32
Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top issues facing the oil and gas sector (日本語訳版)

Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 [email protected] 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

Oil and Gas Reality Check 2014A look at the top issues facing the oil and gas sector(日本語訳版)

Member of Deloitte Touche Tohmatsu Limited© 2014. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.

トーマツグループは日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)のメンバーファームおよびそれらの関係会社(有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング株式会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社および税理士法人トーマツを含む)の総称です。トーマツグループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各社がそれぞれの適用法令に従い、監査、税務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています。また、国内約40

都市に約7,600名の専門家(公認会計士、税理士、コンサルタントなど)を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はトーマツグループWebサイト(www.tohmatsu.com)をご覧ください。 

Deloitte(デロイト)は、監査、税務、コンサルティングおよびファイナンシャル アドバイザリーサービスを、さまざまな業種にわたる上場・非上場のクライアントに提供しています。全世界150を超える国・地域のメンバーファームのネットワークを通じ、デロイトは、高度に複合化されたビジネスに取り組むクライアントに向けて、深い洞察に基づき、世界最高水準の陣容をもって高品質なサービスを提供しています。デロイトの約200,000名を超える人材は、“standard of excellence”となることを目指しています。 

Deloitte(デロイト)とは、英国の法令に基づく保証有限責任会社であるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(“DTTL”)ならびにそのネットワーク組織を構成するメンバーファームおよびその関係会社のひとつまたは複数を指します。DTTLおよび各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した別個の組織体です。DTTL(または“Deloitte Global”)はクライアントへのサービス提供を行いません。DTTLおよびそのメンバーファームについての詳細は www.tohmatsu.com/deloitte/ をご覧ください。

本資料は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本資料の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本資料の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

Page 2: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

1

2

9

12

18

21

25

26

はじめに

グローバルエネルギー:北米の革命

エネルギー供給:新たな供給元、新たな地政学

エネルギーミックス:グローバルな燃料序列の変化

エネルギー生産:新たなプロジェクト管理戦略を必要とする石油ガスのメガプロジェクト

エネルギーのナショナリズム:「欲望」、「恐れ」、「プライド」が原動力

資源エネルギーグループのご紹介

出典

はじめに

昨年度版の石油ガス産業の現状報告書では、新しいアプローチが提示さ

れました。単に業界にとって興味深い問題を特定するのではなく、5つの主

な課題に着目し、これらのトレンドが進むと考えられる方向性の予測を試

みました。大胆で刺激的な、このアプローチは、好評を博しました。2014

年度版の石油ガス産業の現状報告書では、この枠組みを基盤として、5つ

のメイントピックについて包括的な考察を行い、それぞれが業界の参加者

および資源所有者に対して呈する問題をまとめます。読者の皆様の中には

2013年度版の石油ガス産業の現状報告書で提示されたトピックとの重

複を感じる方もおられるかと思いますが、今年度のテーマに関連する示唆

や推測の多くは異なるものであり、年が変わることでそれぞれの根底をな

す業界の原理にも変化がもたらされています。これらの原理には、マクロ

経済の状況や、需要と供給のバランス、規制の構図、コストの構成要素、商

品価格、競争行動、地政学的な影響(現在は特に顕著である)、そしてこれ

に関連した外交ツールとしてのエネルギー利用が含まれます。

包括的なテーマという点で、石油ガス産業の現状報告書2014年度版で

は、多くの領域についての拡大や縮小を採り上げています。具体的には、

「供給者間の優位の増大と減退」、「天然ガス市場における地域化からグ

ローバル化への進展と原油市場におけるその逆行」、「グローバルなエネ

ルギーミックスにおける、いくつかの化石燃料でのシェア増加とその他の

化石燃料での役割の減退」、「利益の縮小にもかかわらず(あるいはおそら

く縮小しているからこそ)起こっている投資プロジェクトの不釣り合いな

までに大規模な膨張」、そして「地政学的懸念に対応した国境の開放/閉

鎖と、需要/供給状況の転換」が挙げられます。

本報告書ではまず、北米のエネルギー革命から始め、なかでも米国を相対

的なエネルギー自給へと近づけたシェールガスブームに着目します。数年

前にはまったく思いもよらなかったことですが、米国が「輸入大国」から「ま

もなく輸出国になる国」に転換したことによる波及効果は現在、中東やロ

シア、中国にも到達しています。この非依存性が、結果として孤立主義をさ

らに助長し、国際問題に関与し続けることへの躊躇を高めると懸念する人

もいます。しかしながら私たちは、新たな供給源の存在や、(特にアジア太

平洋地域の)需要に対する競争激化が世界的な地政学的展望を再形成し、

国家間の相互依存性を(低めるどころか)高めるため、そのシナリオはあり

えないだろうと考えています。同時にグローバルなエネルギーミックスに

おけるクリーンな燃料への移行は、天然ガスのクローバル化の流れにおい

て、天然ガスにとって(ひいてはLNGにとって)良い前兆だと言えます。こ

こでは、需要と供給の増大がLNGの代替性を増幅させており、原油連動

価格にプレッシャーを与えるとともに、価格に柔軟性があって目的地の方

向転換が可能な契約オプションの検討を余儀なくさせています。

こうしたトレンドの渦中にあって、石油とガスの両方でグローバルな需要

と供給のバランスをとるには、新開地におけるメガプロジェクトの管理に

対して従来とは異なるアプローチが要求されます。これはまた、ナショナ

リズム的な政策(=諸刃の剣であることも多く、既存の国内市場を保護す

る一方で、生産の拡大の見込みを制限するものである)の緩和もさらに助

長すると考えられます。

石油ガス産業の現状報告書2014年度版は、弊社チームが発見した事柄

を、弊社のパートナー企業や顧客、業界幹部による専門的な見解によって

補完したものです。業界の基本を再検証することをテーマに据えたリサー

チと分析を行い、政策決定者やエネルギー市場の業者やアナリスト、エネ

ルギー生産者および消費者など、規模の大小、民間・政府を問わずさまざ

まな関与者からの意見を網羅しました。

もしこの報告書が、ウクライナやバルト海沿岸諸国、西欧における危機に

関連した現在の地政学的展開を無視していたなら、私たちの分析は間違っ

たものになったでしょう。本報告書で独立した項目として扱っているわけ

ではありませんが、こうした地政学的展開がグローバルなエネルギーに対

して影響を持つかもしれないことは間違いありません。これに関連する地

政学的な原動力は、本報告書で扱うトピックのうち少なくとも2つに織り

込んでいます。ただし相対的に見ると、ウクライナの状況がグローバルな

エネルギーの枠組みに対して持つ影響は、北米のシェールガスの発展がエ

ネルギー自給につながり、そしておそらくはエネルギー輸出国としての新

たな役割につながっていくことに比べると少ないものでしょう。

本報告書の編纂は、ダイナミックな試みです。今年度の報告書をまとめる

にあたり、次年の報告書の意見収集にも着手する必要があります。そのた

め、今年度の報告書で取り上げられなかった点、次年度の報告書に含まれ

るべき新しい項目、業界全体についての所感など、ご意見や助言をお寄せ

いただけましたら幸いです。本報告書の25ページに記載している資源エ

ネルギーグループのメンバーへご連絡いただくか、私に直接Eメールをお

送りください。

ご協力いただいた皆様のご見識とご助言に感謝しますとともに、本報告書

が皆様にとって役立ち、信頼に値し、有用なものであることを願ってやみま

せん。

アディ・カレブ

Global Leader – Oil & Gas

Deloitte Touche Tohmatsu Limited

Tel: +852 6838 6631

[email protected]

目次

石油ガス産業の現実を検証する:2014石油ガス産業が直面する最重要課題*Deloitte Globalが発行した小冊子の日本語訳です

Page 3: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

1

2

9

12

18

21

25

26

はじめに

グローバルエネルギー:北米の革命

エネルギー供給:新たな供給元、新たな地政学

エネルギーミックス:グローバルな燃料序列の変化

エネルギー生産:新たなプロジェクト管理戦略を必要とする石油ガスのメガプロジェクト

エネルギーのナショナリズム:「欲望」、「恐れ」、「プライド」が原動力

資源エネルギーグループのご紹介

出典

はじめに

昨年度版の石油ガス産業の現状報告書では、新しいアプローチが提示さ

れました。単に業界にとって興味深い問題を特定するのではなく、5つの主

な課題に着目し、これらのトレンドが進むと考えられる方向性の予測を試

みました。大胆で刺激的な、このアプローチは、好評を博しました。2014

年度版の石油ガス産業の現状報告書では、この枠組みを基盤として、5つ

のメイントピックについて包括的な考察を行い、それぞれが業界の参加者

および資源所有者に対して呈する問題をまとめます。読者の皆様の中には

2013年度版の石油ガス産業の現状報告書で提示されたトピックとの重

複を感じる方もおられるかと思いますが、今年度のテーマに関連する示唆

や推測の多くは異なるものであり、年が変わることでそれぞれの根底をな

す業界の原理にも変化がもたらされています。これらの原理には、マクロ

経済の状況や、需要と供給のバランス、規制の構図、コストの構成要素、商

品価格、競争行動、地政学的な影響(現在は特に顕著である)、そしてこれ

に関連した外交ツールとしてのエネルギー利用が含まれます。

包括的なテーマという点で、石油ガス産業の現状報告書2014年度版で

は、多くの領域についての拡大や縮小を採り上げています。具体的には、

「供給者間の優位の増大と減退」、「天然ガス市場における地域化からグ

ローバル化への進展と原油市場におけるその逆行」、「グローバルなエネ

ルギーミックスにおける、いくつかの化石燃料でのシェア増加とその他の

化石燃料での役割の減退」、「利益の縮小にもかかわらず(あるいはおそら

く縮小しているからこそ)起こっている投資プロジェクトの不釣り合いな

までに大規模な膨張」、そして「地政学的懸念に対応した国境の開放/閉

鎖と、需要/供給状況の転換」が挙げられます。

本報告書ではまず、北米のエネルギー革命から始め、なかでも米国を相対

的なエネルギー自給へと近づけたシェールガスブームに着目します。数年

前にはまったく思いもよらなかったことですが、米国が「輸入大国」から「ま

もなく輸出国になる国」に転換したことによる波及効果は現在、中東やロ

シア、中国にも到達しています。この非依存性が、結果として孤立主義をさ

らに助長し、国際問題に関与し続けることへの躊躇を高めると懸念する人

もいます。しかしながら私たちは、新たな供給源の存在や、(特にアジア太

平洋地域の)需要に対する競争激化が世界的な地政学的展望を再形成し、

国家間の相互依存性を(低めるどころか)高めるため、そのシナリオはあり

えないだろうと考えています。同時にグローバルなエネルギーミックスに

おけるクリーンな燃料への移行は、天然ガスのクローバル化の流れにおい

て、天然ガスにとって(ひいてはLNGにとって)良い前兆だと言えます。こ

こでは、需要と供給の増大がLNGの代替性を増幅させており、原油連動

価格にプレッシャーを与えるとともに、価格に柔軟性があって目的地の方

向転換が可能な契約オプションの検討を余儀なくさせています。

こうしたトレンドの渦中にあって、石油とガスの両方でグローバルな需要

と供給のバランスをとるには、新開地におけるメガプロジェクトの管理に

対して従来とは異なるアプローチが要求されます。これはまた、ナショナ

リズム的な政策(=諸刃の剣であることも多く、既存の国内市場を保護す

る一方で、生産の拡大の見込みを制限するものである)の緩和もさらに助

長すると考えられます。

石油ガス産業の現状報告書2014年度版は、弊社チームが発見した事柄

を、弊社のパートナー企業や顧客、業界幹部による専門的な見解によって

補完したものです。業界の基本を再検証することをテーマに据えたリサー

チと分析を行い、政策決定者やエネルギー市場の業者やアナリスト、エネ

ルギー生産者および消費者など、規模の大小、民間・政府を問わずさまざ

まな関与者からの意見を網羅しました。

もしこの報告書が、ウクライナやバルト海沿岸諸国、西欧における危機に

関連した現在の地政学的展開を無視していたなら、私たちの分析は間違っ

たものになったでしょう。本報告書で独立した項目として扱っているわけ

ではありませんが、こうした地政学的展開がグローバルなエネルギーに対

して影響を持つかもしれないことは間違いありません。これに関連する地

政学的な原動力は、本報告書で扱うトピックのうち少なくとも2つに織り

込んでいます。ただし相対的に見ると、ウクライナの状況がグローバルな

エネルギーの枠組みに対して持つ影響は、北米のシェールガスの発展がエ

ネルギー自給につながり、そしておそらくはエネルギー輸出国としての新

たな役割につながっていくことに比べると少ないものでしょう。

本報告書の編纂は、ダイナミックな試みです。今年度の報告書をまとめる

にあたり、次年の報告書の意見収集にも着手する必要があります。そのた

め、今年度の報告書で取り上げられなかった点、次年度の報告書に含まれ

るべき新しい項目、業界全体についての所感など、ご意見や助言をお寄せ

いただけましたら幸いです。本報告書の25ページに記載している資源エ

ネルギーグループのメンバーへご連絡いただくか、私に直接Eメールをお

送りください。

ご協力いただいた皆様のご見識とご助言に感謝しますとともに、本報告書

が皆様にとって役立ち、信頼に値し、有用なものであることを願ってやみま

せん。

アディ・カレブ

Global Leader – Oil & Gas

Deloitte Touche Tohmatsu Limited

Tel: +852 6838 6631

[email protected]

目次

石油ガス産業の現実を検証する:2014石油ガス産業が直面する最重要課題*Deloitte Globalが発行した小冊子の日本語訳です

1石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 4: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

非OPEC国における原油および液体燃料の生産成長

出典:短期エネルギー展望、2013年3月

3.50

2.50

1.50

0.50

–0.50

■ 2015年  ■ 2014年  ■ 2013年

かつてはOPEC第2位の生産国だったイランに対する石油ガス輸入制限による制裁は、数年前まではまったく思いもよらないことだった。

この数十年苦戦を強いられてきた米国の製造業界でさえ、

エネルギー本位での復権の時を待ち構えている。たとえば

米国の鉄鋼業は、次の2つの面でその恩恵を受益できる。1

つは石油ガス産業からの掘削機や油井管・パイプラインに

対する需要の増加、もう1つは操業コストの低下だ。このた

め、ニューコアやUSスチール、バローレックといった米国の

鉄鋼業者は、いずれも新たな設備を増強するプランを発表

済みだ。全米製造業者協会は、その全部門においてシェール

ガスの生産に由来する製造業者のコスト削減額は年間110

億ドルほどになると見積もっている。これにより、米国の国際

的な競合力はさらに高まっている。アリックスパートナーズ

によると、中国での製造コストは2015年には米国内での

製造コストと同等になるという。これは、米国における操業コ

ストの低下と、中国における人件費の増加やエネルギーコ

ストの高騰、人民元高との相乗効果によるものだ8。

エネルギーと経済の自立を前提として、評論家の中には、

米国が国内の問題に集中するために内向きに方向転換を

行い、結果として外交政策が損なわれてしまうのではない

かと懸念する向きもある。これによって、中国やロシア、中

東、アフリカにまたがる米国の国益の相関的なバランスに

変化が起きる可能性があると考える人もいる。

同時に、かつては輸入国と輸出国を互恵的な長期契約で結

びつけていたグローバルなエネルギー貿易も、近年はます

ます「短期的な契約」と、前もって定義された条件下での交

渉の余地を残した「逃げ道条項」の組み合わせであることが

特徴となってきている。長期契約から遠のいたこの傾向に

よって、国際的な貿易関係は条件が変われば速やかに変更

や解消ができる「政略結婚」へと変化しつつある。しかしな

がら最近ロシアと中国の間で発表された長期のガス供給契

約は、この原則の存在を証明する例外となり得るだろう。

米国・中東の関係性

米国のエネルギールネッサンスは、同国の地政学的情勢に

も広範囲に影響を及ぼすだろう。もし米国が自国のための

エネルギーをより多く産出できるとすれば、中東からの供

給に対する依存が低減する。国際エネルギー機関(IEA)

は、米国で国内の生産が増加すると、2035年までに原油

供給のわずか3%しか中東から得ないようになると予測し

ている9。中東における12年間におよぶ戦争を経て増加し

た新孤立主義的な感情とも相まって、この転換は「米国が

不安定な中東の地政学的なしがらみからまもなく抜け出

せるのではないか」との見解にもつながっている。中東の

原油輸出は、西の欧米諸国よりも東のアジアに向けたもの

が多くなってきているため、こちらも転換があるものと見

込まれている。

グローバルエネルギー:北米の革命

北米におけるシェール層の開放は、米国に転換を巻き起こ

している。最初に影響が感じられたのは天然ガス市場で、

ヘンリーハブ価格が2008年の13ドル/百万イギリス熱

単位(Btu)以上から2012年には2ドル/百万Btu以下に

下落した1。今や米国は、米国エネルギー情報局(EIA)の予

測で、2010年代の終わりまでには天然ガスの純輸出国に

なる国として位置づけられている2。この変化は、原油市場

においては驚き以外の何物でもない。タイトオイル(シェー

ル層で発見された原油のタイプ)の米国での生産量は、

2008年には5MMbbl/d(百万バレル/日)強にすぎな

かったが、2013年には7.4百万バレル/日以上に増加し

た。これは米国の石油生産史上、5年単位では最大の増加

幅である3。生産量が急増し、ブレントがウエスト・テキサ

ス・インターミディエート(WTI)に対してプレミアム価格で

取引される中、政府はすでに米国の原油輸出に対する禁

止撤廃を検討し始めている。この政策転換は、プレミアム

価格で取引されるスイート原油の輸出を上流部門に対し

て可能にしたり、安値で売られているより重質なサワーバ

レルの輸入を下流部門に対して可能にするなど、米国経済

の利益を最大化するポテンシャルを秘めている。これは、

より高含量の硫黄分を使ってより重質な原油を精製する

よう作られている米国の精製業界の強みを利用するもの

である。これはすべて、米国の石油製品に対する「ピーク需

要」が2005年の22百万バレル/日強から2013年には

18.9百万バレル/日に下がったタイミングで起こってお

り4、長期的な需要は2040年に18.6百万バレル/日へと

わずかに下がるだけで、今後は安定するものと見込まれて

いる5。

国内でのエネルギー生産が成長した結果、米国はいっそう

経済的に独立した国家になろうとしている。石油関連の貿

易赤字は、2008年の3,860億ドルから2013年には

2,320億ドルに縮小した6。この低下は、原油価格の高値

(現在は100ドル/バレル以上)がこれらの数字に対して

上昇圧力をかけているため、最初の印象よりもさらに顕著

なものとなっている。米国精製業界の競合力の成長によっ

て実現された精製製品の純輸出増加もまた、このバランス

を押し下げている。2008年、米国は精製製品1.4百万バ

レル/日の純輸入国だったが、2013年には精製製品1.3

百万バレル/日の純輸出国になった。天然ガスだけを見る

とさらに劇的な転換を示しており、米国の天然ガス貿易赤

字は2008年の260億ドルから2013年にはわずか40

億ドルに縮小している7。

同様に、国内でのエネルギー生産増加は米国の競合力にも

恩恵を与えている。米国のビジネスではオフショアリングが

数十年にわたるトレンドだが、一方で企業は、低コストのエ

ネルギーや高度な訓練を受けた人材の活用を求めつつ、知

的財産のリスクや拡張された供給チェーン管理という課題

を避けるため、リショアリングの傾向が高まっている。数年

前には低コストの中東諸国を支持して米国から逃げ出して

いた石油化学産業もまた戻ってきている。米国化学工業協

会によると、国内の天然ガス価格がコスト競争力を高めた

結果、150近い化学産業のプロジェクト(合計1,000億ド

ル以上の規模に達する)が米国で発表されているという。こ

れらの多くは輸出本位のプロジェクトであり、これがさらに

米国の貿易赤字低減を推進してくれるものと思われる。

しかしながら私たちは、米国の中東からの撤退は誇張だと

考えている。世界の原油市場の代替性を考えると、中東が

今後も原油の大きな輸入源であり続けるか否かにかかわ

らず、中東の原油供給の途絶は米国の国内市場にも反響し

て返ってくる。さらに、同地域の不安定さは、「アラブの春」

以来の「新たな常態」として継続する。米軍が同地域におけ

る勢力均衡を維持するための明確な代替手段がなく、そし

て守るべき重要な同盟がある限り、米国は当面の間は関与

し続けることになるだろう。

中東地域への米国の関与はまた、同地域の豊富なエネル

ギー供給よりもさらに幅広い外交政策の議題(アジェン

ダ)にも組み込まれている。米国は世界的な規模でテロ対

策活動を展開しているほか、核拡散防止条約の署名国とし

て、イランの核開発計画について同国との交渉にも大きく

注力している。こうした交渉を背景に、米国の国内石油ガ

ス生産量の増加は、イランに対するエネルギー関連の制

裁という形での新たな外交的武器として機能している。エ

ネルギー輸入国はイランの原油輸出量をおよそ1百万バレ

ル/日までに削減することが可能で、これによって同政府

の重大な収入源を拒絶することができる10。イラン産の原

油に対する需要の縮小を可能にしているのは、世界市場を

安定化できるサウジアラビアの余剰生産能力や、急成長中

のイラクの供給量だけではない。世界有数のエネルギー

消費国である米国もまた今後、まだ見ぬ新たな生産という

形で余剰生産能力を所有することになる。かつてはOPEC

第2位の生産国だったイランに対する石油ガス輸入制限

による制裁は、数年前まではまったく思いもよらないこと

だった。北米のエネルギー革命は、米国の中東地域に対す

る関心を低めるのではなく、むしろ自らが選択した地域紛

争にのみ介在したり、外交交渉における同国の交渉力を高

めるなど、米国にいっそうの力を与えているようだ。

ロシアと欧州

北米のエネルギー革命は、世界のエネルギー市場における

ロシアのポジションを複雑にしている。ロシアはかつて、世

界の大手ガス会社を結合してOPECに匹敵する組織を作ろ

うとしていたが、2009年に米国が世界最大の天然ガス生

産国としてロシアを上回ったため、この考えは捨てざるを得

なくなった11。とはいえ、欧州連合(EU)やバルカン諸国、ノ

ルウェー、スイス、トルコは、年間ほぼ19兆立方フィート

(Tcf)の天然ガスに対するニーズの30%をいまだロシア

に依存している12。各国のロシアに対する依存レベルはそれ

ぞれ異なるが、西から東に目を向けると一般的には増加して

いることが分かる。たとえばウクライナは60%のガスをロ

シアから得ており、言うまでもなく、ロシアから欧州へのガ

ス供給の半分以上はこの国を経由して輸送されている。

百万バレル/日

米国

カナダ

ロシア

中国

カザフスタン

スーダン

オマーン

ブラジル

コロンビア

その他北海

マレーシア

インド

ベトナム

ガボン

オーストラリア

エジプト

ノルウェー

メキシコ

アゼルバイジャン

シリア

英国

2

Page 5: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

非OPEC国における原油および液体燃料の生産成長

出典:短期エネルギー展望、2013年3月

3.50

2.50

1.50

0.50

–0.50

■ 2015年  ■ 2014年  ■ 2013年

かつてはOPEC第2位の生産国だったイランに対する石油ガス輸入制限による制裁は、数年前まではまったく思いもよらないことだった。

この数十年苦戦を強いられてきた米国の製造業界でさえ、

エネルギー本位での復権の時を待ち構えている。たとえば

米国の鉄鋼業は、次の2つの面でその恩恵を受益できる。1

つは石油ガス産業からの掘削機や油井管・パイプラインに

対する需要の増加、もう1つは操業コストの低下だ。このた

め、ニューコアやUSスチール、バローレックといった米国の

鉄鋼業者は、いずれも新たな設備を増強するプランを発表

済みだ。全米製造業者協会は、その全部門においてシェール

ガスの生産に由来する製造業者のコスト削減額は年間110

億ドルほどになると見積もっている。これにより、米国の国際

的な競合力はさらに高まっている。アリックスパートナーズ

によると、中国での製造コストは2015年には米国内での

製造コストと同等になるという。これは、米国における操業コ

ストの低下と、中国における人件費の増加やエネルギーコ

ストの高騰、人民元高との相乗効果によるものだ8。

エネルギーと経済の自立を前提として、評論家の中には、

米国が国内の問題に集中するために内向きに方向転換を

行い、結果として外交政策が損なわれてしまうのではない

かと懸念する向きもある。これによって、中国やロシア、中

東、アフリカにまたがる米国の国益の相関的なバランスに

変化が起きる可能性があると考える人もいる。

同時に、かつては輸入国と輸出国を互恵的な長期契約で結

びつけていたグローバルなエネルギー貿易も、近年はます

ます「短期的な契約」と、前もって定義された条件下での交

渉の余地を残した「逃げ道条項」の組み合わせであることが

特徴となってきている。長期契約から遠のいたこの傾向に

よって、国際的な貿易関係は条件が変われば速やかに変更

や解消ができる「政略結婚」へと変化しつつある。しかしな

がら最近ロシアと中国の間で発表された長期のガス供給契

約は、この原則の存在を証明する例外となり得るだろう。

米国・中東の関係性

米国のエネルギールネッサンスは、同国の地政学的情勢に

も広範囲に影響を及ぼすだろう。もし米国が自国のための

エネルギーをより多く産出できるとすれば、中東からの供

給に対する依存が低減する。国際エネルギー機関(IEA)

は、米国で国内の生産が増加すると、2035年までに原油

供給のわずか3%しか中東から得ないようになると予測し

ている9。中東における12年間におよぶ戦争を経て増加し

た新孤立主義的な感情とも相まって、この転換は「米国が

不安定な中東の地政学的なしがらみからまもなく抜け出

せるのではないか」との見解にもつながっている。中東の

原油輸出は、西の欧米諸国よりも東のアジアに向けたもの

が多くなってきているため、こちらも転換があるものと見

込まれている。

グローバルエネルギー:北米の革命

北米におけるシェール層の開放は、米国に転換を巻き起こ

している。最初に影響が感じられたのは天然ガス市場で、

ヘンリーハブ価格が2008年の13ドル/百万イギリス熱

単位(Btu)以上から2012年には2ドル/百万Btu以下に

下落した1。今や米国は、米国エネルギー情報局(EIA)の予

測で、2010年代の終わりまでには天然ガスの純輸出国に

なる国として位置づけられている2。この変化は、原油市場

においては驚き以外の何物でもない。タイトオイル(シェー

ル層で発見された原油のタイプ)の米国での生産量は、

2008年には5MMbbl/d(百万バレル/日)強にすぎな

かったが、2013年には7.4百万バレル/日以上に増加し

た。これは米国の石油生産史上、5年単位では最大の増加

幅である3。生産量が急増し、ブレントがウエスト・テキサ

ス・インターミディエート(WTI)に対してプレミアム価格で

取引される中、政府はすでに米国の原油輸出に対する禁

止撤廃を検討し始めている。この政策転換は、プレミアム

価格で取引されるスイート原油の輸出を上流部門に対し

て可能にしたり、安値で売られているより重質なサワーバ

レルの輸入を下流部門に対して可能にするなど、米国経済

の利益を最大化するポテンシャルを秘めている。これは、

より高含量の硫黄分を使ってより重質な原油を精製する

よう作られている米国の精製業界の強みを利用するもの

である。これはすべて、米国の石油製品に対する「ピーク需

要」が2005年の22百万バレル/日強から2013年には

18.9百万バレル/日に下がったタイミングで起こってお

り4、長期的な需要は2040年に18.6百万バレル/日へと

わずかに下がるだけで、今後は安定するものと見込まれて

いる5。

国内でのエネルギー生産が成長した結果、米国はいっそう

経済的に独立した国家になろうとしている。石油関連の貿

易赤字は、2008年の3,860億ドルから2013年には

2,320億ドルに縮小した6。この低下は、原油価格の高値

(現在は100ドル/バレル以上)がこれらの数字に対して

上昇圧力をかけているため、最初の印象よりもさらに顕著

なものとなっている。米国精製業界の競合力の成長によっ

て実現された精製製品の純輸出増加もまた、このバランス

を押し下げている。2008年、米国は精製製品1.4百万バ

レル/日の純輸入国だったが、2013年には精製製品1.3

百万バレル/日の純輸出国になった。天然ガスだけを見る

とさらに劇的な転換を示しており、米国の天然ガス貿易赤

字は2008年の260億ドルから2013年にはわずか40

億ドルに縮小している7。

同様に、国内でのエネルギー生産増加は米国の競合力にも

恩恵を与えている。米国のビジネスではオフショアリングが

数十年にわたるトレンドだが、一方で企業は、低コストのエ

ネルギーや高度な訓練を受けた人材の活用を求めつつ、知

的財産のリスクや拡張された供給チェーン管理という課題

を避けるため、リショアリングの傾向が高まっている。数年

前には低コストの中東諸国を支持して米国から逃げ出して

いた石油化学産業もまた戻ってきている。米国化学工業協

会によると、国内の天然ガス価格がコスト競争力を高めた

結果、150近い化学産業のプロジェクト(合計1,000億ド

ル以上の規模に達する)が米国で発表されているという。こ

れらの多くは輸出本位のプロジェクトであり、これがさらに

米国の貿易赤字低減を推進してくれるものと思われる。

しかしながら私たちは、米国の中東からの撤退は誇張だと

考えている。世界の原油市場の代替性を考えると、中東が

今後も原油の大きな輸入源であり続けるか否かにかかわ

らず、中東の原油供給の途絶は米国の国内市場にも反響し

て返ってくる。さらに、同地域の不安定さは、「アラブの春」

以来の「新たな常態」として継続する。米軍が同地域におけ

る勢力均衡を維持するための明確な代替手段がなく、そし

て守るべき重要な同盟がある限り、米国は当面の間は関与

し続けることになるだろう。

中東地域への米国の関与はまた、同地域の豊富なエネル

ギー供給よりもさらに幅広い外交政策の議題(アジェン

ダ)にも組み込まれている。米国は世界的な規模でテロ対

策活動を展開しているほか、核拡散防止条約の署名国とし

て、イランの核開発計画について同国との交渉にも大きく

注力している。こうした交渉を背景に、米国の国内石油ガ

ス生産量の増加は、イランに対するエネルギー関連の制

裁という形での新たな外交的武器として機能している。エ

ネルギー輸入国はイランの原油輸出量をおよそ1百万バレ

ル/日までに削減することが可能で、これによって同政府

の重大な収入源を拒絶することができる10。イラン産の原

油に対する需要の縮小を可能にしているのは、世界市場を

安定化できるサウジアラビアの余剰生産能力や、急成長中

のイラクの供給量だけではない。世界有数のエネルギー

消費国である米国もまた今後、まだ見ぬ新たな生産という

形で余剰生産能力を所有することになる。かつてはOPEC

第2位の生産国だったイランに対する石油ガス輸入制限

による制裁は、数年前まではまったく思いもよらないこと

だった。北米のエネルギー革命は、米国の中東地域に対す

る関心を低めるのではなく、むしろ自らが選択した地域紛

争にのみ介在したり、外交交渉における同国の交渉力を高

めるなど、米国にいっそうの力を与えているようだ。

ロシアと欧州

北米のエネルギー革命は、世界のエネルギー市場における

ロシアのポジションを複雑にしている。ロシアはかつて、世

界の大手ガス会社を結合してOPECに匹敵する組織を作ろ

うとしていたが、2009年に米国が世界最大の天然ガス生

産国としてロシアを上回ったため、この考えは捨てざるを得

なくなった11。とはいえ、欧州連合(EU)やバルカン諸国、ノ

ルウェー、スイス、トルコは、年間ほぼ19兆立方フィート

(Tcf)の天然ガスに対するニーズの30%をいまだロシア

に依存している12。各国のロシアに対する依存レベルはそれ

ぞれ異なるが、西から東に目を向けると一般的には増加して

いることが分かる。たとえばウクライナは60%のガスをロ

シアから得ており、言うまでもなく、ロシアから欧州へのガ

ス供給の半分以上はこの国を経由して輸送されている。

百万バレル/日

米国

カナダ

ロシア

中国

カザフスタン

スーダン

オマーン

ブラジル

コロンビア

その他北海

マレーシア

インド

ベトナム

ガボン

オーストラリア

エジプト

ノルウェー

メキシコ

アゼルバイジャン

シリア

英国

3石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 6: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

中国の石油生産量VS消費量(1980~2040年)

2000年から2008年の間、世界的な石油ガス価格の上昇にともなって、ロシア経済は年間で5%以上成長した。

20

18

16

14

12

10

8

6

4

2

0

2040年には純輸入量が13.07百万バレル/日に

推定値

出典:BP世界エネルギー統計レビュー、2013年6月

中国の石油に対する渇望は、国の経済にも影響を与えている。

ロシアにとってさらに厄介なのは、欧州でも玄関先におい

てシェール革命が起こる可能性があることだ。石油ガス会

社(その多くは北米で非在来型の生産を現実のものにす

るのに貢献した)は、欧州のシェールに対する投資を開始

したばかりだ。英国、ポーランド、ルーマニア、そしてさらに

ウクライナが、欧州におけるシェール資源の実行可能性に

ついて試験を行う主要国家として現れている。最初の取り

組みは、現在まで商業的な発見がなく、いくつかの主要企

業はポーランドから撤退するなど挫折を余儀なくされた

が、供給安全保証への懸念や構造的に恵まれた米国との

経済競争の激化から関心は残っている。こうした強いモチ

ベーションが示唆することは、欧州によるシェールへの取

り組みが時期尚早であるにもかかわらず継続される可能

性が高いということだ。

しかしロシアは、この活動に答えが出ないまま放ってはお

かない。技術的に回収可能なシェールオイルが推定で750

億バレル含まれる西シベリアのBazhenovシェール層の開

発に、ロシアは初期の実験的投資を行っている21。ロシア

政府は、開発が成功すれば、この油田は2020年までには

1~2百万バレル/日を生産すると見積もっている22。

中国

中東からの供給に対する米国の依存が減っているとすれ

ば、アジアと中国は逆に高まっていると言える。1992年、

中国は原油の純輸入国となり23、2004年には世界第2位

の石油消費国(6.4百万バレル/日)となった24。さらに、

EIAは2014年には中国が世界最大の原油輸入国になる

と予測している25。

同様に、欧州の多くは原油をロシアに依存しており、欧州

のOECD諸国は原油の36%(3.05百万バレル/日)を同

国から輸入している。この依存性は現在さらに高まってお

り、あらゆる化石燃料および精製商品を考慮に入れると、

44%(4.3百万バレル/日)にまでのぼる。

しかし、経済的安定性を欧州からの需要に大きく依存して

いるロシアにとって、欧州の供給依存は諸刃の剣である。

ロシアの天然ガス輸出の57%は西欧向けで、残りはトル

コ(19%)、東欧(24%)となっており、少量がサハリンから

LNGとしてアジアに輸出されている13、14。しかしながら、

何年にもおよぶ交渉の結果、中国にガスパイプラインを開

通する話がついに実を結ぼうとしている。これはロシアが

ガス輸出を東洋に拡大する機会を与えるものだが、パイプ

ラインのインフラを拡張するには莫大なコストの発生が

不可避である15。ロシアと欧州は、原油に関してよく似た相

互依存を示している。経済協力開発機構(OECD)に加盟

する欧州諸国は、ロシアの原油輸出のうち71%、精製商品

輸出のうち36%を購入している16。

ロシア経済は、明らかに収入源を原油ガス産業に過度に

依存しており、2012年度の全政府歳入のうち半分以上

(52%)を石油ガスからの収入が占めている17。もっと詳

しく言うと、石油ガス産業はロシア経済全体の3分の1を、

また輸出収入のほぼ3分の2を、そしてGDPの半分を占め

ている18。2000年から2008年の間、世界的な石油ガス

価格の上昇にともなって、ロシア経済は年間で5%以上成

長した。その後2008年には、原油価格がバレルあたりほ

ぼ150ドルから30ドル台にまで急落したことを受けて

7.8%減少した19。欧州がエネルギーを必要としているか

もしれない一方で、ロシアが利益を必要としていることは

明らかだ。

2009年のウクライナとのガス価格紛争がきっかけで、欧

州はロシアへのエネルギー供給全般についての依存を低

減する試みに着手し、ある程度の成功を収めた。それ以降、

欧州はロシアのガスをLNGに置き換え、大陸を横断した

西から東への流れを増やすためにパイプラインのインフ

ラ統合を行っている。

この代替ガス供給へのシフトおよびガスから石炭への転

換は、欧州の全体的な経済停滞も相まって、ロシアから欧

州へのガスの売上減退をすでに招いている。

北米のシェールの発展により、欧州におけるロシアのエネル

ギー面での影響力はさらに鈍化した。米国の液化天然ガス

(LNG)の海外輸出はまだ始まっていないが、米国以外から

の追加供給も利用できるという事実は、欧州のバイヤーのガ

ス契約交渉に大きな柔軟性を与えている。米国での天然ガス

生産の増加によって、同国のLNG輸入に対するニーズは大

幅に減少したが、そのうちのいくつかは(わずか4~5年前ま

では)ロシアから来るはずのものだった。主要なバイヤーとし

ての米国が市場から脱落した今、LNG輸入先は以前よりも豊

富なものになっている。さらに、このような海外からのLNG輸

送と、中央アジアや中東あるいは北米からのガスパイプライ

ンという将来的に可能性のある選択肢は、ロシアの戦略的輸

出ポジションを減じようと試みる欧州の供給オプションを増

加させている。これにより、もし米国のLNG輸出が増加すれ

ばどうなるかと思案を巡らす人もいる。米国から欧州への

LNG輸送は、現在はいくつかの市場で競合力があるものの、

将来はそうではないかもしれない。さらに東の国々では、こう

した供給はロシアの支配力を減じるために最も望ましいもの

かもしれないが、多くの国は世界価格に対する経済的な余裕

がないため、ロシアは市場でのポジションを守るために引き

続きディスカウントを行うだろう。とはいえ、欧州の純益はな

お前向きな見込みだ。米国の民間企業は自国の外交政策の

目標をサポートするため、損を出してLNGを販売することは

しない。LNG契約は商業的な日和見主義となるだろう。しかし

ながら、競争が激化すると、ロシアや他のガス輸出国に対して

価格設定の圧力がかかり、欧州にとっては全体的にガス価格

が低下する結果となる。

ロシアの生産への挑戦

北米のエネルギー革命はまた、ロシアの生産能力向上をも困

難にしている。ロシアでは「イージーオイル」の時代は終わり、

他の場所に目が向けられている。ロシアの将来有望な新開地

は、現在、シベリア西部の東端またはシベリア東部地域、ある

いは北の北極圏にある。これらの油田での探査と生産

(E&P)は、場所が離れているうえに地質的にも複雑で深いた

め、より多くのコストがかかるだろう。ロシアにおけるE&Pの

支出は、困難に立ち向かおうという試みから、2013年には

540億ドルだったのが2014年には600億ドル近くに増加

している20。しかし経済性を成立させるためには、辺境のプロ

ジェクトにはエネルギー価格の増加や、ロシア政府によってす

でに導入されている政策減税が必要になる。米国における非

在来型エネルギー生産の成長は、輸出が完全に進行した際に

は国際的なエネルギー価格への緩和効果が期待され、これら

新開地における開発の抑制にもつながる。

現在、中国(香港を含む)は、世界の石油需要の12%に相当

する10.5百万バレル/日を消費しており、これは2005年

の7.2百万バレル/日から上昇している26。また2040年

までには中国の輸入に対するニーズはほぼ18百万バレル

/日にまで増加すると推定されている27。2014年だけを

見ても、経済成長が鈍化しているにもかかわらず、EIAの推

定では中国が世界の石油需要の成長の25%を占めるこ

とが示唆されている28。

中国の石油に対する渇望は、国の経済にも影響を与えてい

る。世界銀行によると、世界的な金融危機が起こる前の

2008年度の中国の経常黒字は3,489億ドルだった29。

2012年には、これが原油輸入増により3分の2に当たる

2,319億ドルに減少した30。たとえば、2010年には中国は

1,350億ドルの原油を輸入しており、これは同国が輸入す

るあらゆる商品やサービスの9%弱に相当する31。2012

年にはこれが63%増加して2,200億ドルとなり、全輸入

額のほぼ11%となった32。

中国は、経済成長を維持するためにエネルギー安全保障

を必要としており、これには適切かつ多様で、安定性があ

り、リーズナブルな価格の供給へのアクセスが要求され

る。これはつまり、中国が中東の安定性の維持や、マラッカ

海峡の保護に関心があることを示唆する。

中国は、原油の純輸入国になった1992年以降、「外に出

る」エネルギー政策を採用した。国内での供給の伸び悩み

と貧弱なパイプライン経済により、中国は新たな供給を海

外から探すよりほか選択肢がほとんどなく、その結果彼ら

はその多くを中東に見出した。現在、中国は原油輸入量の

半分以上を中東に依存している33。

百万バレル/日

1980年

1982年

1984年

1986年

1988年

1990年

1992年

1994年

1996年

1998年

2000年

2002年

2004年

2006年

2008年

2010年

2012年

2025年推定

2035年推定

生産量 消費量

4

Page 7: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

中国の石油生産量VS消費量(1980~2040年)

2000年から2008年の間、世界的な石油ガス価格の上昇にともなって、ロシア経済は年間で5%以上成長した。

20

18

16

14

12

10

8

6

4

2

0

2040年には純輸入量が13.07百万バレル/日に

推定値

出典:BP世界エネルギー統計レビュー、2013年6月

中国の石油に対する渇望は、国の経済にも影響を与えている。

ロシアにとってさらに厄介なのは、欧州でも玄関先におい

てシェール革命が起こる可能性があることだ。石油ガス会

社(その多くは北米で非在来型の生産を現実のものにす

るのに貢献した)は、欧州のシェールに対する投資を開始

したばかりだ。英国、ポーランド、ルーマニア、そしてさらに

ウクライナが、欧州におけるシェール資源の実行可能性に

ついて試験を行う主要国家として現れている。最初の取り

組みは、現在まで商業的な発見がなく、いくつかの主要企

業はポーランドから撤退するなど挫折を余儀なくされた

が、供給安全保証への懸念や構造的に恵まれた米国との

経済競争の激化から関心は残っている。こうした強いモチ

ベーションが示唆することは、欧州によるシェールへの取

り組みが時期尚早であるにもかかわらず継続される可能

性が高いということだ。

しかしロシアは、この活動に答えが出ないまま放ってはお

かない。技術的に回収可能なシェールオイルが推定で750

億バレル含まれる西シベリアのBazhenovシェール層の開

発に、ロシアは初期の実験的投資を行っている21。ロシア

政府は、開発が成功すれば、この油田は2020年までには

1~2百万バレル/日を生産すると見積もっている22。

中国

中東からの供給に対する米国の依存が減っているとすれ

ば、アジアと中国は逆に高まっていると言える。1992年、

中国は原油の純輸入国となり23、2004年には世界第2位

の石油消費国(6.4百万バレル/日)となった24。さらに、

EIAは2014年には中国が世界最大の原油輸入国になる

と予測している25。

同様に、欧州の多くは原油をロシアに依存しており、欧州

のOECD諸国は原油の36%(3.05百万バレル/日)を同

国から輸入している。この依存性は現在さらに高まってお

り、あらゆる化石燃料および精製商品を考慮に入れると、

44%(4.3百万バレル/日)にまでのぼる。

しかし、経済的安定性を欧州からの需要に大きく依存して

いるロシアにとって、欧州の供給依存は諸刃の剣である。

ロシアの天然ガス輸出の57%は西欧向けで、残りはトル

コ(19%)、東欧(24%)となっており、少量がサハリンから

LNGとしてアジアに輸出されている13、14。しかしながら、

何年にもおよぶ交渉の結果、中国にガスパイプラインを開

通する話がついに実を結ぼうとしている。これはロシアが

ガス輸出を東洋に拡大する機会を与えるものだが、パイプ

ラインのインフラを拡張するには莫大なコストの発生が

不可避である15。ロシアと欧州は、原油に関してよく似た相

互依存を示している。経済協力開発機構(OECD)に加盟

する欧州諸国は、ロシアの原油輸出のうち71%、精製商品

輸出のうち36%を購入している16。

ロシア経済は、明らかに収入源を原油ガス産業に過度に

依存しており、2012年度の全政府歳入のうち半分以上

(52%)を石油ガスからの収入が占めている17。もっと詳

しく言うと、石油ガス産業はロシア経済全体の3分の1を、

また輸出収入のほぼ3分の2を、そしてGDPの半分を占め

ている18。2000年から2008年の間、世界的な石油ガス

価格の上昇にともなって、ロシア経済は年間で5%以上成

長した。その後2008年には、原油価格がバレルあたりほ

ぼ150ドルから30ドル台にまで急落したことを受けて

7.8%減少した19。欧州がエネルギーを必要としているか

もしれない一方で、ロシアが利益を必要としていることは

明らかだ。

2009年のウクライナとのガス価格紛争がきっかけで、欧

州はロシアへのエネルギー供給全般についての依存を低

減する試みに着手し、ある程度の成功を収めた。それ以降、

欧州はロシアのガスをLNGに置き換え、大陸を横断した

西から東への流れを増やすためにパイプラインのインフ

ラ統合を行っている。

この代替ガス供給へのシフトおよびガスから石炭への転

換は、欧州の全体的な経済停滞も相まって、ロシアから欧

州へのガスの売上減退をすでに招いている。

北米のシェールの発展により、欧州におけるロシアのエネル

ギー面での影響力はさらに鈍化した。米国の液化天然ガス

(LNG)の海外輸出はまだ始まっていないが、米国以外から

の追加供給も利用できるという事実は、欧州のバイヤーのガ

ス契約交渉に大きな柔軟性を与えている。米国での天然ガス

生産の増加によって、同国のLNG輸入に対するニーズは大

幅に減少したが、そのうちのいくつかは(わずか4~5年前ま

では)ロシアから来るはずのものだった。主要なバイヤーとし

ての米国が市場から脱落した今、LNG輸入先は以前よりも豊

富なものになっている。さらに、このような海外からのLNG輸

送と、中央アジアや中東あるいは北米からのガスパイプライ

ンという将来的に可能性のある選択肢は、ロシアの戦略的輸

出ポジションを減じようと試みる欧州の供給オプションを増

加させている。これにより、もし米国のLNG輸出が増加すれ

ばどうなるかと思案を巡らす人もいる。米国から欧州への

LNG輸送は、現在はいくつかの市場で競合力があるものの、

将来はそうではないかもしれない。さらに東の国々では、こう

した供給はロシアの支配力を減じるために最も望ましいもの

かもしれないが、多くの国は世界価格に対する経済的な余裕

がないため、ロシアは市場でのポジションを守るために引き

続きディスカウントを行うだろう。とはいえ、欧州の純益はな

お前向きな見込みだ。米国の民間企業は自国の外交政策の

目標をサポートするため、損を出してLNGを販売することは

しない。LNG契約は商業的な日和見主義となるだろう。しかし

ながら、競争が激化すると、ロシアや他のガス輸出国に対して

価格設定の圧力がかかり、欧州にとっては全体的にガス価格

が低下する結果となる。

ロシアの生産への挑戦

北米のエネルギー革命はまた、ロシアの生産能力向上をも困

難にしている。ロシアでは「イージーオイル」の時代は終わり、

他の場所に目が向けられている。ロシアの将来有望な新開地

は、現在、シベリア西部の東端またはシベリア東部地域、ある

いは北の北極圏にある。これらの油田での探査と生産

(E&P)は、場所が離れているうえに地質的にも複雑で深いた

め、より多くのコストがかかるだろう。ロシアにおけるE&Pの

支出は、困難に立ち向かおうという試みから、2013年には

540億ドルだったのが2014年には600億ドル近くに増加

している20。しかし経済性を成立させるためには、辺境のプロ

ジェクトにはエネルギー価格の増加や、ロシア政府によってす

でに導入されている政策減税が必要になる。米国における非

在来型エネルギー生産の成長は、輸出が完全に進行した際に

は国際的なエネルギー価格への緩和効果が期待され、これら

新開地における開発の抑制にもつながる。

現在、中国(香港を含む)は、世界の石油需要の12%に相当

する10.5百万バレル/日を消費しており、これは2005年

の7.2百万バレル/日から上昇している26。また2040年

までには中国の輸入に対するニーズはほぼ18百万バレル

/日にまで増加すると推定されている27。2014年だけを

見ても、経済成長が鈍化しているにもかかわらず、EIAの推

定では中国が世界の石油需要の成長の25%を占めるこ

とが示唆されている28。

中国の石油に対する渇望は、国の経済にも影響を与えてい

る。世界銀行によると、世界的な金融危機が起こる前の

2008年度の中国の経常黒字は3,489億ドルだった29。

2012年には、これが原油輸入増により3分の2に当たる

2,319億ドルに減少した30。たとえば、2010年には中国は

1,350億ドルの原油を輸入しており、これは同国が輸入す

るあらゆる商品やサービスの9%弱に相当する31。2012

年にはこれが63%増加して2,200億ドルとなり、全輸入

額のほぼ11%となった32。

中国は、経済成長を維持するためにエネルギー安全保障

を必要としており、これには適切かつ多様で、安定性があ

り、リーズナブルな価格の供給へのアクセスが要求され

る。これはつまり、中国が中東の安定性の維持や、マラッカ

海峡の保護に関心があることを示唆する。

中国は、原油の純輸入国になった1992年以降、「外に出

る」エネルギー政策を採用した。国内での供給の伸び悩み

と貧弱なパイプライン経済により、中国は新たな供給を海

外から探すよりほか選択肢がほとんどなく、その結果彼ら

はその多くを中東に見出した。現在、中国は原油輸入量の

半分以上を中東に依存している33。

百万バレル/日

1980年

1982年

1984年

1986年

1988年

1990年

1992年

1994年

1996年

1998年

2000年

2002年

2004年

2006年

2008年

2010年

2012年

2025年推定

2035年推定

生産量 消費量

5石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 8: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

地域別 中国の原油輸入地域

米国の軍事力に守られた国際的な石油市場が、中国に対して必要なエネルギーを提供し続けることができる限り、国際的なエネルギー問題において中国がより表立った役割を担うモチベーションは少ない。

出典:EIA国情報・中国 EIA国際エネルギー統計

マラッカ海峡

中東情勢の強いしがらみから遠く離れ、中国は、米国主導

の国際システムからの恩恵を受けようと、静かな戦略的選

択を行った。米国の軍事力に守られた国際的な石油市場

が、中国に対して必要なエネルギーを提供し続けることが

できる限り、国際的なエネルギー問題において中国がより

表立った役割を担うモチベーションは少ない。しかしなが

ら、自国のエネルギー安全保障の中核をなす別の地域に

おいて中国が威力を誇示する可能性はある。それがマラッ

カ海峡だ。マラッカ海峡は、日本や韓国に供給する船に

とっての重要な海路にもなっている。

中国の原油輸入の80%以上は海上輸送によるものであ

るため、中国経済は海運貿易(特にマラッカ海峡を通過す

るもの)の途絶に対し非常に脆弱だ。マラッカ海峡を通過

する原油15百万バレル/日以上のうち、3分の1以上は中

国向けである39。ある中国の安全対策専門家が考察したよ

うに、「マラッカ海峡を制する者が、中国のエネルギー通路

を効果的に制御し、いつでも中国のエネルギー安全保障

を脅かすことができる」40。このことにより、中国は海峡そ

のものの治安を維持するために外洋海軍を開発するので

はないかとの見解も出ている。たとえ小規模な中国の艦隊

であっても、この海峡のパトロール行為については近隣諸

国(特に同様にエネルギー安全保障を同海峡に依存してい

る日本)からの懸念の声が予想される。駆逐艦2隻と水陸

両用揚陸艇1隻から成る小規模船団による3週間におよぶ

最近の南シナ海遠征は、中国と領海や島領域を主張しあっ

ている諸国に不安を引き起こした41。強化された中国海軍

の存在は、同海峡を通過した安全で安定した物品輸送の

確保とは程遠く、近隣諸国からは地域貿易の流れにおける

かく乱勢力として見られる可能性が高い。この点で、米国

海軍の存在の継続は好ましい選択と認識されている。

北米への投資

マラッカ海峡の治安維持や、中東のパワーポリティックス

への関与の増大が中国のエネルギー安全保障強化にとっ

て現実的な選択肢でないとすれば、何が現実的だろうか?

供給の多様化に向けた取り組みはあるものの、この依存

はすぐには弱まりそうにもない。EIAによると、中東による

中国への原油輸出は2011年のおよそ2.9百万バレル/日

から、2035年には中国の原油輸入量の54%に相当する

6.7百万バレル/日に増加することが予測されている34。

中東および北アフリカからの供給に対する中国の依存に

は、地域の安定性と固定された貿易相手が必要だ。アラブ

の春が始まって以来、湾岸協力会議が相対的に安定してい

るにもかかわらず、同地域は国内の変動や革命、内戦等に

見舞われている。同地域における中国の主な原油供給国

は現在、サウジアラビアとクウェートを除いて不安定な状

態にある。最近構築されたロシアの東シベリア・太平洋石

油(ESPO)パイプラインが、中国に重大な原油供給を行う

新たな安定した供給元になるかどうかは、現時点ではまだ

分からない。

もしエネルギーが中国の経済成長にとっての「アキレス

腱」であれば、中国は中東の政治や経済、さらには軍事にま

でより直接的に関与する道を選ぶのだろうか。他国に対す

る内政不干渉は中国の外交政策において肝要な部分であ

るため、この選択はありえないと考える向きもあるようだ。

中国とイランの制裁

西洋支援によるイランへの制裁は、中国の中東情勢へのア

プローチに対する重要な実験として機能している。2012

年のはじめ、米国はイランに対する制裁を、すべての金融

機関への石油産業の商取引を含める形で拡大した。欧州

連合もまた、石油貿易や金融取引、海運輸出の円滑化の重

要な手段としてイランおよびイランが所有する企業に対し

て実施する保険の提供に対する制裁を実行した。欧州主

導の制裁に従わない国は、二次制裁の対象となった。

これによりアジアの石油輸入国、なかでもイランから輸出

される石油の最大消費国であり、ガソリンをイランに大き

く依存している中国(22%)35は難しい状況に陥った。

中国がより積極的に中東に対して自己主張を行いたかっ

たなら、これは第一印象を作る良い機会になっていただろ

う。イランにおける中国の利害関係は大きく、国営石油会

社(NOC)は、中国石油化工がYadavaran油田に20億ド

ル、CNOOCがNorth Parsガス田に160億ドル、CNPC

がNorth Azadegan油田に17.5億ドルとSouth Parsガ

ス田に47億ドルを投資するなど、イランの石油業界に対

する大口の投資を複数行ってきていた36。加えて、中国は

米国国債の最大所有国であり、両国間には深い商業的・経

済的関係性があるため、米国が中国に二次制裁を課すこ

とは困難だっただろう。さらに、イランに関連した制裁に

関する強固な姿勢は常識となっていた。米国は30年近く

もイランに対して厳しい制裁を課そうと試みてきたが、友

好国からでさえ不本意な結果しか得られていなかった。

このケースでは、中国は制裁を徹底的に否定するのではな

く、穏やかに反論し、米国の制裁解除を得るためにイラン

からの輸入を20%削減した。中国がイランからの輸入を

ロシアやイラク等からの輸入で置き換えた結果、イランか

らの輸入量は、2011年の55万バレル/日以上から、

2012年にはおよそ45万バレル/日に減少した37。中国が

イランからの原油輸入における初期の削減に後戻りして

いる示唆はあるものの38、新たな制裁に対する黙諾は、中

国が同地域でより大きな影響力を模索するのではなく、継

続的なエネルギー供給の維持を確保するために同地域の

危機を巧みに操縦していることを表している。

その答えは、国内生産にあるかもしれない。中国は、米国に

倣って国内に新たなシェール生産技術を導入することで、

国内の石油ガスを再活性化しようとしている。2010年以

来、中国はエネルギー関連のM&A活動の3分の1以上に

相当する450億ドルを、北米のエネルギールネッサンスに

投資してきた42。それまでは中国からの投資はほぼ存在し

なかったが、2008年に米国のシェール革命が話題になり

始めたため、中国は北米への重点的な投資を開始した。当

然、この投資の90%以上は、タイトオイルやシェールガス、

オイルサンドなど非在来型の資源に対するものである43。

こうした買収や株式取得、合弁事業は主に、国内生産を増

やすための技術やノウハウを知る機会を中国企業に与え

ることを意図したものだった。要するに、もし米国が外交上

あるいは軍事的な才気によってではなく、国内での技術の

革新や導入によって中東の石油に対する依存から脱しよ

うとしているなら、中国も同じことができるのではないか、

ということだ。

中国が国内の生産量を増加させることができるなら、同国

のエネルギー安全保障の展望にとってはその方がはるか

に良い。エネルギーの地政学や資源ナショナリズム、軍事

援助、干渉といった泥沼の世界にはまりこむよりも、よほ

ど魅力的な選択肢だ。中国石油国際事業のBo Qiliang本

部長は、「勤勉と確固たる精神を通じて、私たちは『外に出

る』戦略から『国内の増強』戦略へと歴史的な飛躍が実現

できる」と語っている44。北米のシェール革命の成功例が

国際的に(特に私有財産権が限られている地域において)

も再現可能かどうかについては、疑問の余地がある。しか

しながら中国は、他の案が魅力的でないため、間違いなく

これに挑戦しようとしている。

60%

50%

40%

30%

20%

10%

0%2005年 2008年 2010年 2011年 2012年 2013年

中東 中央アジア アフリカ アジア 南米 その他

6

Page 9: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

地域別 中国の原油輸入地域

米国の軍事力に守られた国際的な石油市場が、中国に対して必要なエネルギーを提供し続けることができる限り、国際的なエネルギー問題において中国がより表立った役割を担うモチベーションは少ない。

出典:EIA国情報・中国 EIA国際エネルギー統計

マラッカ海峡

中東情勢の強いしがらみから遠く離れ、中国は、米国主導

の国際システムからの恩恵を受けようと、静かな戦略的選

択を行った。米国の軍事力に守られた国際的な石油市場

が、中国に対して必要なエネルギーを提供し続けることが

できる限り、国際的なエネルギー問題において中国がより

表立った役割を担うモチベーションは少ない。しかしなが

ら、自国のエネルギー安全保障の中核をなす別の地域に

おいて中国が威力を誇示する可能性はある。それがマラッ

カ海峡だ。マラッカ海峡は、日本や韓国に供給する船に

とっての重要な海路にもなっている。

中国の原油輸入の80%以上は海上輸送によるものであ

るため、中国経済は海運貿易(特にマラッカ海峡を通過す

るもの)の途絶に対し非常に脆弱だ。マラッカ海峡を通過

する原油15百万バレル/日以上のうち、3分の1以上は中

国向けである39。ある中国の安全対策専門家が考察したよ

うに、「マラッカ海峡を制する者が、中国のエネルギー通路

を効果的に制御し、いつでも中国のエネルギー安全保障

を脅かすことができる」40。このことにより、中国は海峡そ

のものの治安を維持するために外洋海軍を開発するので

はないかとの見解も出ている。たとえ小規模な中国の艦隊

であっても、この海峡のパトロール行為については近隣諸

国(特に同様にエネルギー安全保障を同海峡に依存してい

る日本)からの懸念の声が予想される。駆逐艦2隻と水陸

両用揚陸艇1隻から成る小規模船団による3週間におよぶ

最近の南シナ海遠征は、中国と領海や島領域を主張しあっ

ている諸国に不安を引き起こした41。強化された中国海軍

の存在は、同海峡を通過した安全で安定した物品輸送の

確保とは程遠く、近隣諸国からは地域貿易の流れにおける

かく乱勢力として見られる可能性が高い。この点で、米国

海軍の存在の継続は好ましい選択と認識されている。

北米への投資

マラッカ海峡の治安維持や、中東のパワーポリティックス

への関与の増大が中国のエネルギー安全保障強化にとっ

て現実的な選択肢でないとすれば、何が現実的だろうか?

供給の多様化に向けた取り組みはあるものの、この依存

はすぐには弱まりそうにもない。EIAによると、中東による

中国への原油輸出は2011年のおよそ2.9百万バレル/日

から、2035年には中国の原油輸入量の54%に相当する

6.7百万バレル/日に増加することが予測されている34。

中東および北アフリカからの供給に対する中国の依存に

は、地域の安定性と固定された貿易相手が必要だ。アラブ

の春が始まって以来、湾岸協力会議が相対的に安定してい

るにもかかわらず、同地域は国内の変動や革命、内戦等に

見舞われている。同地域における中国の主な原油供給国

は現在、サウジアラビアとクウェートを除いて不安定な状

態にある。最近構築されたロシアの東シベリア・太平洋石

油(ESPO)パイプラインが、中国に重大な原油供給を行う

新たな安定した供給元になるかどうかは、現時点ではまだ

分からない。

もしエネルギーが中国の経済成長にとっての「アキレス

腱」であれば、中国は中東の政治や経済、さらには軍事にま

でより直接的に関与する道を選ぶのだろうか。他国に対す

る内政不干渉は中国の外交政策において肝要な部分であ

るため、この選択はありえないと考える向きもあるようだ。

中国とイランの制裁

西洋支援によるイランへの制裁は、中国の中東情勢へのア

プローチに対する重要な実験として機能している。2012

年のはじめ、米国はイランに対する制裁を、すべての金融

機関への石油産業の商取引を含める形で拡大した。欧州

連合もまた、石油貿易や金融取引、海運輸出の円滑化の重

要な手段としてイランおよびイランが所有する企業に対し

て実施する保険の提供に対する制裁を実行した。欧州主

導の制裁に従わない国は、二次制裁の対象となった。

これによりアジアの石油輸入国、なかでもイランから輸出

される石油の最大消費国であり、ガソリンをイランに大き

く依存している中国(22%)35は難しい状況に陥った。

中国がより積極的に中東に対して自己主張を行いたかっ

たなら、これは第一印象を作る良い機会になっていただろ

う。イランにおける中国の利害関係は大きく、国営石油会

社(NOC)は、中国石油化工がYadavaran油田に20億ド

ル、CNOOCがNorth Parsガス田に160億ドル、CNPC

がNorth Azadegan油田に17.5億ドルとSouth Parsガ

ス田に47億ドルを投資するなど、イランの石油業界に対

する大口の投資を複数行ってきていた36。加えて、中国は

米国国債の最大所有国であり、両国間には深い商業的・経

済的関係性があるため、米国が中国に二次制裁を課すこ

とは困難だっただろう。さらに、イランに関連した制裁に

関する強固な姿勢は常識となっていた。米国は30年近く

もイランに対して厳しい制裁を課そうと試みてきたが、友

好国からでさえ不本意な結果しか得られていなかった。

このケースでは、中国は制裁を徹底的に否定するのではな

く、穏やかに反論し、米国の制裁解除を得るためにイラン

からの輸入を20%削減した。中国がイランからの輸入を

ロシアやイラク等からの輸入で置き換えた結果、イランか

らの輸入量は、2011年の55万バレル/日以上から、

2012年にはおよそ45万バレル/日に減少した37。中国が

イランからの原油輸入における初期の削減に後戻りして

いる示唆はあるものの38、新たな制裁に対する黙諾は、中

国が同地域でより大きな影響力を模索するのではなく、継

続的なエネルギー供給の維持を確保するために同地域の

危機を巧みに操縦していることを表している。

その答えは、国内生産にあるかもしれない。中国は、米国に

倣って国内に新たなシェール生産技術を導入することで、

国内の石油ガスを再活性化しようとしている。2010年以

来、中国はエネルギー関連のM&A活動の3分の1以上に

相当する450億ドルを、北米のエネルギールネッサンスに

投資してきた42。それまでは中国からの投資はほぼ存在し

なかったが、2008年に米国のシェール革命が話題になり

始めたため、中国は北米への重点的な投資を開始した。当

然、この投資の90%以上は、タイトオイルやシェールガス、

オイルサンドなど非在来型の資源に対するものである43。

こうした買収や株式取得、合弁事業は主に、国内生産を増

やすための技術やノウハウを知る機会を中国企業に与え

ることを意図したものだった。要するに、もし米国が外交上

あるいは軍事的な才気によってではなく、国内での技術の

革新や導入によって中東の石油に対する依存から脱しよ

うとしているなら、中国も同じことができるのではないか、

ということだ。

中国が国内の生産量を増加させることができるなら、同国

のエネルギー安全保障の展望にとってはその方がはるか

に良い。エネルギーの地政学や資源ナショナリズム、軍事

援助、干渉といった泥沼の世界にはまりこむよりも、よほ

ど魅力的な選択肢だ。中国石油国際事業のBo Qiliang本

部長は、「勤勉と確固たる精神を通じて、私たちは『外に出

る』戦略から『国内の増強』戦略へと歴史的な飛躍が実現

できる」と語っている44。北米のシェール革命の成功例が

国際的に(特に私有財産権が限られている地域において)

も再現可能かどうかについては、疑問の余地がある。しか

しながら中国は、他の案が魅力的でないため、間違いなく

これに挑戦しようとしている。

60%

50%

40%

30%

20%

10%

0%2005年 2008年 2010年 2011年 2012年 2013年

中東 中央アジア アフリカ アジア 南米 その他

7石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 10: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

仮に欧州内でシェール革命が起こるとすれば、これは欧州の主要エネルギー市場に輸入される長期的なガス量をさらに縮小する可能性がある。

石油輸出国機構(OPEC)とロシアは、半世紀以上にわたり

石油ガス輸出の環境を独占してきた。現在、新たな供給国

が彼らの優位性に挑戦しており、その過程で地政学的展

望を変化させている。化石燃料の需要の中心地がアジア

太平洋に移行し、供給の制御をめぐる競争は顧客をめぐる

競争に置き換えられている。これは輸入国にとってはメ

リットとなる可能性があり、供給多様性の増加や、これに

よる途絶リスクの減少が見込まれる。

衰退するOPECの影響力

OPECによる輸出は、2012年は全原油消費量の28%を

占めており、これは過去10年間ほぼ変わっていない。

OPECは今後もグローバルな原油市場で主要勢力であり

続けると思われるものの、米国等での生産増加が限界生

産を制御することで、原油価格に対するOPECの影響力

は抑制されるだろう。

このパワーシフトにおける最も重大な要素は、米国におけ

る非在来ブームの影響だ。米国は2010年代の終わりには

天然ガスの純輸出国となる勢いで、外国からの原油輸入へ

の依存も減少する45。EIAによると、米国の原油産出量は

2010年から2013年の間に、1.6百万バレル/日から

10.4百万バレル/日に増加した。これにより、OPEC諸国

(主にナイジェリアとアルジェリア)からの輸入は1.2百万

バレル/日も減少している46。またタイトオイル層からの

生産増加によって米国は、2014年に世界最大の原油生産

国としてサウジアラビアを上回る可能性すらある47。米国

は、2017年には少なくともさらに1.5百万バレル/日の原

油生産量増加が期待され、OPEC諸国から購入する原油

量はさらに減少する見込みだ48。

米国の生産量増加はまた、ベネズエラやカナダ、メキシコ

など、同国の他の主要供給国からの輸入量も低減し得る。

このうち、カナダとメキシコは国内生産量が増加すること

が予測されている。EIAの見通しによると、カナダの原油産

出量は2020年までに1.0百万バレル/日増加すると推定

されている49。一方、メキシコ政府は石油ガス産業の自由

化に向けて動くことにより、2025年までに1.5百万バレ

ル/日の生産増加を期待している50。

もしこれらの国の輸出に対する米国の欲求が止まるか弱

まるかすれば、各国は別の市場を探さなければならなくな

る。ブラジルとカザフスタンもまた、グローバルな供給を

拡大するポテンシャルを持っている。両国での生産は、

2030年までにそれぞれ3.9百万バレル/日、1.7百万バ

レル/日の幅で増大するものと見込まれている51。

エネルギー供給:新たな供給元、新たな地政学

弊社の見解

北米のエネルギー革命による地政学的な影響は、ユーラシ

ア全体にわたるエネルギー関連の緊張が少ない中で感じ

られるだろう。また米国が、国際情勢における中国の影響

力の出現およびロシアの影響力の復興に直面して、世界的

な勢力均衡の調整者としての役割を維持するための取り

組みを継続する中で感じられると思われる。

米国は、より強い産業競争力で国内のエネルギーニーズを

満たすためにGDPよりも少ない額の輸出を行う必要があ

り、全体としてはより裕福になるだろう。これによって米国

は、海外への関与を維持する能力や、世界の石油市場に必

須な海路の取り締まりに対する意欲を高めることが予測

され、こうした義務を放棄するための便利な手段としてこ

れを捉えることはないだろう。

ロシアは、北米の生産増加を受けて、今後数年間のロシア

経済に重要な収益を確保するために、欧州・アジア間での

石油ガス輸出のバランスを再調整する必要が出てくるだろ

う。特に、欧州の天然ガス市場におけるシェアをめぐって

の競争は激化し、すべてのガス輸出国は欧州への価格を

全体的に下げる必要が出てくることが考えられる。仮に欧

州内でシェール革命が起こるとすれば、これは欧州の主要

エネルギー市場に輸入される長期的なガス量をさらに縮

小する可能性がある。

中国については、地政学的な影響はきわめてポジティブで

ある。中国は、米国が19世紀に英国の海軍力に便乗したの

と同様に、米国海軍の優位性にただ乗りし続けることができ

る。さらに、米国との供給競争の懸念については、未来に先

送りされている。すでに計画段階にある中国のシェール革

命は、こうした懸念を地平線の彼方に追いやるものである。

しかしながらグローバルな石油供給の増加によるすべて

のカーゴを引き揚げてくれるわけではない。過去に、

OPECは供給過剰(および価格下落)の状況に対応して、加

盟国に対し全般的な輸出量の上限を下げたことがあった。

今回は内部の不和により、OPECは統一された対応を提

供することができない可能性がある。2013年はリビアに

おける危機やイラクの技術的な問題、イランに対する制裁

等、これらの国々からの輸出を大幅に制限する条件があっ

たにもかかわらず、OPECの産出量は30百万バレル/日

という合意された上限を上回った。この原因は、サウジア

ラビアやアラブ首長国連邦、クウェートといった予備容量

のある加盟国が産出量の減少を補ったことにある。これ

は、イランのように予備容量が限られており、高値を維持

するために全般的な産出量を低くすることに熱心な国の

意図に反するものだった。OPEC加盟国間の不和は将来、

さらに激しいものになるかもしれない。OPECはまもな

く、リビアやイラン、イラクにおける生産が復興したとき

に、どの加盟国が産出量を削減するのか決断をする必要が

あるだろう。アラブの春の影響を受けた国々は政治が不安

定であり、石油からの歳入を教育や医療、社会保障といっ

たプログラムに投資するという重圧がかかっているため、

輸出レベルの削減は特に議論を呼ぶ問題だろう。

OPECは、中期的なジレンマに直面している。供給が需要

を上回るという予想は、グローバルな原油価格の下落につ

ながる可能性があり、輸出国にとって予算的な困難を生み

出すとともに、業界にも(特に高コストな環境にあるプロ

ジェクトにおいて)困難をもたらすことになる。しかしなが

ら、生産上限の押し下げという典型的なOPECの対応は、

同様に悪影響を及ぼすかもしれない。たとえば、いくつか

の加盟国にとっては収入の減少となったり、グローバルな

原油に占めるOPECの割合をさらに下げることになった

り、その結果としてOPECが世界市場に対して持つ影響力

を低めるなどといったことが考えられる。

欧州の顧客をめぐる闘い

石油ガスのもう1つの主要輸出国であるロシアもまた、主

なガス市場である欧州における優勢があやぶまれている。

BP「エネルギー展望」によると、主に環境規制が引き金と

なって、欧州の天然ガスに対する需要は2035年までに

17%上昇すると予測される52。しかしながら、これは必ず

しもロシアからの輸入に対する需要の増加に移行するわ

けではない。

8

Page 11: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

仮に欧州内でシェール革命が起こるとすれば、これは欧州の主要エネルギー市場に輸入される長期的なガス量をさらに縮小する可能性がある。

石油輸出国機構(OPEC)とロシアは、半世紀以上にわたり

石油ガス輸出の環境を独占してきた。現在、新たな供給国

が彼らの優位性に挑戦しており、その過程で地政学的展

望を変化させている。化石燃料の需要の中心地がアジア

太平洋に移行し、供給の制御をめぐる競争は顧客をめぐる

競争に置き換えられている。これは輸入国にとってはメ

リットとなる可能性があり、供給多様性の増加や、これに

よる途絶リスクの減少が見込まれる。

衰退するOPECの影響力

OPECによる輸出は、2012年は全原油消費量の28%を

占めており、これは過去10年間ほぼ変わっていない。

OPECは今後もグローバルな原油市場で主要勢力であり

続けると思われるものの、米国等での生産増加が限界生

産を制御することで、原油価格に対するOPECの影響力

は抑制されるだろう。

このパワーシフトにおける最も重大な要素は、米国におけ

る非在来ブームの影響だ。米国は2010年代の終わりには

天然ガスの純輸出国となる勢いで、外国からの原油輸入へ

の依存も減少する45。EIAによると、米国の原油産出量は

2010年から2013年の間に、1.6百万バレル/日から

10.4百万バレル/日に増加した。これにより、OPEC諸国

(主にナイジェリアとアルジェリア)からの輸入は1.2百万

バレル/日も減少している46。またタイトオイル層からの

生産増加によって米国は、2014年に世界最大の原油生産

国としてサウジアラビアを上回る可能性すらある47。米国

は、2017年には少なくともさらに1.5百万バレル/日の原

油生産量増加が期待され、OPEC諸国から購入する原油

量はさらに減少する見込みだ48。

米国の生産量増加はまた、ベネズエラやカナダ、メキシコ

など、同国の他の主要供給国からの輸入量も低減し得る。

このうち、カナダとメキシコは国内生産量が増加すること

が予測されている。EIAの見通しによると、カナダの原油産

出量は2020年までに1.0百万バレル/日増加すると推定

されている49。一方、メキシコ政府は石油ガス産業の自由

化に向けて動くことにより、2025年までに1.5百万バレ

ル/日の生産増加を期待している50。

もしこれらの国の輸出に対する米国の欲求が止まるか弱

まるかすれば、各国は別の市場を探さなければならなくな

る。ブラジルとカザフスタンもまた、グローバルな供給を

拡大するポテンシャルを持っている。両国での生産は、

2030年までにそれぞれ3.9百万バレル/日、1.7百万バ

レル/日の幅で増大するものと見込まれている51。

エネルギー供給:新たな供給元、新たな地政学

弊社の見解

北米のエネルギー革命による地政学的な影響は、ユーラシ

ア全体にわたるエネルギー関連の緊張が少ない中で感じ

られるだろう。また米国が、国際情勢における中国の影響

力の出現およびロシアの影響力の復興に直面して、世界的

な勢力均衡の調整者としての役割を維持するための取り

組みを継続する中で感じられると思われる。

米国は、より強い産業競争力で国内のエネルギーニーズを

満たすためにGDPよりも少ない額の輸出を行う必要があ

り、全体としてはより裕福になるだろう。これによって米国

は、海外への関与を維持する能力や、世界の石油市場に必

須な海路の取り締まりに対する意欲を高めることが予測

され、こうした義務を放棄するための便利な手段としてこ

れを捉えることはないだろう。

ロシアは、北米の生産増加を受けて、今後数年間のロシア

経済に重要な収益を確保するために、欧州・アジア間での

石油ガス輸出のバランスを再調整する必要が出てくるだろ

う。特に、欧州の天然ガス市場におけるシェアをめぐって

の競争は激化し、すべてのガス輸出国は欧州への価格を

全体的に下げる必要が出てくることが考えられる。仮に欧

州内でシェール革命が起こるとすれば、これは欧州の主要

エネルギー市場に輸入される長期的なガス量をさらに縮

小する可能性がある。

中国については、地政学的な影響はきわめてポジティブで

ある。中国は、米国が19世紀に英国の海軍力に便乗したの

と同様に、米国海軍の優位性にただ乗りし続けることができ

る。さらに、米国との供給競争の懸念については、未来に先

送りされている。すでに計画段階にある中国のシェール革

命は、こうした懸念を地平線の彼方に追いやるものである。

しかしながらグローバルな石油供給の増加によるすべて

のカーゴを引き揚げてくれるわけではない。過去に、

OPECは供給過剰(および価格下落)の状況に対応して、加

盟国に対し全般的な輸出量の上限を下げたことがあった。

今回は内部の不和により、OPECは統一された対応を提

供することができない可能性がある。2013年はリビアに

おける危機やイラクの技術的な問題、イランに対する制裁

等、これらの国々からの輸出を大幅に制限する条件があっ

たにもかかわらず、OPECの産出量は30百万バレル/日

という合意された上限を上回った。この原因は、サウジア

ラビアやアラブ首長国連邦、クウェートといった予備容量

のある加盟国が産出量の減少を補ったことにある。これ

は、イランのように予備容量が限られており、高値を維持

するために全般的な産出量を低くすることに熱心な国の

意図に反するものだった。OPEC加盟国間の不和は将来、

さらに激しいものになるかもしれない。OPECはまもな

く、リビアやイラン、イラクにおける生産が復興したとき

に、どの加盟国が産出量を削減するのか決断をする必要が

あるだろう。アラブの春の影響を受けた国々は政治が不安

定であり、石油からの歳入を教育や医療、社会保障といっ

たプログラムに投資するという重圧がかかっているため、

輸出レベルの削減は特に議論を呼ぶ問題だろう。

OPECは、中期的なジレンマに直面している。供給が需要

を上回るという予想は、グローバルな原油価格の下落につ

ながる可能性があり、輸出国にとって予算的な困難を生み

出すとともに、業界にも(特に高コストな環境にあるプロ

ジェクトにおいて)困難をもたらすことになる。しかしなが

ら、生産上限の押し下げという典型的なOPECの対応は、

同様に悪影響を及ぼすかもしれない。たとえば、いくつか

の加盟国にとっては収入の減少となったり、グローバルな

原油に占めるOPECの割合をさらに下げることになった

り、その結果としてOPECが世界市場に対して持つ影響力

を低めるなどといったことが考えられる。

欧州の顧客をめぐる闘い

石油ガスのもう1つの主要輸出国であるロシアもまた、主

なガス市場である欧州における優勢があやぶまれている。

BP「エネルギー展望」によると、主に環境規制が引き金と

なって、欧州の天然ガスに対する需要は2035年までに

17%上昇すると予測される52。しかしながら、これは必ず

しもロシアからの輸入に対する需要の増加に移行するわ

けではない。

9石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 12: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

0 10 20 30 40 50 60 70 80

欧州におけるロシア、ノルウェー、アフリカ、中東からのガス輸入

ドイツ

イタリア

トルコ

フランス

ベルギー

その他欧州

オランダ

チェコ共和国

オーストリア

出典:BP世界エネルギー統計レビュー2013

■ ロシア連邦  ■ ノルウェー  ■ カタール  ■ アルジェリア  ■ エジプト  ■ ナイジェリア  ■ イラン  ■ リビア

アジア太平洋地域の石油ガス市場の将来的な発展は、主要顧客である中国が、増加するエネルギーのニーズを満たし、自国のエネルギー安全保障を確保するために次にとる行動によって推進される。

アジア太平洋地域は、需要成長のポテンシャルが高い地域だ。2012年から2035年の間の、液体に対する世界の需要成長の72%がアジア太平洋に由来すると見込まれている。

しかしながら、現在の中東のアジア太平洋への供給国(カ

タール、オマーン、アラブ首長国連邦、さらにナイジェリア)

は、2010年代の後半、オーストラリアや東アフリカの新た

なLNG輸出施設に加え、潜在的には米国との競合にも直

面するだろう。現在計画・構築段階にあるロシアのLNGプ

ロジェクトもまた、この市場のいくつかをつかむことを目

標としている59。もし計画中の輸出施設が首尾よく完成す

れば、アジア太平洋地域のLNG市場は、さらに混雑した競

合性の高い市場になるだろう。

しかしながら、同地域における需要力学は、原油の世界最

大純輸入国である中国によって主に促進されていること

から、決して単純明快なものではない。OPECによる供給

は2013年は中国のニーズの大半を満たしたが、中国は多

様化を通じてより大きな供給安全保障を求めている。その

結果、近年、中国は原油を生産する多くの省において国内

のインフラ計画に投資している。将来的には必要性があれ

ば、中国は原油供給元としてOPECとロシア以外にもます

ます目を向けることになるかもしれない。

これは天然ガスについても同じことが言える。中国は以前

にもましてポートフォリオの多様化に焦点を当てており、

最近発表されたロシアのガスプロムからの4,000億ドル

のガス購入契約が示すように、東シベリアや中央アジア諸

国からのパイプラインを通じたガスの輸入など、さまざま

な供給元から供給を得る選択をしている。たとえば、主要

な中央アジア~中国ガスパイプラインは2016年までに

新しい分岐が運営されることが予測される。この分岐は、

大規模なトルクメニスタンのガルキニシュ(Galkynysh)

ガス田より中国にガスを輸送するもので、2020年までに

輸送量が65bcmに増大される60。加えて、中国自身の

シェール開発に向けた取り組みのスピードや規模も、将来

の天然ガス輸入への欲求に影響を与えるだろう。

アジア太平洋地域の市場力が高まると、その戦略的重要

性も同様に高まる。このことは、マラッカ海峡のマレーシア

とシンガポール間など、潜在的な石油ガス貿易ルートの渋

滞地点の保護に対する注目の拡大や、頻繁に領土権の主

張が行われ、その結果として議論の巻き起こる南シナ海に

おける緊張の高まりにもつながる。南シナ海は戦略的な理

由からだけではなく、潜在的に大規模ではあるにもかかわ

らずまだ開発の行われていない石油ガス資源としても重

要である。

ロシアは欧州のガス市場で、重大な競争に直面するかもし

れない。2012年にノルウェーが、競争力のあるハブベース

でのスポット価格によって、欧州の主要供給国であるロシ

アをしのいだ53。中東諸国からの供給もまた、欧州におけ

るロシアの供給支配にとって将来的な脅威となり得る。

2012年、アルジェリアとイラン、リビア、エジプト、ナイ

ジェリアは合わせて75十億立方メートル(bcm)の天然ガ

スをパイプライン経由でLNGとして販売したが、これに対

しロシアの供給量は130bcmだった54。さらに、数年前に

米国の主要供給国になることになったカタールは、2012

年に欧州で30bcm近くのLNGを販売している。特筆すべ

きは、この量の半分以上が、ロシアもパイプライン経由で

ガスを販売している西欧諸国に送られている点だ。カター

ルから欧州に提供されるLNGの量はまた、2010年代後

半に登場するLNGプロジェクトの増加にもつながる可能

性があり、アジア太平洋市場における競争を激化し、欧州

への出荷可能量を増やし得る。

同時に、いくつかの欧州の国家は、エネルギー供給におけ

るロシアの支配を緩めることに躍起になっている。フィン

ランドとエストニアはいずれも、ロシアからの輸入を低減

するためにLNGの再ガス化工場を建設する予定だ55。

ポーランドは同じ理由から、カタールのLNGにより高い金

額を支払う用意がある56。石炭に代わる米国シェールガス

ブームもまた、ロシアのガスに対する欧州の欲求を低下さ

せ得るものだ。欧州市場でのロシアの供給に関する長期

的な見通しは、ウクライナにおける危機の影響も受ける可

能性があり、緩和措置としてLNG輸出申請の承認プロセ

スの迅速化を米国に対し求める声もある。ただしこれは、

長期的に欧州に影響を与えるにすぎない。

欧州における需要成長の鈍化と競争の激化を相殺すべ

く、ロシアはアジア太平洋(特に中国)に目を向けており、

パイプ輸送によるガスとLNGを通じた同地域での市場開

拓を狙っている。しかしながら、この探求を行うのはロシ

アだけではない。

アジア太平洋地域での市場シェアをめぐる闘い

アジア太平洋地域は、需要成長のポテンシャルが高い地域

だ。2012年から2035年の間の、原油に対する世界の需

要成長の72%がアジア太平洋に由来すると見込まれてい

る57。この成長は、主に輸送セクターにおける利益による

ものである。一方で、いくつかのアジアの国々で見られる

電力消費量の増加と、石炭や原子力による発電から脱す

る動きは、同地域の堅調なエネルギー需要プロフィールを

さらに強化するものと思われる。

アジア太平洋諸国は現在、OPECの主要顧客であり、

2012年はOPECの原油輸出の57%を購入している58。

また同地域は、米国の需要が低下していることから、いっ

そうOPECにとって重要な存在になろうとしている。他の

輸出国もまた、南北アメリカやロシア、中央アジアからの

さらなる原油の供給を吸収するためにOPECを越えてア

ジア太平洋に目を向けている。

天然ガスでは、日本をはじめとするアジア太平洋地域が最

大の燃料輸入者だ。日本の需要成長は伸び悩むことが予

想されるが、中国や韓国、マレーシアは今後、天然ガスの使

用量が増えるものと思われる。マレーシアとインドネシア

からの輸出は、資源の枯渇と国内消費の増加が原因で衰

退することが予測される。

弊社の見解

新たな供給源の登場は、2020年代に世界的な化石燃料

市場を再編成するだろう。また米国の国内産出量の増加

や、カナダやメキシコ、ブラジル、カザフスタンにおける生

産成長は、グローバルな石油ガス市場と地政学的な展望

を再形成するだろう。

OPEC加盟国やロシアなどの従来の生産国による優勢は

試練を受けることになり、市場でのシェアや影響力を維持

するためにより積極的な競合を行うことが強いられるだ

ろう。

需要側からすると、アジア太平洋地域の石油ガス市場は、

過去10年間、需要成長の大半を占めており、この上昇軌道

は今後も継続すると考えられる。これが同地域および同地

域内の国々を戦略的に重要な存在たらしめている。これら

の国々が持つ供給吸収力は、世界的な地政学や国際的な

貿易に対して大きな影響を持つことになるだろう。

アジア太平洋地域の石油ガス市場の将来的な発展は、主

要顧客である中国が、増加するエネルギーのニーズを満た

し、自国のエネルギー安全保障を確保するために次にとる

行動によって推進される。中国の石油ガスに対する需要は

今後10年で大幅に増加することが予想される一方で、エ

ネルギーミックスを多様化させるために中国は、「中央ア

ジア諸国からの石油ガス」や、「国内のシェール生産」、ある

いは「再生可能エネルギーや原子力、水力発電のような代

替エネルギー源」といった従来の供給の枠外にある新たな

エネルギー源を利用する選択をするかもしれない。

10

Page 13: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

0 10 20 30 40 50 60 70 80

欧州におけるロシア、ノルウェー、アフリカ、中東からのガス輸入

ドイツ

イタリア

トルコ

フランス

ベルギー

その他欧州

オランダ

チェコ共和国

オーストリア

出典:BP世界エネルギー統計レビュー2013

■ ロシア連邦  ■ ノルウェー  ■ カタール  ■ アルジェリア  ■ エジプト  ■ ナイジェリア  ■ イラン  ■ リビア

アジア太平洋地域の石油ガス市場の将来的な発展は、主要顧客である中国が、増加するエネルギーのニーズを満たし、自国のエネルギー安全保障を確保するために次にとる行動によって推進される。

アジア太平洋地域は、需要成長のポテンシャルが高い地域だ。2012年から2035年の間の、液体に対する世界の需要成長の72%がアジア太平洋に由来すると見込まれている。

しかしながら、現在の中東のアジア太平洋への供給国(カ

タール、オマーン、アラブ首長国連邦、さらにナイジェリア)

は、2010年代の後半、オーストラリアや東アフリカの新た

なLNG輸出施設に加え、潜在的には米国との競合にも直

面するだろう。現在計画・構築段階にあるロシアのLNGプ

ロジェクトもまた、この市場のいくつかをつかむことを目

標としている59。もし計画中の輸出施設が首尾よく完成す

れば、アジア太平洋地域のLNG市場は、さらに混雑した競

合性の高い市場になるだろう。

しかしながら、同地域における需要力学は、原油の世界最

大純輸入国である中国によって主に促進されていること

から、決して単純明快なものではない。OPECによる供給

は2013年は中国のニーズの大半を満たしたが、中国は多

様化を通じてより大きな供給安全保障を求めている。その

結果、近年、中国は原油を生産する多くの省において国内

のインフラ計画に投資している。将来的には必要性があれ

ば、中国は原油供給元としてOPECとロシア以外にもます

ます目を向けることになるかもしれない。

これは天然ガスについても同じことが言える。中国は以前

にもましてポートフォリオの多様化に焦点を当てており、

最近発表されたロシアのガスプロムからの4,000億ドル

のガス購入契約が示すように、東シベリアや中央アジア諸

国からのパイプラインを通じたガスの輸入など、さまざま

な供給元から供給を得る選択をしている。たとえば、主要

な中央アジア~中国ガスパイプラインは2016年までに

新しい分岐が運営されることが予測される。この分岐は、

大規模なトルクメニスタンのガルキニシュ(Galkynysh)

ガス田より中国にガスを輸送するもので、2020年までに

輸送量が65bcmに増大される60。加えて、中国自身の

シェール開発に向けた取り組みのスピードや規模も、将来

の天然ガス輸入への欲求に影響を与えるだろう。

アジア太平洋地域の市場力が高まると、その戦略的重要

性も同様に高まる。このことは、マラッカ海峡のマレーシア

とシンガポール間など、潜在的な石油ガス貿易ルートの渋

滞地点の保護に対する注目の拡大や、頻繁に領土権の主

張が行われ、その結果として議論の巻き起こる南シナ海に

おける緊張の高まりにもつながる。南シナ海は戦略的な理

由からだけではなく、潜在的に大規模ではあるにもかかわ

らずまだ開発の行われていない石油ガス資源としても重

要である。

ロシアは欧州のガス市場で、重大な競争に直面するかもし

れない。2012年にノルウェーが、競争力のあるハブベース

でのスポット価格によって、欧州の主要供給国であるロシ

アをしのいだ53。中東諸国からの供給もまた、欧州におけ

るロシアの供給支配にとって将来的な脅威となり得る。

2012年、アルジェリアとイラン、リビア、エジプト、ナイ

ジェリアは合わせて75十億立方メートル(bcm)の天然ガ

スをパイプライン経由でLNGとして販売したが、これに対

しロシアの供給量は130bcmだった54。さらに、数年前に

米国の主要供給国になることになったカタールは、2012

年に欧州で30bcm近くのLNGを販売している。特筆すべ

きは、この量の半分以上が、ロシアもパイプライン経由で

ガスを販売している西欧諸国に送られている点だ。カター

ルから欧州に提供されるLNGの量はまた、2010年代後

半に登場するLNGプロジェクトの増加にもつながる可能

性があり、アジア太平洋市場における競争を激化し、欧州

への出荷可能量を増やし得る。

同時に、いくつかの欧州の国家は、エネルギー供給におけ

るロシアの支配を緩めることに躍起になっている。フィン

ランドとエストニアはいずれも、ロシアからの輸入を低減

するためにLNGの再ガス化工場を建設する予定だ55。

ポーランドは同じ理由から、カタールのLNGにより高い金

額を支払う用意がある56。石炭に代わる米国シェールガス

ブームもまた、ロシアのガスに対する欧州の欲求を低下さ

せ得るものだ。欧州市場でのロシアの供給に関する長期

的な見通しは、ウクライナにおける危機の影響も受ける可

能性があり、緩和措置としてLNG輸出申請の承認プロセ

スの迅速化を米国に対し求める声もある。ただしこれは、

長期的に欧州に影響を与えるにすぎない。

欧州における需要成長の鈍化と競争の激化を相殺すべ

く、ロシアはアジア太平洋(特に中国)に目を向けており、

パイプ輸送によるガスとLNGを通じた同地域での市場開

拓を狙っている。しかしながら、この探求を行うのはロシ

アだけではない。

アジア太平洋地域での市場シェアをめぐる闘い

アジア太平洋地域は、需要成長のポテンシャルが高い地域

だ。2012年から2035年の間の、原油に対する世界の需

要成長の72%がアジア太平洋に由来すると見込まれてい

る57。この成長は、主に輸送セクターにおける利益による

ものである。一方で、いくつかのアジアの国々で見られる

電力消費量の増加と、石炭や原子力による発電から脱す

る動きは、同地域の堅調なエネルギー需要プロフィールを

さらに強化するものと思われる。

アジア太平洋諸国は現在、OPECの主要顧客であり、

2012年はOPECの原油輸出の57%を購入している58。

また同地域は、米国の需要が低下していることから、いっ

そうOPECにとって重要な存在になろうとしている。他の

輸出国もまた、南北アメリカやロシア、中央アジアからの

さらなる原油の供給を吸収するためにOPECを越えてア

ジア太平洋に目を向けている。

天然ガスでは、日本をはじめとするアジア太平洋地域が最

大の燃料輸入者だ。日本の需要成長は伸び悩むことが予

想されるが、中国や韓国、マレーシアは今後、天然ガスの使

用量が増えるものと思われる。マレーシアとインドネシア

からの輸出は、資源の枯渇と国内消費の増加が原因で衰

退することが予測される。

弊社の見解

新たな供給源の登場は、2020年代に世界的な化石燃料

市場を再編成するだろう。また米国の国内産出量の増加

や、カナダやメキシコ、ブラジル、カザフスタンにおける生

産成長は、グローバルな石油ガス市場と地政学的な展望

を再形成するだろう。

OPEC加盟国やロシアなどの従来の生産国による優勢は

試練を受けることになり、市場でのシェアや影響力を維持

するためにより積極的な競合を行うことが強いられるだ

ろう。

需要側からすると、アジア太平洋地域の石油ガス市場は、

過去10年間、需要成長の大半を占めており、この上昇軌道

は今後も継続すると考えられる。これが同地域および同地

域内の国々を戦略的に重要な存在たらしめている。これら

の国々が持つ供給吸収力は、世界的な地政学や国際的な

貿易に対して大きな影響を持つことになるだろう。

アジア太平洋地域の石油ガス市場の将来的な発展は、主

要顧客である中国が、増加するエネルギーのニーズを満た

し、自国のエネルギー安全保障を確保するために次にとる

行動によって推進される。中国の石油ガスに対する需要は

今後10年で大幅に増加することが予想される一方で、エ

ネルギーミックスを多様化させるために中国は、「中央ア

ジア諸国からの石油ガス」や、「国内のシェール生産」、ある

いは「再生可能エネルギーや原子力、水力発電のような代

替エネルギー源」といった従来の供給の枠外にある新たな

エネルギー源を利用する選択をするかもしれない。

11石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 14: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

ブラジル

消費ミックスにおけるクリーン燃料の度合い 100%再生可能エネルギー

100%石炭

出典:EIA国際エネルギー展望2013、2013年7月 BPエネルギー展望2035、2014年1月 エクソンモービル エネルギーの見通し:2040年の展望、2014年

注:本グラフでは原子力は再生可能エネルギーに含まれる。推移は2035年までの期間である。

● 石油優位  ● ガス優位  ● 石炭優位  ● 再生可能エネルギー優位

円の大きさは当該国/地域の相対的な消費量を表す

エネルギー消費ミックスにおける主要燃料の推移

純エネルギー輸出/生産

アフリカ

中南米

ロシア

欧州

米国

その他アジア

中国

インド

中東

厳しい排出目標を達成する取り組みの中で、欧州連合はそのエネルギー供給ポートフォリオにおいて引き続き代替燃料のシェアを増やそうと意図している。

従来の輸出国間でのエネルギー需要は、それぞれが経済

発展の段階のどのあたりにいるのかによって左右される。

ロシアの消費は引き続きガスが中心になると思われるが、

これはガスが広く利用できることや需要成長が比較的低

いこと、再生可能技術が登場したことなどによるものだ。

特筆すべきは、ロシアは最近、初の政府支援による再生エ

ネルギー助成金を提議し、クリーン電力のベンチャー企業

39社(合わせて504メガワットの容量)に助成金を出す

計画を打ち立てている68。中東もまた今後ますます、ク

リーンな天然ガスに移行するだろう。同地域のエネルギー

需要は急増が予測され、これを促すのは人口の増加や一人

当たりの国民所得の増加、近代化(これによって輸送や産

業化、電化によりエネルギーの必要性が高まる)などであ

る。国内での急激な需要の増加は、同地域の輸出容量を低

下させるだろう。似たような状況が起こりつつあるのがア

フリカだ。アフリカでは、人口増加や都市化(これによって

同地域のエネルギーミックスにおける天然ガスと再生可

能エネルギーの比率が拡大する)によって、電力消費量が

最速で成長するものと予測される。

世界のエネルギーミックスは、1つの燃料が各時代を支配

しながら進化を続けている。最初は薪に始まり、続いて石

炭が登場した。しかし20世紀途中から21世紀にかけては

石油の時代で、2012年は世界のエネルギー消費のうち

36%を占めている。この比率は、世界のエネルギー消費が

50%成長したにもかかわらず、この20年間で変わってい

ない61。

近年、いくつかの出来事がエネルギー方程式の供給側と需

要側の両方に影響を与えた。いくつかの出来事とは、

2008年の世界金融危機以降の先進経済における需要の

成長低迷や、米国のシェール田からの原油や天然ガスの

生産増加、日本における福島第一原発の原子力事故、従来

のエネルギー生産国における社会的・政治的不安(中東、

アフリカ)、欧州の排出権取引制度におけるCO2価格の減

退、欧州とアジアにおける飛躍的な再生可能エネルギーの

成長などを指す。こうした出来事に照らしてエネルギーの

需要と供給のバランスをとることで、世界は新たな時代の

一歩手前まで進んできた。そしてまもなく、グローバルな

エネルギーミックスの中で次なる燃料の序列が決まろう

としている。

多様化する供給

2000年のはじめ頃までは、世界中の石油ガス埋蔵量の

追加や目立った生産量の増加は、主に中東とアフリカが

担っていた。しかしそれから20年も経たずして、新しい供

給活動の中心は西に移動した。ここに、2つの新たな供給

地域が出現し、経済的に回収可能な資源の世界的基盤を

拡大するとともに、生産成長を促進している。たとえば世

界的な可採年数(R/P)は、1990年代後半には50年未満

だったのが、2012年には55年に伸び、この数字を促進し

ているのが北米の非在来資源や、南米のプレソルト油や重

油の発見だ62。

南米は北米よりも多く埋蔵量を追加しているが、北米は南

米よりも速いペースで新たな発掘を生産に転換している。

これは、非在来資源(主にシェール)の開発が、プレソルト油

や重油に比べて迅速かつ低コストで行えるからだ。わずか

数年間で、米国での非在来資源の生産は、米国を天然ガス

の主要輸入国から純輸出国へと変えてしまった。

米国におけるシェールブームは、世界的な供給ミックスにお

ける天然ガスのランクを押し上げただけでなく、重大な

シェールガス埋蔵量を持つ他の国(中国やアルゼンチン)に

対し、自国でもこの活動に倣うことができるとの自信を与え

た。世界中でのLNG施設の拡散は、この地域的な供給多様

性をさらに拡大させている。2006年以降、新たに5つの国

がLNGの輸出を開始し、これによって2012年には供給量

が50%増加して237.7百万トン/年(MTPA)となった63。

限定された地域での再生可能エネルギーと原子力エネル

ギーの成長もまた、方程式の供給側に変化を与えた。世界的

な再生可能エネルギーと原子力エネルギーの生産は、2007

年から2012年の間にCAGRで17%増加しており、これは

欧州や米国、中国における大容量の追加によって推進された

ものである64。厳しい排出目標を達成する取り組みの中で、欧

州連合はそのエネルギー供給ポートフォリオにおいて引き続

き代替燃料のシェアを増やそうと意図している。他の国々も、

再生可能技術が成熟すればこれに倣う可能性が高い。

進化する需要ミックス

先進経済の消費パターンは、ますます独自的なものになっ

てきている。米国はシェールガスブームを受けて、天然ガス

がエネルギーミックスにおいて以前にもまして重要な役割

を担うようになり、輸入依存型で石油ベースの経済からエ

ネルギー自給型へと変化してきている(次ページの図を参

照)。一方で欧州は、クリーンな燃料消費でリードを広げて

いる。2012年は、欧州のエネルギー消費のうち無公害の

ものが11%を占め、2020年までには20%にするという

目標に向かって進んでいる。日本もまた、変化を起こしてい

る。2011年3月の福島第一原発事故の後、日本は天然ガ

スの輸入を増やし、エネルギーポートフォリオの中で石炭の

比率を25%で一定に保つなど、エネルギーミックスの多様

化に取り組んでいる65。輸入された天然ガスは、日本ではほ

ぼ完全に原子力(事故の前まではエネルギーミックスのう

ち約30%を占めていた)に取って代わっているが、原子力

もまもなく基盤を取り戻すかもしれない。いくつかの電力会

社はすでに、新しい日本の原子力規制委員会に対し、原子

炉数基について再始動の申請を提出済みであり66、原子力

は日本の新たなエネルギー基本計画のもとで主要なベー

スロード電源の1つとして機能し続ける見込みである67。

中国やインドの新興経済では、事情が異なってくる。天然

ガスや再生可能エネルギーの強い成長に反して、両国にお

けるエネルギーミックスは数年間は大きく変わることはな

く、石炭が主流であり続けると予想される。両国ともによ

りクリーンな天然ガスに移行することで大きな恩恵を受

けることができるにもかかわらず、なぜ現状維持が予測さ

れるのか。実際、中国は汚染の軽減と燃料ミックスの多様

化を目的に、エネルギーポートフォリオにおける天然ガス

の割合を引き上げようと計画している。第十二次五カ年計

画で概説されたように、中国はエネルギーポートフォリオ

における天然ガスの割合を、2011年のわずか4%から

2015年には8%に倍増させる目標を掲げた69。インドも

また、同じような熱意を抱いている。しかしながら、天然ガ

ス輸入にかかるコストと、パイプラインの不足や輸送ネッ

トワークの欠如によって、両国で天然ガスが果たすことの

できる役割は限られてくると考えられる。その結果、増大す

る近々の電力生産ニーズに応えるために中国とインドが選

択できる方法は、豊富かつ安価な石炭に頼り続けることだ

けだ。したがって、主要なアナリストや市場参加者は、今後

も石炭が同地域のエネルギーミックスにおいておよそ45

~60%を占めるだろうと予測している70。

エネルギーミックス:グローバルな燃料序列の変化

従来の輸出国間でのエネルギー需要は、それぞれが経済発展の段階のどのあたりにいるのかによって左右される。

12

Page 15: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

ブラジル

消費ミックスにおけるクリーン燃料の度合い 100%再生可能エネルギー

100%石炭

出典:EIA国際エネルギー展望2013、2013年7月 BPエネルギー展望2035、2014年1月 エクソンモービル エネルギーの見通し:2040年の展望、2014年

注:本グラフでは原子力は再生可能エネルギーに含まれる。推移は2035年までの期間である。

● 石油優位  ● ガス優位  ● 石炭優位  ● 再生可能エネルギー優位

円の大きさは当該国/地域の相対的な消費量を表す

エネルギー消費ミックスにおける主要燃料の推移

純エネルギー輸出/生産

アフリカ

中南米

ロシア

欧州

米国

その他アジア

中国

インド

中東

厳しい排出目標を達成する取り組みの中で、欧州連合はそのエネルギー供給ポートフォリオにおいて引き続き代替燃料のシェアを増やそうと意図している。

従来の輸出国間でのエネルギー需要は、それぞれが経済

発展の段階のどのあたりにいるのかによって左右される。

ロシアの消費は引き続きガスが中心になると思われるが、

これはガスが広く利用できることや需要成長が比較的低

いこと、再生可能技術が登場したことなどによるものだ。

特筆すべきは、ロシアは最近、初の政府支援による再生エ

ネルギー助成金を提議し、クリーン電力のベンチャー企業

39社(合わせて504メガワットの容量)に助成金を出す

計画を打ち立てている68。中東もまた今後ますます、ク

リーンな天然ガスに移行するだろう。同地域のエネルギー

需要は急増が予測され、これを促すのは人口の増加や一人

当たりの国民所得の増加、近代化(これによって輸送や産

業化、電化によりエネルギーの必要性が高まる)などであ

る。国内での急激な需要の増加は、同地域の輸出容量を低

下させるだろう。似たような状況が起こりつつあるのがア

フリカだ。アフリカでは、人口増加や都市化(これによって

同地域のエネルギーミックスにおける天然ガスと再生可

能エネルギーの比率が拡大する)によって、電力消費量が

最速で成長するものと予測される。

世界のエネルギーミックスは、1つの燃料が各時代を支配

しながら進化を続けている。最初は薪に始まり、続いて石

炭が登場した。しかし20世紀途中から21世紀にかけては

石油の時代で、2012年は世界のエネルギー消費のうち

36%を占めている。この比率は、世界のエネルギー消費が

50%成長したにもかかわらず、この20年間で変わってい

ない61。

近年、いくつかの出来事がエネルギー方程式の供給側と需

要側の両方に影響を与えた。いくつかの出来事とは、

2008年の世界金融危機以降の先進経済における需要の

成長低迷や、米国のシェール田からの原油や天然ガスの

生産増加、日本における福島第一原発の原子力事故、従来

のエネルギー生産国における社会的・政治的不安(中東、

アフリカ)、欧州の排出権取引制度におけるCO2価格の減

退、欧州とアジアにおける飛躍的な再生可能エネルギーの

成長などを指す。こうした出来事に照らしてエネルギーの

需要と供給のバランスをとることで、世界は新たな時代の

一歩手前まで進んできた。そしてまもなく、グローバルな

エネルギーミックスの中で次なる燃料の序列が決まろう

としている。

多様化する供給

2000年のはじめ頃までは、世界中の石油ガス埋蔵量の

追加や目立った生産量の増加は、主に中東とアフリカが

担っていた。しかしそれから20年も経たずして、新しい供

給活動の中心は西に移動した。ここに、2つの新たな供給

地域が出現し、経済的に回収可能な資源の世界的基盤を

拡大するとともに、生産成長を促進している。たとえば世

界的な可採年数(R/P)は、1990年代後半には50年未満

だったのが、2012年には55年に伸び、この数字を促進し

ているのが北米の非在来資源や、南米のプレソルト油や重

油の発見だ62。

南米は北米よりも多く埋蔵量を追加しているが、北米は南

米よりも速いペースで新たな発掘を生産に転換している。

これは、非在来資源(主にシェール)の開発が、プレソルト油

や重油に比べて迅速かつ低コストで行えるからだ。わずか

数年間で、米国での非在来資源の生産は、米国を天然ガス

の主要輸入国から純輸出国へと変えてしまった。

米国におけるシェールブームは、世界的な供給ミックスにお

ける天然ガスのランクを押し上げただけでなく、重大な

シェールガス埋蔵量を持つ他の国(中国やアルゼンチン)に

対し、自国でもこの活動に倣うことができるとの自信を与え

た。世界中でのLNG施設の拡散は、この地域的な供給多様

性をさらに拡大させている。2006年以降、新たに5つの国

がLNGの輸出を開始し、これによって2012年には供給量

が50%増加して237.7百万トン/年(MTPA)となった63。

限定された地域での再生可能エネルギーと原子力エネル

ギーの成長もまた、方程式の供給側に変化を与えた。世界的

な再生可能エネルギーと原子力エネルギーの生産は、2007

年から2012年の間にCAGRで17%増加しており、これは

欧州や米国、中国における大容量の追加によって推進された

ものである64。厳しい排出目標を達成する取り組みの中で、欧

州連合はそのエネルギー供給ポートフォリオにおいて引き続

き代替燃料のシェアを増やそうと意図している。他の国々も、

再生可能技術が成熟すればこれに倣う可能性が高い。

進化する需要ミックス

先進経済の消費パターンは、ますます独自的なものになっ

てきている。米国はシェールガスブームを受けて、天然ガス

がエネルギーミックスにおいて以前にもまして重要な役割

を担うようになり、輸入依存型で石油ベースの経済からエ

ネルギー自給型へと変化してきている(次ページの図を参

照)。一方で欧州は、クリーンな燃料消費でリードを広げて

いる。2012年は、欧州のエネルギー消費のうち無公害の

ものが11%を占め、2020年までには20%にするという

目標に向かって進んでいる。日本もまた、変化を起こしてい

る。2011年3月の福島第一原発事故の後、日本は天然ガ

スの輸入を増やし、エネルギーポートフォリオの中で石炭の

比率を25%で一定に保つなど、エネルギーミックスの多様

化に取り組んでいる65。輸入された天然ガスは、日本ではほ

ぼ完全に原子力(事故の前まではエネルギーミックスのう

ち約30%を占めていた)に取って代わっているが、原子力

もまもなく基盤を取り戻すかもしれない。いくつかの電力会

社はすでに、新しい日本の原子力規制委員会に対し、原子

炉数基について再始動の申請を提出済みであり66、原子力

は日本の新たなエネルギー基本計画のもとで主要なベー

スロード電源の1つとして機能し続ける見込みである67。

中国やインドの新興経済では、事情が異なってくる。天然

ガスや再生可能エネルギーの強い成長に反して、両国にお

けるエネルギーミックスは数年間は大きく変わることはな

く、石炭が主流であり続けると予想される。両国ともによ

りクリーンな天然ガスに移行することで大きな恩恵を受

けることができるにもかかわらず、なぜ現状維持が予測さ

れるのか。実際、中国は汚染の軽減と燃料ミックスの多様

化を目的に、エネルギーポートフォリオにおける天然ガス

の割合を引き上げようと計画している。第十二次五カ年計

画で概説されたように、中国はエネルギーポートフォリオ

における天然ガスの割合を、2011年のわずか4%から

2015年には8%に倍増させる目標を掲げた69。インドも

また、同じような熱意を抱いている。しかしながら、天然ガ

ス輸入にかかるコストと、パイプラインの不足や輸送ネッ

トワークの欠如によって、両国で天然ガスが果たすことの

できる役割は限られてくると考えられる。その結果、増大す

る近々の電力生産ニーズに応えるために中国とインドが選

択できる方法は、豊富かつ安価な石炭に頼り続けることだ

けだ。したがって、主要なアナリストや市場参加者は、今後

も石炭が同地域のエネルギーミックスにおいておよそ45

~60%を占めるだろうと予測している70。

エネルギーミックス:グローバルな燃料序列の変化

従来の輸出国間でのエネルギー需要は、それぞれが経済発展の段階のどのあたりにいるのかによって左右される。

13石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 16: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

百万トン/年 %

70

60

50

40

30

20

10

02000年 2005年 2010年 2012年 2013年

30

25

20

15

10

5

0

■ スポットLNG貿易(百万トン/年)  ● LNG貿易全体に占める割合(右側)

出典:国際LNG輸入者協会 2013年のLNG業界、2014年3月

2000年以降のスポットおよび短期(5年未満)のLNG貿易と、LNG貿易全体におけるシェア82

同時に、東洋(特に中国とインド)での消費量増加は輸入のニーズを高め、より多くの石油供給を誘発するだろう。

グローバルなLNG貿易は、2000年の約14十億立方

フィート/日(Bcf/日)から、2012年には30Bcf/日以

上に倍増した77。最近はプロジェクトの遅延や不可抗力、

新規事業の減少によって低迷が見られるものの、オースト

ラリアでは新たなLNG生産量として8Bcf/日以上が生

まれ、北米からもLNG輸出が始まるなど、2015年以降は

再びグローバルなLNG貿易が上向くと予想される。米国

だけでも、すでに35以上の液化プロジェクトが提案され

ており、その容量は40Bcf/日近くにものぼる。デロイト・

マーケットポイントによると、グローバルなLNG輸出量

は、2013年から2030年の間に62Bcf/日に倍増するこ

とが予測されている78。

LNGは、地域的な価格格差(裁定機会が発生する)や、目的

地の転換が可能な契約(企業に転売や再輸出の機会が生

まれる)への転換によって、スポット市場で取引されるケー

スが増えている。スポット取引や短期の取引は、2000年に

は5%未満だったのが、2013年には27%に増加した79。

カタールとナイジェリアはスポットおよび短期のLNG総

量の半分以上を輸出し、アジアはこのうち70%を受け

取った80。世界的には、2012年は合計で75のカーゴが再

輸出された(比較として、2011年は44)81。再輸出の大半

はスペインやベルギーなど、欧州の国からだった。スポット

取引の増加は、方向転換の可能なオプション付き契約へ

の動きとも相まって、LNG貨物および受取施設を、グロー

バルな商品において重要な特徴である「標準化」へと推進

している。

石油ガス産業に対する影響

エネルギー需要と供給の方程式の転換は、「商品価格」、

「貿易パターン」、「政策展開」、「技術配置」といった点で業

界参加者に影響を与えるだろう。

商品価格

2011年以来、原油の価格は以前よりも安定しており、過

去3年間のブレント価格は各年平均で110ドル/バレル弱

だった。OPECの予備容量が2002年の6百万バレル/日

から2011~2013年の間に2.75百万バレル/日以下に

下がったこと、また言うまでもなく多くのエネルギー産出

国が政治的混乱を経験し、生産量が非OPEC国(北海およ

び旧ソ連)でも下がったことを考えると、この安定性は驚く

べきである71。この理由として、米国におけるタイトオイル

の供給増加とイラクにおける生産量の増加が世界市場に

供給のクッションを提供し、これによって世界レベルでの

供給の不足や混乱が相殺されたことが挙げられる。

世界的な可採年数(R/P)の増加と供給多様性の増大(=

米国、カナダ、ブラジル)は、短期的には石油価格を安定さ

せるだろう。米国EIAの予測では、ブレント価格は2020

年までバレル単価90~100ドル(2012年のドル建て金

額)をキープする72。この価格安定性の見込みは、業界の掘

削プログラムや消費者需要が引き続き平均的になること

から、業界にとって良い前兆である。

しかしながら天然ガスの価格は、天然ガスの契約や価格メ

カニズムが業界の急速な変化に対応しようとするため、よ

り不安定になる可能性が高い。たとえばシェールブームは、

米国においてガス価格を原油価格から引き離したり、欧州

の生産国に対し競合性を維持するためにハブベースの価

格設定を検討する圧力をかけたり、アジアの輸入国の間

で原油連動を低減することに関する議論を呼び起こすな

どしている。

欧州第2位のガス供給会社スタットオイルは、こうした転換

の重要性を示す好適例を示している。同社の英国、オラン

ダ、ベルギーの契約は現在、地域的なガスハブにおける価

格に連動している。具体的に言うと、新しい契約では、英国

ならNational Balancing Point、オランダならTitle

Transfer Facilityといったハブにおける1日前価格や1か

月前価格、1シーズン前価格の混合に連動している。欧州

の生産国は原油連動価格に道を譲っているが、欧州のガ

スハブにおける価格はそれに向けて強く反発してきた。な

ぜか? 同地域はLNG輸入をめぐって、地域ガスハブの欠

如が原因で原油連動価格を継続しているアジアと競合し

ている73。

同様にアジア太平洋地域の顧客は、米国の新たなLNG輸

出業者からのヘンリーハブ価格に強い関連性を持たせた

価格伸縮性条項を要求することで、地域間でのガス価格

の格差を縮めようとしている。しかしこの格差は、輸送コス

トやガスの液化/再ガス化に関連した費用が大きいため、

そのまま維持される可能性が高い。たとえば、大規模なオ

フショアのプロジェクトでは、中流(=採掘および輸送パイ

プライン)と下流(=液化)のコストが供給コスト全体の

70%までを占める74。地域間の輸送コストもまた、全コス

トの10~20%を占めている75。全体として、調達や液化、

輸送、再ガス化にかかるコストは、「アジアのプレミアム」に

換算して百万Btuあたり2~4ドルになる76。この地域的な

価格差異は、再輸出や貿易の選択肢を世界的に残すもの

となるだろう。

貿易パターン

米国におけるタイトオイルの国内生産量の増加と、カナダ

における産出量増加は、北米の海外への石油依存を低減

するだろう。北米での石油貿易の大半は、カナダと米国間

で行われることになり、他の地域からの輸入は限定され

る。同時に、東洋(特に中国とインド)での消費量増加は同

地域の輸入のニーズを高め、より多くの石油供給を誘発す

るだろう。その結果、かつては米国向けであった中東や西

アフリカ、ラテンアメリカからの石油輸出の大半は、東洋

に向けられることになる。

石油貿易は昔から世界的に行われているが、天然ガスの貿

易は古くから地域的である。天然ガス貿易には、カナダか

ら米国、東南アジアやオーストラリアから東アジアなど、地

域内のもののほか、ロシアから欧州、中東から東アジアな

ど地域間のもの(主にパイプライン経由)も含まれる。しか

しながら、世界的なLNGプロジェクトの大規模開発は、国

際市場における天然ガスの代替性を高めている。

それにもかかわらずLNGのプロジェクトは莫大な先行投

資や資金調達、長期的な工事期間、技術的なメンテナンス、

規制認可プロセスなど、実を結ぶまでに多くの障害をいま

だ乗り越えなければならない。こうした状況下において、

従来のLNG輸出国は完全に長期的な契約から脱却するこ

とに対し消極的になるだろう。契約期間が長いほどLNG

輸入国にとってもメリットがあり、LNG供給の可用性につ

いてまだ不安定性が残る環境においてはなおさらだ。その

ため、エネルギー安全保障を確保するために今後も長期的

な双務契約を好むLNG輸入国もあるだろう。つまり、原油

と同様に、ガスも従前よりは国際市場で取引されるように

なっているが、スポット契約や短期契約への完全なシフト

は考えにくいということだ。これを実現するには、輸送や保

管、液化、再ガス化、LNG貿易に付随する大きなコストを軽

減する技術的な発展やその他の革新が必要になってくる。

政策展開

エネルギー自給の達成を目前にした米国等、先進経済は

環境面でのサステナビリティ(エネルギー効率や再生可能

資源を推進するもの)の促進や、輸送セクターにおけるク

リーン燃料の多用(石油への依存を低減できる)の促進を

実現する政策に焦点を置くだろう。

グローバルなLNG貿易は、2000年の約140億立方フィート/日(Bcf/日)から、2012年には30Bcf/日以上に倍増した。

14

Page 17: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

百万トン/年 %

70

60

50

40

30

20

10

02000年 2005年 2010年 2012年 2013年

30

25

20

15

10

5

0

■ スポットLNG貿易(百万トン/年)  ● LNG貿易全体に占める割合(右側)

出典:国際LNG輸入者協会 2013年のLNG業界、2014年3月

2000年以降のスポットおよび短期(5年未満)のLNG貿易と、LNG貿易全体におけるシェア82

同時に、東洋(特に中国とインド)での消費量増加は輸入のニーズを高め、より多くの石油供給を誘発するだろう。

グローバルなLNG貿易は、2000年の約14十億立方

フィート/日(Bcf/日)から、2012年には30Bcf/日以

上に倍増した77。最近はプロジェクトの遅延や不可抗力、

新規事業の減少によって低迷が見られるものの、オースト

ラリアでは新たなLNG生産量として8Bcf/日以上が生

まれ、北米からもLNG輸出が始まるなど、2015年以降は

再びグローバルなLNG貿易が上向くと予想される。米国

だけでも、すでに35以上の液化プロジェクトが提案され

ており、その容量は40Bcf/日近くにものぼる。デロイト・

マーケットポイントによると、グローバルなLNG輸出量

は、2013年から2030年の間に62Bcf/日に倍増するこ

とが予測されている78。

LNGは、地域的な価格格差(裁定機会が発生する)や、目的

地の転換が可能な契約(企業に転売や再輸出の機会が生

まれる)への転換によって、スポット市場で取引されるケー

スが増えている。スポット取引や短期の取引は、2000年に

は5%未満だったのが、2013年には27%に増加した79。

カタールとナイジェリアはスポットおよび短期のLNG総

量の半分以上を輸出し、アジアはこのうち70%を受け

取った80。世界的には、2012年は合計で75のカーゴが再

輸出された(比較として、2011年は44)81。再輸出の大半

はスペインやベルギーなど、欧州の国からだった。スポット

取引の増加は、方向転換の可能なオプション付き契約へ

の動きとも相まって、LNG貨物および受取施設を、グロー

バルな商品において重要な特徴である「標準化」へと推進

している。

石油ガス産業に対する影響

エネルギー需要と供給の方程式の転換は、「商品価格」、

「貿易パターン」、「政策展開」、「技術配置」といった点で業

界参加者に影響を与えるだろう。

商品価格

2011年以来、原油の価格は以前よりも安定しており、過

去3年間のブレント価格は各年平均で110ドル/バレル弱

だった。OPECの予備容量が2002年の6百万バレル/日

から2011~2013年の間に2.75百万バレル/日以下に

下がったこと、また言うまでもなく多くのエネルギー産出

国が政治的混乱を経験し、生産量が非OPEC国(北海およ

び旧ソ連)でも下がったことを考えると、この安定性は驚く

べきである71。この理由として、米国におけるタイトオイル

の供給増加とイラクにおける生産量の増加が世界市場に

供給のクッションを提供し、これによって世界レベルでの

供給の不足や混乱が相殺されたことが挙げられる。

世界的な可採年数(R/P)の増加と供給多様性の増大(=

米国、カナダ、ブラジル)は、短期的には石油価格を安定さ

せるだろう。米国EIAの予測では、ブレント価格は2020

年までバレル単価90~100ドル(2012年のドル建て金

額)をキープする72。この価格安定性の見込みは、業界の掘

削プログラムや消費者需要が引き続き平均的になること

から、業界にとって良い前兆である。

しかしながら天然ガスの価格は、天然ガスの契約や価格メ

カニズムが業界の急速な変化に対応しようとするため、よ

り不安定になる可能性が高い。たとえばシェールブームは、

米国においてガス価格を原油価格から引き離したり、欧州

の生産国に対し競合性を維持するためにハブベースの価

格設定を検討する圧力をかけたり、アジアの輸入国の間

で原油連動を低減することに関する議論を呼び起こすな

どしている。

欧州第2位のガス供給会社スタットオイルは、こうした転換

の重要性を示す好適例を示している。同社の英国、オラン

ダ、ベルギーの契約は現在、地域的なガスハブにおける価

格に連動している。具体的に言うと、新しい契約では、英国

ならNational Balancing Point、オランダならTitle

Transfer Facilityといったハブにおける1日前価格や1か

月前価格、1シーズン前価格の混合に連動している。欧州

の生産国は原油連動価格に道を譲っているが、欧州のガ

スハブにおける価格はそれに向けて強く反発してきた。な

ぜか? 同地域はLNG輸入をめぐって、地域ガスハブの欠

如が原因で原油連動価格を継続しているアジアと競合し

ている73。

同様にアジア太平洋地域の顧客は、米国の新たなLNG輸

出業者からのヘンリーハブ価格に強い関連性を持たせた

価格伸縮性条項を要求することで、地域間でのガス価格

の格差を縮めようとしている。しかしこの格差は、輸送コス

トやガスの液化/再ガス化に関連した費用が大きいため、

そのまま維持される可能性が高い。たとえば、大規模なオ

フショアのプロジェクトでは、中流(=採掘および輸送パイ

プライン)と下流(=液化)のコストが供給コスト全体の

70%までを占める74。地域間の輸送コストもまた、全コス

トの10~20%を占めている75。全体として、調達や液化、

輸送、再ガス化にかかるコストは、「アジアのプレミアム」に

換算して百万Btuあたり2~4ドルになる76。この地域的な

価格差異は、再輸出や貿易の選択肢を世界的に残すもの

となるだろう。

貿易パターン

米国におけるタイトオイルの国内生産量の増加と、カナダ

における産出量増加は、北米の海外への石油依存を低減

するだろう。北米での石油貿易の大半は、カナダと米国間

で行われることになり、他の地域からの輸入は限定され

る。同時に、東洋(特に中国とインド)での消費量増加は同

地域の輸入のニーズを高め、より多くの石油供給を誘発す

るだろう。その結果、かつては米国向けであった中東や西

アフリカ、ラテンアメリカからの石油輸出の大半は、東洋

に向けられることになる。

石油貿易は昔から世界的に行われているが、天然ガスの貿

易は古くから地域的である。天然ガス貿易には、カナダか

ら米国、東南アジアやオーストラリアから東アジアなど、地

域内のもののほか、ロシアから欧州、中東から東アジアな

ど地域間のもの(主にパイプライン経由)も含まれる。しか

しながら、世界的なLNGプロジェクトの大規模開発は、国

際市場における天然ガスの代替性を高めている。

それにもかかわらずLNGのプロジェクトは莫大な先行投

資や資金調達、長期的な工事期間、技術的なメンテナンス、

規制認可プロセスなど、実を結ぶまでに多くの障害をいま

だ乗り越えなければならない。こうした状況下において、

従来のLNG輸出国は完全に長期的な契約から脱却するこ

とに対し消極的になるだろう。契約期間が長いほどLNG

輸入国にとってもメリットがあり、LNG供給の可用性につ

いてまだ不安定性が残る環境においてはなおさらだ。その

ため、エネルギー安全保障を確保するために今後も長期的

な双務契約を好むLNG輸入国もあるだろう。つまり、原油

と同様に、ガスも従前よりは国際市場で取引されるように

なっているが、スポット契約や短期契約への完全なシフト

は考えにくいということだ。これを実現するには、輸送や保

管、液化、再ガス化、LNG貿易に付随する大きなコストを軽

減する技術的な発展やその他の革新が必要になってくる。

政策展開

エネルギー自給の達成を目前にした米国等、先進経済は

環境面でのサステナビリティ(エネルギー効率や再生可能

資源を推進するもの)の促進や、輸送セクターにおけるク

リーン燃料の多用(石油への依存を低減できる)の促進を

実現する政策に焦点を置くだろう。

グローバルなLNG貿易は、2000年の約140億立方フィート/日(Bcf/日)から、2012年には30Bcf/日以上に倍増した。

15石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 18: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

出典:デロイトによる分析

需要・供給の変化の影響

•石油の動きは地域的になる(カナダ-米国、中東-アジア)•ガスの動きは、LNGの拡散によって世界的になる

•国の政策は、経済的な燃料ルートを通じ、よりクリーンな燃料の促進へと移行する

•燃料経済と技術の効率性が重要になる•成功した技術の移転が燃料の序列を決定づける

•米国の供給は世界的な原油価格の不安定性を低減する•ガス価格は、輸送や加工コストが大きいため、今後も引き続き本質的に地域的なものになる

貿易

価格

政策技術 影響

欧州では、コストのかかる再生可能資源に関する最近の政策変更(これが一時的に同地域における石炭消費量の増加を促進した)にもかかわらず、よりクリーンな燃料を採用したいとの欲求が継続する。

弊社の見解

世界的なエネルギーミックスは、天然ガスのようなクリー

ンな燃料へと移行している。北米では、天然ガスが発電や

製造、輸送でますます利用されるようになっている。日本

もまた、パワーミックスの中で天然ガスの比率を高める計

画をしており、福島第一原発の事故で原子力発電の停止を

余儀なくされたのをきっかけに設定された進路を歩み続

けている。欧州では、コストのかかる再生可能資源に関す

る最近の政策変更(これが一時的に同地域における石炭

消費量の増加を促進した)にもかかわらず、よりクリーンな

燃料を採用したいとの欲求が継続する。クリーンエネル

ギーに対する長期的な取り組みの一環として、欧州はエネ

ルギーミックスにおける天然ガスの比率を増やし、一方で

LNGの輸入を増加させ、中央アジアや北アフリカからパイ

プラインを引き、天然ガスのパイプライン基盤を西から東

への流れをより多く含むように統合することで、ロシアか

らの供給への依存リスクを軽減させるだろう。一方ロシア

は、エネルギーのニーズにおける最大シェアとして天然ガ

スの使用を継続すると思われ、中東は経済の近代化にと

もなって少しずつ天然ガスに移行することが予測される。

アジアの新興諸国のみが、世界的な「ガスへのダッシュ」に

逆走しており、石炭の優位が続くだろう。

これに対して、経済成長やエネルギーへのアクセスは、最

初は輸入依存経済における政策決定を推進するものの、

長期的には燃料の多様化や環境保護がより注目を浴びる

ことになる。たとえば欧州では、炭素クレジットの過剰供

給と米国からの安価な石炭の可用性が高まったことで石

炭の価格が低下した結果、エネルギーミックスにおける石

炭の占有率が増加した。しかしながら、クリーンな燃料を

支持する政策が長期的には優勢になると見られる。

2050年までにCO2排出量を(1990年比で)80~95%

削減しようとする欧州の取り組みは、もし石炭燃料による

発電に関連した炭素排出を排除することができなければ、

石炭発電の完全撤退が必要となるだろう83。

他所ではプレッシャー下にある石炭だが、中国とインドで

は前向きな展望を維持している。両国は今後も、石炭(およ

び石油)のアクセス性やエネルギー安全保障、コストの低

さから、引き続き長期的にこれらの燃料に依存するだろ

う。2013年だけでも、中国は15の石炭プロジェクト(規模

にして100MTPA)の建設を承認している84。しかしなが

ら中国政府は、石炭発電に関連した環境上の課題も見据

えている。中国は、2030年までにエネルギーミックスに

おける石炭の比率を46%に下げ、同時にクリーンなエネ

ルギーの使用を増加する計画を発表しているようだ85。

技術配置

技術は、進化と成熟の両方の点で、しばしば燃料の競合性

を決定する。シェール井戸の破砕を高効率で検出・監視す

る新しい技術は今後、生産効率を向上し、仕上げコストを

軽減し、これによって世界的な燃料の序列におけるシェー

ルガスのランクを上げる可能性が高い。天然ガスへの動き

は、主に石炭を犠牲にする形で進んでいる。そのため、CO2

分離回収技術(CCS)のようなクリーンな石炭のための技

術の向上は、世界的な石炭の見通しが長期的に改善するの

であれば急ピッチで開発すべきである。一方で、太陽光や

水力などの再生可能技術の成熟は、大幅なコスト削減をも

たらし、地域によっては他の燃料との競合性を高めてきた

が、こうした技術の多くはいまだ助成金や財政政策に頼っ

ている。エネルギー貯蔵技術や予測・最適化の応用におけ

る進化もまた、再生可能技術が間欠性に関連する課題を克

服するのに役立っている。こうした領域の進展はすべて、再

生可能技術がグローバルなエネルギーミックスの中で化

石燃料に対してより強い基盤を得るためにも継続の必要

性がある。

技術が世界のある場所から別の場所にいかにうまく伝授・

移転されるかもまた、競合性の展望に影響を及ぼす。たと

えば主要な需要中心地である中国は、巨大なシェール資源

を有しているが、地政学的・政治的環境や、法的構造、産業

環境はOECDの世界と比べてより複雑である。水圧破砕が

中国で、あるいは別の場所で実施されたり、受け入れられ

たりすることがあるだろうか。この疑問の答えはまだ見え

ないが、ひとたび決定が行われれば、世界的な燃料の序列

に根本的な影響があるだろう。

天然ガス市場がより国際化している一方で、世界の原油貿

易は地域化へと移行しつつある。OECD諸国は原油の需

要が2011年から2040年の間にわずか2%しか上昇せ

ず、「ピーク需要」に達している。北米の原油市場は、同地域

における原油の供給増加がサウジアラビアの予備容量の

減少に対するクッションとして機能するため、今後も国際

市場から離れていくだろう。米国は、タイトオイルの生産が

増加するとともに「スイング・プロデューサー」となり、原油

価格を安定させ、企業が投資決定を行うためのより安定し

た環境を提供することになる。欧州連合諸国は、ロシアや

中東、北アフリカから原油を調達し、それを国内生産で補

うかたちになる。増大するアジアの原油需要は、アジア太

平洋地域の周辺国に加え、西から来る中東や中央アジアの

供給や、東から到達するラテンアメリカのカーゴによって

満たされるだろう。

世界のある場所での余剰資源の増加と、別の場所での需

要の増加は、石油ガス産業に大きな転換を生み出してい

る。この変容する需要・供給パターンは、世界的なエネル

ギーミックスにおける燃料序列を、天然ガスを有利にする

かたちで再編成するだろう。これが商品価格や貿易、政策、

技術に影響を与えるため、エネルギー産業の参加者にとっ

て大きなインパクトとなる。

16

Page 19: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

出典:デロイトによる分析

需要・供給の変化の影響

•石油の動きは地域的になる(カナダ-米国、中東-アジア)•ガスの動きは、LNGの拡散によって世界的になる

•国の政策は、経済的な燃料ルートを通じ、よりクリーンな燃料の促進へと移行する

•燃料経済と技術の効率性が重要になる•成功した技術の移転が燃料の序列を決定づける

•米国の供給は世界的な原油価格の不安定性を低減する•ガス価格は、輸送や加工コストが大きいため、今後も引き続き本質的に地域的なものになる

貿易

価格

政策技術 影響

欧州では、コストのかかる再生可能資源に関する最近の政策変更(これが一時的に同地域における石炭消費量の増加を促進した)にもかかわらず、よりクリーンな燃料を採用したいとの欲求が継続する。

弊社の見解

世界的なエネルギーミックスは、天然ガスのようなクリー

ンな燃料へと移行している。北米では、天然ガスが発電や

製造、輸送でますます利用されるようになっている。日本

もまた、パワーミックスの中で天然ガスの比率を高める計

画をしており、福島第一原発の事故で原子力発電の停止を

余儀なくされたのをきっかけに設定された進路を歩み続

けている。欧州では、コストのかかる再生可能資源に関す

る最近の政策変更(これが一時的に同地域における石炭

消費量の増加を促進した)にもかかわらず、よりクリーンな

燃料を採用したいとの欲求が継続する。クリーンエネル

ギーに対する長期的な取り組みの一環として、欧州はエネ

ルギーミックスにおける天然ガスの比率を増やし、一方で

LNGの輸入を増加させ、中央アジアや北アフリカからパイ

プラインを引き、天然ガスのパイプライン基盤を西から東

への流れをより多く含むように統合することで、ロシアか

らの供給への依存リスクを軽減させるだろう。一方ロシア

は、エネルギーのニーズにおける最大シェアとして天然ガ

スの使用を継続すると思われ、中東は経済の近代化にと

もなって少しずつ天然ガスに移行することが予測される。

アジアの新興諸国のみが、世界的な「ガスへのダッシュ」に

逆走しており、石炭の優位が続くだろう。

これに対して、経済成長やエネルギーへのアクセスは、最

初は輸入依存経済における政策決定を推進するものの、

長期的には燃料の多様化や環境保護がより注目を浴びる

ことになる。たとえば欧州では、炭素クレジットの過剰供

給と米国からの安価な石炭の可用性が高まったことで石

炭の価格が低下した結果、エネルギーミックスにおける石

炭の占有率が増加した。しかしながら、クリーンな燃料を

支持する政策が長期的には優勢になると見られる。

2050年までにCO2排出量を(1990年比で)80~95%

削減しようとする欧州の取り組みは、もし石炭燃料による

発電に関連した炭素排出を排除することができなければ、

石炭発電の完全撤退が必要となるだろう83。

他所ではプレッシャー下にある石炭だが、中国とインドで

は前向きな展望を維持している。両国は今後も、石炭(およ

び石油)のアクセス性やエネルギー安全保障、コストの低

さから、引き続き長期的にこれらの燃料に依存するだろ

う。2013年だけでも、中国は15の石炭プロジェクト(規模

にして100MTPA)の建設を承認している84。しかしなが

ら中国政府は、石炭発電に関連した環境上の課題も見据

えている。中国は、2030年までにエネルギーミックスに

おける石炭の比率を46%に下げ、同時にクリーンなエネ

ルギーの使用を増加する計画を発表しているようだ85。

技術配置

技術は、進化と成熟の両方の点で、しばしば燃料の競合性

を決定する。シェール井戸の破砕を高効率で検出・監視す

る新しい技術は今後、生産効率を向上し、仕上げコストを

軽減し、これによって世界的な燃料の序列におけるシェー

ルガスのランクを上げる可能性が高い。天然ガスへの動き

は、主に石炭を犠牲にする形で進んでいる。そのため、CO2

分離回収技術(CCS)のようなクリーンな石炭のための技

術の向上は、世界的な石炭の見通しが長期的に改善するの

であれば急ピッチで開発すべきである。一方で、太陽光や

水力などの再生可能技術の成熟は、大幅なコスト削減をも

たらし、地域によっては他の燃料との競合性を高めてきた

が、こうした技術の多くはいまだ助成金や財政政策に頼っ

ている。エネルギー貯蔵技術や予測・最適化の応用におけ

る進化もまた、再生可能技術が間欠性に関連する課題を克

服するのに役立っている。こうした領域の進展はすべて、再

生可能技術がグローバルなエネルギーミックスの中で化

石燃料に対してより強い基盤を得るためにも継続の必要

性がある。

技術が世界のある場所から別の場所にいかにうまく伝授・

移転されるかもまた、競合性の展望に影響を及ぼす。たと

えば主要な需要中心地である中国は、巨大なシェール資源

を有しているが、地政学的・政治的環境や、法的構造、産業

環境はOECDの世界と比べてより複雑である。水圧破砕が

中国で、あるいは別の場所で実施されたり、受け入れられ

たりすることがあるだろうか。この疑問の答えはまだ見え

ないが、ひとたび決定が行われれば、世界的な燃料の序列

に根本的な影響があるだろう。

天然ガス市場がより国際化している一方で、世界の原油貿

易は地域化へと移行しつつある。OECD諸国は原油の需

要が2011年から2040年の間にわずか2%しか上昇せ

ず、「ピーク需要」に達している。北米の原油市場は、同地域

における原油の供給増加がサウジアラビアの予備容量の

減少に対するクッションとして機能するため、今後も国際

市場から離れていくだろう。米国は、タイトオイルの生産が

増加するとともに「スイング・プロデューサー」となり、原油

価格を安定させ、企業が投資決定を行うためのより安定し

た環境を提供することになる。欧州連合諸国は、ロシアや

中東、北アフリカから原油を調達し、それを国内生産で補

うかたちになる。増大するアジアの原油需要は、アジア太

平洋地域の周辺国に加え、西から来る中東や中央アジアの

供給や、東から到達するラテンアメリカのカーゴによって

満たされるだろう。

世界のある場所での余剰資源の増加と、別の場所での需

要の増加は、石油ガス産業に大きな転換を生み出してい

る。この変容する需要・供給パターンは、世界的なエネル

ギーミックスにおける燃料序列を、天然ガスを有利にする

かたちで再編成するだろう。これが商品価格や貿易、政策、

技術に影響を与えるため、エネルギー産業の参加者にとっ

て大きなインパクトとなる。

17石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 20: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

メガプロジェクトの石油ガス備蓄加重リスクスコア

メガプロジェクトの承認済み備蓄(1995年より累積)

シェールを含めることで、リスクの高い新時代型のプロ

ジェクトの影響が薄まり、メガプロジェクトのポートフォリ

オ全体のリスク特性が効果的に下がった。その結果、

シェール時代のメガプロジェクトの平均リスクスコアは、

1990年代後半のスコアと同等になると予測される90。

現代的な管理アプローチが必要な新時代型のプロジェクト

シェール時代の到来によって、コノコフィリップスやマラソ

ン、アナダルコといった多くの米国大手独立系企業が資金

を国際的なポートフォリオから米国のシェール資源に方向

転換したため、新時代型プロジェクトの開発ペースは遅延

した91。にもかかわらず、新時代型のプロジェクトは今なお

石油ガス埋蔵量の成長に貢献している。シェールブームを

よそに、世界的なメガプロジェクトの埋蔵量に占める新時

代型プロジェクトの比率は、シェール前の22%から2016

年には30%に増えると予測されている。長期で見たこの

成長の理由は、シェール田における在来型よりも速い減退

速度と、従来型の領域における掘削機会の減少にあるだ

ろう92。

大切なポイントとして、新時代型のプロジェクトはまた、石

油メジャーの長期成長戦略においても大きな役割を担っ

ている。スーパーメジャーのうち4社(=エクソンモービル、

シェブロン、ロイヤル・ダッチ・シェル、BP)は、グループとし

て現在、年間資本のうちおよそ40%をメガプロジェクト

に費やしており、そのうち50%以上はLNGのような新時

代型の取り組みに使われている93。しかしながら、新時代

型プロジェクトの開発に必要な長いリードタイムは、石油

ガス企業の業績を短期的には危険にさらすことも少なく

ない。

エネルギー生産:新たなプロジェクト管理戦略を必要とする石油ガスのメガプロジェクト

石油ガスのメガプロジェクトの埋蔵量(石油換算で10億

バレル以上)は、大きく「従来型」、「新時代型」、「非在来型」

の3つのカテゴリーに分けることができる。従来型のプロ

ジェクトにはオンショア、浅水域、重油が、新時代型のプロ

ジェクトにはLNG、ガス・トゥ・リキッド(GTL)、深水域と

北極が、そして非在来型プロジェクトにはシェール、タイト

オイル、カナダのオイルサンドが含まれる。

従来型の開発の成長低迷と2000年代初期の好景気によ

り、資本支出は新時代型プロジェクトへと移行したが、度

重なる遅延やコスト超過が原因でこうした取り組みに対

する業界の熱意は縮小した。たとえば、オーストラリアの

Gorgon LNGプロジェクト(初期で推定370億米ドル)は、

40%のコスト超過と1年近い遅延が報告されている86。

同様に、2012年に始まったカタールのPearl GTLプロ

ジェクトのコストも、2003年の推定値である50億米ド

ルから300%近くも跳ね上がった87。8年以上遅れたカス

ピ海の大規模なKashaganプロジェクトの総コストは、

570億米ドルだったベースラインが現在は1,360億米ド

ルに設定されている88。

2008年の財政危機以来、変化のない原油価格と需要不振

は、新時代型プロジェクトの発展にさらに追い打ちをかけて

いる。29京3,000兆Btuという2010年のグローバルな実

質的石油ガス需要は、米国EIAによる危機前の推測値30京

7,000兆Btuよりも5%低かった。最近のEIAの予測では、

世界的な石油ガス需要は2015年までに31京Btuに増加

するとされているが、これは2006年に行われた同機関によ

る同年までの推定値よりも10%近く低いものだ89。しかし、

新時代型プロジェクトにとって最大の難関は、米国のシェー

ルブームおよび非在来型の急成長という形で訪れた。

シェールブームで周縁に追いやられた新時代型プロジェクト

新時代型のプロジェクトは、足止めされた未開発の埋蔵量

へのアクセスも可能にしているが、技術的な複雑性やリス

クは高い。北極圏や超深海などのフロンティアにおける厳

しいオペレーション状況には、最新の技術が必要とされ

る。これらの新フロンティアの運用はまた、高圧力や氷点下

に近い気温によるガスハイドレートの形成といった、いく

つかの困難をともなう。こうした物質は坑井の流れを阻害

し、破裂のリスクを高め得る。その結果、メガプロジェクト

の備蓄加重リスクスコアは、2000年代初期の新時代型

プロジェクトの拡散とともに上昇することが予測された。

しかし、この予測は実現することはなかった。資本支出の

方向性とこれに関連したリスク特性は、米国でシェール

ブームが進行した2006年から進路を変えた。シェールの

プロジェクトでは、「水平掘削」と「水圧破砕」という2つの

既存技術の画期的な組み合わせを用いる(「フラッキン

グ」)。米国大手企業や独立系E&P(探鉱開発)企業による

何十億ドルもの投資により、これらの技術は急速に導入さ

れ、企業は即座に効率性の向上へと集中できるようになっ

た。加えて、シェールは主にオンショアの資源である。この

ように、非在来型の領域におけるメガプロジェクトは、新

時代領域のメガプロジェクトに比べてオペレーション上の

困難が一般的に少なく、既存のインフラを流用できるとい

う強みも存在する。

ただし肝心なのは、新時代型のプロジェクトは長期的な成

長には不可欠だが、リスク特性が比較的高いため、従来型

プロジェクトの管理戦略にとって障害になる点だ。では、

新時代型のメガプロジェクトをうまく管理するためにはど

うすればいいだろうか?これ1つで大丈夫という万能な方

法はない。石油ガス企業は、プロジェクト管理に対する革

新的なアプローチ(厳選した業界のベストプラクティスを

ともなうもの)を複数ブレンドすることで、この大規模か

つ最新の資本プロジェクトに関連した新たな種類のリス

クに対する効果的な対応が可能だ。

企業は近年、マイルストーンを達成するかたちでプロジェ

クトの決定を行い、各ステージの結果にもとづいて次のス

テージの方向性を決める「ステージゲート法」を採用する

ケースが増えている。しかし多くは、コストやスケジュール、

品質、生産に関する根強い困難を軽減するにはさらなる何

かが必要だと知る結果に終わっている。「さらなる何か」と

は、たとえば、管理チームがプロジェクトの原動力を理解

し、継続的に学び、変化する外的要因に適応するといった

ことを可能にする現代的なプロジェクト管理戦略だ。この

タイプの戦略では、以下のような事柄が強調される:

•前段階プランニング:より多くのリソースをプロジェクト

開始前のプランニング工程に投入することで、企業はメ

ガプロジェクトの原動力をよりよく理解し、予測可能性

を向上し、オペレーション上の不具合を低減させること

ができる。しっかりとしたプランニングと設計をプロ

ジェクトのライフサイクルの初期に行うことで、それ以

降のステージにおける設計の変更コストを最小化でき

る。エクソンモービルの北極圏・カナダ東部担当副社長

のJim Flood氏は、次のようにコメントしている。「私た

ちは皆、最初の生産物を得るまでに時間的なプレッ

シャーを感じています。設計をきちんとしておかないと、

調達がうまくいかず、そうなると次は設備開発に支障が

出ます94。」1.80

1.60

1.40

1.20

1.00

リスクスコア シェール前

非在来型

シェール時代

シェール前 シェール時代

A

B

1995年 1997年 1999年 2001年 2003年 2005年 2007年 2009年 2011年 2013年

メガプロジェクトのリスク(シェールを含む)

出典:企業によるSEC提出書類、年次報告書、プレスリリース デロイトによる分析

注:Goldman Sachsの上位360プロジェクトのリスクスコアにもとづく 出典:企業によるSEC提出書類、年次報告書、プレスリリース デロイトによる分析

メガプロジェクト(シェールを含まない)

新時代型

従来型

従来の予測では、メガプロジェクトグループの平均リスク特性は、複雑な新時代型プロジェクトへの投資増加によって高まると思われていた。

しかし実際には、シェールとタイトオイルの登場が新時代型プロジェクトの開発を相殺し、グループの平均リスク特性を軽減している。

100%

80%

60%

40%

20%

0%

リスクスコア

1995年 1999年 2003年 2007年 2011年 2015年

22%

30%新時代型

18

Page 21: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

メガプロジェクトの石油ガス備蓄加重リスクスコア

メガプロジェクトの承認済み備蓄(1995年より累積)

シェールを含めることで、リスクの高い新時代型のプロ

ジェクトの影響が薄まり、メガプロジェクトのポートフォリ

オ全体のリスク特性が効果的に下がった。その結果、

シェール時代のメガプロジェクトの平均リスクスコアは、

1990年代後半のスコアと同等になると予測される90。

現代的な管理アプローチが必要な新時代型のプロジェクト

シェール時代の到来によって、コノコフィリップスやマラソ

ン、アナダルコといった多くの米国大手独立系企業が資金

を国際的なポートフォリオから米国のシェール資源に方向

転換したため、新時代型プロジェクトの開発ペースは遅延

した91。にもかかわらず、新時代型のプロジェクトは今なお

石油ガス埋蔵量の成長に貢献している。シェールブームを

よそに、世界的なメガプロジェクトの埋蔵量に占める新時

代型プロジェクトの比率は、シェール前の22%から2016

年には30%に増えると予測されている。長期で見たこの

成長の理由は、シェール田における在来型よりも速い減退

速度と、従来型の領域における掘削機会の減少にあるだ

ろう92。

大切なポイントとして、新時代型のプロジェクトはまた、石

油メジャーの長期成長戦略においても大きな役割を担っ

ている。スーパーメジャーのうち4社(=エクソンモービル、

シェブロン、ロイヤル・ダッチ・シェル、BP)は、グループとし

て現在、年間資本のうちおよそ40%をメガプロジェクト

に費やしており、そのうち50%以上はLNGのような新時

代型の取り組みに使われている93。しかしながら、新時代

型プロジェクトの開発に必要な長いリードタイムは、石油

ガス企業の業績を短期的には危険にさらすことも少なく

ない。

エネルギー生産:新たなプロジェクト管理戦略を必要とする石油ガスのメガプロジェクト

石油ガスのメガプロジェクトの埋蔵量(石油換算で10億

バレル以上)は、大きく「従来型」、「新時代型」、「非在来型」

の3つのカテゴリーに分けることができる。従来型のプロ

ジェクトにはオンショア、浅水域、重油が、新時代型のプロ

ジェクトにはLNG、ガス・トゥ・リキッド(GTL)、深水域と

北極が、そして非在来型プロジェクトにはシェール、タイト

オイル、カナダのオイルサンドが含まれる。

従来型の開発の成長低迷と2000年代初期の好景気によ

り、資本支出は新時代型プロジェクトへと移行したが、度

重なる遅延やコスト超過が原因でこうした取り組みに対

する業界の熱意は縮小した。たとえば、オーストラリアの

Gorgon LNGプロジェクト(初期で推定370億米ドル)は、

40%のコスト超過と1年近い遅延が報告されている86。

同様に、2012年に始まったカタールのPearl GTLプロ

ジェクトのコストも、2003年の推定値である50億米ド

ルから300%近くも跳ね上がった87。8年以上遅れたカス

ピ海の大規模なKashaganプロジェクトの総コストは、

570億米ドルだったベースラインが現在は1,360億米ド

ルに設定されている88。

2008年の財政危機以来、変化のない原油価格と需要不振

は、新時代型プロジェクトの発展にさらに追い打ちをかけて

いる。29京3,000兆Btuという2010年のグローバルな実

質的石油ガス需要は、米国EIAによる危機前の推測値30京

7,000兆Btuよりも5%低かった。最近のEIAの予測では、

世界的な石油ガス需要は2015年までに31京Btuに増加

するとされているが、これは2006年に行われた同機関によ

る同年までの推定値よりも10%近く低いものだ89。しかし、

新時代型プロジェクトにとって最大の難関は、米国のシェー

ルブームおよび非在来型の急成長という形で訪れた。

シェールブームで周縁に追いやられた新時代型プロジェクト

新時代型のプロジェクトは、足止めされた未開発の埋蔵量

へのアクセスも可能にしているが、技術的な複雑性やリス

クは高い。北極圏や超深海などのフロンティアにおける厳

しいオペレーション状況には、最新の技術が必要とされ

る。これらの新フロンティアの運用はまた、高圧力や氷点下

に近い気温によるガスハイドレートの形成といった、いく

つかの困難をともなう。こうした物質は坑井の流れを阻害

し、破裂のリスクを高め得る。その結果、メガプロジェクト

の備蓄加重リスクスコアは、2000年代初期の新時代型

プロジェクトの拡散とともに上昇することが予測された。

しかし、この予測は実現することはなかった。資本支出の

方向性とこれに関連したリスク特性は、米国でシェール

ブームが進行した2006年から進路を変えた。シェールの

プロジェクトでは、「水平掘削」と「水圧破砕」という2つの

既存技術の画期的な組み合わせを用いる(「フラッキン

グ」)。米国大手企業や独立系E&P(探鉱開発)企業による

何十億ドルもの投資により、これらの技術は急速に導入さ

れ、企業は即座に効率性の向上へと集中できるようになっ

た。加えて、シェールは主にオンショアの資源である。この

ように、非在来型の領域におけるメガプロジェクトは、新

時代領域のメガプロジェクトに比べてオペレーション上の

困難が一般的に少なく、既存のインフラを流用できるとい

う強みも存在する。

ただし肝心なのは、新時代型のプロジェクトは長期的な成

長には不可欠だが、リスク特性が比較的高いため、従来型

プロジェクトの管理戦略にとって障害になる点だ。では、

新時代型のメガプロジェクトをうまく管理するためにはど

うすればいいだろうか?これ1つで大丈夫という万能な方

法はない。石油ガス企業は、プロジェクト管理に対する革

新的なアプローチ(厳選した業界のベストプラクティスを

ともなうもの)を複数ブレンドすることで、この大規模か

つ最新の資本プロジェクトに関連した新たな種類のリス

クに対する効果的な対応が可能だ。

企業は近年、マイルストーンを達成するかたちでプロジェ

クトの決定を行い、各ステージの結果にもとづいて次のス

テージの方向性を決める「ステージゲート法」を採用する

ケースが増えている。しかし多くは、コストやスケジュール、

品質、生産に関する根強い困難を軽減するにはさらなる何

かが必要だと知る結果に終わっている。「さらなる何か」と

は、たとえば、管理チームがプロジェクトの原動力を理解

し、継続的に学び、変化する外的要因に適応するといった

ことを可能にする現代的なプロジェクト管理戦略だ。この

タイプの戦略では、以下のような事柄が強調される:

•前段階プランニング:より多くのリソースをプロジェクト

開始前のプランニング工程に投入することで、企業はメ

ガプロジェクトの原動力をよりよく理解し、予測可能性

を向上し、オペレーション上の不具合を低減させること

ができる。しっかりとしたプランニングと設計をプロ

ジェクトのライフサイクルの初期に行うことで、それ以

降のステージにおける設計の変更コストを最小化でき

る。エクソンモービルの北極圏・カナダ東部担当副社長

のJim Flood氏は、次のようにコメントしている。「私た

ちは皆、最初の生産物を得るまでに時間的なプレッ

シャーを感じています。設計をきちんとしておかないと、

調達がうまくいかず、そうなると次は設備開発に支障が

出ます94。」1.80

1.60

1.40

1.20

1.00

リスクスコア シェール前

非在来型

シェール時代

シェール前 シェール時代

A

B

1995年 1997年 1999年 2001年 2003年 2005年 2007年 2009年 2011年 2013年

メガプロジェクトのリスク(シェールを含む)

出典:企業によるSEC提出書類、年次報告書、プレスリリース デロイトによる分析

注:Goldman Sachsの上位360プロジェクトのリスクスコアにもとづく 出典:企業によるSEC提出書類、年次報告書、プレスリリース デロイトによる分析

メガプロジェクト(シェールを含まない)

新時代型

従来型

従来の予測では、メガプロジェクトグループの平均リスク特性は、複雑な新時代型プロジェクトへの投資増加によって高まると思われていた。

しかし実際には、シェールとタイトオイルの登場が新時代型プロジェクトの開発を相殺し、グループの平均リスク特性を軽減している。

100%

80%

60%

40%

20%

0%

リスクスコア

1995年 1999年 2003年 2007年 2011年 2015年

22%

30%新時代型

19石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 22: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

業界を牽引するプラクティスでは、現代的なメガプロジェクトの戦略は最低でも以下のものを含むことが推奨されている:「高度な前段階の設計およびプランニング」、「機動的なプロジェクトの管理と評価メソッド」、「プロジェクト参加者間の統合と提携の強化」、「オペレーショナル・エクセレンスを推進する新しい技術やツール、経験的知識によるシステム」である。

資源ナショナリズムは、基本的に人間の3つの原動力が綱

引きをした結果である。3つの原動力とは、富への欲求(資

源は換金されるため=「欲望」)、エネルギー安全保障への

欲求(現代社会はエネルギーに大きく依存しているため=

「恐れ」)、そして所有資源に対する国家の主権を維持しよ

うとする欲求(国家開発が目的=「プライド」)だ。どの国も

どこかの段階で、これら相互に矛盾し相対するテーマと葛

藤しており、それが変化する国家の保有資源や地域開発の

目的、国家のプライオリティなどを反映している。

時代の流れで変化する資源ナショナリズム

現代の資源ナショナリズムは、少なくとも石油ガスの文脈

においては、OPECの石油危機が起こった1970年代以降

で根本的な変化を経験してきている。それ以前は、国際石

油企業(IOC)は場所にかかわらずきわめて自由に資源の

追求ができた。グローバルな埋蔵量のうち、国の政府が管

理できたのはわずか10%だった。現在、従来の石油ガス埋

蔵量はほぼすべてが各国の政府によって管理されている。

この事実はまた、すべての中東の石油ベース経済国やロシ

ア、インドネシア、マレーシア、メキシコ、ベネズエラについ

ても当てはまる。実際、発見されている在来型資源のうち

89%は現在規制されている96。現在、真に国際的なアクセ

スに開かれているのは、主にカナダやオーストラリア、北海

のわずかな数の堆積盆地だけである。これに対応して、資

源に制約のある多くの国 (々韓国や中国、台湾など)は、成

長する自国経済のためにエネルギーを確保し、供給の途絶

から自衛を行うために、独自に国営石油企業(NOC)のチャ

ンピオンを作りあげた。驚くまでもなく、供給に対する規

制とグローバルな需要増加を反映して商品価格は上昇し

ている。

歴史的にIOCは、優れた手腕でもって大規模な資本計画の

実践や資源へのアクセスのための技術展開を行ってきた。

このモデルは、独自の研究開発プログラムや商業モデルを

持ったグローバルなオイルフィールドサービス(OFS)の登

場により、現在は緊張下に置かれている。さらに多くの

IOCでは、非在来型堆積盆地への焦点のシフトにともなっ

て、発見される埋蔵量の規模が下がるとともに生産コスト

が上昇している。一般的にNOCはその規模から、資本や資

源、市場へのアクセスがIOCに比べて低コストかつ容易に

行えている。

•効率的プロジェクト管理:このアプローチは、統計的な

ベースラインから偏差を分析し、それに合わせてプロ

ジェクトを再調整するためにリソースを拡大する従来の

方法とは大きく異なる。代わりにこちらでは、マイルス

トーンの達成に取り組みの焦点が置かれ、現在のポジ

ションからプロジェクトの要件を再定義する。このアプ

ローチでは、リソースはプロジェクトのニーズに合わせ

て動的に調整され、継続的にプロジェクトが再評価さ

れる95。

•統合的プロジェクト展開:このメソッドは所有者と受託

者の2者間関係を強調した従来の契約モデルから進化

したもので、所有者と設計者、受託者および供給者と

いったプロジェクトの参加者全体を統合してプロジェク

トチームとするものである。こうした統合チームは一般

的に、従来の2者間関係に比べ、変化する状況に対応し

つつビジネス上の衝突を最小化する効力が大きい。プロ

ジェクトの開始から最終的な完了までを含めることも、

参加者がプロジェクトをより正確に理解するのに役立っ

ている。このメソッドで望ましい契約戦略は、参加者の目

標をプロジェクトの成功に合致させ、チームのパフォー

マンスと個人のパフォーマンスを比較検討することだ。

•オペレーショナル・エクセレンスのシステム:オペレー

ショナル・エクセレンスのシステム(SOE)の重要な目標

は、問題が起こった際に迅速に緩和戦略を実施できるよ

うプロジェクトの状況を確実にリアルタイムで管理する

ことでプロジェクトのパフォーマンスを向上することに

ある。SOEはまた、再利用可能な関連する情報やツー

ル、またそれまでの資本プロジェクトから学んだ教訓に

容易にアクセスできる環境を作ることによって、効率性

や効果を高めるものでもある。知見のエコシステムの開

発は、膨大な資本プロジェクトデータを収集、分析、再利

用するために不可欠だ。しかしながら、業界のベストプラ

クティスを特定することと、それを共有することは別だ。

大手企業は新しい技術を使い、プロジェクトの参加者間

で自由なプロジェクト情報の流れを作り出すことで連

携を強化している。

弊社の見解

メガプロジェクト(主に新時代型)は、度重なるコスト超過

と遅延、変化のない原油価格、そしてリスクの低い非在来

型代替資源との競合によって厳しい局面を迎えている。

にもかかわらず新時代型プロジェクトは、在来領域の衰

退とシェールの成長とのミックスによって、石油ガス産業

の成長戦略において長期的には不可欠な要素であり続け

るだろう。

もし石油ガス企業が新時代型プロジェクトの恩恵を受け

るなら、現代的なプロジェクト管理戦略が今後ますます必

要になってくる。「万能選手的」メソッドが存在しないため、

新時代型メガプロジェクトはそれぞれに独自の課題があ

るが、ガイドラインは出始めている。業界を牽引するプラク

ティスでは、現代的なメガプロジェクトの戦略は最低でも

以下のものを含むことが推奨されている:「高度な前段階

の設計およびプランニング」、「機動的なプロジェクトの管

理と評価メソッド」、「プロジェクト参加者間の統合と提携

の強化」、「オペレーショナル・エクセレンスを推進する新し

い技術やツール、経験的知識によるシステム」である。

新たなバランスの発見

NOCとIOC間の権力のダイナミクスはたえず変わるにも

かかわらず、貿易の流れは過去数十年間、安定したパターン

に落ち着いていた。たとえば原油とガスの輸出はロシアか

ら欧州へ、中東の輸出は北米とアジアへ、そして大規模なガ

スの大陸市場は北米およびOECD欧州にといった具合だ。

さらに、輸入国と輸出国の「代表選手」も確立されていた。

しかし、わずかな短い数年間で、ほとんど予期されなかった

発展によってこれらのパターンは崩れ去ってしまった。

現在、化石燃料の全形態を扱う真の輸出国は少ない。中東

のOPEC加盟国とロシア、カナダだけが国内での消費量を

上回る原油とガスの輸出を行っている。アフリカの一部や

オーストラリア、ニュージーランドはガスを輸出している

が、原油は輸入している。ベネズエラとメキシコは原油を輸

出しているが、ガスは輸入している。そしてOECD欧州とブ

ラジル、インド、中国、米国は両方を輸入している97。資源ナ

ショナリズムはどうやら諸刃の剣であり、保護貿易主義国

の経済を支えると同時に抑制してしまっているようだ。

今後数年間で、これらのパターンはさらに転換するだろ

う。旧来からの万能な輸入国(例:米国はガスと原油、ブラ

ジルは原油)は輸出国になりつつある。逆にインドネシア

やマレーシアなど、かつての輸出国の中には輸入国になり

つつある国もある。資源輸入国(例:中国、ポーランド、ウク

ライナ)は、シェール資源が展開すれば資源輸出国にもな

り得る。

これらのシフトの裏側には、3つのマクロ要素がある。

1.「平等をもたらすもの」たる技術は、かつてはアクセス不

可能と見られてきた化石燃料の新しい供給源の開放に

貢献している。水平掘削や多段階水圧破砕、メタンハイ

ドレート、プレソルト、浮体式液体天然ガス(FLNG)、浮

体式生産貯蔵積出設備(FPSO)など、過去10年間で現

在の専門用語に仲間入りした新しい技術開発のリスト

を考えてみるといい。技術は驚くべき速さで国境を越

え、時には衝撃的なほどの効果をもたらしている。技術

は常に化石燃料供給の劇的なシフトの裏側にあり、輸

入国を輸出国に転換し、前途有望な地質を持つその他

多くの国 (々例:メキシコ、ウクライナ、ポーランド、中国)

の世界における潜在的役割を変えている。

エネルギーのナショナリズム:「欲望」、「恐れ」、「プライド」が原動力

20

Page 23: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

業界を牽引するプラクティスでは、現代的なメガプロジェクトの戦略は最低でも以下のものを含むことが推奨されている:「高度な前段階の設計およびプランニング」、「機動的なプロジェクトの管理と評価メソッド」、「プロジェクト参加者間の統合と提携の強化」、「オペレーショナル・エクセレンスを推進する新しい技術やツール、経験的知識によるシステム」である。

資源ナショナリズムは、基本的に人間の3つの原動力が綱

引きをした結果である。3つの原動力とは、富への欲求(資

源は換金されるため=「欲望」)、エネルギー安全保障への

欲求(現代社会はエネルギーに大きく依存しているため=

「恐れ」)、そして所有資源に対する国家の主権を維持しよ

うとする欲求(国家開発が目的=「プライド」)だ。どの国も

どこかの段階で、これら相互に矛盾し相対するテーマと葛

藤しており、それが変化する国家の保有資源や地域開発の

目的、国家のプライオリティなどを反映している。

時代の流れで変化する資源ナショナリズム

現代の資源ナショナリズムは、少なくとも石油ガスの文脈

においては、OPECの石油危機が起こった1970年代以降

で根本的な変化を経験してきている。それ以前は、国際石

油企業(IOC)は場所にかかわらずきわめて自由に資源の

追求ができた。グローバルな埋蔵量のうち、国の政府が管

理できたのはわずか10%だった。現在、従来の石油ガス埋

蔵量はほぼすべてが各国の政府によって管理されている。

この事実はまた、すべての中東の石油ベース経済国やロシ

ア、インドネシア、マレーシア、メキシコ、ベネズエラについ

ても当てはまる。実際、発見されている在来型資源のうち

89%は現在規制されている96。現在、真に国際的なアクセ

スに開かれているのは、主にカナダやオーストラリア、北海

のわずかな数の堆積盆地だけである。これに対応して、資

源に制約のある多くの国 (々韓国や中国、台湾など)は、成

長する自国経済のためにエネルギーを確保し、供給の途絶

から自衛を行うために、独自に国営石油企業(NOC)のチャ

ンピオンを作りあげた。驚くまでもなく、供給に対する規

制とグローバルな需要増加を反映して商品価格は上昇し

ている。

歴史的にIOCは、優れた手腕でもって大規模な資本計画の

実践や資源へのアクセスのための技術展開を行ってきた。

このモデルは、独自の研究開発プログラムや商業モデルを

持ったグローバルなオイルフィールドサービス(OFS)の登

場により、現在は緊張下に置かれている。さらに多くの

IOCでは、非在来型堆積盆地への焦点のシフトにともなっ

て、発見される埋蔵量の規模が下がるとともに生産コスト

が上昇している。一般的にNOCはその規模から、資本や資

源、市場へのアクセスがIOCに比べて低コストかつ容易に

行えている。

•効率的プロジェクト管理:このアプローチは、統計的な

ベースラインから偏差を分析し、それに合わせてプロ

ジェクトを再調整するためにリソースを拡大する従来の

方法とは大きく異なる。代わりにこちらでは、マイルス

トーンの達成に取り組みの焦点が置かれ、現在のポジ

ションからプロジェクトの要件を再定義する。このアプ

ローチでは、リソースはプロジェクトのニーズに合わせ

て動的に調整され、継続的にプロジェクトが再評価さ

れる95。

•統合的プロジェクト展開:このメソッドは所有者と受託

者の2者間関係を強調した従来の契約モデルから進化

したもので、所有者と設計者、受託者および供給者と

いったプロジェクトの参加者全体を統合してプロジェク

トチームとするものである。こうした統合チームは一般

的に、従来の2者間関係に比べ、変化する状況に対応し

つつビジネス上の衝突を最小化する効力が大きい。プロ

ジェクトの開始から最終的な完了までを含めることも、

参加者がプロジェクトをより正確に理解するのに役立っ

ている。このメソッドで望ましい契約戦略は、参加者の目

標をプロジェクトの成功に合致させ、チームのパフォー

マンスと個人のパフォーマンスを比較検討することだ。

•オペレーショナル・エクセレンスのシステム:オペレー

ショナル・エクセレンスのシステム(SOE)の重要な目標

は、問題が起こった際に迅速に緩和戦略を実施できるよ

うプロジェクトの状況を確実にリアルタイムで管理する

ことでプロジェクトのパフォーマンスを向上することに

ある。SOEはまた、再利用可能な関連する情報やツー

ル、またそれまでの資本プロジェクトから学んだ教訓に

容易にアクセスできる環境を作ることによって、効率性

や効果を高めるものでもある。知見のエコシステムの開

発は、膨大な資本プロジェクトデータを収集、分析、再利

用するために不可欠だ。しかしながら、業界のベストプラ

クティスを特定することと、それを共有することは別だ。

大手企業は新しい技術を使い、プロジェクトの参加者間

で自由なプロジェクト情報の流れを作り出すことで連

携を強化している。

弊社の見解

メガプロジェクト(主に新時代型)は、度重なるコスト超過

と遅延、変化のない原油価格、そしてリスクの低い非在来

型代替資源との競合によって厳しい局面を迎えている。

にもかかわらず新時代型プロジェクトは、在来領域の衰

退とシェールの成長とのミックスによって、石油ガス産業

の成長戦略において長期的には不可欠な要素であり続け

るだろう。

もし石油ガス企業が新時代型プロジェクトの恩恵を受け

るなら、現代的なプロジェクト管理戦略が今後ますます必

要になってくる。「万能選手的」メソッドが存在しないため、

新時代型メガプロジェクトはそれぞれに独自の課題があ

るが、ガイドラインは出始めている。業界を牽引するプラク

ティスでは、現代的なメガプロジェクトの戦略は最低でも

以下のものを含むことが推奨されている:「高度な前段階

の設計およびプランニング」、「機動的なプロジェクトの管

理と評価メソッド」、「プロジェクト参加者間の統合と提携

の強化」、「オペレーショナル・エクセレンスを推進する新し

い技術やツール、経験的知識によるシステム」である。

新たなバランスの発見

NOCとIOC間の権力のダイナミクスはたえず変わるにも

かかわらず、貿易の流れは過去数十年間、安定したパターン

に落ち着いていた。たとえば原油とガスの輸出はロシアか

ら欧州へ、中東の輸出は北米とアジアへ、そして大規模なガ

スの大陸市場は北米およびOECD欧州にといった具合だ。

さらに、輸入国と輸出国の「代表選手」も確立されていた。

しかし、わずかな短い数年間で、ほとんど予期されなかった

発展によってこれらのパターンは崩れ去ってしまった。

現在、化石燃料の全形態を扱う真の輸出国は少ない。中東

のOPEC加盟国とロシア、カナダだけが国内での消費量を

上回る原油とガスの輸出を行っている。アフリカの一部や

オーストラリア、ニュージーランドはガスを輸出している

が、原油は輸入している。ベネズエラとメキシコは原油を輸

出しているが、ガスは輸入している。そしてOECD欧州とブ

ラジル、インド、中国、米国は両方を輸入している97。資源ナ

ショナリズムはどうやら諸刃の剣であり、保護貿易主義国

の経済を支えると同時に抑制してしまっているようだ。

今後数年間で、これらのパターンはさらに転換するだろ

う。旧来からの万能な輸入国(例:米国はガスと原油、ブラ

ジルは原油)は輸出国になりつつある。逆にインドネシア

やマレーシアなど、かつての輸出国の中には輸入国になり

つつある国もある。資源輸入国(例:中国、ポーランド、ウク

ライナ)は、シェール資源が展開すれば資源輸出国にもな

り得る。

これらのシフトの裏側には、3つのマクロ要素がある。

1.「平等をもたらすもの」たる技術は、かつてはアクセス不

可能と見られてきた化石燃料の新しい供給源の開放に

貢献している。水平掘削や多段階水圧破砕、メタンハイ

ドレート、プレソルト、浮体式液体天然ガス(FLNG)、浮

体式生産貯蔵積出設備(FPSO)など、過去10年間で現

在の専門用語に仲間入りした新しい技術開発のリスト

を考えてみるといい。技術は驚くべき速さで国境を越

え、時には衝撃的なほどの効果をもたらしている。技術

は常に化石燃料供給の劇的なシフトの裏側にあり、輸

入国を輸出国に転換し、前途有望な地質を持つその他

多くの国 (々例:メキシコ、ウクライナ、ポーランド、中国)

の世界における潜在的役割を変えている。

エネルギーのナショナリズム:「欲望」、「恐れ」、「プライド」が原動力

21石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 24: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

石油ガス産業は歴史的に、その行動や展望に対してグローバルなアプローチをとってきたが、今後この傾向が強まることが示唆されており、かつてないほどの連結性や相互依存が生まれると考えられる。そしておそらく、世界はこうしたアプローチにおいてより安全な場所となるだろう。

自国の資源に対して外国政府による完全な所有権を承認する国は少ないと思われるが、一部ではクリエイティブな契約の余地がありそうだ。形態としては、大規模な顧客市場への特権的なアクセスと引き換えに、上流の資源へのアクセスを提供するといったことが考えられる(中国とアフリカの国々の間での契約など)。

•国内市場の大手が競争に対峙:化石燃料を開放した技

術の力は、多くの国にとってエネルギー安全保障や豊か

さ、国内成長の劇的な転換を請け合うものだ。各国政府

はこれに着目し、一般的には保護されている国内市場を

よりアクセスの開かれたものにする方がよいか試す行

動に出始めるだろう。こうした変化は、過去には強い猜

疑心をもって見られてきた。しかし現在は、国境を開放し

て自らを競合に直面させた政府の例が少なからず存在

する。その一例がメキシコだ。メキシコは国内の石油ガ

ス活動を長らく、国内市場の最大手であるペメックスに

制限してきた。しかし、化石燃料の埋蔵量や生産におい

て伸び悩みが数年続いたことから、輸入が必要になると

いう可能性に直面し、メキシコ政府はついに国内の石油

ガス市場の規制を緩和した。同様に、ロシアもガスプロ

ムによる海外輸出の独占を主要な西洋の市場である欧

州に限定する新たな規則を可決し、東洋の市場を新しい

競合者たちに開放した。中国もまた、国内市場の規制を

緩和する計画を発表しており、新たなプレイヤーからの

LNGの輸入を促進し、国内のガス供給インフラを改善

する算段だ。今後もさらに多くの政府が同様の行動をと

ることが予測され、その結果、国内市場の大手はIOCや

経験豊かなOFS企業から見識を得る必要性が出てくる

だろう。

•成長するインフラへの投資:国が資源の豊かな国から資

源の乏しい国に変わると、あるいはその逆が起こると、

国内のインフラを再構築する必要性が出てくる。典型的

な例として、北米の石油ガスインフラの配置を考えてい

ただきたい。何十年にもわたり、この大陸はエネルギー

を輸入してきた。輸送ルートの大半は大陸の中心に向け

て内方向になっていた。たとえばカナダのパイプライン

は、原油とガスをシカゴに送り、メキシコ湾に始まる米

国のパイプラインは製品を産業の中心地へと運んでい

た。しかし現在、カナダと米国は輸出主導の石油ガスプ

ロジェクトを多く抱えており、カナダ西岸の5つのLNG

プロジェクトから100、湾岸のルート101を中心とした20

以上のLNGプロジェクトまで幅広い。LNGの再ガス化

施設は、液化施設へと再構築されている。Enbridge

Line 9やTransCanada Mainlineといったパイプライ

ンも、再構築や反転が行われている。同様にロシアのガ

スインフラは、欧州市場のニーズを満たすために、主に

西方向に向けられてきたが、今後は東のアジア市場に向

けられることが多くなるだろう。マレーシアのLNG液化

施設の一部は、再ガス化施設に再構築される可能性が

高い。

2.エネルギー効率の向上とライフスタイルの変化は、先

進国における石油製品の需要に影響を及ぼしている。

電気自動車やハイブリッド車、バッテリー技術、高効率

タービン、インターネットなどが合わさって石油の消費

が低減し、供給は解放されて新しい市場を求めている。

GDP単位ごとのエネルギー投入は、基本的に転換・収

縮の傾向にある。将来は、大気汚染という不安な問題

への対処が拡大する中で、似たようなトレンドが中国

やインドのような大きい新興国でも発展する可能性が

ある。

3.人口動態によって誘発されるこれらアジアの国々の台

頭も、4世代にわたって続いたグローバルな需要パター

ンに変化を与えている。こうした国の絶対的な規模は、

化石燃料にとって特有の引力として機能している。エネ

ルギーミックスにおける石油製品の比率の大きさと欧

州の需要の衰退が、この引力をさらに強化している。た

とえばエネルギー換算ベースで、中国は7,500万トン以

上の新たな年間LNG需要量をもたらすためには、年間

の燃料石炭需要のわずか3%を天然ガスに置き換える

だけでよい98。この量は、現在開発中のオーストラリア

のすべてのLNGプロジェクトの生産量と同じである99。

現代の資源ナショナリズム

これらの変化は、現代版の資源ナショナリズムを生み出し

ている。これは、ある意味で従来のものほど厳格でなく、あ

る意味ではより厳格なものと言える。

いずれにせよ、この新しい資源ナショナリズムは次のよう

な発展が特徴となるだろう。

•長く制限されてきた国境が開かれる:技術やノウハウへ

のアクセスは、非在来型資源における原油生産の拡大

や、成熟した油田の二次開発に必須である。以前は閉ざ

されていた国境は現在、OFS企業やIOCが提供する技

術を最大限に活用すべく、合弁事業や技術移転、R&D、

共同契約などに対し新たに開放されている。例として、

中国石油天然気とシェルの中国での合弁事業や、シェ

ブロンの中国でのプロジェクト、ロシアによるエクソン

モービルおよびシェルとのLNG提携、ウクライナにおけ

るシェルとシェブロンのプロジェクト、タンザニアやモ

ザンビークといった東アフリカ諸国の急速な台頭など

が挙げられる。さらに、利益が多面的であることを考え

ると、これはまだ始まりにすぎないかもしれない。こうし

た国境を越えた契約によって、純輸入のバランスの低減

が促進される国もあるだろう。油田サービス企業もま

た、新市場に技術を持ち込む機会によって利益を享受で

きるはずだ。かつてはアクセス不可能だったエリアに業

界が達すると、インフラ(パイプラインや処理施設、保管

施設等)に対する需要も同様に(特にこのような成長に

不慣れな国で顕著に)増加するだろう。石油ガス産業は

歴史的に、その行動や展望に対してグローバルなアプ

ローチをとってきたが、今後この傾向が強まることが示

唆されており、かつてないほどの連結性や相互依存が生

まれると考えられる。そしておそらく、世界はこうしたア

プローチにおいてより安全な場所となるだろう。

•資源の制御が大きなテーマ:世界的なエネルギーミック

スにおいて数十年は化石燃料が引き続き優位にあるこ

とが予測されるため、資源の所有権はこの先何年も、国

家の関心事項となるようだ。自国の資源に対して外国政

府による完全な所有権を承認する国は少ないと思われ

るが、一部ではクリエイティブな契約の余地がありそう

だ。形態としては、大規模な顧客市場への特権的なアク

セスと引き換えに、上流の資源へのアクセスを提供する

といったことが考えられる(中国とアフリカの国々の間

での契約など)。よりリベラルで資源豊かな国は、外国に

よる資源所有を厳しく取り締まっている。たとえばカナ

ダは、ペトロナスによるカナダの天然ガス生産業者の買

収や、CNOOCによるネクセンの買収以降では、いかな

る国家政府による資源所有も断っている。米国も同様に

資源を完全に売却することには反対の姿勢で(ただし石

炭については変化があるかもしれない)、資源の輸出に

ついては慎重な見方を継続している。そのため、LNGの

輸出承認はペースが遅く、原油の輸出も勢いが弱い。完

全な所有権よりも、NOCによる外国ベンチャーへの参

加が増えることが予測される。こうした投資の流れは、

資源豊かな米国や中東(石油化学製品)、オーストラリ

ア、カナダ、ロシアにおいては一般的に国内に向けて動

き、中国や韓国、日本、台湾といった資源に乏しい国では

国外に向けて動くだろう。

22

Page 25: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

石油ガス産業は歴史的に、その行動や展望に対してグローバルなアプローチをとってきたが、今後この傾向が強まることが示唆されており、かつてないほどの連結性や相互依存が生まれると考えられる。そしておそらく、世界はこうしたアプローチにおいてより安全な場所となるだろう。

自国の資源に対して外国政府による完全な所有権を承認する国は少ないと思われるが、一部ではクリエイティブな契約の余地がありそうだ。形態としては、大規模な顧客市場への特権的なアクセスと引き換えに、上流の資源へのアクセスを提供するといったことが考えられる(中国とアフリカの国々の間での契約など)。

•国内市場の大手が競争に対峙:化石燃料を開放した技

術の力は、多くの国にとってエネルギー安全保障や豊か

さ、国内成長の劇的な転換を請け合うものだ。各国政府

はこれに着目し、一般的には保護されている国内市場を

よりアクセスの開かれたものにする方がよいか試す行

動に出始めるだろう。こうした変化は、過去には強い猜

疑心をもって見られてきた。しかし現在は、国境を開放し

て自らを競合に直面させた政府の例が少なからず存在

する。その一例がメキシコだ。メキシコは国内の石油ガ

ス活動を長らく、国内市場の最大手であるペメックスに

制限してきた。しかし、化石燃料の埋蔵量や生産におい

て伸び悩みが数年続いたことから、輸入が必要になると

いう可能性に直面し、メキシコ政府はついに国内の石油

ガス市場の規制を緩和した。同様に、ロシアもガスプロ

ムによる海外輸出の独占を主要な西洋の市場である欧

州に限定する新たな規則を可決し、東洋の市場を新しい

競合者たちに開放した。中国もまた、国内市場の規制を

緩和する計画を発表しており、新たなプレイヤーからの

LNGの輸入を促進し、国内のガス供給インフラを改善

する算段だ。今後もさらに多くの政府が同様の行動をと

ることが予測され、その結果、国内市場の大手はIOCや

経験豊かなOFS企業から見識を得る必要性が出てくる

だろう。

•成長するインフラへの投資:国が資源の豊かな国から資

源の乏しい国に変わると、あるいはその逆が起こると、

国内のインフラを再構築する必要性が出てくる。典型的

な例として、北米の石油ガスインフラの配置を考えてい

ただきたい。何十年にもわたり、この大陸はエネルギー

を輸入してきた。輸送ルートの大半は大陸の中心に向け

て内方向になっていた。たとえばカナダのパイプライン

は、原油とガスをシカゴに送り、メキシコ湾に始まる米

国のパイプラインは製品を産業の中心地へと運んでい

た。しかし現在、カナダと米国は輸出主導の石油ガスプ

ロジェクトを多く抱えており、カナダ西岸の5つのLNG

プロジェクトから100、湾岸のルート101を中心とした20

以上のLNGプロジェクトまで幅広い。LNGの再ガス化

施設は、液化施設へと再構築されている。Enbridge

Line 9やTransCanada Mainlineといったパイプライ

ンも、再構築や反転が行われている。同様にロシアのガ

スインフラは、欧州市場のニーズを満たすために、主に

西方向に向けられてきたが、今後は東のアジア市場に向

けられることが多くなるだろう。マレーシアのLNG液化

施設の一部は、再ガス化施設に再構築される可能性が

高い。

2.エネルギー効率の向上とライフスタイルの変化は、先

進国における石油製品の需要に影響を及ぼしている。

電気自動車やハイブリッド車、バッテリー技術、高効率

タービン、インターネットなどが合わさって石油の消費

が低減し、供給は解放されて新しい市場を求めている。

GDP単位ごとのエネルギー投入は、基本的に転換・収

縮の傾向にある。将来は、大気汚染という不安な問題

への対処が拡大する中で、似たようなトレンドが中国

やインドのような大きい新興国でも発展する可能性が

ある。

3.人口動態によって誘発されるこれらアジアの国々の台

頭も、4世代にわたって続いたグローバルな需要パター

ンに変化を与えている。こうした国の絶対的な規模は、

化石燃料にとって特有の引力として機能している。エネ

ルギーミックスにおける石油製品の比率の大きさと欧

州の需要の衰退が、この引力をさらに強化している。た

とえばエネルギー換算ベースで、中国は7,500万トン以

上の新たな年間LNG需要量をもたらすためには、年間

の燃料石炭需要のわずか3%を天然ガスに置き換える

だけでよい98。この量は、現在開発中のオーストラリア

のすべてのLNGプロジェクトの生産量と同じである99。

現代の資源ナショナリズム

これらの変化は、現代版の資源ナショナリズムを生み出し

ている。これは、ある意味で従来のものほど厳格でなく、あ

る意味ではより厳格なものと言える。

いずれにせよ、この新しい資源ナショナリズムは次のよう

な発展が特徴となるだろう。

•長く制限されてきた国境が開かれる:技術やノウハウへ

のアクセスは、非在来型資源における原油生産の拡大

や、成熟した油田の二次開発に必須である。以前は閉ざ

されていた国境は現在、OFS企業やIOCが提供する技

術を最大限に活用すべく、合弁事業や技術移転、R&D、

共同契約などに対し新たに開放されている。例として、

中国石油天然気とシェルの中国での合弁事業や、シェ

ブロンの中国でのプロジェクト、ロシアによるエクソン

モービルおよびシェルとのLNG提携、ウクライナにおけ

るシェルとシェブロンのプロジェクト、タンザニアやモ

ザンビークといった東アフリカ諸国の急速な台頭など

が挙げられる。さらに、利益が多面的であることを考え

ると、これはまだ始まりにすぎないかもしれない。こうし

た国境を越えた契約によって、純輸入のバランスの低減

が促進される国もあるだろう。油田サービス企業もま

た、新市場に技術を持ち込む機会によって利益を享受で

きるはずだ。かつてはアクセス不可能だったエリアに業

界が達すると、インフラ(パイプラインや処理施設、保管

施設等)に対する需要も同様に(特にこのような成長に

不慣れな国で顕著に)増加するだろう。石油ガス産業は

歴史的に、その行動や展望に対してグローバルなアプ

ローチをとってきたが、今後この傾向が強まることが示

唆されており、かつてないほどの連結性や相互依存が生

まれると考えられる。そしておそらく、世界はこうしたア

プローチにおいてより安全な場所となるだろう。

•資源の制御が大きなテーマ:世界的なエネルギーミック

スにおいて数十年は化石燃料が引き続き優位にあるこ

とが予測されるため、資源の所有権はこの先何年も、国

家の関心事項となるようだ。自国の資源に対して外国政

府による完全な所有権を承認する国は少ないと思われ

るが、一部ではクリエイティブな契約の余地がありそう

だ。形態としては、大規模な顧客市場への特権的なアク

セスと引き換えに、上流の資源へのアクセスを提供する

といったことが考えられる(中国とアフリカの国々の間

での契約など)。よりリベラルで資源豊かな国は、外国に

よる資源所有を厳しく取り締まっている。たとえばカナ

ダは、ペトロナスによるカナダの天然ガス生産業者の買

収や、CNOOCによるネクセンの買収以降では、いかな

る国家政府による資源所有も断っている。米国も同様に

資源を完全に売却することには反対の姿勢で(ただし石

炭については変化があるかもしれない)、資源の輸出に

ついては慎重な見方を継続している。そのため、LNGの

輸出承認はペースが遅く、原油の輸出も勢いが弱い。完

全な所有権よりも、NOCによる外国ベンチャーへの参

加が増えることが予測される。こうした投資の流れは、

資源豊かな米国や中東(石油化学製品)、オーストラリ

ア、カナダ、ロシアにおいては一般的に国内に向けて動

き、中国や韓国、日本、台湾といった資源に乏しい国では

国外に向けて動くだろう。

23石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 26: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

しかしながらエネルギーの不足している国は、エネルギー安全保障を向上し、「恐れ」を軽減するために、「プライド」を犠牲にすることを余儀なくされている。

•変化する外交プロフィール:上昇中のエネルギー輸出国

は、新たな市場力を有効的に使ってグローバルな外交術

における自身の役割を再定義するかもしれない。たとえ

ば、米国と中東の同盟国間、あるいは北隣りのカナダと

の関係性は、米国がエネルギー市場の競合者になるに

つれて変化してきている。シリアにおける問題に対する

米軍の曖昧な態度や、ムスリム同胞団の台頭、エジプト

およびリビアにおける政府の倒壊などは、ペルシア湾の

石油依存国にとって悩みの種だ。米国の輸出はまた、ロ

シアがつかんでいる欧州市場を最終的に阻害する可能

性を秘めている。3年後には世界最大のLNG輸出国に

なると予測されているオーストラリアもまた、もしそれ

が現実になれば地政学的に与える影響は大きいだろう。

弊社の見解

3つのマクロの要素が新たな資源ナショナリズムを形成

し、「欲望」、「恐れ」、「プライド」という推進力のバランスを

再調整している。技術は、シェールおよび深海において新

しい非在来型資源を開拓し、供給オプションを拡大すると

ともに、その過程において新たな輸出国を生み出してい

る。エネルギー効率は、特に先進経済において需要の成長

を遅らせており、やがては新興経済でも同じ効果が出るこ

とが考えられ、そうなると化石燃料の供給がさらに増大さ

れる。重力と同じで、人口の増加や中流階級の増加は、石

油ガスをアジアの大きい新興経済へと引き寄せている。

総じて、「欲望」と「恐れ」は上昇しており、「プライド」は衰退

している。新しいエネルギーのナショナリズムは、かつて

の輸出国や新興の輸出国の間では市場に対する「欲望」に

よって、需要の大きい国ではエネルギー安全保障に関する

「恐れ」によって推進されている。一方で、かつて怯えてい

た国は、新たに発見された資源のおかげで自信と積極性

を増している。しかしながらエネルギーの不足している国

は、エネルギー安全保障を向上し、「恐れ」を軽減するため

に、「プライド」を犠牲にすることを余儀なくされている。そ

の結果、現在は市場を閉ざしている多くの政府も今後はま

すます市場を開放するようになり、少なくとも国境内では

競合を増やしていくものと考えられる。

資源エネルギーグループのご紹介

Audit磯俣 克平 (監査-全般)資源・エネルギーグループ リーダー

有限責任監査法人トーマツ パートナー[email protected] 092-751-0931

渡邊 明久 (監査-電力)有限責任監査法人トーマツ パートナー[email protected] 06-4560-6000

野澤 啓 (監査-電力)有限責任監査法人トーマツ パートナー[email protected] 092-751-0931

手塚  正彦 (監査-石油・ガス)有限責任監査法人トーマツ パートナー[email protected] 03-6741-2990

稲垣 直明 (監査-石油・ガス)有限責任監査法人トーマツ パートナー[email protected] 03-6213-3370

東川 裕樹 (監査-IFRS)有限責任監査法人トーマツ パートナー[email protected] 03-6213-1222

ERS西本 匡利 (リスクマネジメント)有限責任監査法人トーマツ ERS ディレクター[email protected] 03-6213-1112

FAS小早川 ほたか (ファイナンシャルアドバイザリー)デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社 パートナー[email protected] 03-6213-2500

中道 健太郎 (バリュエーション)デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社 パートナー[email protected] 03-6213-2500

Consulting石黒 泰時デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 パートナー[email protected] 03-5220-8600

森澤 将浩デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 シニアマネジャー[email protected] 03-5220-8600

松永 秀夫デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 シニアマネジャー[email protected] 03-5220-8600

Tax田村 順 (国際税務)税理士法人トーマツ パートナー[email protected] 06-4560-8000

結城 一政 (国際税務)税理士法人トーマツ パートナー[email protected] 03-6213-3800

日系企業サービスグループ中村 正明 (オーストラリア)Deloitte & Touche LLP, Sydney パートナー[email protected] +61-2-9322-7660

竹中 真一 (オーストラリア)Deloitte & Touche LLP, Perth パートナー[email protected] +61-8-9365-7370

横田 智史 (イギリス)Deloitte consulting UK ディレクター  [email protected] +44-207-303-3594

甲斐 貴志 (カナダ)Deloitte & Touche LLP, Vancouver シニアマネジャー[email protected] +1-604-640-3061

山本 大 (アメリカ)Deloitte & Touche LLP, Los Angeles パートナー[email protected] +1-213-688-3268

加藤 信之 (アメリカ)Deloitte & Touche LLP, Houston マネジャー[email protected] +1-713-982-2573

松本 淳 (インドネシア)Osman Bing Satrio & Rekan, Jakarta シニアマネジャー[email protected] +62-21-2992-3100

24

Page 27: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

しかしながらエネルギーの不足している国は、エネルギー安全保障を向上し、「恐れ」を軽減するために、「プライド」を犠牲にすることを余儀なくされている。

•変化する外交プロフィール:上昇中のエネルギー輸出国

は、新たな市場力を有効的に使ってグローバルな外交術

における自身の役割を再定義するかもしれない。たとえ

ば、米国と中東の同盟国間、あるいは北隣りのカナダと

の関係性は、米国がエネルギー市場の競合者になるに

つれて変化してきている。シリアにおける問題に対する

米軍の曖昧な態度や、ムスリム同胞団の台頭、エジプト

およびリビアにおける政府の倒壊などは、ペルシア湾の

石油依存国にとって悩みの種だ。米国の輸出はまた、ロ

シアがつかんでいる欧州市場を最終的に阻害する可能

性を秘めている。3年後には世界最大のLNG輸出国に

なると予測されているオーストラリアもまた、もしそれ

が現実になれば地政学的に与える影響は大きいだろう。

弊社の見解

3つのマクロの要素が新たな資源ナショナリズムを形成

し、「欲望」、「恐れ」、「プライド」という推進力のバランスを

再調整している。技術は、シェールおよび深海において新

しい非在来型資源を開拓し、供給オプションを拡大すると

ともに、その過程において新たな輸出国を生み出してい

る。エネルギー効率は、特に先進経済において需要の成長

を遅らせており、やがては新興経済でも同じ効果が出るこ

とが考えられ、そうなると化石燃料の供給がさらに増大さ

れる。重力と同じで、人口の増加や中流階級の増加は、石

油ガスをアジアの大きい新興経済へと引き寄せている。

総じて、「欲望」と「恐れ」は上昇しており、「プライド」は衰退

している。新しいエネルギーのナショナリズムは、かつて

の輸出国や新興の輸出国の間では市場に対する「欲望」に

よって、需要の大きい国ではエネルギー安全保障に関する

「恐れ」によって推進されている。一方で、かつて怯えてい

た国は、新たに発見された資源のおかげで自信と積極性

を増している。しかしながらエネルギーの不足している国

は、エネルギー安全保障を向上し、「恐れ」を軽減するため

に、「プライド」を犠牲にすることを余儀なくされている。そ

の結果、現在は市場を閉ざしている多くの政府も今後はま

すます市場を開放するようになり、少なくとも国境内では

競合を増やしていくものと考えられる。

資源エネルギーグループのご紹介

Audit磯俣 克平 (監査-全般)資源・エネルギーグループ リーダー

有限責任監査法人トーマツ パートナー[email protected] 092-751-0931

渡邊 明久 (監査-電力)有限責任監査法人トーマツ パートナー[email protected] 06-4560-6000

野澤 啓 (監査-電力)有限責任監査法人トーマツ パートナー[email protected] 092-751-0931

手塚  正彦 (監査-石油・ガス)有限責任監査法人トーマツ パートナー[email protected] 03-6741-2990

稲垣 直明 (監査-石油・ガス)有限責任監査法人トーマツ パートナー[email protected] 03-6213-3370

東川 裕樹 (監査-IFRS)有限責任監査法人トーマツ パートナー[email protected] 03-6213-1222

ERS西本 匡利 (リスクマネジメント)有限責任監査法人トーマツ ERS ディレクター[email protected] 03-6213-1112

FAS小早川 ほたか (ファイナンシャルアドバイザリー)デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社 パートナー[email protected] 03-6213-2500

中道 健太郎 (バリュエーション)デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社 パートナー[email protected] 03-6213-2500

Consulting石黒 泰時デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 パートナー[email protected] 03-5220-8600

森澤 将浩デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 シニアマネジャー[email protected] 03-5220-8600

松永 秀夫デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 シニアマネジャー[email protected] 03-5220-8600

Tax田村 順 (国際税務)税理士法人トーマツ パートナー[email protected] 06-4560-8000

結城 一政 (国際税務)税理士法人トーマツ パートナー[email protected] 03-6213-3800

日系企業サービスグループ中村 正明 (オーストラリア)Deloitte & Touche LLP, Sydney パートナー[email protected] +61-2-9322-7660

竹中 真一 (オーストラリア)Deloitte & Touche LLP, Perth パートナー[email protected] +61-8-9365-7370

横田 智史 (イギリス)Deloitte consulting UK ディレクター  [email protected] +44-207-303-3594

甲斐 貴志 (カナダ)Deloitte & Touche LLP, Vancouver シニアマネジャー[email protected] +1-604-640-3061

山本 大 (アメリカ)Deloitte & Touche LLP, Los Angeles パートナー[email protected] +1-213-688-3268

加藤 信之 (アメリカ)Deloitte & Touche LLP, Houston マネジャー[email protected] +1-713-982-2573

松本 淳 (インドネシア)Osman Bing Satrio & Rekan, Jakarta シニアマネジャー[email protected] +62-21-2992-3100

25石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 28: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

出典

1. エネルギー情報局 Natural Gas Spot and Futures Prices(天然ガスのスポット価格と先物価格)(NYMEX) <http://www.eia.gov/dnav/ng/ng_pri_fut_s1_d.htm>

2. エネルギー情報局 年間エネルギー展望2014、2014年4月 <http://www.eia.gov/forecasts/aeo/source_natural_gas_all.cfm>

3. エネルギー情報局 Crude Oil Production(原油の生産量) <http://www.eia.gov/dnav/pet/pet_crd_crpdn_adc_mbblpd_a.htm>

4. エネルギー情報局 US Weekly Product Supplied(1週間に米国に供給された商品) <http://www.eia.gov/dnav/pet/pet_cons_wpsup_k_w.htm>

5. エネルギー情報局 年間エネルギー展望2014、2014年4月 <http://www.eia.gov/forecasts/aeo/source_natural_gas_all.cfm>

6. デロイト・マーケットインサイツによる分析 米 国勢調査局 米DOE/EIA

7. デロイト・マーケットインサイツによる分析 米 国勢調査局 米DOE/EIA

8. Phil LeBeau、CNBC “New Study Finds China Manufacturing Costs Rising to US Level(中国の製造コストが米国のレベルに。新たな調査で発覚)”、2013年4月18日   <http://www.cnbc.com/id/100651692>

9. 国際エネルギー機関 世界エネルギー展望2012 <http://www.worldenergyoutlook.org/publications/weo-2012/>

10. Indira A.R. Lakshmanan and Grant Smith “Iran Oil Exports Exaggerated, U.S. Officials Say(イランの石油輸出は誇張―米当局者談)” Bloomberg、2014年1月24日  <http://www.bloomberg.com/news/2014-01-23/iran-oil-exports-exaggerated-according-to-u-s-officials.html>

11. エネルギー情報局 “The U.S. surpassed Russia as world’s leading producer of dry natural gas in 2009 and 2010(2009年と2010年、天然ガスの世界的な大手生産国としてアメリカがロシアを超える)” Today in Energy <http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=5370>

12. エネルギー情報局 “16% of natural gas consumed in Europe flows through Ukraine(欧州で消費される天然ガスの16%がウクライナを経由)” Today in Energy      <http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=15411>

13. エネルギー情報局 Russia Country Analysis Brief(ロシア:国情報) <http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=rs>

14. ガスプロム “Sakhalin LNG export exceeds 30 million tons(サハリンのLNG輸出量が3,000万トンを超過)”、2012年8月<http://www.gazpromexport.ru/en/presscenter/news/655/>

15. Katya Golubkova and Vladimir Soldatkin “Russia says long-sought China gas supply deal is close(ロシア、念願の中国ガス供給契約が実現間近に)” Reuters、2014年4月9日 <http://uk.reuters.com/article/2014/04/09/russia-china-gas-idUKL6N0N11XM20140409>

16. エネルギー情報局 Russia Country Analysis Brief(ロシア:国情報) <http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=rs>

17. エネルギー情報局 Russia Country Analysis Brief(ロシア:国情報) <http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=rs>

18. Alexey Gromov、エネルギー戦略研究所 “Russian Gas Market Perspective(ロシアガス市場の見通し)”、2011年12月14日<www.energystrategy.ru/ab_ins/source/Gromov_14.12.11.ppt>

19. 世界銀行 世界開発指標 <http://data.worldbank.org/data-catalog/world-development-indicators>

20. “Global 2014 E&P Spending Outlook(グローバルなE&P支出の見通し2014)” Barclays、2013年12月9日47号 EIA年間エネルギー展望2014が、2018年までに米が天然ガスの純輸出国になることを予測 <http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=14691>

21. “Lukoil, Total agree to work on Siberian Bazhenov shale oil-report(ルクオイルとトタルがシベリアのBazhenovシェール油への取り組みで合意:レポート)” Reuters、2014年3月29日 <http://www.reuters.com/article/2014/03/29/russia-lukoil-totalidUSL5N0MQ0BJ20140329>

22. Christopher Helman “Meet The Oil Shale Eighty Times Bigger Than The Bakken(バッケンの80倍の大きさを誇るシェールオイルとは)” Forbes、2012年6月4日<http://www.forbes.com/sites/christopherhelman/2012/06/04/bakken-bazhenov-shale-oil/#./?&_suid=139777636006108497000764982343>

23. 中国 “Estimated Petroleum net Exports(石油純輸入量の推定)” Country Analysis Brief Overview(国情報)米エネルギー情報局<http://www.eia.gov/countries/countrydata.cfm?fips=CH>

24. 中国 “Consumption(消費)” Country Analysis Brief Overview(国情報)米エネルギー情報局 <http://www.eia.gov/countries/countrydata.cfm?fips=CH>

25. 中国 Country Analysis Brief Overview(国情報)米エネルギー情報局 <http://www.eia.gov/countries/countrydata.cfm?fips=CH>

26. BP世界エネルギー統計レビュー、2013年6月 <http://www.bp.com/content/dam/bp/pdf/statistical-review/statistical_review_of_world_energy_2013.pdf>

27. エネルギー情報局 年間エネルギー展望2013:2040年までの見通し、2013年4月 <http://www.eia.gov/forecasts/aeo/pdf/0383(2013).pdf>

28. Oil Market Report(石油市場レポート) 国際エネルギー機関、2014年3月14日 <http://omrpublic.iea.org/>

29. 世界銀行 世界開発指標 <http://data.worldbank.org/data-catalog/world-development-indicators>

30. 世界銀行 世界開発指標 <http://data.worldbank.org/data-catalog/world-development-indicators>

31. 香港貿易発展局 中国通関統計<http://china-trade-research.hktdc.com/business-news/article/Fast-Facts/China-Customs-Statistics/ff/en/1/1X000000/1X09N9NM.htm>

32. 香港貿易発展局 中国通関統計<http://china-trade-research.hktdc.com/business-news/article/Fast-Facts/China-Customs-Statistics/ff/en/1/1X000000/1X09N9NM.htm>

33. 中国国家統計局 <http://www.stats.gov.cn/tjsj/ndsj/2013/indexeh.htm>

34. 国際エネルギー機関 世界エネルギー展望2012 <http://www.worldenergyoutlook.org/publications/weo-2012/>

35. エネルギー情報局 “Estimates of Iran’s monthly and annual average exports of crude oil and condensate in 2012, million barrels per day(2012年度のイランの月間/年間平均原油/コンデンセート輸出に関する推定、百万バレル/日)” Iran Country Analysis Brief(イラン:国情報) <http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=IR>

36. Kenneth Katzman “Iran Sanctions(イランの制裁)”議会調査局2014年3月18日 <http://www.fas.org/sgp/crs/mideast/RS20871.pdf>

37. 中国国家統計局 <http://www.stats.gov.cn/tjsj/ndsj/2013/indexeh.htm>

38. Judy Hua and David Stanway “China’s Feb crude imports from Iran rise 6 pct y/y(中国、2月のイランからの原油輸入量は前年比で6%増)” Reuters、2014年3月21日 <http://www.reuters.com/article/2014/03/21/china-oil-iran-idUSL3N0MH20N20140321>

39. エネルギー情報局 “The South China Sea is an important world energy trade route(重要な世界エネルギー貿易ルートとしての南シナ海)” Today in Energy、2013年4月4日 <http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=10671>

40. Andrew S. Erickson and Gabriel B. Collins “China’s Oil Security Pipe Dream: The Reality, and Strategic Consequences, of Seaborne Imports(中国の石油安全保障にまつわる幻想~現実と海運輸入の結果)” Naval War College Review, Vol. 63, No. 2(2010年春)<http://www.andrewerickson.com/wp-content/uploads/2010/03/China-Pipeline-Sealane_NWCR_2010-Spring.pdf>

41. Trefor Moss and Rob Taylor “Chinese Naval Patrol Prompts Conflicting Regional Response(中国による海域巡回が地域の反応と衝突)” Wall Street Journal、2014年2月20日 <http://online.wsj.com/article/BT-CO-20140220-710102.html>

42. PLS Inc. and Derrick Petroleum Services グローバルM&Aデータベース

43. PLS Inc. and Derrick Petroleum Services グローバルM&Aデータベース

44. Sebastian Gault, “Alberta Oil in China:Conserns over Canadian Investment Regulation Linger”(中国におけるアルバータオイル:カナダの投資規制に対する考察)、2014年1月9日 <http://www.albertaoilmagazine.com/2014/01/seekingthedragon-going-up/>

45. EIA年間エネルギー展望2014「2018年までに米国が天然ガスの純輸出国になることを予測」 <http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=14691>

46. フィルターを「Liquids」と「World petroleum production by region and country」に設定し、クリックで表を表示してください。<http://www.eia.gov/oiaf/aeo/tablebrowser/#release=IEO2013&subject=0-IEO2013&table=38-IEO2013&region=0-0&cases=Reference-d041117>

47. <http://www.bp.com/en/global/corporate/press/press-releases/energy-outlook-2035.html>

48. フィルターを「Liquids」と「World petroleum production by region and country」に設定し、クリックで表を表示してください。<http://www.eia.gov/oiaf/aeo/tablebrowser/#release=IEO2013&subject=0-IEO2013&table=38-IEO2013&region=0-0&cases=Reference-d041117>

49. フィルターを「Liquids」と「World petroleum production by region and country」に設定し、クリックで表を表示してください。<http://www.eia.gov/oiaf/aeo/tablebrowser/#release=IEO2013&subject=0-IEO2013&table=38-IEO2013&region=0-0&cases=Reference-d041117>

50. <http://www.bloomberg.com/news/2014-01-15/mexico-sees-first-foreign-oil-and-gas-contracts-by-end-2015.html>

51. フィルターを「Liquids」と「World petroleum production by region and country」に設定し、クリックで表を表示してください。<http://www.eia.gov/oiaf/aeo/tablebrowser/#release=IEO2013&subject=0-IEO2013&table=38-IEO2013&region=0-0&cases=Reference-d041117>

52. <http://www.bp.com/en/global/corporate/about-bp/energy-economics/energy-outlook/country-and-regional-insights/european-union.html>

53. <http://www.euractiv.com/energy/norway-overtakes-russia-biggest-news-528854>

54. <http://www.bp.com/en/global/corporate/about-bp/energy-economics/statistical-review-of-world-energy-2013.html>

55. <http://www.naturalgaseurope.com/estonia-finland-lng-terminal-construction>

56. <http://www.reuters.com/article/2013/09/09/poland-energy-lng-idUSL6N0H22WR20130909>

57. <http://www.bp.com/en/global/corporate/about-bp/energy-economics/energy-outlook.html>

58. <http://www.opec.org/opec_web/static_files_project/media/downloads/publications/ASB2013.pdf>

59. ノヴァテクのYamal LNGプラント(フランスのトタルと共同)、ガスプロムのVladivostok LNGプラント、ロスネフチとエクソンモービルによるサハリンでの合同LNGプロジェクト<http://www.naturalgaseurope.com/novatek-total-yamal-lng-project-fid><http://www.reuters.com/article/2013/11/21/gazprom-lng-investment-idUSL5N0J60UD20131121><http://www.rigzone.com/news/oil_gas/a/128597/Rosneft_Exxon_to_Proceed_with_Sakhalin_LNG_Project>

60. <http://www.cacianalyst.org/publications/field-reports/item/12834-turkmenistan-china-reach-new-energy-deals.html>

61. 米エネルギー情報局(EIA) “国際エネルギー展望(IEO)2013”、2013年7月

62. BP “世界エネルギー統計レビュー2013”、2014年1月

63. 国際ガス連合 World LNG Report(世界LNG報告書)2013年度版

64. BP “世界エネルギー統計レビュー2013”、2014年1月

65. 国際エネルギー機関 “The Impact of Global Coal Supply on Worldwide Electricity Prices(グローバルな石炭供給が世界の電力価格に与える影響)”、2014年

66. 世界原子力協会 ‘Nuclear power in Japan(日本の原子力)’、2014年3月(アクセス:2014年3月5日)

26

Page 29: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

出典

1. エネルギー情報局 Natural Gas Spot and Futures Prices(天然ガスのスポット価格と先物価格)(NYMEX) <http://www.eia.gov/dnav/ng/ng_pri_fut_s1_d.htm>

2. エネルギー情報局 年間エネルギー展望2014、2014年4月 <http://www.eia.gov/forecasts/aeo/source_natural_gas_all.cfm>

3. エネルギー情報局 Crude Oil Production(原油の生産量) <http://www.eia.gov/dnav/pet/pet_crd_crpdn_adc_mbblpd_a.htm>

4. エネルギー情報局 US Weekly Product Supplied(1週間に米国に供給された商品) <http://www.eia.gov/dnav/pet/pet_cons_wpsup_k_w.htm>

5. エネルギー情報局 年間エネルギー展望2014、2014年4月 <http://www.eia.gov/forecasts/aeo/source_natural_gas_all.cfm>

6. デロイト・マーケットインサイツによる分析 米 国勢調査局 米DOE/EIA

7. デロイト・マーケットインサイツによる分析 米 国勢調査局 米DOE/EIA

8. Phil LeBeau、CNBC “New Study Finds China Manufacturing Costs Rising to US Level(中国の製造コストが米国のレベルに。新たな調査で発覚)”、2013年4月18日   <http://www.cnbc.com/id/100651692>

9. 国際エネルギー機関 世界エネルギー展望2012 <http://www.worldenergyoutlook.org/publications/weo-2012/>

10. Indira A.R. Lakshmanan and Grant Smith “Iran Oil Exports Exaggerated, U.S. Officials Say(イランの石油輸出は誇張―米当局者談)” Bloomberg、2014年1月24日  <http://www.bloomberg.com/news/2014-01-23/iran-oil-exports-exaggerated-according-to-u-s-officials.html>

11. エネルギー情報局 “The U.S. surpassed Russia as world’s leading producer of dry natural gas in 2009 and 2010(2009年と2010年、天然ガスの世界的な大手生産国としてアメリカがロシアを超える)” Today in Energy <http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=5370>

12. エネルギー情報局 “16% of natural gas consumed in Europe flows through Ukraine(欧州で消費される天然ガスの16%がウクライナを経由)” Today in Energy      <http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=15411>

13. エネルギー情報局 Russia Country Analysis Brief(ロシア:国情報) <http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=rs>

14. ガスプロム “Sakhalin LNG export exceeds 30 million tons(サハリンのLNG輸出量が3,000万トンを超過)”、2012年8月<http://www.gazpromexport.ru/en/presscenter/news/655/>

15. Katya Golubkova and Vladimir Soldatkin “Russia says long-sought China gas supply deal is close(ロシア、念願の中国ガス供給契約が実現間近に)” Reuters、2014年4月9日 <http://uk.reuters.com/article/2014/04/09/russia-china-gas-idUKL6N0N11XM20140409>

16. エネルギー情報局 Russia Country Analysis Brief(ロシア:国情報) <http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=rs>

17. エネルギー情報局 Russia Country Analysis Brief(ロシア:国情報) <http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=rs>

18. Alexey Gromov、エネルギー戦略研究所 “Russian Gas Market Perspective(ロシアガス市場の見通し)”、2011年12月14日<www.energystrategy.ru/ab_ins/source/Gromov_14.12.11.ppt>

19. 世界銀行 世界開発指標 <http://data.worldbank.org/data-catalog/world-development-indicators>

20. “Global 2014 E&P Spending Outlook(グローバルなE&P支出の見通し2014)” Barclays、2013年12月9日47号 EIA年間エネルギー展望2014が、2018年までに米が天然ガスの純輸出国になることを予測 <http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=14691>

21. “Lukoil, Total agree to work on Siberian Bazhenov shale oil-report(ルクオイルとトタルがシベリアのBazhenovシェール油への取り組みで合意:レポート)” Reuters、2014年3月29日 <http://www.reuters.com/article/2014/03/29/russia-lukoil-totalidUSL5N0MQ0BJ20140329>

22. Christopher Helman “Meet The Oil Shale Eighty Times Bigger Than The Bakken(バッケンの80倍の大きさを誇るシェールオイルとは)” Forbes、2012年6月4日<http://www.forbes.com/sites/christopherhelman/2012/06/04/bakken-bazhenov-shale-oil/#./?&_suid=139777636006108497000764982343>

23. 中国 “Estimated Petroleum net Exports(石油純輸入量の推定)” Country Analysis Brief Overview(国情報)米エネルギー情報局<http://www.eia.gov/countries/countrydata.cfm?fips=CH>

24. 中国 “Consumption(消費)” Country Analysis Brief Overview(国情報)米エネルギー情報局 <http://www.eia.gov/countries/countrydata.cfm?fips=CH>

25. 中国 Country Analysis Brief Overview(国情報)米エネルギー情報局 <http://www.eia.gov/countries/countrydata.cfm?fips=CH>

26. BP世界エネルギー統計レビュー、2013年6月 <http://www.bp.com/content/dam/bp/pdf/statistical-review/statistical_review_of_world_energy_2013.pdf>

27. エネルギー情報局 年間エネルギー展望2013:2040年までの見通し、2013年4月 <http://www.eia.gov/forecasts/aeo/pdf/0383(2013).pdf>

28. Oil Market Report(石油市場レポート) 国際エネルギー機関、2014年3月14日 <http://omrpublic.iea.org/>

29. 世界銀行 世界開発指標 <http://data.worldbank.org/data-catalog/world-development-indicators>

30. 世界銀行 世界開発指標 <http://data.worldbank.org/data-catalog/world-development-indicators>

31. 香港貿易発展局 中国通関統計<http://china-trade-research.hktdc.com/business-news/article/Fast-Facts/China-Customs-Statistics/ff/en/1/1X000000/1X09N9NM.htm>

32. 香港貿易発展局 中国通関統計<http://china-trade-research.hktdc.com/business-news/article/Fast-Facts/China-Customs-Statistics/ff/en/1/1X000000/1X09N9NM.htm>

33. 中国国家統計局 <http://www.stats.gov.cn/tjsj/ndsj/2013/indexeh.htm>

34. 国際エネルギー機関 世界エネルギー展望2012 <http://www.worldenergyoutlook.org/publications/weo-2012/>

35. エネルギー情報局 “Estimates of Iran’s monthly and annual average exports of crude oil and condensate in 2012, million barrels per day(2012年度のイランの月間/年間平均原油/コンデンセート輸出に関する推定、百万バレル/日)” Iran Country Analysis Brief(イラン:国情報) <http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=IR>

36. Kenneth Katzman “Iran Sanctions(イランの制裁)”議会調査局2014年3月18日 <http://www.fas.org/sgp/crs/mideast/RS20871.pdf>

37. 中国国家統計局 <http://www.stats.gov.cn/tjsj/ndsj/2013/indexeh.htm>

38. Judy Hua and David Stanway “China’s Feb crude imports from Iran rise 6 pct y/y(中国、2月のイランからの原油輸入量は前年比で6%増)” Reuters、2014年3月21日 <http://www.reuters.com/article/2014/03/21/china-oil-iran-idUSL3N0MH20N20140321>

39. エネルギー情報局 “The South China Sea is an important world energy trade route(重要な世界エネルギー貿易ルートとしての南シナ海)” Today in Energy、2013年4月4日 <http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=10671>

40. Andrew S. Erickson and Gabriel B. Collins “China’s Oil Security Pipe Dream: The Reality, and Strategic Consequences, of Seaborne Imports(中国の石油安全保障にまつわる幻想~現実と海運輸入の結果)” Naval War College Review, Vol. 63, No. 2(2010年春)<http://www.andrewerickson.com/wp-content/uploads/2010/03/China-Pipeline-Sealane_NWCR_2010-Spring.pdf>

41. Trefor Moss and Rob Taylor “Chinese Naval Patrol Prompts Conflicting Regional Response(中国による海域巡回が地域の反応と衝突)” Wall Street Journal、2014年2月20日 <http://online.wsj.com/article/BT-CO-20140220-710102.html>

42. PLS Inc. and Derrick Petroleum Services グローバルM&Aデータベース

43. PLS Inc. and Derrick Petroleum Services グローバルM&Aデータベース

44. Sebastian Gault, “Alberta Oil in China:Conserns over Canadian Investment Regulation Linger”(中国におけるアルバータオイル:カナダの投資規制に対する考察)、2014年1月9日 <http://www.albertaoilmagazine.com/2014/01/seekingthedragon-going-up/>

45. EIA年間エネルギー展望2014「2018年までに米国が天然ガスの純輸出国になることを予測」 <http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=14691>

46. フィルターを「Liquids」と「World petroleum production by region and country」に設定し、クリックで表を表示してください。<http://www.eia.gov/oiaf/aeo/tablebrowser/#release=IEO2013&subject=0-IEO2013&table=38-IEO2013&region=0-0&cases=Reference-d041117>

47. <http://www.bp.com/en/global/corporate/press/press-releases/energy-outlook-2035.html>

48. フィルターを「Liquids」と「World petroleum production by region and country」に設定し、クリックで表を表示してください。<http://www.eia.gov/oiaf/aeo/tablebrowser/#release=IEO2013&subject=0-IEO2013&table=38-IEO2013&region=0-0&cases=Reference-d041117>

49. フィルターを「Liquids」と「World petroleum production by region and country」に設定し、クリックで表を表示してください。<http://www.eia.gov/oiaf/aeo/tablebrowser/#release=IEO2013&subject=0-IEO2013&table=38-IEO2013&region=0-0&cases=Reference-d041117>

50. <http://www.bloomberg.com/news/2014-01-15/mexico-sees-first-foreign-oil-and-gas-contracts-by-end-2015.html>

51. フィルターを「Liquids」と「World petroleum production by region and country」に設定し、クリックで表を表示してください。<http://www.eia.gov/oiaf/aeo/tablebrowser/#release=IEO2013&subject=0-IEO2013&table=38-IEO2013&region=0-0&cases=Reference-d041117>

52. <http://www.bp.com/en/global/corporate/about-bp/energy-economics/energy-outlook/country-and-regional-insights/european-union.html>

53. <http://www.euractiv.com/energy/norway-overtakes-russia-biggest-news-528854>

54. <http://www.bp.com/en/global/corporate/about-bp/energy-economics/statistical-review-of-world-energy-2013.html>

55. <http://www.naturalgaseurope.com/estonia-finland-lng-terminal-construction>

56. <http://www.reuters.com/article/2013/09/09/poland-energy-lng-idUSL6N0H22WR20130909>

57. <http://www.bp.com/en/global/corporate/about-bp/energy-economics/energy-outlook.html>

58. <http://www.opec.org/opec_web/static_files_project/media/downloads/publications/ASB2013.pdf>

59. ノヴァテクのYamal LNGプラント(フランスのトタルと共同)、ガスプロムのVladivostok LNGプラント、ロスネフチとエクソンモービルによるサハリンでの合同LNGプロジェクト<http://www.naturalgaseurope.com/novatek-total-yamal-lng-project-fid><http://www.reuters.com/article/2013/11/21/gazprom-lng-investment-idUSL5N0J60UD20131121><http://www.rigzone.com/news/oil_gas/a/128597/Rosneft_Exxon_to_Proceed_with_Sakhalin_LNG_Project>

60. <http://www.cacianalyst.org/publications/field-reports/item/12834-turkmenistan-china-reach-new-energy-deals.html>

61. 米エネルギー情報局(EIA) “国際エネルギー展望(IEO)2013”、2013年7月

62. BP “世界エネルギー統計レビュー2013”、2014年1月

63. 国際ガス連合 World LNG Report(世界LNG報告書)2013年度版

64. BP “世界エネルギー統計レビュー2013”、2014年1月

65. 国際エネルギー機関 “The Impact of Global Coal Supply on Worldwide Electricity Prices(グローバルな石炭供給が世界の電力価格に与える影響)”、2014年

66. 世界原子力協会 ‘Nuclear power in Japan(日本の原子力)’、2014年3月(アクセス:2014年3月5日)

27石油ガス産業が直面する最重要課題

Page 30: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

67. NBR “Energy Mix in Japan ‒ before and after Fukushima(日本のエネルギーミックス:福島以前と福島以降)”、2013年

68. Renewableenergyworld “Russia Awards First Renewable Energy Tender to Boost the Industry(ロシアが業界の活性化をはかり、初の再生可能エネルギーに対する助成金を提供)”、2013年9月26日

69. EIA国情報

70. EIA BP “世界エネルギー統計レビュー2013”、2014年1月 エクソン “エネルギーの見通し”、2014年

71. 国際エネルギー機関 “Oil Market Report(石油市場報告書)”

72. 米EIA 年間エネルギー展望2014、2014年5月7日

73. FT.com “Statoil breaks oil-linked gas pricing(スタトイルが石油連動のガス価格設定を取りやめ)”、2013年11月19日

74. RBCキャピタル “A New Dawn for North American LNG(北米LNGの新しい夜明け)”、2013年5月 チェサピーク投資家プレゼンテーション

75 同上

76. クレディ・スイス Global LNG Sector(世界的なLNGセクター)、2013年7月2日

77. EIA IGU

78. デロイト “Gas on Gas Competition: Oil Indexation Erosion Risk for LNG into Asian and European Markets(ガスとガスの競合:アジア・欧州市場へのLNG石油連動の侵食リスク)”

79. GIIGNL、2013年の主要数値

80. 同上

81. GIIGNL 2012年度のLNG産業

82. GIIGNL、2013年の主要数値

83. 欧州委員会 ‘What is the EU doing about climate change(EUは気候変動について何をしているか)’、アクセス:2014年2月

84. Reuters “China approves massive new coal capacity despite pollution fears(中国が公害の不安にもかかわらず大量の石炭生産を承認)”、2014年1月

85. The Sydney Morning Herald “Worsening pollution in China stokes calls for coal curbs(公害が悪化する中国は石炭の抑制が必要)”、2014年2月

86. “Another $2b cost blowout for Gorgon LNG(GrogonのLNG、さらに20億ドルがコスト超過)” The Sydney Morning Herald、2013年12月13日<http://www.smh.com.au/business/another-2b-cost-blowoutfor-gorgon-lng-20131212-2za5u.html>

87. “Shell ramps up Qatari gas-to-diesel money machine(シェルが、ガスからディーゼルに転換するカタールの「金のなる木」を計画)” Reuters、2012年8月28日<http://www.reuters.com/article/2012/08/28/shell-gtlidUSL6E8JP1F420120828>

88. “Kashagan oil field begins production after decade of delays(Kashagan油田、10年の遅延を経て生産開始)” Platts、2012年9月16日<http://www.platts.com/news-feature/2013/oil/kashagan-oil-field/index>

89. 米エネルギー情報局(EIA) 国際エネルギー展望(IEO)2006および2013

90. デロイト・マーケットインサイツによる分析(Goldman Sachsの上位360石油ガスプロジェクトのリスクスコアにもとづく)

91. “Oil companies target America for investment(石油企業が米国を投資対象に)”CNN Money、2013年5月8日<http://money.cnn.com/2013/05/08/news/economy/oil-companies-america/>

92. デロイト・マーケットインサイツによる分析(Goldman Sachsの上位360石油ガスプロジェクトのデータにもとづく)

93. エクソンモービル、BP、シェブロン、シェルの2013年度アニュアルレポート

94. “Megaprojects Call for Better Planning, Collaboration(メガプロジェクトにはプランニングの強化と提携が必要)” E&P magazine、2014年3月6日<http://www.epmag.com/Technology-Operations/Megaprojects-Call-Better-Planning-Collaboration_130206>

95. デロイト “The Challenge of Renaissance ‒ Managing an unprecedented wave of oil and gas investment(ルネッサンスの挑戦:石油ガス投資の不測の波に対処する)”、2013年11月

96. 米EIA、2013年:国別の液体備蓄を証明

97. BP エネルギー統計のデータベース

98. <http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=9751>、およびデロイトによる算出

99. APPEA、2014年

100. <http://www.nrcan.gc.ca/energy/natural-gas/5683>

101. <http://www.ferc.gov/industries/gas/indus-act/lng.asp>

28

Page 31: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

67. NBR “Energy Mix in Japan ‒ before and after Fukushima(日本のエネルギーミックス:福島以前と福島以降)”、2013年

68. Renewableenergyworld “Russia Awards First Renewable Energy Tender to Boost the Industry(ロシアが業界の活性化をはかり、初の再生可能エネルギーに対する助成金を提供)”、2013年9月26日

69. EIA国情報

70. EIA BP “世界エネルギー統計レビュー2013”、2014年1月 エクソン “エネルギーの見通し”、2014年

71. 国際エネルギー機関 “Oil Market Report(石油市場報告書)”

72. 米EIA 年間エネルギー展望2014、2014年5月7日

73. FT.com “Statoil breaks oil-linked gas pricing(スタトイルが石油連動のガス価格設定を取りやめ)”、2013年11月19日

74. RBCキャピタル “A New Dawn for North American LNG(北米LNGの新しい夜明け)”、2013年5月 チェサピーク投資家プレゼンテーション

75 同上

76. クレディ・スイス Global LNG Sector(世界的なLNGセクター)、2013年7月2日

77. EIA IGU

78. デロイト “Gas on Gas Competition: Oil Indexation Erosion Risk for LNG into Asian and European Markets(ガスとガスの競合:アジア・欧州市場へのLNG石油連動の侵食リスク)”

79. GIIGNL、2013年の主要数値

80. 同上

81. GIIGNL 2012年度のLNG産業

82. GIIGNL、2013年の主要数値

83. 欧州委員会 ‘What is the EU doing about climate change(EUは気候変動について何をしているか)’、アクセス:2014年2月

84. Reuters “China approves massive new coal capacity despite pollution fears(中国が公害の不安にもかかわらず大量の石炭生産を承認)”、2014年1月

85. The Sydney Morning Herald “Worsening pollution in China stokes calls for coal curbs(公害が悪化する中国は石炭の抑制が必要)”、2014年2月

86. “Another $2b cost blowout for Gorgon LNG(GrogonのLNG、さらに20億ドルがコスト超過)” The Sydney Morning Herald、2013年12月13日<http://www.smh.com.au/business/another-2b-cost-blowoutfor-gorgon-lng-20131212-2za5u.html>

87. “Shell ramps up Qatari gas-to-diesel money machine(シェルが、ガスからディーゼルに転換するカタールの「金のなる木」を計画)” Reuters、2012年8月28日<http://www.reuters.com/article/2012/08/28/shell-gtlidUSL6E8JP1F420120828>

88. “Kashagan oil field begins production after decade of delays(Kashagan油田、10年の遅延を経て生産開始)” Platts、2012年9月16日<http://www.platts.com/news-feature/2013/oil/kashagan-oil-field/index>

89. 米エネルギー情報局(EIA) 国際エネルギー展望(IEO)2006および2013

90. デロイト・マーケットインサイツによる分析(Goldman Sachsの上位360石油ガスプロジェクトのリスクスコアにもとづく)

91. “Oil companies target America for investment(石油企業が米国を投資対象に)”CNN Money、2013年5月8日<http://money.cnn.com/2013/05/08/news/economy/oil-companies-america/>

92. デロイト・マーケットインサイツによる分析(Goldman Sachsの上位360石油ガスプロジェクトのデータにもとづく)

93. エクソンモービル、BP、シェブロン、シェルの2013年度アニュアルレポート

94. “Megaprojects Call for Better Planning, Collaboration(メガプロジェクトにはプランニングの強化と提携が必要)” E&P magazine、2014年3月6日<http://www.epmag.com/Technology-Operations/Megaprojects-Call-Better-Planning-Collaboration_130206>

95. デロイト “The Challenge of Renaissance ‒ Managing an unprecedented wave of oil and gas investment(ルネッサンスの挑戦:石油ガス投資の不測の波に対処する)”、2013年11月

96. 米EIA、2013年:国別の液体備蓄を証明

97. BP エネルギー統計のデータベース

98. <http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=9751>、およびデロイトによる算出

99. APPEA、2014年

100. <http://www.nrcan.gc.ca/energy/natural-gas/5683>

101. <http://www.ferc.gov/industries/gas/indus-act/lng.asp>

Page 32: Oil and Gas Reality Check 2014 A look at the top …...Global Leader – Oil & Gas Deloitte Touche Tohmatsu Limited Tel: +852 6838 6631 adikarev@deloitte.com.hk 目次 石油ガス産業の現実を検証する:2014

Oil and Gas Reality Check 2014A look at the top issues facing the oil and gas sector(日本語訳版)

Member of Deloitte Touche Tohmatsu Limited© 2014. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.

トーマツグループは日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)のメンバーファームおよびそれらの関係会社(有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング株式会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社および税理士法人トーマツを含む)の総称です。トーマツグループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各社がそれぞれの適用法令に従い、監査、税務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています。また、国内約40

都市に約7,600名の専門家(公認会計士、税理士、コンサルタントなど)を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はトーマツグループWebサイト(www.tohmatsu.com)をご覧ください。 

Deloitte(デロイト)は、監査、税務、コンサルティングおよびファイナンシャル アドバイザリーサービスを、さまざまな業種にわたる上場・非上場のクライアントに提供しています。全世界150を超える国・地域のメンバーファームのネットワークを通じ、デロイトは、高度に複合化されたビジネスに取り組むクライアントに向けて、深い洞察に基づき、世界最高水準の陣容をもって高品質なサービスを提供しています。デロイトの約200,000名を超える人材は、“standard of excellence”となることを目指しています。 

Deloitte(デロイト)とは、英国の法令に基づく保証有限責任会社であるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(“DTTL”)ならびにそのネットワーク組織を構成するメンバーファームおよびその関係会社のひとつまたは複数を指します。DTTLおよび各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した別個の組織体です。DTTL(または“Deloitte Global”)はクライアントへのサービス提供を行いません。DTTLおよびそのメンバーファームについての詳細は www.tohmatsu.com/deloitte/ をご覧ください。

本資料は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本資料の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本資料の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。