成しCHxに CO2が反応しCH3COOHが生成すると解析している。Pd/SiO2がRh/SiO2より高い活性を示す。

29 Yi-Hui Ding, Wei Huang, Yong-Gang Wang, Fuel Processing Technology 88 219-324 (2007)

S.V. 12,750 ml/g cat/h

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ICLabo メタンのカルボキシレーションによる酢酸ビニルの合成 メタンとCO2, アセチレンから酢酸ビニルが製造できる。 CH4 + CO2 + CH≡CH → CH3COOCH=CH2 ΔG (298K) = + 7 kJ/mol Pt/Al2O3とZn(AcO)2/C混合触媒を用いるとCH4とCO2からPt/Al2O3により酢酸が生成し酢酸がZn(AcO)2/Cにより アセチレンと反応し酢酸ビニルが生成する。 Pt/Al2O3は325~400℃で劣化現象を生じる。カーボン析出と思われる。

James J. Spivey, Esther M. Wilcox, George W. Roberts, Catalysis Communication 9 (2008) 685-689

30

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ICLabo

31

Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 5366 –5369 Daravong Soulivong, Christophe Copret,Jean ,Thivolle-Cazat, Jean-Marie Basset,Barry M. Maunders, Richard B. A. Pardy, Glenn J. Sunley

メタンとプロパンのクロスカツプリング アルカンのクロスカップリング反応によりメタンとプロパンからエタンを得ることができる。

触媒に求電子性Ta水素化物/SiO2を用いてメタンとプロパンを反応させるとエタンが85%以上の収率で得られる。 副反応として水素化分解と自己メタセシス(Self-metathesis) 反応が生じる。 反応時間は16時間以上必要である。

CH4 + C3H8 → 2 C2H6 H2 + C3H8 → CH4 + C2H6 C3H8 → ½ C2H6 + ½ C4H8

触媒: (≡SiO )2Ta-H

CH4/C3H8=1125/1, 250℃, >16h

エタン> 85%

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ICLabo

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+ + O2 → CH2=CHCN + 2H2O

CH3CN/CH4/O2/H2O=1/2/0.65/2.4 O2: 12vol% KBr/quartz SV 7,680 h-1

800℃ Conv. 31% Sel. 68.0% CH3CN base CH2=CHCN 13.8% HCN 24.4%

USP 4,031,128 (1977)

CH3CN

メタンとアセトニトリルからアクリロニトリル 古い報告であるがロシアからメタンとアセトニトリルからアクリロニトリルの合成特許が開示されている。

CH4

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ICLabo

メタンからオレフィンの新たな製造方法

33

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ICLabo

従来, LiO-MgOなどの塩基触媒が研究されてきた。しかし, 選択性が低く触媒寿命も短かった。 2 CH4 + O2 → CH2=CH2 + 2 H2O イラン石油研究所RIPI( Research Institute of Petroleum Industry)はMnNaWNb/SiO2触媒を開発した。 メタン/酸素 = 4の条件でメタン転化率約35%, エタン+エチレン収率=28% である。

触媒組成は2% Mn, 1.8% Na, 2.8% W, 1.9% Nb/ SiO2 JOGMECは工業化に向けてRIPIと共同開発を行った。RIPIがOCM流動床触媒を開発しJOGMECがOCM流動床ミニパイロッ トプラントを開発しプロセスの開発を行ったが工業化に至っていない。

OCM (Oxidation Coupling of Methane) プロセス

USP 7,902,113 RIPI 34

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ICLabo

オーストラリアのBroken HillはBHP プロセスをCSIRO (Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization)と共 同で開発したプロセスでメタンのカップリングとオレフィンのオリゴメリゼーションを組み合わせた燃料の合成プロセスである。 メタン95%, O2 5%, 750℃でのNa-SrCO3/ベントナイトによるメタンの転化率は6.6%, 炭化水素の選択率は90% 炭化水素収率は 5.9%である。プロセスは.流動層, 酸化カップリングと熱分解を同一の反応塔で行い酸素は酸化カップリングゾーンで完全に消 費されエタンは熱分解ゾーンの前に導入, 熱分解に必要な熱は酸化カップリングの熱を利用している。触媒粒子は二つのゾ ーンを循環し熱を移動させ二つの反応の温度を均一にしている。副生するCOはメタンとして循環使用される。デザインでは メタンから36%のエチレンが生成すると報告されている。

BHP (Broken Hill Proprietary) プロセス

USP 5,066,629 Broken Hill proprietary, ChemSystem Methane to Ethylene-BHP Process 92S3 March 1994 35

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ICLabo

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Siluriaのメタンの酸化二量化プロセス Siluria社はバクテリアを用いたナノワイヤー触媒を開発した。ナノワイヤー触媒はBulkの触媒と比べて活性が高く他の触媒 と比べて約200℃低温で反応が可能である。20%Mg5%NaLa2O3ナノワイヤ-触媒では CH4/O2=5.5, 650℃, メタン転化率20%, C2選択率60%である。Siluria社は反応器をシリーズにつなぎ各反応器の出口を冷却し酸素を導入しC2濃度を上げるプロセス を開発した。 ブラジルのBraskem社は米国Texasのラポルテにあるプラント内に2014年約15億円を投入してSiluriaのパイロッ トプラントを建設し実証する予定である。発生する熱を他のプラントで用いることができるために経済的に成り立つと説明さ れている。 注) ナノワイヤー触媒については新規触媒で説明 2 CH4 + O2 → CH2=CH2 + 2 H2O ΔH = -67 kcal/mol

US2012/0041246A1 Siluria WO2013/177433 A2 Siluria

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メタンの二量化 最近報告されているメタン酸化二量化触媒を示す。Yb-Ce-Sr-OxがC2収率が高い。早稲田大学の関根らはSr-La2O3や,

La-ZrO2などの半導体触媒が電場をかけると低温で反応が進むことを見つけている。

37

原 料 触 媒 Temp.℃ C2収率 文 献

CH4/O2/Inert 0.14/0.07/0.79

Yb-Ce-Sr-Ox 750 31.6 U.Zavyalova,M.Holena,R.Schlogl,M.Baerns ChemCatChem,3,1935,2011

CH4/O2/H2O/He 0.04/0.01/0.004/0.95

Mn/Na2WO4/SiO2 800 26 K.Takanabe,E.Iglesia Angew.Chem.,Int.Ed.,47,7689,2008

CH4/H2

0.4/0.6 Pt/Al2O3 340 22 M.Mlotek,J.Sentek,K.Krawczyk,K.Schmidt-Szalowski

Appl. Catal.A:Gen.,366,232,2009

CH4/O2/Ar(電場) 0.19/0.04/0.77

Sr-La2O3 150 4.4 K.Oshima,T.Shinagawa,Y.Sekine J.Jpn.Petro.kinst.,56,11,2013

CH4/CO2/Ar(電場) 0.05/0.25/0.70

La-ZrO2 150 4.5 K.Oshima, K.Tanaka,T.Yabe,E.Kikuchi,Y.Sekine Fuel,107,879,2013

CH2Br2/H2/N2 0.11/0.23/0.66

Pd6C/SiO2 350 16.6 E.McFarland, Science,338,340,2012

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ICLabo

メタンの二量化

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Norwegian UniversityのHolmenは最近開発された触媒をまとめている。その中ではRb2WO4/SiO2がC2(エチレン+エタン)収率が約25%と高い値を示している。 メタンの1atmにおけるC2への理論収率は約30%だという論文が提出されている。 J. Labinger, Fuel Process, Technol. 42 (1995) 325 Y.S.Su, J.Y. Ying, W.H. Green, J. Catal. 218 (2003) 321 J. Sun, J. W. Thybaut, G. Marin, Catal. Today 137 (1) (2008) 90

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ICLabo

39

Pbを溶融状態で酸化しメタンを導入するとメタンのカップリングが進行する。連続的に酸素とメタンを導入するとC2選択率が75%(内エチレンは約30%)生成することが開示されている。酸素濃度は10%前後の時C2選択性が高い。反応温度を常時800℃に保持しなければならない。

特開平7-48285 東京ガス

他のメタンの酸化二量化技術

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■:CH3Br選択率, ○:CH4転化率, ●: CH3Br収率,△: COx選択率, ◆: CH2Br2選択率

He J, Xu T, Wang Z, et al. Angewante Int.51, 2438-2442 (2012)

メタンからCH3Brの合成 CH4のHBrによるオキハロゲネーション

15%FeOx-CeO2

○: CH3Br転化率, □: プロピレンの選択率, ●プロピレン収率, 400℃, P(CH3Br) = 9.2 kPa, 流速 11 ml/min,

CH3Brからプロピレンの合成

メタンからハロゲン化メタンを経由したプロピレンの合成

CH4 + HCl (HBr) + 1/2 O2 → CH3Cl (CH3Br) + H2O CH3Cl (CH3Br) → 1/3 C3H6 + HCl (HBr) CH4 + 1/2 O2 → 1/3 C3H6 + H2O

CH3X (メタンモノハロゲン)は水の存在下でメタノールを生成することは知られている。 メタンをHBrでオキシハロゲネーションによりCH3BrとしZSM-5を用いて脱Brするとプロピレンが合成できる。 CH4のハロゲン化はFeOx-CeO2が優れている。HBrはリサイクル利用される。

40

G.A.Olah, B. Gupta, M.Farina, J.D. Felberg, W.M.Ip, A. Husain, R. Karpeles, K. Lammertsma, A.K. Melhotra, N. J. Trivedi, J. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 7097-7105.

生成物 触媒 温度℃ 転化率 %

選択率 %

CH3Br NiO-CeO2 600 20 80 CH3Cl FeOx-CeO2 480 20 70

原料 温度 ℃ 転化率 % 選択率 % CH3Br 400 94 56 CH3Cl 400 76 64

NH4F修飾H-ZSM-5によるプロピレンの合成

CH4のオキシハロゲネーションによるハロゲン化メチルの合成 CeO2 ナノクリスタル 選択性が高い

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メタンからプロピレンの合成 Marathon OilからメタンからC3, C4合成プロセスが提案されている。 HBr又はHClを高温でメタンと反応させ,ハロゲン化メタンを合成しZSM-5でC3~C7を合成する。 副生するHBr又はHClからBr2又はCl2を回収リサイクルさせなければならない。 HBrからBr2の回収にはMgBr2などの塩を経由する方法が提案されている。

41 USP 7,244,867 Marathon Oil

アルカンの臭素化 臭化アルキル転化

HBrの除去

脱水 生成物分離

天然ガス

臭素化物の酸化 (金属臭化物触媒) 酸素又は空気

液状炭化水素

リサイクル + 原料ガス

水溶液リサイクル

ドライ臭素ガス

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メタンからベンゼンの合成

L. Wang, L. Tao, M. Xie, G. Xu, Catal. Lett., 21,35 (1993), JP 3985038, JP 4235731 AIST 3%Mo2C/ZSM-5

700℃ CH4 80 min, H2 20 min 周期

パラモリブデン酸アンモンをZSM-5 (30)に含侵調製 カーバイド化はメタン650℃, 30 min流通

6 CH4 → C6H6 + 9 H2

42

中国大連化学物理研究所のWangらは, Mo/ZSM-5によりメタンの脱水素環化反応によりベンゼンが生成することを見つけた。Moは炭化しMo2Cとなると活性を示す。ZSM-5以外の担体では活性を示さない。Inを加えると芳香族収率は約2%向上する。 J.Zhao, et al.Fuel Chemistry Division preprints 2002, 47(1),90

メタン転化率は約10%でベンゼンの選択率は約80%である。 触媒寿命はCokingによりきわめて短い。産総研の張戦国らは700℃, 水素で再生できることを見つけ流動層用の触媒を開発し流動層装置を組み立てている。CO2を伴わず水素が副生するのでグリーンな水素製造技術ともなりえる。

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USP2007/0249880 Exxon Mobil

800℃, A,B 20 psia, C-E 14.7 psia

43

Exxon Mobilのメタンから芳香族製造特許 Exxon Mobilからメタンから芳香族製造のプロセス特許が出されているがMo/ZSM-5でCO2,H2を添加するとCokingが減り活性選択性が向上している。

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メタン価格

米国のシェールガス(メタン)は多量に生産されるが, 米国内の需要は未だ満たしていない。2011年には, まだ8%輸入している。 メタンを石油化学原料とするには購入できるメタン価格が最も重要である。 現状の中東や東南アジアから輸入している日本のメタンガス価格はエネルギー換算で石油と同価格としているため 約$17/MMBtuである。 欧州がロシアからパイプラインで輸入している天然ガス価格は$10.0/MMBtuである。 2015年以降米国から輸入されるシェールガスの輸入契約価格は$12/MMBtu位と思われる。 将来、ロシアからサハリンの天然ガスがパイプラインで導入されることがあったとしても$10.0/MMBtu以下にはならないと考えられる。 メタンを石油化学原料とする場合に基本となるメタンの$/ton価格を示す。

$/MMBtu $/ton

3.0 158

5.0 264

10.0 527

17.0 895

Annual average Henry Hub spot prices for natural gas in five cases, 1990-2040 (2011 $/MMBtu)

Total U.S. natural gas production, consumption,and net Imports in the Reference case, 1990-2040 (trillion ft3)

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メタン6molからベンゼン1molと水素9molが生成する。CO2を生成せずベンゼンと水素が製造できる。

6 CH4 → C6H6 + 9 H2 - 400.06 kJ/mol CH4 + O2 → CO2 + H2O + 890.36 kJ/mol

反応式からベンゼン1 ton 製造に必要なメタンは1.23 tonで副生するH2は0.23 tonである。外部からメタンの燃焼によって加熱する熱効率を約50%とすると約1molのメタンが必要となる。つまり7 molのメタンが必要であるので(16x7/78=1.436), 1ton のベンゼンを製造するにはメタンが1.436ton 必要となる。 日本の輸入メタン価格を仮に$10/MMBtuとするとメタン価格は$527/tonであるので $527 x 1.436= $757/tonのメタンが必要となる。 副生するH2を再生などに用いないで100%得られると仮定して1m3=$0.1とすれば$258の水素が得られることになる。 収率を仮に80%とすると (757-258)/0.8 = $624/ton 仮に10万トンのベンゼンプラントを300億円で建設したとすると ベンゼン価格を$1,200/tonとして 1,200-624 = $576 年間の維持費を10億円とすると償却年数は金利を入れずに単純に計算して 300億円/(57600円x10万トン-10億円)= 6.3年となる。 収率80%が採算のラインと考えられる。現状の触媒では転化率が低く触媒の寿命が短い。再生に多量の水素を必要とする。メタンから高収率でベンゼンを得る触媒とプロセスを開発するのは容易ではない。

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メタンからベンゼンの合成の経済性

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エタン, プロパン,ブタンを原料とした触媒反応技術

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ICLabo

エタン, プロバンの誘導品 エタン, プロパンの誘導体を示す。エタンから酢酸, プロパンからプロピレン, アクリロニトリル, 芳香族が工業化されている。

C2H6

CH3CHO

AN

CH3COOH

CH2=CH2

CH2=CHCHO

Styrene

CH3CN

酢ビ

Aromatics

C3H8

アクリル酸

CH2=CHCH3

AN

Aromatics

+ CO2

+ NH3 /O2

CH3CH2OH

+CH3OH + NH3 /O2

-H2

+ O2

CH2=CHCH3

+ O2

+ O2

+ O2

+ C6H6

+ O2

-H2

-H2

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脱水素反応は吸熱反応でカーボン析出が生じやすいため酸化脱水素の研究が行われている。酸化脱水素では加熱炉は必要ない。原料の予熱は着火温度の200℃程度で良く, 反応は反応熱で維持される。スチームクラッキングよりもカーボンの生成は少ない。

C2H6 + 1/2 O2 → CH2=CH2 + H2O エタン転化率はエタンクラッカーのワンパスの転化率60~70%より若干低い。選択率はエタンクラッカーよりも高い。アセチレンやブタジエンの副生はない。Ga-Zn/MordeniteとShort Time Reaction (高GHSV) によるマイクロチャンネル反応器を用いた Pt-Cu/MgOモノリスがエチレン収率が高い。 スチームクラッキングと較べまだ収率が低いため工業化されていない。

エタンの酸化脱水素によるエチレンの合成

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会社 触媒 反応条件 反応温度 ℃

エタン 転化率%

エチレン 収率%

Dow社 Ga-Zn/Mordenite 0.1MPa, SV: 1,200/hr 700℃ 50 86 WO 00/14035, WO 00/14180

三菱化学 Mo1V0.3Sb0.13Ti0.05On 450 hr 440 89.1 67.0 特開H10-175885

Celanese

Mo1V0.33Ta0.12Te0.28Oz エタン/O2/N2/H2O= 39/8.1/43/5 GHSV 2,560 h-1, 220 psig, CT: 10.2 sec,

328 24 79 USP 2010-02226

Velocys社, Pacific Northwest 国立研究所, Dow社

Pt-Cu/MgO モノリス エタン/O2/H2 (2.3/1/1 v/v) 1.35bar, SV 125,752h-1

925 75 81 マイクロチャンネル反応器 The Preliminary Program for 2006 Spring National Meeting 23

ロームアンドハース MoVTeNbOx エタン/CO2/N2=1/3/1, ℃, GHSV=1,500 h-1

0.5時間後

675 38 3.5 特開2009-051825 CO 数%副生 活性低下: 著しい。

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S.Cimino,F.Donsi,G.Russo,D.Sanfilippo, catalysts Today 157, 2010, 310-314 Jaap C. Schouten, et al.,Chemical Engineering Journal, Vol. 207-208,473-480 (2012) 49

エタン, プロパンの酸化脱水素(CPO: Catalytic Partial Oxidation) イタリアのEniはRicerche sulla燃焼研究所と共同で高SV条件での酸化脱水素触媒を開発している。触媒は

2%Pt/LaMnO3(Perovskite)をハニカムにコーティングしたものである。エチレンとアセチレンの選択率は66% を超える。GHSV は高く60,000~190,000h-1, 900℃, C/O = (C2H6: 1.75-2.5) , (C3H8: 2~3.25), H2, O2の添加により数%収率が向上する。 C2/O2, H2/O2, GHSV, 予熱条件の最適化によりエチレン収率: >60%, 選択率: >80%達成している。 プロパンの酸化脱水素で はPt/Sn/LaMnO3, Pt/Ga/LaMnO3が転化率70%, C選択率23%を示している。500時間のベンチテストでは55wt%のエチレン+プ ロパン収率を得ている。

Pt/LaMnO3(Perovskite)/Honey Comb

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S.Cimino,F.Donsi,G.Russo,D.Sanfilippo, catalysts Today 157, 2010, 310-314 50

エタン $ 1.5/MMBtu エタン $ 2.5/MMBtu

ナフサクラッカーとCPOエチレンコスト比較 Eniからナフサのスチームクラッキングとコスト比較が報告されている。ナフサクラッカーとの比較でエタンクラッカーとの比較で はないがブレント原油$55/bblとエタン$2.5/MMBtuとの比較ではCPOは13%安価である。

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ICLabo

51

Dowはエタンの酸化脱水素を水素の存在下で短時間 (高GHSV)で行うと高選択でエチレンが得られることを開示してる。 触媒はPt-Cu/MgOハニカムである。 エタン/O2/H2 (2.3/1/1 v/v)をPt-Cu/MgO モノリス触媒 270℃, 1.35bar, SV 125,752h-1 数秒で自己発熱により反応器内部の熱は925℃に上昇 エタン転化率75%の時, エチレン選択率81% 副生成物はメタン6.4%, CO 6.0%, CO2 1.4% スチームクラッキングよりもカーボンの生成は少ない。 水素の存在でエタンの転化率向上CO, CO2の生成抑制 7時間では活性も選択性も変化がない。 既存のエタンクラッカーのような加熱炉が必要なく接触時間が短いため, コンパクトなプロセスとなることが期待されている。 Dow は他に流動層も提案している。流動層では選択率は83%に上昇している。

DowのShort Time Reaction

WO 00/14035 and 00/14180)

CH2=CH2 H2O C2H6 O2

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ICLabo

酸化脱水素の酸化剤にCO2を用いたエタンの酸化脱水素を化学技術振興事業団が提案している。 C2H6 + CO2 → CH2=CH2 + CO + H2O 触媒はCr2O3, Ga2O3, MnO2である。カーボン析出が大きいためCO2過剰で反応させている。 Cr2O3に1/20のBaイオンを分散添加すると等モルでの反応も可能で寿命も延長できる。 C2H6/ CO2/N2=45/45/10, 700℃, 3時間後の転化率は C2H5, CO2共に5.2% 選択率: C2H6 50%, CO: 49%, CH4: 1%と低い。

エタンのCO2酸化によるエチレンの合成

52 S. Wang, K. Suzuki, Appl. Catal.A. General, Vool. 196, 1-8 (2000) 特開2003-071282 化学技術振興事業団

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ICLabo

C2H6/air = 15/85 v/v混合ガス, 260℃, 200psig, GHSV 1,100/hr エタン転化率: 53.3%, 酢酸選択率: 49.9%, エチレン: 選択率 10.5%

この触媒をベースにエタンの脱水素触媒の開発が多くの会社によってなされている。

エタンから酢酸の合成

C2H6 + O2 → CH3COOH + CH2=CH2

Mo2.5V1.0Nb0.32Px ( x = 0.01~0.06)

エタンの酸化による酢酸製造は2004年サウジアラビアのSABICがYanbuで工業化させている。 20万トン/年のプラントでエタンを原料としている世界で唯一の工業化プラントである。 触媒はMo,V,Nb,Pの複合酸化物である。 酢酸はPTAの原料として用いられている。 エチレンが約10%副生する。

53 WO 99/13980 Sabic

工業化プロセス

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ICLabo

昭和電工はPd/ケイタングステン酸/SiO2によりエタンから酢酸が合成できることを見つけている。 エタン転化率は低いが酢酸の選択率は52.8%である。 エタンからアセトアルデヒドを経由して酢酸が生成していると推定されている。 C2H6 + 3/2 O2 → CH3COOH + H2O 1.1%Pd-0.4%Au-0.11%Te-0.07%Zn/H4SiW12O40・26H2O+ Mn(NO3)2・6H2O/SiO2 PdにAu, Te, Zn添加 ケイタングステン酸+硝酸Mn/シリカ担持触媒 285℃, 0.8 MPaG, SV= 2,250 h-1, エタン/O2/水蒸気/N2= 30/5/25/40 エタン転化率: 6.5 %, 酢酸選択率: 52.8 %, エチレン: 4.8 %, CO2 + CO: 42.2 %, 酢酸STY: 61.8 g/hL

エタンから酢酸の合成

54 特開2001-334149 昭和電工

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ICLabo

セラニーズはWPdVNbCuPOz複合酸化物触媒によりエタン転化率11%, 選択率86%で酢酸を得ている。 プロセスが実現すればメタノールのカルボニレーションより得られる酢酸より安価と言われている。 C2H6 + 3/2 O2 → CH3COOH + H2O 気相固定層でC2H6/O2/N2/Steam=40/8/32/20 v/v 250℃, 1.5 MPa 参考) セラニーズは酢酸の水素還元によるエタノール合成プラント(TCX)を開発している。 触媒は1%Pt-Sn/CaSiO3 反応条件は, GHSV 2,500h-1, 250℃, 310~320psig. 酢酸転化率 24%でエタノール 選択率92% 酢酸エチルは副生しない。米国テキサス州クリアレイクで天然ガス原料TCXプロセスによるエタノー ル40万トン/年プラント建設し2013年に稼働させた。 セラニーズはバイオエタノールより安価だと言っている。 CH3COOH + 2 H2 → CH3CH2OH + H2O 2013年中国南京に20万トンのエタノールプラント稼働計画 2014年: 40万トン建設予定 PERTAMINA(インドネシア) :ガソリン混合燃料開発契約締結

エタンから酢酸の合成

WO 98/47850 Celanese http://celanesetcx.com 55

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ICLabo

エタンからアクロレイン合成触媒 北京大学のZhe Zhangらはエタン酸化によりアクロレインが製造できることを見つけている。触媒にはK/SBA-15が用いられて いる。転化率4.4%の時の選択率は27.5%である。 産総研の小林らはRb-Fe/SiO2を用いて475℃, 転化率4.1%で選択率31%でアクロレインを得ている。

K mol%

Conv.% Selectivity %

Aldehyde

C2H6 COx C2H4 HCHO CH3CHO CH2CHCHO Total

0 14.3 85.5 4.7 8.4 1.40 0 9.8

0.5 5.3 69.0 9.0 14.5 4.60 2.9 22.0

1.0 6.9 62.3 7.6 8.5 16.4 5.2 30.1

2.0 9.2 44.5 6.2 6.8 19.4 23.2 49.3

3.0 4.4 43.0 3.4 4.6 21.5 27.5 53.6

5.0 4.9 49.0 3.3 3.6 17.2 26.9 47.7

K/SBA-15

Zhe Zhang,et.al, Chemistry Letters Vol.34, No.8, 2005 University of Petroleum Beijing

450℃ エタン 75mol%+O225mol% 6,000 /mol/g・cat/h, 0.1MPa. 475℃

CH3CH3 + O2 → CH2=CHCHO

Temp. ℃

Conv.% Sel.%

C2H6 HCHO CH2CHCHO

0.6%Cs-0.5%Fe/SiO2 475 2.2 22 25

500 5.3 6 25

0.6%Rb-0.5%Fe/SiO2 475 4.1 11 31

特許 4065933

56

AIST 小林 哲彦

Z. Zhao, T. Kobayashi, Applied Catalysis A: General 207 (2001) 139-149 AIST

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ICLabo

CH3CH3 CH2 CH2 CH3COOH H2O+ +O2

USP 6,143,921 SBIC

エタンから酢酸ビニルの合成

エタン

エチレン

酢酸

酢酸ビニル

酸素

Pd-Au/SiO2

57

Stage Ⅰ Stage Ⅱ

g.mol.min Feed Products Feed Products

CH2=CH2 5.65E-4 2.07E-4 2.07E-4

O2 6.73E-4 1.23E-4 1.23E-4

N2 2.53E-3 2.47E-4

H2O 2.23E-5 2.23E-4

AcOH 2.80-4 2.80E-4

CO2 1.56E-4

VAM 1.90E-4

サウジアラビアのSABICは,エタンの酸化による酢酸プラントを稼働させているが, エチレンが副生する。この触媒を改良しエチレンの生成量を増加させ,二段目で酸素を導入し酢酸とエチレンと酸素により既存の酢酸ビニル触媒(Pd-Au/SiO2)を用いた酢酸ビニルを連続して合成するプロセスを発表している。特許ではMo-V系複合酸化物が開示されている。(Mo2.5V1.0Nb0.32Pd0.03Oy) 反応条件は286℃, 200psigである。 エチレンと酸素からワンスルーで酢酸ビニルが合成できるプロセスになり得る。

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ICLabo

C2H6+

特開平11-193253 旭化成

ベンゼンとエタンからスチレンの合成

0.6%Ga-Na-ZSM-5

600℃, 常圧, ベンゼン/エタン=10/1

エタン S.V.= 1.0 h-1, 1時間

エタン反応率3% スチレン選択率15%, エチルベンゼン選択率65%,

ベンゼンとエタンからスチレンの直接合成では旭化成ケミカルズはGa-Na-ZSM-5を開示している。転化率は3%スチレンの選択率は15%. エチルベンゼンの選択率は65%である。

58

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ICLabo

ベンゼン

脱水素 エチルベンゼン

エタン

スチレン

エチレン

アルキル化

0.8 mol

0.2 mol 流動床 600℃,常圧 280℃, 3.3MPa, WHSV 0.7h-1

USP 7,002,052 Dow

600℃,常圧 2.33%Ga2O3-0.4%K2O-0.0075%Pt-1.56%SiO2/Al2O3

脱水素における エチルベンゼン転化率55%, スチレン選択率92wt%, エタン転化率は10wt%, エチレン選択率90wt%

アルキル化はβ-ゼオライト 触媒蒸留塔ガス-液相 ベンゼン Conv.100%, エチレンConv. 90%の反応

エタンとベンゼンからスチレンの製造 Dowはエチルベンゼンの脱水素反応器にエタンを導入しスチレンと同時にエチレンを合成し合成したエチレンとベンゼンを 反応させエチルベンゼンとする方法を提案している。 スチレンと同時にエタンを脱水素する条件は, 600℃,常圧で特許では, 2.33%Ga2O3-0.4%K2O-0.0075%Pt-1.56%SiO2/Al2O3 が 開示されている。

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ICLabo

C2H6 + NH3 + O2 → CH3CN 450℃ 3.83%Co/ZSM-5(12) Conv. 38.2%, Sel. CH3CN 48.7% C2H6 28.5% CO2 20.6% Total C2 77.2%

Leihong Zhao et.al. Catalysis Communications Vol. 6, 9, 617-623 (2005)

USP 5,756,802 Air Products

転化率19%の時, 選択率は81%である。 CH3CN + CH3OH → CH2=CHCN 480℃ Yield: 13.6% Mg0.5Mn0.2/ZrO2

Mn/Zr=0.2 MeOH/CH3CN=10/1

エタンからアセトニトリル, アクリロニトリル

エタンをNH3とO2でアンモキシディーションすることによりアセトニトリルを合成することができる。Co/ZSM-5を用いて450℃で反応させると転化率38.2%, アセトニトリルの選択率48.7%, エチレンの選択率は28.5%と報告されている。 アセトニトリルとメタノールを反応させるとアクリロニトリルを得ることができる。

経時的に活性は劣化している。 活性, 選択性は反応温度に依存する。

60

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ICLabo

C2H6/N2=20/80, W/F= 10g・h/mol, 600℃, エタン転化率: 20.14% 選択率: 芳香族74.01% C1,C2 : 20.35%, C3,C4 : 5.11%, C5+脂肪族: 0.53% Ptのシンターリングとコークの析出 副生する水素が利用できる。

特開平06-049460 JOGMEC

エタンの脱水素による芳香族の合成

C2H6 → 芳香族 + H2

61

JOGMECは脱水素触媒とZSM-5の環化機能をハイブリッド化したPt/Al2O3 + H-ZSM-5の粉末を混合成型した触媒を試験している。 エタン転化率は20.14%で芳香族の選択率は74.01%である。Ptのシンターリングとコークの析出が生じる。

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ICLabo

62

US 2011/0021853 A1 Shell Oil

100%エタン GHSV = 1,000 h-1

630℃, 0.04%Pt-0.08%Fe/ZSM-5

生成物 %

CH4 24.24

エチレン 7.95

プロピレン 1.13

プロパン 1.3

C4 0.21

C5 0.01

ベンゼン 36.51

トルエン 18.8

C8芳香族 3.63

C9+芳香族 6.22

合計芳香族 65.16

エタンから芳香族の製造 Shellはエタンの脱水素環化によるベンゼンの製造に低濃度のPt-Fe/ZSM-5触媒を開発している。630℃, GHSV 1,000 h-1の条 件でベンゼン36.51%, 芳香族収率65.16%が得られている。

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ICLabo

産総研は5%V2O5/SiO2 を用いてプロパン10 vol%をCO2 90 vol%で酸化脱水素することにより プロピレン選択率81%プロピレン収率30%が得られることを見つけている。 同時にCO2はCOに還元される。 触媒のカーボン析出量は7 mg/g (6時間後)であったが再生可能と報告している。 触媒は富士シリシア化学のCARiACT Q6 を担体としてメタバナジン酸を含浸担持して調製している。 反応条件は0.1 MPa, 550℃, 5ml/minである。

CH3CH2CH3 + CO2 → CH3CH=CH2 + CO + H2O

63

プロパンのCO2酸化

JP 2006-219375A AIST

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ICLabo

Qingjun Zhu, Makoto Takiguchi, Tohru Setoyama, Toshiyuki Yokoi, Junko N. Kondo, Takashi Tatsumi, Catal Lett (2011) 141

C3H8 + CO2 → C3H6 + CO + H2O

600℃, 15% C3H8, 15% CO2, WHSV: C3H8 1.1g/g/h, N2 as diluent

■ Cr/H[B]MFI ▼ Cr/H[B]MFI-st

プロパンのCO2による酸化脱水素

600℃, 46% water vapor 1 h balance gas 2%O2/N2

Cr/H[B]MFI-st

64

CrOx/SiO2を用いるとプロパン転化率~50%, プロピレン選択率~90%であるが生成水により10時間で劣化する。 CrOx/MFI Silicaliteでは転化率~30%と低いが100時間程度では劣化しない。低濃度CrOxが活性で安定性が良い三菱化学はCr/H-MFIを見つけている。初期の劣化は早いが水蒸気処理により耐久性は向上する。 CO2の削減反応としても価値がある反応である。

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ICLabo

CH3CH2CH3 + NH3 CH2 CHCNO2

65

プロパン法アクリロニトリル 旭化成は世界で唯一, プロパン法アクリロニトリル製造プラントを韓国の東西石化で改造プラントによる実証を行い、 2013年タイで20万トン/年プラントを稼働させた。AN収率を上げるとNH3ベースの収率は低下するかYbを添加した複合酸化 物では抑制できる。更なる収率向上とNH3ロスの低下が望まれる。

旭化成 2007年 東西石化(蔚山) 7万トン/年 改造プロパン実証プラント 2013年 24.5 万トン/年 2013年 Asahi Chemical (タイ,マプタップ) 20万トン/年

会 社 原 料 触 媒 温度℃ 転化率%

Yield%

旭化成

C3H8/NH3/O2/He = 1/1.2/3/12

MoV0.33Nb0.11Te0.22 Ox 0.1MPa 430 85.2 51.9 EP895809 Prepa:Oxalic acid/Nb=1/4

C3H8/NH3 = 1/1 MoV0.34Nb0.14Te0.24 Yb0.010Ox CT: 1 sec. 440

56.8(C3) 56.8(NH3)

USP6043186

BP C3H8/NH3/O2/N2/H2O 1/1.16/2.87/10.22/2.97

VSb1.4Sn0.2Ti0.1Ox HBr 1847 ppm CT: 3 sec.

450 90.4 45.3 US5576469

三菱化学 C3H8/NH3/Air=7.5/1.2/8.4 MoV0.3Te0.23Nb0.12Ox 410 91.5 63.7 特開93-279313

C3H8/NH3/O2=1/0.75/1.8 MoV0.4Nb0.1Te0.2Ox 430 50 65-70(C3) 42-45(NH3)

特開2000-327651

USP6043186 Asahi Chemical Yb添加

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ICLabo

CH3CH2CH3O2

CH2 CHCOOH + H2O

C3H8/O2/He/Steam=1/3.2/12.1/14 v/v

プロパンからアクリル酸の合成 プロパンの酸化によるアクリル酸はMoV系酸化触媒が開発されているが, 三菱化学, 旭化成の開発している触媒が世界の トップレベルにあると思われる。旭化成の例ではMoV0.33Nb0.11Te0.22Ox /SiO2, 固定層で380℃, 0.1 Mpa, 転化率80%でアクリル 酸の選択率は59.9%である。

66

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ICLabo プロパンの酸化によるアクリル酸の合成

67 Mark E. Davis, Christopher J. Dillon, Joseph H. Holles, Jay Labinger, Angew.Chem.Int.Ed.2002,41, No5.

カルフォルニア大学のDavisらは新しいタイプの酸化触媒を見つけている。リンモリブデン酸から調製されるH3PMo12O40をピリジンで修飾しN2, 420℃で処理した触媒である。 NbPMo11Vpyrのプロパン転化率20.9%の時の酢酸の選択率は24%, アクリル酸の選択率は50%無水マレイン酸の選択率は16%である。

C3H8 + O2 → CH2=CHCOOH + CH3COOH +

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ICLabo

OO OO2

n-ブタン酸化による無水マレイン酸

(VO)2P2O7

活性種: ピロリン酸ジバナジル (VO)2P2O7

68

ブタン酸化による無水マレイン酸製造では収率は50~60%と低い。(VO)2P2O7系触媒が, Lonza, BASF, Huntsman, 三菱化学から出願されているが60%を超えることはなくVPO系では限界と思われる。

DirassReport 28-16 ダイヤリサーチマーテック

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ICLabo

ブタンの酸化による無水マレイン酸の合成

69 Mark E. Davis, Christopher J. Dillon, Joseph H. Holles, Jay Labinger, Angew.Chem.Int.Ed.2002,41, No5.

カルフォルニア大学のDavisらによって新しいタイプのブタン酸化触媒が見つけられている。リンモリブデン酸から調製されるH3PMo12O40をピリジンで修飾しN2, 420℃で処理した触媒である。北大の上田らのPMo12Vを同様の処理をした触媒では活性は低い。

OO OO2

(VO)2P2O7

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ICLabo

70

US 2012/0240467 A1

エタン, プロパンから芳香族の合成 エタンとプロパンの混合ガスから芳香族の合成は脱水素触媒と環化触媒との組み合わせた触媒が開発されている。 混合ガスを600℃で脱水素するとプロパンの転化率は98.62%であるがエタンの転化率は1.1%と低い。エタンを分離し621℃で 脱水素するとエタンの転化率は49.2%である。

A 触媒: 0.025%Pt-0.09%Ga-ZSM-5 (SiO2/Al2O3=23 80%)+ Al2O3binder 20%) 1.6 mm φ Extruded

エタン

プロパン

エタン

1st 芳香族化

芳香族

2st 芳香族化

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ICLabo

プロパン, ブタンから芳香族の合成 Shell はプロパンとブタンの混合ガスからPt-Ga/ZSM-5aにより脱水素環化により芳香族を合成するのに675℃ではBTXの収 率は52.1%であるが, 反応器を分け反応温度を600℃と621℃にするとBTXの収率が59.7%に増加することが開示されている。

71 WO 2011/0021853 A1 Shell Oil

プロパン,ブタン 1st Rx 2 nd Rx 芳香族

600℃ 621℃

A 触媒: 0.025%Pt-0.09%Ga-ZSM-5 (SiO2/Al2O3=23 80%) + (Al2O3 binder 20%) 1.6 mm φ Extruded

WO 2011/053745 A1 Shell Oil

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ICLabo

シェールガスの各成分利用 シェールガスを原料とした場合、将来的に不足すると予測されるブタジエン

や芳香族等製造の課題

72

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ICLabo

エチレンとエチレン誘導体

73

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ICLabo

74

原料別エチレン価格 米国でのナフサのクラッキングによるエチレン価格と天然ガス含有ガスを原料とした場合のエチレン価格はシェールガスの 掘削が本格化する2007年以前は大差はなかったが, シェールガスの利用が本格化し始めると価格差は大きくなり2013 年2月の時点では約3倍の価格差が生じている。この傾向は続くと予想されている。

Walter M. Hart, Impact of Shale Gas Development on NGL Suppliers and Petrochemical Feedstocks South Texas Section AlChE, Feb. 2, 2012

原料 ナフサ ブタン プロパン エタン(E/P Mix)

エチレン価格 ¢/lb 992 550 440 330

E/P Mix : エタン(80%)/プロパン(20%)

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ICLabo

Jesse Thompson, Southweast Economy, Federal Reserve Bank of Dallas, Fourth Quarter 2012

ナフサとエタンクラッカーの収益率 米国ガルフコーストのナフサ分解とエタンクラッカーによるエチレンの製造工場のエチレンメーカーの平均収益率がFederal Bank of Dallasから発表されている。シェールガスが用いられるようになった2007年以降ナフサを原料としたエチレンプラント の収益率は赤字に転落した。しかし, エタンクラッカー原料エチレンの収益率は著しく増加している。そのためエチレンメー カーはナフサクラッカーを止めてエタンクラッカーへの改造または新設に動き出している。

赤字

75

黒字

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ICLabo

76

ガス原料 液体原料 エタン プロパン ブタン ナフサ Gas oil

水素, メタン 13 28 24 26 23 エチレン 80 45 37 30 25 プロピレン 1.11 14.0 16.4 14.1 14.4 ブタジエン 1.4 2 2 4.5 5 ブテン類 1.6 1 6.4 8 6 C5+ 1.6 9 12.6 18.5 32 プロピレン/エチレン(wt/wt) 0.03 0.3 0.5 0.4 0.6 プロピレン(wt% of C3) 86.7 58.3 99.0 98.3 96.7

各種原料によるオレフィンの生産割合

クラッカーによるオレフィンの生産の割合 クラッカー原料にナフサを用いるとエチレンが30%, プロピレンが14.1%, ブタジエンが4.5%の他芳香族も生成するがエタンから はエチレンが80%生成するが他はほとんど生成しない。プロパンを原料とするとエチレンが45%, プロピレンが14%生成するが 水素, メタンの生成が多く収率は高くない。

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ICLabo

77

米国エチレン原料の推移 米国エチレン原料はナフサからエタン原料にシフトしてきた。今後もこの傾向は続く。

Nexant, North American Shale Gas: Opportunity or Threat for Global Ethylene Producers? Aug. 2012

46 48 50 53 62 63 65

19 18 19 18 18 19 18

3 5 3 5 4 2 2 32 29 28 24 16 17 15

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

エタン プロパン ブタン ナフサ&重質油

Wt %

100 80 60 40 20 0

wt %

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ICLabo

北米エチレンプラント建設計画 2018年までに新増設を含め稼働が計画されているエチレンの増加分は約1,500万トン/年である。欧州, 他, 米国籍以外の会 社が約半数を占める。

地域 会社 場所 Capacity MMton/y 稼働年 米国ガルフ沿岸 Dow Chemicals Hahnville, LA 0.40 2012

Westlake Lake Charies, LA 0.23 2013 Williams Geismar 0.27 2013 Ineos Chocolate Bayou 0.15 2013 Dow Chemicals Plaquemine,LA 1.20 2014 Dow Chemicals Freeport,TX 0.50 2014 Lyondell/Basell Channeiview,TX 0.23 2014 Lyondell/Basell La Porte,TX 0.39 2014 BASF-Total Port Arthur,TX 0.12 2014 Formosa USA Port Comfort,TX 0.80 2016 ExxonMobil Baytown,TX 1.50 2016 Occidental/Mexichem Ingleside,TX 0.60 2016 ConocoPhillips Baytown,TX 1.50 2018 Sasol Lake Charies 1.00 2018

米国北東部 Aither Pending,WV 0.27 2016 Shell Chemical Monaca,PA 1.05 2018

他 Westlake(1) Calvert City,KY 0.18 2014 Nova Chemicals Sarnia, Ontario 1.20 2016 Nova Chemicals Joffre,Alberta 1.45 2017 Braskem/Idesa Coatzacoalcos,Veracruz 1.05 2014

合計 14.5 Al Troner, Natural Gas Liquids in the Shale Revolution,April,29,2013 78

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ICLabo 米国エチレン生産量推移内需と輸出 2012年の米国のエチレン生産能力は約2,000万トン/年で稼働率は約80%で約1,600万トン生産された。1,600万トンのうち内需 が1,200万トン, 誘導体の輸出が400万トンであった。2017-2018年新設のエチレンクラッカーが稼 働すると,稼働率を入れて 約3,100万トン生産されると予想される。内需を1,500万トンとすると1,600万トン近くのエチレン誘導体が南米, 欧州そしてアジ

アに流入すると考えられる。

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

35003,100

1,600 輸出 内需

400 1,200

万トン

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2017-2018

79

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ICLabo

エチレンコスト比較 米国の過去のエタンコストは$12.5/MMBtuであった。シェールガス革命により低下した$3/MMBtuベースにエチレンの製造コ ストはそれぞれ$1009/tonと$323/tonと計算されている。アジアでの原油価格を$100/bblで計算するとエチレン価格は $1760/tonである。5倍以上の開きがある。米国からエタンが輸入されることはあり得ないがエタンが仮に輸入されて日本で

エタンクラッカーでエチレンを製造したとしてもエチレンの価格は$911/tonで3倍近い開きがある。

サウジ 米国 アジア ナフサ

輸入シェールガス 最近 過去

原料コスト 天然ガスコスト $/MMBTU 0.75 3 12.5 12 原油コスト $/BBL 100 換算 $/ton 483 148 615 964 592 / エチレン・1ton 1 1.29 1.29 2.98 1.29 エタン原料コスト $/ton 483 190 793 2874 764 触媒+他 $/ton 0 2 2 2 2

$/ton 483 192 795 2876 766 他のコスト 副生成物価値 $/ton 276 153 431 1565 153 用役費 $/ton 149 109 454 235 109 直接費 $/ton 99 167 167 172 167

エチレンコスト $/ton 455 316 985 1717 889 利益 2.50% 合計(含輸送費) $/ton 466 323 1009 1760 911

Pwc. Shale gas, Reshaping the US chemicals industry, October 2012 80

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ICLabo

HDPE コスト比較 高密度ポリエチレンの製造コストを計算すると米国で生産されるポリエチレン価格は$542/tonである。米国から日本までの 海上輸送コスト$200/tonを加えると$742/tonである。輸入があり得ないエタンが仮に$12.5/MMBtuで輸入できたとして国内で の製造コストは $1304/tonと推定される。輸入品と国産品で約2倍近い差が生じる。 $100/bblの石油を用いて国内で製造すると$2,079/tonと計算されている。

サウジ 輸入品

米国(輸入品) 日本(国産品) アジア ナフサ 最近 仮

原料コスト 天然ガスコスト $/MMBtu 0.75 3 12.5 原油コスト $/BBL 100 エチレンコスト $/ton 466 323 1,009 1,760 エチレン/ HDPE・1ton 1.025 1.025 1.025 1.025 エチレンコスト $/ton 478 332 1,035 1,804 用役費 $/ton 31 12 48 31 直接費 $/ton 51 51 51 51 他のコスト $/ton 132 132 132 132 合計 $/ton 692 526 1,266 2,018 利益 3.00% HDPE販売価格 $/ton 713 542 1,304 2,079 海上輸送費 200* 200 200 合計 913 742 1,304** 2,079

Pwc. Shale gas, Reshaping the US chemicals industry, October 2012 81

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ICLabo

PwC, “Shale Gas Reshaping the US chemical industry” October 2012

82

エチレン, エチレングリコール, 高密度ポリエチレン価格比較 同様の計算をしたエチレン, 高密度ポリエチレン, エチレングリコールの製造コストを下記に示す。

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US PLANNED ETHYLENE EXPANSIONS BASED ON SHALE GAS

Company C2 capacity Downstream Location Start-up Status NEW CRACKERS Chevron Phillips Chemical 1.5m tonnes HDPE, LLDPE Cedar Bayou, Texas mid-late 2017 Construction early 2014

ExxonMobil Chemical 1.5m tonnes PE Baytown, Texas Late 2016 Permitting expected to be complete early 2014

Dow Chemical 1.5m tonnes LDPE, other PE, EPDM, elastomers, LAO (JV) Freeport, Texas 2017 EPC stage; permitting process

Sasol 1.5m tonnes LDPE, LLDPE, EO, MEG, detergent alcohols Lake Charles, Louisiana 2017 FEED, EPC stage; permitting; FID to

come in 2014 Formosa Plastics 1.0m tonnes LDPE, MEG Point Comfort, Texas Q1 2017 Permitting process Formosa Plastics 1.2m tonnes NA Louisiana NA Feasibility stage Occidental Chemical/Mexichem 544,000 tonnes EDC, VCM Ingleside, Texas 2017 Construction mid-2014; permits

complete Axiall/Partner World-scale NA Louisiana 2018 FEED work, permitting Shell World-scale PE, MEG Monaca, Pennsylvania 2019-2020* Feasibility stage Odebrecht World-scale PE Wood County, West Virginia NA Feasibility stage

EXPANSIONS INEOS 115,000 tonnes NA Chocolate Bayou, Texas 2014 Williams 273,000 tonnes NA Geismar, Louisiana Apr 2014 Westlake Chemical 82,000 tonnes NA Calvert City, Kentucky Q2 2014 LyondellBasell 363,000 tonnes NA La Porte, Texas mid-2014 Chevron Phillips Chemical 91,000 tonnes NA Sweeny. Texas 2014 Westlake Chemical 113,000 tonnes NA Lake Charles, Louisiana 2014 LyondellBasell 113,000 tonnes NA Channelview, Texas 2015 LyondellBasell 363,000 tonnes NA Corpus Christi, Texas Late 2015 Huntsman 19,300 tonnes EO Port Neches, Texas NA BASF Fina Petrochemicals NA NA Port Athur, Texas 2014

* ICIS estimate Source: Companies, ICIS analysis

米国エチレン誘導体建設計画 ポリエチレン以外のエチレン誘導体の建設計画も発表されている。

LAO: Liner alpha olefin

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Pwc. Shale gas, Reshaping the US chemicals industry, October 2012 84

エタンクラッカーとナフサクラッカーの違い エタンクラッカーとナフサクラッカーの違いをまとめる。エタンクラッカーは分解温度が高く高温の反応チューブが必要である。 分解炉の対流部(熱回収部)の熱バランスは大きく異なる。 原料が気体のエタンと液体であるナフサでは対流部で熱バランスが大きく変わる。 Down streamのエチレン他の蒸留容量が大きく異なる。ナフサクラッカーからエタンクラッカーへの改造は困難で新設が必要 となる。

エタンクラツカー ナフサクラッカー

分解温度 ℃ 860~890 840~870

エチレン転化率 % 60~70 ~100%

リサイクル 要 不要

原料 ガス 液体

Down Stream エチレン蒸留容量大 エチレン以外の蒸留設備

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水素, メタ

ン 26%

エチレン 30%

[分類名] [パーセン

テージ]

ブタジエン 4%

ブテン類 8%

C5+ 18%

水素, メタン 13%

エチレン 81%

プロピレン 1%

ブタジエン 1%

ブテン類 2%

C5+ 2%

ナフサ原料 エタン原料

Abdullah M. Aitani, Encyclopedia of Chemical Processing, 12. Dec. 2007

スチームクラッキング生成物 ナフサクラッカーとエタンクラツカーの生成物をまとめる。ナフサクラッカーからはエチレンの収率は30%で他プロピレン14%, ブ タジエン4%, ブテン8%, C5+芳香族が18%生成するが, エタンクラッカーではエチレン収率は81%, プロピレン, ブタジエンの生成 量は極めて少ない。

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C1ミストリー

米国プラスチック輸出予想 米国のプラスチックの輸出は2012年までは低迷していたが2013年以降急速に増加し2020年には750万トンとなると予想され ている。内訳はPVCが46%, PEが10%, スチレン系ポリマーが2%, 他2%である。

Export as % Total production

Martha Gilchrist Moore, American Chemical Council, April, 9, 2013

PVC 46% PE 10% Styrenics 2% Others 2%

500万Ton (2011)

750万Ton (2020)

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87 87

中国 56%

香港 3%

韓国 14%

アセアン 11%

台湾 10%

インド 2%

オセアニア 1%

その他 3%

低密度ポ

リエチレン 8%

高密度ポ

リエチレン 9%

ポリスチレ

ン 1%

スチレンモ

ノマー 17%

塩化ビニ

ル樹脂 10%

塩化ビニ

ルモノマー 21% 二塩化エ

チレン 0%

エチ

レン

グリ

コー

ル 4%

その他 5%

エチレン

単体 25%

日本のエチレン誘導体の輸出 2011年の日本のエチレン誘導体の輸出は219万トン輸出先は中国, 韓国, アセアン, 台湾である。輸出品は生エチレン25%, ポリエチレン17%,塩化ビニル31%, スチレンモノマー17%である。

219.3万トン(2011年)

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88 経済産業省「資源・エネルギー統計」(2011年国内向販売実績)

日本のエチレン生産量とネット輸出量推移 日本のネット輸出は2009年以降減少を続けている。

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世界のプロピレン, ブタジエン,ベンゼンの需給バランス 米国シェールガスの影響によりエタンクラッカーの新設によりエチレンの生産量は増加するが相対的に世界的にナフサ由来 のプロピレン, ブタジエン, ベンゼンの不足が予測されている。 2020年プロピレンは800万トン, ブタジエンは200万トン, ベンゼンは300万トン不足する。

Booz & Company analysis, Nov. 2012

MMTon/年

不足 MTP Metathesis PDH FCC Steam Cracker Others

不足 抽出 脱水素

不足 クラッカー Refinery 石炭 others

89

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プロピレン

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プロピレン製造ルート

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ICLabo

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製油所原料 エチレンプラント原料

原料 FCC ライトナフサ

FCCBB コーカー ライトナフサ

熱分解C4留分 ブタジエン抽出残渣

熱分解C5留分分解ガソリン一時水添

燃料ガス 13.6 11.2 11.6 7.2 12.0

エチレン 20.0 20.6 19.8 22.5 22.1

プロピレン 40.1 47.9 38.7 48.2 43.8

プロパン 6.6 5.4 7.0 5.3 6.5

C6+ガソリン 19.7 14.9 22.9 16.8 15.6

Super flexはARCO (現Lyondell)が開発したプロセスでKBRが独占的実施権を所有している。 原料にC4~C8オレフィン(混合ブテン, ペンテン, FCCライトガソリン, コーカーナフサ)などパラフィンや芳香族, ナフテンもプロピレンとエチレンへ転換できる。 ジエン類は選択水素化してモノオレフィンとしてから原料として使用される。 反応温度は高く, Orthoflow反応器でDual riser連続再生方式である。 2006年南アのSasol社で工業化されている。(FT合成油のC6-C7オレフィンをプロピレンとエチレンに転換25万トン/年プラント) 2基目は中国吉林市の巨化グループのC4-C5原料とした20万トン/年プラントの予定である。

田中純一郎, PETROTECH, Vol.26, No.9 755 (2003) http://www.kbr.com/Technologies/Process-technologies/SUPERFLEX/

Super flex

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ExxonMobil Asahi Kasei KBR Lurgi INEOS

プロセス MOI オメガ Superflex Propylur OCP

原料 C4~C8 C4ラフィネート C4~C8 C4~C8 C4~C5

触媒 ZSM-5 Ag-NaZSM-5 ZSM-5 ZSM-5 ZSM-5

反応形式 流動床 固定床 流動床 固定床 固定床

反応温度℃ <540 530~600 600-650 500 500-600

反応圧力 MPaG

0.1-0.2 0.1~0.5 0.1-0.2 0.1-0.2 0.1-0.5

プロピレン 収率 %

30-40 46.6 50-80 ~60 ―

実績 未工業化 旭化成水島 Sasol(南ア) 未工業化

未工業化

軽質オレフィンの接触分解によるプロピレンの製造 軽質オレフィンからのプロピレン製造プロセスを示す。工業化実績のあるのは旭化成のオメガプロセスとKBRのSuperflexだ けである。

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プロセス名 Oleflex Catofin STAR PDH FBD-3

ライセンサー UOP Lummus Uhde Linde, Statoil, Borealis

Saipem

触媒 Pt-Sn/Al2O3 Cr2O3/Al2O3 Pt-Sn/Zn, Caアルミネート

Pt-Sn

ハイドロタルサイト

Cr2O3,SiO2,K /Al2O3

反応器形式 移動層断熱 固定層断熱 固定層等温 固定層断熱

固定層等温 流動層

希釈ガス H2 なし スチーム H2, スチーム なし 熱供給法 原料予熱 触媒予熱 外部加熱及び自

己熱(H2燃焼) 外部加熱 触媒予熱

プロパン 転化率%

89~91 48~53 30~45 40~60 37

プロピレン 選択率%

89~91 >86 83~93 93~97 84~89

反応温度℃ 525~700 520~680 550~600 500~700 547~597 反応圧力 bar 1.0~3.0 0.1~0.7 5.0~6.0 1.0~1.3 1.1~1.5

商業 実績 >9基 >14基 1基 なし なし

プロパンの脱水素プロセス プロパンの脱水素プロセスで実績のあるのはUOPのOleflex, LummusのCatofin, UhdeのSTARプロセスである。

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CATOFINプロセス

CH3CH2CH3 → CH2=CHCH3 + H2

CB&I Lummus 反応熱: 原料ガスの燃焼熱とディコーキングによる触媒再生の燃焼熱を利用 触媒再生のインターバル 10~20分 Cr2O3-Al2O3 転化率は48~53%, プロピレン収率は86 mol%以上である。 触媒寿命は2~3年

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Catofinプロセス実績

SK Gas (韓国) プロピレンプラント 60 万トン/年 蔚山 $ 890 MM 輸入LPG使用 CATOFIN Chemical Week Online 1/30/2013

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OLEFLEXプロセス 触媒連続再生方式で移動層ラジアルフローが用いられている。 反応器は縦 3~4基 触媒は上部の反応器から徐々に下部の反応器に移動し連続再生循環される。 循環周期は <1週間 Pt-Sn/Al2O3 が用いられている。コーク析出抑制のため水素が添加されている。 プロパン転化率は30~35%, リサイクル含めたプロピレン収率は89~91% 現在9基稼働中 プロパンの脱水素に9基, イソブタンの脱水素に6基 中国にC3/C4 Combine型とC4型2基納入されている。

UOP

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STARプロセス

Phillips Petroleum が開発 Uhdeがライセンシングしている。 スチームをプロパンの約4倍使用する。 一段目多管反応器. 二段目は固定層断熱型反応器 二段目反応器に酸素または空気導入(脱水素に必要な熱: 生成する水素の燃焼) 再生サイクルは7時間, 反応後1時間再生 触媒はPt-Sn/Zn-CaAl2O4

エジプトで工業化プラントが稼働

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会社 場所 生産量 (万ton/y)

process 稼働年

PetroLogistics Houston,TX 54.4 Catofin 2010

PetroLogistics Houston,TX 54.4 Catofin 2017

Ascend Gulf Coast, TX >100 2015

Dow Chemical Freeport,TX 75 Oleflex 2015

Enterprise Chambers Co., TX 75 Catofin 2015

Williams Alberta, Canada 50 2016

C3 Petrochemicals Alvin, AB N/A Oleflex 2015

Formosa Plastics Point Comfort,TX 80 2016

Dow Chemical TX/LA 55 2018

Sasol N/A

合 計 >543

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北米プロパンの脱水素プロジェクト 北米でのプロパンの脱水素プロセス導入計画を示す。 合計500万ton/年以上のプロピレン計画が発表されている。

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プロパンの脱水素によるプロピレンの価格 プロパンの脱水素によるプロピレン価格は$700/tonである。 北東アジアでのナフサからのプロピレンは$1,200/ton, プロパンの脱水素ては$1,300/tonと予想されている。

Dowは現状の20%のプロパンの脱水素によるプロピレンの自社の製造の割合を2019年には70%以上にすると発表している。

Jan H. Schut, Plastics Engineering, Feb. 20, 2013

プロピレン製造コスト

100

Dow PDH 計画

Catofin

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ICLabo

101

Lummus Axens プロセス名 OCT Meta-4 原料 エチレン, ブテン エチレン, ブテン 反応 固定床 移動床 反応相 気相 液相 反応温度 ℃ 330-400 30-60 触媒 WO3-MgO-ZrO2/SiO2 Re2O7 触媒再生 切換え 連続再生 実績 >30基 無し

触媒: カルベン活性化触媒 WO3 , Re2O7

微量の硫黄により被毒: Ni/Al2O3による硫黄除去装置設置 触媒へのカーボン質の付着はディコーキングにより30日前後で再生 ブテンの転化率は60~70%プロピレンの選択率は96%以上である。 他にAxensが液相でRe2O7を用いたMeta-4プロセスを開発しているが実績はない。

メタセシス

OCT(Olefin Conversion Technology)プロセスはPhillipsが開発したプロセスでCB&I Lummusがライセンシングをしている。 エチレンとブテン-2からメタセシス反応によりプロピレンを製造するプロセスである。 CH2=CH2 + CH3CH=CHCH3 → 2 CH2=CHCH3 OCT プロセスは世界ですでに30基以上導入されている。触媒はWO3-MgO-ZrO2/SiO2で米国のBASF Catalysts LLCが供給している。

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ICLabo

102

三井化学Hyper3プロセス 三井化学はメタセシスプロセス触媒を開発した。共触媒にアルカリ金属を用いたWO3/ハイドロタルサイト又は WO3-CaO/Al2O3である。反応系内に微量の水素を導入することにより再生までのインターバルも長い。 ブテン基準での選択率は95%以上であると開示されている。 ルーマスのOCTプロセスには採用されていない。

WO2006-093058 Mitsui Chemical

エチレン

ブテン-2 Hyper3 プロピレン

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103

二量化とOCTの組み合わせ エチレンの二量化によりブテン-2を製造しエチレンとブテン-2からプロピレンを合成することができる。ルーマス はPhillipsの開発した均一系触媒(n-Bu3PNiCl2/C2H4AlCl2) を用いた二量化プロセスをライセンシングしている。IFP の二量化プロセス(ブタマール)と違ってブテン-2が生成される。中東のボルージュではこのプロセスにより96万ト ン/年のプロピレンプラントが稼働している。

2 CH2=CH2 → CH3CH=CHCH3

Lummus(Phillips) nBu3PNiCl2/C2H4AlCl2 33℃ 1.2 MPa Ethylene Conv. 90% 2-Butene Sel. 93% 収率 >90% (E to P)

エタン

エチレン ブテン

プロピレン ポリプロピレン OCT

ボルージュ (UAE) ボリアレス, ADNOCの合弁

ポリエチレン

54万トン

96万トン

US 422,531 Phillips 103

IFP Alpha Butol プロセス

Ti(Obu)4/TEA 50~60℃ 2.5 MPa

Butene Sel. 93%

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ICLabo

104

Licenser Location 原料 Propylene Ton/y

Remarks Start

Statoil ノルウェー 天然ガス メタノール

Demo plant 2002年

Iran イラン 天然ガス メタノール

100,000

大唐内蒙古多侖倫売煤化工公司

内モンゴルシリンゴル盟(中国)

石炭 メタノール

480,000 2008年

神華集団公司 寧煤集団

寧東(中国) 石炭 メタノール

471,000 PP Lummus (Novolen)

2010年

神華集団公司 寧煤集団

寧東(中国) 石炭 メタノール

500,000 2期計画 Engineering 2012

2011年 9月契約

安徽淮北集団公司

安徽省

石炭メタノール

520,000

計画中

60%

MTPプロセス Lurgiが開発したプロセスである。ノルウェーのStatoilのメガメタノールプラントでパイロットプラントで実証し た。プロピレンの 重合ではBorealisが共同開発に参画している。触媒はクラリアント(旧SüdChemie) 社のZSM-5タイプの触媒が用いられている。 プロピレン収率は約70%である。触媒層は反応熱を抑制するために水蒸気が用いられている。触媒層は5~6層で, それぞれの 層にDME/メタノールが導入されている。反応器は3基で一基は再生に用いられている。触媒寿命は1~2年。副生ガソリンはサ ルファー, 芳香族フリーである。中国では既に2基稼働している。

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ICLabo

105 105

JGC DTP ( Dominant Technology for Propylene Production)

日揮: 三菱化学と共同でDTP触媒開発 既に触媒の工業製法確立 2010年夏 1ton/dayのパイロットプラント 生成ガスリサイクルによるプロピレンの収率アップデータ採取 プロレン収率90%以上が得られている。 触媒再生: スウィングリアクター 触媒製法(ZSM-5にCaCO3を混合焼成) 基本ゼオライト: Zeolyst社アンモニウム型MFI(Si/Al=75)CBV15014G 100gを550℃で焼成しプロトン型とした後, ベーマイト(70%Al2O3) 28gと5gのCaCO3を混合, 水を加え混練後, 押し出し成型, 120℃乾燥, 550℃, 12時間焼成

特開2007-137769 低級オレフィンの製造方法 特開2008-80301 アルカリ土類金属化合物含有ゼオライト触媒 およびその調製方法,並びに低級単価水素の製造方法 特開2008-074791 低級オレフィンの製造方法

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106 沖田充司, 本田一規, PETROTECH, Vo.35, No.584 (2012)

DTP®インテグレーションケース

プロピレン > 70%

DTP 触媒 スチーム耐性 低圧損 (形状, サイズ,最適化) 2塔方式 (再生塔) コーク燃焼

2010年8月~ 12,000 時間

1-ブテン

DME MeOH

プロピレン

エチレン

525℃ 0.21 MPa WHSV 4.5-18 h-1

ZSM-5 SiO2/Al2O3 = 716 CaCO3 6.6% Al2O3 26% HNO3 17.6% (強度)

1-ブテン 13.7 % DME 19.6 N2 47.0 H2O 19.7

Sel. 56.5 % 11.9 %

特開2012-120977 三菱化学, 日揮

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MTOオレフィン価格試算

エチレン20万トン, プロピレン30万トンプラント設備投資 メタンのガス化+メタノール合成+MTO+蒸留設備 = 1,200億円 償却 7年 1,200/50万トン/7 = $ 343/ton 運転コスト 10億円/50万トン= $ 20/ton 1,012 + 343 + 20 = $ 1,375/ton 輸入LNG or シェールガス原料 ≈ 現状ナフサ原料

CH4 + H2O ⇔ CO + 3 H2 ΔH298 = 206 kJ/mol 吸熱反応 CH4 + 2 O2 → CO2 + 2 H2O ΔH298 = -802 kJ/mol発熱反応

74%

天然ガス 合成ガス

80%

メタノール エチレン,プロピレン

52% 3 CH4 → C3H6

$3/MMBtu = $ 158/ton $10/MMBtu = $ 527/ton

(158 x96/(20+30) = $ 303/ton (527 x96)/(20+30) =$ 1,012/ton

96万トン 20 万トン 30万トン

DMTO-Ⅱ S-MTO SAPO-34

107

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108

E-FLEX プロセス 旭化成はエタンの熱分解と生成粗エチレンからエチレンとプロピレンを合成するプロセス(E-Flex)を開発した。 流動層でZSM-5が用いられている。

NEDO 省エネルギー技術フォーラム2012 発表資料

非凝集ゼオライト ZSM-5 (SiO2/Al2O3=27) 2.9 μm ZSM-5/SiO2/P=1/1/0.024 SiO2: シリカゾル 5nm

触媒メークアップ 0.0001 T/T 原料

特開2009-221030 旭化成ケミカルズ

急冷熱交 E-FLEX 反応器

触媒再生

熱分解 エタン プロピレン

スチーム

高圧スチーム回収

触媒循環

流動床

空気

エチレン

C2H6 → CH2=CH2 → CH3CH=CH2

反応温度 ℃ 550 反応時間 hr 42 82 エチレン転化率 % 80 68 プロピレン収率 % 17 23

エチレンを原料としたE-Flexのプロピレン収率

エチレン9.9g/h, H2 0.78 g/h, 水4.9 g/h, N2 5.3 g/min, 550℃, 0.14 MPa

E-Flex小型実証化設備での反応成績

装置 エチレン収率(wt%)

プロピレン/エチレン収率

E-Flex小型実証化設備 (原料:エタン)

32.5 0.64

(参考) ナフサ分解

30.4 0.59

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109 JP2011-78962A 三菱化学

400 ℃ 0.1 MPa

CHA 構造 プロトン型 SiO2/Al2O3 = 16

細孔径 0.38 nm 固定床

エチレン 30 vol% N2 70

エチレンからプロピレンの合成 三菱化学はエチレンからプロピレンの合成プロセスを開発触媒しETPプロセスと名付けた。

H2による再生

5時間50分後 H2 再生後 エチレン 転化率 64→19→64% プロピレン選択率 58 → 57% 400 ℃ 0.1 MPa 表面色SSZ-13 (CHA 構造 プロトン型) SiO2/Al2O3 = 16 細孔径 0.38 nm 流動層 >5,000 hrs 連続運転

3 CH2=CH2 → 2 CH3CH=CH2

WO2010/128644A1 三菱化学

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ICLabo

2015年プロピレンコスト Booz & Co.,によると現状の水蒸気改質とFCCからのプロピレンは$600/ton プロパンの脱水素とCTP (Coal to Propylene)が$900/ton, メタセシスは$1,428 (2012年)としている。

Booz & Co., 110

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ブタジエン

111

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ブタジエン合成ルート

天然ガス

ABE醗酵

ブタジエン

Cobalt

糖 ブタノール

セルロース

ブテン

エタン

ブタン

1,3-ブタンジオール 石炭

合成ガス

二量化

メタン

アセトアルデヒド

エチレン

イソブタン

アセチレン

石油 FCC

合成ガス

エタノール

112

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113

原料 ブタジエン収率wt%

エタン 1~2

プロパン 4~7

n-ブタン 7~11

ナフサ 12~15

ガスオイル 18~24

K.Weissermel, 向山光昭監訳, 工業有機化学, 101, (1978)

スチームクラッキングによる各種原料からのブタジエン収率

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Houdry法 Phillips法 Standard法 Shell法 Dow法 脱水素原料 ブタン ブテン ブテン ブテン ブテン 反応器 固定床断熱 固定床 固定床 固定床 固定床 触媒 Cr2O3-Al2O3 Fe2O3系 MgO-Fe2O3 Fe2O3-Cr2O3 Ca8Ni(PO4)6 反応温度 ℃ 600 649 649 621~677 593~677 反応圧 kg/cm2G

122 mmHg A

0.4 大気圧 0.5~0.8 0.7~1.05

水蒸気/原料 mol/mol なし 18 15~20 8~12 18~20 GHSV h-1 LHSV 1~1.5 250~350 200~800 500 100~200 再生サイクル 8~15 分 長時間再生 1時間 24時間反応

1時間再生 15~60分

転化率 wt% 28 24 18~36 24 38 選択率 wt% 52 70 80~65 70 90 備考 JSR他4社で実施 1957年Phillips 戦後Shell法に移行 Shell Neches.

Butane Products 他3社で実施

1970年代稼働していたブタジエンプロセス

114

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115

反応経過時間 10 300

n-ブテン転化率 % 92.1 88.4

ブタジエン選択率 % 85.4 85.1

ブタジエン収率 % 78.7 75.2

触媒炭素量 wt% ― 2.2

触媒はMoBiFeNiK/SiO2 BB-Flex 1-ブテン/2-ブテン/i-ブテン/n-ブタン=58/40/1/1, 空気/n-ブテン =4.6~6.0, N2 balance, n-ブテン濃度8vol%, 360℃, 50 kPaG, 空気量出口酸素濃度0.3~0.7 vol%に調整 接触時間2.5 g・sec/cc

旭化成Mo-Bi系流動床プロセス 旭化成は流動層によるブテンの酸化脱水素プロセスを開発している

ブタジエン1万トン/年の実証プラントを水島に建設し2014年に稼働予定。 海外に新設するSBRの製造拠点に導入する計画。

特開2010-120933 特開2012-92092 旭化成

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116

三菱化学ブテンの酸化脱水素 三菱化学は多管の酸化脱水素プロセスを開発

BtB プロセス

反応温度 390-400℃ 触媒と管壁の温度差小 <200℃ (内壁研磨反応管) MoOxの気化の抑制 コークの析出 10%近くに低減

Mo12Bi5Co2.5Ni2.5Fe0.4Na0.35B0.2K0.08Si24Ox

JP 2012-197272 三菱化学

5 mm

4 mm 27 mm φ

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117

特開2011-148720 三井化学

0.035%Ni/SiO2-Al2O3(470/1) Mo12Bi2.0Fe3.0Co8.0Cs0.4/SiO2(10%) WO3/MgO-SiO2

エチレン n-ブテン ブタジエン

へキセン オクテン プロピレン

二量化 酸化脱水素

メタセシス

Conv:29.4% Sel.86.7%

ヘキセン Sel.9%

300℃, 0.1MPa 340℃

350℃, 0.1MPa

Conv:90% Sel. 95%

ヘキセン Conv:87% プロピレン Sel. 92%

Ni 凝集 コークの副生

二量化

Mo12Bi2.1Fe2.2Co6.9Cs0.5/SiO2(5.5%) 1,000h Conv. 98% Sel. 97% 特開2011-178719 三井化学

エチレン

ブテン ブタジエン

プロピレン

メタセシス

二量化

酸化脱水素

117

エチレンからブタジエンの合成 三井化学は低濃度Niを用いた気相によるエチレンの二量化によるn-ブテンの合成触媒を開発した。300℃での反応であるので後段の酸化脱水素によるブタジエンの合成につなぐことができる。

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アセチレンの水和

O OH

OH2 O

OHH2

Ni

H2O2OH

Na5P3O10

昭和電工 エチレン法アセトアルデヒドを用いてブタジエン工業化決定

アルドール法 アセチレンからブタジエンが合成できる。BASFでプラントが稼働している。 アセチレン→アセトアルデヒド→1,3-ブタンジオール→ブタジエン

インド, 中国で合計8.5万トン/年プラントが稼働

アルドール化 水素化 100℃, 30MPa 1,3-ブタンジオール

気相270℃

アセトアルデヒド基準 ブタジエン選択率 約70%

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119

最新の動向

Phillips ブテンの酸化脱水素 O-X-Dプロセス( Oxidative dehydrogenation)を開発し米国テキサス 14万トン/年プラントを稼働させた。 固定床プロセスでn-ブテンは水蒸気と空気と共に480~600℃で導入, 触媒は明らかにされていないがBi-MoかSn-Sb酸化物系 ブテンの転化率は75~80%, ブタジエンの選択率は88~92% プラントは1976年まで稼働し, その後停止。 Petro-Tex Oxo-D プロセスを1965年に工業化した。550~600℃で酸化脱水素する。触媒はFe, Zn, Mn 又はMgの複合酸化物 スチームを導入することによって選択性制御する。ブテンの転化率は65%, ブタジエンの選択率は93% 米国のTPCグループ: 休止中の脱水素プラントを改造27万トン/年Oxo-Dプロセスブタジエン製造のためのエンジニアリングスタディーを開始。 シェールガス含有ブタンを用いる。 中国 Wison Engineeringプラント2基 稼働, FCCブテン原料 三菱化学 コンビナート副生ブテン酸化脱水素5~10万トン/年ブタジエンプラントを2013年水島で立ち上げると発表 プロセスはBTB (Butene to Butadiene) プロセスと名付けられ海外メーカーにライセンシングする検討に入った。 旭化成 BB-Flex プロセス: ブテンの脱水素, ブタジエン1万トン/年の実証プラントを水島に建設し2014年に稼働予定。 海外に新設するSBRの製造拠点に導入する計画。 昭和電工 エチレンのワッカー法により得られるアセトアルデヒド原料 ブタジエン合成プロセス, 2016年大分で10万トン/年プラント稼働予定。 アルドール縮合によるアセトアルドールの水素化と脱水反応

LookChem, Production of 1,3-Butadiene from C4 Alkanes and Alkens

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芳香族

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芳香族(BTX)合成ルート

天然ガス

FCC

芳香族

エタン

プロパン

石炭

メタン

石油 改質装置

水素化分解

ラフィネート

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リフォーメートとナフサ分解残油の芳香族組成

リフォーメート ナフサ熱分解残油

沸点範囲 ℃ (ASTM 10~90% Pt) 65~154 52~167

芳香族含有率(wt%) C6 ベンゼン 5.0 28.7

C7 トルエン 19.7 9.8

C8 o-キシレン 7.5 (26) 0.5 (20) m-キシレン 11.2(39) 0.7(28) p-キシレン 4.9(17) 0.3(12) エチルベンゼン 5.0(18) 1.0(40) スチレン 0.0 3.6

C9+ 17.4 13.6

非芳香族炭化水素 29.3 41.8

石油精製プロセス, 石油学会編248, (1998)

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123

ベンゼンの製法 ガソリンの改質装置のシビアリティーを上げ(低圧運転)れば, 芳香族収率は増加する。BTXの抽出装置を設置することによ り芳香族を得ることは十分可能である。

マグナフォーマー

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成 分 wt %

原料組成 C4パラフィン 10 C4オレフィン 30 C5パラフィン 45 C5オレフィン 15

生成物収率 オフガス 37.3

軽質パラフィン 20.0

ベンゼン 6.0

トルエン 18.8

エチルベンゼン 1.3

キシレン 11.1 C9芳香族 3.8 C10+芳香族 1.7

軽質オレフィンからベンゼンの合成 旭化成は軽質オレフィンから芳香族製造プロセスを開発し水島で3,500 BPDプラントを1993年稼働させた。 Zn/ZSM-5 が用いられている。アルファプロセスと名付けられている。反応条件は, 500~550℃, 0.3~0.7 MPaG, WHSV 2~4 h-1 吸熱反応で必要な熱は外部から供給される。反応器は2基スウィングリアクターで数日のインターバルで触 媒の再生が行われる。現在は休止中である。 このプロセスはFCC副生ガスにも適用することができる。

赤石 正, 触媒技術の動向と展望, 触媒学会, 79, (1996) 石油精製プロセス, 石油学会編, 講談社, 255 (1998)

軽質オレフィン(C4,C5)を原料

124

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原料 LPG (C3/C4=1/1)

430,000 ton/y

生成物 ベンゼン 66,700 トルエン 118,800 混合キシレン 64,000 C9+芳香族 24,600 水素(95mol%) 29,400 燃料ガス 126,500

原料 プロパン/ブタン (50/50wt%)

15,000 BPSD

反応器 4基多段CCR (連続再生装置) 球状で摩耗ロスを低減した触媒

1990年BPスコットランドにあるGrange-mouth製油所で1,000 BPSD の実証プラントを稼働させ工業化プロセスを開発 Gaイオン交換担持ZSM-5 1999年 LPGベース 46,000 BPDプラントSaudi Basic Ind (SABIC)で稼働

Cyclar process

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原 料 プロパン ブタン 軽質ナフサ

生成物 水素(99.9mol%) 3.4 3.4 2.8

燃料ガス 42.7 37.1 34.1

ベンゼン 15.3 16.4 19.2

トルエン 21.6 23.4 24.8

キシレン 12.0 12.3 12.5

C9+芳香族 5.0 7.4 6.6

LPGから芳香族を製造するプロセスである。 1990年JX日鉱日石エネルギーは川崎製油所において200 BPDの 実証プラントを建設し1年間の実証試験を行った。 反応塔は3段, 反応温度450~580℃, 0.1~0.7 MPaG, 固定層スウィングリアクターで 一日ごとに切換え再生する。 触媒はGa-Silicate成形品である。 コーク燃焼で発生する水分は触媒劣化原因となるのでモレキュラーシープで吸着除去し水素は回収分離される。 原料にプロパン, ブタン, 軽質ナフサを用いた場合のそれぞれの生成物収率を示す。

Z-Formerプロセス

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バイオマス利用触媒反応

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バイオエタノール

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Billo

n G

allo

n

Energy Out Look 2012 DOE

糖の発酵によるエタノール合成

米国バイオマス戦略

2000年米国は農業政策としてBiomass R & D Act of 2000 バイオマス研究法を制定した、 2005年にはEnergy Policy Act エネルギー政策法を制定し $145MMを使った。 バイオマスエタノール使用義務を定め再生燃料基本法で2012年までにバイオエタノール2,800万Kl使用することにした。 米国のコーンエタノールの生産量は 2,500万kLが限界。米国は 国家目標としてバイオエタノール30-30 計画 (2030年 までにガソリン代替 30%)を立てた。必要なバイオエタノールは約 2億万kLである。 2007年 大統領演説で 代替燃料目標2017年に約1.3億万KLを発表 2011年までに優遇税 $ 0.45/gallon ($ 60 MM) 輸入税$ 0.54 /gallonを制定した。 E10 が達成されてからE10障壁が生じエタノールの生産は止まっている。 バイオエタノールの価格は 2012年 $ 2.25/ Gallon $ 0.45/L 2013年 $1.97 2022年 $ 2.37 $ 0.47/L

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ICLabo バイオマス利用 バイオエタノールとバイオディーゼルが燃料として広く使われるようになり米国ではE10(10% ガソリンブレンド)が行き渡った。

ここに来て 1) バイオマス原料は可食資源から廃材やコーン葉茎, 麦わら, スウッチグラスなどの非可食資源に移ってきた。 2) バイオ化学品の合成では石油原料と競合できるものに開発テーマが絞られてきた。 3) 原料または中間体製造に発酵法(酵素, 微生物)が用いられるようになってきた。 合成ガスからエタノール, コハク酸, ブタノール, など 4) 原料の構造をできる限り維持した合成法が研究されている。 グルコース, セルロース, リグニンの利用 5) 全く新しい化学品やポリマーはビジネスまで時間と費用がかかるためドロップインで現行プロセスの途中に導入できる化 学品の合成が研究されるようになってきた。

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ICLabo

バイオエタノール 米国ではバイオエタノールの原料は従来のコーンベースの可食資源の生産利用が限界に達し, Corn stover(コーン茎葉), 麦わら, 廃材, Switchgrassなどの非可食資源に移りつつある。 非可食資源からのエタノール合成は, 非可食資源の前処理技術が重要である。 セルロースは 1) 酸による加水分解法は取り入れられていない。 2) 水熱, メカノケミカル法と 3) セルラーゼによる加水分解法が多く採用されつつある。 4) バイオマスをガス化して合成ガス(CO,CO2, H2)とした後, ⅰ) 合成ガスをバクテリアを用いてエタノールとする方法 ⅱ) 触媒用いて直接エタノールを合成する方法 が開発され工業化されつつある。触媒法はうまくいっていない。

非可食資源

加水分解

酵素 酵素糖化法

ガス化

合成

蒸留 バクテリア バイオエタノール

破砕

バクテリア

Fuel Gasoline Blend

E-10

Core stover Cone axis

Waste wood Switchgrass

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ICLabo 米国非可食資源を用いたエタノール製造会社 (含建設中)

会 社 場 所 セルロースまたはバイオマスの分解法 原 料 万ガロン/年 Start

Abengoa Bioenergy Hugoton, KS Enzymatic hydrolysis Wheat straw 2,500 2013 4Q

Beta Renewables Sampson County, NC Enzymatic hydrolysis Wheat straw 2,000

BlueFire Renewables Irvine, CA Acid Hydrolysis →Enzymatic hydrolysis Multiple sources 1,800 2014

Colusa Biomass Energy Sacramento, CA Enzymatic hydrolysis Waste rice straw

Oskata Warrenville, IL Syngas fermentation Biomass, Agricultural l wastes

Dupont Vonore, TN Enzyme hydrolysis Corn cobs, switchgrass

Dupont Nevada, IA Enzyme hydrolysis Corn stover 2,500 建設中276MM

Fulcrum BioEnergy Reno, NV Enzyme hydrolysis Municipal solid waste

Gulf Coast Energy Mossy Head, FL Enzyme hydrolysis Wood waste

KL EnergyCorp. Upton, WY Enzyme hydrolysis Wood

Mascoma Lansing, MI Licensed by sunOpta Wood 2,000-4,000 2014-2015

POET-DSM Advanced Biofuels Emmetsburg, IA Enzymatic hydroysis Corn cobs, husks and stover 2,000-2,500 2014, 250MM

SunOpta Little Falls, MN microorganisms to convert cellulosic fibers to sugar and produce alcohol in one step

Wood chips

Sweet Water Energy Rochester,NY Dilute acid Biogasol technology Multiple Sources

US Envirofuels Highlands Country, FL Sorghum juice Turbo yeast Sweet sorghum

Xethanol Auburndale, FL Citrus peels

実証プラント

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ICLabo 非可食バイオリファイナリー イタリアのMossii & Ghisolfi (PET maker) は非可食の稲わらやコーン茎葉を原料としたエタノール実証プラントを2013年イタリ アのCrescentinoに建設しバイオエタノール4万トン/年プラントを稼働させた。加水分解に必要な酵素はデンマークの Novozymesから供給されている。リグニンは15MWの発電に利用されている。へミセルロースの加水分解はイタリアのChemtex の開発したスチーム, メカノケミカル法(PROESTA Technology) 糖化は酵素, MO(微生物)を使い連続してエタノールが製造され ている。 M&G社非可食バイオマスによるエタノール合成プロセス

M&Gは中国のGuozhenとJVで安徽省阜陽市に約1500億円を投資し麦わら(100万トン/年)を原料としたバイオリファイナリーの建設を行い2015年に稼働させる。バイオエタノールだけでなくバイオエチレングリコール(発酵法)も製造予定である。副生リグニンは45MWの発電所の燃料とされる。 ブラジルのGraaBIoはバガスや藁材を用いてを用いてAlagoasにや8.2万Kl/年のエタノールプラントの建設を開始した。 前処理はPROESA技術, 加水分解はNovozymesの開発したセルロース向け酵素, 発酵はオランダDSMの酵母を用いる。 米国Project Alpha社はノースカロライナ州にUSDAの支援を受け同様の技術で2015年にプラントを稼働させる。

工業化プラント

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ICLabo

Wood

Chemical Engineering News 9/17/2012, http:/www.zeachem.com/

実証プラント

ポプラ 25万ガロン

リグニン

酢酸

バクテリア or 酢酸塩生成微生物

酢酸エステルル

エタノール

水素化

酢酸経由エタノールの合成 ZeaChemはオレゴン州Boardmanに2012年24,000KL/年のWood(ポプラ)を原料としたエタノールプラントを稼働させ実証した。 水蒸気と酸で糖とリグニンを分離しC5, C6糖は嫌気性のバクテリアで酢酸とし酢酸エステルとした後, 水素化分解してエタノー ルを合成する。発酵時にCO2は生成しない。C収率はYeastが67%に対してほぼ100%である。分離されたリグニンはガス化して 水素化原料の水素が製造される。余剰の合成ガスは発電に利用されている。

Steam, acid

ガス化 水素

発電

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ICLabo

嫌気性バクテリアによる合成ガスからエタノールの合成 INEOSのバイオ部門であるINEOS Bio社はバイオマスをガス化して製造した合成ガス(CO, H2)から嫌気性バクテリアを用いて エタノール3万2000kl/年を合成するプラントを2012年に130億円投資してフロリダ州のVero Beachに建設した。 ガス化で発生する熱を利用して発電し付近の1,400軒に電力も供給している。

135

工業化実証プラント

8 CH2O + O2 → 6 CO + 2 CO2 + 8 H2

6 CO + 3 H2O → CH3CH2OH + 4 CO2

6 H2 + 2 CO2 → CH3CH2OH + 3 H2O

8 CH2O + O2 → 2.33 CH3CH2OH + 3.33 CO2 + H2O

廃材

Corn Stover

乾燥 ガス化 Fermentation

バクテリア

蒸留

数分

Nutrient

CO, H2, CO2

エタノール

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ICLabo

LanzaTech のバクテリアによる合成ガスからエタノールの合成

136

工業化実証プラント 米国のLanzaTech は合成ガスから微生物を用いエタノール合成プロセスを開発している。 2008年にニュージーランドのBluescope 製鉄所に45ton/年のパイロットプラントを建設し基礎データを採取し 2012年に中国の宝鋼集団(Baosteel) と首鋼集団(Shougang)にエタノール10万ガロン/年の実証プラントを建設し稼働させた。2014年には二つの商業化プラントを稼働させると発表している。 米国では森林廃材を原料としたバイオ合成ガスを用いたプラントを建設する計画がある。 台湾でも導入の計画がある。 原料には多量の水素が必要である。製鉄所排ガスでは水素の含有量は足らないので水素の製造が問題である。 製鉄所からのCO2捕集プロセスとして注目されている。

2 CO2 + 6 H2 → CH3CH2OH + 3 H2O Siemens Metals Technologies, Harsco, PETRONAS, Virgin Atlantic, Boeing, Invista, Evonik and India’s Centre for Advanced Bio-energyと提携したと報じられている。 エタノールが安価に入手できるとエタノールを原料としたブタジエンが製造可能となる。 INVISTA社は2016年この技術で製造したブタジエンで6,6-ナイロンを製造する計画である。

News Release, 2013, LanzaTech, Asia Pacific Clean Energy Summit, Hawai, Sept. 13, 2011

CO2

CO

H2

発酵 エタノール Wood

Stover Switchgrass

1,3-BDO

燃料 ブタジエン MEK

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ICLabo バイオマスの合成ガスからエタノールの合成 バイオマスをガス化し合成ガスから触媒を用いて直接エタノールを合成する方法がNRELによって研究された。 Dow UCCのK2CO3で促進された高表面積のMoS2, CoSが検討された。 Range Fuel Inc.はDOEの75億円の資金援助を受けプラントを建設したがエタノールは生産されず経営破綻した。 設備はLanzaTechに売却された。メタノールプラントに改造されたがまだメタノールは生産されていない。 触媒寿命は100時間と短いとNERLは報告している。

Vol% Wood Corn Stover

H2

CO CO2

CH4

C2H4

H2S ppm Benzene mg/Nm3

28.1 25.5 25.2 15.3 3.7 ≥50

6,500

25.4 23.4 22.5 14.5 4.4

≥600 10,000

Steam/Biomass=1

Gas

Biomass

Sand

800℃

900℃

Steam Air

Ash Sand & Char

バイオマス

ガス化 精製 合成 エタノール

Fluid bed 875℃

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ICLabo

NREL 合成ガスからエタノール合成

138

NRELのプロジェクトとしてDow/UCCのMoS2-CoS modified K2CO3 がStirred Tank ReactorでSlurry bed 3-phase, 13MPa, 350℃で研究された。$76MM from DOE, Unsuccesful Plant closed and sold to LanzaTech

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ICLabo

合成ガスからエタノール合成

C1プロジェクトの開発時代にUCC社が見つけていたRh/SiO2を基にエタノールの直接合成触媒の開発が行われた。 水素化の高活性化と高選択性のためにFe, Irなどの遷移金属とK, Liなどのアルカリ金属, COの解離促進のためにMn, V, Zr修飾触媒が見つかっている。生成した酢酸やアセトアルデヒドを後段で水素化することによりエタノールの収率が上がることが分かり最終的にH2/CO=1.9, 0.7 MPa , SV 45,000 h-1の条件で一段目にRh-Mn-Li/SiO2 を用い250~275℃で反応させ二段目でCu-ZnOx/SiO2複合酸化物触媒を250~280℃で反応させると粗エタノール収率61%,濃度48%のエタノールが得られている。

2 CO + 4 H2 → C2H5OH + H2O

竹内和彦, 触媒, Vol.38, No.8, 604 (1996) 特開2012-1441A 積水化学

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ICLabo

反応条件 反応温度 ℃ 450 バイオエタノール転化率 99% エチレン選択率 96.8%

原料 組成 生成物 選択率 エタノール 95 vol% エチレン 96.8% アセトアルデヒド 100 ppm wt エタン 0.5 フーゼル油 100 mg/L プロピレン 0.06 酸 10 mg/L ブテン 2.4 メタノール 0.3 vol% アセトアルデヒド 0.2 硫黄化合物(S) 0.5 ppm wt メタン, CO, CO2, エ

チルエーテル, H2 微量

サトウキビを原料としたバイオエタノールを用いて製造されたエチレンはUSD400~500/tonで石油化学のナフサクラッカーで製造されたエチレンを原料としたエチレン約USD1,200/tonより安価である。米国ではシェールガス由来のエチレン価格はバイオエチレンよりわずかに安価(~USD400/ton)となっている。バイオエタノールからバイオエチレンへの脱水反応は大きな吸熱反応であるため反応に必要な熱は供給しなければならない。触媒はカーボン析出が多く, 開発当時の触媒寿命は短く再生装置が必要であったが, 現在は1年以上の寿命があり触媒の再生装置も必要なくなった。触媒はハルコン社の開発したSynDol触媒(MgO-Al2O3/SiO2)とPhillips の開発したZnO/Al2O3 が知られている。純度93%のバイオエタノールを原料として450℃で反応させるとバイオエタノールの初期の転化率は99%でエチレンの選択率は96.8%である。ブテンが2.4%副生するが, 他の副生成物は少ない。

バイオエチレン

バイオエチレン製造プロセス SynDol触媒によるエタノールの脱水反応

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ICLabo Hummingbird Process BPはエタノールの脱水によるエチレン製造プロセスを開発しHumming bird processと名付けた。今後積極的にライセンス活 動を行うと思われる。

特許から見ると触媒は約30%H3[PW12O40]/ SiO2と思われる。C4の副生が少なく1,000ppm以下である。 CH3CH2OH, CH3CH2OCH2CH3 → CH2=CH2 + H2O 26-30%HPA/SiO2 220 barg 220℃ Phosphotungstic acid H3[PW12O40]・24H2O 原料 EtOH Di-ethylether 34.5% 水 3.3% N2 32.7% メタン 1.5% エチレン中C4 < 1,000 ppm

US2012/0165589 A1 BP

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ICLabo

バイオエタノールからバイオエチレンが合成されると石油化学コンビナートのようなダウンストリームの化学品の合成への展開が可能となる。ブラジルではバイオエチレンをベースにしたエチレングリコールとOCTを用いたプロピレン合成計画が具体化しつつある。

バイオエチレン誘導品

バイオエタノールの化学品製造ルート

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ICLabo

会社 万トン/年 製品 操業

ブラジル Braskem 20 HPE 2009 Solvay Indupa 6 VCM 2010 Dow-Crystalsev 35 LDPE 2011 Dow 35 PE 計画 Braskem 30 PP 計画

インド Reliance Industries 11 EG 稼動 Reliance Industries 15 EG 稼動 India Glycils 9 EG 稼動

中国 臨沂市金沂蒙生物科技 21 酢酸エチル 稼動 Shandong Haihua ― 酢酸エチル 稼動

台湾 greencol 7 EG 稼働 日本 ダイセル化学

1.08 エチルアミン 2007

7.5(5) 酢酸エチル 2011(2009)

バイオエタノールを原料とした化学品の製造が始まっている。台湾, 日本はブラジルの輸入エタノールを使っている。 バイオエチレン誘導品

稼働始めたバイオエタノール利用プラント

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ICLabo

バイオディーゼル油

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ICLabo FAME(Fatty acid methyl ester) 欧州, 米国ではトリグリセライドである天然の油脂をメタノールでエステル交換しFAMEとしてディーゼル油として用いられてい

る。従来エステル交換プロセスは均一系でKOHまたはNaOCH3が70~80℃, 0.4~0.5MPa,で用いられている。 欧州では大小200以上のプラントが稼働している。 グリセロールが副生するがNaメチラートなどの触媒が混入し分離が困難であり, グリセロールはほとんど燃料としてしか利 用できなかった。 懸濁層プロセス 米国のCatiline社はセメントキルンダストを触媒とした懸濁層プロセスを開発し工業化した。触媒はT-300と呼ばれている。 粒径は12~20μm, 15m2/g, である。60~70℃, 1~1.25atm, 触媒充填量: 2~6% / 油脂, 反応器はシリーズで2基用いら れている。 固定層プロセス IFPは固定層プロセスを開発しライセンシングしている。触媒はZnO/Al2O3プロセスは Esterifip-Hと呼ばれている。 200℃, 6 Bar, 0.5 hr-1 の条件で用いられている。Axens は2007年Kirkpatrick 賞を受賞している。 副生するグリセロールの純度は~98%である。

CH2COOR1

CHCOOR2

CH2COOR3

+ 3 CH3OH

R1COOCH3

R2COOCH3

R3COOCH3

+

CH2OH

CHOH

CH2OH

Fat & Oil Bio-diesel Glycerol

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ICLabo

Esterifip-H by IFP

均一系プロセス

70~80℃, 0.4~0.5MPa,

懸濁層プロセス

Catiline (US) catalyst: セメントキルンダスト T-300

粒径: 12-20μm, 15m2/g, 60~70℃, 1~1.25atm

触媒充填量: 2~6% / 油脂 2 series reactors

IFP ZnO/Al2O3( Esterifip-H) プロセス

200℃, 6 Bar, 0.5 hr-1 Axens : 2007年 Kirkpatrick 賞

グリセロール純度 : ~98%

固定層プロセス

バイオディーゼル燃料(FAME) 工業化プロセス 欧州では大小200以上の会社が均一系でFAMEを製造している。アルカリ触媒を含むグリセロールは燃料としてしか利用さ れていない。米国Catilina社はセメントキルンダスト触媒による連続懸層プロセスを開発した。 IFPはZnO/Al2O3による固定層プロセスを開発し既に数基ライセンシングしている。

KOH or NaOCH3

工業化プラント

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ICLabo

March 14 (Thu) 2013 アイシーラボ

室井髙城

グリーンナフサ, ジェット燃料, ディーゼル油 Neste Oilはパーム油の水素化によるバイオディーゼル油の製造技術を開発し工業化している。 プロセスはNExBTLと呼ば れている。プロセスの条件を過酷にすると分解が促進し副生成物としてジェット燃料, さらに過酷にするとナフサが生成する。 二段目で水素化分解するとナフサ, ジェット燃料とディーゼル油が得られる。Neste Oilはブラントを建設しグリーンナフサ, グリーンジェット燃料の販売を開始した。

NExBTL プロセス 並産油 C5-C10 グリーンナフサ C11-C13 グリーンジェット燃料 C14-C20 グリーンディーゼル油

過酷

温和 ナフサ 高温 強酸触媒

グリーンガソリン 2 段反応

水素化 → 水素化分解

工業化プラント

反応条件

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ICLabo

特開2012-509985

メタセシスによるジェット燃料の合成 不飽和エステル(FAME)とブテン-1のメタセシス反応によりC10, C12を製造する。メタセシス触媒はGrubbsの開発したRu- Complexである。自己メタセシスも生じる。水素化はRu/Cで行う。 米国のElevance Renewable Science社は2013年インドネシアのGresikでパーム油原料とした18万トン/年プラント を稼働させた。1-ブテンは石油プラントから供給される。

Grubbs Ru Comp. C9~C21 Alkane

>50% C9~C15 >87%

Ru/C

大豆油 FAME メタセシス 水素化 ジェット燃料

1-ブテン Jet fuel oil

petroleum Bean FAME + 1- butene

工業化プラント

1,3-ビス-(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリニデンゾリニデン ジクロロRu(3-メチル-2-ブテニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)

H2

Jet fuel oil

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ICLabo 藻類原料バイオ燃料 米国では藻類を用いた燃料の合成パイロットプラントが稼働している。 Sapphire Energy社は太陽光を用いてAlgaeにCO2と光合成し藻を栽培収穫し油分を回収する。塩水中, 栄養剤を供給する。 2012年8月商業運転開始 2013年春から連続運転Jet Fuel, Diesel oil 100BPDの製造を行っている。 オクタン価91ガソリンの製造に成功, ボーイング航空機での燃料試験飛行も成功している。DOE補助 50億円 2018年商業運転を計画している。 Algenol Biofuels社は酵素の遺伝子をBlue-Green Algaeに持たせ, 藻類の細胞内に光合成によりできた糖類を同一細胞内で エタノールに転換させ, 過剰のエタノールを培養液の海水中に溶解させ蒸発により回収する技術を開発している。 2013年 9,000ガロン/1エーカーのエタノールの製造を達成している。 エタノール6.5 BPDのパイロットプラント DOE補助 25億円

パイロット試験段階

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Sugar・Sugar cane・Corn→Cyanobacteria→Fermentation→Extraction→Fat&Oil (トリ-グリセラィド) 2012 Archer Daniels Midland (ADM) Clinton Iowa 500 kL スケールアップ 2014 2万トン/年稼働 at ADM 2015 10万トン Kl/年計画 Using ADM PHA ( Polyhydroxyalkanoate) 休眠設備利用(Metabolix in 2012) 2013 10万トン/年稼働(Bunge joint venture) At Moema in Brazil ($71-91MM) 2016 30万トン/年計画 in Brazil フランスでも計画中 米国海軍はSolazyme社から航空燃料とディーゼル燃料を購入している。 Solazyme purchased many fermentation plants in US. Other companies using outside ponds by photo synthesis method

シアノバクテリアによるバイオディーゼル油 2003年に設立されたSolazyme社は糖を原料としたバクテリアによる発酵法で油脂を製造する技術を確立し実証プラントを稼 働させた。 光は必要としない。

工業化実証プラント

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バイオマス原料

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ICLabo

Pacific Northwest National Laboratory, NREL

CFP (Catalytic Fast Pyrolysis) 研究段階 非可食バイオマス(コーン茎葉, 廃材, 麦わら, スウッチグラス) を乾燥粉化し, 流動層で触媒と接触させる方法である。熱分 解により生成したフラン誘導体などの化合物は触媒と接触し芳香族などの化合物に転換される。 NRELが研究を推進している。

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ICLabo

CFP(Catalytic Fast Pyrolysis) プロセスの工業化

KiOR社( Khosla & BIOeCON(The Netherland)の合弁会社)は2013年CFPプロセスを用いた燃料油110~190kL/年プラントを建設した。アップグレーディングに必要な水素はメタン改質で製造している。副生したCharは燃料として用いAshは土壌改質材としている。 Cool Planet Energy System Co.は2014年38kl/年プラントをルイジアナに建設し続いて本格プラントの3プラントを建設すると発表している。

USP 20100105970

パイロット試験段階

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ICLabo

グルコースの接触分解 マサチューセッツ大学のHuberらはグルコースの固体触媒による接触分解を行っている。 ZSM-5(60)が芳香族と含酸素化合物の収率が高い。触媒量が多いと分解が進み芳香族収率は少なくなる。 実験段階であるので触媒/グルコース=19で行っている。

Torren R. Carlson, Geoffrey A, Tompsett, William C. Conner, George W. Huber,Top Catal (2009) 52, 241-252

Catalyst/Feed=19, 600℃, 240 s. ZSM-5 (60) Grace

研究段階

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ICLabo

Terren R. Carlson, et al., Energy Environ, Soci., 4, 145-161 ,2011

非可食資源Biomass 乾燥, 粉砕 流動層接触分解 蒸留 化学品原料

非可食資源の化学品への変換 非可食資源をガス化するのではなく乾燥,粉化し固体酸触媒を用いて流動層で接触分解する方法である。

植物成分を分解することなく含酸素化合物や芳香族を製造することが可能である。 固体のバイオマスと固体の触媒が流動層で反応する方法でFCCプロセスに似ている。 CFP(Catalytic Fast Pyrolysis)と呼ばれている。

実験装置

研究段階

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ICLabo

David J. Mihalcik, Charles A. Mullen, Akwasi A. Boateng, Journal of Analytical and Applied Pyrolysis 92 (2011) 224-232

Catalytic Fast Pyrolysis of Biomass パイロライザーを用いた各種バイオマスのCFP試験ではSi/Al比の高いZSM-5は含酸素化合物の収率が高く,

Si/Al比の小さなZSM-5は芳香族収率が高い。

反応条件 Stainless steel cup Biomass/catalyst=1/5 using Pyrolyzer He, 550℃, 18 sec.

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2 MF + プロピレン ZSM-5によるフラン分解 * CLD(Chemical Liquid Deposition by SiO2)

CFP(Catalytic Fast Pyrolysis)によるP-キシレンの製造 CFPを用いてフランを分解するとSiO2で修飾したZSM-5とGaZSM-5は芳香族の収率とp-Xylene の収率が向上する。 プロピレンを導入すると芳香族収率もp-Xylene収率も飛躍的に増加する。

Yu-Ting Cheng, Jungho Jae, Jian Shi, Wei Fan, and George W. Huber* Angew. Chem. 2012, 124, 1416 –1419

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Kaige Wang, Kwang Ho Kim, Robert C. Brown, Green Chem., 2014, 16, 727

セルロース, へミセルロース, リグニンのHZSM-5による分解 HZSM-5/Biomass =20

セルロース, へミセルロース, リグニンのHZSM-5による分解 CFP (Catalytic Fast Pyrolysis)によりセルロース, へミセルロース, リグニンを接触分解すると芳香族が得られる。

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ファルネセン Amyris(US)社はブラジルのサンパウロの近くのParaisoで糖から変性酵素と微生物を用いてファルネセン合成に成功した。 2013年10月に45日の操業で1,000KLの製造を実証した。AmyrisはBiofeneと呼んでいる。

ファルナセンは化粧品のベースオイルや香料原料として用いることができる。水素化して潤滑油やディーゼル燃料, 航空燃料としても用いることができる。. クラレはAmyrisファルネセンを輸入し液状ゴムを開発販売開始 Amyris はTotalと82億円 (€63m)でJVの Total Amyris BioSolutionを設立した。

糖類 炭化水素

変性酵素,微生物

発酵中間体 残渣糖分 バイオガス 水蒸気改質 水素

ディーゼル油

Farnasene

パイロット試験段階

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バイオ化学品

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ICIS, April 16 2012

米国ICISが予測するバイオマス化学品 米国ICISは2016年までのバイオ化学品の伸びを予測している。大きく成長が期待されているのはバイオメタノール, バイオエチレンとメタセシスによるバイオ燃料である。他にバイオブタノール, セルロース由来の糖, コハク酸, 藻 からの油脂, p-キシレンがある。2016年には合計600万トン/年と予測している。

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予測されるバイオプラスチックス 今後世界的にバイオプラスチックスは成長すると予測されている。2011年約400万トンであるが2020年には約3倍の1,200万 トン になると予測されている。PETが最大でついで熱硬化性樹脂, 酢酸セルロース, ポリオレフィン, ポリ乳酸, ポリアミドである。

PHA: ポリヒドロキシアルカンカン酸 PA: ポリアミド PBAT: ポリプチレンアジペート/テレフタレート PBS:ポリプチレンサクシネート CA: 酢酸繊維 Thermosets:熱硬化性プラスチックス

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エタノール 世界的に用いられている。ブラジル, 米国が主導

エチレン エタノールの脱水 インド, ブラジル, 台湾

n-ブタノール ABE醗酵 中国, かつて世界的に製造されていた。

油脂化学 油脂化学, 世界的産業

クエン酸, アスコルビン酸 中国 (50-100 工場)

フルフラール 米国, 中国 >40万トン/年 燕麦殻 トウモロコシの茎葉を希硫酸と共に加熱, 収率約 20%

1.3-PDO Dupont/Tate & Lyle

乳酸 Purac, NatureWorks, 米国 >14万トン/年

メタノール グリセロール 工業化

ECH グリセロール 工業化

PG グリセロール 工業化

アミノ酸 中国

酵素 工業化

Thermoplastic starch 工業化

バイオ化学品 工業化されているバイオ化学品の現状をまとめる。

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化学品 製造法

アクリル酸 発酵, グリセロールからアクロレイン経由 OPXBio, Dow,日本触媒, Arkema, BASF, Cargill,Novazymes

α-オレフィン メタセシス Elevance

エチレン, EO, EG エタノールの脱水 Greencol(台湾) 工業化

イソプレン 発酵 Amyryis, Michelin, Goodyear, Genecor

ブタジエン 発酵, バイオブタンジオール Genomatica, Global Bioenergies, BASF, Invista

イソブテン 発酵, イソブタノール, 脱水 Global Bioenergies, Gevo, Lanxess

BTX APR, Pyrolysis Virent, Anellotech, Cool Planet

PG グリセロール ADM, Cargill, Huntsman, Ashland 工業化

PX 発酵, 触媒 Gevo, Micromidas

BDO 発酵, コハク酸の水素化 Genomatica, Lanzatech, BioAmber

PDO 発酵 Dupont, Tate & Lyle

ブタノール 発酵 Gevo, Butamax, Green Biologics, Cobalt, Butaico

コハク酸 発酵 BioAmber, Reverdia, PTT, 三菱化学 工業化

アジピン酸 発酵, グルコース, 触媒 Verdezyne, Rennovia

ECH グリセロール Dow, Solvay 工業化

アンモニア バイオマスガス化 BioNitrogen, Syngest

メタノール/DME グリセロール ガス化, バイオガス BioMCN, Oberon 工業化

乳酸 発酵 Nature Works, BASF, Purac, Cargill 工業化

ポリカーボネート イソソルビド 三菱化学

バイオ化学品製造または開発会社

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ICLabo バイオマス化学品と開発会社 バイオマス開発化学品と開発ルート, 開発会社をリストアップする。

NEXANT

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セルロースの利用

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P.A.Jacobs, B.F.Sels et al. ChemCatChem 2011, 3, 82-94

セルロースから固体触媒によるグルコースの合成 多くの固体酸触媒が研究されている。ナノ粒子でないとセルロース分のグルコシド結合を切断することはできない。 スルフォン化したナノポーラスカーボンが転化率94%で75%の収率であるが触媒の使用量は1/1である。 酵素法(糖化酵素)に,はるかに及ばない。

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触媒 セルロース 濃度% Hr ℃ H2初圧Mpa

転化率% 収率%(Sorbitol+Mannitol ( ) 含Sorbitan, isosorbide

備 考

無 微結晶 2 24 230 4 48 0

2.5%Pt/ɤ-Al2O3 微結晶 0.8 24 190 5 31 北大福岡

4.0%Ru/C 微結晶 2 0.5 245 6 86 39(51)

16%Ni2P/AC(1:2) 微結晶 1 1.5 225 6 100 53 L.N.Ding

3%Ni/CNF ボールミル粉砕 2 24 190 6 92 57

1.0%Ru/CNT H3PO4処理微結晶 0.8 24 185 5 73 W.Deng

H4SiW12O40-Ru/C ボールミル粉砕 2 1 190 6 100 85(100) R. Palkovits

Ru-錯体+Pt/C 51-74 イオン液体,I.A. Ignatyer, ChemSusChem,2010,3.91-96

R.Palkovits, K. Tajvidi, J. Procelewska, R. Rinaldi, A. Rupper, Green Chem. 2010, 12, 972-978

セルロースの水素化分解によるソルビトールの合成 2006年北大の福岡教授はセルロースがPt/ɤ-Al2O3により水素化分解しソルビトールが得られることを見つけた。その後多く の研究者が研究を行っている。中国の厦門大学のDengは1%Ru/CNFで73%の収率を報告している。Aachen Universityの Regina PalkovitsはHPAとRu/Cを用いることによりソルビトールとマンニトールの合計収率85%, ソルビタンとイソソルビドを含む 合計で100%を報告している。

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セルロースから溶融塩を用いた3 Stepのイソソルビドの合成 セルロースを溶融ZnCl2で加水分解し, Ru/Cで水素化触媒ソルビットとしてから再度溶融ZnCl2で脱水しイソソルビドを合成する。 >95%の収率が報告されている。

Beau Op de beeck, et al., ChemSusChem, 2013, 6, 199-208

H2

Ru/C 5.0 Mpa

収率≒100% 収率≒100%

収率>95%

溶融ZnCl2 溶融ZnCl2

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ICLabo セルロースからCMF California大学のMascalらによってセルロースがジクロロエタン中で5%LiClによりHClaqによりジクロロエタン溶媒中で71%の 高収率でCMFに転換できることが発表された。エタノールでエステル化して燃料とすることが提案されているが化学品原料と して利用可能である。脱ハロゲンしなければならないのが難点である。

5%LiCl

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セルロースからイソソルビド セルロースをRu/CとHPAを混合して水素化すると直接イソソルビドが合成される。210℃, 5MPa, 1hで収率48%で イソソルビドが得られるが, 繰り返し反応はできない。

Beau Op de beeck, et al., ChemSusChem, 2013, 6, 199-208

H4SiW12O40 + Ru/C H2O, H2 5 Mpa (RT)

210℃, 1h

Hexitan isomer 1,4-sorbitan Isosorbide isomer isosorbide

H2

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セルロースから5-HMF セルロースから5-HMFを直接得る方法としてイオン液体を用い水素化する方法が提案されている。微量のCuとCrを添加した 系で収率55%の5-HMFが得られている。

H2

Y.Su, et al.,, Appl. Catal. A. 2009, 361, 117-122

イオン液体 1-ethyl-3-methylimidazoline chloride Small amount of CuCl2 + CrCl2 (0.005) MIBK抽出 繰り返し3回

80~120℃

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セルロースからエチレングリコール セルロースを水素化分解することによりエチレングリコールを合成することができる。Ni-W/SBA-15を用いると転化率100%で EG収率は76.1%である。

S. Van de Vyver, et al., Green Chem. 2010, 12, 1560-1563 S. Van de Vyver, et al., ChemSusChem 2010,3.698-701

触媒 反応温度℃ Mpa H2 h 転化率% EG収率%

2%Ni-30%W2C/AC 245 6 0.5 100 61.0

3%Ni/C 245 6 0.5 100 5.8

Ni5-W15/SBA-15* 245 6 0.5 100 76.1

20%Ni/AC 245 6 0.5 71.9 9.2

H2

*メソポーラスシリカ

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グリセロールの利用

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グリセロールからアクロレイン

リン酸 /α-Al2O3, ゼオライト, HPA, SBA-SO3Hなどの固体酸触媒が検討されている。グリセロールの濃度が10%より高いと転化率, 選択性ともに落ちる。反応温度が高いとカーボン生成による活性低下が生じる。 各社ベンチテスト段階。粗グリセロール価格$350/tonではプロピレン法とまだ競合しがたい。今後プロピレンの価格とアクリル酸, メチオニンなどの需要動向で工業化が期待される。

触 媒 Temp.℃ GHSV TOS h 転化率% 選択率% 文 献

H3PO4/α-Al2O3 300 60 100 70.5 USP5387720 Degussa

H3PO4-H3BO3 360 1,700 5 100 73 特開2010-253374日本触媒

WZrOx 305 12,260 3 98 77 Massa. M. et al., J. Catal. 2013, 297, 93

HZSM-11 320 873 2 100 78.4 Gu.Y, et al., Appl. Catal. A, 2011,393,275

Mordenite(18) 250 Batch 10 91.8 100 De. Oliveira, et al., Chem. Eng. J. 2011, 168, 765

ZSM-23(51) 250 Batch 10 79.5 100 De. Oliveira, et al., Chem. Eng. J. 2011, 168, 765

CsSiW12O40 250 24,000 3 100 96 Haider.M.H, et al.,J. Catal,2012,286,206

CsSiW12O40/Al2O3 250 24,000 10 100 84 Haider.M.H, et al.,J. Catal,2012,286,206

SBA-SO3H 273 30,420 3 100 82.9 Lourenco. J. P. et al., Catal. Commun. 2012, 19, 105

OH

HO

OH

O-2 H2O

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ICLabo

3-ヒドロキシプロピオン酸の脱水によるアクリル酸 Cargill/NovozymesはDOEの 3-ヒドロキシプロピオン酸(遺伝子組み換えバクテリアを用いてたプラントを建設した。 OPXバイオクノロジーは糖からの発酵法による3-ヒドロキシプロピオン酸の製造技術を開発している。 3,000 Lの小規模装置からDowが協力し$35MMのパイロットプランとをミシガン州Lansingに建設する 予定である。

Cargill/Novozymes Licensed by DOE 3-ヒドロキシプロピオン酸(遺伝子組み換えバクテリア) 2013 工業化 Dow-OPX BIO MBI in Lansing, Michigan 3,000 L → 2~50 KL Fermentation method Novozymes (Denmark) バリテリア成長サイクル 48 h, 3-ヒドロキシプロピオン酸 収率95%, 脱水によるアクリル酸 収率 98% Metabolix PHAの酸化によるアクリル酸 収率 90% http://depthofprocessingchemistry.blogspot.jp/2011/06/bioacrylic-projects.html

O

OH

OH

3-hydroxypropionic acid

O

OHacrylic acid

Sugar Fermentation -H2O

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ICLabo 3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド 3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド(3-HPA)は還元すれば1,3-プロパンジオール, 酸化すればアクリル酸に誘導でき る重要な中間体である。 日本触媒はグリセロールからバクテリアを用いた方法を発表している。 3HPAからのアクロイン経由または3-ヒドロキシプロピオン酸経由のアクリル酸製造プロセスの開発が望まれる。

JP2005-102533A 日本触媒

OH

HO

OHglycerol

O OH3-hydroxypropionaldehyde

HO OH1,3-propanediol

O

OH

OH

3-hydroxypropionic acid

O

acroleine

Bactria (Glycerol dehydrators) + coenzyme

37℃, 60min

Y: 98%

H2 Pd/carbon 60℃, 5hrs

0.1MPa

Y: 98%

O2

Y: 79.8%

Y: 76.5%

35%HCl 1hr, 0.1MPa

MoOx

O

OHacrylic acid

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ICLabo

OH

HO

OH

H2CH3OH3

2

グリセロールの水素化によるメタノールの合成 バイオディーゼル(FAME)に必要なメタノールを副生グリセロールを水素化することにより製造することができることをOxford 大学が見つけている。10%Ru/Graphite を用い100℃, 24h, 20barで5%グリセロール水溶液を水素化分解すると転化率18.32% でメタノールの選択率は100%である。

http://www.isis-innovation.com/news/biofuelfromwastematerialdiscovered.htm

10%Ru/Graphite

100℃, 20bar

Oxford University

WO2009/130452A1

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グルコースの利用

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ICLabo

Pacific Northwest National Laboratory, UOP

Sorbitol(48c/lb), Glycerol Ni-Ru/ Granular or Extruded Norit Carbon > Ni-Ru/ZrO2, Ni-Ru/TiO2

HO

HO OH

HO OH

HO

sorbitol

OH

OHH2

Ni-Ru/C

Solv. Water 200℃, 1,200psig

Sel. PG 76%, EG 3% Crude glycerol

糖の水素化分解によるPGの合成

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ICLabo

USP6,992,209(2004) Oodd Werpy Battle memorial Institute

ソルビットの水素化分解 グルコースは水素化すればソルビットとすることができる。ソルビットは甘味料や食品の湿潤剤などとして多量 に生産されている。PNNL(Pacific Northwest National Lab.)はDOEの支援の元でグルコースの水素化では Ru/TiO2, ソルビットの水素化分解によるプロピレングリコールではNi-Re/カーボンを見つけている。

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ICLabo バイオベースのプロピレングリコール工業化プラント

Petro $ 3.0/kg Bio $1.9/kg

会社 万トン/年 原 料 場 所 稼働年 備 考

Cargill 6.5 Glycerol 2007

GT-ProG 10

ADM(Archer Daniels Midland) 10 Glycerol of Bean oil, rapeseed oil

2011

Global Bio-chem Technology 1 コーングルコース 長春 (中国) 2005 IPCI技術

Global Bio-chem Technology 20 コーングルコース 長春 (中国) 2008 IPCI技術

S2G BioChem pilot 非可食 2012 2012 IPCI技術

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ICLabo グルコースからプロピレングリコールの合成 米国ベースの中国の大成生化科技はコーンベースのグルコースをNi触媒で水素化触媒ソルビットとしてから金属酸化物触 媒で水素化分解しプロピレングリコールとエチレングリコール, ブタンジオールのプラントを建設した。

International Polyol Chemicals 技術 (IPCI’s process)

Global Bio-Chem(大成生化科技) 1万トン/年 長春市 2005年 20万トン/年 2008年 Supported Ni Catalyst

Supported MeOx Catalyst 100~300℃, 7~30MPa,

Corn→Glucose→Sorbitol →PG (50~60%), EG(25%), BG(25%)

工業化プロセス

PG 50-60% EG 25%

1,2, 2,3-BG 25% Life > 1,600 hrs

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ICLabo

糖から5-HMF 固体酸を用いた反応が研究されている。Nb2O5やマイクロウィーブを用いると収率は上がるが, 触媒の使用量は多く収率は 50%以下である。触媒の開発が望まれる。

原 料 触 媒 反応条件 転化率% 収率% 文 献

フルクトース リン酸Zr 超臨界 49-53 特開2007-196174

グルコース リン酸Zr 超臨界 20-30 特開2007-196174

フルクトース アルミノシリケート 145℃ 20-32 FR 2670209 A1 19920612, 1992.

フラクトース イヌリン

Nb2O5, リン酸V 80-100℃ 50 Carlini, C.et al., Appl. Catal. A 1999, 183, 295–302. Appl. Catal. A 2004, 275, 111–118. Catal. Today 2006, 118, 373–378.

フラクトース ZrO2, TiO2 200℃, microwave 30-40 Qi, X. et al.,Catal. Commun. 2008, 9, 2244–2249

フラクトース

mesoporous TiO2 nanoparticles

Microwave assisted 36 Dutta, S. et al., Appl. Catal. A 2011, 409–410

グルコース H3PO4-treated Nb2O5 30-36 Nakajima, K. et al., J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 4224–4227

グルコース ハイドロタルサイト+アンバーライト15

80℃, 9h, Sol. DMF 65 48 特開2012-121811

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ICLabo

グルコースの利用 グルコースは可食資源から製造されている。今後, 非可食資源からの合成が工業的に大規模で行われるようになる。 グルコースを脱水することにより5-HMFが合成できる。異性化すればフラクトースとすることができる。 フラク トースは脱水すれば5-HMFとすることができる。5HMFは酸化すればフラン2,5-ジカルボン酸, 水素化すればフラ ン2,5-ジメタノール, アミノ化すればフラン2,5-ジメチルアミンとすることができる。水素化分解すると2,5-ジメチ ルフランとなりエチレン付加脱水することによりp-キシレンに誘導することも可能である。

HO

OH

HO OH

HOO

fructose

OO

OH

5-hydroxymethyl-2-furaldehyde

-H2O

HO

OH

HO

OH

isosorbide

HO

HO OH

HO OH

HO

sorbitol

O

HO OH

HO OH

HO

glucose

異性化

水素化 脱水

脱水

ジオール ジカルボン酸 ジアミン P-キシレン

非可食資源

可食資源

セルロース

5-HMF

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ICLabo

HO

OH

HO OH

HOO

fructose

OO

OH

5-hydroxymethyl-2-furaldehyde

-H2O

フラクトースの脱水 フラクトースの脱水による5-HMFはFePW12O14が優れている。

Fructose 1.7mmol DMSO 10g Catalyst 0.02g 120℃, 2hrs, Reduced press. FePW12O40 Conv. 100%, Yield 97% H-β 100% 94%

魚住, 清水, 薩摩, 触媒学会100回討論会, A, 247

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ICLabo

グルコースからポリエステル原料

O

HO OH

HO OH

HO

glucose

HO

OH

HO OH

HOO

fructose

O

OHO

5-hydroxymethylfurfural

O

2,5dimethylfuran

OO

HO

O

OH

O

OHHO

furan2,5-dimethanol

furan-2,5-dicarboxylic acid

p-xylene

Isomerization Isomerase

CrCl2 Conv. 90%, Sel, 70%

1-ethyl-3methylimidazolium

H2 Cu-Ru/C

Y: 71%, Science 2007, 316,1597

C2H4 -H2O

Y-Zeolite

Sel 78%

(5-HMF)

オランダのAvantium社は YXY Technology(Catalytic process)を開発 工業化を狙っている。 2011 20-40 t/y pilot Chemelot 2013 200-400 t/y 2015 3-5万トン/ 年 FDCA YXY polyester PET substitute目的

Pacific Northwest National Laboratory, Nature 2007, 447, 982

グルコースから直接5-HMFを脱水合成触媒としてCrCl2が発表されている。 5-HMFからはCu-Ru/Cで水素化分解すると2,5-ジメチルフランが合成される。ジメチルフランはエチレンと反応させるとDiels-Alder反応により-キシレンが合成できる。Y-ゼオライトで選択率78%と報告されている。

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ICLabo

OO

OHO

HO

tetrahydrofuran-2,5-dicarboxylicacid

O OHO

OHadipic acid

O

O

OHO

HO

2,5-furandicarboxylicacid

O

OHO

5-hydroxymethylfural

O2

Au/CeO2Au/TiO2

H2Pd/SiO21405.2 MPa

H2

Pd/SiO2Rh/SiO21604.9 MPa

Y: 99%

Y: 88%

5-HMFからアジピン酸 5-HMFからアジピン酸の合成法がRennovia社から発表されている。 5-HMFはAu/CeO2やAu/TiO2により酸化されフランジカルボン酸とされた後, Pd/SiO2により酸化され収率88%でテトラハイドロ フランジカルボン酸とされ, HIの存在下でさらに水素化分解され収率99%でアジピン酸が得られる。

USP 2010/0317822A1 Rennovia

℃ HI

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ICLabo

HO

HO OH

HO OH

HO

sorbitol

O

HO OH

HO OH

HO

glucose

H2

2,000psi, 120℃, 2hrs Ni or Ru >95% Mitsubishi International Foods Tech

Ueno Phermaceutical Sanei Tohka Cerestar Japan

グルコースの水素化によるソルビットの製造 糖の酸による加水分解で得られるグルコースの水素化は工業的に確立された方法である。 触媒にはスポンジNiが用いられているが固定層ではRu/Cも用いられている。 国内のソルビットの生産能力は 近年は原料に用いられる国内の澱粉が高価なこととコーンなどの輸入澱粉のTaxが高いことからプラントの海外シフト が進んでいる。三菱商事(旧東和化成)はタイ, インドネシア, 上野製薬はタイで生産を行っている。

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ICLabo

HO

OH

HO

OH

isosorbide

HO

HO OH

HO OH

HO

sorbitol

2 H2O

イソソルビド イソソルビドはPETの改質剤, Bis-AやPC代替として用いられる。 フランスのRoquette社はフランスのLestremに数1,000ton/年プラントを持っていたが, 2011年数万ton/年プラントを建設しイソソルビを用いたPET POLYSORB@の製造を開始した。 脱水触媒はp-toluene-sulfonic acidまたはH2SO4が用いられている。 Cargill はp-Toluenesulfonic acid 0.5%, 130-140℃, 200 mbarの条件でイソソルビド収率70-73%で他にソルビタンや重合物が副生することを開示している。 WO2012/083149 三光化学はAISTと共に水分除去後のソルビットから減圧下で硫酸により99%の収率でイソソルビドを得ている。 JP 2006-316025 DOEは触媒による脱水では収率は76%と報告している。

イソソルビドの応用特許 JP 2006-70184 A 三菱化学 特許 3395972号, 特許3399465号 ポリエステル Dupont JP2006-161017A宇部興産 生分解性, 耐熱ポリエステル ガラス転移温度 >160℃

三菱化学はイソソルビドを原料としたDurabio (バイオポリカーボネート樹脂) 300 ton/年 (黒崎)を製造し始めた。 イソソルビドはRoqette社から輸入している。

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ICLabo

OH

O

OH

lactic acid

O

HO OH

HO OH

HO

glucose

2

触媒: 450℃処理Mg-Alハイドロタルサイト Mg/Al=4~5

反応条件: NaOH, 50℃, グルコース25mmolL-1 NaOH 50mmolL-1 Catalyst. 0.7g

固定床, 8hr

Conv. 72%,乳酸 収率 40%である。

グルコースから乳酸 グルコースから2molの乳酸が合成できる。NaOH水溶液中でMg-Alハイドロタルサイトにより転化率72%, 収率 40%で乳酸が得られる。

恩田, 越智 ,梶芳, 柳澤, 触媒学会100回討論会A, 419 (2008)

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ICLabo

バイオブタノール

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ICLabo バイオブタノール 米国2013年10月 1~12.5%のガソリンへの混入が規定されたことによりバイオブタノールの製造が一挙に加速し始めた。

ブタノールの製造はABE発酵として知られている。ABE醗酵の原料は糖 (糖蜜, 澱粉, 糖)であることとブタノールの他アセトン とエタノール水素が副生することである。発酵時間は47時間である。1930年代日本糖蜜原料として航空燃料原料ブタノール の製造を行っていたことがある。ブタノール生産菌(Clostridium acetobutylicum)によりn-ブタノール60 mol, アセトン30 mol,エ タノール10mol,水素120 molが生成する。中国では10数社が製造し100万トン/年のブタジエンが生産されている。Gevo社は 5.5万トン/年のコーンベースバイオブタノールを2012年末稼働予定である。

193 Energy Trends Report, Feb. 14, 2011

グルコース

ABE発酵 Butanol bacteria Clostridium Acetobutylicum

BuOH Acetone EtOH

Produced butanol prevents fermentation

n-BuOH 60 mol Acetone 30 mol EtOH 10 mol H2 120 mol

Early 20 Century Low productivity, anaerobic

2006 BP, 2007 British Sugar 2017 U.S. President Substitute fuel Part of 130MMkl Mixed to diesel oil

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ICLabo Bio-Butanol

Cobalt Technology 連続プロセス 47,000 ガロン/年 Alpena, Michigan

Cellulose → n-BuOH Fermentation

Cobalt Tech ABE

原料 非可食資源 糖

発酵時間 4 時間 47時間

生成物 ほとんど n-ブタノール アセトン 微量

n-BuOH 60 mol アセトン 30 mol エタノール 10 mol H2 120 mol

Cobalt Technology社は糖を原料としない非可食資源を原料とした新たな発酵菌を見つけた。原料にSugar cane, バガス, ウッドチップ,廃材,Palm waste,glycerolを用いることができる。発酵時間は4時間と短く生成物はほとんどがn-ブタノールである。コバルト社は47,000ガロン/年のブタノールプラントを建設し米国空軍に供給する。

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ICLabo 糖を用いないブタノール工業化プラント

Cellulose → n-BuOH Fermentation

LS9社は2013年フロリダにプラントを建設した。 GranBioは82,000 kL/年プラントを2014年 Algoas, Brazilに建設する計画である。

LS9プラント100,000KL Okeechobee, Florida in April 2013

非可食資源原料 Cobalt Technology 木質セルロースを原料新規ブタノール発酵菌 連続プロセス開発 生成物はほとんどn-ブタノール発酵時間4時間

工業化実証プラント

Dupont-BP リグノセルロース原料 ブタノール発酵菌(Butamax) 2014年プラント建設予定。

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ICLabo

バイオブタジエン

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ICLabo

197

バイオブタジエンの製造ルート

非可食バイオマス

発酵 バイオエタノール Lebedev process

バイオブタジエン

アセトアルデヒド 1,3-ブタンジオール

発酵 バイオブタノール ブテン-1, ブテン-2

Oxo D process

Cobalt Technology

バイオBD $ 1,570/ton Petro BD $ 1,850/ton

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ICLabo

4

バイオエタノール法

Lebedev法 バイオエタノールからせブタジエンの合成は, 二次大戦中ロシアで開発され工業化された。仏のHulsでも工業化さ れていた。1927年ロシアのLebedevにより開発された。触媒は75%MgO/SiO2でCrOxで修飾してある。選択率は 70%, ブタジエン収率は60%である。12~16時間再生, 触媒寿命は30日である。 Rubber ChemistryにはZnO/Al2O3 or MgO-SiO2 400~420℃ LHSV 0.6 h-1ブタジエン選択率は 51%と記載されて いる。 Rubber Chemistry and Technology, 15, 403, (1942) エタノールの酸化により得られるアセトアルデヒドとエタノールからブタジエンの合成プロセスも開発されてい る。二段法とも呼ばれている。ロシアの Ostromislenskyが開発した。 エタノールのアセとアルデヒドへの酸化はCuCrO4 270~300℃で行われる。

CH3CH2OH + 1/2 O2 → CH3CHO + H2O 次いでエタノールと反応させ脱水しブタジエンを合成する。

CH3CH2OH + CH3CHO → CH2=CH-CH=CH2 + 2 H2O 触媒は, Ta2O3/SiO2 反応条件は350℃, LHSV 0.4h-1ブタジエン選択率63%である。 第二次世界大戦中アメリカで行われた。

J. Am. Chem. Soc. 69, 593 (1947)

HO270-300℃

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ICLabo エタノールからブタジエン合成参考文献 エタノールからブタジエン合成触媒関連文献を下記に示す。 1) Investigations into the conversion of ethanol into 1,3-butadiene Matthew D. Jones, Callum G. Keir, Carlo Di Iulio, Ruth A. M. Robertson, Cliff V. Williams and David C. Apperley Catal. Sci. Technol., 2011, 1, 267-272 2)Transformation of ethanol into 1,3-butanediene over magnesium oxide/silica catalysts S Kvisle, A Aguero, R P A Sneeden Applied Catalysis (1988), Vol.43, 1, 117-131 3)One-Step Catalytic Conversion of Ethanol to Butadiene in a Fluidized Bed S. K. Bhattacharyya, B. N. Avasthi Ind. Eng. Chem. Process Des. Dev., 1963, 2 (1), 45-51 4)Butadiene from Ethyl Alcohol, Catalysis in One-and Two-Step Processes B. B. Corson, H. E. Jones, C. E. Welling, J. A. Hinckley, E.E. Stahly Ind. Eng. Chem., 1950, 42 (2) 359-373 5) Butadiene from Ethanol E. E. Stahly, H. E. Jones, B. B. Corson Ind. Eng. Chem., 1948, 40, (12) 2301-2303

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ICLabo

O OH

OH2 O

OHH2

Ni

H2O2OH

Na5P3O10

Aldol process BASFはメタンからアセチレンを合成し, アセチレンの水和により得られるアセトアルデヒドからブタジエンを現在も製造してい る。アセトアルデヒドはアルドール縮合によりアルドールとされた後水素化触媒で1,3-ブタンジオールとしてから脱水してブタ ジエンが合成されている。 昭和電工はワッカープロセスによるアセトアルデヒドからブタジエンの製造プラントを建設する計画 を発表している。 このプロセスはバイオエタノールを原料に用いることができる。

アルドール 水素化 100℃, 30MPa 1,3-Butane diol

気相

Sel. Approx.70% base on acetaldehyde

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ICLabo

特表2012-518658 ジーヴォ

イソブテンの製法 ジーヴォの特許によると非可食のバイオマスから既存の微生物によりイソブタノールを製造し蒸留分離後, 脱 水触媒で脱水触媒効率よくイソブテンが製造できることが開示されている。

バイオマス 予備処理 発酵 蒸留 脱水 イソブテン

微生物

72 時間

300℃ Al2O3触媒

Conv. 99.8% イソブテン 96%

セルロース 45% ヘミセルロース 25% リグニン 22% 他 8%

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ICLabo

バイオコハク酸

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ICLabo バイオコハク酸

バイオコハク酸は石油化学原料よりも安価に製造が可能である。 BASF-Puracは原料に粗グリセリンを用いバクテリアによるコハク酸の製造を検討しているが他はグルコースを原料としてE.cloiまたは酵素を用いた発酵法での工業化を狙っている。 コハク酸の用途はなどのエンジニアリングプラスチックである。

Glucose Anaerobic

Fermentation Bacteria

Sodium succinate Ion exchange Succinic acid

Yield 95% DOE Report

O

OH

O

HOHO

OH

O

O

O

O

n+

Succinic acid 1,4-butane diol

PBS Polybutylenesuccinate

Adipate Showa Polymer, Ire Chemicals Carbonate Mitsubishi Gas Chemical Terephthalate BASF, Dupont, Eastman Chemicals, Ire Chemicals Polyethylene succinate Nippon Shokubai

各社ポリプチレンサクシネート

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ICLabo バイオコハク酸 石油化学由来のコハク酸とコーンベースのコハク酸価格はコーンベースが安定している。

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ICLabo バイオコハク酸プラント 各社共, バイオコハク酸の製造のパイロットプラントの実証をほぼ終了し, 商業化プラントの建設を始めている。2-3年以内に 合計で約20万トン/年のコハク酸が製造される。

会 社 菌または酵素 Mton/年 場 所 Sart 原料

BASF/Purac B.succiniciproducens 25 50

Spain 2013 Glycerol

BioAmber E. Coli 2 Pomacle (France) 2010 Glucose

BioAmber Yeast(Cargill) 2 17 65

Canada

Demo 2013

Glucose

BioAmber yeast 65 Thailand 80億円

Myriant E.coli 13.6 77

Lake providence LA U.S. Midwest

2013 Glucose

Reverdia S. cerevisiae

Reverdia Low pH yeast 0.3 10 30

Lestrem(France) Spinola(Italy)

2010 2012

Glucose

Mitsubishi/Ajinomoto B. Flavum or C. corynebacterium Glucose

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ICLabo

アイシーラボ 室井髙城

コハク酸誘導体 コハク酸を水素還元するとGBL, 1,4-BDO, THFを合成することができる。NH3で2-MPD, N-M-2-PD, アルコールからコハク酸 エステルが誘導できる。

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ICLabo

O

OH

O

HO

succinicacid

O

O

O

succinic acid anhydride

O

Ogammabutyrolactone

O

NH

gammabutyrolactam

200℃, 1.0MPa,14 時間 転化率は79.2%, GBL選択率100% Ru(AcAc)3

トリオクチルホスフィン, テトラグライム

吸湿性

ポリアミド-4 コハク酸から無水コハク酸としてから水素化するとGBLが製造される。GBLはアミド化すればポリアミドに誘導できる。

アミド化 熱

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ICLabo

バイオマスその他の反応

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ICLabo

OH

O

OH

O

OHacrylic acid

-H2O

NaNO3/NaY (2.7)

Conv. 77% Sel. 55%

乳酸からアクリル酸 乳酸の脱水によりアクリル酸の合成は可能である。現時点では乳酸の価格が高く経済性はない。

恩田歩武, 工業材料, Vol.61, No.2, 26-29(2013)

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ICLabo オレイン酸メチルのエポキシ化 オレイン酸メチルをTi-MCM-41を使い過酸化水素で参加すると91%の収率, シス-エポキシの選択率80%でエポキシ化できる ことが発表されている。

H3CO (CH2)7 C8H17

O

H3CO (CH2)7 C8H17

OH2O2

O

Ti-MCM-41

CH3CNオレイン酸メチル

収率 91% cis-エポキシ 選択率. 80%

Matteo Guidotti, et.al., Green Chem, 13, 1806-1811 (2011)

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ICLabo トウヒ(蝦夷松)粉の水素化分解 エゾ松のチップをエチルエーテル溶媒中でCo2(CO)8錯体を用いCO/H2=1/6で加圧するとフェノール類が生成できることが 1960年イタリアの研究員からから開示されている。 収率は20%であるが他の化合物も含めると30%である。 Co錯体の回収リサイクルが困難である。

USP 2,947,739

Phenol acid 20% Dissolved neutral products 10%

3% Co2(O)8 135-150℃, 160atm 8hrs, Solv. Ethylether,

トウヒチップ 2x2x1 cm →

CO, H2

OH

COOH

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ICLabo リグニンの水素化分解

濃硫酸木材糖化残渣リグニンをNi(CO)4錯体を用いて水素化分解すると蒸留可能なフェノール類が45%の高収率で得られることが農林省林業試験所から発表されている。

特公昭38-26668 農林省林業試験場

Lignin 60g, →

エーテル可溶Pheol類 約50g 蒸留可能Phenol類27g, ピロカテコール類19g, フェノール, クレゾール,少量のキシレノール類8g

25MPa, 400℃

60min

H2

OHOH

OH OH

CH3

32% 13%

Ni(CO)4 0.1~1% to Lignin

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ICLabo

CO

CH

H2COH

O

H3CO

OCH3

OCH3

O

CH

HC

H2COH

CH

HC

H2COH

O

OCH3

H3CO

CH

HC

H2COH

OCH3

CH

HC

H2COH

H3CO

OH

O

CH

CH

H2COH

O

H3CO

CH CHOHOH2C

CO

HC

H2COH

O

OCH3H3CO

HCOH

HC

H2COH

O

H3CO

HC

HC

H2COH

O

O

OCH3

H3CO

CH

CH

OCH3

CH2

OH

OCH3

HC

CH

H2COH

O

O

HC

HC

H2COH

OCH3

CH

CH

CHO

OCH3

O

CO

CH

H2COH

O

H3CO

OCH3

CH

HC

H2COH

OH

H3CO

OCH3

OCH3

O

HC

CH

OCH2

O

H3CO

CH CHOHOH2C

CH COHOH2C

OCH3

CH

CH

CH2OH

O

H3CO

HC

HC

H2COH

O

O

OCH3

CO

HC

CH2OH

OCH3

O

OCH3

OCH3

O

O

OCH3

C

H2COH

CH

H3CO

HC

HC

OCH3

H2C

O

CH

CH

CH2

O

O

OCH3H3CO

O

リグニンの水素化分解 リグニンをNi-カルベン錯体を用いるとフェールの分解が少なく高収率でフェノール誘導体を得ることができる。 モデルの試験では水素化分解を抑制し60%以上の収率でフェノール類とベンゼンが得られる。

Ni Carbene complex 1 bar 80-120℃

Ar-OAr >> Ar-OMe > ArCH2 –O Me

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ICLabo

リグニンからフェノール類の合成 北海道大学の増田教授らはブタノール/水にSi/Al=2のSiO2-Al2O3を用いてN2下350℃,2hリグニンを溶解させアリルエーテル 約50-60%を得ている。溶解して得られたリグニン可溶化液をCeO2(60)-ZrO2(6.0)-Al2O3(4.0)-Al2O3(4.0)-FeOxを用いて固定 層,400℃, 15MPa, W/F=0.5h, H2O/F=2.5, 5.0,7.5,で水素化すると最大12%の収率でフェノール類が得られている。

多湖輝興, 吉川琢也, 中坂佑太,増田隆夫, 触媒, Vol.55, No.5, 270 (2013)

実験室段階

リグニン 接触分解 可溶化 フェノール類

SiO2/Al2O3=2 水/BuOH=4 N2下, 350℃, 6h

フェノール類ほぼ全てBuOH相に抽出

CeO2(60)-ZrO2(6.0)-Al2O3(4.0)-Al2O3(4.0)-FeOx BuOH溶解層原料, 400℃, 15MPa, W/F=0.5

FH2O/F=2.5, 5.0,7.5

フェノール類生成量

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ICLabo

新たな誘導体群を開発できる触媒技術とその工業的な可能性についての調査

215

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ICLabo

216 216

Ethylene + Propylene 15-20% 増 Propylene yield 17%増 Aromatics yield 20-25%増 CO2 20%削減

Curtis N. S.C. Kang, S. Choi, S.H. Oh Y.K Park, Spring National Meeting - Houston, Texas,KBR Internal (2007)

Advanced Catalytic Olefins (ACO) process 韓国のSK EnergyはKRICTと共同でナフサの流動層接触分解プロセスを開発した。反応温度はスチームクラッキングの 850℃に対し670℃である。触媒はZSM-5が用いられている。 開発にKBRのSuperflexのパイロットプラントを用 いて行われた。 2010年蔚山に4万トンプラントを建設し実証した。中国の陜西延長石油(洛陽) に20万トン/年プラントのライセンシングを行っ た。触媒はZSM-5 ベースで脱アルミニウムによる活性低下抑制 リン酸アルミニウムとホウ酸を加えてスプレードライ後, 焼 成して製造されている。

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ICLabo BP SaaBre Process BPは合成ガスからエタノールを製造するプロセスを開発した。合成ガスからメタノールを合成し, メタノールから気相で酢酸を 合成する。酢酸とメタノールから酢酸メチルを合成し酢酸メチルをCu触媒で水素化分解しエタノールとメタノールとする。メタ ノールはリサイクル使用される。

US2011/0004034 A1 BP P.L.C.

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ICLabo

218

気相カルボニル化触媒 合成ガスからメタノールを経由してエタノールを合成する方法としてDMEのカルボニル化による酢酸メチルの水素化分解によ る方法が知られている。酢酸メチルはDMEの気相カルボニル化によって得ることができる。産総研はRh/HPA, 中国から Cu/HMORが発表されている。

Rh/Cs2H2SiWO40 1)

Cu/HMOR 2)

1) Yanyong Li, Kazuhisa Murata, Megumi Inaba, Isa0 Takahara, Fuel Processing Technology, Vol. 110, June 2013, 206-213 2) Xue Zhang, et.al, Chinese Journal of Chemical Physics, Vol. 26, No. 1, 77-82 (2013)

2 CH3OH + H2O

CH3OCH3 CH3CH2OOCH3 CH3OH CH3CH2OH Cu/CeO2

+ CO + H2

IE: Ion exchange AE: Ammonia evaporation UA: Urea hydrolysis IWI: Incipient wetness impregnation

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ICLabo

プロセス FCC DCC Petro FCC HS-FCC 開発会社 各社 SINOPEC UOP JX 反応器型式 ライザー ライザー ライザー ダウンフロー 反応温度 ℃ 500 530 590 600 生成物収率wt% エチレン 1.5 5.4 6.0 2.3

プロピレン 4.8 14.3 22.0 15.9 C4 6.9 14.7 14.0 17.4 ガソリン 51.5 39.0 28.0 37.8 Heavy and light oil 21.0 15.6 14.5 9.9 コーク 4.5 4.3 5.5 6.5

他 RIPP-Sinopec/Stone WebsterのCatalytic Pyrolysis Process (CPP), Indian Oil/ABB Lummus のIndmax, ExxonMobil/KBRのMaxofin, FortumのNEXCC, ABB LummusのSCC, Petrobras のDownerを用いたHigh-Olefins FCCなどが開発されている。

FCCプロセス 石油化学品製造目的のFCCプロセスが開発されている。プロピレン, C4収率が高い。

219

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ICLabo

HS-FCC 石油精製にとってFCCの重要性は増す。石油化学原料製造目的のFCCプロセスが開発されている。

Products FCC HS-FCC Application Wt% Wt%

Propylene 5~8 20 PP, Acrylic acid Butene Butene-1 4~5 4 Butadiene

Butene-2 8 Butadiene, Propylene Iso-butene 1~2 4 ETBE, MMA

Butane 4~5 6 Fuel ガソリン価格 $880/ton

220

八塚, 藤山, Petroleum Energy Center 2000

HS-FCC パイロットテスト結果

原油

LPG

ナフサ

灯油

軽油

重油 FCC プロピレン

ブテン ブタジエン

芳香族 LCO

リフォーマー

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ICLabo

FCC副生ブテンからブタジエンの製造 中国のWison EngineeringはFCCブテンの酸化脱水素によるブタジエンの製造プロセスを開発し工業化した。 斎魯石化(Zibo Petrochemical)に 16,000 ton/年と 27,000ton/年プラントを建設し稼働させている。 Mo-Fe系触媒と思われるB-02という 触媒が用いられている。中国の Awarded 2nd class progress prize design award を受賞している。ブテンの酸化脱水素は近年では世界初めてのプラントである。

中国 恵生工程技術服務(Wison Engineering) 転化率 77~79% 選択率 92~94% 触媒 B-02 (Fe base) 改良 75,000ton/年のデザインはFinal stageだと言われている。

221

B-02 3元触媒 6元触媒 H198 Petro-Tex

一段 二段 流動層 流動層 流動層 固定層

収率 % 65.8 64.2 47.3 56.0 61.0 60.0

選択率% 92.5 90.70 80.0 86.0 91.0 92.O

含酸素生成% 0.78 0.83 8.48 8.4 0.54 0.87

O2 比 0.55 0.72 1.0 0.95 0.7 0.6

スチーム比 16 13 6 8 10.6 14

ブテンton/B.D.ton 1.17 1.18 1.56 1.29 1.23 1.19

水蒸気消費量ton/B.D.ton

6.83 2.15 7.55 6.7 6.40 8.8

触媒量ton/B.D.ton 1.39 1.45 - 3.2 3 -

電力kwh/B.D.ton 574 292 988 518 592 407

用水ton/B.D.ton 14.5 13.2 27 23.9 126 -

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ICLabo

CH3

H2+

FCC分解油には多量の多環芳香族が含有している。含有するLCO(軽質軽油)はナフサよりも安価であり, 燃料価格以下で入手可能である。多環芳香族は水素化分解することにより芳香族とすることができる。 UOPは固定層プロセスLCO-XTMを開発しライセンシングしている。JX日鉱日石エネルギーは流動層のFCAプロセス(Fluid Catalytic Aromaforming)を開発している。いずれもZSM-5型触媒が用いられている。 プロセスFCCはナフサクラッカーが縮小してもガソリン需要がある限り無くならない。

LCO: Light Cycle Oil, FCCプロセスから生成するガソリン より高沸留分の分解軽油の中の軽質留分(220~430℃)

FCC分解軽質軽油の水素化分解

UOP

LCO-Xプロセスからの芳香族生産量の例

LCO組成

久保出 康之, PETROTECH, Vol.31, No.3, (2008) 藤山優一郎, 112nd CATSJ Meeting,1H09

ZSM-5

222

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ICLabo

E-FLEX 旭化成ケミカルズの開発しているE-Flexプロセスはエタンの熱分解により生じた軽質オレフィンが多く含まれているため ブテンは旭化成の開発しているB-B Flexでブタジエンとすることができる。又軽質オレフィンをα-プロセスで芳香族とするこ ともできる。エタンからナフサと同じような誘導体の製造が可能である。

エタン 熱分解 粗エチレン

α-プロセス

B-B Flex

プロピレン

ブタジエン

芳香族

エチレン

E-Flex

E-Flex反応パス

角田隆, 触媒学会工業触媒研究会, 第8回工業触媒研究会フォーラム. Jan 24 (2014)

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ICLabo

プロピレンオキサイド 住友化学はプロピレンを酸素酸化で直接プロピレンオキサイドを得るCuRu/SiO2触媒をみつけた。 CuRu/SiO2による250℃でのプロピレンの転化率は0.5~2%であるが選択率は最大70%を示している。

WO2011/075458 Sumitomo Chemical

5%CuRu(1/1)/SiO2 C3H6 14% O2 26% He 60% SV 20,000 250℃ 多管式反応器

Ο

Ο2

224

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ICLabo 酢酸の還元によるエタノールの合成 シェールガスが安価なことから安価なメタノールをカルボニル化して得られる酢酸の還元によるエタノール合成プロセスがセ

ラニーズにより開発され工業化された。

酢酸の還元によるエタノールの合成 シェールガスが安価なことから安価なメタノールをカルボニル化して得られる酢酸の還元によるエタノール合成プロセスがセ

ラニーズにより開発され工業化された。

メタン

エタン

合成ガス メタノール

エタノール 酢酸

250℃, 310-320psig, GHSV=2,500h-1 触媒: 1%Pt-Sn /CaSiO3. 酢酸転化率: 24%, エタノール選択率: 92% 酢酸エチルは生成しない。 工業化プラント 2012年 Clear lake 20 万トン/ 年 2013年 中国南京 20万トン/年 2014年 中国南京 40万トン/年 インドネシア 計画中

USP 786389, USP2011-0282110 Celanese

CH3COOH + 2 H2 → CH3CH2OH + H2O

225

バイオエタノールより安価なエタノール

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ICLabo

226

シュウ酸ジメチルからエチレングリコールの合成 中国ではエチレングリコールの輸入量は400万トン/年を超えている。メタノールと硝酸から得られる亜硝酸メチルとCOから Pd/Al2O3によりシュウ酸ジメチルが得られることは宇部興産が見つけシュウ酸の製造プロセスを確立し工業化している。 シュウ酸ジメチルをCu/SiO2により水素化分解することによりエチレングリコールが得られる。COとメタノールからエチレング リコールが得られるということは合成ガスからエチレングリコールが得られるプロセスである。

CO CH3ONO

NO

Pd+

Pd

COOCH3

COOCH3

(CH3O)2CO

+ NO

+PdCl2-CuCl2/Al2O3

シュウ酸ジメチル

炭酸ジメチル

HOCH2CH2OH + 2 CH3OH

H2

Cu/SiO2

290-320℃, 3-5 MPa

中国ではエチレングリコールの輸入量

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ICLabo

アクロレインのアンモキシディーションによるアクリロニトリルの合成 グリセロールの脱水により得られるアクロレインのMoV系の複合酸化物でアンモキシディーションでアクリロニトリルが合成 できる。

O CNNH3 O2

MoVNbSbWCeOx

Yield: 95.1%

JP 2012-31124A Asahi chemicals

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ICLabo

エチレンとCO2からアクリル酸の合成 エチレンとCO2からNi(COD)2とdtbpeにより一段でアクリル酸が合成できることが ドイツの触媒開発研究所から発表されている。

Michael L. Lejkowski, et al., Chem. Eur. J. 2012, 18, 14017-14025 CaRLa (Catalysis Research Laboratory)

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ICLabo

USP 7,803,968B2 Rhodia Polyamide

シクロヘキサンからアジピン酸の直接製法 直接酸化は転化率が低いためK-Oilを経由して硝酸酸化してアジピン酸が得られている。一段目の酸化ではK-Oilの選択率 を80-85%にするため転化率は10-12%に抑えられている。二段目の硝酸酸化ではN2Oが生成する。 親水性の ter-butyl安息香酸を用いMn 50ppm, Co 20ppm, 130℃, 2.0MPa, で空気酸化することにより選択率71%でアジピン 酸が得られている。Bonnet (Rhodia Polyamide) 佐藤らは過酸化水素を用いてNa2WO4と相関移動触媒により収率90%でアジピン酸が得られることを発表している。

K. Sato, M. Aoki, R. Noyori, Science, 281, 1646-1647 (1998)

従来法

シクロヘキサンの直接酸化

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ICLabo

アジピン酸 n-ヘキサンの直接酸化ではでアジピン酸が得られ ている。副生成物の選択率はヘキサン酸が35.2%, 2-ヘキサノンが19.7%である。

HOOCCOOH

O2

M.Hartman, S. Ernst, Angw. Chem., Int. Edd., 2000, 39, 888-890

Co-ALPO-18 (Co/P=0.1) (アルミノリン酸ゼオライト) 100℃, 1.5 Mpa, 転化率9.5%, 選択率33.6%

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ICLabo

231

TDIの合成 Cormaらによりジアミノトルエンのカルバモイル化にAu/CeO2が優れていることが見つけられている。DATの転化率99%でジカ ルバモイルの収率は96-100%である。Au触媒は芳香族ニトロ化合物の水素化に特異的な活性を示すのでジニトロトルエン からTDIの前駆体のジカルバモイルがワンポットで合成可能である。

CH3

NH2

NH2

CO

H3CO OCH3

CH3

NH2

NHCH3

CH3

NHCH3

NH2

CH3 HN

NH2

O

OCH3

CH3 HN

HN

O

OCH3

O

OCH3

CH3

NH2

HN O

OCH3

+

+

para ortho

Methylation

Carbamoylation

Mass Balance %

DAT 転化率%

モノカルバモイル体 o- + p-

ジカルバモイル体収率%

N-メチル化体 %

0.44%Au/CeO2 Fresh 99±2 99 4 96 - 0.44%Au/CeO2 3rd reuse 98±2 99 - 100 - Zn(AcO)2 95±3 99 36 25 39 0.44%Au(40nm)/CeO2 99±3 92 48 52 - 0.44%Au/TiO2 99±3 58 10 - 90

DAT 0.98mmol, 120mg, DMC 29.69mmol, 2.67g, catalyst 0.5mol to DAT, 7h, 140℃.

CH3

NO2

C

O

H3CO

NO2

OCH3

CH3

HN

HN O

OCH3

O

OCH3

+

H2 (5bar)

150 C, 12 hrso

転化率 95.2% 選択率 98.3%

R.Juarez, P. Concepcion, A. Corma, V. Fornes, H. Garcia, Ange. Chem.Int.Ed.2010,49,1286-1290

DATのカルバモイル化反応

150℃, 0.5MPa(H2), 12hrs

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ICLabo

触 媒 メタル% Hr Conv. % Sel.% Au/TiO2 0.27 0.50 99.6 90.9 Pd/カーボン 0.42 0.03 69.8 70.6 Pt/カーボン 0.23 0.03 67.1 52.6

シクロヘキサノンオキシムの新製法 ナノスケールのAuが芳香族ニトロ化合物の水素化に特異的に活性を示すことが知られているが, Au/TiO2により1-ニトロ-1- シクロヘキセンはシクロヘキサノンオキシムに水素化することができる。 110℃,1.5MPa,における1-ニトロ-1-シクロヘキセンの転化率は99.6%, 選択性は90.9%である。1-ニトロ-1-シクロヘキセンはシ クロヘキセンのニトロ化又はニトロベンゼンの選択水素化により誘導できる。Pd/カーボン, Pt/カーボンはAu/TiO2に比べ収 率選択は低い。Au/TiO2を用いたこの方法は新たなカプロラクタム合成法となりえる。

HN O

NOHNO2

H2 HNO3 H2

Au/TiO2

NO2H2

110℃,15bar,

1-ニトロ-1-シクロヘキセンのシクロヘキサノンオキシムへの水素化

A. Corma, P.Serna, Science, 313, 332 (2006)

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ICLabo

触 媒 酸化剤 T (h) 転化率mol%

TON 生成物 選択率 mol% オキシム ε-カプロラクタム 他

CoⅡCoⅢAlPO-36 O2 6 13.1 217 73.9 17.7 10.2 CoⅡCoⅢAlPO-36 O2 20 20.2 322 54.2 21.1 24.5 MnⅡMnⅢAlPO-36 O2 6 15.0 245 75.8 16.9 7.3 MnⅡMnⅢAlPO-36 O2 20 23.6 381 57.0 20.2 22.8 MgⅡCoⅢAlPO-36 O2 6 12.4 108 44.0 36.2 19.5 MgⅡCoⅢAlPO-36 O2 20 21.5 212 33.9 42.9 22.7 MgⅡMnⅢAIPO-36 O2 6 13.7 136 48.4 31.3 19.5 MgⅡMnⅢAIPO-36 O2 20 23.0 262 36.2 45.2 18.0

カプロラクタム合成触媒 ケンブリッジ大学のJ.M.Thomas, R.Rajaらは無溶媒で空気酸化によるアンモキシディーションでカプロラクタムが合成できるこ とを見つけた。Chemical Week誌には80℃におけるカプロラクタム収率は65~78%で触媒の最適化を図ればさらに収率 は向上することができると紹介されている。触媒はMⅡMⅢAlPO-36 (M= Co, Mn)である。反応はNH3は分子状酸素とAlPO格 子内のCoⅢ上でNH2OHに酸化されシクロヘキサノンと反応しシクロヘキサノンオキシムとされMgⅡによって酸性の調整され たAlPO-36の細孔内でε-カプロラクタムに転位する二元機能で進行すると説明されている。

Chemical Week Sept.28/,Oct.5, 24 (2005) R. Raja, G. Sankar, J. M. Thomas, J.Am.Chem.Soc. 123, 8153-8154 (2001)

触媒:0.5g, 空気:3.5MPa, シクロヘキサノン/ NH3=1/3(mol), シクロヘキサノン≌50g, 328K

MⅡMⅢAlPO-36によるシクロヘキサノンからε-カプロラクタムの直接合成

MⅡMⅢAlPO-36によるカプロラクタムの合成

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新規触媒

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ICLabo

235

WO2006-093058 Mitsui Chemical

メタセシス触媒 Phillipsが開発しルーマスがライセンシングしているエチレンと2-ブテンからプロピレンを合成するOCT (Olefin Conversion Technology)プロセスは世界で30社以上稼働している。WO3-MgO-ZrO2/SiO2が用いられている。触媒は米国のBASF Catalyst LLC(旧Engelhard)が製造供給している。 メタセシス触媒は微量の硫黄により被毒を受けるためNi/Al2O3による硫黄除去装置設置されている。触媒へのカーボン質の 付着が大きくディコーキングにより30日前後で再生処理が行われている。 ブテンの転化率は60~70%プロピレンの選択率は 96%以上である。 三井化学はWO3に共触媒としてアルカリ金属を加えたWO3/ハイドロタルサイト又はWO3-CaO/Al2O3を開発した。ブテン基準 のプロピレンの選択率は95%以上で, 系内に水素を微量添加し触媒の再生までのインターバルが長くなることをみつけている。 AxensはRe2O7を触媒とした液相プロセスを開発しているが工業的実績はない。

Lummus Axens プロセス名 OCT Meta-4 原料 エチレン, ブテン エチレン, ブテン 反応 固定床 移動床 反応相 気相 液相 反応温度 ℃ 330-400 30-60 触媒 WO3-MgO-ZrO2/SiO2 Re2O7 触媒再生 切換え 連続再生 実績 >30基 無し

CH2=CH2 + CH3CH=CHCH3 → 2 CH2=CHCH3

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エチレンの気相二量化触媒 三井化学はエチレンの気相二量化によるブテンの製造触媒を開発した。 微量のNiをAl2O3含有量の少ないSiO2に担持させた触媒である。 0.035%Ni/SiO2-Al2O3(470/1) 300℃, 0.1 MPaの条件でエチレン転化率29.4%で選択率86.7%でn-ブテンが得られている。 他にエチレンの二量化プロセスとして知られている IFP のα-ブトールはチーグラータイプの触媒でTi(Obu)4/TEAが用いら れている。50~60℃, 2.5MPaの条件で1-ブテンの選択率は93%である。 LummusのライセンシングしているPhillipsの開発した二量化プロセスはNi-phosphine/C2H4AlCl2が用いられ2-ブテンが得ら れる。 いずれも低温で均一系の反応である。 n-ブテンを酸化脱水素してブタジエンを得るには350℃前後の反応温度が必要である。 エチレンと2-ブテンからプロピレンを合成する気相メタセシスの反応温度は330~400℃である。 気相で300℃でn-ブテンが得られるとブタジエン合成でもメタセシス反応でも有利である。

2 CH2=CH2 → CH3CH2CH=CH2

特開2011-148720 三井化学

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SAPO-34 (チャバサイト(CHA)型ゼオライト) シリコアルミノリン酸塩ゼオライトであるSAPO-34の細孔径は0.34nmと小さく芳香族は入らない。UCCはSAPO-34によりメタノールからエチレンとプロピレンが合成できることを見つけた。反応機構は細孔内の炭化水素プール(Hydro carbon pool mechanism)が提唱されている。

ZSM-5 とSAPO-34

SAPO-34 ZSM-5

細孔径 0.43 nm 0.54 nm

重質留分や分岐した炭化水素の拡散を制限, 軽質オレフィンに対し高い選択性

高度に分岐した炭化水素および芳香族化合物の選択性が高い。アルキル化, 芳香族化

酸性度 弱い 強い

水素移行反応が少なく副生パラフィンの収率が少ない。生成C4-C6留分の大部分がオレフィン( 分解してアップグレードするのに適)

水素移行反応を生じパラフィンの収率が大きい。MTG (Methanol to Gasoline)プロセスとして工業化

Arstad, B,., et.al. JACS. (2004) 126, 2991-3001 Jinzhe Li., et.al. JACS, (2012) 134 (2) pp 836-839

1. パルスでメタノールを添加すると最初反応せず, 数分後メタノールを添加するとエチレンとプロピレン生成 2. メタノールの導入を止めるとHMBの脱アルキル化が進行 3. C13メタノール 5 mol, C12HMB 1 molを反応させると C12エチレンが生成 4.HMB ( Heptamethylbenzene) を検出

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ICLabo

触媒 Ag-Y H-Y Ag/H-ZSM-5 Ag-A 反応温度 ℃ 400 400 400 400 325 350 CH4/kPa 33.8 0 33.8 33.8 33.8 33.8 C2H4/kPa 33.8 33.8 33.8 33.8 33.8 33.8 転化率 % CH4 6.5 ― 0 13.2 7.8 2.1 C2H4 15.9 13.2 11.8 86.3 39.6 3.2 組成 % CH4 ― ― ― ― ― C2H6 41.0 42.9 62.6 1.1 1.1 33.6 C3H6 29.7 13.6 10.3 20.6 33.0 38.9 C3H8 4.2 5.0 4.5 11.7 3.9 0 C4H8 7.5 6.9 4.2 9.9 35.5 27.5 C4H10 11.7 16.7 13.5 13.7 5.4 0 C5+脂肪族 5.9 9.6 4.9 12.7 21.1 0 芳香族 0 0 0 30.3 0 0

東工大の馬場はメタンの活性化触媒を見つけている。AgクラスターをY-ゼオライトに担持させた触媒である。 (Agn/Y-ゼオライト)メタンとエチレンを反応させるとプロピレンが得られている。 CH4 + CH2=CH2 → CH3CH=CH2

細孔構造を持たないAg3PW12O40ではAgn+は水素分子を解離しないが, Y型とA型ゼオライトにAg+交換した細孔内のAgイオン

クラスター(Agn+)は水素分子を可逆的に不均等解離吸着する。(1H MAS NMR測定 馬場)

H2 + ZO-Agn+ ⇔ Agn-H + ZO-H

Ag-YはCH4のC-Hを不均等解離する。ZO-Agn+ を利用するとメタンの活性化が可能である。

CH4 + ZO-Agn+ → Agn-H + ZOδ-CH3

δ+ 解離したCH3は反応性が高いためエチレンと反応しプロピレンが生成する。13CH4を用いてメタンがエチレンと反応しプロピレンの生成確認。Agの担持していないH-Y: メタンは全く反応しない。エチレンは11.8%反応 Ag/H-ZSM-5: Ag-Yよりもメタン転化率, エチレン転化率高い。325℃でメタン, エチレンはそれぞれ7.8%, 39.6%転化しプロピレン33.0%生成。

238

メタンの活性化触媒

馬場俊秀, 阿部佳宗, 88th CATSJ Meeting Abstracts: No.1B06(2001)

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ICLabo

239 北海道大学, 上田

Mo3VOx結晶構造による転化率の異なる触媒 Mo3VOxを170℃, 20時間水熱合成後, 340℃で焼成するとOrthorhombic型の結晶構造が得られる。 Orthorhombic型のMo3VOxはアクロレインのアクリル酸への酸化とエタンのエチレンへの酸化に高転化率を示す。

アクロレインのアクリル酸への酸化 エタンの酸化によるエチレン

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ICLabo

240

固体アルキレーション触媒 (Pt-HY) イソブタンと低級オレフィンのアルキル化による高オクタン価ガソリンの製造は従来からHF又は硫酸が用いられている。強酸 であるため腐食や毒性, 廃触媒処理の問題は避けられない。Albemarle, CB&ILummusとNeste Oilはbi-modalのPt-HY- Zeoliteを用いた連続プロセス(AlkylClean process)を開発しNeste OilのPorvooで10 BPDのセミコマーシャルプラントによる 2年間の実証を行った。反応条件は50~90℃, 21 bar, 液相固定床の反応である。3基の反応器を用い, 2基は通常交互で用 いられ1~3時間おきに水素により温和な条件で再生されている。3基目は250℃, 水素で再生され2~3週間待機して2基の 反応器の一つと交代される。最近, 中国Shandong Wonfull石油化学はこの技術を用いて10万トン/年のプラントを建設し2014 年稼働させることを発表した。稼働すると世界初のゼオライトを用いたアルキレーションプラントとなる。触媒はアルベマール から供給される。

USP5,986,158 Akzo Nobel, PTQQ4,87, 2008, Chemical Engineering, June, 1, (2013)

+

Pt-HY-Zeolite

AlkylClean process

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ICLabo

241

ゼオライトの配位機能 固体酸, 形状選択性, 水素移行機能, 酸化触媒, 担体などの他にゼオライトのリガンド的な働きが注目される。BASFの開発し たプロピレンの過酸化水素による酸化ではメタノール共存下でないと反応は進行しない。メトキシがゼオライト表面のTiと中 間体として配位し反応が進行すると解析されている。

30万トン/y Antwerp Belgium

BASF

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ICLabo

Nanowire Catalyst 米国Massachusetts Institute of Technology教授のDr. Angela Belcherはバクテリアの表面構造を利用したNano wire 触媒を

開発しSiluria社においてメタンの二量化パイロットプラントを稼働させようとしている。 触媒はバクテリア表面にMg++を担持させ水酸化物としてから焼成し酸化物としてからLiを含浸して調製されている。

WO 2011/149996A2 Siluria

Phage

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ICLabo

243

エタノールの脱水触媒 BPは HPA/SiO2触媒を用いて低温でエタノールとジエチルエーテルの混合物から脱水してエチレンを合成する 触媒を発表した。選択性が高くエチレン中のC4濃度は、<1000ppmと発表されている。

H3PW12O40・24H2O/SiO2

EtOH 28% Diethylether 34.5% Water 3% N2 32.7% CH4 1.5% 20 barg 220℃, 42 h C4 < 1000 ppm in エチレン

CH3CH2OH → CH2=CH2 + H2O

US2012/0165589A1 BP

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ICLabo

244

Pdの原子の配位数の違いによる吸着状態の違い

NxCat技術 (Headwaters) 米国Headwaters Technology Inovation 社は過酸化水素の直接合成法を開発し, 2007年米国のPresidential Green Chemistry Awardを受賞。触媒はPd-Pt/カーボンブラックである。 Pd-Pt/カーボンブラックは直鎖状分子を80~90%含有する分子量1,200のポリアクリル酸ソーダの45%水溶液にPdCl2塩酸水 溶液とH2PtCl6水溶液を混合後, 水で希釈し, H2で還元し触媒前駆体溶液を調製してから200m2/gのカーボンブラックと長時 間混合し含浸させた後, 乾燥して調製される。 NaBr 5ppmを含む1% H2SO4水溶液にH2 3vol%, O2 20vol% N2 77vol%を45℃, 1,400psig (10MPa), 3時間反応させると転化率33%, 選択率100%で4.8%の過酸化水素が得られている。水素濃度は4vol%以下の爆発下限以下。 ポリアクリル酸を用いることによりにより金属表面の結晶をナノスケールで制御しFCC(101)又はHCP(120)が選択的に形成さ れる。ポリアクリル酸は金属の塩との鋳型剤となり中間錯体を形成する。還元し鋳型剤を除去すると最隣接原子配位数2を 持つPdのコロイド懸濁液が得られる。FCC(101)とHCP(120)は配位数2個, FCC(100)は4個, FCC(111)は6個の原子と配位して いる。酸素は2原子, 水素は1原子で吸着されるためにFCC(101)又はHCP(120)の場合は直線又はジグザグにH-O-O-Hの配 置で吸着しH2O2が生成する。FCC(100)又はFCC(111)の場合はH-O-Hの配置もとるのでH2Oが生成ししまう。

特表2007-530248ヘッドウォーターズ, WO2005009611 Headwaters

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ICLabo

245

AuNiOxナノ粒子触媒 旭化成ケミカルズはPd-Pb/SiO2によるメタクロレインからメタノール酸化によるMMAの製造触媒を開発触媒工業化しているが AuNiOxナノ粒子がさらに高活性で選択性が良いこと見つけ10万トン年のMMAプラントで実用化した。

鈴木賢, 山口辰男, 松下健, 112nd, CATSJ Meeting (2013)

触 媒 メタクロレイン転化率% MMA 選択率%

Pd/SiO2-Al2O3 20 40

PdPb/SiO2-Al2O3 34 84

AuNiOx/SiO2-Al2O3-MgO 58 98

AuNiOx/SiO2-Al2O3 63 97

Au/SiO2-Al2O3-MgO 14 91

Ni++

Au0

2-3 nm CH3OH O2 O

OO

Au: 0.1 mol%, Ni:0.5mol% in MeOH, O2/N2=/93 v/v, 3MPa, 60℃, 2h

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ICLabo

246

触媒 反応温度 ℃ 水素転化率 %

酸素転化率 %

SM+EB燃焼率%

0.4%Pt-SnO2

400 99.2 97.9 0.08 500 96.6 100 0.18 600 83.4 100 0.49

0.4%Pt-Nb2O5 500 97.1 98.5 0.13 600 86.8 100 0.41

CO2 H2O

H2 H2O

SMSI 触媒 SnO2やNb2O5はPtやPdと強い相互作用がある。三菱化学はエチルベンゼンンの脱水素によるスチレンの合成プロセスで, 平 衡を有利にするため系内で生成する水素の酸化除去にPt-Nb2O5-Al2O3触媒を開発し工業化した。 スチレンの酸化燃焼を抑制した水素除去触媒である。600℃の高温でもエチルベンゼン(EB)とスチレン(SM)の燃焼率は低く 水素が選択的に燃焼除去することができる。PtとSnO2やNb2O5は強い相互作用を生じ水素-酸素反応が選択的に生じる。 0.4%Pt-Nb2O5を用いると500℃での水素の転化率は97.1%で, その時のSM+EBの燃焼率は0.13%と報告されている。 EB/スチレン/水/水素/酸素/窒素=1/1/12/1/0.52/1.95(モル比), SV=23,900hr-1, LHSV(EB+Styrene)=15hr-1, Nb2O5を有効に利用するために例えばPt-Nb2O5-Al2O3触媒の調製法は例えば, 担体はγ-Al2O3粉末を原料に用い転動造 粒機で3mmφ程度に造粒しておいた球状のアルミナに, 更に転動造粒機で水を噴霧しながらNb2O5粉末を加えながら造粒し て調製される。触媒は担体を900℃, 3時間焼成後, 塩化白金酸水溶液を含浸担持後, 乾燥, 大気中650℃, 3時間焼成するこ とによって得られている。EPMAで分析すると触媒の断面は直径3mmのアルミナ核の回りに厚み0.75mmのNb2O5層が形成さ れている。

Pt-Nb2O5-Al2O3断面

西山, 滝口, 和食, 岩倉, 伊集院, 100th CATSJ Meeting Abstracts, No. 1A 09, 404 (2008), 特開平9-29095 三菱化学, 特開2003-144924 三菱化学

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247 WO2012/107718A Oxford Catalysts

OMX製法によるFT合成Co触媒 Coの有機化合物を急速に加熱する方法OMX(Organic matrix combustion method)によりCoの結晶サイズ分布を狭くした触媒 がOxford Catalystsが開発した。Velocysの小型FTプロセスに用いられている。Ex. 40%Co-TiO2/SiO2, Coの粒子径を8-10nmに調 製することにより高活性, 長寿命触媒となっている。

Derek Atkinson, PTQ, Q2, 95 (2010) L. A. Richard, P. Moreau, S. Rugmini, F.Daly, SynFuels, June 29-30, Munich, Germany (2012)

30%Co-4.5%Re/Al2O3 100-150μ OMX organic matrix combustion method GHSV 800-2,000 → 24,000 h-1

Conv. 50 % → 70%

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ICLabo

248

Sc/In2O3触媒によるエタノールからプロピレンの合成 東工大資源研の岩本教授はエタノールからプロピレン合成触媒として新たなIn2O3触媒を見つけた。In2O3触媒によるエタノー ルからのプロピレンの反応ルートはアセトアルデヒド, ケトンを経て水素化脱水を経由すると推測されている。新たな反応 ルートである。Sc/In2O3は550℃で100%近い転化率で約60%の収率でプロピレンを安定して与えている。 CH3CH2OH → CH3CHO → (CH3)2C=O → CH3CH=CH2

Catalyst:2g, GHSV: 687h-1, 0.1MPa, EtOH:30vol%, N2: balance

3%Sc/In2O3

In2O3

H2O:8.5 vol% H2:30 vol%

岩本正和, 田中大士, 触媒, Vol. 55, No.5, 256 (2013)

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ICLabo

249

構造体触媒

触媒ユニット: 方向の90°異なる2枚のSUSの波板に触媒が挟み込まれたものが束ねられたものである。袋状のセグメントに触媒が充填されている。

CB&I Lummus グループのCDTECHはCatalytic Distillation Technology を開発している。生成物を蒸留で除去することにより平衡値を変え収率を上げる反応蒸留では反応と蒸留を同時に行うため蒸留構造体に触媒が充填されたものや蒸留構造体を触媒化されたものが用いられる。従来の金属酸化物やアルミナ成型担体への含浸法ではなくステンレスやアルミ二ウムなどの金属表面への触媒化やウオッシュコートや無電解メッキ法などの触媒調製技術が用いられている。Sulzer社からは触媒袋を充填した触媒ユニットも販売されている。 ETBE, 酢酸メチルから酢酸の回収, アセトンからMIBKの製造プロセスに用いられている・

Sulzer 社の触媒ユニット

触媒が詰められた袋を巻き込んだ触媒充填物

R. Krishna, J.Ellenberger, M.I. Urseanu, University of Amsterdam, Sulzer社カタログ

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ICLabo

250

構造体触媒 Lummusはハニカム触媒を用いた深度脱硫プロセスを開発している。触媒はハニカムの壁に塗布されている。脱硫された H2Sはハニカムの空洞部分から排出されるため再溶解することはない。

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ICLabo

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千代田化工脱水素触媒 千代田化工は約13億円を投資して自社研究所内にトルエンの水素化装置とメチルシクロヘキサンからの脱水素による水素 造装置のパイロットプラントを建設し実証した。水素化はNi/Al2O3であるが脱水素はカーボン析出と金属のシンターリング により寿命が短かかったがPtをSO4

2- で固定することによりPtの粒子の成長を抑制した触媒を開発した。

US2009/0092541A1 Chyoda Engineering

水素化脱水素による水素輸送システム

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ICLabo

252

SMR 触媒 870-880 ℃

Rh-MgO-Al2O3/FeCrAlY フェルト

メタン酸化触媒 Coated CePd

350-360 ℃

300-340 ℃

150-160 ℃

マイクロチャンネルFT合成反応器イメージ

Velocys マイクロチャンネル触媒

Velocys社(Oxford Catalysts Group)は内壁を触媒化した薄フェルトを用いたマイクロチャンネルSMR(水蒸気改質)触媒を開発した。SMRの水蒸気改質部は0.25 mmの厚さのFeCrAlYフェルトに10%Rh-4.5%MgO-85.5%Al2O3のスラリーをコートし焼成した触媒が挿入されている。メタンと水蒸気は300~340℃に予熱されて導入され870~880℃で改質されている。反応に必要な熱は改質触媒に隣接したCePdがコーティングされたメタン燃焼室の壁面で行われている。 FT合成はマイクロチャンネル(0.1-1.0 mmの溝)に100~150μmφの触媒を充填したマイクロチャンネル反応器で行われる。反応による発熱は水蒸気の製造に用いられている。マイクロチャンネル反応器は極めて短い時間で反応が行われる。

触媒接触時間 従来 Velocys 水蒸気改質 >1 sec. <5 milli sec. FT合成 >10 sec (固定層) <0.2 sec.

John Brophy, 10th PIN Meeting, Heriot-Watt University, Edinburgh, June 3,(2004)

Velocys装置の接触時間

マイクロチャンネルSMR反応器

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ICLabo

253

Pt-Rh/Al2O3コーティングフェライト鋼フォイル

Pt-Pd/Al2O3コーティングフェライト鋼フォイル

Pt-Pd/Al2O3コーティングフェライト鋼フォイル

Co/ZrO2 コーティング鋼フォイル

スチーム製造

スチーム製造

水蒸気改質 FT合成 FT合成油

空気

CH4

水蒸気

燃焼

水蒸気製造

水 熱移動

SMR 触媒 FT触媒

コンパクト構造体波板フォイル触媒 Compact GTL社はコンパクトなFT合成プロセスを開発している。SMR触媒はアルミ含有フェライト鋼を三角波形に成型後, 900℃で焼成し, アルミナを表面に析出させた後, アルミナのスラリーをコーテンングし, Pt-Rhを含浸担持後, 焼成還元し製造 される。SMR触媒フォイルの上下のマスにはPt-Pdが同様にコーティングされたメタンの酸化触媒波板フォイルを挿入しメタ ンの酸化燃焼熱を供給している。 二段目のFT合成はZrO2ゾルとCo塩をコーティングした触媒波板フォイルである。 FT合成により生じる熱は, 上下のマスで水蒸気を製造することにより冷却。 反応器は日本の住友精密が製造している。

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ICLabo

254

MOF(Metal Organic Framework) 元大阪大学の森教授が見つけた配位高分子で金属-有機構造体(PCP: Porus Coordination Polymer)とも呼ばれている。BASF や京都大学の北川教授が精力的に開発を続けている。表面積が数1,000 m2/gあり細孔内に分子を吸着する。触媒担体や ガス分離材として注目されている。触媒材料としての報告はほとんどない。BASFは天然ガスの貯蔵として米国で天然ガス自 動車向けにMOFの販売を開始した。従来のガスタンクに同一の圧力で約倍量の天然ガスの吸蔵が可能である。

MOFシリンダーを用いた天然ガス自動車

MOF

BASFMOF製造

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ICLabo

バイオマス、シェールガス、石油等、取り巻く環境がどう変化すれば、どの技術が生きるか

255

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ICLabo シェールガスと石油価格の予測 今後の米国シェールガス価格と石油価格により石油化学は大きく変動すると予想される。米国DOEは2020年では米国の天 然ガス価格は$4.0/MMBtu, 石油価格は$105/BBL, 石油価格/天然ガス価格比は約4.0と予測している。 更に, 2030年では米国の天然ガス価格は$5.0/MMBtu, 石油価格は$130/BBLであるが, 石油/天然ガスの価格比は約4.0と変 わらない。 今後の日本の石油の輸入価格は国際価格で決まるので$100/bbL前後と予測されるが, 天然ガス価格は石油連動価格では$16/MMBtu, 米国から安価なシェールガスが導入されても$12.0/MMBtu前後で量的には 全体の需要の2割程度であるので安価にはならない。

米国天然ガス Brent Crude Oil 石油/天然ガス 価格比予測(エネルギー換算)

DOE/EIA Annual Energy Outlook 2013 256

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ICLabo

257

シェールガス(メタン)安価原料ケース 天然ガスが安価になることにより天然ガスの石化原料としての利用が進む。 メタン原料合成ガスの利用(C1ケミストリー)へシフトする。 Bulkな含酸素化合物の合成技術が必要となる。 C1を用いたファインケミストリー技術も導入される。 メタノール(DME)の安価輸入もあり得る。 その場合はメタノールケミストリーの可能性が出てくる。 Ex. メタノールから酢酸, エタノール,etc. プロパンの輸入 シェールガス含有プロパンが安価であればプロパンの輸入があり得る。 その場合はプロパンの脱水素プロセスが導入される。 既に, 韓国SKガスは60万トン/年, 中国では 60万トン/年 2-3基のCatofinプロセスの導入が予定されている。 ブタンの輸入 ブタンの酸化脱水素によるブタジエンの製造技術が必要となる。 注) 米国からのエタンの輸入は量的, コスト的に不可。 プロパン, ブタンの輸入は数量と価格に限界がある。

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ICLabo ポリエチレンの輸入価格

米国において$7.0/MMBtuのシェールガスを用いてポリエチレンを製造し輸送費$200/tonを加えて日本着の価格は$1,460/tonと推定される。この価格は日本で$70/bblの石油を用いて製造したポリエチレン価格と同じである。 シェールガス価格が高騰し$7.0/MMBtuを超え石油価格が$70/bblより安価になれば日本のポリエチレン産業は安泰である。 しかし, 米国シェールガスが$7.0/MMBtuより安価で石油価格が$70/bbl以上であれば日本に米国のポリエチレンが流入 してくることになる。ポリエチレンの日本の製造コストベースでのシェールガス価格と石油価格の関係を図示する。

原油価格とシェールガス価格とのポリエチレン価格比較

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ICLabo

シェールガス

石油

バイオマス

石炭

石油化学を取り巻く環境の変化

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シェールガス由来のエタンクラッカーによる安な価エチレン誘導品(塩ビ, PE)が米国から海外への輸出が本格化する。 日本のアジアへのエチレン誘導体約200万トン/年の輸出が大幅減少し, ゼロになる恐れがある。 日本のナフサクラッカーの大幅な削減が余儀なくされる。 短期的には ナフサクラッカーの高度利用(エチレン→プロピレン)が進む。 しかし,抜本的解決にはならない。(一部のエチレンセンターのみ) 世界的にプロピレン,ブタジエン,芳香族不足が生じる。 米国では天然ガス価格の低下により石油化学原料は天然ガスにシフトする。 合成ガスを利用したC1ケミストリーが発展する。海外にシフトしたアンモニアプラントや メタノールプラントの北米回帰が始まっている。 バイオマス バイオマス原料は非可食資源へのシフトする。 バイオ化学品の開発が進みバイオコハク酸, バイオブタノールが工業化される。 発酵法を含む経済性のある化学品の製造が行われるようになる。 石油 日本はガソリン需要の減少が続く, 石油精製会社の石油化学への進出もあり得る。 FCC利用の進展 (石化FCCプロセスの導入も必要) 石炭 中国は石炭を用いた独自の路線を歩む。石炭合成ガスの利用が進む。(C1ケミストリー)

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ICLabo

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プロパン ブテン 収率 % 5 20 12 プロパン生産量 223 890 534 日本の生産量 2012年 524 万トン 90万トン(ブタジエン)

FCC副生プロピレン、ブテンの生産量 日本のFCC装置の製造能力は重質残油処理装置も含めて約100万バレル/日である。100万バレル/日を4,450万トン/

年として計算するとプロピレンの生産量は現状の5%では国内生産量の半分の量しかない。HS-FCCをすべて導入したと すると収率20%で計算すると890万トンであるから現在のプロピレンの生産524万トンを十分賄うことができる。国内のブタジエ ンの生産量は、2012年は約90万トンであったのでブテンの収率を12%とすると計算値だけでは十分すぎるほど生産可能であ る。しかし、実際のFCC副生ガスはアルキレーションガソリンとして利用されていることと石油精製会社と石油化学会社の経営 は異なるので容易ではない。

FCCから副生するプロピレンとブテンの予想生産量

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ICLabo

261

石炭の利用とC1化学の再燃 日本で最も安価なエネルギーは石炭である。オーストラリア, モンゴルなどの輸入石炭から合成ガス(CO,H2)を用いた含酸素 化合物の合成プロセスは成り立つ可能性がある。 石炭 >> 石油>天然ガス >> 再生資源 石炭を原料とした新たなC1化学を推進する必要がある。 同時に米国でメタノールが安価になると輸入メタノールまたはDMEを用いた含酸素化合物の合成や水素製造もあり得る。

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ICLabo

262

Pd/C

CH4

H2O, CO2, O2

CH3OH

H-MOR

+ H2O

Al2O3

(COOCH3)2

CH3OH

EG

CH2(OH)COOH CO

DMC

Pd/Al2O3

Pd++

+ H2 CuOx ポリグリコール酸

AcOCH3 AcOH

CH3OH

+ H2O

EtOH CH3OH

+ H2

CuOx

酢酸エチル

AcOH

(AcO)2O

+ CO RhCl3

H2

ギ酸メチル

+ CO

強塩基

+ O2

Cu-ZnOx

+ CO DME

エチリデンジアセテート

+ CO/H2

酢酸ビニル

H+

プロピレン

芳香族

PP

HCHO

+ CO

ポリアセタール

樹脂

(CONH2)2

+ NH3

H+

RhCl3

+ AcH

LiI

Ni/Al2O3

Acrolein

1,3-PD

アクリル酸

IR

MoOx

グリシン + NH3

+ H2O

ギ酸

LPG

- H2O

- H2O

+ H2

(CH3)2NH + NH3

+ CO

エチレン PE

PVC

NH3

C1 Chemistry

石炭

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ICLabo バイオマス利用へのシフト

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日本では穀類の価格が高く穀類を原料としたバイオケミストリーは成り立たない。 しかし, 非可食資源では十分競合できるはずである。 欧米の企業はインドネシアやタイでバイオマスを原料とした燃料油や化学品の製造をはじめている。 日本も技術開発して東南アジアでバイオマスを用いた化学品の製造に参画すべきである。 バイオマスの原料は パーム油, グリセロール, 糖(澱粉)などの可食資源とパーム殻, 稲わら, 廃材, 草木類などの非可食バイオマスである。 藻の栽培もあり得る。 これらを原料として製造されるカギとなる中間体は グルコース, ソルビット, 5-HMF, コハク酸, ブタノールである。 セルロースからの化学品では グルコース, イソソルビド, グルコースからの化学品では 5-HMFの製造技術開発が望まれる。

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ICLabo

264

輸入バイオマス原料の利用 日本でのバイオマスケミカルのコスト競争力がなければ海外から安価なバイオマス原料を輸入して日本で付加価値の高い 化学品を合成する方法がある。 バイオマス原料の輸入国は南米と東南アジアが考えられる。 その場合はバイオマス原料の製造技術の開発が望まれる。 さらに日本でのバルクな含酸素化合物の製造技術が必要である。 欧米の技術導入もあり得る。

穀類 非可食バイオマス

バイオエタノール バイオコハク酸 バイオブタノール グルコース グリセロール

アクリル酸 酢酸エチル 酢酸ビニル

1,4-BG

生産 製造 輸入 製造 加工 南米/東南アジア 日本

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穀類

非可食資源 セルロース エタノール

グルコース ソルビトール イソソルビド

5-HMF 二官能基

アジピン酸 PG

EG

ブタノール

リグニン

油脂

グルコース

グリセロール アクロレイン アクリル酸

ブテン

フェノール誘導体

ブタジエン

FAME バイオディーゼル

ブタジエン

エタノール

コハク酸

エチレン

1,3-PG 3HPA

乳酸

乳酸

1,4-BG コハク酸エステル

THF

発酵法 必要とされる触媒技術

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266

今後重要な触媒と触媒プロセス技術 今後必要とされる触媒反応と機能, 触媒についてまとめる。

必要とされる反応 必要とされる機能 触 媒 触媒プロセス技術

軽質オレフィン転換 炭化水素プールメカニズム メタセシス 二量化

ZSM-5, SAPO-34,Ti-Silicate WO3, Re2O7, Ru Ni/Al2O3

触媒再生技術 流動層開発技術 構造体触媒製造技術 マイクロリアクター製造技術 (エンジニアリングとの共同開発)

アルカンの脱水素 酸化脱水素 複合酸化物 (Mo-V, Mo-Fe)

芳香族の製造 脱水素環化, 多環の水素化分解 ZSM-5, Ga-Silicate

カルボニレーション 気相カルボニル化 Mordenite

アルキレーション 固体酸 Y-ゼオライト

バイオマスの利用 酸化, 脱水 ヘテロポリ酸

シンプルケミストリー 多元機能 Au, 合金ナノ触媒

担体 CeO2, ZrO2, TiO2

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提案のまとめ 報告書の提案を下記にまとめる。

影響 現象 対策 必要技術 シェールガス 米国の安価なエチレン誘導体の東南ア

ジアや日本市場への参入により日本はエチレン誘導品市場を失う。

米国でのプラント建設 メタン, エタン, プロパンの直接利用技術 米国から安価な原料の輸入 (エチレン誘導体, メタノール(DME) )

高付加価値化学品の製造技術 Ex. 電材, 機能化学品, 医薬品

プロピレン, ブタジエン, ベンゼンが世界的に不足する。

FCCの石油化学の利用 FCCからC3,C4の分離技術 ブテンの酸化脱水素技術 LCOからの芳香族の製造技術

海外の安価な石油化学製品の流入 最安価な原料の利用(含石炭の利用)

C1を用いた含酸素化合物の製造技術

バイオマス 世界的にバイオマスの利用が広がる。 非可食資源の利用が広まる。

バイオマス原料の東南アジア/南米での製造

セルロースから糖の製造技術(含む発酵法)

バイオマス原料から化学品の製造 グリセロール→アクロレイン, PG, 1,3-PG 糖→5-HMF, イソソルビドの製造技術 5-HMFの誘導体の製造技術 リグニン→フェノール

発酵法によるバイオブタノール, バイオコハク酸の製造が本格化する。

バイオエタノールの輸入 ブタノール, コハク酸の輸入

バイオエタノール→ブタジエン, 酢酸エチル, 酢酸ビニル,EG, バイオブタノール→ブテン, ブタジエン バイオコハク酸→1,4-BG, THF