（第三種郵便物認可） ２０１２年１０月５日大阪歯科保険医新聞 （５、15、25日発行）（２）

　

「維新八策」の公表前

日、橋下氏は記者を前に

持論を語った。「風邪と

かちょっとしたことを専

門に扱う開業医が増えて

くる。公的医療保険制度

は見直さなきゃいけな

い。開業医の生活を安定

させるために日本医師会

は医療制度に指一本触れ

させようとしない」―

―。社会保障としての国

民皆保険制度を開業医の

〝既得権益〟に歪曲し、

患者・国民との対立を煽

り、「改革」を強調した。

　

翌日、「八策」には、

皆保険制度を崩壊に導く

政策が並んだ。保険がき

かない治療を拡大し、患

　

鳥の鳴かない日はあっ

ても、橋下徹と維新の会

が日々のニュースに登場

しない日は

ないともい

える異常現

象がある。

　

２月に実

施した「思想調査」アン

ケートに見られるよう

に、憲法に全面的に反す

る行為は、当然ながら大

阪府労働委員会から調査

を中止するように勧告さ

れた。この調査には一億

円近くの全く無駄な資金

を投入したという。これ

に加えて市職員の入れ墨

問題を取り上げ、市民感

情に訴えようとした。私

自身も入れ墨には良くな

いイメージを持っている

が、さらに良くないのが

博打（ばくち）だ。

　

橋下市長は知事時代か

ら、大阪に特区をつくっ

てでも、咲州地区にカジ

ノを設置して大阪の「繁

栄」に資するのだと言

う。賭博場が維新八策で

いう〝りんごのなる木の

土壌〟をつくるとでも言

うのだろうか。

　

入れ墨は悪で、博打は

善などという思考構造が

理解できない。

　

国政をめざす野望に向

かって進むにつれて、そ

の取りざたされている人

々や政策にも何の斬新さ

も見当たらないばかり

か、空恐ろしさを感じる。

　

橋下氏を熱烈に支持す

る人が若者を中心に多い

ことを老人である私はど

うにも理解できない。

　

果たして彼の言動に熱

烈に支持される様な内容

が存在するのであろう

か。立ち止まって少し吟

味してみれば、その実体

が明らかになるはずだ。

　

経済政策では、「国・

自治体・都市の競争力強

化」「競争力を重視する

自由経済」など、「競争

力強化」と称して、あら

ゆる規制「改革」に取り

組んでいく。ＴＰＰ参加

を明記し、「混合診療の完

全解禁」を通じて、国内

外の一部大企業のために

医療法で禁じられている

「医療の営利化」を狙う。

　

大阪で進めているベイ

　

総選挙での最大の争点

となる消費税増税の是非

については、一言も触れ

ていない。ただ、橋下氏

は、「決まったことは受

け入れる」と増税を認め

ている。「八策」では、

「消費税の地方税化」と

「地方交付税制度の廃

止」を盛り込んだ。

　

現行の消費税をすべて

地方税化すれば、地方の

税収が10・42兆円増え

る。しかし、地方交付税

の廃止で実質23兆円が不

足し、13兆円もの新たな

財源が必要になる。橋下

氏自身、「消費税を上げ

るか、サービスを削るし

かない」と語っている通

り、消費税率５％の引き

上げで13・５兆円を確保

するか、医療・福祉・保

育などのサービスを一律

２割削減することにな

る。そして、何より経済

規模による地域間の税収

格差が拡大する。

　

外交政策では、「日米

同盟を基軸」とし、オス

プレイ配備や米軍普天間

基地の辺野古移設を容認

する方向を示した。憲法

９条改憲のために「発議

要件の緩和」を明記。国

会改革は、衆院定数の半

減を打ち出す一方で、毎

年３２０億円の税金を要

する政党助成金の大半を

維持した。「企業・団体

献金の禁止」の一方で、

企業献金を受け取る意向

を示している。

　

「改革」をアピールす

る「八策」の実態は、自

己責任・自助・競争を基

本とする極端な新自由主

義政策であり、「構造改

革」路線の継承に過ぎな

い。社会保障削減・財界

優遇の硬直化した政策か

らの転換は望めない。

エリア開発や地下鉄新設

などの大規模公共事業を

全国規模で展開するた

め、「競争力強化のため

のインフラ整備」を打ち

出した。雇用政策では、

自由な〝首切り〟を認め

る「解雇規制の緩和」を

掲げ、不安定雇用を生む

「労働市場の流動化」を

盛り込んだ。

　

規制「改革」やＴＰＰ

参加、インフラ整備は、

日本経団連が要求し続け

てきた中心課題だ。開業

医を敵視する一方で、財

界に擦り寄る立場を鮮明

にしている。

　

「大企業が儲かれば景

気は良くなる」方式の経

済政策は、自民党政権時

代からの基本路線と変わ

らない。市場原理に偏っ

た小泉「構造改革」は、

非正規雇用を増大させ、

貧困と格差を拡大させ

た。大企業の内部留保は

増大し続けているが、日

本経済や国民生活は低迷

したままだ。

　

原発問題では、「先進

者に重い負担を強いる

「混合診療の完全解禁」、

「公的医療保険給付の重

症患者への重点化」を名

目にした「軽症患者の自

己負担増」、「公的保険の

範囲の見直し」など、徹

底した医療「改悪」を打

ち出している。

　

社会保障分野の基本方

針は、「社会保障費の合

理化・効率化」だ。「自

助・共助」を強調し、す

べての国民が享受すべき

社会保障を「真の弱者支

援」に矮小化。公的負担

の最大限の削減を狙う。

　

生活保護では、保護を

打ち切る「有期制」や、

「医療扶助の自己負担

制」を盛り込んだ。保護

水準以下の世帯の２割し

か保護できていない実態

を無視し、給付を絞り込

む。生活や健康を守る視

点は、見えてこない。

国をリードする脱原発依

存体制の構築」という一

文を加えたが、「原発ゼ

ロ」は打ち出していな

い。関西電力の言い分を

鵜呑みにして電力不足を

盛んに強調し、大飯原発

再稼動を容認した政治的

立場を反映している。

皆保険壊す「維新八策」

「維新八策」の主な内容

国家像自立する個人、自立する地域、自立する国家道州制が最終形

社会保障

社会保障給付費の合理化・効率化生活保護の有期化、医療扶助の自己負担導入混合診療の完全解禁、公的保険の範囲の見直し、軽症患者の自己負担増国民総背番号制の導入

経済・雇用

TPP参加、FTA拡大競争力強化のためのインフラ整備解雇規制の緩和を含む労働市場の流動化

税制 消費税の地方税化、地方交付税制度の廃止

国会

首相公選制、衆議院定数の半減憲法改定発議要件の緩和、憲法９条を変える国民投票

入れ墨「悪」で博打は「善」？

玉川和隆（城東区）

談話室　だんわ室

　

消費税や原発問題を通じて自民・民主の二大政党に対する不信が広がるな

か、テレビや新聞は連日、橋下徹大阪市長率いる「日本維新の会」を第３極と

して持ち上げている。維新の会は国民や歯科医師の切実な願いに応えることが

できるのか。８月末に公表した「維新八策（案）」の内容を解説する。

開業医は〝既得権〟

軽症患者は負担増

ＴＰＰに参加して

混合診療完全解禁

消費税で格差拡大

９条改憲もくろむ

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