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PBLとは何か?山口大学国際総合科学部
小川仁志
2018年7月17日PBL模擬授業資料
PBLとは?•Project Based Learningの略。問題解決型学習あるいは課題解決型学習と訳されることが多い
※Problem Based Learningも問題解決型学習と訳されるが、
こちらは予め問題が与えられる
•学習者自身が、少人数グループで、具体的なテーマを設定し、そのテーマに即したプロジェクトを、企画、実践する過程で、主体的にさまざまな視点・知識・方法を身につける学習形態
•従来のインプット型の教育ではなく、アウトプット型の教育。これによって座学では得られない、社会で広く求められる実践的な能力を習得できる
たとえば・・・
•企業、行政、NPO等、パートナーとの連携のもと学生が4人~6人のチームを編成
•地域社会や国際社会の現状および動向を踏まえ、山口への貢献を念頭に、取り組むべきテーマを設定し、新たな価値を提案したり、 課題を解決するためのプロジェクトを企画し実践
•2か月~1年に渡りプロジェクトを行う
PBLが求められる背景
先の見えない時代+グローバル競争
社会のニーズ(課題解決、イノベーション)
教育改革の必要性
PBLに求められる能力/PBLで身に付く能力
・調査能力
・データ分析能力
・プロトタイプ作成能力
・評価手法
・プロジェクトマネジメント
・コミュニケーション能力
・プレゼンテーション能力
・価値提案能力
・デザイン思考
いずれも社会人に求められる実践的能力!
デザイン思考とは?
●Design thinking is a methodology for creative problem solving. (スタンフォード大学d-schoolによる定義)
https://dschool.stanford.edu/resources/getting-started-with-design-thinking
●Design thinking is a lineal descendant of that tradition. Put simply, it is a discipline that uses the designer’s sensibility and methods to match people’s needs with what is technologically feasible and what a viable business strategy can convert into customer value and market opportunity.
(Brown., T (2008) Design Thinking. HBR 86(6):84-92 Retrieved from https://hbr.org/2008/06/design-thinking)
デザイン思考のイメージ
観察
オブザベーション
発想
アイディエーション
試作
プロトタ
イピング
PBLの基本プロセス
①構想(プロジェクト全体の計画)②調査(量的調査/質的調査)③分析(調査結果の分析)④課題の設定⑤実施計画⑥実施→プロトタイプの作成⑦評価→修正(繰り返す)⑧価値提案
プロジェクトの条件(山口大学の例)
デザインプロセス(構想・調査・分析・実施計画・実施・評価・価値提案)の全体もしくは部分(構想・調査・分析・実施計画を含む)を踏まえる
・構想:構想書作成・構想発表会
・調査・分析:構想、実施計画、評価等に必要な何らかの
調査・分析を含む
※ただし調査・分析がプロジェクトの目的ではない
・実施計画:評価指標の設定を含む具体的な実施計画
(山口大学国際総合科学部PBL委員会(当時)作成資料より)
構想書に記載する主な内容
・連携先・実施概要・課題設定の方法・期待される成果・スケジュール・予算内訳
課題の設定が大切な理由
・課題は目に見えない
・課題は別のところにあるかもしれない
・課題は与えられるのではなく、発見するもの
・課題をチャンスととらえる
・課題は必ずしもマイナスのものばかりではない
※デザイン・オポチュニティー
プロジェクトの最終成果物
プロトタイプモデルの作製や調査結果に基づく新たなソリューションの提案など、調査だけで終わるのではなく、プロダクツと提携先の評価が求められる
•新商品、新サービス、新規事業などの実現と提携先の評価•新たなソリューションの実行とそれに伴う事業改善や利益と提携先の評価•プロトタイプモデルと提携先の評価•調査結果に基づく新たなソリューションの提案と提携先の評価
評価指標(例)規準 内容 レベル3 レベル2 レベル1 レベル0
発見する 関連する課題の発見とテーマ設定、企画立案
連携先に関連する課題を発見し、課題に応じてた十分な下調べに基づき、適切かつ独創的なテーマ設定、企画立案ができる。
連携先に関連する課題に応じて、下調べをした上で、テーマ設定ができる。
連携先に関連する課題に応じたテーマ設定ができる。
レベル1に満たない。
はぐくむ テーマ設定、企画にもとづく情報収集、調査およびコミュニケーション
課題、テーマ設定、企画に必要な情報を最大限に収集した上で、連携先との協働作業を通して、学術的に適切な方法でプロダクツの作成につなげられる。
課題、テーマ設定、企画に応じた情報収集ができ、それらを分析・考察した上で、連携先との協働作業を通して、プロダクツの作成に発展させられる。
課題、テーマ設定、企画に応じた情報収集ができ、連携先とコミュニケーョンを図りながら、プロダクツの作成につなげることができる。
レベル1に満たない。
かたちにする 新しいソリューションの提案と実行
収集した情報の分析・考察に基づき、独創性を備え、かつ、地域や国際的観点に立って説得力を伴ったプロダクツを作成できる。
収集した情報の分析・考察にもとづき、プロダクツを作成できる。
期日までにプロダクツを完成することができる。
レベル1に満たない。
分かちあう 公開、プレゼンテーション、グループワーク
プロダクツを効果的に他者(連携先や他の構成員)と共有するための戦略を立て、グループワークを発揮して展開し、認知・評価をえることができる。
プロダクツに説得力をもたせるため、グループ内での役割分担を明確化して取り組むことができる。
グループの活動に参加し、課題の求める形でプロダクツを公表できる。
レベル1に満たない。
振り返る 他者および自分(たち)の企画およびプロダクツの評価。今後の地域や国際的環境での<発見する>につながる
他者および自分(たち)の企画・活動・プロダクツを評価し、その評価をグループで共有し、地域や国際的観点に立った企画・実践にその評価を活かせる。
他者および自分(たち)の企画・活動・プロダクツを評価し、その評価をグループで共有できる。
他者および自分(たち)の企画・活動・プロダクツについてよかった点、悪かった点をあげられる。
レベル1に満たない。
地域の課題に取り組む必要性
・地方創生が求められる時代
・地域との縁を大切にする
・地域は世界につながっている
PBLのために学んでおいたほうがいい科目の例
●調査のために・アンケート調査法・社会学・文化人類学・マーケティング学
●分析/評価のために・統計学・情報処理
●価値提案のために・コミュニケーション学・知的財産権・哲学
具体的な事例の紹介
「美祢に行ってみ台湾」プロジェクト
パートナーである美祢市からの依頼:
①スポーツツーリズムを生かして、台湾から美祢市へのインバウンドを増やす
②美祢市の物産を台湾に広める
スケジュール①4月中構想の確定
②6月中旬~7月中旬WEBでアンケート実施
③7月11日~15日質的調査として現地でのインタビュー調査
④7月後半調査結果の分析
⑤8月頭第一次提案(プロトタイプ)の作成
⑥8月中プロトタイプの評価及び案の修正⑦10月中第二次提案の作成、評価、修正
⑧12月中最終提案
心の翼プロジェクト(概要)
• プロジェクトメンバー• 国際総合科学部4年生 6名 + 教員 2名(主担当、副担当)
• パートナー• 全日本空輸株式会社山口支店(担当者 2名)
• パートナーから提案された解決すべき課題• イノベーティブな機内/空港サービスの開発
• 交流人口の増加(インバウンド増加)
• エアラインとともに、山口県を元気にする(地域活性化)
• 周辺の動向• 訪日旅客が首都圏を中心に急増している中、山口県への誘客を狙い、県・関係業界を中心に動きが活発化している。
• PDE社、H.I.S.社、ANAの3社は、宇宙旅行をはじめとする宇宙輸送の事業化に動き出した。
• これまでの経緯と取り組み
• 1回/月でパートナーとの打ち合わせ
• 2018/1/20-21 岩国錦帯橋空港にて利用者への聞き取り調査
• 2018/6/12 岩国錦帯橋空港管理株式会社へのインタビュー
• 2018/6/12 岩国観光プロモーション戦略協議会へのインタビュー
• プロジェクトの方向性
• 岩国錦帯橋空港はANAしか就航しておらず、ビジネス利用の乗客に必要な設備し
かない、簡素で今後の発展利用の見込める空港である
→ 岩国錦帯橋空港を活用した地域活性化
• 岩国錦帯橋空港を“日本一の花空港”にする
• “花博”とのコラボレーション
• “光庭“1を利用したインスタ映えディスプレイと写真撮影システム
• 生花よりもむしろ造花や花の造形2を多用(ペットボトルに注目)
• 若年層がメインターゲット
• 今後の課題
• 地域住民をどう巻き込むか、必要経費をどう捻出するか、花博とどうコラボレ
ーションできるか、PR(話題作り)の手段等
岩国錦帯橋空港全景(上)光庭(下)1
*画像出典 http://www.thisiscolossal.com/category/art/http://nominiko.sblo.jp/article/164915805.html
ペットボトルによる花の造形2
参考文献
ドナルド・R・ウッズ『PBL 判断能力を高める主体的学習』新道幸恵訳(医学書院)
溝上慎一・成田秀夫編『アクティブラーニングとしてのPBLと探究的な学習』(東信堂)
鈴木敏恵『課題解決力と論理的思考力が身につく プロジェクト学習の基本と手法』(教育出版)
前野隆司編『システム×デザイン思考で世界を変える』(日経)BP社)
佐宗邦威『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』(クロスメディア・パブリッシング)
日経デザイン編集部『実践 デザイン・シンキング』(日経BP社)