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300℃での長期耐熱性を有する
高放熱・高絶縁膜の
コーティング技術とその応用
三重大学 大学院 工学研究科
准教授 青木 裕介
2
新技術の概要
・有機・無機ハイブリッド材料をバインダーとして用いた電着法による金属コーティング技術を開発した。
・本技術によれば、300℃での長期耐熱性を有し、高絶縁、高放熱を有し、柔軟性に富んだ金属コーティング膜を得ることが出来る。
・本技術によるコーティング膜は、車載用メタルコア基板、放熱塗料等への応用が期待できる。
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研究開発の背景
電子回路の小型化・高集積化
次世代パワー半導体(SiC)の動作温度の高温化(300℃超) etc.
⇒実装回路の放熱対策が重要視
⇒対策の一つとして、メタルコア基板
メタルコア基板
メタルコア基板
放熱性能は、絶縁層の性能によって制限 ⇒高い絶縁性と高い放熱性を有する絶縁層の製造方法の確立が要望される。シンプルで低コストな手法が望ましい。
絶縁層
外部導体層
メタル素材 利点
高い熱伝導性
自由な形状加工
高い剛性
4
電着(電気泳動法EPD)によるコーティング
• セラミックコーティング技術
• 電着液中の帯電セラミックス粒子は電界により基板上に堆積
• シンプル、かつ低コスト
• 膜厚の制御が容易
• 複雑な形状にも均一なコーティングが可能
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従来技術とその問題点
従来の電着による耐熱性のセラミックスコーティングにおいては、ポリイミドがバインダとして用いられてきたが、放熱性と絶縁性の両立が困難であった。
これは、ポリイミドは剛直な分子であるため、形成される電着膜と金属の熱膨張係数のミスマッチが原因となり、緻密でかつセラミックス粒子の占有率の高い膜の形成が困難なためである。
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電着による高放熱性と絶縁性を有する コーティング膜の開発例
電着膜厚 20μm 熱伝導率(膜単体) 1.0(W/m・K) 絶縁耐圧(膜単体) 0.9(kV)
炭素基板
ポリイミド+窒化アルミ
特許公開2003-209329
電着法によるポリイミドをバインダーとして、 炭素基板上に窒化アルミコーティング
導体(銅)
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ポリジメチルシロキサン(PDMS)系 有機・無機ハイブリッド材料のバインダーへの適用
バインダーとして、PDMS系ハイブリッドを使用AlとAl2O3の熱膨張率の差を緩和可能
Si
OC2H5
Si
CH3
CH3
Si
CH3
CH3
O O O
OC2H5
C2H5O
n
Si
OC2H5
O
nOC2H5
OC2H5Si
OC2H5
Si
CH3
CH3
Si
CH3
CH3
O O O
OC2H5
C2H5O
n
Si
OC2H5
O
nOC2H5
OC2H5Si
OC2H5
Si
CH3
CH3
Si
CH3
CH3
O O O
OC2H5
C2H5O
n
Si
OC2H5
O
nOC2H5
OC2H5Si
OC2H5
Si
CH3
CH3
Si
CH3
CH3
O O O
OC2H5
C2H5O
n
Si
OC2H5
O
nOC2H5
OC2H5
Alkoxysilane-terminated PDMS
Hybrid material
O
O
O
O
O
O
O
O
O O
O
O O
O O O O
O O
O
O O
O O
Si
O
O
O O
O
O O
O
O O
O
O
O
O
O
O
O
O
O
O
O
O
O
O
Si Si
Si Si Si
Si Si Si
Si
Si
Si
Si
Si
Si
Si
Si
Si
PDMS H2O,⊿T
PDMSの末端に
エチルシリケート基を導入
• ポリアルコキシラン末端変性PDMSの加熱により得られる重合体は、高い耐熱性(連続200℃、短時間400℃以上)と柔軟性を有する
Aoki, Y., Kubo, H., Shindou, T. (2010). IEEJ Trans. on
Fundamentals and Materials,130, 221
ナノガラス
8
PDMS系有機-無機ハイブリッドの性質(1)
• 変成PDMSと各種金属アルコキシドを原料とするハイブリッド材料は、柔軟性、高絶縁性、高耐熱性を有し、かつ、揮発性低分子が少ない。
PDMS:
変成PDMSのみを原料とする硬化体
PDMS-SiOハイブリッド:
TEOS、変成PDMSを原料とする硬化体
PDMS-TiOハイブリッド:
TTIPと変成PDMSを原料とする硬化体
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PDMS系有機-無機ハイブリッドの性質(2)
• 末端基の異なる変成PDMSの組
み合わせにより、長期耐熱性に優れる硬化体が得られる。
• 左図のアルコキシラン変成PDMS(A-PDMS)とT-PDMSから得られる硬化体は、250℃1000時
間の熱処理後も柔軟性維持が可能。
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 耐熱性、絶縁性、柔軟性に特長を有する有機・無機ハイブリッド材料をバインダとすることで、従来技術では実現困難であった、高絶縁性で、かつ、熱伝導率の高いセラミックス膜の形成が可能となった。
• 新技術による電着膜は、300℃以上の長期耐熱性を有する
• 基板折り曲げにも耐えうるフレキシビリティを有する絶縁膜が形成可能となる
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新技術による電着膜の作製
電着液
アルミナ:球状アルミナ(平均粒径0.5um)
IPA, 安定化剤
攪拌24時間
PDMS系ハイブリッド原料(ゾル)添加
攪拌
電着液 電着条件:定電流
アルミ基板
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新技術による電着膜の作製
厚いアルミ板(2㎜厚)上にもコーティングが可能。
薄いアルミ板上にコーティングしても基板の反りが発生しない。
x400
x40
2mm厚 0.2mm厚
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新技術による電着膜の特徴
①高絶縁・高放熱
変成PDMSの種類・配合量を変えることで、膜の硬さ、熱伝導率、絶縁強度を高めることができる。
配合 硬度[N]
熱伝導率[W/mK]
絶縁破壊電界強度[kV/mm]
配合A 2.0 2.4 76.0
配合B 3.3 3.1 79.5
配合C 3.5 2.2 89.1
配合D 2.0 2.9 97.1
配合 硬度[N] 熱伝導率[W/mK]
絶縁破壊電界強度[kV/mm]
A 2.0 2.4 76.0
B 3.3 3.1 79.5
C 3.5 2.2 89.1
D 2.0 2.9 97.1
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新技術による電着膜の特徴
②300℃での長期耐熱性を有する
交流破壊電界強度[kV/mm]
ひっかき硬度[N]
接着強度[MPa]
熱伝導率[W/mK]
初期値 63 2.0 5.5 3.1
300℃200 hours 64 2.2 5.34 3.1
試料厚さ:50µm
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新技術による電着膜の特徴
③折り曲げにも耐えうるフレキシビリティ
• 電着コーティングを施した0.2mm厚のアルミ基板を折り曲げても、電着膜の剥離が起こらない。
• 室温から300℃の温度範囲の冷熱衝撃にも耐えうる。
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従来技術との比較
従来技術では実現できなかった絶縁性、熱伝導性を実現
膜厚 [μ m]
絶縁破壊電圧[kV]
交流絶縁破壊電界強度[kV/mm]
熱伝導率[W/mK]
本技術による電着膜
35 3.4 97 3.1
特許公開2003-209329
20 0.9 45 1.0
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新技術の応用例
電着膜によるプラズマ電解酸化(PEO)膜の封孔処理
水溶液中でプラズマを発生させてアルミ表面の薄い酸化膜をマイクロアークで放電破壊して、新たな酸化膜を形成
陽極酸化 PEO
40V前後 600V前後 陽極酸化に比べて遥かに緻密な膜だが気孔は存在する。
⇒電子回路基板には気孔を封じる工夫が必要
比較項目 通常のアルミ PEOを施したアルミ
硬度 (Hv) 30-100 800-1400
耐蝕性(塩水噴霧試験、時間) <100 >5000
瞬間耐熱性 (°C) 640 2000
絶縁性 (V/µm) 0 2.5kV/50μm
プラズマ電解酸化(PEO)膜
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新技術の応用例
電着膜によるプラズマ電解酸化(PEO)膜の封孔処理
・電着層部分の誘電率をPEO膜と変わらないものとして、破壊電圧印加時のPEO
膜の分担電圧を概算すると3.1kVとなり、封孔処理前のPEO膜の耐電圧( 2.5kV )に較べ25%増大。
・PEO部の熱伝導率も同様に10%増大
PEO膜
電着膜で封孔処理されたPEO膜
膜厚(μm) 50 63
絶縁耐電圧(kV)
2.5 3.8
熱伝導率(W/m・K)
0.89 1.71
封孔処理前 封孔処理
電着膜(10μm相当)で
コーティング
400倍 400倍
40倍 40倍
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想定される用途
1)車載用メタルコア基板
高温での長期耐熱性という特徴を生かして、S
次世代パワー半導体用の基板として適用可能
2)放熱コーティング
電子部品、筐体をコーティングすることで、照明、自動車、携帯情報端末の高性能化が可能
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実用化に向けた課題
• 現在、熱伝導率3W/mKのコーティング膜の形成が可能。高熱伝導化(5W/mK以上)を目指して、変性PDMSの構造制御、配合量の調整、セラミックス粒子の検討等、作製条件の検討を行っていく。
• 実用化に向けて、大面積成膜技術を確立する必要あり。
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企業への期待
• 民間企業との共同研究を通して、実用化に向けた技術課題のさらなる抽出と基板特性の向上をはかりながら、民間企業への技術移転を進めていきたいと考えている。
新技術説明会で説明することによって、具体的に企業へ何を期待するか・求めているかを明確に記載してください。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :電着液、メタルコア基板および
メタルコア基板の製造方法
• 出願番号 :特願2014-192033
• 出願人 :三重大学
株式会社ディスプレイテック21
• 発明者 :青木裕介 狩野幹人
笠野和彦
※特許出願から1.5年未満の未公開特許情報を含んだ説明会ですので、情報の取り扱いに十分ご注意下さい。公開する情報の範囲につきましては、特許出願人(知財本部、TLO等)とご相談ください。
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産学連携の経歴
• 2009-現在 KOA株式会社と共同研究実施
• 2011年 JST A-STEP FSステージ シーズ探索タイプに採択
• 2013年 JST A-STEP FSステージ シーズ探索タイプに採択
• 2013年-現在 株式会社ディスプレイテック21と共同研究実施
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お問い合わせ先
三重大学社会連携研究センター・知的財産統括室
狩野 幹人
電話及びファックス: 059-231-5495
E-MAIL: [email protected]
三重大学工学部社会連携室コーディネータ
横森 万
電話及びファックス: 059-353-8260
E-MAIL: [email protected]