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2019年8月作成 不活化ポリオワクチン(IPV)の 就学前の5回目接種に対する 接種費用公費助成への取り組み 千葉県いすみ市 兵庫県佐用町

不活化ポリオワクチン(IPV)の 就学前の5回目接種に対する ...SPJP.IPV.19.08.0163 2019年8月作成 不活化ポリオワクチン(IPV)の 就学前の5回目接種に対する

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SPJP.IPV.19.08.01632019年8月作成

不活化ポリオワクチン(IPV)の就学前の5回目接種に対する接種費用公費助成への取り組み千葉県いすみ市

兵庫県佐用町

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千葉県いすみ市での不活化ポリオワクチン(IPV)の5回目接種に対する接種費用公費助成開始後1年を振り返る

千葉県いすみ市では、子どもの健康を守るため、2010

年から任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成を

開始し、2018年4月からは不活化ポリオワクチン

(IPV)の就学前の5回目接種(任意接種)に対する接種

費用公費助成を開始しました。IPVに対する接種費用

公費助成の開始から1年を迎えたいすみ市の成果と

今後の取り組みについてご紹介します。

 

(2019年7月1日現在)

人 口

世帯数

面 積

37,933人

16,957世帯

157.44km2

1 2

いすみ市

 いすみ市では、進学や仕事を理由に若い方や子育て世代の転出が増えており、人口減少が進んできました。そこで、市への移住や定住したくなる環境を目指し、魅力ある町づくりに取り組み、特に子育て支援に力を入れています。具体的には、乳幼児の相談事業の充実化を図ったり、中学生までの医療費助成を高校生まで拡大したりするほか、任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成を積極的に進めてきました。

いすみ市長 太田 洋 氏

子どもは市の宝、公費助成で誰もが健康を守れる市に

千葉県の南東部にあるいすみ市は、太平洋に面し、豊かな自然に恵まれた田園都市です。いすみ市沖では伊勢海老がとれ、豊かな土地からは千葉の三大銘柄に数えられるいすみ米が作られています。夏に観光客でにぎわう海水浴場は、サーフィンの名所としても知られ、季節を問わずサーファーが訪れています。

 IPV5回目接種に対する接種費用公費助成を始めて1年が経過

しました。2018年度は、IPV接種対象者222名のうち、接種者数は177名、接種率は79.7%でした(図)。約8割という高い結果ですが、同じく任意接種であるおたふくかぜワクチンの年長児での接種率82.0%と比べてわずかに低くなっています(図)。 IPV5回目接種率が低かった理由としては、5回目接種の

IPV5回目接種の接種率は約80%を達成今後は接種率向上を目指す

任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成を推進IPVへの助成も2018年に開始

表 いすみ市の任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成(2019年度)

ワクチン名 対象年齢

おたふくかぜワクチン(任意接種)

麻しん風しん2期(定期接種)

IPV5回目接種(任意接種)

79.7% 82.0%94.6%

接種率

接種回数 助成内容

ロタウイルス 1価ロタウイルス 5価

生後6~24週 全額全額生後6~32週 3回

2回

おたふくかぜインフルエンザ

1歳~就学前

100

80

60

40

20

0

(%)

全額1回につき1,000円9月30日時点で生後6ヵ月~3歳未満 年間2回まで

2回

図 いすみ市のIPV5回目接種、おたふくかぜワクチン、麻しん風しん2期の接種率(2018年度)

いすみ市役所 健康高齢者支援課 乾 真由美 氏

IPV接種率向上のため、広報活動を工夫しポリオ予防の重要性を伝える

 いすみ市の医療機関では、定期接種の際に任意接種ワクチンの意義について情報提供し、接種を呼びかけてくださっています。IPV5回目接種は、対象者がMR2期接種と同じ年長児であることから、MRを接種する時がIPV5回目の追加接種を啓発するよい機会になると考えられます。MR2期未接種の年長児には、接種漏れを防ぐために夏休み前や冬休み前など繰り返し接種勧奨の通知を送っており、MR2期定期接種の接種率向上がIPVの接種率向上に寄与することを期待しています。

● 公費助成の内容(2018年4月1日開始)

IPV就学前追加接種 接種費用公費助成

予 防 接 種:助成対象者:助 成 回 数:助 成 費 用:開 始 時 期:

不活化ポリオワクチン(通算5回目)小学校入学前1年間(定期接種完了者)1人1回全額2018年4月1日

いすみ市役所 健康高齢者支援課 課長 藍野 かおる 氏 IPV5回目接種は麻しん風しん混合(MR)2期の対象者と重なることから、MR2期の接種勧奨の通知と一緒にIPVの接種費用公費助成についてご案内しています。接種費用公費助成を受けるためには、役所の窓口で申請する必要があります。そこで、窓口ではポリオ予防の重要性を伝えており、実際にIPV5回目接種につながったことがあります。IPVの意義を理解していただくには、通知文書だけでは不十分のように思います。2019年度からは、IPVの5回目接種に関してわかりやすく解説したリーフレットを同封しました。接種率向上のため、今後も通知方法を工夫していきたいと思います。

 2010年度にヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの接種を公費助成にしました。また、2011年度にはインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンと水痘ワクチン、おたふくかぜワクチンの接種を公費助成にしました。2018年度からは不活化ポリオワクチン(IPV)の就学前の5回目接種に対する接種費用公費助成を始め、現在は、IPVとロタウイルス、おたふくかぜ、インフルエンザワクチンへの助成を行っています(表)。接種費用公費助成は、保護者の経済的負担の軽減になるだけでなく、子どもが家庭の経済的事情に左右されず公平に健康づくりの機会を得られるために必要だと考えています。

必要性が周知されていない可能性が考えられます。以前、おたふくかぜワクチンの公費助成申請のため来庁された保護者から「4種混合ワクチンの定期接種でIPVの接種は終わっているのに、なぜIPV5回目接種が必要なのか」という質問を受けたことがあります。また、他の理由としては、定期接種完了者を対象とした公費助成であるため、定期接種が完了せず公費助成の対象から外れた方がいるのかもしれません。理由を分析したうえで、4種混合ワクチンの定期接種期間中からIPV5回目接種の案内をするなどの対応策を考え、接種率向上を図っていきたいと思います。

保健窓口担当者の声

万木城跡雀島(夫婦岩) 大原海岸

千葉県

不活化ポリオ 就学前1年間(年長児) 全額1回

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千葉県いすみ市での不活化ポリオワクチン(IPV)の5回目接種に対する接種費用公費助成開始後1年を振り返る

千葉県いすみ市では、子どもの健康を守るため、2010

年から任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成を

開始し、2018年4月からは不活化ポリオワクチン

(IPV)の就学前の5回目接種(任意接種)に対する接種

費用公費助成を開始しました。IPVに対する接種費用

公費助成の開始から1年を迎えたいすみ市の成果と

今後の取り組みについてご紹介します。

 

(2019年7月1日現在)

人 口

世帯数

面 積

37,933人

16,957世帯

157.44km2

1 2

いすみ市

 いすみ市では、進学や仕事を理由に若い方や子育て世代の転出が増えており、人口減少が進んできました。そこで、市への移住や定住したくなる環境を目指し、魅力ある町づくりに取り組み、特に子育て支援に力を入れています。具体的には、乳幼児の相談事業の充実化を図ったり、中学生までの医療費助成を高校生まで拡大したりするほか、任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成を積極的に進めてきました。

いすみ市長 太田 洋 氏

子どもは市の宝、公費助成で誰もが健康を守れる市に

千葉県の南東部にあるいすみ市は、太平洋に面し、豊かな自然に恵まれた田園都市です。いすみ市沖では伊勢海老がとれ、豊かな土地からは千葉の三大銘柄に数えられるいすみ米が作られています。夏に観光客でにぎわう海水浴場は、サーフィンの名所としても知られ、季節を問わずサーファーが訪れています。

 IPV5回目接種に対する接種費用公費助成を始めて1年が経過

しました。2018年度は、IPV接種対象者222名のうち、接種者数は177名、接種率は79.7%でした(図)。約8割という高い結果ですが、同じく任意接種であるおたふくかぜワクチンの年長児での接種率82.0%と比べてわずかに低くなっています(図)。 IPV5回目接種率が低かった理由としては、5回目接種の

IPV5回目接種の接種率は約80%を達成今後は接種率向上を目指す

任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成を推進IPVへの助成も2018年に開始

表 いすみ市の任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成(2019年度)

ワクチン名 対象年齢

おたふくかぜワクチン(任意接種)

麻しん風しん2期(定期接種)

IPV5回目接種(任意接種)

79.7% 82.0%94.6%

接種率

接種回数 助成内容

ロタウイルス 1価ロタウイルス 5価

生後6~24週 全額全額生後6~32週 3回

2回

おたふくかぜインフルエンザ

1歳~就学前

100

80

60

40

20

0

(%)

全額1回につき1,000円9月30日時点で生後6ヵ月~3歳未満 年間2回まで

2回

図 いすみ市のIPV5回目接種、おたふくかぜワクチン、麻しん風しん2期の接種率(2018年度)

いすみ市役所 健康高齢者支援課 乾 真由美 氏

IPV接種率向上のため、広報活動を工夫しポリオ予防の重要性を伝える

 いすみ市の医療機関では、定期接種の際に任意接種ワクチンの意義について情報提供し、接種を呼びかけてくださっています。IPV5回目接種は、対象者がMR2期接種と同じ年長児であることから、MRを接種する時がIPV5回目の追加接種を啓発するよい機会になると考えられます。MR2期未接種の年長児には、接種漏れを防ぐために夏休み前や冬休み前など繰り返し接種勧奨の通知を送っており、MR2期定期接種の接種率向上がIPVの接種率向上に寄与することを期待しています。

● 公費助成の内容(2018年4月1日開始)

IPV就学前追加接種 接種費用公費助成

予 防 接 種:助成対象者:助 成 回 数:助 成 費 用:開 始 時 期:

不活化ポリオワクチン(通算5回目)小学校入学前1年間(定期接種完了者)1人1回全額2018年4月1日

いすみ市役所 健康高齢者支援課 課長 藍野 かおる 氏 IPV5回目接種は麻しん風しん混合(MR)2期の対象者と重なることから、MR2期の接種勧奨の通知と一緒にIPVの接種費用公費助成についてご案内しています。接種費用公費助成を受けるためには、役所の窓口で申請する必要があります。そこで、窓口ではポリオ予防の重要性を伝えており、実際にIPV5回目接種につながったことがあります。IPVの意義を理解していただくには、通知文書だけでは不十分のように思います。2019年度からは、IPVの5回目接種に関してわかりやすく解説したリーフレットを同封しました。接種率向上のため、今後も通知方法を工夫していきたいと思います。

 2010年度にヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの接種を公費助成にしました。また、2011年度にはインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンと水痘ワクチン、おたふくかぜワクチンの接種を公費助成にしました。2018年度からは不活化ポリオワクチン(IPV)の就学前の5回目接種に対する接種費用公費助成を始め、現在は、IPVとロタウイルス、おたふくかぜ、インフルエンザワクチンへの助成を行っています(表)。接種費用公費助成は、保護者の経済的負担の軽減になるだけでなく、子どもが家庭の経済的事情に左右されず公平に健康づくりの機会を得られるために必要だと考えています。

必要性が周知されていない可能性が考えられます。以前、おたふくかぜワクチンの公費助成申請のため来庁された保護者から「4種混合ワクチンの定期接種でIPVの接種は終わっているのに、なぜIPV5回目接種が必要なのか」という質問を受けたことがあります。また、他の理由としては、定期接種完了者を対象とした公費助成であるため、定期接種が完了せず公費助成の対象から外れた方がいるのかもしれません。理由を分析したうえで、4種混合ワクチンの定期接種期間中からIPV5回目接種の案内をするなどの対応策を考え、接種率向上を図っていきたいと思います。

保健窓口担当者の声

万木城跡雀島(夫婦岩) 大原海岸

千葉県

不活化ポリオ 就学前1年間(年長児) 全額1回

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4

 佐用町は中山間地域にあり、若い世代の流出などで人口

の減少が進んでいます。そこで、われわれは町を維持するためには人口を増やすことよりも、まずは住民が健康に暮らしながら地域を支える環境作りがより重要であると考え、これまで政策を打ち出してきました。なかでも子育て支援については町の重要な行政課題として取り組んでいます。子どもの健康や教育に関する制度を充実させることで、子どもたちが健康に育ち、町の将来を支えてくれるしっかりとした社会人

になることを願っています。 子育て支援に関する取り組みとして、子育て支援センターの設立や経済的な支援などを行ってきました。子育て支援センターは、人口が少なく相談相手が少ない中でも保護者が安心して子育てできるよう、子育て学習や支援を行う「ママプラザ」などを開設しています。経済的な支援としては、第二子以降の子どもを対象とした保育園の無償化のほか、給食費の補助、任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成(表)を行っています。任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成は、2013年におたふくかぜやロタウイルスなどのワクチンから開始し、2019年4月には不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)5回目接種も助成対象に加えました。

佐用町長 庵逧 典章 氏

任意接種に対する接種費用公費助成を行い町の子どもの健康を守る

子どもは町の未来を支える存在子育て支援を充実し、保護者の負担軽減を図る

医療法人社団 嗣業の会 外房こどもクリニック 院長 黒木 春郎 先生

接種費用公費助成と市民への啓発活動の重要性

 日本では、1961年からの経口生ポリオワクチン(OPV)接種

によりポリオの流行は終息し、野生株ポリオウイルスによる症例は1980年に確認されたのが最後になりました1)。しかし、世界的にみると、アフガニスタン、パキスタンなど現在でも流行している国が存在します2)。 グローバル化が進んだ現在は、日本から海外に行く人が増えているため3)、ポリオが発生している国を訪れる機会があるかもしれません。また、海外からの入国者数も増えています3)。ポリオウイルス感染者の多くは不顕性感染のため、感染に気づかないまま、多くの人と交流する可能性があります。過去の疾患というイメージがあるポリオですが、常に感染リスクがあることを忘れてはなりません。 日本では、2012年9月にOPV接種が不活化ポリオワクチン(IPV)に切り替わりました4)。IPVは、経時的に抗体価が下がるため、定期的に追加接種をする必要があります5)。日本ではIPVの定期接種は4回までであり、5回目は任意接種です。ポリオを防ぐためには、5回目接種が重要であると考えられます。 “Thinking globally, acting locally”という言葉があるように、ポリオは地球規模で根絶を目指し、地域レベルで行動する必要があり、その行動がワクチン接種であると思っています。

ポリオは過去の疾患ではない確実に防ぐためにワクチンの追加接種を

 勉強会は、予防接種に携わる自治体の職員の方に向けても

開催してきました。現場の担当の方々が予防接種の重要性を理解していることが大切だからです。接種費用公費助成の制度ができても、自治体の職員の方々が予防接種に消極的では、接種率が向上しない可能性があります。予防接種の意義をよく理解し、全国に先駆けて接種費用公費助成をしていることに誇りを持って、保護者の方々に接種を勧めていくことが接種率向上のために重要です。 また、公費助成がさらに広がるためには、市民の側に共助や互助の意識が育つ必要があります。公費助成は税金でまかなわれるものですから、負担する側も助成を受ける側もお互い助け合う必要があることを理解して、納得することが大切だと考えています。

自治体の現場担当者への啓発が予防接種の意義の理解につながる

 いすみ市では、2018年4月からIPVの就学前5回目接種に

対する公費助成を行っています。助成の効果は大きく、任意接種を受けるお子さんは、助成がなかった2017年度までほとんどいませんでしたが、助成開始後は当クリニックだけで100名を超えました。

IPV5回目接種の費用公費助成開始後接種率が向上 1) 国立感染症研究所:ポリオ(急性灰白髄炎・小児麻痺)とは

(2019年7月10日アクセス:https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/ 386-polio-intro.html)

2) Global Polio Eradication Initiative:THIS WEEK (2019年7月10日アクセス:http://polioeradication.org/polio-today/polio-now/this-week/)

3) 法務省:平成30年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について(確定値)(2019年7月10日アクセス:http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/ nyuukokukanri04_00080.html)

4) 厚生労働省:ポリオとポリオワクチンの基礎知識(2019年7月10日アクセス:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/qa.html)

5) 佐々木津 他:小児科臨床68(8):1557-1567, 2015

 当クリニックでは、予防接種に関して保護者向けの勉強会を定期的に開催し、ワクチンで予防できる疾患(VPD)をワクチンで防ぐことの重要性について伝えてきました。参加された保護者の方々からは、ワクチンの副反応についての質問が寄せられ、予防接種の安全性に高い関心を持っていることがわかりました。保護者にワクチンの説明をする際には、予防接種をすることで将来病気から守られるという本来の意義を伝え、正しく理解していただくことが大切です。

 2020年の東京オリンピックでは、隣接する一宮町がサー

フィン会場になるため、いすみ市にも多くの外国人が訪れると予測され、オリンピック後も、海外からの観光客の増加することが考えられ、いすみ市から海外に行かれる方も多いと思い

接種費用公費助成が他の自治体にも広がれば多くの子どもたちの健康が守られる

ます。そこで、IPVの5回目接種で予防することが重要であると考えていました。 他の市町村でもIPV5回目接種のような任意接種に対する接種費用公費助成を実施していただければ、より多くの子どもの健康を守ることにつながります。全国の子どもが等しく接種の機会を得られるよう、多くの自治体が任意接種に対する接種費用公費助成を推進することを望みます。

兵庫県佐用町での不活化ポリオワクチン(IPV)の就学前の5回目接種に対する接種費用公費助成への取り組み

兵庫県佐用町は、子育て支援に力を入れており、任意

接種の接種費用公費助成を積極的に行ってきました。

2019年4月には不活化ポリオワクチン(IPV)の就学

前の5回目接種に対する接種費用公費助成を開始し

ました。全国で4例目となるこの取り組みについてご

紹介します。

 

佐用町

兵庫県と岡山県の県境に位置する佐用町は、日本の名水百選に選ばれた千種川が流れ、町の花であるひまわりが100万本超咲き誇り、美しい棚田が広がる豊かな自然に恵まれた町です。それと同時に、世界最高性能の大型放射光施設SPring-8や兵庫県立大学西はりま天文台などを有する国内有数の研究推進の舞台でもあります。

兵庫県立大学西はりま天文台千種川 ひまわり畑

(2019年5月現在)

人 口

世帯数

面 積

16,809人

6,892世帯

307.44km2

3

兵庫県

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 佐用町は中山間地域にあり、若い世代の流出などで人口

の減少が進んでいます。そこで、われわれは町を維持するためには人口を増やすことよりも、まずは住民が健康に暮らしながら地域を支える環境作りがより重要であると考え、これまで政策を打ち出してきました。なかでも子育て支援については町の重要な行政課題として取り組んでいます。子どもの健康や教育に関する制度を充実させることで、子どもたちが健康に育ち、町の将来を支えてくれるしっかりとした社会人

になることを願っています。 子育て支援に関する取り組みとして、子育て支援センターの設立や経済的な支援などを行ってきました。子育て支援センターは、人口が少なく相談相手が少ない中でも保護者が安心して子育てできるよう、子育て学習や支援を行う「ママプラザ」などを開設しています。経済的な支援としては、第二子以降の子どもを対象とした保育園の無償化のほか、給食費の補助、任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成(表)を行っています。任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成は、2013年におたふくかぜやロタウイルスなどのワクチンから開始し、2019年4月には不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)5回目接種も助成対象に加えました。

佐用町長 庵逧 典章 氏

任意接種に対する接種費用公費助成を行い町の子どもの健康を守る

子どもは町の未来を支える存在子育て支援を充実し、保護者の負担軽減を図る

医療法人社団 嗣業の会 外房こどもクリニック 院長 黒木 春郎 先生

接種費用公費助成と市民への啓発活動の重要性

 日本では、1961年からの経口生ポリオワクチン(OPV)接種

によりポリオの流行は終息し、野生株ポリオウイルスによる症例は1980年に確認されたのが最後になりました1)。しかし、世界的にみると、アフガニスタン、パキスタンなど現在でも流行している国が存在します2)。 グローバル化が進んだ現在は、日本から海外に行く人が増えているため3)、ポリオが発生している国を訪れる機会があるかもしれません。また、海外からの入国者数も増えています3)。ポリオウイルス感染者の多くは不顕性感染のため、感染に気づかないまま、多くの人と交流する可能性があります。過去の疾患というイメージがあるポリオですが、常に感染リスクがあることを忘れてはなりません。 日本では、2012年9月にOPV接種が不活化ポリオワクチン(IPV)に切り替わりました4)。IPVは、経時的に抗体価が下がるため、定期的に追加接種をする必要があります5)。日本ではIPVの定期接種は4回までであり、5回目は任意接種です。ポリオを防ぐためには、5回目接種が重要であると考えられます。 “Thinking globally, acting locally”という言葉があるように、ポリオは地球規模で根絶を目指し、地域レベルで行動する必要があり、その行動がワクチン接種であると思っています。

ポリオは過去の疾患ではない確実に防ぐためにワクチンの追加接種を

 勉強会は、予防接種に携わる自治体の職員の方に向けても

開催してきました。現場の担当の方々が予防接種の重要性を理解していることが大切だからです。接種費用公費助成の制度ができても、自治体の職員の方々が予防接種に消極的では、接種率が向上しない可能性があります。予防接種の意義をよく理解し、全国に先駆けて接種費用公費助成をしていることに誇りを持って、保護者の方々に接種を勧めていくことが接種率向上のために重要です。 また、公費助成がさらに広がるためには、市民の側に共助や互助の意識が育つ必要があります。公費助成は税金でまかなわれるものですから、負担する側も助成を受ける側もお互い助け合う必要があることを理解して、納得することが大切だと考えています。

自治体の現場担当者への啓発が予防接種の意義の理解につながる

 いすみ市では、2018年4月からIPVの就学前5回目接種に

対する公費助成を行っています。助成の効果は大きく、任意接種を受けるお子さんは、助成がなかった2017年度までほとんどいませんでしたが、助成開始後は当クリニックだけで100名を超えました。

IPV5回目接種の費用公費助成開始後接種率が向上 1) 国立感染症研究所:ポリオ(急性灰白髄炎・小児麻痺)とは

(2019年7月10日アクセス:https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/ 386-polio-intro.html)

2) Global Polio Eradication Initiative:THIS WEEK (2019年7月10日アクセス:http://polioeradication.org/polio-today/polio-now/this-week/)

3) 法務省:平成30年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について(確定値)(2019年7月10日アクセス:http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/ nyuukokukanri04_00080.html)

4) 厚生労働省:ポリオとポリオワクチンの基礎知識(2019年7月10日アクセス:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/qa.html)

5) 佐々木津 他:小児科臨床68(8):1557-1567, 2015

 当クリニックでは、予防接種に関して保護者向けの勉強会を定期的に開催し、ワクチンで予防できる疾患(VPD)をワクチンで防ぐことの重要性について伝えてきました。参加された保護者の方々からは、ワクチンの副反応についての質問が寄せられ、予防接種の安全性に高い関心を持っていることがわかりました。保護者にワクチンの説明をする際には、予防接種をすることで将来病気から守られるという本来の意義を伝え、正しく理解していただくことが大切です。

 2020年の東京オリンピックでは、隣接する一宮町がサー

フィン会場になるため、いすみ市にも多くの外国人が訪れると予測され、オリンピック後も、海外からの観光客の増加することが考えられ、いすみ市から海外に行かれる方も多いと思い

接種費用公費助成が他の自治体にも広がれば多くの子どもたちの健康が守られる

ます。そこで、IPVの5回目接種で予防することが重要であると考えていました。 他の市町村でもIPV5回目接種のような任意接種に対する接種費用公費助成を実施していただければ、より多くの子どもの健康を守ることにつながります。全国の子どもが等しく接種の機会を得られるよう、多くの自治体が任意接種に対する接種費用公費助成を推進することを望みます。

兵庫県佐用町での不活化ポリオワクチン(IPV)の就学前の5回目接種に対する接種費用公費助成への取り組み

兵庫県佐用町は、子育て支援に力を入れており、任意

接種の接種費用公費助成を積極的に行ってきました。

2019年4月には不活化ポリオワクチン(IPV)の就学

前の5回目接種に対する接種費用公費助成を開始し

ました。全国で4例目となるこの取り組みについてご

紹介します。

 

佐用町

兵庫県と岡山県の県境に位置する佐用町は、日本の名水百選に選ばれた千種川が流れ、町の花であるひまわりが100万本超咲き誇り、美しい棚田が広がる豊かな自然に恵まれた町です。それと同時に、世界最高性能の大型放射光施設SPring-8や兵庫県立大学西はりま天文台などを有する国内有数の研究推進の舞台でもあります。

兵庫県立大学西はりま天文台千種川 ひまわり畑

(2019年5月現在)

人 口

世帯数

面 積

16,809人

6,892世帯

307.44km2

3

兵庫県

Page 6: 不活化ポリオワクチン(IPV)の 就学前の5回目接種に対する ...SPJP.IPV.19.08.0163 2019年8月作成 不活化ポリオワクチン(IPV)の 就学前の5回目接種に対する

 日本では、ポリオは1960年代に流行が終息し、1980年に

野生株ポリオウイルスによる症例を最後に報告されていませんが、世界では現在も報告されています1)。私自身は医師としてポリオの症例を治療した経験はありませんが、ポリオの後遺症で麻痺が残った方とお会いしたことがあります。その方は、麻痺に加えて中高年になってからしびれや痛みなどの症状に苦しまれていました。子どもの頃に罹患した疾患で、何十年後に新たな症状で苦しむ姿を目の当たりにし、ワクチンでポリオを予防することへの思いが強くなりました。

 内科と小児科のクリニックとして開業してから34年間に

わたり地域医療を提供してきました。また、小児保健行政に携わり、保健師の方と健康診断の実施方法を確立するために意見を出し合ったり、行政へ予防接種に関する情報を提供したりしてきました。研修医時代に百日咳や麻しんによる重い脳症を発症したケースを何例か経験したことが予防接種へ積極的に取り組むようになった原点となっています。 2013年に佐用町でおたふくかぜやロタウイルスなどの任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成が始まったことで罹患症例が激減し、予防接種の効果を改めて実感しています。

5 6

表 佐用町における任意接種に対する接種費用公費助成

ワクチン名 対象年齢 自己負担金接種回数 助成内容不活化ポリオロタウイルス

就学前の1年間(年長児) 6,120円4,000円5,890円4,500円生後6~32週 3回

1回

おたふくかぜ

インフルエンザ

1歳以上の未就学児 4,270円3,000円

2,000円医療機関により異なる1歳~中学3年生 1回

2回

3,050円小学6年生で2種混合ワクチンを接種していない人 1回

3種混合就学前の1年間(年長児) 3,860円2,000円

2,000円

1回

 現在、訪日外国人は増えており2)、ポリオウイルスが日本に

持ち込まれるリスクがあります。日本では不活化ポリオワクチン(IPV)の定期接種は、1歳を対象とした4回目接種までですが3)、IPV4回目接種後の抗体価は経時的に低下します4)。海外には4歳以降にIPVの追加接種を行っている国があり5)、日本でもこのような取り組みが必要だと以前から考えていました。 2018年8月に、日本小児科学会は5歳以上6歳未満を対象としたIPV5回目接種を推奨し、予防接種スケジュールに組み入れました3)。小児科学会の推奨について、ポリオの症状や感染リスクなどの情報と共に佐用町へ伝えたところ、2019年4月からIPV5回目接種に対する接種費用公費助成が始まりました。 子どもたちの将来のためにも、ポリオウイルスに対する感染対策を行うことが大変重要であり、このような接種費用公費助成への取り組みが全国に広がることを期待しています。

1) 国立感染症研究所 ポリオ(急性灰白髄炎・小児麻痺)とは(2019年7月10日アクセス:https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/386-polio-intro.html)

2) 法務省:平成30年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について(確定値) (2019年7月10日アクセス:http://www.moj.go.jp/content/001289199.pdf)

3) 日本小児科学会:日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの変更点, 2018年8月1日版(2019年7月10日アクセス:https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/vaccine_schedule.pdf)

4) 佐々木津 他:小児科臨床68(8):1557-1567,20155) European Center for Disease Prevention and Control:Vaccine Scheduler(2019年7月10日アクセス:https://vaccine-schedule.ecdc.europa.eu/Scheduler/ByDisease?SelectedDiseaseId=4&SelectedCountryIdByDisease=-1)

接種費用公費助成で任意接種の接種率が向上ワクチンで予防できる疾患が減少

日本小児科学会の推奨でIPV5回目追加接種の重要性を再確認

二次障害に苦しむ可能性があるポリオワクチンで予防することが重要

岡本医院 岡本 泰子 先生

子どもの健康を守る地域の小児科医としてIPV5回目接種の意義を重視

任意接種に対する接種費用公費助成を通知保健師がIPV5回目接種の重要性を伝える

保健窓口担当者の声

佐用町健康福祉課 健康増進室

押田 淳子 氏

 佐用町では、保健師が新生児訪問の際に予防接種の重要性やスケジュールについて説明し、健診の際には母子手帳を確認して予防接種を行っていない場合は接種を勧めています。3歳以降の子どもには、接種時期が近づくと郵送による予防接種の通知を行っています。任意接種に対する接種費用公費助成についても同様に通知しており(図)、任意接種のIPV5回目接種の場合は、接種時期が定期接種の麻しん風しん混合(MR)ワクチン2期と重なるため、MRワクチンと一緒に通知するようにしています。

● 接種費用公費助成の内容(2019年4月1日開始)

IPV就学前追加接種 接種費用公費助成

予 防 接 種:助成対象者:

助 成 回 数:助 成 費 用:開 始 時 期:

不活化ポリオワクチン(通算5回目)就学前(年長児) 4種混合ワクチン接種後 6ヵ月以上経過後1回6,120円2019年4月1日

佐用町健康福祉課 健康増進室 室長

木村 昌子 氏

 公費助成は、町内の医療機関であれば手続きなしで受けることができます。IPV5回目接種に対する接種費用公費助成は開始からまだ3ヵ月ですが、接種の報告を受けています。ワクチンで感染症が予防できれば、子どもが健康でいられるだけでなく、看病などの保護者の負担も減り、子育てにゆとりができることでよい循環が生まれると考え、行政の重要な役割として取り組んでいます。

図 保護者への接種費用公費助成の通知

 子どもの健康について熱心に取り組んでおられる小児科医

の先生方から、ポリオの症状や感染リスク、IPVによる予防について詳しくお話しを聞く機会がありました。そこで、IPV5回目接種の重要性を知り、佐用町でも接種費用公費助成を

開始することにしました。接種費用公費助成の開始を判断した理由は、対策が後手に回らないように早めに取り組むほうがよいと考えたためです。佐用町が接種費用公費助成を実施したことで、町の子どもの健康が守られるだけでなく、ほかの自治体も必要性に気がつき助成を始めるようになれば、町としても助成を行った意義があるのではないかと考えています。

子育て支援の一環としてIPV5回目接種の接種費用公費助成を開始

岡本医院

Page 7: 不活化ポリオワクチン(IPV)の 就学前の5回目接種に対する ...SPJP.IPV.19.08.0163 2019年8月作成 不活化ポリオワクチン(IPV)の 就学前の5回目接種に対する

 日本では、ポリオは1960年代に流行が終息し、1980年に

野生株ポリオウイルスによる症例を最後に報告されていませんが、世界では現在も報告されています1)。私自身は医師としてポリオの症例を治療した経験はありませんが、ポリオの後遺症で麻痺が残った方とお会いしたことがあります。その方は、麻痺に加えて中高年になってからしびれや痛みなどの症状に苦しまれていました。子どもの頃に罹患した疾患で、何十年後に新たな症状で苦しむ姿を目の当たりにし、ワクチンでポリオを予防することへの思いが強くなりました。

 内科と小児科のクリニックとして開業してから34年間に

わたり地域医療を提供してきました。また、小児保健行政に携わり、保健師の方と健康診断の実施方法を確立するために意見を出し合ったり、行政へ予防接種に関する情報を提供したりしてきました。研修医時代に百日咳や麻しんによる重い脳症を発症したケースを何例か経験したことが予防接種へ積極的に取り組むようになった原点となっています。 2013年に佐用町でおたふくかぜやロタウイルスなどの任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成が始まったことで罹患症例が激減し、予防接種の効果を改めて実感しています。

5 6

表 佐用町における任意接種に対する接種費用公費助成

ワクチン名 対象年齢 自己負担金接種回数 助成内容不活化ポリオロタウイルス

就学前の1年間(年長児) 6,120円4,000円5,890円4,500円生後6~32週 3回

1回

おたふくかぜ

インフルエンザ

1歳以上の未就学児 4,270円3,000円

2,000円医療機関により異なる1歳~中学3年生 1回

2回

3,050円小学6年生で2種混合ワクチンを接種していない人 1回

3種混合就学前の1年間(年長児) 3,860円2,000円

2,000円

1回

 現在、訪日外国人は増えており2)、ポリオウイルスが日本に

持ち込まれるリスクがあります。日本では不活化ポリオワクチン(IPV)の定期接種は、1歳を対象とした4回目接種までですが3)、IPV4回目接種後の抗体価は経時的に低下します4)。海外には4歳以降にIPVの追加接種を行っている国があり5)、日本でもこのような取り組みが必要だと以前から考えていました。 2018年8月に、日本小児科学会は5歳以上6歳未満を対象としたIPV5回目接種を推奨し、予防接種スケジュールに組み入れました3)。小児科学会の推奨について、ポリオの症状や感染リスクなどの情報と共に佐用町へ伝えたところ、2019年4月からIPV5回目接種に対する接種費用公費助成が始まりました。 子どもたちの将来のためにも、ポリオウイルスに対する感染対策を行うことが大変重要であり、このような接種費用公費助成への取り組みが全国に広がることを期待しています。

1) 国立感染症研究所 ポリオ(急性灰白髄炎・小児麻痺)とは(2019年7月10日アクセス:https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/386-polio-intro.html)

2) 法務省:平成30年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について(確定値) (2019年7月10日アクセス:http://www.moj.go.jp/content/001289199.pdf)

3) 日本小児科学会:日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの変更点, 2018年8月1日版(2019年7月10日アクセス:https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/vaccine_schedule.pdf)

4) 佐々木津 他:小児科臨床68(8):1557-1567,20155) European Center for Disease Prevention and Control:Vaccine Scheduler(2019年7月10日アクセス:https://vaccine-schedule.ecdc.europa.eu/Scheduler/ByDisease?SelectedDiseaseId=4&SelectedCountryIdByDisease=-1)

接種費用公費助成で任意接種の接種率が向上ワクチンで予防できる疾患が減少

日本小児科学会の推奨でIPV5回目追加接種の重要性を再確認

二次障害に苦しむ可能性があるポリオワクチンで予防することが重要

岡本医院 岡本 泰子 先生

子どもの健康を守る地域の小児科医としてIPV5回目接種の意義を重視

任意接種に対する接種費用公費助成を通知保健師がIPV5回目接種の重要性を伝える

保健窓口担当者の声

佐用町健康福祉課 健康増進室

押田 淳子 氏

 佐用町では、保健師が新生児訪問の際に予防接種の重要性やスケジュールについて説明し、健診の際には母子手帳を確認して予防接種を行っていない場合は接種を勧めています。3歳以降の子どもには、接種時期が近づくと郵送による予防接種の通知を行っています。任意接種に対する接種費用公費助成についても同様に通知しており(図)、任意接種のIPV5回目接種の場合は、接種時期が定期接種の麻しん風しん混合(MR)ワクチン2期と重なるため、MRワクチンと一緒に通知するようにしています。

● 接種費用公費助成の内容(2019年4月1日開始)

IPV就学前追加接種 接種費用公費助成

予 防 接 種:助成対象者:

助 成 回 数:助 成 費 用:開 始 時 期:

不活化ポリオワクチン(通算5回目)就学前(年長児) 4種混合ワクチン接種後 6ヵ月以上経過後1回6,120円2019年4月1日

佐用町健康福祉課 健康増進室 室長

木村 昌子 氏

 公費助成は、町内の医療機関であれば手続きなしで受けることができます。IPV5回目接種に対する接種費用公費助成は開始からまだ3ヵ月ですが、接種の報告を受けています。ワクチンで感染症が予防できれば、子どもが健康でいられるだけでなく、看病などの保護者の負担も減り、子育てにゆとりができることでよい循環が生まれると考え、行政の重要な役割として取り組んでいます。

図 保護者への接種費用公費助成の通知

 子どもの健康について熱心に取り組んでおられる小児科医

の先生方から、ポリオの症状や感染リスク、IPVによる予防について詳しくお話しを聞く機会がありました。そこで、IPV5回目接種の重要性を知り、佐用町でも接種費用公費助成を

開始することにしました。接種費用公費助成の開始を判断した理由は、対策が後手に回らないように早めに取り組むほうがよいと考えたためです。佐用町が接種費用公費助成を実施したことで、町の子どもの健康が守られるだけでなく、ほかの自治体も必要性に気がつき助成を始めるようになれば、町としても助成を行った意義があるのではないかと考えています。

子育て支援の一環としてIPV5回目接種の接種費用公費助成を開始

岡本医院

Page 8: 不活化ポリオワクチン(IPV)の 就学前の5回目接種に対する ...SPJP.IPV.19.08.0163 2019年8月作成 不活化ポリオワクチン(IPV)の 就学前の5回目接種に対する

SPJP.IPV.19.08.01632019年8月作成

不活化ポリオワクチン(IPV)の就学前の5回目接種に対する接種費用公費助成への取り組み千葉県いすみ市

兵庫県佐用町