90 宿22 宿視点 儲かる地域のつくり方 全国連の商工会地域産業活性化検討特別委員会で収 集・調査した地域産業活性化の優良事例を紹介します。 海外との交流も進む 12 Shokokai 2013.9

P12 P13 儲かる地域-OT352-下版„²かる地域.pdf · 奈良県明日香村商工会・奈良県商工会連合会 低い観光客単価が課題 明日香村の人口は6120人。毎年

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Page 1: P12 P13 儲かる地域-OT352-下版„²かる地域.pdf · 奈良県明日香村商工会・奈良県商工会連合会 低い観光客単価が課題 明日香村の人口は6120人。毎年

地域外と人の交流・協働の仕組みを作る

滞在型観光を推進

奈良県明日香村商工会・奈良県商工会連合会

低い観光客単価が課題

 

明日香村の人口は6120人。毎年

100人程度の減少傾向にあります。

特に農村地域の過疎化・高齢化が顕著

で、コミュニティとして集落の存続が

危ぶまれています。

 

その一方で、歴史ロマンの郷、日本

の原風景と言われる風土が多くの来訪

者を魅了し、毎年90万人以上の観光客

が明日香村を訪れます。しかし、古都

保存法で大型宿泊施設がないため日帰

り観光が多く、滞在時間が短く客単価

が低いことが課題となっていました。

勉強会をきっかけに、

観光ビジネスを検討

 

明日香村商工会は、平成22年から奈

良県連と合同で「なら観光ビジネスカ

レッジ」を実施。この勉強会をきっか

けに、村内の事業者や行政等の有志で

新しい観光ビジネスの検討を始めまし

た。

 

青年部員や経営指導員らの間で、何

度も繰り返された勉強会では、人を呼

び込むためにはどうしたら良いか話し

合い、史跡観光だけでなく、農産物や

住民の生活、文化など地元の資源をフ

ルに活用した「教育旅行の受入」をテ

ーマにMICE観光事業に取り組みは

じめました。

滞在型観光で地元に資金を流入

 

商工会を中心に、村や県連、村内地

域団体で、明日香ニューツーリズム協

議会を設立し、受入体制組織を構築。

村内商工業者だけでなく農家や地域住

民も交え、地域コーディネーターを中

心に滞在型観光事業を自分たちの力で

立ち上げています。

 

はじめに、中学生の修学旅行をター

ゲットに、民家宿泊を中心に据えた「日

視点

儲かる地域のつくり方全国連の商工会地域産業活性化検討特別委員会で収集・調査した地域産業活性化の優良事例を紹介します。

海外との交流も進む

12Shokokai 2013.9

Page 2: P12 P13 儲かる地域-OT352-下版„²かる地域.pdf · 奈良県明日香村商工会・奈良県商工会連合会 低い観光客単価が課題 明日香村の人口は6120人。毎年

本のはじまり明日香村」の生活を体験

できる観光商品を開発。歴史文化や農

林業、料理・味覚、自然、伝統工芸・

芸能などの体験プログラムを作り上げ

ました。地元住民と交流し、様々な体

験をすることで、修学旅行生が様々な

気づきを生み出せるとして、2500

泊以上の修学旅行が明日香村を訪れて

います。

 

これら民家ステイ等は、地元に資金

を流入させるだけでなく、地元住民と

農商工事業者が村のあり方と自らの事

業を見つめ直す機会にもなり、地域コ

ミュニティをより一層強くする効果も

生まれています。受入校は国内だけで

なく地元国際大学なども巻き込み、シ

ンガポールやマレーシアからも学生を

受け入れています。

 

同時に、商工会では、地域産品事業

も強化。特産品ブランドルールを制定

することで村内事業者の商品レベルを

底上げし、地域に資金を流入させる取

り組みも手掛けています。

 

現在は、近隣市町村・商工会と、事

業の広域化に取り組んでおり、明日香

ならではの着地型観光、つまり海外と

の交流を推進し、観光を道具に、県・

村などステイクホルダーとつながりを

深めています。

・企画力    = 新しいビジネスが生み出す仕組みを作る・交流     = 外とつながり、内をつなげる・ネットワーク = 地域内外に持つネットワークを生かす

1. 地域外と人の交流・協働の仕組みを作る

2. 地域外から資金を流入させる

3. 地域内で資金を循環させる

優良事例に共通するキーワードは、企画力と交流、ネットワーク。ビジネスモデルを持ち、各々が持つ強みを生かし、継続してつながる仕組みを持つ取組が成果を上げています。様々な資源や課題を組み合わせることで、外からの資金獲得及び地域内での資金循環、地域コミュニティ維持等につながります。

視点

“儲かる地域”づくりの3つの視点

事業スキーム

明日香村成功のポイント

①市場での優位性 「なら観光ビジネスカレッジ」をきっかけに、村内の有志と商工会で、新しい観光の仕組みづくりに着手。当初より外部の観光事業者などを交え、観光ビジネスとして、ターゲットの選定と旅行エージェントが売りたいと思わせる商品を開発

②村内外の関係性(ネットワーク) 民家ステイなど新しい取り組みに関し、地域のキーマンたちと深い関係性を持つ移住者や I ターン起業者を取り入れながら、外からの視点を事業運営に取り入れる

③決断できるトップと中核人材 商売の感覚を持ち、村全体を観光商品として事業を展開、中途半端ではリスク回避不能であるとし、地元資源を使い尽くしている

明日香村商工会会長吉田宏*事業全体のリーダー

明日香村商工会 経営指導員下田正寿*事業推進の中心人物

奈良県商工会連合会経営支援室長吉川誓二*事業スキーム構築の  中心人物

〈事業を引っ張る地域コーディネーター〉

マレーシアなど海外の学生も受け入れた

13 Shokokai 2013.9